JP2011132194A - 血栓溶解活性を有する焼酎用麹菌及びその組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】血栓溶解活性を有する焼酎麹由来食品素材を見出し、大量生産可能で、かつ経口下で安全性の高い血栓溶解用薬理組成物を提供すること。
【解決手段】血栓溶解活性を有する少なくとも1種の焼酎用麹菌若しくは焼酎麹又はその処理物を有効成分として含む血栓溶解剤。
【選択図】なし

Description

本発明は、血栓溶解活性を有する焼酎用麹菌若しくは焼酎麹又はその処理物を含む血栓溶解剤に関する。また本発明は、該血栓溶解剤を含む医薬組成物及び食品、具体的には、血栓性疾患の予防及び/又は治療のための医薬組成物及び食品に関する。
欧米はもとより、日本においては心疾患と脳血管疾患を併せた死因率は悪性新生物のそれを上回り第一位である。近年、壮年及び老年層において、この種の疾病、例えば一過性脳虚血発作、脳梗塞(脳血栓、脳塞栓)、虚血性狭心症、心筋梗塞、動脈血栓症、静脈血栓症、深部静脈血栓症、末梢動脈閉塞症、末梢静脈閉塞症、肺血栓症、肺塞栓症などの血栓に起因する種々の疾病患者が多発し、問題となっている。また、進行が緩慢な癌などと比べ血栓性疾患は、突発的に発症し、適切な処置が取られなければ死の転機をとる可能性が高く点で危険性が高い。このことから、発症予防の重要性が高まってきている。
血栓の形成には、血管の変化、血流の変化、及び血液成分の変化の3つが要因とされており、これら要因が相互に関連しあって血栓が形成されると考えられている。通常生体では、身体が傷つくと血栓を形成し、止血を行い(凝固系)、血栓が形成され過ぎた場合は血栓を除去する(線溶系)ように絶妙なバランスが維持されている。しかし、このバランスが、全身的あるいは局所的に崩れることで血栓が成長すると考えられている(池田康夫監修、血栓症−やさしく・くわしく・わかりやすく−、南江堂、2004年)。成長した血栓は、形成された部位で血液の流れを妨げることもあれば、分離して塞栓を形成し遠く離れた血管を閉塞する場合(例えば肺塞栓症、脳卒中など)もあり、いずれの場合にも血管を閉塞して血液を正常に流さなくなり、血栓症を引き起こす。
血栓の除去には、主としてプラスミノーゲンとプラスミン系を介する繊維素溶解系(線溶系)が関わっている。血栓が生じるとプラスミノーゲンはプラスミノーゲンアクチベーターと共に血栓の主成分であるフィブリンに結合し、血栓上でプラスミノーゲンアクチベーターに活性化されプラスミンになる。生じたプラスミンはフィブリンを分解して血栓を溶解する(野村武夫ら編、図解 血球-生理・病態・臨床 血小板、上血、凝固、線溶、中外医薬社、1994年)。
生体内での血栓溶解がこのような機構であることから、血栓を溶解するためにはプラスミノーゲンアクチベーターを増強する、又は内因性のプラスミノーゲンの活性化を増強することが効果的であると考えられる。実際、臨床において血栓溶解療法としてプラスミノーゲンアクチベーターが使用されている。これまでプラスミノーゲンアクチベーターとしては、ウロキナーゼ(u-PA)及び組織プラスミノーゲンアクチベーター(t-PA)の2種類が知られていたが、いずれも極めて微量しか存在しないため、また静注薬として完全に純化することが必要なため、極めて高価であった。その上、血中での半減期が3〜20分と非常に短いため、持続的な点滴静注が必須であり、患者に多大な苦痛を与える。間接的にプラスミノーゲンを活性化するストレプトキナーゼも、同様に点滴静注が必須であり、抗原性がある等の問題点がある。また、最近では、糸状菌由来のSMTP(Stachybotrys microspora triprenyl phenols)が、内因性のプラスミノーゲンの活性化を増強する化合物として開発されている。活性の面で優れ、医薬品としての利用が考えられるが、生産菌の食経験が知られていないこともあり健康食品としての利用には至っていない。
一方で、経口で摂取して血栓溶解効果のあるものとして実用されているものには、ルンブロキナーゼ(ミミズ抽出物)、ナットウキナーゼ(納豆抽出物)などがある(特許文献1及び非特許文献1)。
ルンブロキナーゼは分子量24〜43kDaの6種類からなるセリンプロテアーゼであり、これらは生体内で血栓を溶解しているセリンプロテアーゼの一種であるプラスミンに相同性がある。これら酵素にはフィブリン分解活性、プラスミノーゲンアクチベーター活性があることがin vitroの試験で明らかにされている(特許文献1)。ルンブロキナーゼ(混合物)をヒトが1日あたり300〜600mg摂取すると、有意な内因性のt-PA量の増大、有意なフィブリン分解産物の一過的増大、及び有意な血漿のフィブリン分解活性の上昇が確認されている(特許文献1)。
ナットウキナーゼは分子量27kDaのプラスミンに相同性があるセリンプロテアーゼを含む。フィブリン分解活性及びプロウロキナーゼ活性化能があることがin vitroの試験で明らかにされている(非特許文献1)。ナットウキナーゼをヒトが1日あたり納豆2パック相当食すると、有意な内因性t-PA量の増大、有意なフィブリン分解産物の一過的増大、及び有意な血漿のフィブリン分解活性の上昇が確認されている(非特許文献1)。
しかし、ミミズは漢方薬あるいは健康食品として中国や韓国での食経験があるものの、現代人にとってはそれを食するにはかなりの抵抗感がある点で問題がある。納豆もヒトによって好き嫌いがあるうえに、ビタミンKを多く含むことから、血液凝固阻害剤であるワルファリンを服用している患者は効果が競合する可能性もあり、そのような患者は摂取することができない。
その他の候補素材として、白麹菌(Aspergillus kawachii)と酵母を用いた発酵によって製造された焼酎の蒸留残渣が抗血栓効果を有するものとして報告されている(特許文献3)。しかし、これは、焼酎の製造過程で生じる残渣についてのみしか評価を行っていない。蒸留残渣は、特有のフレーバーを有し、そのままの状態では嗜好性が低い。また、蒸留残渣の発生は製造期間中に限られ、安定的な入手は難しい。このような現状から、焼酎の蒸留残渣を用いた血栓溶解食品を手軽に実用化することは困難であると考える。
麹菌は、焼酎以外にも日本酒や醤油味噌、酢、漬物など幅広い食品の製造に係わりを持っており、日本人に大変馴染み深い食品素材である。また、胞子の色によって、白麹や黒麹などの焼酎麹や、黄麹などに分類される。近年健康効果で注目を浴びている「もろみ酢」は、黒麹を用いた泡盛の製造工程の副産物により作られるが、これまで白麹や黒麹などの焼酎麹由来食品素材による血栓溶解活性の報告はない。
日本特許第3037355号 特開2009−242255号公報 特開2005−124517号公報
化学と生物 第29巻第119-123頁, 1991年
上述のように、血栓溶解性食品として実用化されているものの中で、広く受け入れられやすく、安心して食することができるものはない。食経験が豊富な麹由来食品素材については、白麹菌による焼酎蒸留残渣のみが報告されており、その特有のフレーバーや安定的な入手には問題がある。広く健康効果が浸透している焼酎麹由来食品素材について評価を行い、血栓溶解活性を有するものを見出せば、食品素材への適応範囲が広がり、有用性も高まると考えられる。
従って、本発明の目的は、焼酎麹由来食品素材について評価を行い、大量生産可能で、且つ、経口下で安全性の高い血栓溶解組成物を提供することである。
本発明者は、黒麹を大麦に接種し製麹した焼酎麹を糖化して得られる糖化物として、手軽に焼酎麹由来食品素材として大量かつ安価に入手することができ、糖化することにより甘酒のような旨味のある素材を得ることができ、この焼酎麹糖化物が、in vivoの試験において、加熱処理後においても血栓溶解活性を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
従って、本発明は以下のとおりである。
(1)血栓溶解活性を有する少なくとも1種の焼酎用麹菌若しくは焼酎麹又はその処理物を有効成分として含む血栓溶解剤。
(2)血栓溶解活性を有する焼酎用麹菌が、アスペルギルス・アワモリ及びアスペルギルス・カワチより選択される菌株、又はその派生株である、(1)に記載の血栓溶解剤。
(3)焼酎麹の処理物が、焼酎麹の糖化物又はその抽出物である、(1)又は(2)に記載の血栓溶解剤。
(4)焼酎用麹菌若しくは焼酎麹の処理物が、80〜150℃にて10〜30分加熱処理したものである、(1)〜(3)のいずれかに記載の血栓溶解剤。
(5)焼酎用麹菌若しくは焼酎麹の処理物が、凍結乾燥物である、(1)〜(4)のいずれかに記載の血栓溶解剤。
(6)焼酎用麹菌若しくは焼酎麹の処理物が、乾燥粉末である、(1)〜(5)のいずれかに記載の血栓溶解剤。
(7)(1)〜(6)のいずれかに記載の血栓溶解剤と医薬上許容される担体とを含む医薬組成物。
(8)血栓性疾患の予防及び/又は治療のための、(7)に記載の医薬組成物。
(9)血栓性疾患が、一過性脳虚血発作、脳梗塞、虚血性狭心症、心筋梗塞、動脈血栓症、静脈血栓症、深部静脈血栓症、末梢動脈閉塞症、末梢静脈閉塞症、肺血栓症、及び肺塞栓症からなる群より選択されるものである、(8)に記載の医薬組成物。
(10)経口投与用である、(7)〜(9)のいずれかに記載の医薬組成物。
(11)(1)〜(6)のいずれか1項に記載の血栓溶解剤が配合された食品。
本発明により、優れた血栓溶解活性を有する血栓溶解剤が提供される。本血栓溶解剤は、繊維素溶解系を活性化することで、血栓を溶解する作用を有し、血栓性疾患に対して優れた予防、改善及び治療効果を示す。また、食経験のある焼酎用麹菌及び焼酎麹を含むものであり、安全性が高く長期間の継続的摂取が容易である。さらに、100℃処理後でもその血栓溶解活性が保持される。そのため、本発明の血栓溶解剤は、血栓形成に対する予防及び改善のための食品及び飼料にも使用できる。
ガンマ線殺菌焼酎麹又は加熱殺菌焼酎麹を混合して飼料を摂取させたラットの血漿中のPAI-1抗原量を示す。 ガンマ線殺菌焼酎麹又は加熱殺菌焼酎麹を混合して飼料を摂取させたラットの血漿ユーグロブリン画分のフィブリン分解活性を示す。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、血栓溶解活性を有する焼酎用麹菌若しくは焼酎麹又はその処理物を含む血栓溶解剤、並びにその医薬及び食品用途に関する。
本発明において使用する焼酎用麹菌は、血栓溶解活性を有する焼酎用麹菌である。焼酎用麹菌とは、不完全菌類に属し、蒸煮した大麦や米などの穀類などの固体原料を醗酵し、糖質からクエン酸を産生する糸状菌を指し、例えばアスペルギルス属に属する糸状菌が含まれる。焼酎の製造において一般的に使用されている焼酎用麹菌としては、例えば黒麹菌として知られるアスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori)、アスペルギルス・サイトイ(Aspergillus saitoi)及びアスペルギルス・ウサミ(Aspergillus usami)、並びに白麹菌として知られるアスペルギルス・カワチ(Aspergillus kawachii)などが挙げられる。
本発明に関して、「血栓溶解活性」とは、血栓を溶解する能力を指し、具体的には血漿ユーグロブリン画分のフィブリン分解活性を活性化して、血栓を溶解する能力を指す。この血栓溶解活性は、当技術分野で公知の方法により評価することができる。例えば、評価対象の焼酎用麹菌若しくは焼酎麹サンプル(若しくは処理物)又は組成物サンプルを標準飼料に混合し、ラットに混餌飼料を一定期間投与した後にクエン酸血漿を採血し、血漿ユーグロブリン画分を調製した後、フィブリン平板に滴下して、37℃で保温した後の溶解窓の面積を比較することによって、ex vivoでのフィブリン分解活性の活性化に基づく血栓溶解活性を評価することができる。この場合、血栓溶解活性が高いほど、溶解窓の面積が大きくなる。また、評価対象の焼酎用麹菌若しくは焼酎麹サンプル(若しくは処理物)又は組成物サンプルを標準飼料に混合し、ラットに混餌飼料を一定期間投与した後にクエン酸血漿を採血し、プラスミノーゲン活性化因子(PA)を阻害するプラスミノーゲンアクチベーターインヒビター(PAI-1)量の変化を測定することによって、血栓を溶解するプラスミン量に基づく血栓溶解活性をex vivoで評価することができる。血栓溶解活性が高いほど、PAI-1量は低下する。これらの方法の詳細については実施例2に記載している。
本発明において焼酎用麹菌若しくは焼酎麹又はその処理物が有する「血栓溶解活性」は、これらを投与しない場合と比較して、血漿ユーグロブリン画分のフィブリンプレート分解活性を少なくとも1.1倍、好ましくは1.2倍程度に増加させる。なお血漿ユーグロブリン画分のフィブリンプレート分解活性は、本来、生体内で恒常性の維持によって変動しにくい指標と考えられるため、この程度の変化は意味のある変化であると考えられる。
従って、本発明においては、上述したような方法により血栓溶解活性を有すると評価された焼酎用麹菌であれば、任意の焼酎用麹菌を用いることができる。そのような血栓溶解活性を有する好ましい焼酎用麹菌としては、アスペルギルス・アワモリ(秋田今野商店 焼酎黒こうじ「純」、樋口松の助商店 黒麹菌、NBRC 4314株)、アスペルギルス・カワチ(樋口松の助商店 白麹菌 本格焼酎菌麦用、秋田今野商店 焼酎白こうじ菌、NBRC4308株)、それらの混合品(秋田今野商店 焼酎黒こうじ菌マイルド)などが挙げられる。これらの菌株の一例として、秋田今野商店製の麹菌(焼酎黒こうじ菌マイルド、黒麹菌と白麹菌の配合菌)を用いて製麹した焼酎麹の糖化処理物は、後述する実施例において、血漿ユーグロブリン画分のフィブリンプレート分解活性を少なくとも1.1倍〜1.2倍程度に増強することが確認されている。またこれらの菌株は、高温(100℃)で一定時間加熱処理をした後も、所望の血栓溶解活性を保持しており、後述する用途においても好適に用いることができる。
また本発明においては、上述した具体的な菌株の変異株又は派生株も、血栓溶解活性を有する限り使用することができる。
焼酎用麹菌は、焼酎用麹菌の固体培養に通常用いられる蒸煮した穀物原料を使用して、適当な条件下で固体培養することにより調製することができる。穀物原料としては、大麦、米などが挙げられ、焼酎用麹菌が効率よく生育する穀物原料であれば、様々な穀類、搗精歩合のものを原料として用いることができる。詳しくは、麹学,日本醸造協会発行,村上英也編著(1986)等の成書に記載の通りである。
培養後、得られる焼酎用麹菌培養物をそのまま使用してもよいし、さらに必要に応じて遠心分離などによる粗精製及び/又は濾過等による固液分離や滅菌操作を行ってもよい。なお、本発明の血栓溶解剤に使用する焼酎用麹菌は、生菌体であっても死菌体であってもよく、湿潤菌体であっても乾燥菌体であってもよい。また、焼酎用麹菌は、1種を使用してもよいし、又は2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
また本発明の血栓溶解剤においては、上述した焼酎用麹菌を用いて、焼酎の通常の製造工程に従って製麹することにより得られる焼酎麹を用いることも可能である。例えば、蒸煮した穀物原料に焼酎用麹菌を種麹として接種して十分に攪拌混合し、約30℃〜45℃の範囲で送風、攪拌、静置を繰り返して培養し、焼酎麹を得ることができる。使用する穀物原料としては、例えばイネ科に属する植物(具体的には米、大麦、小麦、ライ麦及びオート麦)、イモ植物(具体的にはサツマイモ)が挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、穀物原料としては、全植物体を使用してもよいし、その植物の花、茎、葉、種子、根、胚芽、糠、ふすまなどの各部位を使用してもよい。特に、搗精した麦、麦胚芽及び麦ふすま、精米した米及び米胚芽を単独で又は適宜組み合わせて使用するのが好ましい。穀物原料は、そのまま製麹に使用することもできるが、蒸煮処理や、粉砕・破砕処理を行うことによって、効率的に製麹することができる。種麹として使用する焼酎用麹菌は、任意の形態であってよいが、例えば胞子形態のもの、上述のように培養した麹菌培養物の形態、これらを凍結乾燥した形態などを使用することができる。製麹は、焼酎用麹菌と穀物原料とを接触させることで行うことができる。穀物原料と接触させる焼酎用麹菌の量は、特に限定されるものではないが、通常、穀物原料に対して乾燥麹菌粉末が0.005〜10質量%であり、好ましくは0.05〜5質量%である。製麹を行う際の温度、pH、時間などの条件もまた当技術分野で公知であり、通常は4〜60℃の温度で、pH3〜7程度において6時間〜14日間かけて行うことができる。
さらに、所望により、焼酎用麹菌又は焼酎麹にさらなる処理を行って、焼酎用麹菌又は焼酎麹の処理物を得てもよい。そのような処理の例を以下に記載する。
焼酎用麹菌若しくは焼酎麹又はその処理物を適当な溶媒に懸濁又は希釈することによって、懸濁物又は希釈物を調製することができる。使用することができる溶媒としては、例えば水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)などが挙げられる。
焼酎用麹菌若しくは焼酎麹又はその処理物に適当な量の水を添加して、場合によりさらに穀物原料(米、麦など)を投入して、約20〜45℃において糖化することによって、糖化物を調製することができる。得られる糖化物は、そのまま使用してもよいし、又は濾過、滅菌、希釈、濃縮などの他の処理を行ってもよい。
なお、本発明においては、焼酎用麹菌若しくは焼酎麹又はその処理物について発酵を行う必要はないが、これを除外するものではない。発酵を行う場合には、焼酎用麹菌若しくは焼酎麹又はその処理物を用いて、酵母(酒母)を加えて一次発酵し、さらに穀物原料(米、麦など)を投入して発酵を行うことにより、発酵物(二次もろみ)を調製することができる。
また、焼酎用麹菌若しくは焼酎麹又はその処理物を加熱処理することにより、加熱処理物を調製することができる。加熱処理物を調製するには、焼酎用麹菌若しくは焼酎麹又はその処理物を、一定時間、例えば約10分〜1時間(例えば約10〜30分)にわたり、高温処理(例えば80〜150℃)する。
焼酎用麹菌若しくは焼酎麹又はその処理物を滅菌処理によって、滅菌処理物を調製することができる。焼酎麹又はその処理物を滅菌処理するには、例えば、濾過滅菌、放射性殺菌(γ線殺菌など)、過熱式殺菌、加圧式殺菌などの公知の滅菌処理を行うことができる。
焼酎用麹菌若しくは焼酎麹又はその処理物を破砕することによって、破砕物、無細胞抽出物を調製することができる。例えばそのような破砕は、超音波処理又はフィルター濾過により行うことができる。
焼酎用麹菌若しくは焼酎麹又はその処理物を、適当な水性溶媒又は有機溶媒を用いて抽出することによって、抽出物を得ることができる。抽出方法としては、水性溶媒又は有機溶媒を抽出溶媒として用いる抽出方法であれば特に制限されないが、上記の焼酎用麹菌若しくは焼酎麹又は他の処理を行った処理物を、水性又は有機溶媒(例えば水、メタノール、エタノールなど)中に浸漬、攪拌又は還流する方法など公知の方法を挙げることができる。
また、焼酎用麹菌若しくは焼酎麹又はその処理物を乾燥して粉状物又は粒状物とすることができる。具体的な乾燥方法としては、特に制限されないが、例えば、噴霧乾燥、ドラム乾燥、真空乾燥、凍結乾燥などが挙げられ、これらを単独で又は組み合わせて採用できる。その際、必要に応じて通常用いられる賦形剤を添加してもよい。乾燥後に、ミルなどを使用して粉末化してもよい。
さらに、焼酎用麹菌若しくは焼酎麹又はその処理物から、公知の分離・精製法を用いて、血栓溶解活性を有する成分又は画分を精製してもよい。そのような分離・精製法としては、塩沈殿及び有機溶媒沈殿などの溶解性を利用する方法、透析、限外濾過、ゲル濾過などの分子量の差を利用する方法、イオン交換クロマトグラフィーのような電荷の差を利用する方法、アフィニティクロマトグラフィーのような特異的結合を利用する方法、疎水クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィーなどの疎水性を利用する方法などが挙げられ、これらの方法の1種を、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
上述した処理は、単一の処理を行ってもよいし、あるいは複数を適宜組み合わせて行ってもよい。本発明においては、このような焼酎用麹菌又は焼酎麹の処理物も血栓溶解剤に用いることができる。
本発明の血栓溶解剤に含まれる焼酎用麹菌若しくは焼酎麹又はその処理物は、摂取重量として、0.0001〜5g/kg程度である。
上記で得られた焼酎用麹菌若しくは焼酎麹又はその処理物は、単独で又は他の成分を共に、血栓溶解剤として、又は食品、飼料、化粧料若しくは医薬組成物に配合して継続的に摂取すると、血栓性疾患の予防、改善及び治療効果が期待される。また、焼酎用麹菌若しくは焼酎麹又はその処理物は、血栓溶解剤として、線維素溶解系の解明や、他の血栓溶解性物質の探索・スクリーニングなどのために試験又は研究において使用することも可能である。
本発明の血栓溶解剤は、有効成分として上述した焼酎用麹菌若しくは焼酎麹又はその処理物を含むものであるが、1種の焼酎用麹菌若しくは焼酎麹又はその処理物を含んでもよいし、複数の異なる焼酎用麹菌若しくは焼酎麹又はその処理物、さらには異なる処理を行った複数の処理物を組み合わせて含んでもよい。
また本発明の血栓溶解剤には、有効成分である焼酎用麹菌若しくは焼酎麹又はその処理物に加えて、目的とする作用を阻害しない限り、後述する添加剤、他の公知の血栓溶解剤などを単独又は複数組み合わせて添加してもよい。
本発明の血栓溶解剤の形態は特に制限されないが、例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、粉剤、シロップ剤、ドライシロップ剤、液剤、懸濁剤、吸入剤などの経口剤、坐剤などの経腸製剤、軟膏、クリーム剤、ゲル剤、貼付剤などの皮膚外用剤、点滴剤、注射剤などの剤型としてもよい。これらのうちでは、経口剤とするのが好ましい。なお、液剤、懸濁剤などの液体製剤は、服用直前に水又は他の適当な媒体に溶解又は懸濁する形であってもよく、また錠剤、顆粒剤の場合には周知の方法でその表面をコーティングしてもよい。さらに、本発明の血栓溶解剤は、当技術分野で公知の技術を使用して、徐放性製剤、遅延放出製剤又は即時放出製剤などの放出が制御された製剤としてもよい。
このような剤型の血栓溶解剤は、上述した成分に、通常用いられる賦形剤、崩壊剤、結合剤、湿潤剤、安定剤、緩衝剤、滑沢剤、保存剤、界面活性剤、甘味料、矯味剤、芳香剤、酸味料、着色剤などの添加剤を剤型に応じて配合し、常法に従って製造することができる。例えば、血栓溶解剤を医薬組成物とする場合には、医薬上許容される担体又は添加剤を配合することができる。そのような医薬上許容される担体及び添加物の例として、水、医薬上許容される有機溶剤、コラーゲン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、アルギン酸ナトリウム、水溶性デキストラン、水溶性デキストリン、カルボキシメチルスターチナトリウム、ペクチン、キサンタンガム、アラビアゴム、カゼイン、ゼラチン、寒天、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ワセリン、パラフィン、ステアリルアルコール、ステアリン酸、ヒト血清アルブミン、マンニトール、ソルビトール、ラクトース、医薬添加物として許容される界面活性剤などの他、リポゾームなどの人工細胞構造物などが挙げられる。
本発明の血栓溶解剤が、上記添加剤や他の血栓溶解剤などを含む場合、有効成分である焼酎用麹菌若しくは焼酎麹又はその処理物の含有量は、その剤型により異なるが、処理前の焼酎用麹菌若しくは焼酎麹の量として、通常は、0.01〜99質量%、好ましくは0.1〜80質量%、より好ましくは1〜75質量%の範囲であり、焼酎用麹菌若しくは焼酎麹の処理物(例えば濃縮物)としては、通常は、0.0001〜80質量%、好ましくは0.001〜50質量%、より好ましくは0.1〜40質量%の範囲であり、有効成分の望ましい摂取量を摂取できるように、1日当たりの投与量が管理できる形にするのが望ましい。
さらに、本発明の血栓溶解剤には、医薬、食品、飼料の製造に用いられる種々の添加剤やその他種々の物質を共存させてもよい。このような物質や添加剤としては、各種油脂(例えば、大豆油、コーン油、サフラワー油、オリーブ油などの植物油、牛脂、イワシ油などの動物油脂)、生薬(例えばロイヤルゼリー、人参など)、アミノ酸(例えばグルタミン、システイン、ロイシン、アルギニンなど)、多価アルコール(例えばエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、糖アルコール、例としてソルビトール、エリスリトール、キシリトール、マルチトール、マンニトールなど)、天然高分子(例えばアラビアガム、寒天、水溶性コーンファイバー、ゼラチン、キサンタンガム、カゼイン、グルテン又はグルテン加水分解物、レシチン、澱粉、デキストリンなど)、ビタミン(例えばビタミンC、ビタミンB群など)、ミネラル(例えばカルシウム、マグネシウム、亜鉛、鉄など)、食物繊維(例えばマンナン、ペクチン、ヘミセルロースなど)、界面活性剤(例えばグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルなど)、精製水、賦形剤(例えばブドウ糖、コーンスターチ、乳糖、デキストリンなど)、安定剤、pH調製剤、酸化防止剤、甘味料、呈味成分、酸味料、着色料及び香料などが挙げられる。
また、他の公知の血栓溶解剤の他にも、機能性成分若しくは添加剤として、上記以外に、例えば、タウリン、グルタチオン、カルニチン、クレアチン、コエンザイムQ、グルクロン酸、グルクロノラクトン、トウガラシエキス、ショウガエキス、カカオエキス、ガラナエキス、ガルシニアエキス、テアニン、γ-アミノ酪酸、カプサイシン、カプシエイト、各種有機酸、フラボノイド類、ポリフェノール類、カテキン類、キサンチン誘導体、フラクトオリゴ糖などの難消化性オリゴ糖、ポリビニルピロリドンなどを配合することができる。
これら添加剤の配合量は、添加剤の種類と所望すべき摂取量に応じて適宜決められるが、血栓溶解剤の総量に対して、一般的には0.01〜90質量%の範囲であり、好ましくは0.1〜50質量%の範囲である。
本発明の血栓溶解剤を投与又は摂取する対象は、脊椎動物、具体的には、哺乳動物、例えばヒト、霊長類(サル、チンパンジーなど)、家畜動物(ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジなど)、ペット用動物(イヌ、ネコなど)、実験動物(マウス、ラットなど)、さらには爬虫類及び鳥類である。特に、遺伝的若しくは環境的要因により血栓を形成しやすいヒト、又は以前に血栓症の発症履歴のあるヒトが対象として好ましい。
本発明の血栓溶解剤の投与又は摂取量は、対象の年齢及び体重、投与・摂取経路、投与・摂取回数により異なり、当業者の裁量によって広範囲に変更することができる。例えば、経口的に投与又は摂取する場合には、血栓溶解剤に含まれる焼酎用麹菌若しくは焼酎麹及び/又はその処理物の投与・摂取量は、処理前の焼酎麹の量として、通常0.1〜5000 mg/kg/day、好ましくは1〜500 mg/kg/dayである。本発明の血栓溶解剤は安全性の高いものであるため、摂取量をさらに増やすこともできる。1日当たりの摂取量は、1回で摂取してもよいが、数回に分けて摂取してもよい。また、その投与又は摂取の頻度も、特に限定されず、投与・摂取経路、対象の年齢及び体重、血栓性疾患の症状、及び疾患の重篤度などの種々の条件に応じて適宜選択することが可能である。
本発明の血栓溶解剤の投与・摂取経路は特に限定されず、経口投与若しくは摂取、又は非経口投与(例えば気道内、直腸内、皮下、筋肉内、静脈内投与)などが挙げられる。本発明の血栓溶解剤は、特に経口的に投与又は摂取することが好ましい。
本発明の血栓溶解剤は、血漿ユーグロブリン画分におけるフィブリン分解活性を増強することで、血栓を溶解する作用を有し、血栓性疾患に対して、優れた予防、改善及び治療効果を示す。また、安全性が高く長期間の継続的摂取が容易である。そのため、本発明の血栓溶解剤は、血栓形成に対する予防及び改善のための食品、飼料及び化粧料にも使用できる。さらに、本発明の血栓溶解剤、食品、化粧料又は飼料を、上述した摂取量を管理できる形態で摂取することにより、血栓性疾患に対する予防方法及び治療方法が提供される。
上述したように、本発明の血栓溶解剤は、医薬組成物又は機能性食品として、血栓性疾患の予防又は治療のために用いることができる。本発明において「血栓性疾患」とは、血液の塊、すなわち血栓が、血管(動脈及び静脈)を防ぐことにより又は血管壁の細胞(血管内皮細胞)を傷害することにより引き起こされる疾患を指す。血栓性疾患には、例えば限定されるものではないが、一過性脳虚血発作、脳梗塞(脳血栓、脳塞栓)、虚血性狭心症、心筋梗塞、動脈血栓症、静脈血栓症、深部静脈血栓症、末梢動脈閉塞症、末梢静脈閉塞症、肺血栓症及び肺塞栓症が含まれる。
また本発明において、血栓性疾患の「予防又は治療」とは、動物やヒトなどの対象において、血栓性疾患の発症の予防、血栓性疾患の発症後(病的状態)の治療を意味するが、血栓性疾患の発症を遅延又は抑制することも意味する。また、血栓性疾患に起因して発症する疾患又は障害の発症を防止することも含まれる。例えば、予防目的で本発明の血栓溶解剤を使用する場合、血栓性疾患の素因となる遺伝的要因、環境的要因若しくは他の異常を有する対象、又は以前に血栓症の発症履歴のある対象に投与又は摂取させることが好ましい。具体的には、静脈血栓塞栓症の傾向を増大させる遺伝的要因として、活性化プロテインC(APC)に対する抵抗性を生じる第V因子Leiden変異、プロトロンビン20210遺伝子変異、及びプロテインC、プロテインS、プロテインZ又はアンチトロンビン欠乏症が知られている。また、静脈及び動脈血栓症の素因となる後天性異常として、ヘパリン誘発性血小板減少症/血栓症、抗リン脂質抗体の存在、及び高ホモシステイン血症が知られている。また、静脈血栓のリスク要因として、手術又は麻痺などによる寝たきり状態に関連して起こるうっ血、心不全、妊娠、肥満、外傷又は手術による組織損傷、腫瘍、敗血症、アテローム性動脈硬化症が知られている。また、以前に血栓症の発症履歴がある場合には、その再発の防止のために本発明の血栓溶解剤を使用することができる。
本発明に係る血栓溶解剤により治療又は予防の対象となる血栓性疾患は、単独であっても、併発したものであっても、上記以外の他の疾病を併発したものであってもよい。
本発明の血栓溶解剤は、他の医薬、治療又は予防法等と併用してもよい。このような他の医薬は、本発明の血栓溶解剤と共に一製剤を成していてもよいし、また、別々の製剤であって同時に又は間隔を空けて投与してもよい。
上述したように、本発明の血栓溶解剤は、血栓溶解作用を有するうえ、食経験のある焼酎用麹菌又は焼酎麹を含むものであり、安全性が高い。また、有効成分として含まれる焼酎用麹菌若しくは焼酎麹又はその処理物は、高温処理、凍結乾燥処理及び粉末化処理後でも血栓溶解活性を保持することから、食品などの加工処理に適している。さらに、様々な食品に添加しても食品自体の風味を阻害しないため、種々の食品に添加して継続的に摂取することができ、血栓性疾患の予防及び改善が期待される。
本発明の食品は、上述した血栓溶解剤を含有する。本発明において、食品には飲料も包含される。本発明の血栓溶解剤を含有する食品には、血栓溶解作用により健康増進を図る健康食品、機能性食品、特定保健用食品などの他、上記血栓溶解剤を配合できる、全ての食品が含まれる。
本発明の血栓溶解剤を含有する食品として、機能性食品はとりわけ好ましい。本発明の「機能性食品」は、生体に対して一定の機能性を有する食品を意味し、例えば、特定保健用食品(条件付きトクホ[特定保健用食品]を含む)及び栄養機能食品を含む保健機能食品、特別用途食品、栄養補助食品、健康補助食品、サプリメント(例えば、錠剤、被覆錠、糖衣錠、カプセル及び液剤などの各種剤形のもの)及び美容食品(例えばダイエット食品)などのいわゆる健康食品全般を包含する。本発明の機能性食品はまた、コーデックス(FAO/WHO合同食品規格委員会)の食品規格に基づく健康強調表示(Health claim)が適用される健康食品を包含する。
食品の具体例としては、経管経腸栄養剤などの流動食、錠菓、錠剤、チュアブル錠、錠剤、粉剤、散剤、カプセル剤、顆粒剤及びドリンク剤などの製剤形態の健康食品及び栄養補助食品;緑茶、ウーロン茶及び紅茶などの茶飲料、清涼飲料、ゼリー飲料、スポーツ飲料、乳飲料、炭酸飲料、野菜飲料、果汁飲料、醗酵野菜飲料、醗酵果汁飲料、発酵乳飲料(ヨーグルトなど)、乳酸菌飲料、乳飲料(コーヒー牛乳、フルーツ牛乳など)、粉末飲料、ココア飲料、牛乳並びに精製水などの飲料;バター、ジャム、ふりかけ及びマーガリンなどのスプレッド類;マヨネーズ、ショートニング、カスタードクリーム、ドレッシング類、パン類、米飯類、麺類、パスタ、味噌汁、豆腐、ヨーグルト、スープ又はソース類、菓子(例えば、ビスケットやクッキー類、チョコレート、キャンディ、ケーキ、アイスクリーム、チューインガム、タブレット)などが挙げられる。
本発明の食品は、上記血栓溶解剤のほかに、その食品の製造に用いられる他の食品素材、各種栄養素、各種ビタミン、ミネラル、食物繊維、種々の添加剤(例えば呈味成分、甘味料、有機酸などの酸味料、安定剤、フレーバー)などを配合して、常法に従って製造することができる。
本発明の食品において、血栓溶解剤の配合量は、食品の形態や求められる食味又は食感を考慮して、当業者が適宜定めることができる。通常は、添加される血栓溶解剤中の焼酎用麹菌若しくは焼酎麹及び/又はその処理物の総量が、0.001〜100質量%、好ましくは0.01〜80質量%、より好ましくは0.01〜50質量%となるような血栓溶解剤の配合量が適当である。本発明の血栓溶解剤は安全性の高いものであるため、食品におけるその配合量をさらに増やすこともできる。血栓溶解剤の望ましい摂取量を飲食できるよう、1日当たりの摂取量が管理できる形にするのが好ましい。
本発明の血栓溶解剤は、当業者が利用可能である任意の適切な方法によって、食品に含有させればよい。例えば、本発明の血栓溶解剤を、液体状、ゲル状、固体状、粉末状又は顆粒状に調製した後、それを食品に配合することができる。あるいは本発明の血栓溶解剤を、食品の原料中に直接混合又は溶解してもよい。本発明の血栓溶解剤は、食品に塗布、被覆、浸透又は吹き付けてもよい。本発明の血栓溶解剤は、食品中に均一に分散させてもよいし、偏在させてもよい。本発明の血栓溶解剤を入れたカプセルなどを調剤してもよい。本発明の血栓溶解剤を、可食フィルムや食用コーティング剤などで包み込んでもよい。また本発明の血栓溶解剤に適切な賦形剤等を加えた後、錠剤などの形状に成形してもよい。本発明の血栓溶解剤を含有させた食品はさらに加工してもよく、そのような加工品も本発明の範囲に包含される。
本発明の食品の製造においては、食品に慣用的に使用されるような各種添加物を使用してもよい。添加物としては、限定するものではないが、発色剤(亜硝酸ナトリウム等)、着色料(クチナシ色素、赤102等)、香料(オレンジ香料等)、甘味料(ステビア、アステルパーム等)、保存料(酢酸ナトリウム、ソルビン酸等)、乳化剤(コンドロイチン硫酸ナトリウム、プロピレングリコール脂肪酸エステル等)、酸化防止剤(EDTA二ナトリウム、ビタミンC等)、pH調整剤(クエン酸等)、化学調味料(イノシン酸ナトリウム等)、増粘剤(キサンタンガム等)、膨張剤(炭酸カルシウム等)、消泡剤(リン酸カルシウム)等、結着剤(ポリリン酸ナトリウム等)、栄養強化剤(カルシウム強化剤、ビタミンA等)、賦形剤(水溶性デキストリン等)等が挙げられる。さらに、オタネニンジンエキス、エゾウコギエキス、ユーカリエキス、杜仲茶エキス等の機能性素材をさらに添加してもよい。
本発明の食品は、上述したとおり、血栓溶解増強作用を有し、結果的に血栓溶解作用を有するため、血栓性疾患に対して優れた予防及び改善作用を奏する上に、安全性が高く副作用の心配がない。また、本発明の血栓溶解剤は焼酎蒸留残渣であるもろみ酢のように癖のある醗酵臭がなく、風味がよく、様々な食品に添加してもその食品の風味を阻害しないため、得られる食品は長期間の継続的摂取が容易であり、血栓性疾患の優れた予防及び改善作用が期待される。なお、本発明の食品を、血栓溶解剤の望ましい摂取量を管理できる形態で飲食することにより、該食品を用いる、血栓性疾患に対する予防方法及び改善方法が提供される。
さらに本発明の血栓溶解剤は、ヒト用の食品のみならず、家畜、競走馬、ペットなどの飼料にも配合することができる。飼料は、対象がヒト以外であることを除き食品とほぼ等しいことから、上記の食品に関する記載は、飼料についても同様に当てはめることができる。
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
<黒麹の培養とサンプルの調製>
90%搗精大麦を定法に従って蒸煮した。これに0.1%の焼酎用麹菌胞子粉末を少量の水に懸濁して植菌を行い、定法に従って焼酎麹の製麹を42時間かけて行った。焼酎用麹菌胞子粉末としては、市販品(黒麹マイルド、秋田今野商店製)を用いた。次に、焼酎麹2.5kgに対し、3Lの水を添加して40℃、約3日間糖化を行った。
その後、100℃の湯浴で20分間加熱殺菌処理を行うサンプル、又は加熱殺菌を行わないサンプルの2種類について、凍結乾燥を行った。加熱殺菌を行わなかったサンプルについては、20kGy(キログレイ)の強度にて、ガンマ線滅菌を行った。このようにして調製した黒麹糖化物の2種の凍結乾燥物サンプルについて、ミルで粉砕して粉末化した。
[実施例2]
<ラットを用いた混餌投与試験>
対照としてAIN-93G標準飼料(オリエンタル酵母工業(株))を用いて、その標準飼料に実施例1で得られた黒麹糖化物を10%(w/w)になるように添加した飼料、及び陽性対照として市販のルンブロキナーゼ含有健康食品(ワキ製薬(株))を2%(w/w)になるように添加した飼料を準備した。これらの飼料を、それぞれWistar系ラット(15週齢、オス、各群5又は6匹)に毎日自由摂取させ、9日後にペントバルビタールにて麻酔し、ラットの腹部大動脈より3.13%クエン酸ナトリウムの入った採血管に採血した。これを3000rpm、2℃、15分にて遠心を行い、得られた血漿を用いて以下のPAI-1測定と血栓溶解活性測定を行った。
<ラット血漿中のPAI-1抗原量測定>
生体内におけるプラスミノーゲン量は過分に存在することから、血栓を溶解するプラスミン量の増加には、プラスミノーゲン活性化因子であるPAとそれを阻害するプラスミノーゲンアクチベーターインヒビター(PAI-1)量の変化がその機序に重要である。
現在、ラット血漿中のPA抗原量を定量的に評価する方法は報告されておらず、PAI-1抗原量はIMUCLONE Rat PAI-1 ELISA kit(American Diagnostica Inc.)により定量可能なことから、このキットを使用して、上記のように得られた血漿を用いて評価を行った。
その結果、図1に示すように、陽性対照であるルンブロキナーゼ混餌投与群、ガンマ線殺菌黒麹糖化物混餌投与群、及び加熱殺菌黒麹糖化物混餌投与群は、共に対照である標準飼料群に比べ、血漿中のPAI-1抗原量を低下させる傾向を示すことがわかった。
<ラット血漿を用いた血栓溶解活性測定>
血栓溶解活性測定は、フィブリン平板法を用いて、フィブリン分解活性を測定することによって評価を行った。本法は、プラスミノーゲンが十分量存在するヒト血漿を用いた場合などでよく評価に用いられているが、ラット血漿中のプラスミノーゲン量は非常に少ないため、そのままの状態では血栓溶解活性が十分に評価できない。そこで本発明者らは、ウシプラスミノーゲンを十分量添加することで、ラット血漿の血栓溶解活性を評価できることを見出しており(特開2006−131551号公報)、この方法を用いることで、ラットに経口に摂取させた場合でも、血栓溶解活性を持つ素材の探索が可能である。
上述のように得られたラット血漿よりユーグロブリン画分を調製した(M. J. Gallimoreらの方法とA. A. Smithらの方法から改変、Thrombos. Diathis. Haemorrh. 26, 295-310, 1971及びThrombosis. Reserch. 112, 329-337, 2003)。すなわち血漿を氷冷下、19倍量の氷冷水を添加し、0.25%酢酸を添加してpH 5.70に調整し、10分後、3000rpm、2℃、10分間遠心を行い、上清と沈殿を分けた。得られた沈殿を元の濃度の1倍相当になるように、2.6 mMホウ酸ナトリウム緩衝液pH 9.0を添加して溶解させた。
このユーグロブリン画分を用いてフィブリン平板法を行った。まず、ウシフィブリン濃度が0.33%になるようフィブリン平板を作製した(Astrup and Mullertzの方法;Arch. Biochem. Biophys. 40, 346-351, 1952)。ウシ由来プラスミノーゲン(シグマ社製)は570μgタンパク質/ml(2.28 U/ml)となるよう0.1 Mリン酸ナトリウム緩衝液pH7.4に溶解した。
ユーグロブリン画分とプラスミノーゲン溶液を2:1になるように混和したフィブリノーゲン添加ユーグロブリンを、77μlをフィブリン平板に滴下し、37℃にて20時間インキュベートした。そのときフィブリンが溶解されてできたクリアゾーン(溶解窓)の面積(mm2)を計測した。
その結果、図2に示すように、陽性対照であるルンブロキナーゼ混餌投与群、並びにガンマ線殺菌黒麹糖化物混餌投与群及び加熱殺菌黒麹糖化物混餌投与群は、共に対照である標準飼料に比べ、危険率5%以下で、また、加熱殺菌黒麹糖化物混餌投与群は、対照である標準飼料群に比べ、危険率1%以下で血栓溶解活性を増強することが明らかとなった。その増強率は対照と比較して、ルンブロキナーゼが110%であったのに対し、ガンマ線殺菌黒麹糖化物は112%、加熱殺菌黒麹糖化物は116%であった。
このように、黒麹糖化物は加工処理の違いに関わらず、また加熱処理、粉末処理及び凍結乾燥処理後も、血栓溶解活性を増強することが示された。
本発明により、優れた血栓溶解作用を有する血栓溶解剤が提供される。本血栓溶解剤は、血漿ユーグロブリン画分のフィブリン分解活性を増強することで、血栓を溶解する作用を有し、血栓性疾患に対して優れた予防、改善及び治療効果を示す。また、食経験のある焼酎用麹菌若しくは焼酎麹又はその処理物を含むものであり、安全性が高く長期間の継続的摂取が容易である。さらに、高温処理後でもその血栓溶解活性が保持される。そのため、本発明の血栓溶解剤は、血栓形成に対する予防及び改善のための食品及び飼料にも使用できる。

Claims (11)

  1. 血栓溶解活性を有する少なくとも1種の焼酎用麹菌若しくは焼酎麹又はその処理物を有効成分として含む血栓溶解剤。
  2. 血栓溶解活性を有する焼酎用麹菌が、アスペルギルス・アワモリ及びアスペルギルス・カワチより選択される菌株、又はその派生株である、請求項1に記載の血栓溶解剤。
  3. 焼酎麹の処理物が、焼酎麹の糖化物又はその抽出物である、請求項1又は2に記載の血栓溶解剤。
  4. 焼酎用麹菌若しくは焼酎麹の処理物が、80〜150℃にて10〜30分加熱処理したものである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の血栓溶解剤。
  5. 焼酎用麹菌若しくは焼酎麹の処理物が、凍結乾燥物である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の血栓溶解剤。
  6. 焼酎用麹菌若しくは焼酎麹の処理物が、乾燥粉末である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の血栓溶解剤。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の血栓溶解剤と医薬上許容される担体とを含む医薬組成物。
  8. 血栓性疾患の予防及び/又は治療のための、請求項7に記載の医薬組成物。
  9. 血栓性疾患が、一過性脳虚血発作、脳梗塞、虚血性狭心症、心筋梗塞、動脈血栓症、静脈血栓症、深部静脈血栓症、末梢動脈閉塞症、末梢静脈閉塞症、肺血栓症、及び肺塞栓症からなる群より選択されるものである、請求項8に記載の医薬組成物。
  10. 経口投与用である、請求項7〜9のいずれか1項に記載の医薬組成物。
  11. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の血栓溶解剤が配合された食品。
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