図1は、ガソリン直噴エンジン・システム(符号10)の実施例を示す。具体的には、内燃機関10は、複数のシリンダを有しており、図1ではそのうちの一つのシリンダを示している。エンジン10は、電子式エンジン・コントローラ12によって制御される。エンジン10は、燃焼室30とシリンダ壁32とそこに配設され且つクランクシャフト40に接続されたピストン36とを有している。燃焼室30は、吸気マニホルド44及び排気マニホルド48にそれぞれ吸気バルブ52及び排気バルブ54を介して連通している。吸気バルブ52は、可変カム51によって駆動される。排気バルブ54は、可変カム53によって駆動される。吸気カム51の位置は、カムセンサ55によって検出される。排気カム53の位置はカムセンサ57によって検出される。
吸気マニホルド44は、スロットルプレート64を介してスロットル本体62に接続されている。一実施例において、電子制御スロットルを使用することができる。一実施例において、スロットルは、マニホールド44内が指定された真空レベルになるように、周期的に又は連続的に電子制御される。或いは、スロットルボディ62及びスロットルプレート64は、省略することができる。
燃焼室30は、コントローラ12からの信号(fpw)のパルス幅に応じた燃料を供給するための燃焼噴射装置66を備えて示されている。燃料は、燃料タンク及び燃料レール(図示省略)を有する従来の気体燃料システム(図示省略)によって飽和燃料噴射装置66へと供給される。直噴エンジンにおいては、図1に示すように、燃料圧力を増大するために燃料圧力増大装置を設けることができる。別の実施例では、気体燃料は、各シリンダにポート噴射されるものであってもよいし、また、中心燃料噴射装置は、全てのシリンダに燃料を供給するものであってもよい。燃料噴射装置66は、ドライバ回路68によって供給される電流により駆動される。
点火プラグ92は、燃料室30の点火源を燃焼室30の内部に提供する。スパークを発生させるためのエネルギーは、点火システム88によって提供される。コントローラ12は、点火プラグ92に電圧を供給するイグニションコイルへの供電を調整する。
実施例において、コントローラ12は、従来のマイクロコンピュータであって、マイクロプロセッサ・ユニット102、入出力ポート104、読出し専用メモリ106、ランダム・アクセス・メモリ108、及びKAM(キープ・アライブメモリ)110を有している。マイクロプロセッサ102は、電子的にプログラミング可能に構成されていて、本願明細書に記載されたルーチンを実行可能になっている。
コントローラ12は、エンジン10に連結された様々なセンサからの信号を受信する。具体的には、エアフローセンサ120からの吸入空気の測定質量信号(MAF)、冷却ジャケット114に連結された温度センサ112からのエンジンの冷却水温度信号(ECT)、吸気マニホールド44に連結されたマニホールド圧センサ122からの測定マニホールド圧信号(MAP)、スロットルプレート64に連結されたスロットル位置センサ58からの測定スロットル位置信号(TP)、そして、エンジン速度を示す、クランクシャフト20に連結されたホール効果センサ118(又は可変抵抗)からのプロファイル点火ピックアップ信号(PIP)を含むが、これらに限定はされない。
排気システムに存在する酸素濃度は、酸素センサ126によって評価される。さらに、付加的な酸素センサ(図示省略)を、触媒70の後方に配設することもできる。酸素センサ126は、酸素センサ部間においてエンジン供給ガスの酸素濃度を検出する。酸素センサ126は、線形化された出力を有するワイドレンジのセンサ、又は、ストイキ状態の近傍で高いゲイン信号を指し示すセンサであってもよい。さらに、ドライバ・ペダル130が、ドライバの足132に沿って示されている。ペダル位置センサ134は、ドライバ駆動ペダルの角度位置を測定する。
エンジン10は一例として示されたものである。そして、本明細書において記載されているシステム及び方法は、適切な構成機器及び/又は機器配置を有する他のエンジンに対しても適用することができる。
上述したように、エンジン始動中における燃料噴射装置への供給電圧は、エンジンのクランクシャフトが回転するに連れて変化する。さらに、燃料噴射装置電圧は、バッテリ濃度、バルブタイミング、及びバッテリ負荷に応じて変化させることもできる。冷間始動時における燃料噴射装置の作動確実性を向上させるために、燃料噴射装置供給電圧が燃料噴射装置の最小作動電圧よりも高くなるクランクシャフト角を検出することは有益である。
仮に、エンジン燃料噴射装置を、その供給電圧が最小作動電圧よりも高くなるランクシャフト角度で作動させた場合には、エンジンの始動性は改善される。
図2Aには、冷間始動時において、第1エンジン速度における単気筒エンジンの燃料噴射装置への供給電圧を模擬したグラフを示す。Y軸は、燃料噴射装置の供給電圧を表し、グラフの下側から上側に向かって、燃料噴射装置の供給電圧が増加することを意味する。X軸は時間を表し、グラフの左側から右側に向かって経過時間が増加することを意味する。燃料噴射装置の供給電圧200は、時間と共に変化して、本実施例ではクランク角で見て720°の周期で変化する。特に、クランキング中にエンジンが回転するにしたがって、エンジンシリンダは、吸気、圧縮、膨張、及び排気の工程を行う。
グラフは、シリンダのストローク(各工程サイクル)に対する燃料噴射装置への供給電圧を示している。垂直線は、シリンダストロークの開始時期と終了時期とを示している。この例では、吸気工程を「吸気」、圧縮工程を「圧縮」、膨張行程を「膨張」、排気工程を「排気」として簡略化して表示している。図では、膨張工程中において、燃料噴射装置への供給電圧はエンジンサイクル中で最大に達することがわかる。さらに、吸気工程中において、燃料噴射装置への供給電圧は低く、そして、シリンダのストロークと共に部分的に増加する。仮に、燃料噴射装置への供給電圧が、吸気工程中に燃料噴射装置の最小作動電圧を超える場合には、燃料噴射装置への供給電圧が該最小作動電圧を上回るクランク角期間において燃料噴射装置を作動させることが好ましい。エンジンが二つ以上のシリンダを有する場合には、上記電圧はシリンダの数分だけ区画された720°CAの周期を繰り返す。図2Aはまた、シリンダ・サイクルに対応するエンジンサイクルを示している。エンジンサイクル中において、燃料噴射装置供給電圧が燃料噴射装置の最小作動電圧を上回る期間又はクランク角が存在する場合がある。以下、このクランク角は、噴射クランク角と呼ぶ。噴射クランク角は、燃料噴射装置が利用することができる燃料噴射装置供給電圧及び燃料噴射装置の最小作動電圧に依存して変化する。図2Aは、シリンダサイクルに対応する噴射クランク角を示している。
図2Aと同様に図2Bには、冷間始動時において第2エンジン速度における、単気筒エンジンの燃料噴射装置供給電圧を模擬したグラフを示す。また、Y軸は、燃料噴射装置の供給電圧を表し、グラフの下側から上側に向かって、燃料噴射装置の供給電圧が増加することを意味する。X軸は時間を表し、グラフの左側から右側に向かって経過時間が増加する。燃料噴射装置の供給電圧202は、時間と共に変化することが図示されている。図2Bは、図2Aと同様の表示や印を使用する。図2Bでは、シリンダサイクル中において、分解能が増加した燃料噴射装置を使用したときの供給電圧を示している。さらに、図2Bは、特定のシリンダサイクルの膨張行程中に生じる最大電圧を示していて、この最大電圧は「最大V」として示されている。
図3は、直列4気筒エンジンの冷間始動時における、燃料のポート噴射タイミングの信号を模式的に示した図である。垂直標識300は、冷間始動時におけるエンジン回転の開始時期を示している。エンジンは、垂直標識300の左側では停止していて、該標識300の右側では、シリンダがストロークする。左端の番号は、シリンダ番号を示していて、図では、NO1シリンダの後に、NO3、NO4、及びNO2シリンダが続くことを意味している。各垂直線分は、それぞれのシリンダにおける上死点及び下支点のピストン位置を表している。
ボックス302は、NO1シリンダが膨張行程にあるときの燃料噴射装置の噴射クランク角に対応している。このボックス内の二つの数字は、NO1シリンダの膨張工程中において燃料噴射を開始するべきシリンダ番号を示している。この例では、NO2及びNO4シリンダが、燃料噴射装置が作動するシリンダとして示される。NO1シリンダが膨張工程にある間、NO2シリンダが排気工程にあり、NO4シリンダが吸気工程にあることがわかる。気体燃料は、噴射クランク角302において、NO2又はNO4シリンダに噴射される。気体燃料が、NO2シリンダに噴射される場合、若干のガスが、NO2シリンダに流入する前に吸気マニホールドに導入される。気体燃料が、NO4シリンダに噴射される場合、燃料がNO2シリンダに噴射される場合と比較して、大量の燃料がNO4シリンダに噴射される。同様の噴射タイミングは、NO1シリンダの後続のサイクルとして示されている。
燃料噴射装置開口タイミングボックス304は、NO3シリンダが膨張工程にあるときの燃料噴射装置の噴射クランク角に対応している。該ボックス内の二つの数字は、NO1シリンダの膨張行程中に噴射開始することが適切なシリンダ番号を示す。また、燃料噴射装置開口タイミングボックス内の二つの数字は、NO3シリンダの膨張行程中に噴射を開始することが適切なシリンダ番号を示す。NO1及びNO2シリンダは、作動させるべきシリンダ燃料噴射装置を示している。NO2シリンダは、排気工程になる。そして、NO4シリンダは、この期間中は吸気工程になる。これにより、上述した同じ基準に基づくいずれかの燃料噴射装置による噴射が可能となる。同様に、燃料噴射装置開口タイミングボックス306及び308は、NO1及びNO3シリンダのための燃料噴射タイミングを示す。
図3〜図6に示す噴射タイミングは一例である。
噴射クランク角は、燃料噴射装置供給電圧が、噴射装置最小作動電圧又は閾電圧よりも大きい如何なるクランク角期間であってもよい。図4では、冷間始動時における直列4気筒エンジンための直接燃料噴射タイミング信号を模式的に示している。垂直標識400は、冷間始動時におけるエンジン回転の開始時期を示している。
図3と同様に、エンジンは、垂直標識300の左側では停止していて、該標識300の右側では、シリンダがストロークする。図3と図4とでは、燃料噴射装置開口タイミングボックスを除いて共通の表示や印を使用している。
直噴エンジンのための燃料噴射装置の開口タイミングは、ポート燃料噴射エンジンと比較すると、直噴エンジンでは、シリンダサイクル中において吸気バルブが開いているとき又はシリンダが圧縮工程にあるときに、燃料をシリンダに注入することができる点で異なっている。他方では、特定のシリンダサイクルにおいて燃料をシリンダに注入するために、ポート燃料噴射装置は、シリンダの吸気バルブが開く前又は吸気バルブが開く間に燃料を噴射する。そして、シリンダの吸気バルブが閉じられているときに、気体燃料がシリンダに噴射された場合には、噴射された燃料の一部が吸気マニホールドに入って他のシリンダに導入される。このように燃料噴射タイミングは、ポート燃料噴射システムと直接燃料噴射システムとでは異なっている。
燃料噴射装置開口タイミングボックス402では、NO1シリンダは膨張ストロークにある。燃料噴射装置供給電圧はこの時点で高電圧であるため、NO3及びNO4シリンダに燃料を注入することが適切である。NO1シリンダの膨張工程中において、NO4シリンダは吸気工程にある。そして、NO3シリンダは圧縮工程にある点に留意すべきである。燃料が402に示すタイミングでNO3シリンダ又はNO4シリンダに噴射される場合には、噴射される燃料の大半が吸気マニホールド及び他のシリンダへと流れることによりむしろ各シリンダ(NO3,NO4シリンダ)に入り易くなる。このように、NO1シリンダが膨張工程にあるときには、NO4シリンダ又はNO3シリンダに燃料を噴射することが望ましい。
燃料噴射装置開口タイミングボックス404では、NO3シリンダが膨張工程にある。NO2シリンダは吸気工程にあり、NO4シリンダは圧縮工程にあるため、NO2及びNO4シリンダの一方又は両方に対して、燃料噴射装置開弁タイミング404により示されるタイミングで燃料を噴射することが適切である。同様に、406では、NO1シリンダが吸気工程にあり、NO2シリンダが圧縮工程にある一方、NO4シリンダは膨張工程にある。したがって、燃料噴射装置開口タイミングボックス406では、NO1及びNO2シリンダの一方又は双方に燃料を注入することが好ましい。同様に、燃料噴射装置開口タイミングボックス408では、NO3シリンダが吸気工程にありNO1シリンダが圧縮工程にある一方、NO2シリンダは膨張工程にある。したがって、燃料噴射装置開口タイミングボックス408では、NO1及びNO3シリンダの一方又は双方に燃料を噴射することが好ましい。エンジンが回転するに連れて、エンジン位置はグラフの右側へと移動し、さらなる燃料噴射装置開弁ボックスが示される。さらに、エンジンが一旦始動して燃料噴射装置の電圧が燃料噴射弁の最小作動電圧を超えると、各シリンダにおける燃料噴射弁器の開口タイミングは、エンジン速度及びエンジン負荷に基づく基準燃料噴射タイミングに切り替わる。
180°CAごとに燃料イベントを有する4気筒エンジンとは異なり、6気筒エンジンは、120°CAごとに燃料イベントを有する。それ故、4気筒エンジンと比較して、6気筒エンジンのシリンダの各工程間においては異なるオーバラップが生じる。さらに、一つのシリンダにおけるストロークのタイミングは、他の二つのシリンダのストロークタイミングに対応する。例えば、6気筒エンジンにおける、NO1シリンダの膨張ストローク中においては、NO5、NO3、NO2、及びNO4は、他の二つの工程(例えば、圧縮及び膨張工程)と同期してストロークする。他方、4気筒エンジンにおいては、一のシリンダの工程は、他の一つのシリンダの工程に一致する。例えば、NO1シリンダの膨張工程は、NO3シリンダの圧縮工程のタイミングに同期する。したがって、燃料噴射装置供給電圧が高くなるクランク角期間における6気筒エンジンへの噴射タイミングは、4気筒エンジンとは異なる。
図5を参照して、V6エンジンの冷間始動時におけるポート燃料噴射タイミング信号の模式図を示す。垂直標識500は、冷間始動時におけるエンジン回転の始まりを示す。エンジンは、垂直標識500の左側では停止していて、該標識500の右側では、シリンダがストロークする。左側の添え字は、NO1シリンダの後に、NO5、NO3、NO6、NO2、及びNO4シリンダが続くことを意味する。垂直線分は、各シリンダにおけるピストンの上死点位置及び下死点位置を表している。
燃料噴射装置開口タイミングボックス502は、NO1シリンダが膨張工程にあるときの燃料噴射装置の開口クランク角期間に対応している。該ボックス内の三つの数字は、NO1シリンダの膨張行程中に噴射を開始することが適切なシリンダ番号を示す。この例では、シリンダNO3、NO6及びNO2が、燃料噴射装置が作動されるシリンダとして示されている。NO1シリンダが膨張工程にあるときに、NO3シリンダが吸気工程の終端にあり、NO6シリンダが吸気工程にあり、NO4シリンダが、丁度、吸気工程前の排気工程にある。気体燃料がNO2シリンダに噴射される場合、若干のガスは、NO2シリンダに導入される前に吸気マニホールドに流入する。気体燃料がNO3又はNO6シリンダに噴射される場合、燃料がNO2シリンダに噴射される場合と比較して、大量の燃料がNO3及びNO6シリンダに流入可能となる。
燃料噴射装置開口タイミングボックス504、506、508、510、及び512は、NO1シリンダと同様のタイミングを示すことがわかる。しかしながら、シリンダの各工程間のオーバラップは各シリンダごとに異なるため、燃料噴射装置開口タイミングボックスに表示された数字はシリンダごとに異なる。そして、図3及び図4に示す様に、エンジンが回転するにしたがって、エンジン位置は、グラフの右側へと移動して、さらなる燃料噴射装置開口タイミングボックスが示される。さらに、前述したように、エンジンが一旦始動して燃料噴射装置の電圧が燃料噴射弁の最小作動電圧を超えると、各シリンダにおける燃料噴射弁器の開口タイミングは、エンジン速度及びエンジン負荷に基づく基準燃料噴射タイミングに切り替わる点に留意すべきである。
前述したように、直噴エンジンのための燃料噴射装置の開口タイミングは、ポート燃料噴射エンジンと比較すると、直噴エンジンでは、シリンダサイクル中において吸気バルブが開いているとき又はシリンダが圧縮工程にあるときに、燃料をシリンダに注入することができる点で異なっている。また、上述したように、シリンダの各工程間のオーバラップは、4気筒エンジンと6気筒エンジンとで異なっている。図6には、6気筒直噴エンジンにおける燃料噴射タイミングの一例を示す模式図である。
垂直標識600は、冷間始動時におけるエンジン回転の開始時期を示している。エンジンは、垂直標識600の左側では停止していて、該標識600の右側では、シリンダがストロークする。左端の番号は、シリンダ番号を示していて、図では、NO1シリンダの後に、NO5、NO3、NO6、NO2、及びNO4シリンダが続くことを示している。各垂直線分は、それぞれのシリンダの上死点及び下支点のピストン位置を表す。
燃料噴射装置開口タイミングボックス602は、NO1シリンダが膨張行程にあるときの燃料噴射装置の開口クランク角期間に対応している。該ボックスの三つの数字は、NO1シリンダの膨張行程中に噴射を開始することが適切なシリンダ番号を示す。この例では、NO5、NO3、及びNO6が、燃料噴射装置が作動されるシリンダとして示されている。NO1シリンダが膨張工程にある間、NO5シリンダは圧縮工程にあり、NO3シリンダは吸気及び圧縮工程にあり、NO6シリンダは吸気工程にあることがわかる。気体燃料がNO5、NO3、又はNO6シリンダに直接噴射される場合、大部分の燃料がそれが噴射されたシリンダ内に止まる。何故なら、シリンダは吸気工程にあるか又はシリンダの吸気バルブが閉じられた状態にあるからである。
燃料噴射装置開口タイミングボックス604,606,608,610,及び612は、NO1シリンダと同様のタイミングを示す。しかしながら、燃料噴射装置開口タイミングボックス内の数字は、シリンダ毎に変化する。何故なら、シリンダの各工程間のオーバラップはシリンダ毎に異なるからである。そして、図3、図4、図5の様に、エンジンが回転し、そして、エンジン位置が変化するにしたがって、グラフの右側へと移動して、さらなる燃料噴射装置開口タイミングボックスが示される。さらに、前述したように、エンジンが一旦始動して燃料噴射装置の電圧が燃料噴射弁の最小作動電圧を超えると、各シリンダにおける燃料噴射装置の開口タイミングは、エンジン速度及びエンジン負荷基づく基準燃料噴射タイミングに設定される点に留意すべきである。
図7には、シリンダ内に気体燃料を噴射するルーチンのフローチャートが示されている。図3〜6で例示される燃料噴射タイミングは、図7のルーチンに含まれる点に留意する必要がある。さらに、ルーチンは、プログラミング可能になっていて、図1のエンジンコントローラ12によって実行される。
ルーチン700のステップS702では、エンジンが冷間始動状態にあるか否かを判断する。一実施例において、ルーチン700では、エンジンが冷間始動したか否かを決定するためのエンジン作動パラメータを検出(測定)する。例えば、エンジン冷却水温度が閾温度を下回り且つエンジン速度が閾速度を下回る場合には、エンジンが冷間始動状態にあると判断することができる。
ルーチン700のステップS704では、基準燃料噴射タイミングから冷間始動噴射タイミングに移行(シフト)する。本実施例において、基準燃料噴射タイミングは、エンジン速度及びエンジン負荷に基づいて経験的に決定される。例えば、エンジン速度が低いときに、直接燃料噴射装置は、圧縮工程における上死点前160°CAにおいて燃料を噴射し始める。より高いエンジン速度においては、直接燃料噴射装置は、吸気工程における下死点前20°CAにおいて燃料を噴射し始める。このように、気体燃料噴射装置の開口動作は、エンジン速度及びエンジン負荷に関連するクランク角に調整される。燃料噴射装置の開弁及び閉弁タイミングは、燃料噴射装置の性能、燃料タイプ、及びエンジンデザインに応じて変化する。燃料噴射タイミングの切替えは、エンジン停止後における最初の燃料噴射前に実行される。一実施例において、各シリンダに対する燃料噴射装置の開口タイミングは、シリンダに適切に燃料を噴射するクランク角期間において、燃料噴射装置供給電圧が最も高くなると予測されるクランク角期間に変更される。例えば、一つのシリンダ(エンジンの燃焼順序で見て膨張工程に対して先行する直前のシリンダ)に対する燃料噴射は、膨張工程に入ってから60°クランク角が経過した時に実行される。燃料噴射装置開口タイミングは、燃料が噴射されるシリンダの排気工程、吸気工程、又は圧縮工程において遅れてもよい。さらに、噴射タイミングは、エンジン温度によって変化させるようにしてもよい。
このように、第1モードにおいては、エンジン始動時に、気体燃料の燃料噴射タイミングは、異なるクランク角期間において、少なくとも一部の燃料がシリンダに供給されるよう調整される。そして、第2モードにおいては、気体燃料の燃料噴射タイミングは、エンジン速度及びエンジン負荷に応じて調整される。
ルーチン700におけるステップS706では、エンジンに燃料を噴射することなしにエンジンを回転させるべきか否かを判定する。一実施例において、燃料噴射装置供給電圧が燃料噴射装置の最小作動電圧よりも大きくなるクランク角(例えば、エンジンサイクル中におけるピーク電圧又は最大電圧が検出されるクランク角)を決定するエンジンサイクル又はエンジンサイクルの少なくとも一部を経由してからエンジンを回転させることが望ましい。エンジンは、燃料を噴射することなく、一回転、半回転、又は若干、分数回転するものとしてもよい。エンジンを回転させるべきか否かについての判定は、エンジンコントローラに、燃料噴射装置供給電圧が高くなると予測されるクランク角が設定されているか否かに基づいて行うことができる。エンジンコントローラが、燃料噴射装置供給電圧が高電圧になると予測されるクランク角をメモリに記憶している場合には、ルーチン700はステップ708に進んで、ステップ708では、エンジン回転させるとともにエンジンを始動させるために燃料を噴射する。
ステップ714では、ルーチン700は、エンジンに燃料を噴射することなく、エンジンを一回転又は少なくとも分数回転させる。エンジンが回転している間、ルーチン700は、燃料噴射装置供給電圧が燃料噴射装置の最小作動電圧を超えるクランク角期間を記録する。実施例において、燃料噴射装置供給電圧は、各燃料噴射装置のそれぞれにおいてモニタされる。他の実施例において、電圧源と燃料噴射装置との間の電圧をモニタすることができる。
ルーチン700におけるステップ708では、エンジンを始動させるべく、回転中のエンジンに対して燃料を噴射する。実施例において、エンジンコントローラは、燃料噴射装置供給電圧が燃料噴射装置の最小作動電圧を超えると予測されるクランク角期間において燃料を噴射するようにプログラムされていて、このクランク角期間では、所定のシリンダに対して燃料噴射が行われる。例えば、燃料噴射装置供給電圧が、NO1シリンダの膨張工程における0〜60°CAのクランク角期間において高電圧になると予測される場合には、図4にて示されるタイミングにしたがって、この期間内に気体燃料をNO3又はNO4シリンダに噴射することが好ましい。このように、気体燃料噴射装置の開口動作は、エンジンの燃焼順序で見てシリンダの膨張工程に対して先行する直前のシリンダおいて実行される。換言すると、燃料は、一のシリンダが膨張工程にある間に又は燃料噴射装置供給電圧が燃料噴射装置の最小作動電圧を超える期間中に他のシリンダに噴射される。
他の実施例では、ルーチン700は、エンジンの回転にしたがって、燃料噴射装置供給電圧をモニタする。燃料噴射装置供給電圧が、最小作動電圧を超えたときには、吸気又は圧縮工程にあるシリンダの燃料噴射装置が、該シリンダ内に燃料を供給するために開口される。
さらに他の実施例において、ルーチン700がステップ714から開始する場合には、燃料は、燃料噴射装置供給電圧が燃料噴射装置の最小作動電圧を超えるクランク角期間において噴射される。また、燃料は、燃料噴射装置供給電圧が燃料噴射装置の最小作動電圧を超えるときに、シリンダに噴射されることが好ましい。
さらに他の実施例では、気体燃料噴射装置が、異なるクランク角期間において、気体燃料の少なくとも一部をエンジンのシリンダに供給するように、燃料噴射タイミングを調整するようにしてもよい。この場合において、上記異なるクランク角期間は、バッテリ電圧がシリンダ内のガストルクに起因して周期的に変化したときの最大バッテリ電圧に対応する。
このように、ルーチン700のステップ708では、燃料噴射装置供給電圧が、燃料噴射装置の最小作動電圧よりも大きくなるクランク角期間に一致するように燃料噴射装置の開口開始タイミングを調整。このような方法によれば、燃料噴射タイミングは、冷間時におけるエンジン始動のための燃料噴射の作動確実性が改善されるように、燃料噴射装置供給電圧に基づいて調整される。さらに、燃料噴射装置の開口タイミングは、燃料噴射装置供給電圧が閾値よりも大きくなるように調整されるが、燃料噴射装置の開口期間は、環境又はエンジン温度に応じて変化するようにしてもよい。例えば、より高密度の空気を捕獲するべく、冷間状態にあるエンジンに対して追加燃料を供給するようにしてもよい。
ルーチン700におけるステップ710では、エンジンが始動したか否かを判定する。実施例において、ルーチンは、エンジン速度が、所定時間内に予め定められた閾速度を超えた場合には、エンジンが始動したと判断するエンジン速度が閾速度を越えなかった場合には、ルーチン700は出口に向かう。
エンジン速度が閾速度を超えた場合には、ルーチン700は712へと向かう。ステップ712では、ルーチン700は、燃料噴射タイミングを、基準燃料噴射装置供給電圧に基づくタイミングに戻す。一実施例において、各シリンダの噴射装置の開口タイミングは、エンジン燃焼順序にしたがって連続的に変化する。燃料噴射タイミングの調整は、噴射タイミングの変更によって燃料噴射が中断されないように、燃料噴射が行われていないシリンダに対して実行される。燃料噴射タイミングを、燃料噴射装置供給電圧に基づくタイミングから基準燃料噴射タイミングに切り換えた後は、ルーチン700はルーチン出口へと進む。
燃料噴射装置タイミングを、燃料噴射装置供給電圧に基づくタイミングから基準燃料噴射タイミングに切り換えることなくルーチン700を抜けると、ルーチン700は、エンジンが始動するか又はエンジン始動要求が取り下げられるまで繰り返し実行される点に注意すべきである。
本願明細書において開示される構成及びルーチンは、例示に過ぎず、これらの特徴的な例は、限定的に解釈されるべきではない。何故なら、多くの変形例が可能だからである。例えば、上述のアプローチは、V6、直4、直6、V12、水平対向4気筒エンジン、及びその他のタイプのエンジンに対しても適用することができる。
本明細書の構成は、本明細書において開示された、新規性及び進歩性のある、様々なシステム、構成、特徴、機能、及び/又は特性の全て又は一部の組み合わせを含むものとすることができる。
以下の請求項は、新規性及び進歩性を有すると考えられる全て又は一部の組み合わせを示している。これらの請求項は、「一つ」の構成要件又は「第一」の構成要件、又はそれと等価な構成要件に言及している。このような請求項は、一つ以上の要件を含んでいるものと理解することができ、二つ以上の要件を含むことを排除するものではない。開示された特徴、機能、及び要素、及び/又は特性の全て又は一部の組み合わせが可能である。