<第1の実施形態>
本発明に係る第1の実施形態について説明する。本第1の実施形態では、画像形成装置の内部に配置されたシート搬送装置のうち、シートの斜行補正を行う斜行補正装置への適用例について説明する。図6は、本実施形態における画像形成装置60の断面図であり、電子写真方式を用いたカラー画像形成装置を示したものである。
画像形成装置には、電子写真方式、オフセット印刷方式、インクジェット方式など複数の方式のものが挙げられるが、図6に示す画像形成装置60は、電子写真方式を用いたカラーの画像形成装置である。画像形成装置60は、4色の画像形成部613を中間転写ベルト606上に並べて配置した、所謂中間転写タンデム方式を採用したものであり、この方式は、転写部での厚いシート(厚紙)への対応力、搬送性やプリント生産性に優れる点から近年主流になっている。画像形成装置60は、シートSを搬送しながら斜行補正する斜行補正装置65を備えている。つまり、画像形成装置60は、シートに画像を形成する上記画像形成部613と、シートを画像形成部613に搬送するシート搬送装置としての斜行補正装置65とを備える。この斜行補正装置65の詳細については、後述する。
画像形成装置60の装置本体60aには、画像形成部613と、シートSを搬送するシート給送部101と、転写部103と、シートを搬送するシート搬送装置100とが設けられている。転写部103は、画像形成部613で形成されたトナー画像をシート給送部101により給送されたシートSに転写する。シート搬送装置100は、搬送ユニット64、レジストローラ対7を含む斜行補正装置65、定着前搬送部67、分岐搬送装置69、反転搬送装置601、両面搬送装置602等から構成されている。
画像形成部613は、シート搬送装置100によって搬送されるシートSに画像を形成する。画像形成部613は、それぞれ感光体ドラム608、露光装置611、現像装置610、一次転写装置607及び感光体クリーナ609等を備えたイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(Bk)の画像形成ユニットにより構成される。なお、画像形成部613の画像形成ユニットは、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(Bk)に対応する4セット分だけ存在するが、色数は4色に限定されるものではなく、また色の並び順も図6の記載に限定されるものではない。
シート給送部101は、シートSをリフタ62の上に積載される形で収納するシート収納部61と、シート収納部61に収納されたシートSを給送する給送部63とを備えている。なお、この給送部63としては、シート給送ローラ等による摩擦分離を利用する方式や、エアによる分離吸着を利用する方式等が挙げられるが、本実施形態では、エアによる給送方式を例に挙げている。
転写部103は、駆動ローラ604、テンションローラ605及び二次転写内ローラ603等のローラ類によって張架されて、図中矢印nの方向へと回転駆動される中間転写ベルト606を備えている。中間転写ベルト606は、一次転写装置607によって与えられる所定の加圧力及び静電的負荷バイアスにより、感光体ドラム608上に形成されたトナー像が転写される。中間転写ベルト606は、略対向する二次転写内ローラ603及び二次転写外ローラ66により形成される二次転写部において所定の加圧力と静電的負荷バイアスを与えられることでシートSに未定着画像を吸着させる。
[シートの搬送プロセス]
以上の構成を備えた画像形成装置60において、シートSは、シート収納部61内のリフタ62上に積載される形で収納されており、給送部63により画像形成タイミングに合わせて給送される。給送部63により送り出されたシートSは、搬送ユニット64が有する搬送パス64aを通過し、斜行補正装置65へと搬送される。この斜行補正装置65において斜行補正やタイミング補正を行った後、シートSは二次転写部へと送られる。二次転写部は、対向する二次転写内ローラ603及び二次転写外ローラ66により形成される、シートSへのトナー像転写ニップ部であり、所定の加圧力と静電的負荷バイアスを与えることでシートS上にトナー像を吸着させる。
[画像の作像プロセス]
次に、以上説明した二次転写部までのシートSの搬送プロセスに対して、同様のタイミングで二次転写部まで送られてくる画像の形成プロセスについて説明する。
即ち、予め帯電部により表面を一様に帯電され、図中の矢印m方向に回転する感光体ドラム608に対し、送られてきた画像情報の信号に基づいて露光装置611が駆動され、回折部612等を経由して静電潜像が形成される。感光体ドラム608上に形成された静電潜像は、現像装置610によるトナー現像を経て、感光体ドラム608上にトナー像として顕在化される。その後、一次転写装置607により所定の加圧力及び静電的負荷バイアスが与えられ、中間転写ベルト606上にトナー像が転写される。その後、感光体ドラム608上に僅かに残った転写残トナーは感光体クリーナ609により回収され、再び次の画像形成に備える。
上述したY、M、C及びBkに対応する画像形成部613によりそれぞれ並列処理される各色の画像形成プロセスは、中間転写ベルト606上に一次転写された上流色のトナー像上に重ね合わせるタイミングで行われる。その結果、最終的にはフルカラーのトナー像が中間転写ベルト606上に形成され、二次転写部へと搬送される。
[二次転写以降のプロセス]
以上、それぞれ説明したシートSの搬送プロセス及び画像形成プロセスを以って、二次転写部においてシートS上にフルカラーのトナー像が二次転写される。その後、このシートSは、定着前搬送部67により定着装置68へと搬送される。定着装置68は、対向するローラもしくはベルト等による所定の加圧力と、一般的にはヒータ等の熱源による加熱効果とを加えて、シートS上にトナー像を溶融固着させる。このようにして得られた定着画像を有するシートSは、分岐搬送装置69により、そのまま排紙トレイ600上に排出されるか、もしくは両面画像形成を要する場合には反転搬送装置601へと搬送されるかの経路選択が行われる。
両面画像形成を要する場合、反転搬送装置601に送られたシートSは、スイッチバック動作を行うことで先後端を入れ換える、両面搬送装置602へと搬送される。その後、給送部63より搬送されてくる後続ジョブのシートSとのタイミングを合わせて、搬送ユニット64が有する再給紙パス64bから合流し、同様に二次転写部へと送られる。裏面(2面目)の画像形成プロセスに関しては、上述した表面(1面目)の場合と同様であるため説明は省略する。
[斜送レジストレーション方式の説明]
画像形成装置60は、シートSの斜行を補正するために斜行補正装置65を有することは既に述べたが、本実施形態では、斜送ローラと突き当て基準部材を用いた斜送レジストレーション方式を用いている。その理由として、シートSを停止させることなく斜行補正が可能であるノンストップ方式である点と、両面プリント時に実行される前記スイッチバック動作においても位置が不変であるサイド辺を斜行補正の基準辺にとれる点とを挙げることができる。これらは、高生産性と高精度を実現する上で有利である
図7は、斜行補正装置65を含む搬送部について説明する平面図である。シートの搬送方向は図中の矢印F方向であり、上流側からレジスト前搬送部、斜行補正部、スライド部に分けられる。レジスト前搬送部は、搬送ガイド70、レジスト前搬送ローラ対71、レジスト前搬送センサ72等から構成されている。必要に応じてレジスト前搬送センサ72によるシートSの先端通過信号をトリガとして、シートSを一旦このレジスト前搬送部にて停止させるように構成してもよい。この構成は、次工程での斜送ローラによる搬送が矢印F方向とこれと直交する方向との2成分に分解されることと、突き当て基準部材への接触後は滑りを伴う搬送形態であること等に起因して搬送バラツキが比較的大きいことを踏まえている。これにより、給送部63によって給紙スタートしてからの長い搬送パス中に累積したタイミング誤差を一旦リセットしておくことができる。また、レジスト前搬送ローラ対71は、モータやカム等を用いた離間機構により搬送ニップが必要に応じて解除可能に構成されている。
また、斜行補正装置65は主に、可動ガイド74、駆動が伝達される駆動ローラである斜送ローラ75a〜75c、斜送センサ73及び突き当て基準部材76が一体になった可動ユニットと、固定ガイド77とから構成されている。本実施形態における画像形成装置60は、作像及び搬送の基準を中央に定めたセンター基準の画像形成装置である。上記可動ユニットは、搬送されるシートSのサイズに応じた最適な待機位置Pwに突き当て基準部材76の突き当て面が位置するように、不図示の駆動モータとボールネジ機構とによりシート搬送方向Fと直交する幅方向に自在に移動できる構成となっている。なお、図7では、斜送ローラ75a〜75cにそれぞれ対向配置して加圧される従動ローラである従動コロ6(図1参照)を図示省略している。本実施形態では、駆動ローラである斜送ローラ75a〜75cと従動ローラである従動コロ6とによって搬送ローラ対が構成されている。
ここで、最適な待機位置Pwとは、センター基準で定義される画像(或いはシート)の、シート搬送方向Fと直交する幅方向(主走査方向)の称呼端部位置Psに突き当てしろDを加えた位置を意味する。これは、センター基準で搬送されるシートSの主走査方向位置が搬送中にばらつくため、突き当て基準部材76の入口で激突することなく確実に沿わせるためのオフセット措置である。本実施形態では、突き当てしろD=10mmとしており、例えばA3サイズを通紙する場合であれば、搬送中心CTに対する称呼端部位置Ps=148.5mmであるから、最適な待機位置Pwは搬送中心CTから158.5mm離れた位置となる。また、斜送ローラ75a〜75cは、突き当て基準部材76への突き当て搬送成分を生じるように、搬送方向Fに対して所定の角度だけ傾けて配設されている。斜送ローラ75a〜75cによる斜送が開始された時、斜送センサ73がシートSの先端通過を検知すると、この検知信号をトリガとして、上流のレジスト前搬送ローラ対71は斜送動作を阻害しないように搬送ニップを解除させる。なお、ここでは斜送ローラ75a〜75cの個数を3つとしたが、この限りではない。
スライド部は主に、搬送ガイド703、レジストローラ対7、レジスト駆動ギヤ700、レジスト駆動モータ702、モータギヤ701、レジスト前センサ78、及びレジスト後センサ79によって構成される。レジストローラ対7は、レジスト駆動モータ702を駆動源として、シートを図7中の矢印F方向に搬送し得る方向に回転駆動される。更に、レジストローラ対7は、シート搬送方向(矢印F方向)と直交する幅方向(主走査方向)にローラ自体がスライド移動可能に支持されており、不図示のスライド駆動モータによりスライド駆動される。これは、上述したように、突き当て基準部材76に倣って斜行補正されたシートSが、称呼の画像位置に対して前記突き当てしろD分だけずれた状態となっているのを補正するためである。
即ち、前記突き当てしろD分だけオフセットしたシートSの主走査方向位置を中間転写ベルト606(図6)上の画像位置に対して合わせるために、レジストローラ対7がシートSを挟持搬送した状態のままスライド移動するというものである。このスライド移動を行うトリガとしては、レジスト前センサ78によるシートSの先端通過信号をトリガとすればよく、またモータギヤ701の歯幅もこのスライド移動の幅を考慮してレジスト駆動ギヤ700に対して広くとってある。なお、このスライド移動を行う際には、斜送ローラ75a〜75cは搬送ニップを解除する必要があるが、これについては後で詳細に説明することにする。
また、レジスト後センサ79によるシートSの先端通過信号は、シートSが下流の二次転写部へ到達するタイミングを調整するトリガとして用いられ、画像とシート先端との位置合わせが高精度に行われる。なお、二次転写部によってシートSが挟持搬送され始めると、レジストローラ対7は搬送ニップを解除すると共に、再び主走査方向のホームポジションまで逆方向にスライド移動して戻る。
[斜送ローラの詳細構成]
斜送レジストレーション方式では、突き当て基準部材76への接触を伴うため、薄紙のように剛度(剛性)が低下すればするほど座屈しやすくなり、逆に厚紙のように剛度が高くなればなるほど搬送力が不足してスリップが多くなりやすい。また、普通紙、グロスコート紙、マットコート紙等、シート表面の平滑性の違い等によっても斜行補正中の挙動が大きく変化する。そのため、斜送ローラ75a〜75cは、選択されたシートの種類に応じて搬送力を適宜最適な値に調整する必要がある。また、既に説明したように、斜行補正後はレジストローラ対7のスライド動作を阻害しないようにするため、一連の動作の中にニップ圧の解除動作を入れなければならない。
ここで、本実施形態における斜行補正装置65について詳細に説明する。図1は、斜行補正装置65の斜送ローラ75a〜75cのうちの1つを抜粋した斜視図であり、駆動機構、ニップ圧調整機構、ニップ圧解除機構を有するものである。図1に示すように、駆動ローラとしての斜送ローラ75は、タイミングベルト3(図1(a))、駆動プーリ4(図1(b))及びカップリング5等を介して、斜送駆動モータ2の回転駆動力を伝達される。更に、斜送ローラ75は、シート搬送方向に沿うように配置される対向位置の従動コロ(従動ローラ)6に対して所定角度だけ傾けて配置されている。
本実施形態では、斜送ローラ75の材質はウレタンゴム、従動コロ6には汎用のSUS製ベアリングを用いており、斜送ローラ75の傾斜角度は10[°]程度としている。この従動コロ6は、シート搬送方向に対して所定の角度だけ傾けて配置された斜送ローラを構成する。従動コロ6は、搬送力を発生させるため斜送ローラ75に対して加圧されており、その加圧力は、加圧アーム20及び加圧バネ9a,9bによって発生させられる。
L字型の加圧アーム部としての加圧アーム20は、駆動支板19に取り付けられた回動軸(回動支点)8を介して、駆動支板19に対して回動可能(回動自在)に支持されている。加圧アーム20は、回動軸(回動支点)8を挟んで設けられた第1アーム部20b及び第2アーム部20aを有している。これら第1、第2アーム部20b,20aは、回動軸8から直交する2方向に延びるように形成されている。第1アーム部20bの先端部には従動コロ6が回転可能に支持されており、第2アーム部20aには、回動軸8からの距離が異なる第1及び第2作用点が設けられている。つまり、回動軸8からの距離が異なる2点にはそれぞれバネ掛け部10a,10bが形成されており、バネ掛け部10aが第1作用点P1を構成し、バネ掛け部10bは第2作用点P2を構成する。また、駆動支板19における加圧アーム(加圧アーム部)20と対向する位置には圧可変解除モータ1が取り付けられており、圧可変解除モータ1のモータ軸13の先端部には、加圧アーム20と対向するスイッチアーム11が固定されている。
図2〜図4に示すように、スイッチアーム11は、加圧アーム20に対して所定間隔をあけて対向する回動可能な調整アームを構成している。このスイッチアーム11は、圧可変解除モータ1のモータ軸13から互いに逆方向に直線上に延びる、モータ軸(回動軸)13からの距離が互いに異なる突起部21a,21bを有している。圧可変解除モータ1は、スイッチアーム11の回動軸であるモータ軸13に回転力を与える調整モータを構成する。
突起部21aは、所定距離をあけて対向する加圧アーム20のバネ掛け部10aに向かって所定量突出して形成されており、突起部21bは、所定距離をあけて対向する加圧アーム20のバネ掛け部10bに向かって所定量突出して形成されている。突起部21a,21bの各モータ軸13寄りの近傍には、それぞれバネ掛け部12a,12bが設けられている。つまり、スイッチアーム(調整アーム)11には、モータ軸13を挟んで直線上に並びかつモータ軸13からの距離が互いに異なる第1係止部であるバネ掛け部12aと第2係止部であるバネ掛け部12bとが形成されている。
図1に示すように、加圧バネ9aがバネ掛け部12aとバネ掛け部10aとに一端と他端とをそれぞれ引掛けられており、加圧バネ9bがバネ掛け部12bとバネ掛け部10bとに一端と他端とをそれぞれ引掛けられている。加圧バネ9aは、加圧アーム20の第1作用点P1に対して付勢力(引張力)を付与する第1付勢力付与部材を構成し、加圧バネ9bは、第2作用点P2に対して付勢力(引張力)を付与する第2付勢力付与部材を構成している。第1付勢力付与部材である加圧バネ9aは、第1作用点P1とバネ掛け部(第1係止部)12aとに両端を係止された第1引張りバネである。また、第2付勢力付与部材である加圧バネ9bは、第2作用点P2とバネ掛け部(第2係止部)12bとに両端を係止された第2引張りバネである。このように、本実施形態における斜送ローラ75のニップ圧は、バネの張力とアームのてこ比によって発生させるものである。
図4に示すように、スイッチアーム11は、加圧アーム20と反対側(背面側)に、ホームポジションの位相を認識するためのフラグ部14が突出形成されている。このフラグ部14は、図1に示すように、駆動支板19の対向位置に突出形成された装着部19aに取り付けられたフォトインタラプタ15によって読み取られる。駆動支板19の図1における右側には支板22が固定されている。この支板22には、中央部分の上下左右において所定距離をあけた状態で、一対ずつの規制軸17がかしめ固定されている。一対ずつの規制軸17によってスライドアーム16a,16bが、それぞれに移動ガイドされている。
スライドアーム16aは、一対の規制軸17,17を摺動自在に嵌合する長穴16cを有し、スライドアーム16bは、別の一対の規制軸17,17を摺動自在に嵌合する長穴16dを有している。スライドアーム16a,16bは、各長穴16c,16dに一対の規制軸17,17をそれぞれ摺動自在に嵌合されることで、図1の左右方向に所定距離だけスライド移動するように規制されて支持される。スライドアーム16a,16bは、図1の正面視において加圧バネ9a,9bの掛かり位置と同じ高さにそれぞれ設けられている。
スライドアーム16a,16bは、図1における各左端部を支板22に係止した状態の引張りバネ18a,18bの各右端部を係止されることにより、それぞれ突起部21a,21bに向かう方向に付勢されている。これらスライドアーム16a,16bは、少なくとも図2(a)及び図3(a)に示す状態にあっては、各左端部が突起部21a,21bにそれぞれ当接している。この状態において、スライドアーム16a,16bの各右端部は、バネ掛け部10a,10bからそれぞれ間隙Ga,Gb(Ga<Gb)をあけて離間している。図2(a)、図3(a)に示す状態での間隙Ga,Gbの違いを出すためにスライドアーム16a,16bの長さを変え、後述するように、薄紙モードと厚紙モードとで圧可変解除モータ1の制御量(回転角度)の大きさを同じにするように構成している。
なお、本実施形態では、スイッチアーム(調整アーム)11及び圧可変解除モータ(調整モータ)1によって調整駆動部が構成されている。この調整駆動部は、加圧バネ9a,9bの作動長変化を選択的に切換え、加圧バネ9a,9bの一方の付勢力を増加させながら他方の付勢力を減少させて、従動コロ6の斜送ローラ75への加圧力を調整する。
[ニップ圧の可変及び解除制御]
まず、システム構成及び制御の流れについて説明する。即ち、上述した図1の駆動機構、ニップ圧調整機構、ニップ圧解除機構を制御するために必要なシステム構成を、図8のブロック図に示す。本実施形態において、斜送ローラ75のニップ圧を可変に制御すると共に、必要に応じてニップ圧を解除する動作を行うのは圧可変解除モータ1である。
図8に示すように、画像形成装置60に備えられ、演算部及び制御部としてのCPU92は、圧可変解除モータ1に具体的な制御指令を行い、予めオペレータが操作部90から指定したシートの種類に関する情報を受ける。そして、メモリ91内に格納されているテーブルから最適なニップ圧設定を参照して、制御値を決定する。なお、シートの種類としては、銘柄、坪量、コート層の有無、サイズ等が挙げられる。ここで制御値とは、具体的には、圧可変解除モータ1の回転方向及び回転角(パルスモータであればパルス数でも可)を指す。ニップ圧の解除動作については、レジスト前センサ78の先端通過信号及び後端通過信号をトリガに、CPU92がタイマカウントを行い、シートのレジストローラ対7への到達タイミング又は抜けタイミングに応じて圧可変解除モータ1に制御値指令を出す。
次に、CPU92が実行する具体的な制御指令の流れについて、図9に示したフローチャートを用いて説明する。即ち、ジョブスタート(S100)に際して、実際のプリントジョブに使用されるシートの種類がオペレータによって選択される。この選択動作は操作部画面のUIから行われるものであり、例えばシートの坪量、コート層の有無、サイズ等の斜送ローラ75の搬送性に大きく関わるパラメータを順に案内するような形式になっている。或いは、オペレータが頻繁に使用するシートがある場合には、その銘柄の情報を予め登録及び編集することが可能であり、それを呼び出して選択するような形式でも構わない。
このように、操作部90から入力されたメディア選択情報を認識(S101)すると、予めメモリ91内に格納されているテーブルから最適なニップ圧設定の情報を参照しに行く(S102)。ここでテーブルは、先程の選択パラメータに基づいて複数のグループにカテゴライズされており、各グループごとに最適なニップ圧を発生させる圧可変解除モータ1の制御値が割り当てられているものである。
こうして取得された制御値に基づいて、圧可変解除モータ1の回転方向及び回転角度の信号を生成し、圧可変解除モータ1を該当する設定モードに制御するための駆動制御を行う(S103)。この時点で、斜送ローラ75のニップ圧は、選択されたシートに合わせてスタンバイされた状態となり、斜送駆動モータ2を回転駆動させる(S104)ことで、シートを突き当て基準部材76に突き当てながら斜行補正を行う。突き当て基準部材76に倣って斜行が補正されたシートの先端が、図7に示したレジスト前センサ78により検知される(S105)と、タイマカウンタが作動して、シート先端がレジストローラ対7に到達するタイミングを演算する。更に、所定時間後に圧可変解除モータ1に与える制御値をニップ圧解除モードに変更する(S106)。
具体的には、圧可変解除モータ1の回転角度を、シート搬送時に使用する調整レンジよりも大きな値まで増加させる制御を行うが、これに関しては図2乃至図5を用いて詳細に後述する。斜送ローラ75のニップ解除後、シートはレジストローラ対7により搬送され、後端がレジスト前センサ78で検知される(S107)と、次ページのジョブがある際(S108)には、再び圧可変解除モータ1の制御値をテーブルの設定値に戻す(S103)。これにより、斜送ローラ75は加圧状態に入る。以上を、プリントジョブの全ページにわたって繰り返し、ジョブが終了する(S109)。
次いで、シートに応じた設定モードの詳細について説明する。即ち、図9のフローチャートで説明したステップS103の動作について、更に詳細に説明する。図2は坪量が小さく、剛度(剛性)が低いシートが選択された際(以下、薄紙モードと呼ぶ)の動作、図3は坪量が大きく、剛性が高いシートが選択された際(以下、厚紙モードと呼ぶ)の動作を示すものであり、図1に示した構成図の断面図に相当する。
本実施形態において、加圧アーム20は、回動軸8から従動コロ6の回転中心までの距離がLである第2アーム部20bと、回動軸8からバネ掛け部10a,10bまでの距離がそれぞれx1,x2(x1<x2)である第2アーム部20aとから構成されている。また、スイッチアーム11は、図2(a)及び図3(a)に示すように、バネ掛け部12aとバネ掛け部12bとを結ぶ軸線S0がシート搬送方向(同図の左右方向)に対して直交する位相(同図の上下方向(例えば鉛直方向))をホームポジションとする。スイッチアーム11に備えた突起部21a,21bは、いずれも等しい凸量に形成されており、これら突起部21a,21bに向かうようにスライドアーム16a,16bが付勢されている。なお、図2及び図3では、説明の都合上、加圧バネ9a,9b及び引張りバネ18a,18bの図を省略しているが、実際には図1で説明したような構成で引掛けられている。
引き続き、スイッチアーム11の詳細について図4を用いて説明する。スイッチアーム11は、回動中心である圧可変解除モータ1のモータ軸13から距離y1の位置にバネ掛け部12aを、モータ軸13から距離y2の位置にバネ掛け部12bをそれぞれ有している。バネ掛け部12a,12bを結ぶ軸線S0は、モータ軸13の中心を通るものとなっている。バネ掛け部12a,12bの近傍に設けられた突起部21a,21bは、モータ軸13からの各距離が相対的にy1:y2の比率となっている。圧可変解除モータ1の回転方向を、図4において向かってCCW方向(反時計回り方向)を正と定義するとき、+αの角度に相当する厚紙モードの調整レンジと、−αの角度に相当する薄紙モードの調整レンジとが、選択的に切り換え可能となる。そして、軸線S0から+αの角度の軸線S2が厚紙調整限界となり、軸線S0から−αの角度の軸線S1が薄紙調整限界となる。更に、圧可変解除モータ1の回転角度(絶対値)を±αよりも大きくすると、薄紙モード及び厚紙モードからレンジアウトし、いずれもニップ圧解除モードに切り換わるようになっている。
以上のように、本実施形態では、第2作用点P2の回動軸(回動支点)8からの距離x2が、第1作用点P1の回動軸8からの距離x1よりも大きく設定されている。そして、バネ掛け部(第2係止部)12bのモータ軸(回動軸)13からの距離y2が、バネ掛け部(第1係止部)12aのモータ軸13からの距離y1よりも大きく設定されている。
図2(b)は、ちょうど圧可変解除モータ1を角度−αだけ回転させた薄紙モードの最大調整時を表した図であり、軸線S0が軸線S1まで傾けられている。この際、図2(a)に示した普通紙モードの状態(調整駆動部の基準圧状態)から、図2(b)に示した薄紙モードに移行していくと、バネ掛け部10aとバネ掛け部12aとの間の距離(軸間距離、間隙Ga)が広がる。同時に、バネ掛け部10bとバネ掛け部12bとの間の距離(軸間距離、間隙Gb)が縮まる方向に変化する。そして、突起部21bがスライドアーム16bの一端部(左端部)を押圧することにより、スライドアーム16bは、その長穴16dを一対の規制軸17,17でガイドされながら横方向(図の左右方向)にスライドする。薄紙モードの調整限界(−α)は、スライドアーム16bの他端部(右端部)がバネ掛け部10bの側面に接触するまでの範囲と定められており、図2(b)に示すスライドアーム16bの位置が限界位置となる。このように、バネ掛け部12aと第1作用点P1との間の距離をバネ掛け部12bと第2作用点P2との間の距離よりも大きくするスイッチアーム11の回動角が、上記調整駆動部(1,11)の基準圧状態よりも低圧の低圧調整レンジ(薄紙モード)とされる。
この際、スライドアーム16aは、長穴16cが一対の規制軸17,17に摺動自在に嵌合することにより図の左方への移動を所定位置で規制された状態でスライドするため、突起部21aはスライドアーム16aの一端部(左端部)から離間していく。更に、図2(c)は、薄紙モードにおける加圧状態からニップ圧解除モードに切り換わった状態を示した図であり、圧可変解除モータ1の回転角度は−αRとなり、軸線S1から更に同方向に傾いた軸線SRとなる。このとき、突起部21bは更にスライドアーム16bの一端部を押圧することになるため、加圧アーム20は、従動コロ6を斜送ローラ75から離間させる方向に回動させられて、ニップ圧を解除する。つまり、スイッチアーム11が上記低圧調整レンジを超えて回動すると、従動コロ6が斜送ローラ75から離間した搬送ニップ解除状態となる。
一方、厚紙モードの場合、スイッチアーム11の回転方向は逆になるが、基本的な原理は同様である。図3(a)は図2(a)に示した状態と同じ普通紙モードの状態(調整駆動部の基準圧状態)であり、スイッチアーム11は軸線S0の位相にある。つまり、バネ掛け部(第1係止部)12aと第1作用点P1との間の距離とバネ掛け部(第2係止部)12bと第2作用点P2との間の距離とを等しくするスイッチアーム11の回動角を、上記調整駆動部(1,11)の基準圧状態としている。
図3(b)は圧可変解除モータ1を角度+αだけ回転させた厚紙モードの最大調整時を表した図であり、軸線S0が軸線S2まで傾けられている。図3(a)の状態から図3(b)の状態に移行していくと、バネ掛け部10aとバネ掛け部12aとの間の距離(軸間距離、間隙Ga)が縮まり、バネ掛け部10bとバネ掛け部12bとの間の距離(軸間距離、間隙Gb)が広がる方向に変化する。そして、突起部21aがスライドアーム16aの一端部を押圧し、スライドアーム16aの他端部がバネ掛け部10aの側面に接触するまでを調整レンジとしてスライド移動する。このように、バネ掛け部12aと第1作用点P1との間の距離をバネ掛け部12bと第2作用点P2との間の距離よりも小さくするスイッチアーム11の回動角が、上記調整駆動部(1,11)の基準圧状態よりも高圧の高圧調整レンジ(厚紙モード)とされる。
更に、図3(c)は、厚紙モードにおける加圧状態からニップ圧解除モードに切り換わった状態を示した図であり、圧可変解除モータ1の回転角度はαRとなり、軸線S2から更に同方向に傾いた軸線SRとなる。このとき、突起部21aは更にスライドアーム16aの一端部を押圧することになるため、加圧アーム20は、従動コロ6を斜送ローラ75から離間させる方向に回動させられて、ニップ圧を解除する。つまり、スイッチアーム11が上記高圧調整レンジを超えて回動すると、従動コロ6が斜送ローラ75から離間した搬送ニップ解除状態となる。
本実施形態では、薄紙モードと厚紙モードとで圧可変解除モータ1の制御量(回転角度)の大きさを同じにするようにスライドアーム16a,16bの長さを変えている。これにより、図3(a)(図2(a)も同様)に示した普通紙モードにおいて、間隙Gaと間隙Gbとの比が、回動軸8からバネ掛け部10a,10bまでの距離x1とx2との比に等しくなるようになっている。
以上に説明した普通紙モード(基準圧状態)、薄紙モード(低圧調整レンジ)、厚紙モード(高圧調整レンジ)、そしてニップ圧解除モードにおけるニップ加圧力F(加圧力)の変化をグラフに示すと、図5のようになる。図5は、横軸に加圧バネ9aの普通紙モードからの変位d1をとり、縦軸に斜送ローラ75のニップ加圧力をとったものである。本実施形態では、加圧バネ9a,9bは同じバネ(バネ定数:k)を使用しており、図2(a)または図3(a)に示した普通紙モード時の自然長からの変位をd0とするとバネ張力Tはそれぞれ、式(1)、式(2)のようになる。
式(1)及び式(2)、更に加圧アーム20のてこ比から、このとき従動コロ6を斜送ローラ75に対して押し付ける力、即ちニップ加圧力(総圧)F0は、式(3)となる。
この値は図5に示した点50(d1=0のとき)に相当する。スイッチアーム11の回転角度がαであるとき、バネ掛け部12a,12bの水平方向変位(即ち加圧バネ9a,9bの変位)d1,d2はそれぞれ、式(4)、式(5)となる。
したがって、式(6)で表される。
以上から、薄紙モードの場合について考えると、加圧バネ9aはd1の伸び、加圧バネ9bはd2の縮みになるから、バネ張力Tはそれぞれ、式(7)、式(8)となる。
したがって、ニップ加圧力(総圧)は、式(9)のように変化する。
すなわち、図5に示した点50と点51とを通る直線で表され、前記薄紙モードの調整限界である−αの時の変位d1maxを境にニップ圧解除モードに移行するため、点51から点53に低下し、以降F=0となる。
同様に厚紙モードについて考えると、加圧バネ9aはd1の縮み、加圧バネ9bはd2の伸びになるから、バネ張力Tはそれぞれ、式(10)、式(11)となる。
したがって、ニップ加圧力(総圧)F2は、式(12)のように変化する。
すなわち、図5に示した点50と点52とを通る直線で表され、同様に前記厚紙モードの調整限界であるαの時の変位d1maxを境にニップ圧解除モードに移行するため、点52から点53に低下し、以降F=0となる。
このように、薄紙モード及び厚紙モードは、或る調整レンジ内で直線的にニップ加圧力(加圧力)を変化させることが可能である。このため、例えば薄紙モードの中でも坪量52g/m2紙、64g/m2紙、80g/m2紙のように、更に細かくニップ加圧力を調整することができる。勿論、厚紙モードの中でも同様に細かく調整することが可能である。
以上のように、本実施形態では、本発明を斜行補正装置65に適用したので、加圧アーム20のてこ比を選択的に切り換えることで、薄紙モードと厚紙モードとを実現することができる。これは、画像形成装置60の仕様に含まれるシートの種類がより薄いものからより厚いものまで広がれば広がるほど、加圧バネ9a,9bの作動長やバネ定数を極端に増加させて対応しなくても済む。このため、装置の小型化やバネの製造バラツキによるニップ加圧力の不安定さを解消する効果が顕著に得られる。
また、2つのバネとして加圧バネ9a,9bを使用する分、基本的にバネ定数はより小さくできるため、バネの製造バラツキ(一般的に±10%程度)の影響を受けにくい系を構築することができる。これらの結果、斜送レジストレーション方式及びこれを備えた画像形成装置60のメディア対応力の向上を省スペースかつ安定的に実現させることができる。また、薄紙モード及び厚紙モードとも、調整レンジの延長上にニップ圧解除モードをそれぞれ有することで、図9に示したステップS103及びS106の切り換え時間を短縮する効果が得られ、画像形成装置の生産性向上にも貢献することができる。
<第2の実施形態>
本発明に係る第2の実施形態では、画像形成装置60の内部に設けられたシート搬送装置のうち、シートにカールを付与するカール付け装置への適用例について説明する。本実施形態の画像形成装置60は、シートに画像を形成する画像形成部613(図6参照)と、シートを画像形成部613に搬送するシート搬送装置としてのカール付け装置(図6には不図示)とを備える。
図10は、シートにコシ付けすることでカールを付与するカール付け装置48の主要構成部品を示した斜視図である。具体的には、図6に示した画像形成装置60の排紙部88或いは両面搬送部89等のローラ対として設けられる。シートは、定着装置68の熱及び圧力によって収縮したり、或いはコシ付けされたりすることでカールを生じ、排紙トレイ600上への積載不良、画像形成装置60に装着されるフィニッシャーとの受け渡し不良、両面搬送中の角折れやジャム等の問題を引き起こす。図10に示したカール付け装置48は、これらのカールを相殺する方向にカールを付与することで、定着装置68の通過によって生じたカールを矯正するものである。画像形成装置60の構成及び動作については、第1の実施形態で説明したものと同じであるため、ここでは省略する。
[カール付け装置の詳細構成]
図10に示したカール付け装置48は、対向するスポンジローラ81と金属ローラ82によって搬送ニップを形成し、カール付けと搬送の両方の機能を備えたものである。本実施形態では、駆動ローラであるスポンジローラ81と従動ローラである金属ローラ82とにより、シートに所定の方向のカールを付与するカール付けローラとしての搬送ローラ対が構成されている。
ここで、本実施形態では金属とスポンジの組み合わせとした。しかし、基本的には硬度差が大きい2つのローラを加圧することで相対的に硬度の低いローラに硬度の高いローラを侵入させることでコシ付けを行うため、所望の侵入量が得られれば他の材質の組み合わせでも構わない。駆動ローラとしてのスポンジローラ81は、搬送駆動モータ80の駆動力がプーリ及びタイミングベルト3等の駆動機構によって伝達されることで図中の矢印A方向に回転する。なお、スポンジローラ81はローラ軸の両端を前後側板に設けられた軸受けによって回転可能に支持されているが、図10では説明の都合上、前後側板は省略した図としている。
一方、スポンジローラ81に対向及び加圧される金属ローラ82は、ローラ軸の両端が、加圧アーム20が有する第1アーム部20bの端部によって回転可能に支持されている。加圧アーム20は、第1の実施形態で説明した斜送ローラの構成と同じものであり、回動軸8と、この回動軸8からの距離が異なる2つのバネ掛け部10a,10bを備えた第2アーム部20aとを有している。バネ掛け部10aと、スイッチアーム11が有するバネ掛け部12aとには、加圧バネ9aの両端部が引掛けられている。また、バネ掛け部10bと、スイッチアーム11が有するバネ掛け部12bとには、加圧バネ9bの両端部が引掛けられている。
以上のように、本実施形態では、第1の実施形態で説明したものと基本的に同じ圧可変機構87を有し、これを金属ローラ82の両端部に2セット配置した構成となっている。なお、スイッチアーム11の位相は、フラグ部14をフォトインタラプタ15(図1参照)によってホームポジションを認識することで管理されている。2つのスイッチアーム11の回動中心は連結軸(調整アームの回動軸)86によって一体的に構成されており、この連結軸86には圧可変駆動ギヤ85が設けられている。圧可変駆動ギヤ85には調整モータである圧可変モータ83のモータギヤ84が噛合しており、任意の回転方向及び回転角度に制御可能となっている。上記2つの圧可変機構87及び圧可変モータ83は、前後側板やモータ支板、或いはステー部材等のユニット筐体を構成する部品によって支持されているが、図10では説明の都合上、省略した図としている。
以上説明した圧可変機構87により、金属ローラ82がスポンジローラ81に対して侵入量を有する形態で加圧され、搬送ニップを形成する。その結果、金属ローラ82は図中の矢印B方向に従動回転し、矢印C方向にシートを搬送しながらカール付けを行うことができる。
[ニップ圧の可変制御]
ここで、システム構成及び制御の流れについて説明する。即ち、本実施形態では、圧可変モータ83の回転方向及び回転角度を制御することで、金属ローラ82の侵入量を調整する。図11はそのために必要なシステム構成を示したブロック図であり、図12は、そのうちのCPU(演算部及び制御部)92が実行する制御の流れを示したフローチャートである。
つまり、シートに発生するカールは、坪量、コート層の有無、繊維のすき目等、シートの種類に依存したパラメータと、水分含有量に影響を与える温度、湿度等の環境に依存したパラメータによって変化する。そのため、画像形成装置60の内部には環境センサ110が設けられており、温度及び湿度の検知情報がCPU92によって認識される(図12のS121)。また、シートの情報に関しては、オペレータが操作部90から選択した情報(メディア選択情報)をCPU92が認識することで取得される(図12のS122)。これらの情報をもとに、CPU92は、メモリ91内に予め格納されているテーブルを参照し、最適な金属ローラの侵入量を実現するための制御値(圧設定情報)を取得(参照)する(図12のS123)。
ここで侵入量を変化させるとは、即ちニップ加圧力を変化させることになるため、具体的に制御値とは圧可変モータ83の回転方向及び回転角度になる。従って、前記テーブルはシートの種類に依存したパラメータ及び環境に依存したパラメータと、圧可変モータ83の回転方向及び回転角度の対応表に相当するものとなる。以上の要領で取得された制御値に基づいてCPU92が圧可変モータ83に指令を出し、圧可変モータ83を該当する設定モードに制御することで、金属ローラ82の侵入量が最適に制御されてスタンバイされる(図12のS124)。その後、搬送駆動モータ80を回転駆動させると、シートを搬送しながら状況に応じた最適なカール付けを行うことができるようになる(図12のS125)。
次に、シートに応じた設定モード(S124)の詳細について説明する。図12に示した制御フローS124の詳細な動作については、第1の実施形態で説明した制御フローS103(図9参照)と基本的に同じであり、図2乃至図5に示した動作及びニップ加圧力の調整レンジを有する。第1の実施形態と異なる点としては、カール付け装置の場合にはニップ圧解除モードは必ずしも必要ではないという点である。この場合には、スライドアーム16a,16b、規制軸17の部品を削減し、図2(b)及び図3(b)に示した調整レンジを両回転方向の上限として圧可変モータ83を制御すればよい。もちろん、第1の実施形態と同様にスライドアーム16a,16b、規制軸17を用いれば、図2(c)及び図3(c)に示すニップ圧解除モードが実現できるため、画像形成装置の搬送シーケンス上必要があれば容易に対応できる。
本実施形態では、スイッチアーム(調整アーム)11及び圧可変モータ(調整モータ)83によって調整駆動部が構成されている。この調整駆動部は、加圧バネ9a,9bの作動長変化を選択的に切換え、加圧バネ9a,9bの一方の付勢力を増加させながら他方の付勢力を減少させて、金属ローラ82のスポンジローラ81への加圧力を調整する。
なお、本実施形態では、図10に示すように金属ローラ82を従動加圧する構成としたが、もちろんスポンジローラを従動加圧する構成にすることも可能である。また、図10は従動加圧するローラが1本の系としたが、図13に示すように、駆動側のローラ130に対して従動加圧されるローラが2本(131a及び131b)の系でも構わない。この構成は、加圧バネ132によって決まる侵入量がもたらす矯正効果と、2つの従動ローラ131a,131bが挟持することによる湾曲効果を合わせ持つものである。そしてこの構成は、搬送ガイド133によって案内されてきたシートにより大きなカール付け効果をもたらす系であるが、個々の従動ローラ131a,131bの加圧構成に、図10に示した圧可変機構87を用いればよいため、基本的には同じである。
以上のように、本発明をカール付け装置48に適用すれば、加圧アーム20のてこ比を選択的に切り換えることにより薄紙モードと厚紙モードとを実現することができる。これは、画像形成装置の仕様に含まれるシートの種類がより薄いものからより厚いものまで広がれば広がるほど、加圧バネの作動長やバネ定数を極端に増加させて対応しなくても済む。このため、装置の小型化やバネの製造バラツキによるニップ加圧力の不安定さを解消する効果が顕著に得られる。また、2つのバネを使用する分、基本的にバネ定数はより小さくできるため、バネの製造バラツキ(一般的に±10%程度)の影響を受けにくい系を構築することができる。また、カールに関してはメディア起因だけでなく、温度・湿度等の環境起因もあるため、画像形成装置60の動作環境についても許容範囲を広げる効果が得られる。これらの結果、カール付け装置48及びこれを備えた画像形成装置60のメディア対応力及び環境対応力を向上させることができる。