JP2011131427A - 塗膜構造、塗膜用下地材、及び塗膜形成方法 - Google Patents

塗膜構造、塗膜用下地材、及び塗膜形成方法 Download PDF

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Abstract

【課題】速乾性樹脂の吹き付けにより塗膜を形成する場合において、美観に優れた塗膜を短期間で且つ確実に形成し、施工後においても塗膜の美観を良好に維持する。
【解決手段】被塗装面4に塗膜12を接着する接着剤9と、複数の固体粒状物8とを、隣り合う複数の固体粒状物8間に流体の通過を許容する間隙10が形成されるように混合して、塗膜用下地材7を形成し、該塗膜用下地材7を被塗装面4に塗布することで下地層6を形成し、該下地層6の表面に速乾性樹脂を吹き付けることで塗膜12を形成する。
【選択図】図2

Description

本発明は、被塗装面に吹き付けられた速乾性樹脂により塗膜が構成された塗膜構造、被塗装面と速乾性樹脂からなる塗膜との間に介装される塗膜用下地材、及び、被塗装面に速乾性樹脂を吹き付けて塗膜を形成する方法に関する。
防水、環境劣化の抑制、耐摩耗性の向上、衛生面の向上等を目的として、構造物の壁面、天井面若しくは床面、又は配管の表面等の被塗装面に塗膜が形成されることがある。
被塗装面に塗膜を形成する方法の一つとして、エポキシ樹脂等を含有するプライマを被塗装面に塗布した後、該被塗装面に、速乾性のあるポリウレア樹脂又はウレタン樹脂を吹き付けて塗膜を形成する方法がある(特許文献1参照)。この方法によれば、被塗装面に吹き付けられた速乾性樹脂が短時間で硬化するため、施工期間を短縮することができるとともに、被塗装面の形状に関わらず適正に施工できる。また、速乾性樹脂として追従性に優れた素材を用いることで、被塗装面にクラックが発生したときでも塗膜に亀裂が生じることを防止できる。
特開2006−161438号公報
上述の方法により塗膜を形成する場合、被塗装面への速乾性樹脂の吹き付けは比較的高温で行われる。例えば、速乾性樹脂としてポリウレア樹脂を吹き付ける場合、一般的には約70度のポリイソシアネートとポリアミンが混合されながら噴霧される。しかも、ポリイソシアネートとポリアミンとが混合されると、ポリウレア樹脂の生成反応に伴い反応熱が生じるため、被塗装面には、著しく高温の樹脂が吹き付けられることになる。さらに、高温の樹脂の吹き付けに伴い、被塗装面付近の外気の温度も上昇する。
よって、被塗装面の温度は、速乾性樹脂の吹き付け時に大きく上昇する。そのため、被塗装面を構成する素材(コンクリート等)に多くの水分が含まれている場合、被塗装面において蒸気が発生しやすくなる。したがって、該蒸気を含んだ状態で速乾性樹脂が硬化することがあり、この場合、塗膜に穴(ピンホール)又は気泡が生じて、美観が損なわれてしまう。
また、施工後に、背圧や気温の変化等の影響により、被塗装面と塗膜との間に水や空気が入り込むことで塗膜が膨らみ、これによって美観が悪化する問題もある。
一方、これらの問題に鑑み、被塗装面からの水や空気の流出を抑制することを目的として、被塗装面にプライマを複数回重ねて塗布することがある。しかし、この場合、1回の塗布毎にプライマが硬化するまでに数時間かかるため、施工の長期化を招いていた。しかも、プライマを複数回重ねて塗布したところで、被塗装面からの水や空気の流出を完全に防止することはできず、塗膜におけるピンホールや膨らみ等の発生を確実に防止することはできなかった。
そこで、本発明は、速乾性樹脂の吹き付けにより塗膜を形成する場合において、美観に優れた塗膜を短期間で且つ確実に形成し、施工後においても塗膜の美観を良好に維持することを、基本的な目的とする。
上記課題を解決するため、本発明に係る塗膜構造は、
下地層を介して被塗装面に吹き付けられた速乾性樹脂により塗膜が構成された塗膜構造であって、
前記下地層は、前記被塗装面に前記塗膜を接着する接着剤と、該接着剤を介して接着された複数の固体粒状物と、を有し、
隣り合う複数の前記固体粒状物間に、流体の通過を許容する間隙が形成されていることを特徴とする。
また、本発明に係る塗膜用下地材は、
被塗装面と、該被塗装面に吹き付けられた速乾性樹脂からなる塗膜との間に介装される塗膜用下地材であって、
前記被塗装面に前記塗膜を接着する接着剤と、該接着剤に混合された複数の固体粒状物と、を有し、
隣り合う複数の前記固体粒状物間に、流体の通過を許容する間隙が形成されていることを特徴とする。
さらに、本発明に係る塗膜形成方法は、
下地層を介して被塗装面に速乾性樹脂を吹き付けて塗膜を形成する方法であって、
前記被塗装面に前記塗膜を接着する接着剤と、複数の固体粒状物とを、隣り合う複数の前記固体粒状物間に流体の通過を許容する間隙が形成されるように混合して、塗膜用下地材を形成する工程と、
該塗膜用下地材を前記被塗装面に塗布することで前記下地層を形成する工程と、
該下地層の表面に前記速乾性樹脂を吹き付けることで前記塗膜を形成する工程と、を有することを特徴とする。
本発明によれば、下地層を介して被塗装面に速乾性樹脂を吹き付けて塗膜を形成する際、被塗装面で蒸気が発生しても、該蒸気は、下地層を構成する複数の固体粒状物間の間隙を通って下地層内で移動することができる。すなわち、被塗装面で発生した蒸気は下地層内で分散するため、該蒸気による圧力が塗膜に対して局部的にかかることを回避でき、これにより、塗膜にピンホールや気泡が生じることを防止することができる。そのため、塗膜形成後に、塗膜の美観を改善するための修正作業を必要とせず、施工時間を短縮することができる。よって、本発明によれば、速乾性樹脂の吹き付けにより、美観に優れた塗膜を短期間で且つ確実に形成することができる。
また、本発明によれば、施工後において被塗装面と塗膜との間に水や空気が侵入しても、該水や空気は下地層内で分散される。したがって、被塗装面と塗膜との間に水や空気が局部的に溜まることを防止することができるため、塗膜が、局部的な水や空気の滞留により膨らむことを防止することができる。よって、本発明によれば、速乾性樹脂の吹き付けにより形成された塗膜の美観を、施工後においても良好に維持することができる。
さらに、本発明によれば、下地層が、被塗装面と塗膜との間の空気や水を分散させる機能を有するため、被塗装面からの空気や水の流出を完全に阻止する必要がない。そのため、従来のように被塗装面にプライマを重ね塗りする必要がなく、施工時間を一層短縮することができる。
本発明をトンネル壁面の塗装に適用した一例を示す断面図である。 図1に示すトンネル壁面の下端部を示す拡大断面図である。 塗膜用下地材を示す拡大断面図である。 本発明を屋上の床面の塗装に適用した一例を示す断面図である。 本発明を屋上の床面の塗装に適用した別の例を示す断面図である。 評価試験で用いた装置を示す図である。
以下、添付図面を参照して本発明の好適な実施形態を説明する。なお、以下の実施形態では、トンネルの壁面または屋上の床面に塗膜を形成する場合について説明するが、本発明は、トンネル以外の建造物の壁面若しくは天井面、屋上以外の場所の床面、又は配管の表面等の種々の被塗装面に塗膜を形成する場合に等しく適用できる。また、以下の説明において、同一又は類似の構成部分には同一の符号を用いている。
[第1の実施形態]
第1の実施形態では、図1〜図3を参照しながら、トンネル2の壁面4に塗膜12を形成する場合について説明する。
図1に示すように、トンネル2には、車道5の幅方向両側に歩道22が設けられ、各歩道22の幅方向における車道5とは反対側に、排水用の溝24が設けられている。トンネル2の壁面4は、両側の溝24の底部から立ち上がって断面逆U字状に形成されており、壁面4の略全体に塗膜12が形成されている。
図2は、壁面4の下部およびその周辺を示す拡大図である。
図2に示すように、塗膜12は、下地層6を介して壁面4に吹き付けられた速乾性樹脂により構成されている。
塗膜12の具体的な素材としては、ポリウレア樹脂が好適に用いられる。ポリウレア樹脂は、ポリイソシアネートとポリアミンとを化学反応させて得られる樹脂であり、耐摩耗性、耐薬品性、耐紫外線性、破断強度、及び破断伸びに優れているため、塗膜12の素材に適している。ポリウレア樹脂の吹き付けは、ポリイソシアネートを含むA液と、ポリアミンを含むB液とを例えば約70度の温度で混合させながら噴霧することで行う。これにより、A液とB液の混合時に、ポリイソシアネートとポリアミンとが瞬間的に反応してポリウレア樹脂が生成され、この生成されたポリウレア樹脂が被塗装面に吹き付けられる。A液とB液を混合させる方法としては、例えば、ノズルの先端で両液を衝突させて混合させる方法、又は、スタティックミキサで両液を混合させる方法等が採用される。
ただし、本発明において、塗膜12を構成する樹脂は、ポリウレア樹脂以外の速乾性樹脂であってもよく、例えば、ポリウレアウレタン樹脂、ポリウレタンウレア樹脂、又はポリウレタン樹脂等であってもよい。
塗膜12は速乾性樹脂の吹き付けにより形成されるため、壁面4の形状に関わらず適切に形成することができる。また、速乾性樹脂は短時間で硬化し、特にポリウレア樹脂を用いる場合は数十秒で硬化するため、施工時間を短縮することができる。塗膜12の厚みは、1mm以上であることが好ましいが、速乾性樹脂の吹き付け量を調整することにより任意の厚みにすることができる。
下地層6は、例えば図3に示す塗膜用下地材7が壁面4に塗布されることで形成されている。
図3に示すように、塗膜用下地材7は、壁面4等の被塗装面に塗膜12を接着する接着剤9と、該接着剤9に混合された複数の固体粒状物8とを有し、隣り合う複数の固体粒状物8間に、流体の通過を許容する間隙10が形成されている。
固体粒状物8には、施工される環境において劣化し難く、且つ、施工後にかかる負荷に対して十分な強度を有する種々の粒状物が使用される。使用される固体粒状物8の具体例としては、海砂、川砂、ケイ砂、樹脂ビーズ、ガラスビーズ、セラミックビーズ、石(例えば園芸用寒水石)、又は、粒状の発泡体(例えば園芸用パーライト)等が挙げられ、施工される場所や環境に応じて適宜選択される。
隣り合う固体粒状物8間の間隙10を大きく確保する観点から、固体粒状物8の粒径は均一であることが望ましい。
固体粒状物8の平均粒径は、下地層6において固体粒状物8間の間隙10の容積を所要量確保するための最低限の大きさ以上で、且つ、下地層6に関して所要の表面平滑性が得られる最大限の大きさ以下とされる。例えば、本実施形態において固体粒状物8として海砂を用いる場合、固体粒状物8の平均粒径は0.3mm以上1.0mm以下であることが好ましい。
なお、トンネル以外の地下建造物の壁面または天井面に塗膜12を形成し、塗膜用下地材7の固体粒状物8として海砂を用いる場合も、固体粒状物8の平均粒径は、本実施形態と同様の大きさとすることが好ましい。一方、地上建造物の壁面または天井面に塗膜12を形成し、塗膜用下地材7の固体粒状物8として海砂を用いる場合、トンネルや地下建造物に施工する場合に比べて壁面や天井面から流出する水や空気の量が少なく、下地層6における間隙10の容積の所要量が比較的小さい。また、固体粒状物8は小径である方が塗布しやすい。そのため、固体粒状物8の平均粒径の好適範囲は本実施形態に比べて小さく、具体的には0.1mm以上0.5mm以下であることが好ましい。
接着剤9には、固体粒状物8と混合したときに固体粒状物8間に間隙10を形成し得る粘性、揺変性、及び表面張力を有する素材が用いられ、具体的にはエポキシ樹脂が好適に用いられる。ただし、本発明において、接着剤9の素材はエポキシ樹脂に限定されるものでなく、エポキシ樹脂以外に用いられる接着剤9の素材としては、例えば、ウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、シリコン樹脂、シアノアクリレート樹脂、又は、それらの樹脂及びエポキシ樹脂の中から選択された複数の樹脂の混合物等が挙げられる。また、施工中の空気汚染を防止する観点から、無溶剤タイプの接着剤9が好適に用いられる。さらに、施工後の下地層6に十分な耐衝撃性を確保する観点から、硬化後の破断伸びが3%以上の接着剤9が好適に用いられる。
固体粒状物8に対する接着剤9の混合比率は、下地材7を介して壁面4に塗膜12を接着させ且つ隣り合う固体粒状物8同士を接着させるのに必要な最低限の比率以上で、且つ、固体粒状物8間の間隙10の容積を所要量残し得る最大限の比率以下とされる。すなわち、固体粒状物8に対する接着剤9の具体的な混合比率は、壁面4等の被塗装面、塗膜12、固体粒状物8、及び接着剤9の素材、並びに施工環境等に応じて適宜決定される。
例えば、壁面4の素材がコンクリート、塗膜12の素材がポリウレア樹脂、固体粒状物8の素材が海砂、接着剤9の素材がエポキシ樹脂である場合、固体粒状物8の体積を100%としたときに接着剤9の体積が20%以上40%以下となる比率で、固体粒状物8と接着剤9とが混合される。
なお、壁面4、塗膜12、固体粒状物8、及び接着剤9の各素材が同様であり、トンネル以外の建造物の壁面または天井面に施工する場合も、本実施形態と同様の比率で固体粒状物8と接着剤9とが混合される。
図2に戻って、下地層6は、壁面4に塗布された下地材7の接着剤9が硬化することで完成する。完成後の下地層6では、複数の固体粒状物8が、下地層6に十分な強度が確保されるような接着力で互いに接着されている。
下地層6の引張強度は1MPa以上であることが好ましく、1.5MPa以上であることが望ましい。なお、本明細書において、下地層の引張強度とは、建研式接着力試験器を用いて被塗装面から下地層を剥離する際に測定される強度をいうものとする。
また、下地層6の圧縮強度は1MPa以上であることが好ましく、1.5MPa以上であることが望ましい。なお、本明細書において、下地層の圧縮強度とは、コンクリートの圧縮強度試験方法(JIS A 1108)により島津製作所社製のアムスラー型万能試験機(UM−F50)を用いて測定される強度をいうものとする。
なお、トンネル以外の建造物の壁面または天井面に施工する場合も、下地層6の引張強度および圧縮強度の好適範囲は本実施形態と同様である。
下地層6は、隣り合う複数の固体粒状物8間に、流体の通過を許容する間隙10(図3参照)を有する。そのため、壁面4から下地層6に流出した空気や水は、間隙10を通って下地層6内を移動可能である。よって、塗膜12の形成中に壁面4で蒸気が発生しても、該蒸気は下地層6内において分散するため、塗膜12に対して蒸気の圧力が局所的にかかることを回避でき、塗膜12にピンホールや気泡が生じることを防止することができる。また、トンネル2の天井部分等において、施工後に壁面4から流出して下地層6に入り込んだ水や空気は、下地層6内において分散し、局所的に滞留することがない。そのため、壁面4と塗膜12との間における水や空気の滞留により塗膜12が膨らむことを防止することができる。このように、下地層6は、下地層6内において空気や水を十分に分散させ得るような通気性を有する。具体的に、下地層6は、幅および長さ1m当たりに10リットル/分の空気を流すときの空気の圧力が0.1MPa以下となるような通気性を有することが好ましい。
下地層6は、固体粒状物8間の間隙10において空気を含んでいる。そのため、下地層6は、断熱効果と、塗膜12表面における結露防止効果とを有する。
本実施形態において、下地層6及び塗膜12の下端部は補強部材16により補強されている。なお、補強部材16は、必ずしも設ける必要はないが、下地層6及び塗膜12の下端に物が衝突し得る場合には設けることが好ましい。
補強部材16は、例えば、折り曲げ加工された金属板からなり、下地層6及び塗膜12の下端を覆うようにして、下地層6、塗膜12及び壁面4に固定されている。この補強部材16の固定には、エポキシ樹脂等の接着剤、ビス等の固定具、又はそれら接着剤と固定具の両方が用いられる。
補強部材16には複数の通気孔18が形成されており、下地層6内の空気や水が通気孔18を通って外部へ排出可能となっている。よって、下地層6において空気や水が効率的に分散することができるため、上述のような塗膜12の膨らみを一層確実に防止することができる。なお、補強部材16に通気孔18を形成する代わりに、複数の補強部材16をトンネル2の長さ方向に間隔を空けて設置するようにしてもよく、この場合、補強部材16の非設置部分において下地層6内の空気や水を排出することができる。
補強部材16の素材には例えば金属が用いられ、耐腐食性向上の観点からステンレスが特に好適に用いられる。
壁面4に塗膜12を形成する手順は次の通りである。
先ず、壁面4の汚れ、水、油分、及びレイタンス層を除去する。
次に、上述した複数の固体粒状物8と接着剤9とを上述の配分で混合し、塗膜用下地材7を形成する。
続いて、壁面4に塗膜用下地材7を塗布し、下地層6を形成する。この塗膜用下地材7の塗布は、下地層6が十分な通気性を有する厚みとなるように行う。
下地材7の接着剤9が硬化した後、下地層6の表面に上述した速乾性樹脂を吹き付け、所定の厚みとなるように塗膜12を形成する。
このように、本実施形態によれば、プライマの代わりに上述の塗膜用下地材7を使用する点を除けば、従来と同様の手順で容易に塗膜12を形成することができる。しかも、下地材7は従来のプライマのように重ね塗りを行う必要がないため、施工時間を短縮することができる。また、塗膜12にピンホールや気泡が生じないように施工することができるため、美観に優れた塗膜12を形成することができる。さらに、施工後において、壁面4と塗膜12との間に水や空気が滞留することにより塗膜12が膨らむことを防止できるため、塗膜12の美観を良好に維持することができる。
[第2の実施形態]
第2の実施形態では、図4を参照しながら、屋上32の床面34に塗膜12を形成する場合について説明する。
図4に示すように、本実施形態においても、塗膜12及び下地層6は第1の実施形態と同様に構成されている。すなわち、下地層6は、床面34に塗布された塗膜用下地材7(図3参照)で構成され、下地層6の隣り合う複数の固体粒状物8間には、流体の通過を許容する間隙10(図3参照)が形成されている。また、塗膜12は、下地層6を介して床面34に吹き付けられたポリウレア樹脂等の速乾性樹脂で構成されている。
ただし、床面34は壁面や天井面に比べて大きな負荷がかかるため、本実施形態において、下地層6には、第1の実施形態に比べて大きな強度が必要とされる。
具体的に、下地層6の引張強度は1.5MPa以上であることが好ましく、2.0MPa以上であることが望ましい。また、下地層6の圧縮強度は18MPa以上であることが好ましく、27MPa以上であることが望ましい。
なお、屋内の床面に施工する場合も、下地層6の引張強度および圧縮強度の好適範囲は本実施形態と同様である。
また、本実施形態では、下地層6が比較的大きな強度を必要とするため、固体粒状物8の平均粒径の好適範囲も、第1の実施形態に比べて大きくなる。例えば、本実施形態において固体粒状物8として海砂を用いる場合、固体粒状物8の平均粒径は0.3mm以上5.0mm以下であることが好ましい。
なお、屋内の床面に施工する場合は、屋外の床面に比べて床面からの空気や水の流出が少ないため、下地層6の通気性は比較的少なくて済む。よって、固体粒状物8間の間隙10の容積も比較的小さくて済むため、固体粒状物8の平均粒径の好適範囲は比較的小さくなる。具体的には、例えば、固体粒状物8として海砂を用いて屋内の床面に施工する場合、固体粒状物8の平均粒径は0.1mm以上2.0mm以下であることが好ましい。
本実施形態は床面の施工であるため、壁面または天井面の施工とは異なり、施工中に下地材7が落下することがないことから、下地層6の接着剤9の量は比較的少なくて済む。また、本実施形態は屋外の床面の施工であるため、施工中に日光にさらされやすく、床面34から多量の蒸気が発生しやすい。よって、下地層6の通気性の確保が特に重要である。そのため、固体粒状物8に対する接着剤9の混合比率は、第1の実施形態に比べて小さくすることが好ましく、これにより、下地層6において間隙10の容積を拡大して、下地層6の通気性を高めることができる。
固体粒状物8に対する接着剤9の具体的な混合比率に関しては、例えば、床面34の素材がコンクリート、塗膜12の素材がポリウレア樹脂、固体粒状物8の素材が海砂、接着剤9の素材がエポキシ樹脂である場合、固体粒状物8の体積を100%としたときに接着剤9の体積が10%以上30%以下となる比率で、固体粒状物8と接着剤9とが混合される。
なお、壁面4、塗膜12、固体粒状物8、及び接着剤9の各素材が同様であり、屋内の床面に施工する場合は、屋外の床面の施工の場合に比べて、床面からの空気や水の流出が少ないことから下地層6の通気性は少なくて済むため、接着剤の混合比率を比較的多くすることができる。よって、この場合、固体粒状物8の体積を100%としたときに接着剤9の体積が10%以上40%以下となる比率で、固体粒状物8と接着剤9とが混合される。
本実施形態では、下地層6の上面の所定箇所に換気部材36が設けられている。換気部材36は、下方に向かって拡径するラッパ状のフランジ部38と、フランジ部38の中央部から立ち上がるパイプ部40とを有する。換気部材36は、フランジ部38の下端開口部が下地層6に面した状態で、エポキシ樹脂等の接着剤、ビス等の固定具、又は接着剤および固定具の両方を用いて下地層6の上面に固定されている。これにより、下地層6の間隙10は、換気部材36の内部空間を介して屋外空間と連通している。そのため、床面34から流出した空気が下地層6に入り込むと、下地層6内の空気の余剰分が、下地層6の間隙10を通って換気部材36の内部空間へ導かれ、換気部材36の内部空間を経由して屋外へ排出される。
また、換気部材36のパイプ部40の上端部は傘部材41により覆われており、雨水が換気部材36の内部を通って下地層6に入り込まないようになっている。
本実施形態においても、下地層6は十分な通気性を有するため、塗膜12の形成中において床面34で蒸気が発生しても、該蒸気は下地層6内において分散する。しかも、下地層6の上面に換気部材36が設置されているため、下地層6内の空気の余剰分は換気部材36の内部空間を経由して屋外へ排出される。よって、塗膜12にピンホールや気泡が生じることを確実に防止することができる。また、床面34から流出して下地層6内へ入り込んだ水や空気は下地層6内で分散される。よって、下地層6内で水や空気が局所的に滞留することを回避できるため、床面34が局所的に膨らむことを防止することができる。
このように、本実施形態においても、下地層6は、下地層6内において空気や水を十分に分散させ得るような通気性を有する。具体的に、下地層6は、第1の実施形態と同様、幅1m当たりに10リットル/分の空気を流すときの空気の圧力が0.1MPa以下となるような通気性を有することが好ましい。
床面34に塗膜12を形成する手順は次の通りである。
先ず、床面34の汚れ、水、油分、及びレイタンス層を除去する。
次に、上述した複数の固体粒状物8と接着剤9とを上述の配分で混合し、塗膜用下地材7を形成する。
続いて、床面34に塗膜用下地材7を塗布し、下地層6を形成する。この塗膜用下地材7の塗布は、下地層6が十分な通気性を有する厚みとなるように行う。
次に、下地材7の接着剤9が硬化した後、下地層6の上面の所定箇所に換気部材36を設置する。
換気部材36の設置後、下地層6の表面に速乾性樹脂を吹き付け、所定の厚みとなるように塗膜12を形成する。なお、このとき、換気部材36のフランジ部38及びパイプ部40の下端部にも塗膜12を形成する。
最後に、換気部材36のパイプ部40の上端部を囲むようにして、傘部材41を設置する。
このように、本実施形態によれば、換気部材36と傘部材41を設置する点を除けば、第1の実施形態と同様の手順で塗膜12を形成することができ、短時間で施工を完了することができる。また、塗膜12にピンホールや気泡が生じないように施工することができるため、美観に優れた塗膜12を形成することができる。
[第3の実施形態]
図5を参照しながら、第3の実施形態について説明する。
第3の実施形態では、屋上32の床面34の周縁部に立ち上がり壁42が立設されており、床面34から立ち上がり壁42の壁面44の下端部にかけて塗膜12と下地層6とが形成されている。また、立ち上がり壁42の壁面44を覆う部分において、下地層6の換気構造が設けられている。
本実施形態においても、塗膜12及び下地層6の構成は第1及び第2の実施形態と同様である。すなわち、床面34から壁面44の下端部にかけて塗膜用下地材7を塗布することで下地層6が形成され、該下地層6の表面に速乾性樹脂を吹き付けることで塗膜12が形成されている。
本実施形態によれば、立ち上がり壁42の壁面44を覆う下地層6部分の上端面において、下地層6の間隙10(図3参照)と屋外空間とが連通しているため、床面34から流出して下地層6に入り込んだ空気は、下地層6の間隙10を通って屋外へ排出されるようになっている。
また、下地層6の上端面から下地層6の内部への雨水、結露、又は洗浄水等の液体の侵入を防ぐためのカバー部材50が、下地層6の上端面を覆うようにして設けられている。カバー部材50は、下地層6及び塗膜12との間に間隔を空けて配置され、例えば壁面44に固定されている。これにより、下地層6の内部空間と屋外空間との間で空気が出入りするための流路を確保しつつ、屋外空間から下地層6の内部への液体の侵入を防止することができる。
そのため、塗膜12の形成中に床面34で蒸気が発生しても、該蒸気は下地層6内において分散し、下地層6内の空気の余剰分は、立ち上がり壁42の壁面44を覆う下地層6部分の上端面から屋外へ排出される。よって、塗膜12にピンホールや気泡が生じることを確実に防止することができる。
以上、上述の実施形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではない。
例えば、上述の実施形態では、被塗装面がコンクリートの表面である場合について説明したが、本発明において、被塗装面を構成する物の材質は特に限定されるものでない。
図6に示す実験装置100を用いて評価試験を行った。
具体的に説明すると、実験装置100に、本発明に係る塗膜構造を有するサンプル102を設け、該サンプル102について下地層の通気性を評価した。
サンプル102は、モルタル板104の上面に塗膜用下地材7を塗布して下地層6を形成し、該下地層6の上面にポリウレア樹脂を吹き付けて塗膜12を形成することで作製した。
モルタル板104としては、幅が10cm、長さが50cm、厚みが6cmのものを使用した。
塗膜用下地材7は、固体粒状物8としての海砂と、接着剤9としてのエポキシ樹脂(日本特殊塗料社製ユータックE−30)とを、100:15の体積比で混合して形成し、厚みが2mmとなるようにモルタル板104の上面に塗布した。海砂としては、0.6mmの網目を有するふるいを通過し、且つ、0.4mmの網目を有するふるいに残る粒径のものを使用した。
ただし、モルタル板104の長手方向一端部(図中右端部)におけるモルタル板104の上面には、下地材7を塗布する代わりに、下地材7と同じく2mmの厚みを有するケース106を取り付けた。ケース106の形状は、モルタル板104の長手方向他端側(図中左側)の面全体が開放された扁平な直方体であり、ケース106の上面に吸気用の開口部108が形成されている。
ポリウレア樹脂の吹き付けは、モルタル板104に塗布した塗膜用下地材7の接着剤9が硬化した後に、下地層6およびケース106の上面に対して行い、厚みが1mmとなるように塗膜12を形成した。ただし、このとき、ケース106の開口部108にはポリウレア樹脂を吹き付けないようにし、これにより、塗膜12に、ケース106の開口部108に対応する開口部110を形成した。ポリウレア樹脂には、NUKOTE社製JPテックコートHTを使用し、ジェイ・ピー・エス社製パルサを用いて吹き付けを行った。ポリウレア樹脂の塗布完了時点において、塗膜12にピンホール及び気泡は発生しなかった。
サンプル102の作製後、サンプル102の下地層6に空気を送り込むためのエアコンプレッサ114を、サンプル102に接続した。具体的には、配管122の一端をエアコンプレッサ114に接続し、配管122の他端を、カプラ112を介してサンプル102の塗膜12の開口部110に接続した。また、配管122には、レギュレータ116、流量計118及び圧力計120を配設した。
このようにして作製した装置100では、エアコンプレッサ114を作動させると、エアコンプレッサ114から配管122を通ってケース106内に空気が送り込まれ、ケース106内に送り込まれた空気は更に、モルタル板104の長さ方向一端側から他端側へ向かう方向(図中左方向)へ流れて、下地層6の内部を通り抜ける。
このように構成された装置100を用いて、サンプル102の下地層6の通気性を測定した。具体的には、塗膜12の形成後1日以上経過した時点でエアコンプレッサ114を作動させ、流量が1リットル/分となるようにレギュレータを調整した状態で、圧力計により圧力を測定した。
測定の結果、圧力は0.015MPaであった。この測定結果を換算すると、幅および長さ1m当たりに10リットル/分の流量の空気を下地層6に流したとき、圧力は0.030MPaとなる。すなわち、上記のように形成したサンプル102の下地層6は、十分な通気性を有することを確認することができた。
その後、圧力計による測定値が0.4MPaになるようにレギュレータを調整したが、塗膜12の膨れは生じなかった。すなわち、サンプル102の下地層6に高圧の空気が流入しても、この流入した空気は下地層6内で局所的に滞留することなく分散し、塗膜12の膨れを防止できることを確認することができた。
2:トンネル、4:トンネルの壁面(被塗装面)、6:下地層、7:塗膜用下地材、8:固体粒状物、12:塗膜、32:屋上、34:屋上の床面(被塗装面)。

Claims (6)

  1. 下地層を介して被塗装面に吹き付けられた速乾性樹脂により塗膜が構成された塗膜構造であって、
    前記下地層は、前記被塗装面に前記塗膜を接着する接着剤と、該接着剤を介して接着された複数の固体粒状物と、を有し、
    隣り合う複数の前記固体粒状物間に、流体の通過を許容する間隙が形成されていることを特徴とする塗膜構造。
  2. 前記速乾性樹脂はポリウレア樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の塗膜構造。
  3. 前記接着剤はエポキシ樹脂を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の塗膜構造。
  4. 被塗装面と、該被塗装面に吹き付けられた速乾性樹脂からなる塗膜との間に介装される塗膜用下地材であって、
    前記被塗装面に前記塗膜を接着する接着剤と、該接着剤に混合された複数の固体粒状物と、を有し、
    隣り合う複数の前記固体粒状物間に、流体の通過を許容する間隙が形成されていることを特徴とする塗膜用下地材。
  5. 前記接着剤は、エポキシ樹脂を含有することを特徴とする請求項5に記載の塗膜用下地材。
  6. 下地層を介して被塗装面に速乾性樹脂を吹き付けて塗膜を形成する方法であって、
    前記被塗装面に前記塗膜を接着する接着剤と、複数の固体粒状物とを、隣り合う複数の前記固体粒状物間に流体の通過を許容する間隙が形成されるように混合して、塗膜用下地材を形成する工程と、
    該塗膜用下地材を前記被塗装面に塗布することで前記下地層を形成する工程と、
    該下地層の表面に前記速乾性樹脂を吹き付けることで前記塗膜を形成する工程と、を有することを特徴とする塗膜形成方法。
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