JP2011146614A - 環状鉄心及び鉄心鋼板 - Google Patents

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Abstract

【課題】環状鉄心の剛性を大きくするとともに、鉄心鋼板において漏洩磁束により生じる渦電流を可及的に抑制する。
【解決手段】幅方向にずらして積み重ねることにより環状鉄心100を形成する鉄心鋼板2であって、幅方向断面が湾曲形状をなす湾曲部21と、当該湾曲部21の幅方向における外径側端部21aに連続して、当該湾曲部21の湾曲方向とは反対側に屈曲して形成された外径側屈曲部22とを有する。
【選択図】図3

Description

本発明は、例えば変圧器やリアクトルといった静止誘導機器、又は誘導発熱ローラ装置といった誘導発熱機器などの電磁誘導機器に用いられる環状鉄心及びその鉄心鋼板に関するものである。
例えば従来の誘導発熱ローラ装置は、回転するローラと、当該ローラの内部に配置された磁束発生機構とによって主として構成されており、この磁束発生機構は一般的に、固定された環状鉄心と、この鉄心に巻装された誘導コイルとによって構成されている。
そして、上記鉄心としては、図5に示すように、鉄心鋼板を巻回して構成した巻鉄心を用いている。しかしながら、この巻鉄心は、その鉄心鋼板と誘導コイルとが同方向に巻回されることから、鉄心鋼板自身が誘導コイルの二次巻線として作用し、その巻回方向に短絡電流が発生して鉄心が発熱してしまう。この短絡電流の発生を防止するために、巻鉄心の円周上にスリットを設ける必要がある。そうすると、巻鉄心自体の剛性が失われてしまい、自重による撓みが大きくなってしまうという問題がある。また、誘導コイルの励磁によって生じる漏洩磁束が鉄心鋼板をその厚さ方向に貫通することになるため、鉄心鋼板に渦電流が発生し、これが巻鉄心の発熱原因となる。巻鉄心が発熱すれば、巻鉄心の磁気特性が低下するばかりでなく、これに巻回されている誘導コイルの電気特性、絶縁特性等も低下してしまう。
一方、本出願人は上記問題点を解決するため、特許文献1及び特許文献2に示すように、湾曲部と、当該湾曲部の内端に連続して形成された屈曲部とによって鉄心鋼板を構成し、当該鉄心鋼板の複数を円筒状に積層してなる環状鉄心を発明している。この鉄心によれば、巻装された誘導コイルが励磁された際に、これによって生じる漏洩磁束が鉄心鋼板にその厚さ方向に貫通することを低減することができる。これにより、渦電流の発生を低減することができ、鉄心の磁気特性のみならず誘導コイルの電気特性、絶縁特性の低下が回避できるといった、多くの利点が得られる。
しかしながら、巻鉄心に比べて漏洩磁束による渦電流損失は低減されているものの、図6に示すように、鉄心の外周部分における鉄心鋼板の外部露出部(鉄心鋼板の外端面及び側面の一部)を磁束が通過する構成であるため、それら部分で渦電流が発生してしまい充分な渦電流損失の低減を図ることができない。
実用新案登録第2532986号公報 特開2000−311777号公報
そこで本発明は、上記問題点を一挙に解決するためになされたものであり、環状鉄心の剛性を大きくするとともに、鉄心鋼板において漏洩磁束により生じる渦電流を可及的に抑制することをその主たる課題とするものである。
すなわち本発明に係る環状鉄心は、幅方向断面が湾曲形状をなす湾曲部を有する複数の鉄心鋼板を、幅方向にずらして積み重ねることにより形成された環状鉄心であって、前記鉄心鋼板が、前記湾曲部の幅方向における外径側端部に連続して、当該湾曲部の湾曲方向とは反対側に屈曲して形成された外径側屈曲部を有し、当該外径側屈曲部が、環状鉄心の外周の接線に対して略直角となることを特徴とする。
このようなものであれば、鉄心鋼板が外径側屈曲部を有し、当該外径側屈曲部が、環状鉄心の外周部分において、その接線に対して略直角となるように構成されているので、誘導コイルによって生じる漏洩磁束が通過する部分が鉄心鋼板において径方向外側を向く端面のみとなり、漏洩磁束による渦電流を可及的に抑制することができる。また、外径側屈曲部が、湾曲部の湾曲方向とは反対側に屈曲していることにより、各鉄心鋼板の剛性を大きくすることができ、その鉄心鋼板を複数用いて構成された環状鉄心の剛性を大きくすることができる。さらに、環状鉄心を製造する過程においては、各鉄心鋼板の外径側屈曲部同士を係合させるように重ね合わせれば良いので、環状鉄心の製造作業を簡単にすることができる。その上、外径側屈曲部同士が係合することにより、鉄心鋼板が径方向に抜脱してしまうことを防止することができる。
さらに鉄心鋼板の剛性を大きくするとともに、各鉄心鋼板を積み重ねる作業を容易にするだけでなく、鉄心鋼板が径方向に抜脱してしまうことを一層好適に防止するためには、前記鉄心鋼板が、前記湾曲部の幅方向における内径側端部に連続して、当該湾曲部の湾曲方向と同方向に屈曲して形成された内径側屈曲部を有することが望ましい。
また、上記環状鉄心を構成する好適な鉄心鋼板としては、幅方向にずらして積み重ねることにより環状鉄心を形成する鉄心鋼板であって、幅方向断面が湾曲形状をなす湾曲部と、当該湾曲部の幅方向における外径側端部に連続して、当該湾曲部の湾曲方向とは反対側に屈曲して形成された外径側屈曲部とを有することを特徴とする。
このように構成した本発明によれば、環状鉄心の剛性を大きくするとともに、鉄心鋼板において漏洩磁束により生じる渦電流を可及的に抑制することができる。
本発明の一実施形態に係る環状鉄心の斜視図である。 同実施形態の環状鉄心の平面図である。 同実施形態の鉄心鋼板を示す断面図である。 変形実施形態に係る鉄心鋼板を示す断面図である。 従来の巻鉄心を示す斜視図である。 従来の環状巻鉄心を示す平面図及び部分拡大図である。
以下に本発明に係る環状鉄心の一実施形態について図面を参照して説明する。
本実施形態に係る環状鉄心100は、例えば樹脂フィルム、紙、布、不織布、金属箔などのシート材又はウエブ材の連続熱処理工程又は合成繊維の熱延伸処理工程等において用いられる誘導発熱ローラ装置の磁束発生機構に用いられるものである。
具体的にこのものは、図1及び図2に示すように、複数の鉄心鋼板2を、幅方向にずらして積み重ねることにより円筒状に形成されたものである。
鉄心鋼板2は、例えば表面に絶縁皮膜が施された方向性電磁鋼板(珪素鋼板)により形成されており、その板厚が例えば約0.3mmの長尺形状をなすものである。また、鉄心鋼板2は、長手方向(つまり、製品組み立て後における磁束通過方向)に磁束方向性が向くように形成されている。この鉄心鋼板2を用いることにより、磁気特性に優れた環状鉄心100を得ることができる。したがって、環状鉄心100の断面積を小さくすることができ、当該環状鉄心100を用いた磁束発生機構を小型化できるだけでなく、コイルに使用する電線量も低減することができる。
そしてこの鉄心鋼板2は、図3に示すように等断面形状をなすものであり、幅方向断面が湾曲形状をなす湾曲部21と、当該湾曲部21の幅方向における外径側端部21aに連続して形成された外径側屈曲部22と、湾曲部21の幅方向における内径側端部21bに連続して形成された内径側屈曲部23とを有する。
湾曲部21は、全体に亘って一定の曲率で湾曲しているもの、又は、連続して曲率が変化しながら湾曲するものが考えられ、例えばインボリュート曲線の一部を用いたインボリュート形状、部分円弧形状又は部分楕円形状などが考えられる。
外径側屈曲部22は、湾曲部21の湾曲方向とは反対側に屈曲して形成された概略平板状をなすものであり、湾曲部21に対する屈曲角度θは、例えば45度〜60度であり、環状鉄心100を組み立てた際に当該環状鉄心100の外周(つまり、環状鉄心100に外接する仮想円)の接線Lに対して略垂直となるように設定されている。つまり、外径側屈曲部の側面22xは、環状鉄心100の外周の接線Lに対して略垂直に配置され、外径側屈曲部の外端面22yは、接線Lに略平行に配置される。この外端面22yは、鉄心鋼板2の径方向外側を向く端面であり、切断加工された端面である。なお、外径側屈曲部22の幅方向長さは、環状鉄心2の組み立て後において、隣接する鉄心鋼板2の外径側屈曲部22の間隙を可及的に小さくするために短い方が良い。
内径側屈曲部23は、湾曲部21の湾曲方向と同方向に屈曲して形成された概略平板状をなすものであり、湾曲部21に対する屈曲角度θは特に限定されないが、例えば30度である。この内径側屈曲部23も前記外径側屈曲部22と同様に短い方が良い。このように鉄心鋼板に外径側屈曲部22及び内径側屈曲部23が形成されていることにより、鉄心鋼板2自体の剛性を大きくすることができると共に、環状鉄心100の組み立て後において、鉄心鋼板2が径方向外側に抜脱することを防止することができる。
次に、環状鉄心100の製造方法について簡単に説明する。所定の内径を有する円筒状の型を用意し、その内側周面に鉄心鋼板2を幅方向外径側端部(外径側屈曲部の外端部)を当接させつつ、内側周面に沿って順次積層していけば、環状鉄心100が構成される。このとき、鉄心鋼板2の湾曲部21により形成された凹部に、他の鉄心鋼板2の湾曲部21により形成された凸部を嵌め込むように、尚かつ各鉄心鋼板2が幅方向にずれるようにして、同一形状をなす多数枚の鉄心鋼板2を重ね合わせる。このようにして円筒形状をなす環状鉄心100が形成される。なお、積層された鉄心鋼板2の例えば内径側屈曲部23を溶接し、積層された鉄心鋼板2間に接着剤を含浸させ、又は別の固定部材を用いることにより環状鉄心100は一体化される。
より具体的には、鉄心鋼板2の湾曲部21及び外径側屈曲部22により形成される凸部が、他の鉄心鋼板2の湾曲部21及び外径側屈曲部22により形成される凹部に係合する。また、鉄心鋼板2の湾曲部21及び内径側屈曲部23により形成される凹部が、他の鉄心鋼板2の湾曲部21及び内径側屈曲部23により形成される凸部に係合する。これにより鉄心鋼板2の積層過程での積層崩れを防止することができ、また確実に積層することができる。また積層された鉄心鋼板2は、径方向に引き抜こうとしても係合している屈曲部22、23によって、その引き抜きが防止される。
このように構成された環状鉄心100において鉄心鋼板2は等価的に放射状に並べられたものとなり、これに誘導コイルを巻装しても短絡電流は発生しない。また、各鉄心鋼板2の外径側屈曲部22は、環状鉄心100の外周の接線Lに対して略垂直となり、巻装される誘導コイルにより生じる漏洩磁束は、実質的に外径側屈曲部22の外端面22yのみを通過するようになり、渦電流の発生を可及的に減少させることができる。
<本実施形態の効果>
このように構成した本実施形態に係る環状鉄心100によれば、鉄心鋼板2が外径側屈曲部22を有し、当該外径側屈曲部22が、環状鉄心2の外周部分において、その接線Lに対して略直角となるように構成されているので、誘導コイルによって生じる漏洩磁束が通過する部分が鉄心鋼板の外端面22yのみとなり、漏洩磁束による渦電流を可及的に抑制することができる。また、鉄心鋼板2が外径側屈曲部22及び内径側屈曲部23を有することにより、鉄心鋼板2自体の剛性を大きくすることができ、その鉄心鋼板2を複数用いて構成された環状鉄心100の剛性を大きくすることができる。
<その他の変形実施形態>
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
例えば、前記実施形態では、内径側屈曲部を有する鉄心鋼板を用いているが、図4に示すように、内径側屈曲部を有さない鉄心鋼板を用いても良い。この鉄心鋼板を用いた場合には、前記実施形態に比べて剛性の観点では劣るが、鉄心鋼板の加工を簡単にすることができる。
また、前記実施形態の環状鉄心は、誘導発熱ローラ装置の磁束発生機構に用いられるものであったが、その他の電磁誘導機器に用いても良いし、変圧器やリアクトル等の静止誘導機器に用いても良い。
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
100・・・環状鉄心
2 ・・・鉄心鋼板
21 ・・・湾曲部
21a・・・外径側端部
21b・・・内径側端部
22 ・・・外径側屈曲部
L ・・・外周の接線
23 ・・・内径側屈曲部

Claims (3)

  1. 幅方向断面が湾曲形状をなす湾曲部を有する複数の鉄心鋼板を、幅方向にずらして積み重ねることにより形成された環状鉄心であって、
    前記鉄心鋼板が、前記湾曲部の幅方向における外径側端部に連続して、当該湾曲部の湾曲方向とは反対側に屈曲して形成された外径側屈曲部を有し、当該外径側屈曲部が、環状鉄心の外周の接線に対して略直角となる環状鉄心。
  2. 前記鉄心鋼板が、前記湾曲部の幅方向における内径側端部に連続して、当該湾曲部の湾曲方向と同方向に屈曲して形成された内径側屈曲部を有する請求項1記載の環状鉄心。
  3. 幅方向にずらして積み重ねることにより環状鉄心を形成する鉄心鋼板であって、
    幅方向断面が湾曲形状をなす湾曲部と、当該湾曲部の幅方向における外径側端部に連続して、当該湾曲部の湾曲方向とは反対側に屈曲して形成された外径側屈曲部とを有する鉄心鋼板。
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