JP2011147859A - ウレタン塗膜形成方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】リバースロールコーターを用いて基材表面に架橋性ホットメルト型ウレタン樹脂を塗布する場合において、ドクターロールの表面に被膜が形成されにくいウレタン塗膜の形成方法を提供することを目的とする。
【解決手段】塗工ロール2及びドクターロール3はシート基材1の上方に配置され、且つ、互いの外周面が平行になるような状態でギャップを維持して対向配置され、塗工ロール2をシート基材1の送り方向とは逆方向に周速度Aで回転させ、ドクターロール3をシート基材1の送り方向に周速度Bで回転させ、設定温度に加熱された塗工ロール2及びドクターロール3が形成するギャップの上方から溶融粘度ηの架橋性ホットメルト型ウレタン樹脂を流下し、ウレタン塗膜を形成する場合において、溶融粘度ηが1000〜10000の範囲であり、ドクターロールの回転数が0.2〜5rpmであり、周速度Aと周速度Bとの比A/Bが10〜120の範囲である。
【選択図】図1

Description

本発明は、一方向に送られるシート基材の表面にリバースロールコーターを用いて反応型ウレタン樹脂を塗布することによりウレタン塗膜を形成する方法に関する。
従来から、鞄、履物、衣類、家具等に用いられる皮革に似せた表面素材としてポリウレタン積層体を用いた皮革様シートが広く用いられている。
このようなポリウレタン積層体の代表的な構成としては、不織布にポリウレタンを含浸させてなる複合繊維シートの表面に、ポリウレタン樹脂層を積層したような構成が挙げられる。その製造方法として、例えば、下記特許文献1に開示されたように、複合繊維シートの表面に、溶融させた架橋性ホットメルト型ウレタン樹脂をロールコーターで塗布した後、架橋させることによりポリウレタン樹脂層を形成する方法が知られている。
一方、下記特許文献2には、光ディスクの表面に保護層を形成するために、リバースロールコーターを用いて反応型ホットメルト接着剤を塗布する方法が開示されている。
国際公開WO2005/083173号パンフレット 特開2006−79790号公報
特許文献1に開示されたような架橋性ホットメルト型ウレタン樹脂をリバースロールコーターを用いて基材表面に塗布する場合、次のような問題が生じていた。
一方向に搬送されるシート基材の表面に長時間連続的に架橋性ホットメルト型ウレタン樹脂を塗布する場合、リバースロールコーターを構成するドクターロールの表面に、架橋性ホットメルト型ウレタン樹脂が付着して徐々に堆積していくという問題があった。ドクターロールの表面に堆積した架橋性ホットメルト型ウレタン樹脂は架橋反応を起こし、ドクターロールの表面に強く固着した被膜として残る。塗膜の膜厚は塗工ロールとドクターロールとの間のギャップにより規制されるために、ドクターロールの表面に固着した被膜が形成されるとシート基材表面に形成される塗膜の膜厚が必然的に薄くなる。従って、長時間連続的に塗布した場合、経時的に形成されるウレタン塗膜の膜厚が徐々に薄くなっていくという問題があった。従って、ドクターロールの表面に固着した被膜が厚くなった場合には、塗布を中断して、ドクターロールの表面を清浄化する必要があった。また、このような被膜は架橋しているために、被膜の剥離には多大な手間が掛かっていた。
本発明は、リバースロールコーターを用いて基材表面に架橋性ホットメルト型ウレタン樹脂を塗布する場合において、ドクターロールの表面に樹脂が付着されにくいウレタン塗膜の形成方法を提供することを目的とする。
本発明の一局面であるウレタン塗膜の形成方法は、送りロールにより一方向に送られるシート基材の表面に、塗工ロールとドクターロールとを備えたリバースロールコーターを用いて架橋性ホットメルト型ウレタン樹脂を塗布することにより、ウレタン塗膜を形成するウレタン塗膜形成方法であって、送りロールは、シート基材の下面と接触してその回転により前記シート基材を一方向に送り、塗工ロール及びドクターロールはシート基材の上方に配置され、且つ、互いの外周面が平行になるような状態でギャップを維持して対向配置され、塗工ロールをシート基材の送り方向とは逆方向に周速度A(m/分)で回転させ、ドクターロールをシート基材の送り方向に周速度B(m/分)で回転させ、設定温度に加熱された塗工ロール及びドクターロールが形成するギャップの上方から溶融粘度η(mPa・sec)の架橋性ホットメルト型ウレタン樹脂を流下し、塗工ロールの外周面表面に架橋性ホットメルト型ウレタン樹脂の層を付着させ、シート基材の表面に該層を転着させることによりウレタン塗膜を形成する場合において、溶融粘度ηが1000〜10000の範囲であり、ドクターロールの回転数が0.2〜5rpmの範囲であり、周速度Aと周速度Bとの比A/Bが10〜120の範囲であることを特徴とする。このようなウレタン塗膜形成方法によれば、長時間連続して塗膜の形成を行っても、ドクターロールの表面に樹脂成分が付着されにくい。従って、ウレタン塗膜の連続生産性を向上させることができる。
また、前記ウレタン塗膜形成方法においては、塗工ロールの周速度Aは10〜50の範囲であり、ドクターロールの周速度Bは0.1〜2.5の範囲であることがとくに好ましい。
また、架橋性ホットメルト型ウレタン樹脂は、100℃における溶融粘度が10000mPa・sec以下のホットメルト型ウレタンプレポリマー(A)と鎖伸長剤(B)と示差走査熱量測定により所定の発熱ピーク温度を示す感温性ウレタン化触媒(C)とを発熱ピーク温度に対して10〜30℃低い範囲の温度で加熱溶融混合することにより得られた樹脂であることが好ましい。このような架橋性ホットメルト型ウレタン樹脂を用いた場合には、感温性ウレタン化触媒(C)が活性化する発熱ピーク温度よりも10〜30℃低い範囲の温度でウレタンプレポリマー(A)と鎖伸長剤(B)と感温性ウレタン化触媒(C)とを加熱溶融混合するために、リバースロールコーターのギャップ上に一時的に貯留される時点において架橋反応の進行が抑制される。そのためにリバースロールコーターに被膜が架橋することにより強固に固着することを抑制できる。また、このような架橋性ホットメルト型ウレタン樹脂から形成されたウレタン塗膜は、さらに、感温性ウレタン化触媒(C)が活性化する発熱ピーク温度よりも高い温度で熱処理することが好ましい。形成されたウレタン塗膜を、感温性ウレタン化触媒(C)が活性化する発熱ピーク温度よりも高い温度で熱処理することにより、ウレタン塗膜の架橋が促進される。それによりタック性を低減させることができる。よって、後の工程における工程通過性を向上させることができる。すなわち、例えば、送りロールやカレンダーロールのようなロールに対する塗膜の付着性を低減させたり、捲回状に巻取る際にシートのウレタン塗膜が増粘硬化することで基材シートの塗工面側に過剰に浸透することを抑制することができる。感温性ウレタン化触媒としては、例えば、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセン-7の有機酸塩等が好ましく用いられる。
本発明によれば、リバースロールコーターを用いて基材表面に架橋性ホットメルト型ウレタン樹脂を塗布する場合において、長時間連続して塗膜の形成を行っても、ドクターロールの表面に樹脂成分被膜が付着しにくくなる。従って、ウレタン塗膜の生産性を向上させることができる。
図1は、本実施形態のウレタン塗膜形成方法を説明するための説明図である。 図2は、本実施形態の加熱工程を説明するための説明図である。
図1を参照して、本実施形態で用いられるリバースロールコーター10により、一方向に送られるシート基材1の表面に架橋性ホットメルト型ウレタン樹脂を塗布する工程について説明する。
リバースロールコーター10は塗工ロール2、ドクターロール3、及び送りロール4を備える。送りロール4は、シート基材1の下面と接触してその回転によりシート基材1を一方向に送る。また、塗工ロール2及びドクターロール3はシート基材1の上方に配置されている。塗工ロール2及びドクターロール3は、互いの外周面が平行になるような状態で所定のギャップ間隔を維持して対向配置されている。
図1においては、塗工ロール2はシート基材1の送り方向(矢印x方向)とは逆方向(時計回り)に周速度A(m/分)で回転している。また、ドクターロール3は、シート基材1の送り方向(半時計回り)に周速度B(m/分)で回転している。
そして、塗工ロール2及びドクターロール3が形成するギャップGに向けて、その上方に配設された貯留槽6から架橋性ホットメルト型ウレタン樹脂5が流下される。
そして、流下された架橋性ホットメルト型ウレタン樹脂5は塗工ロール2及びドクターロール3が形成するギャップGの上方に一時的に貯留される。なお、架橋性ホットメルト型ウレタン樹脂5は、予め、架橋性ホットメルト型ウレタン樹脂5を貯留する加熱装置を備えた貯留槽6内において溶融状態で保存されている。
ギャップGの上方に一時的に貯留された溶融状態の架橋性ホットメルト型ウレタン樹脂5は、塗工ロール2及びドクターロール3が形成するギャップGに食い込み、塗工ロール2表面に付着する。そして、塗工ロール2表面に付着した架橋性ホットメルト型ウレタン樹脂5は、送りロール4により定速で一方向に搬送されるシート基材1の表面に転着され、シート基材1の表面にウレタン塗膜が形成される。ウレタン塗膜の膜厚は、ギャップGの間隔、塗工ロール2の周速度、シート基材1の送り速度等により制御される。
上述した一連のウレタン塗膜の形成工程において、ドクターロール3は、塗工ロール2の回転方向と逆方向、すなわちシート基材1の送り方向に回転している。また、ドクターロール3の周速度Bは、塗工ロール2の周速度Aに比べて極端に低速である。このようにドクターロール3を塗工ロール2の回転方向と逆方向であって、塗工ロール2の周速度に比べて極めて低速で回転させることにより、ドクターロール3の表面に付着した架橋性ホットメルト型ウレタン樹脂5がギャップGに食い込みやすくなる。
なお、塗工ロール2及びドクターロール3は、架橋性ホットメルト型ウレタン樹脂5の溶融粘度を調整するために、所定の設定温度に加熱されている。架橋性ホットメルト型ウレタン樹脂5の溶融粘度ηとしては、1000〜10000mPa・sec、さらには、1200〜8000mPa・sec、とくには、1500〜3000mPa・sec、の範囲であることが好ましい。溶融粘度ηが高すぎる場合には、塗工性が低下し、溶融粘度ηが低すぎる場合には、リバースロールからの樹脂の転写不足や樹脂流れが生じる傾向がある。このような溶融粘度に調整するために、塗工ロール2及びドクターロール3の温度は、例えば、50〜150℃、さらには、60〜130℃の範囲に制御することが好ましい。
また、ギャップGの間隔は目的とするウレタン塗膜の膜厚により、適宜調整されるが、0.005〜1mm、さらには、0.1〜0.5mmの範囲であることが好ましい。
また、塗工ロール2の周速度Aは1〜50m/分の範囲、さらには10〜50m/分の範囲であることが好ましい。周速度Aが高すぎる場合にはドクターロールに付着する樹脂量が多くなる傾向があり、低すぎる場合にはドクターロールに付着した樹脂のギャップGへの食い込み性が低下する傾向がある。
また、ドクターロール3の周速度Bは0.1〜2.5m/分の範囲、さらには、0.1〜1.2m/分の範囲であることが好ましい。周速度Bが高すぎる場合には、樹脂の付着量が多くなることにより、ドクターロール3が一周する間に架橋した樹脂が蓄積することによりギャップ間隔が狭くなって塗布量が少なくなる傾向があり、また、連続運転後にドクターロール表面に付着した樹脂の剥離が困難になる傾向がある。一方、周速度Bが低すぎる場合には、ドクターロール3が一周する間に付着した樹脂の架橋が進みすぎることにより、連続運転後のドクターロール表面に付着した樹脂が固着しやすくなる。
そして、本実施形態のウレタン塗膜形成方法においては、塗工ロールの周速度Aとドクターロールの周速度Bとの比(A/B)が、10〜120の範囲であり、好ましくは、
10〜50の範囲である。比(A/B)がこのような範囲である場合には、後述する実施例で示されているように、ドクターロールの表面に樹脂被膜が付着しにくくなる。
また、本実施形態におけるドクターロール3の回転数は、0.2〜5rpmの範囲であり、0.2〜2.5rpmの範囲であることが好ましい。ドクターロール3の回転数が0.2rpmよりも遅い場合には、ドクターロールの表面に樹脂の付着を抑制する効果が不充分になり、また、付着した樹脂が架橋してドクターロールの表面に固着しやすくなる。また、5rpmを超える場合よりも同様に、樹脂の付着を抑制する効果が不充分になる。
なお、本実施形態における塗工ロール2の回転数は、他の条件に応じて適宜選ばれるために特に限定されないが、5〜200rpm、さらには、15〜100rpmの範囲であることが好ましい。塗工ロール2の回転数が高すぎる場合には、塗工量が増加することでシートの搬送速度等の制御性に問題が発生する場合があり、また工程通過性に劣り、低すぎる場合には、塗工量が低下し、塗布斑が発生し易く、また架橋が進み易いことからロールに硬化物が付着しやすくなり塗布性が劣る傾向がある。
次に、架橋性ホットメルト型ウレタン樹脂について説明する。
本実施形態で使用される架橋性ホットメルト型ウレタン樹脂は、ポリオールとポリイソシアネートとを反応させて得られるイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー及び必要に応じ、該ウレタンプレポリマーを硬化及び架橋させるための鎖伸長剤や触媒を含有する組成物であり、常温で半固体状または固体状の無溶剤型のポリウレタン形成成分である。このような架橋性ホットメルト型ウレタン樹脂は、常温では固体状ないしは塗布が困難な程度の粘稠性を有する半固体状の性状であるが、加熱することにより塗工可能な粘度になり、塗工の後は、冷却されることにより再固化または増粘する。
ポリオールの具体例としては、例えば、ポリエステル系ポリオール、ポリエーテル系ポリオール、ポリカーボネート系ポリオールなどの高分子量ポリオール;エチレングリコール、ブタンジオール,1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,4−ビス(ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,3−ビス(ヒドロキシイソプロピル)ベンゼン、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、シクロヘキサン−1,4−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ソルビトール、メチルグリコシドなどの低分子量ポリオール等が挙げられる。これらは単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、ポリイソシアネートの具体例としては、例えば、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネートまたは脂環族ジイソシアネート;4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートの2量体および3量体等のポリメリックジフェニルメタンジイソシアネート等が挙げられる。これらは単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ポリオールとポリイソシアネートとの反応割合は、ポリイソシアネート中のイソシアネート基と、ポリオール中の水酸基との当量比[NCO/OH]が、1.1〜5の範囲内であることが好ましく、1.2〜3の範囲内であることがより好ましい。
ウレタンプレポリマーの数平均分子量としては、500〜30,000、さらには1000〜10,000の範囲であることが溶融粘度を容易に調整でき、また、優れた柔軟性、機械的強度、耐摩耗性、耐加水分解性を有するポリウレタン樹脂層を形成することができる点から好ましい。
このようなウレタンプレポリマーの市販品としては、DIC(株)製の商品名タスクフォースKMM−100,KMM−100LV,タイフォースNH−122A、NH−200、NH−300、H−1041や武田薬品工業株式会社製のタケダメルトSC−13、SL−01、SL−02、SL−03、SL−04等が挙げられる。
鎖伸長剤は、ウレタンプレポリマーのイソシアネート基と反応しうる水酸基やアミノ基のような活性水素を有する官能基を2個以上有する化合物である。ウレタンプレポリマーは、ウレタンプレポリマー中のイソシアネート基と後述する鎖伸長剤中の水酸基やアミノ基等とがウレタン化触媒により反応が促進されて高分子量化する。また、高分子量化したポリマーは、さらに系内に存在するイソシアネート基と反応することによる架橋反応を行う。
鎖伸長剤の具体例としては、上述した各種ポリオールの他、エチレンジアミン、1,3−プロピレンジアミン、1,2−プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ノルボネンジアミン、ヒドラジン、ピペラジン、N,N’−ジアミノピペラジン、2−メチルピペラジン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、イソホロンジアミン、ジアミノベンゼン、ジフェニルメタンジアミン、メチレンビスジクロロアニリン、トリエチレンジアミン、テトラメチルヘキサメチレンジアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリメチルアミノエチルピペラジン、N−メチルモルフォリン、N−エチルモルフォリン、ジ(2,6−ジメチルモルホリノエチル)エーテルなどのポリアミン類等が挙げられる。これらは単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
架橋性ホットメルト型ウレタン樹脂の中では、とくには、熱溶融性と湿分硬化性とを備えた湿分硬化性ホットメルト型ウレタン樹脂が好ましい。
また、本実施形態の架橋性ホットメルト型ウレタン樹脂は、ウレタン化触媒、とくには、感温性ウレタン化触媒を含有することが好ましい。感温性ウレタン化触媒は、窒素シール下で、昇温速度10℃/1分で、0℃から200℃までの範囲で示差走査熱量測定したときに、所定の発熱ピーク温度を示すウレタン化触媒である。発熱ピーク温度としては、50〜160℃、さらには80〜140℃の範囲であることがウレタン化の処理効率と安定化に優れる点から好ましい。
このような感温性ウレタン化触媒の具体例としては、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセン-7(DBU)の有機酸塩、具体的にはDBUのフェノール塩(発熱ピーク温度88℃)、DBUのオクチル酸塩(同99℃)、DBUのフタル酸塩(同138℃)、DBUのオレイン酸塩(同110℃)等が挙げられる。このような感温性ウレタン化触媒は、使用するウレタンプレポリマーの軟化温度を考慮して、適宜選択される。
また、架橋性ホットメルト型ウレタン樹脂は、必要に応じて、発泡剤、顔料等の着色剤、増粘剤、酸化防止剤等の添加剤を含有してもよい。
このような架橋性ホットメルト型ウレタン樹脂の溶融粘度としては、コーンプレート粘度計で測定した100℃における溶融粘度が、500〜12000mPa・s、さらには1000〜10000mPa・sの範囲であることがリバースロール上への貯留安定性と塗工性に優れている点及び膜厚の調整が容易である点から好ましい。
架橋性ホットメルト型ウレタン樹脂の調製方法としては、例えば、ウレタンプレポリマーと鎖伸長剤と、必要に応じて用いられる、ウレタン化触媒とを加熱溶融混合する方法が挙げられる。
加熱溶融混合方法としては、ミキシングヘッドを用いて混合する方法や、加熱装置を備えた容器内で溶融状態で撹拌混合するような方法が用いられる。
溶融混合工程においては、感温性ウレタン化触媒を用いる場合には、感温性ウレタン化触媒が活性化する温度である、発熱ピーク温度よりも10〜30℃低い範囲の温度、好ましくは10〜25℃低い範囲の温度で加熱溶融混合することが好ましい。このような温度で加熱溶融混合することによりリバースロールコーターのギャップ上に貯留されるときにおける架橋反応の進行が抑制される。このような架橋性ホットメルト型ウレタン樹脂からなるウレタン塗膜は、後に感温性ウレタン化触媒が活性化する温度で加熱処理されることにより、架橋が促進される。それにより、後の工程において通過する場合のある、送りロールやカレンダーロール等のようなロールに対する、塗膜の付着性を低減させることができる。この工程について、図2を参照して説明する。
上述したようにして形成された架橋性ホットメルト型ウレタン樹脂からなるウレタン塗膜7を、図2に示すように、加熱装置8により、感温性ウレタン化触媒が活性化する温度で熱処理されることにより、その架橋が促進される。これにより、ウレタン塗膜7のタック性が低減する。このような場合においては、後の工程、例えば、図2に示すような送りロール9で搬送する場合等において、ウレタン塗膜7が送りロール9に付着しにくくなり、優れた工程通過性を実現できる。さらに、捲回状に巻取る際にシートのウレタン塗膜が増粘硬化することで基材シートの塗工面側に過剰に浸透することを抑制することができる。
熱処理温度としては、感温性ウレタン化触媒の発熱ピーク温度よりも高い温度になり、且つ、硬化形成されるポリウレタン樹脂層を劣化させない温度であれば特に限定されないが、具体的には、感温性ウレタン化触媒の発熱ピーク温度に対して0〜30℃高い温度の範囲、さらには発熱ピーク温度に対して0〜15℃高い温度の範囲で熱処理することが好ましい。
また、熱処理時間の具体例としては、例えば、15秒間〜10分間程度、さらには30秒間〜5分間程度であることが、生産性を低下させることなく充分に架橋反応を促進させることができる点から好ましい。このようにして形成されたウレタン塗膜は、熟成によりその架橋反応がさらに進行する。これにより、機械的強度や耐水性に優れたポリウレタン層が得られる。
このようにして得られたポリウレタン層は、鞄、履物、衣類、家具等に用いられる皮革様シートを構成する層として用いられる。
次に、本発明に係るウレタン塗膜を形成する方法を実施例により更に詳しく説明する。なお、本発明の範囲は実施例により何ら限定されるものではない。
はじめに、本実施例で用いた原材料を以下にまとめて説明する。
〈架橋性ホットメルト型ウレタン樹脂〉
・(A液)
湿分硬化性ホットメルト型ウレタンプレポリマー(DIC(株)製のタスクフォース KMM−100LV、100℃における溶融粘度が2500mPa・s) 100部(質量部、以下同様)
・(B液)
顔料:ダイラック ブラック RHM−7944(DIC(株)製) 15.7部
発泡剤:マツモトマイクロスフェアー F−36(松本油脂製薬(株)製) 0.8部
感温性ウレタン化触媒:DBUのオレイン酸塩(サンアプロ(株)製、U−CAT SA−106、発熱ピーク温度110℃) 0.25部
鎖伸長剤:ブタンジオール(三菱化学(株)製)0.25部
〈離型紙〉
リンテック(株)製の離型紙 R−70N(厚み 2.0mm)
[実施例1]
図1に示したような製造プロセスを用いてウレタン塗膜を形成した。
具体的には、115℃で保温したA液 100部と50℃に保温したB液 17部とを、ミキシングヘッド(丸加化工機(株)製、MEG-HK-55S型)を用いて混合して、架橋性ホットメルト型ウレタン樹脂を調製した。そして、リバースロールコーターの塗工ロール及びドクターロールが形成するギャップG上に架橋性ホットメルト型ウレタン樹脂を流下した。なお、リバースロールコーターの条件は以下の通りである。
塗工ロール径:200φ、ドクターロール径:160φ、送りロール径:200φ、塗工ロール温度:80℃、ドクターロール温度:80℃、塗工ロール周速度:12m/分、ドクターロール周速度:0.3m/分、ギャップGの間隔:200μm、送りロール周速度:5m/分
そして、5m/分で送られる離形紙の表面に、上記条件のリバースロールコーターを用いてウレタン塗膜を40分間連続して形成した。なお、ウレタン塗膜はライン上に設けられた加熱装置で120℃、90秒間の条件で加熱することにより架橋させた。このとき、連続塗布1分後のウレタン塗膜の塗布量は255g/m2であり、連続塗布40分後のウレタン塗膜の塗布量は250g/m2であった。また、40分後にドクターロール表面を目視で確認したところ樹脂被膜は付着していなかった。
そして、連続運転中のドクターロール表面の状態、及び連続運転終了後のドクターロール表面の樹脂除去性を以下の基準で評価した。
[運転中のドクターロール表面の状態]
連続運転中のドクターロールの表面状態を目視で観察し以下の基準で判定を行った。
A:架橋性ホットメルト型ウレタン樹脂の付着がほとんど生じない
B:架橋性ホットメルト型ウレタン樹脂の付着が若干生じる
C:架橋性ホットメルト型ウレタン樹脂の付着が著しく生じる
[運転終了後のドクターロール表面の樹脂除去性]
連続運転終了後に、ドクターロール表面を清浄化するときの困難性を評価した。
A:付着した樹脂をネル生地で拭くだけで簡単に除去できる
B:ネル生地で拭くだけで除去できるが、除去に時間がかかる
C:ネル生地で拭くだけでは除去できず、溶剤を用いて溶解除去する必要があった
[実施例2〜4、比較例1〜3]
表1に示すように、ギャップGの間隔、塗工ロール周速度、ドクターロール周速度、架橋性ホットメルト型ウレタン樹脂の溶融粘度を変えた以外は実施例1と同様にしてウレタン塗膜を形成し、評価した。結果を表1に示す。
Figure 2011147859
1…シート基材、2…塗工ロール、3…ドクターロール、4…ロール、5…架橋性ホットメルト型ウレタン樹脂、6…貯留槽、7…ウレタン塗膜、8…加熱装置、9…ロール、10…リバースロールコーター

Claims (5)

  1. 送りロールにより一方向に送られるシート基材の表面に、塗工ロールとドクターロールとを備えたリバースロールコーターを用いて架橋性ホットメルト型ウレタン樹脂を塗布することにより、ウレタン塗膜を形成するウレタン塗膜形成方法であって、
    前記送りロールは、前記シート基材の下面と接触してその回転により前記シート基材を一方向に送り、
    前記塗工ロール及び前記ドクターロールは前記シート基材の上方に配置され、且つ、互いの外周面が平行になるような状態でギャップを維持して対向配置され、
    前記塗工ロールを前記シート基材の送り方向とは逆方向に周速度A(m/分)で回転させ、前記ドクターロールをシート基材の送り方向に周速度B(m/分)で回転させ、
    設定温度に加熱された前記塗工ロール及び前記ドクターロールが形成するギャップの上方から溶融粘度η(mPa・sec)の前記架橋性ホットメルト型ウレタン樹脂を流下し、前記塗工ロールの外周面表面に前記架橋性ホットメルト型ウレタン樹脂の層を付着させ、前記シート基材の表面に該層を転着させることによりウレタン塗膜を形成する場合において、
    前記溶融粘度ηが1000〜10000の範囲であり、前記ドクターロールの回転数が0.2〜5rpmの範囲であり、前記周速度Aと前記周速度Bとの比A/Bが10〜120の範囲であることを特徴とするウレタン塗膜形成方法。
  2. 前記塗工ロールの周速度Aが10〜50の範囲であり、前記ドクターロールの周速度Bが0.1〜2.5の範囲である請求項1に記載のウレタン塗膜形成方法。
  3. 前記架橋性ホットメルト型ウレタン樹脂が、100℃における溶融粘度が10000mPa・sec以下のホットメルト型ウレタンプレポリマー(A)と鎖伸長剤(B)と示差走査熱量測定により所定の発熱ピーク温度を示す感温性ウレタン化触媒(C)とを前記発熱ピーク温度に対して10〜30℃低い範囲の温度で加熱溶融混合することにより得られた樹脂である請求項1または2に記載のウレタン塗膜形成方法。
  4. 前記感温性ウレタン化触媒が1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセン-7の有機酸塩である請求項3に記載のウレタン塗膜形成方法。
  5. 前記ウレタン塗膜を感温性ウレタン化触媒(C)の前記発熱ピーク温度よりも高い温度で加熱する加熱処理工程をさらに備える請求項3または4に記載のウレタン塗膜形成方法。
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