JP2011134705A - 非水電解液、それを用いた電気化学素子、及びそれに用いられるトリアルキルシリルオキシ基含有化合物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】一般式(I)で表されるトリアルキルシリルオキシ基含有化合物の少なくとも1種が非水電解液中に0.01〜10質量%含有されていることを特徴とする非水電解液及び電気化学素子。
(式中、Xは直鎖又は分枝のアルキレン基、置換基を有する直鎖又は分枝のアルキレン基、直鎖又は分枝のアルケニレン基、直鎖又は分枝のアルキニレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基、又はエーテル結合を含む2価の連結基を表し、R1〜R3は直鎖又は分枝のアルキル基であり、R4は直鎖又は分枝のアルカンスルホニル基、ホルミル基、直鎖又は分枝のアシル基、直鎖又は分枝のアルコキシカルボニル基を表す。)
【選択図】 なし
Description
特に地球温暖化防止のため、CO2排出量を削減することが急務となっており、リチウム二次電池やキャパシタなどの電気化学素子からなる蓄電装置を搭載した環境対応車の中でも、ハイブリッド電気自動車(HEV)、プラグインハイブリッド電気自動車(PHEV)、バッテリー電気自動車(BEV)の早期普及が求められている。しかしながら自動車は移動距離が長いため、熱帯の非常に暑い地域から極寒の地域まで幅広い温度範囲の地域で使用される可能性がある。従って、これらの車載用の電気化学素子は、高温から低温まで幅広い温度範囲で使用しても電気化学特性が劣化しないことが要求されている。
尚、本明細書において、リチウム二次電池という用語は、いわゆるリチウムイオン二次電池も含む概念として用いる。
また、負極としては、金属リチウム、リチウムを吸蔵及び放出可能な金属化合物(金属単体、酸化物、リチウムとの合金等)や炭素材料が知られており、特にリチウムを吸蔵及び放出することが可能なコークス、人造黒鉛、天然黒鉛等の炭素材料を用いたリチウム二次電池が広く実用化されている。
更に、リチウム金属やその合金、スズ又はケイ素等の金属単体や酸化物を負極材料として用いたリチウム二次電池は、初期の容量は高いもののサイクル中に微粉化が進むため、炭素材料の負極に比べて非水溶媒の還元分解が加速的に起こり、電池容量やサイクル特性のような電池性能が大きく低下することが知られている。また、これらの負極材料の微粉化や非水溶媒の分解物が蓄積すると、負極へのリチウムの吸蔵及び放出がスムーズにできなくなり、特に高温サイクル後の低温特性が低下しやすくなる。
一方、正極として、例えばLiCoO2、LiMn2O4、LiNiO2、LiFePO4等を用いたリチウム二次電池は、非水電解液中の非水溶媒が充電状態で高温になった場合に、正極材料と非水電解液との界面において、局部的に一部酸化分解することにより発生した分解物やガスが電池の望ましい電気化学的反応を阻害するため、やはりサイクル特性等の電池性能の低下を生じることが分かっている。
特許文献1には、ハロゲン原子を有する環式炭酸エステル誘導体と、酢酸トリメチルシリルやエチレングリコールビス(トリメチルシリルエーテル)などのようなトリアルキルシリル基が酸素(O)を介してケイ素以外の原子と結合した化合物とを含む電解液が開示され、電極反応物質を吸蔵および放出することが可能であり、構成元素として金属元素および半金属元素のうち少なくとも1種を含む材料を含有する負極を使用した電池において23℃環境下でのサイクル特性が向上できることが示されている。
また、特許文献2には、2−ブチン−1,4−ジオール ジアセテートを非水電解液中に1体積%配合したリチウムイオン二次電池において、20℃及び60℃のサイクル特性を向上できることが開示されている。更に特許文献3には、2−ブチン−1,4−ジオール ジメタンスルホネートを電解液に対して1重量%添加したリチウムイオン二次電池において、20℃のサイクル特性が向上することが開示されている。
さらに、近年、電気自動車用又はハイブリッド電気自動車用の新しい電源として、出力密度の点から、活性炭等を電極に用いる電気二重層キャパシタ、エネルギー密度と出力密度の両立の観点から、リチウムイオン二次電池と電気二重層キャパシタの蓄電原理を組み合わせた、ハイブリッドキャパシタ(リチウムの吸蔵・放出による容量と電気二重層容量の両方を活用する非対称型キャパシタ)と呼ばれる蓄電装置の開発が行われ、高温サイクル後の低温特性の向上が求められている。
そこで、本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ね、非水溶媒に電解質塩が溶解されている非水電解液において、トリアルキルシリルオキシ基と炭化水素基を介してホルミルオキシ基(−OC(=O)H)、アシルオキシ基(−OC(=O)−R)、アルコキシカルボニルオキシ基(−OC(=O)−O−R)、アルカンスルホニルオキシ基(−OS(=O)2−R)から選ばれる特定の官能基を結合したトリアルキルシリルオキシ基含有化合物を非水電解液に添加することで、高温サイクル後の低温特性を改善できることを見出し、本発明を完成した。
(1)非水溶媒に電解質塩が溶解されている非水電解液において、下記一般式(I)で表されるトリアルキルシリルオキシ基含有化合物の少なくとも1種が非水電解液中に0.01〜10質量%含有されていることを特徴とする非水電解液。
ただし、Xが−CR9R10−C≡C−CR11R12−の場合、R9〜R12は炭素数1〜6の直鎖又は分枝のアルキル基である。また、Xが炭素数2〜6の直鎖又は分枝のアルキレン基、置換基を有する炭素数2〜6の直鎖又は分枝のアルキレン基、炭素数2〜6の直鎖又は分枝の置換基を有するアルキレン基、炭素数4〜8の直鎖又は分枝のアルケニレン基、炭素数3〜8のシクロアルキレン基、炭素数6〜14のアリーレン基及びエーテル結合を含む炭素数2〜8の2価の連結基の場合、R5〜R7はメチル基、R8は炭素数1〜6の直鎖又は分枝のアルカンスルホニル基である。))
本発明の非水電解液は、非水溶媒に電解質塩が溶解されている非水電解液において、下記一般式(I)で表されるトリアルキルシリルオキシ基含有化合物の少なくとも1種が非水電解液中に0.01〜10質量%含有されていることを特徴とする。
酢酸トリメチルシリルのようなトリアルキルシリルオキシ基に直接カルボニル基が結合した化合物は、過度に分解して抵抗の高い被膜を負極上に形成し、高温サイクル後の低温特性が低下する問題がある。また、エチレングリコールビス(トリメチルシリルエーテル)のような炭化水素基を介して2つのトリアルキルシリルオキシ基を結合した化合物、あるいは、2−ブチン−1,4−ジオール ジアセテートなどのような炭化水素基を介して同一の官能基を2つ有する化合物は、被膜が緻密化しやすい為、高温サイクル後の低温特性を改善する効果が弱い。本願発明のトリアルキルシリルオキシ基含有化合物は、炭化水素基を介してトリアルキルシリルオキシ基とホルミルオキシ基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アルカンスルホニルオキシ基から選ばれる特定の官能基を結合した構造であり、2つの異なる官能基に由来した成分を含む為、被膜が過度に緻密化することが抑制される。更には、本願発明のトリアルキルシリルオキシ基含有化合物は、正極にも保護被膜を形成し、特に高温サイクルにおいて、正極上で電解液が分解されることを抑制できるため、高温サイクル後の正極の抵抗増加が抑制される。従って、高温サイクル後の低温特性が顕著に改善されると考えられる。特に、トリアルキルシリルオキシ基と特定の官能基との間の炭素鎖がアルキニレン基の場合、あるいは、特定の官能基がアルカンスルホニルオキシ基の場合、正極での電解液の分解が一段と抑制されるため、高温サイクル後の低温特性が更に改善する。
また、Xであるアルキニレン基としては、2−ブチン−1,4−ジイル基、2−ペンチン−1,5−ジイル基、3−ヘキシン−1,6−ジイル基、3−ヘキシン−2,5−ジイル基、2,5−ジメチル−3−ヘキシン−2,5−ジイル基等が好ましい。
また、前記アルカンスルホニル基の水素原子が1つ以上フッ素原子で置換されていてもよい。具体的には、トリフルオロメタンスルホニル基や2,2,2−トリフルオロエタンスルホニル基などが好ましい。
また、Xが前記段落〔0021〕〜〔0027〕記載のそれぞれの場合についても上記と同様に対応するトリアルキルシリル基含有化合物が好適に挙げられる。
2−(トリメチルシリルオキシ)エタン−1−イル メタンスルホネート、3−(トリメチルシリルオキシ)プロパン−1−イル メタンスルホネート、4−(トリメチルシリルオキシ)ブタン−1−イル メタンスルホネート、5−(トリメチルシリルオキシ)ペンタン−1−イル メタンスルホネート、4−(トリメチルシリルオキシ)−2−ブテン−1−イル メタンスルホネート、4−(トリメチルシリルオキシ)−2−ブチン−1−イル メタンスルホネート、4−(トリメチルシリルオキシ)−2−ブチン−1−イル トリフルオロメタンスルホネート、4−(トリメチルシリルオキシ)−2−ブチン−1−イル ホルメート、4−(トリメチルシリルオキシ)−2−ブチン−1−イル アセテート、メチル 4−(トリメチルシリルオキシ)−2−ブチン−1−イル カーボネート、2−(トリメチルシリルオキシ)フェニル メタンスルホネート、から選ばれる1種以上が更に好ましく、
4−(トリメチルシリルオキシ)−2−ブタン−1−イル メタンスルホネート、4−(トリメチルシリルオキシ)−2−ブテン−1−イル メタンスルホネート、4−(トリメチルシリルオキシ)ブチン−1−イル トリフルオロメタンスルホネート、4−(トリメチルシリルオキシ)ブチン−1−イル メタンスルホネート、4−(トリメチルシリルオキシ)ブチン−1−イル ホルメート、
4−(トリメチルシリルオキシ)ブチン−1−イル アセテート、メチル 4−(トリメチルシリルオキシ)ブチン−1−イル カーボネート、2−(トリメチルシリルオキシ)フェニル メタンスルホネート、から選ばれる1種以上が特に好ましい。
本発明の非水電解液に使用される非水溶媒としては、環状カーボネート類、鎖状カーボネート類、鎖状エステル類、エーテル類、アミド類、リン酸エステル類、スルホン類、ラクトン類、ニトリル類、S=O結合含有化合物、無水カルボン酸、芳香族化合物等が挙げられる。
環状カーボネート類としては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(FEC)、トランスまたはシス−4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(以下、両者を総称して「DFEC」という)、ビニレンカーボネート(VC)、ビニルエチレンカーボネート(VEC)等が挙げられる。これらの中でも、炭素−炭素二重結合またはフッ素原子を含有する環状カーボネートを少なくとも1種を使用すると高温サイクル後の低温特性を改善する効果が一段と向上するので好ましく、炭素−炭素二重結合を含む環状カーボネートとフッ素原子を含有する環状カーボネートを両方含むことが特に好ましい。炭素−炭素二重結合を含有する環状カーボネートとしては、VC、VEC、フッ素原子を含有する環状カーボネートとしては、FEC、DFECが好ましい。
これらの溶媒は1種類で使用してもよいが、2種類以上を組み合わせて使用した場合は、高温サイクル後の低温特性を改善する効果がさらに向上するので好ましく、3種類以上が特に好ましい。これらの環状カーボネートの好適な組合せとしては、ECとPC、ECとVC、PCとVC、FECとVC、FECとEC、FECとPC、FECとDFEC、DFECとEC、DFECとPC、DFECとVC、DFECとVEC、ECとPCとVC、ECとFECとPC、ECとFECとVC、ECとVCとVEC、FECとPCとVC、DFECとECとVC、DFECとPCとVC、FECとECとPCとVC、DFECとECとPCとVC等が挙げられる。前記の組合せのうち、より好ましくはECとVC、FECとPC、DFECとPC、ECとPCとVC、ECとFECとPC、ECとFECとVC、ECとVCとVEC等の組合せが挙げられる。
環状カーボネートの含有量は、特に制限はされないが、非水溶媒の総容量に対して、10〜40容量%の範囲で用いるのが好ましい。該含有量が10容量%未満であると電解液の電気伝導度が低下し、電池の内部抵抗が増加する場合があり、40容量%を超えると高温サイクル後の低温特性を改善する効果が低下する場合があるので上記範囲であることが好ましい。
また、非対称鎖状カーボネートを含むことが好ましく、非対称鎖状カーボネートと対称鎖状カーボネートを併用することがより好ましい。また、鎖状カーボネートに含まれる非対称鎖状カーボネートの割合が50容量%以上であることが好ましい。非対称鎖状カーボネートとしては、メチル基を有するものが好ましく、MECが最も好ましい。
これらの鎖状カーボネート類は1種類で使用してもよいが、2種類以上を組み合わせて使用することが好ましい。
上記の鎖状カーボネートの組合せや組成の範囲であると、高温サイクル後の低温特性を改善する効果が向上する傾向があるので好ましい。
鎖状カーボネートの含有量は、特に制限されないが、非水溶媒の総容量に対して、60〜90容量%の範囲で用いるのが好ましい。該含有量が60容量%未満であると電解液の粘度が上昇し、90容量%を超えると電解液の電気伝導度が低下し、高温サイクル特性等の電気化学特性が低下する場合があるので上記範囲であることが好ましい。
環状カーボネート類と鎖状カーボネート類の割合は、高温サイクル後の低温特性の向上の観点から、環状カーボネート類:鎖状カーボネート類(容量比)が10:90〜40:60が好ましく、15:85〜35:65がより好ましく、20:80〜30:70が特に好ましい。
これらの中でも、少なくとも環状カーボネート類と鎖状カーボネート類を組合せた非水溶媒を用いると、高温サイクル後の低温特性を改善する効果を向上するために好ましい。より具体的には、EC、PC、VC、VEC、FECから選ばれる1種以上の環状カーボネート類と、DMC、MEC、DECから選ばれる1種以上の鎖状カーボネート類との組合せが挙げられる。
本発明に使用される電解質としては、LiPF6、LiBF4、LiClO4等のLi塩、LiN(SO2CF3)2、LiN(SO2C2F5)2、LiCF3SO3、LiC(SO2CF3)3、LiPF4(CF3)2、LiPF3(C2F5)3、LiPF3(CF3)3、LiPF3(iso−C3F7)3、LiPF5(iso−C3F7)等の鎖状のフッ化アルキル基を含有するリチウム塩や、(CF2)2(SO2)2NLi、(CF2)3(SO2)2NLi等の環状のフッ化アルキレン鎖を含有するリチウム塩、ビス[オキサレート−O,O’]ホウ酸リチウムやジフルオロ[オキサレート−O,O’]ホウ酸リチウム等のオキサレート錯体をアニオンとするリチウム塩が挙げられる。これらの中でも、特に好ましい電解質塩は、LiPF6、LiBF4、LiN(SO2CF3)2、LiN(SO2C2F5)2である。これらの電解質塩は、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
これら全電解質塩が溶解されて使用される濃度は、前記の非水溶媒に対して、通常0.3M以上が好ましく、0.5M以上がより好ましく、0.7M以上が最も好ましい。またその上限は、2.5M以下が好ましく、2.0M以下がより好ましく、1.5M以下が更に好ましく、1.2M以下が最も好ましい。
本発明の非水電解液は、例えば、前記の非水溶媒を混合し、これに前記の電解質塩及び該非水電解液の質量に対して前記一般式(I)から選ばれる少なくとも1種の化合物を0.01〜10質量%溶解することにより得ることができる。
この際、用いる非水溶媒、及び非水電解液に加える化合物は、生産性を著しく低下させない範囲内で、予め精製して、不純物が極力少ないものを用いることが好ましい。
本発明のリチウム電池は、リチウム一次電池及びリチウム二次電池を総称する。本発明のリチウム電池は、正極、負極及び非水溶媒に電解質塩が溶解されている前記非水電解液からなる。非水電解液以外の正極、負極等の構成部材は特に制限なく使用できる。
例えば、リチウム二次電池用正極活物質としては、コバルト、マンガン、およびニッケルから1種以上を含有するリチウムとの複合金属酸化物が使用される。これらの正極活物質は、1種単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
このようなリチウム複合金属酸化物としては、例えば、LiCoO2、LiMn2O4、LiNiO2、LiCo1−xNixO2(0.01<x<1)、LiCo1/3Ni1/3Mn1/3O2、LiNi1/2Mn3/2O4、LiCo0.98Mg0.02O2等が挙げられる。また、LiCoO2とLiMn2O4、LiCoO2とLiNiO2、LiMn2O4とLiNiO2のように併用してもよい。
これらの中では、LiCoO2、LiMn2O4、LiNiO2のような満充電状態における正極の充電電位がLi基準で4.3V以上で使用可能なリチウム複合金属酸化物が好ましく、LiCo1−xMxO2(但し、MはSn、Mg、Fe、Ti、Al、Zr、Cr、V、Ga、Zn、Cuから表される少なくとも1種類以上の元素、0.001≦x≦0.05)、LiCo1/3Ni1/3Mn1/3O2、LiNi1/2Mn3/2O4のような4.4V以上で使用可能なリチウム複合金属酸化物がより好ましい。高充電電圧のリチウム複合金属複合酸化物を使用すると、充電時における電解液との反応により高温サイクル後の低温特性を改善する効果が低下しやすいが、本発明に係るリチウム二次電池ではこれらの電池特性の低下を抑制することができる。
これらのリチウム含有オリビン型リン酸塩の一部は他元素で置換してもよく、鉄、コバルト、ニッケル、マンガンの一部をCo、Mn、Ni、Mg、Al、B、Ti、V、Nb、Cu、Zn、Mo、Ca、Sr、W及びZr等から選ばれる1種以上の元素で置換したり、またはこれらの他元素を含有する化合物や炭素材料で被覆することが好ましく、特に、非晶質の炭素で被覆したものが好ましい。
これらの中では、少なくとも鉄またはマンガンを含むものが好ましい。
また、リチウム含有オリビン型リン酸塩は、例えば前記の正極活物質と混合して用いることもできる。
正極の集電体を除く部分の密度は、通常は1.5g/cm3以上であり、電池の容量をさらに高めるため、好ましくは2g/cm3以上であり、さらに好ましくは、3g/cm3以上であり、特に好ましくは、3.6g/cm3以上である。なお、上限としては、4g/cm3以下が好ましい。
リチウムを吸蔵及び放出することが可能な炭素材料としては、易黒鉛化炭素や、(002)面の面間隔が0.37nm以上の難黒鉛化炭素や、(002)面の面間隔が0.34nm以下の黒鉛などが好ましい。
これらの中では、リチウムイオンの吸蔵及び放出能力において、人造黒鉛や天然黒鉛等の高結晶性の炭素材料を使用することが更に好ましく、格子面(002)の面間隔(d002)が0.340nm(ナノメータ)以下、特に0.335〜0.337nmである黒鉛型結晶構造を有する炭素材料を使用することが特に好ましい。
複数の扁平状の黒鉛質微粒子が互いに非平行に集合或いは結合した塊状構造を有する人造黒鉛粒子や、例えば鱗片状天然黒鉛粒子に圧縮力、摩擦力、剪断力等の機械的作用を繰り返し与え、球形化処理を施した黒鉛粒子を用いることにより、負極の集電体を除く部分の密度を1.5g/cm3の密度に加圧成形したときの負極シートのX線回折測定から得られる黒鉛結晶の(110)面のピーク強度I(110)と(004)面のピーク強度I(004)の比I(110)/I(004)が0.01以上となると、正極から溶出した金属イオンが黒鉛粒子表面のLiイオンの吸蔵及び放出サイトを塞いで高温サイクル後の低温特性が低下しやすくなるが、本願発明の電解液を使用すると、上記の効果が一段と向上するので好ましく、0.05以上となることが更に好ましく、0.1以上となることが特に好ましい。また、過度に処理し過ぎて結晶性が低下し電池の放電容量が低下する場合があるので、上限は0.5以下が好ましく、0.3以下が更に好ましい。
また、高結晶性の炭素材料は低結晶性の炭素材料によって被膜されていると、高温サイクル後の低温特性が良好となるので好ましい。高結晶性の炭素材料を使用すると、充電時において非水電解液と反応しやすく、負極上にリチウム金属が析出しやすくなるため、高温サイクル後の低温特性が低下する場合があるが、本発明に係るリチウム二次電池では上記の特性が良好となる。
負極は、上記の正極の作製と同様な導電剤、結着剤、高沸点溶剤を用いて混練して負極合剤とした後、この負極合剤を集電体の銅箔等に塗布して、乾燥、加圧成型した後、50℃〜250℃程度の温度で2時間程度真空下で加熱処理することにより作製することができる。
また、リチウム一次電池用負極活物質としては、リチウム金属、あるいはリチウム合金が使用される。
電池用セパレータのとしては、特に制限はされないが、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィンの単層または積層の多孔性フィルム、織布、不織布等を使用できる。
電解液と電極界面の電気二重層容量を利用してエネルギーを貯蔵する電気化学素子である。本発明の一例は、電気二重層キャパシタである。この電気化学素子に用いられる最も典型的な電極活物質は、活性炭である。二重層容量は概ね表面積に比例して増加する。
電極のドープ/脱ドープ反応を利用してエネルギーを貯蔵する電気化学素子である。この電気化学素子に用いられる電極活物質として、酸化ルテニウム、酸化イリジウム、酸化タングステン、酸化モリブデン、酸化銅等の金属酸化物や、ポリアセン、ポリチオフェン誘導体等のπ共役高分子が挙げられる。これらの電極活物質を用いたキャパシタは、電極のドープ/脱ドープ反応にともなうエネルギー貯蔵が可能である。
負極であるグラファイト等の炭素材料へのリチウムイオンのインターカレーションを利用してエネルギーを貯蔵する電気化学素子である。リチウムイオンキャパシタ(LIC)と呼ばれる。正極は、例えば活性炭電極と電解液との間の電気ニ重層を利用したものや、π共役高分子電極のドープ/脱ドープ反応を利用したもの等が挙げられる。電解液には少なくともLiPF6などのリチウム塩が含まれる。
本発明の新規化合物であるトリアルキルシリルオキシ基含有化合物は、下記一般式(II)で表される。
ただし、Xが−CR9R10−C≡C−CR11R12−の場合、R9〜R12は炭素数1〜6の直鎖又は分枝のアルキル基である。また、Xが炭素数2〜6の直鎖又は分枝のアルキレン基、炭素数2〜6の直鎖又は分枝の置換基を有するアルキレン基、置換基を有する炭素数2〜6の直鎖又は分枝のアルキレン基、炭素数4〜8の直鎖又は分枝のアルケニレン基、炭素数3〜8のシクロアルキレン基、炭素数6〜14のアリーレン基、及びエーテル結合を含む炭素数2〜8の2価の連結基の場合、R5〜R7はメチル基、R8は炭素数1〜6の直鎖又は分枝のアルカンスルホニル基である。)
また、同様に前述した一般式(I)の置換基R1、R2及びR3は、それぞれ一般式(II)の置換基R5、R6及びR7と読み替える。
トリアルキルシリルオキシアルキニレンメタンスルホネート化合物の製造方法は特に限定されない。例えば、ヒドロキシアルキニレンメタンスルホネートとトリアルキルシリルハライドとを、溶媒の存在下又は不存在下、塩基の存在下で、エーテル化反応させることにより合成することができる。
なお、原料となるヒドロキシアルキニレンメタンスルホネートは既存の汎用的手法により合成することができる。例えば、新実験化学講座第14巻(丸善)1793〜1798ページに記載されている方法が適用できる。
塩基としては、無機塩基及び有機塩基のいずれも使用することができる。使用できる塩基としては、無機塩基及び有機塩基が挙げられる。
前記塩基の使用量は、副生物を抑制する観点から、ヒドロキシアルキニレンメタンスルホネート1モルに対して、好ましくは0.8〜5モル、より好ましくは1〜3モルであり、更に好ましくは1〜1.5モルである。
また、反応時間は前記反応温度やスケールにより適宜変更しうるが、反応時間が短すぎると未反応物が残り、逆に反応時間が長すぎると生成物の分解や副反応の恐れが生じるため、好ましくは0.1〜12時間であり、より好ましくは0.2〜6時間である。
以下、本発明のトリアルキルシリルオキシ基含有化合物の合成例、及びそれを用いた電解液の実施例を示すが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
2−ブチンジオール17.22g(0.20mol)とトリエチルアミン6.07g(60mmol)を酢酸エチル200mLとテトラヒドロフラン50mlの混合溶媒に溶解させ、メタンスルホニルクロリド6.87g(60mmol)を5〜10℃で15分かけて滴下した。室温で3時間反応を行い、反応液を2回水洗した後、有機層を分離し、濃縮した。濃縮物をカラムクロマトグラフィー(ワコーゲルC−200、トルエン/酢酸エチル=3/2溶出)にて精製し、4−ヒドロキシ−2−ブチン−1−イル メタンスルホネート6.70g(メタンスルホニルクロリド基準:68%収率)得た。
4−ヒドロキシ−2−ブチン−1−イル メタンスルホネート5.00g(30.4mmol)、トリエチルアミン3.69g(36.5mmol)を酢酸エチル100mlに溶解させ、トリメチルシリルクロリド3.30g(33.5mmol)を5〜10℃で10分かけて滴下した。室温で2時間反応を行い、反応液を2回水洗した後、有機層を分離し、濃縮した。濃縮物を減圧蒸留にて精製し、4−(トリメチルシリルオキシ)−2−ブチン−1−イル メタンスルホネートを6.70g(収率51%)得た。
得られた4−(トリメチルシリルオキシ)−2−ブチン−1−イル メタンスルホネートについて、1H−NMR及び質量分析の測定を行い、その構造を確認した。
結果を以下に示す。
(1)1H−NMR(300 MHz, CDCl3): 4.88-4.90 (m, 2 H), 4.33-4.36 (m, 2 H), 3.11 (s, 1 H) , 0.17 (s, 9 H).
(2)質量分析: MS(CI) [M+1] = 237.
実施例1〜9、比較例1〜4
〔リチウムイオン二次電池の作製〕
LiCoO2(正極活物質);94質量%、アセチレンブラック(導電剤);3質量%を混合し、予めポリフッ化ビニリデン(結着剤);3質量%を1−メチル−2−ピロリドンに溶解させておいた溶液に加えて混合し、正極合剤ペーストを調製した。この正極合剤ペーストをアルミニウム箔(集電体)上の片面に塗布し、乾燥、加圧処理して所定の大きさに打ち抜いて正極シートを作製した。正極の集電体を除く部分の密度は3.6g/cm3であった。また、人造黒鉛(d002=0.335nm、負極活物質)95質量%を、予めポリフッ化ビニリデン(結着剤)5質量%を1−メチル−2−ピロリドンに溶解させておいた溶液に加えて混合し、負極合剤ペーストを調製した。この負極合剤ペーストを銅箔(集電体)上の片面に塗布し、乾燥、加圧処理して所定の大きさに打ち抜いて負極シートを作製した。負極の集電体を除く部分の密度は1.7g/cm3であった。そして、正極シート、微孔性ポリエチレンフィルム製セパレータ、負極シートの順に積層し、表1に記載の組成の非水電解液を加えて、2032型コイン電池を作製した。
初期の放電容量
上記の方法で作製したコイン電池を用いて、25℃の恒温槽中、1Cの定電流及び定電圧で、終止電圧4.2Vまで3時間充電し、0℃に恒温槽の温度を下げ、1Cの定電流下終止電圧2.75Vまで放電して、初期の0℃での放電容量を求めた。
高温サイクル試験
次に、このコイン電池を60℃の恒温槽中、1Cの定電流及び定電圧で終止電圧4.2Vまで3時間充電し、次に1Cの定電流下終止電圧2.75Vまで放電することを1サイクルとし、これを100サイクルに達するまで繰り返した。
高温サイクル後の放電容量
更にその後、初期の放電容量の測定と同様にして、高温サイクル後の0℃の放電容量を求めた。
高温サイクル試験後の低温特性
高温サイクル後の低温特性を下記の0℃放電容量の維持率より調べた。
高温サイクル後の0℃放電容量維持率(%)=(高温サイクル後の0℃の放電容量/初期の0℃の放電容量)×100
電池の作製条件及び電池特性を表1に示す。
実施例2、比較例1で用いた負極活物質に変えて、Si(負極活物質)を用いて、負極シートを作製した。Si;80質量%、アセチレンブラック(導電剤);15質量%を混合し、予めポリフッ化ビニリデン(結着剤);5質量%を1−メチル−2−ピロリドンに溶解させておいた溶液に加えて混合し、負極合剤ペーストを調製した。この負極合剤ペーストを銅箔(集電体)上に塗布し、乾燥、加圧処理して所定の大きさに打ち抜いて負極シートを作製したことの他は、実施例2、比較例1と同様にコイン電池を作製し、電池評価を行った。結果を表2に示す。
実施例2、比較例1で用いた正極活物質に変えて、非晶質炭素で被覆したLiFePO4(正極活物質)を用いて、正極シートを作製した。非晶質炭素で被覆したLiFePO4;90質量%、アセチレンブラック(導電剤);5質量%を混合し、予めポリフッ化ビニリデン(結着剤);5質量%を1−メチル−2−ピロリドンに溶解させておいた溶液に加えて混合し、正極合剤ペーストを調製した。この正極合剤ペーストをアルミニウム箔(集電体)上に塗布し、乾燥、加圧処理して所定の大きさに打ち抜いて正極シートを作製したこと、充電終止電圧を3.6V、放電終止電圧を2.0Vとしたことの他は、実施例2、比較例1と同様にコイン電池を作製し、電池評価を行った。結果を表3に示す。
また、実施例10と比較例5の対比、実施例11と比較例6の対比から、正極にリチウム含有オリビン型リン酸鉄塩を用いた場合や、負極にSiを用いた場合にも同様な効果がみられる。従って、本発明の効果は、特定の正極や負極に依存した効果でないことは明らかである。
また、本発明の新規なトリアルキルシリルオキシ基含有化合物は、医薬、農薬、電子材料、高分子材料等の中間原料、又は電池材料として有用である。
Claims (4)
- 非水溶媒に電解質塩が溶解されている非水電解液において、下記一般式(I)で表されるトリアルキルシリルオキシ基含有化合物の少なくとも1種が非水電解液中に0.01〜10質量%含有されていることを特徴とする非水電解液。
- 一般式(I)で表されるトリアルキルシリルオキシ基含有化合物が、4−(トリメチルシリルオキシ)−2−ブタン−1−イル メタンスルホネート、4−(トリメチルシリルオキシ)−2−ブテン−1−イル メタンスルホネート、4−(トリメチルシリルオキシ)−2−ブチン−1−イル メタンスルホネート、4−(トリメチルシリルオキシ)−2−ブチン−1−イル トリフルオロメタンスルホネート、4−(トリメチルシリルオキシ)−2−ブチン−1−イル ホルメート、4−(トリメチルシリルオキシ)−2−ブチン−1−イル アセテート、メチル 4−(トリメチルシリルオキシ)−2−ブチン−1−イル カーボネート、2−(トリメチルシリルオキシ)フェニル メタンスルホネートから選ばれる1種以上である請求項1に記載の非水電解液。
- 正極、負極及び非水溶媒に電解質塩が溶解されている非水電解液を備えた電気化学素子であって、該非水電解液中に前記一般式(I)で表されるトリアルキルシリルオキシ基含有化合物の少なくとも1種を非水電解液中に0.01〜10質量%含有することを特徴とする電気化学素子。
- 下記一般式(II)で表されるトリアルキルシリルオキシ基含有化合物。
ただし、Xが−CR9R10−C≡C−CR11R12−の場合、R9〜R12は炭素数1〜6の直鎖又は分枝のアルキル基である。また、Xが炭素数2〜6の直鎖又は分枝のアルキレン基、置換基を有する炭素数2〜6の直鎖又は分枝のアルキレン基、炭素数2〜6の直鎖又は分枝の置換基を有するアルキレン基、炭素数4〜8の直鎖又は分枝のアルケニレン基、炭素数3〜8のシクロアルキレン基、炭素数6〜14のアリーレン基、及びエーテル結合を含む炭素数2〜8の2価の連結基の場合、R5〜R7はメチル基、R8は炭素数1〜6の直鎖又は分枝のアルカンスルホニル基である。)
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