JP2011131239A - 鋼の連続鋳造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】鋳片の幅方向の温度偏差と表面の過冷却とを抑制して、鋳片の内部割れ防止と表面割れ防止の両立を図り、良質の鋳片を製造可能な鋼の連続鋳造方法を提供する。
【解決手段】鋳型10と二次冷却帯11を有する連続鋳造機12を用い、鋳型10から、Siを1.0質量%以上、又はCrを10質量%以上、又はCを0.5質量%以上含む鋳片13を引き抜き、二次冷却帯11の多数の冷却用ノズルで冷却する鋼の連続鋳造方法において、二次冷却帯11のうち、鋳型10の直下から、鋳造方向に0.6mまでの冷却範囲R1と、鋳型10の直下から鋳造方向に、0.6mから1.2mまでの冷却範囲R2とで、冷却用ノズルから鋳片13にそれぞれ吹き付けられる冷却水の水量密度P1、P2が、以下の条件を満足する。
150リットル/m/分≦P1≦280リットル/m/分
300リットル/m/分≦P2≦700リットル/m/分
【選択図】図3

Description

本発明は、鋳片割れを防止する鋼の連続鋳造方法に関する。
連続鋳造機(以下、連鋳機ともいう)において、良質の鋳片を製造するためには、バルジング起因の内部割れと、過冷却起因の表面割れとを回避する必要がある。
まず、バルジング起因の内部割れについて説明する。
バルジングとは、連続鋳造機で鋳片を製造する際に、鋳片内部の液相の静圧により、鋳造方向に隣り合うロール間(鋳片が支持されていない領域)で鋳片が膨らむ現象である。このバルジング(膨れ)により、鋳片の凝固部表層に割れ(内部割れ)が生じる場合がある。
この割れを防止するため、冷却用ノズルからのスプレー水(冷却水ともいう)の水量を増加することで、鋳片の表面温度を低下させて凝固シェル厚を確保したり、またスプレー水の衝突圧力を用いるなどして、過大なバルジングを抑制することが一般に実施されている。
上記したバルジングにより割れが生じるという状況は、鋳片の表面温度が高い部位で、内部割れが発生するという現象で確認されている(高温部の割れ)。
次に、過冷却起因の表面割れについて説明する。
バルジング抑制を目的として、スプレー水の水量を増加し過ぎると、鋳片の表面温度が極端に低下して鋳片の延性が低下する。このため、連鋳機において、鋳片に歪が生じる曲げ戻し部で、鋳片の幅方向両端部(幅方向両端からそれぞれ100mm内側までの領域)を除く鋳片の幅方向中央部に、表面割れが生じる場合がある。
この状況は、鋳片の表面温度が低い部位で、表面割れが発生するという現象で確認されている(低温部の割れ)。
なお、本発明では、上記した鋳片の幅方向両端部に発生する端部割れを防止することを課題としてはいない。これは、端部割れが、この部分に噴射されるスプレー水の水量を低減するなどの公知の方法により、防止することが可能であることによる。
しかし、上記した内部割れ(バルジング起因)と表面割れ(過冷却起因)の防止を両立するには、以下の課題がある。
一般に、バルジング抑制を目的としたスプレー水の水量増加は、鋳片の幅方向の温度分布が不均一となる状態、即ち鋳片の幅方向に高温部と低温部が混在する状態を招く場合がある。このため、内部割れと表面割れの回避を両立するには、鋳片の幅方向の水量分布の調節等で、鋳片の表面温度(幅方向の温度偏差)を最適温度範囲内、即ち高温部の内部割れが発生しない温度域でかつ低温部の表面割れが発生しない温度域、に納める必要があった。
なお、鋳片の表面温度が脆化温度を下回る状態で、鋳片が曲げ戻し部を通過すると、鋳片に表面割れが生じる。
特に、Si:1.0質量%以上(例えば、無方向性電磁鋼板等の電磁鋼)、Cr:10質量%以上、又はC:0.5質量%以上を含む鋼種の鋳片は、割れ感受性が高く、内部割れと表面割れの一方又は双方が高い頻度で発生する。
本発明者らの調査によれば、曲げ戻し部での鋳片の表面割れと内部割れを回避するためには、曲げ戻し部を通過するときの鋳片の温度を、600〜900℃(鋳片の幅方向の温度偏差を300℃以下)の狭い温度領域に納める必要がある。
この課題に対して、例えば、特許文献1には、鋳片の幅方向の特定部位に補助冷却ノズルを設置し、高温部を冷却させることで、温度偏差を小さくする冷却方法が提案されている。
特開2008−55454号公報
しかしながら、特許文献1の方法は、一定の効果を奏するものの、鋳造鋼種や鋳造幅の変更の際に、高温部の位置が変動すると、設置した補助冷却ノズルが高温部位を冷却できなくなる懸念がある。また、補助冷却ノズルの稼動と停止を繰り返し行う必要があり、ノズル詰りを招き易いため、鋳片の安定な冷却に懸念がある。
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、鋳片の幅方向の温度偏差と鋳片の表面の過冷却とを抑制して、鋳片の内部割れ防止と表面割れ防止の両立を図り、良質の鋳片を製造可能な鋼の連続鋳造方法を提供することを目的とする。
前記目的に沿う本発明に係る鋼の連続鋳造方法は、鋳型と、該鋳型の下流側に配置された二次冷却帯とを有する連続鋳造機を用い、前記鋳型から、Siを1.0質量%以上、又はCrを10質量%以上、又はCを0.5質量%以上含む鋳片を引き抜き、該鋳片を前記二次冷却帯に設けられた多数の冷却用ノズルで冷却する鋼の連続鋳造方法において、
前記二次冷却帯のうち、前記鋳型の直下から、鋳造方向に0.6mまでの冷却範囲R1と、前記鋳型の直下から鋳造方向に、0.6mから1.2mまでの冷却範囲R2とで、前記冷却用ノズルから前記鋳片にそれぞれ吹き付けられる冷却水の水量密度P1、P2が、以下の条件を満足する。
150リットル/m/分≦P1≦280リットル/m/分
300リットル/m/分≦P2≦700リットル/m/分
本発明に係る鋼の連続鋳造方法において、少なくとも前記冷却範囲R2で冷却水を吹き付ける前記冷却用ノズルに、気水ノズルを用いることが好ましい。
本発明に係る鋼の連続鋳造方法において、前記二次冷却帯には、前記鋳型から引き抜かれた前記鋳片を、厚み方向から挟み込んで鋳造方向に搬送する多数のロールが配置され、該多数のロールの一部又は全部に、前記鋳片の幅方向両端部を除く位置で分割された分割ロールを用いることが好ましい。
本発明に係る鋼の連続鋳造方法において、前記鋳型の直下から前記連続鋳造機の曲げ戻し部までの距離をDとして、前記鋳型の直下から0.4Dの位置から0.65Dの位置までの範囲内に温度計を設置して前記鋳片の表面温度を測定し、前記鋳片の幅方向両端から中央部へ向けて100mmまでの範囲を除いた領域の前記鋳片の幅方向の表面温度差が300℃を超えたことを条件として、前記冷却範囲R2より下流、かつ前記0.4Dの位置より上流の範囲の全部又は一部で前記冷却用ノズルから前記鋳片に吹き付けられる冷却水の水量密度を減少させるのがよい。
本発明に係る鋼の連続鋳造方法は、鋳型の直下から、鋳造方向に0.6mまでの冷却範囲R1において、冷却用ノズルから鋳片に吹き付けられる冷却水の水量密度P1を調整することで、鋳片へのパウダーの付着の有無による冷却能指数を小さくでき、パウダーの積極的な剥離を防止できる。更に、鋳型の直下から鋳造方向に、0.6mから1.2mまでの冷却範囲R2において、冷却用ノズルから鋳片に吹き付けられる冷却水の水量密度P2を、冷却範囲R1の水量密度P1よりも上昇させることで、鋳型の直下から鋳造方向に1.2mまでの冷却領域で、鋳片からのパウダーの剥離を完了できる。
従って、Si:1.0質量%以上(例えば、無方向性電磁鋼板等の電磁鋼)、又はCr:10質量%以上、又はC:0.5質量%以上を含む鋼種である割れ感受性の高い鋳片を鋳造するに際し、パウダーの付着の有無による鋳片の幅方向の温度偏差と、鋳片の表面の過冷却とを抑制できるので、鋳片の内部割れ防止と表面割れ防止の両立が図れ、良質の鋳片を製造できる。
また、冷却用ノズルに気水ノズルを用いる場合、冷却水の鋳造方向の広がりを広くできる。これにより、鋳片の表面に付着したパウダーの剥離可能な時間(冷却水による鋳片の冷却時間)を長く確保できると共に、冷却範囲R2における鋳片への冷却水の平均衝突エネルギーを大きくできるので、鋳片からのパウダーの剥離をより安定的に行うことができ、鋳片の割れ発生率を更に低減できる。
そして、二次冷却帯に配置されたロールに分割ロールを用いる場合、通常のロールに比べてロールの直径を小さくできるため、鋳造方向に隣り合うロールの設置間隔を狭くできる。これにより、鋳片のバルジング量を抑制できるので、冷却水の水量密度の制約を緩和でき、鋳片の幅方向の平均温度や温度偏差の調整を目的とした水量密度の調整が容易になる。
更に、鋳型の直下から0.4Dの位置から0.65Dの位置までの範囲内に温度計を設置して鋳片の表面温度を測定し、鋳片の幅方向の表面温度差が300℃を超えたことを条件として、冷却範囲R2より下流、かつ0.4Dの位置より上流の範囲で、冷却用ノズルから鋳片に吹き付けられる冷却水の水量密度を減少させる場合、鋳片の幅方向の温度偏差の低減に有効である。これは、水量密度を減少させることで、鋳片の表面温度を復熱により上昇させ、この復熱により、上記した300℃超えした温度偏差を解消し、温度依存性が弱い温度域で、鋳片の冷却再開が可能になることによる。なお、復熱とは、冷却用ノズルから吹き付けられる冷却水の量の減少によって、鋳片表面の抜熱量が減少し、相対的に鋳片表面の加熱量が顕著になって、鋳片の表面温度が上昇することをいう。
パウダーの付着の有無による鋳片の冷却能指数と鋳型直下からの距離との関係を示す説明図である。 パウダーの付着の有無による他の鋳片の冷却能指数と鋳型直下からの距離との関係を示す説明図である。 本発明の一実施の形態に係る鋼の連続鋳造方法を適用する連続鋳造機の説明図である。 冷却用ノズルの圧力測定位置とスプレー圧力指数との関係を示す説明図である。 鋳片の熱伝達係数と表面温度との関係を示す説明図である。
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
まず、本発明に想到した経緯について説明する。
連続鋳造機は、鋳型と、鋳型直下から鋳造方向に渡って配置された二次冷却帯とを有し、二次冷却帯には、鋳片を冷却するための複数の冷却用ノズルが配置されている。この各冷却用ノズルは、鋳造方向の各位置で鋳片の冷却速度をコントロールできるように、鋳造方向に渡って1〜4mの範囲ごとの冷却ゾーンで区切られ、この冷却ゾーンごとに、各冷却用ノズルから鋳片に吹き付けられる冷却水(スプレー水)の水量が調整されている。
また、鋳型湯面には、一般に、鋳型と鋳片の凝固シェルとの焼付き防止等を目的としたパウダーが投入される。このパウダーが、鋳片表面に付着した状態で二次冷却帯で冷却されると、鋳片の冷却能力が低下することが一般にいわれていた。これは、鋳片と比べて熱伝導が低いパウダーが熱抵抗になり、鋳片自体の抜熱を阻害することを根拠としている。
そこで、本発明者らは、ラボ試験により、パウダー付着の有無が鋳片の冷却能へ及ぼす影響を調査した。
まず、ラボ試験では、熱電対を埋め込んだ鋼材を1200℃以上に加熱した後、これを冷却用ノズルで冷却し、パウダー付着の有無による鋼材の冷却速度の影響を調査した。続いて、このラボ試験の結果と伝熱解析モデルを用いて、パウダー付着の有無が鋳片の冷却能へ及ぼす影響を調査した。なお、本発明で使用した伝熱解析モデルは、例えば、鉄と鋼、第60巻(1974年)、1023頁に示される一般的な手法を用いた。
ここで、解析を行った連続鋳造機の構成、鋳造条件、及び冷却条件を、以下に示す。
・連続鋳造機の鋳型直下から鋳造方向に1.2mまでのロールのピッチ:200mm
・鋳型直下から曲げ戻し部までの距離:16m
・鋳造条件:鋳造速度1.3m/分、鋳造幅(鋳片の幅)1300mm、鋳造厚み(鋳片の厚み)250mm
・冷却条件(その1):鋳型直下から、鋳造方向に2.0mまでの範囲で、冷却用ノズルから鋳片に吹き付けられる冷却水の水量密度を450リットル/m/分(以下、L/m/分ともいう)で一定とする。
・冷却条件(その2):鋳型直下から、鋳造方向に0.6mまでの範囲で、冷却用ノズルから鋳片に吹き付けられる冷却水の水量密度を280リットル/m/分とし、鋳型直下から鋳造方向に、0.6mから2.0mまでの範囲で、冷却用ノズルから鋳片に吹き付けられる冷却水の水量密度を450リットル/m/分とした。
上記した冷却条件(その1)の解析結果を図1に、冷却条件(その2)の解析結果を図2に、それぞれ示す。
図1、図2の横軸は、鋳型直下から鋳造方向の距離(m)を示している。なお、図1、図2においては、鋳型直下(横軸の値が0.0m:鋳片の表面温度が600℃付近)から、鋳造方向の距離が2.0m(鋳片表面温度900℃付近)までの範囲を図示している。
また、図1、図2の縦軸は、パウダーの付着ありを前提とした鋳片を冷却した際に、鋳造方向の距離が1.2m相当位置の鋳片の熱伝達係数を1として、パウダーの付着なし(図1及び図2中の実線)と付着あり(図1及び図2中の点線)の場合の鋳片の各熱伝達係数を、それぞれ指数化(冷却能指数)した値を図示している。
まず、図1から得られた知見を以下に示す。
・パウダー付着の有無によらず、鋳造の進行(横軸の増加)と共に、冷却能が低下した。
・パウダー付着の有無による冷却能の大小関係は存在するが、横軸の位置(鋳片の表面温度が異なる位置)によって、大小関係が異なる場合があった。
・鋳型直下付近(例えば、0.2m位置)では、パウダー付着なしは、パウダー付着ありと比べて、冷却能指数が約30%大きくなった。
・鋳型直下から鋳造方向に1.2mの位置を超える(例えば、1.4m位置)と、パウダー付着なしは、パウダー付着ありと比べて、冷却能指数が20%を超えて小さくなった。
・鋳型直下から鋳造方向に、0.6〜1.2mの範囲(即ち、図1の交点A付近)では、パウダー付着の有無にかかわらず、パウダー付着ありに対するパウダー付着なしの冷却能指数が、20%を超えない範囲で、大きく異ならない傾向を示した。
以上のことから、鋳片表面へのパウダー付着の有無が、鋳片の表面温度を局部的に変動させる原因となることが判った。
ここで、鋳片の表面からパウダーが剥離するに際しては、一挙に剥離することは考えにくく、徐々に剥離するものと考えられる。このため、上記した冷却能指数の違いが、鋳片の幅方向の温度偏差の大きな原因になると考えられる。
例えば、鋳型直下から、鋳造方向に1.2mを超える位置(例えば、1.5m位置)でパウダーの剥離が開始すると、図1に示すように、パウダーの付着部分は、パウダーの付着がない部分よりも冷却能が高くなる。
このため、パウダーの付着部分の鋳片の表面温度が局部的に低下して、鋳片の幅方向の温度偏差の原因となることが判る。なお、本発明者らの検討では、連続鋳造機の曲げ戻し部で鋳片の温度偏差が300℃超えとなる傾向が強いと考えられた。
このような温度偏差が発生することで、高温起因の内部割れや、鋳片の表面温度の低下起因による表面割れが発生すると推定される。
更に、上記した温度偏差を解消するため、鋳型直下から、鋳造方向に0.2mまでの範囲でパウダーの剥離が完了する場合を考えると、冷却能が高いため、表面割れの原因である鋳片の過冷却を招き易いことが判る。
この場合、本発明者らの検討では、鋳片のバルジングを防止する目的で、最低限の水量で鋳片の冷却を行う前提でも、連続鋳造機の曲げ戻し部で鋳片の表面温度が600℃を下回ってしまい、その結果、曲げ戻し部で鋳片の表面割れが発生すると考えられた。
以上から、本発明者らは、鋳型直下から、鋳造方向に0.6mまでの冷却範囲R1において、パウダー付着の有無による冷却能指数差が小さく、しかもパウダーが積極的に剥離しない水量密度P1で冷却し、鋳型直下から鋳造方向に、0.6mから1.2mまでの冷却範囲R2において、水量密度P2を水量密度P1よりも上昇し、鋳型直下から鋳造方向に1.2mまでに、パウダーの剥離完了を実質的に実現することで、鋳片の幅方向の温度偏差を抑制した鋳片の二次冷却を実現できることに想到した。
なお、本発明者らの検討では、図1の交点Aは、鋳造速度(例えば、0.6〜3.0m/分程度)や連続鋳造機の機長(鋳型直下から機端までの距離)によって多少変化するが、大きく変化することはなく、本発明の鋼の連続鋳造方法に従えば、鋳片の割れ抑制の効果を享受できる。
続いて、図2から得られた知見を以下に示す。
・パウダー付着の有無によらず、鋳造の進行(横軸の増加)と共に、冷却能が低下した。
・パウダー付着の有無による冷却能の大小関係は存在するが、横軸の位置(鋳片の表面温度が異なる位置)によって、大小関係が異なる場合があった。
・鋳型直下付近(例えば、0.2m位置)では、パウダー付着の有無にかかわらず、冷却能が大きく変わらない傾向を示した。なお、パウダー付着なしは、パウダー付着ありと比べて、冷却能指数が約10%程度大きい。
この場合、図1と比較すると、鋳型直下付近でのパウダー付着の有無による冷却能指数差は、小さいことが判る。
・鋳型直下から鋳造方向に1.2mの位置を超える(例えば、1.4m位置)と、パウダー付着なしは、パウダー付着ありと比べて、冷却能指数が20%を超えて小さくなった。
・鋳型直下から鋳造方向に、0.6〜1.2mの範囲では、パウダー付着の有無にかかわらず、パウダー付着ありに対するパウダー付着なしの冷却能指数が、大きく異ならない傾向を示した。
以上のことから、鋳型直下から鋳造方向に0.6m前後の位置で冷却条件を変更、即ち鋳型直下から、鋳造方向に0.6mまでは水量密度P1を低くし、パウダー付着の有無による冷却能指数差が小さくなるように冷却し、鋳型直下から鋳造方向に、0.6mから1.2mまでの範囲では、水量密度P2を上記した水量密度P1よりも上昇させる。これにより、鋳型直下から鋳造方向に1.2mまでに、パウダーの剥離完了を実質的に実現して、鋳片の幅方向の温度偏差を抑制し、鋳片の表面の過冷却を抑制して、鋳片の内部割れ防止と表面割れ防止の両立が図れることに想到した。
以下、本発明の一実施の形態に係る鋼の連続鋳造方法について、図1〜図3を参照しながら説明する。
図3に示すように、連続鋳造を行うに際しては、鋳型10と、この鋳型10の下流側に配置された二次冷却帯11とを有する連続鋳造機(以下、連鋳機ともいう)12を用いる。
連続鋳造機の形式は、湾曲型連続鋳造機と垂直曲げ型連続鋳造機のいずれでもよいが、特に、本発明を垂直曲げ型連続鋳造機に適用すると、より大きな効果が期待できる。これは、湾曲型連鋳機が、連続鋳造機の曲げ戻し部でのみ鋳片表面割れが発生し易いのに対し、垂直曲げ型連鋳機が、連続鋳造機の曲げ部と曲げ戻し部の双方で鋳片の表面割れが発生し易いためであり、同じ冷却条件でも、垂直曲げ型連鋳機の方が鋳片の割れ発生率が高いことによる。
この鋳型10内に溶鋼を供給し、鋳型下方から鋳片13を引き抜き、この鋳片13を二次冷却帯11に設けられた多数の冷却用ノズル(図示しない)で冷却する。
この鋳片13の鋼種は、割れ発生が顕著なものであり、Siを1.0質量%以上(上限は、例えば4質量%)、又はCrを10質量%以上(上限は、例えば20質量%)、又はCを0.5質量%以上(上限は、例えば1.2質量%)含むものである。ここで、Siが1.0質量%以上の鋼種(例えば、無方向性電磁鋼板等の電磁鋼)は、内部割れや表面割れが顕著な鋼種であるが、Siが2.8質量%以上の電磁鋼となると割れ発生が更に顕著となり、3.5質量%以上の高級電磁鋼となると更に顕著に発生する。また、Crが10質量%以上の鋼種においても、Crが13質量%以上のステンレス鋼になると割れ発生が更に顕著となる。そして、Cが0.5質量%以上の鋼種においても、Cが0.8質量%以上となると割れ発生が更に顕著となる。
また、鋼種以外にも、鋳造幅が広くなると割れ発生が顕著になる。
例えば、電磁鋼(Siが2.8質量%以上、更には3.5質量%以上)において、鋳造幅が1000mmのスラブと、1200mmのスラブの割れ発生率を比較すると、1200mmのスラブの方が、割れ発生率が高い。このため、鋳造幅を1000mm以上、更には1200mm以上にすることで、本発明の効果がより顕著になる。なお、鋳造幅の上限値は、一般的には2000mm程度である。
以上のことから、本発明を、上記したような割れ発生率が高い鋼種やサイズに対して適用することで、顕著な効果を発揮できる。
上記した鋼種の鋳片13を製造するに際しては、前記したように、鋳型直下から鋳造方向に1.2mまでに、鋳片13表面からのパウダーの剥離完了を実質的に実現する必要がある。
そこで、二次冷却帯11のうち、鋳型10の直下から、鋳造方向に0.6mまでの冷却範囲R1と、鋳型10の直下から鋳造方向に、0.6mから1.2mまでの冷却範囲R2とで、冷却用ノズルから鋳片13にそれぞれ吹き付けられる(鋳片13に直接あたる)冷却水の水量密度(以下、スプレー水量密度ともいう)P1、P2を、以下の条件を満足するように調整する。
150L/m/分≦P1≦280L/m/分
300L/m/分≦P2≦700L/m/分
上記した冷却水の水量密度P1、P2(L/m/分)は、以下のように定義している。
{冷却水の水量密度(L/m/分)}={Q(L/分)}/{A(m)}
ここで、Q(L/分)は、鋳型直下から、鋳造方向に0.6mまでの範囲、又は、鋳型直下から鋳造方向に、0.6mから1.2mまでの範囲で、鋳片の上面側又は下面側に吹き付けられる(直接あたる)単位時間(分)あたりの冷却水量である。
また、A(m)は、鋳型直下から、鋳造方向に0.6mまでの範囲、又は鋳型直下から鋳造方向に、0.6mから1.2mまでの範囲で、実際に冷却水が吹き付けられる(直接あたる)鋳片の表面積、即ち、0.6m×鋳造幅(m)である。
上記した冷却範囲R1において、スプレー水量密度P1を300L/m/分以上にして鋳片を冷却する場合、パウダー付着の有無による冷却能指数差が大きくなり、温度偏差の原因となる。従って、冷却範囲R1でのスプレー水量密度P1を少なく設定して、鋳型直下でのパウダー付着の有無による冷却能指数差を確実に小さくする必要があるため、スプレー水量密度P1の上限を、300L/m/分より小さい280L/m/分とした。
一方、冷却範囲R1でのスプレー水量密度P1が150L/m/分未満の場合、スプレー自体の冷却能は小さく、高温起因のバルジングによる内部割れが発生すると予想されるため、スプレー水量密度P1の下限を150L/m/分とした。
以上のことから、冷却範囲R1でのスプレー水量密度P1を150L/m/分以上(好ましくは、180L/m/分以上、更には210L/m/分以上)、280L/m/分以下にした。
また、冷却範囲R2において、スプレー水量密度P2を700L/m/分超えにして鋳片を冷却する場合、スプレー冷却能自体が大きくなり、過冷却起因の割れが生じると予想される。
一方、冷却範囲R2でのスプレー水量密度P2が300L/m/分未満の場合、鋳型直下から鋳造方向に1.2mより下流側位置でも、鋳片にパウダーが付着していることが予想され、パウダー起因の温度偏差が生じることが予想される。
以上のことから、冷却範囲R2でのスプレー水量密度P2を300L/m/分以上(好ましくは、400L/m/分以上、更には450L/m/分以上)、700L/m/分以下(好ましくは、650L/m/分以下、更には600L/m/分以下)にした。なお、この水量密度P2は、従来の水量密度よりも多め(約2倍程度)である。
上記した水量密度P1と水量密度P2の切り替えは、鋳型直下から鋳造方向に0.6m前後の位置で行うことができる。
ここで、水量密度の切り替えを、鋳型直下から鋳造方向に0.4mより上流側の位置で行い、スプレー水量密度を上昇させた場合は、パウダー付着の有無による冷却能指数差が大きいため、温度偏差が生じることが予想される。
一方、水量密度の切り替えを、鋳型直下から鋳造方向に0.8mより下流側の位置にした場合は、パウダー付着なしと付着ありの冷却能指数の差が小さくなる。しかし、水量密度を上昇させてパウダーを剥離するための時間が短くなるため、鋳型直下から鋳造方向に1.2mまでにパウダーを剥離させることが難しくなり、パウダー起因の温度偏差が生じる可能性がある。
従って、水量密度P1と水量密度P2の切替位置は、鋳型直下から鋳造方向に、0.4mから0.8mまでの範囲内に設定することが好ましい。
冷却用ノズルには、冷却水のみを鋳片の表面に吹き付ける水ノズルを使用しているが、空気と冷却水が混合されて吹き付けられる気水ノズルを使用することが好ましい。なお、気水ノズルは、二次冷却帯11の全てに取り付けて使用できるが、冷却範囲R2で冷却水を吹き付ける部分のみに取り付けて使用してもよい。
ここで、気水ノズルの特徴について、図4を参照しながら説明する。なお、図4の横軸はスプレー水の幅方向(鋳造方向)の圧力測定位置(気水ノズルを使用した場合と水ノズルを使用した場合との相対位置)であり、縦軸は冷却水の衝突圧力であって、気水ノズルでの最大圧力を1として指数化したものである。
図4から明らかなように、気水ノズル(図4中の実線)は水ノズル(図4中の点線)に比べて、スプレー水の広がる範囲が広く、広範囲での冷却が可能になる。このため、気水ノズルでは、パウダーの剥離時間(スプレー水による冷却時間)を長く確保でき、冷却範囲R2における平均衝突エネルギーを大きくできる。
なお、このパウダーの剥離時間の確保と平均衝突エネルギーの増大は、いずれも安定的なパウダーの剥離に寄与するため、鋳片の割れ発生率を減少できる。
この気水ノズルの気水比は、容積(Nm:ノルマル立方メートル)単位で、「(気水比)=(空気容積)÷(水容積)」とした。
ここで、気水比が低過ぎると、パウダーの剥離に要する時間を長く確保できなくなるため、4.4以上(10以上でもよい)がよい。
一方、気水比が高過ぎると、スプレー水の衝突圧力が低くなり過ぎて、パウダーの剥離に必要な衝突圧力が得にくくなる。このため、20.5以下がよく、安定した剥離を確実に行うには、18.5以下が更によい。
また、二次冷却帯11には、鋳型10から引き抜かれた鋳片13を、厚み方向から挟み込んで鋳造方向に搬送する多数のサポートロールが配置されているが、このサポートロールの一部又は全部に、分割ロールを用いることが好ましい。
分割ロールとは、鋳片の幅方向両端部を除く位置で分割されたロールであり、スプレー水を用いることなくバルジングを抑制できるものである。具体的には、直径が250〜400mmの複数のロール(例えば2本)を、軸受け部(ロールの直径より小さな直径部分)により隙間を設けて直列につないだロールである。
このように、軸受け部によって隙間を設けているため、鋳片の熱影響によるロール変形を抑制できる。これにより、従来の連続鋳造機のサポートロール(軸受け部のない一本ロール)に比べてロール直径を小さくできるので、従来のサポートロールに比べて鋳造方向に隣り合うロールの設置間隔を狭くすることができる。
従って、鋳片のバルジング量を抑制することが可能となり、バルジング抑制を目的としたスプレー水による水量密度の制約(下限値設定)を緩和できるため、鋳片の幅方向の平均温度や温度偏差の調整を目的とした水量密度の調整が容易となる。つまり、鋳片の復熱の活用の自由度を向上させ、大幅な冷却水量の減少が可能となる。
また、鋳片の幅方向の温度偏差を抑制する方法としては、鋳片表面の復熱現象を用いることもできる。以下、復熱現象について説明する。
鋳片の表面温度は、表面側の凝固シェル(低温)と内部の溶鋼(高温)とが存在する鋳片において、スプレー水による鋳片表面の抜熱と内部の溶鋼による鋳片表面の加熱により決定される。ここで、スプレー水の量の減少等によって鋳片表面の抜熱量が減少し、相対的に鋳片表面の加熱量が顕著になると、鋳片の表面温度が上昇する。これを復熱という。
一般に、表面温度が500〜900℃の鋳片をスプレー水により冷却した場合、図5に示すように、鋳片の温度が低下すると共に、その冷却能(熱伝達係数)が向上する(水蒸気膜の有無にかかわる)。なお、鋳片の表面温度が800℃以上になると、鋳片表面の冷却能の温度依存性が弱まり、冷却能は概ね一定となる。
つまり、鋳片の温度偏差を低減したい場合には、スプレー水量密度を減少させ、鋳片の表面温度を復熱により上昇させて、鋳片の温度偏差を解消した上で、温度依存性の弱い温度域で鋳片の冷却再開を行うのがよい。
このように、復熱現象は、鋳片の温度偏差の低減に有効であるため、以下のように構成するのがよい。
まず、鋳型10の直下から連続鋳造機12の曲げ戻し部14までの距離をDとして、鋳型10の直下から0.4Dの位置から0.65Dの位置までの範囲内に、温度計を1つ(2以上の複数でもよい)設置する。
鋳片13の割れ回避の条件、即ち、鋳片の幅方向両端から中央部へ向けて100mmまでの範囲を除いた領域の鋳片の幅方向の表面温度差(=最大温度−最小温度)300℃以内を確保するため、曲げ戻し部14付近で温度偏差(表面温度分布)を測定し、曲げ戻し部14の温度偏差が目標値(300℃)を上回ることが予兆される場合に、冷却条件を変更すると良い。
ここで、鋳片表面が復熱するための時間を確保する必要があるため、曲げ戻し部14より上流側、即ち0.65D以下となる位置に温度計を設置する。
また、前記した鋼種、即ちSi:1.0質量%以上、又はCr:10質量%以上、又はC:0.5質量%以上を含有する鋼種は、割れ感受性が高く、バルジング起因の内部割れが発生し易い。
これら鋼種は、バルジング発生が顕著になり易い湾曲部(特に、鋳型直下から概ね0.4Dの位置にある湾曲部の前半、即ち溶鋼静圧が大きく凝固シェルが比較的薄い領域)で、鋳片の幅方向に温度偏差が発生する傾向にある。このため、温度偏差の発生場所以降、即ち0.4D以上となる位置に温度計を設置する。
以上から、温度計設置の位置を、0.4D以上0.65D以下(好ましくは、下限を0.45D、上限を0.6D)の範囲内にする。
そして、上記した温度計で鋳片13の表面温度を測定し、この鋳片13の幅方向両端部を除く幅方向の表面温度差が300℃を超えたことを条件として、冷却範囲R2より下流、かつ0.4Dの位置より上流の範囲の全部又は一部で冷却用ノズルから鋳片13に吹き付けられる冷却水の水量密度を、現状の(現在吹き付けられている)水量密度よりも減少(例えば、現状の水量密度の0を超え20%以下程度減少)させる。なお、水量密度の調整は、上記した範囲に配置された全部もしくは一部の冷却用ノズルで行う。
前記したように、鋳型直下から鋳造方向に1.2mまでの範囲(冷却範囲R1と冷却範囲R2)では、パウダーの剥離除去を目的として、スプレー水の水量密度を決定した。従って、上記した温度計により修正すべき温度偏差が検知された場合には、冷却範囲R2よりも下流側のスプレー水による冷却を調整する必要がある。
このため、鋳型直下から鋳造方向に1.2mより下流、かつ0.4Dの位置より上流の範囲の全部もしくは一部のスプレー水量密度を減少させると良い。
なお、一般の連続鋳造機(湾曲型連続鋳造機や垂直曲げ型連続鋳造機)は、距離Dが10〜20m程度であるため、0.4Dとなる位置は、鋳型直下から4〜8m程度である。このため、温度計は、鋳型直下から鋳造方向に、1.2mの位置から起算して2.8m以上、下流側に設置されることになる。従って、スプレー水量密度の減少対象位置は、鋳型直下から、鋳造方向に1.2mまでの冷却範囲R1、R2とは重ならない。
ここでは、水量密度の減少によって鋳片の表面温度を復熱させ、鋳片の幅方向の温度偏差を抑制しているが、水量密度の減少によるバルジング発生を考慮する必要がある。
しかし、本発明者らの知見では、温度計の設置位置での温度偏差が顕著(300℃超え)となるように冷却された場合、鋳片の幅方向の少なくとも一部は、凝固シェル厚さが厚くなるためバルジングは発生しにくく、水量密度の減少代の調整で、バルジング発生の顕著な発生を抑制して、復熱(水量密度の減少)させることが可能である。
以上に示したように、鋳型直下から、鋳造方向に0.6mまでの冷却範囲R1においては、パウダー付着の有無による冷却能指数差が小さく、しかもパウダーが積極的に剥離しない水量密度P1で冷却し、鋳型直下から鋳造方向に、0.6mから1.2mまでの冷却範囲R2においては、水量密度P2を水量密度P1よりも上昇させて、鋳型直下から鋳造方向に1.2mまでに、パウダーの剥離完了を実質的に実現する。
これにより、鋳片13の幅方向の温度偏差と表面の過冷却とを抑制して、鋳片の内部割れ防止と表面割れ防止の両立を図り、良質の鋳片を製造できる。
次に、本発明の作用効果を確認するために行った実施例について説明する。
ここでは、図3に示す連続鋳造機を使用し、鋳型の直下から、鋳造方向に0.6mまでの冷却範囲R1と、鋳型の直下から鋳造方向に、0.6mから1.2mまでの冷却範囲R2におけるスプレー水量密度P1、P2をそれぞれ変更させた場合について、鋳片の表面温度偏差と鋳片の割れ発生率への影響を調査した。
また、鋳片の表面を観察可能なカメラを、鋳型直下から鋳造方向に1.2m位置に設置し、スプレー水量密度P1、P2を変更した場合のパウダーの付着状態(目視観察)と鋳片の温度偏差の関係についても調査した。なお、連続鋳造機には、温度計を、鋳型直下から鋳造方向に8m(0.5D)位置に設置して、鋳片の表面温度を測定した。
ここで、実験条件を以下に示す。
<連続鋳造機>
ロールのタイプ:全てのロールを1本のサポートロール(分割ロールなし)で構成
ロールのピッチ:鋳型直下から、鋳造方向に1.2mまでは、200mm
冷却用ノズルのタイプ:鋳型直下から、鋳造方向に1.2mまでは、気水ノズル
鋳型直下から曲げ戻し部までの距離D:16m
<鋳造条件>
鋳造速度:1.3m/分、鋳造幅:1000〜1300mm、鋳造厚み:250mm、鋼種:1.0〜3.5質量%Si含有鋼
<冷却条件>
冷却範囲R1でのスプレー水量密度P1:100L/m/分、150L/m/分、280L/m/分、300L/m/分
冷却範囲R2でのスプレー水量密度P2:250L/m/分、300L/m/分、700L/m/分、750L/m/分
そして、鋳型内に供給するパウダーの消費量(供給量)は、0.1kg/m以上0.7kg/m以下とした。なお、パウダーには、例えば、1350℃で0.6〜1.0poise(ポアズ)のものを使用した。
このパウダーの消費量Pw(kg/m)は、以下のように定義している。
{パウダーの消費量Pw(kg/m)}
={鋳造時間中にメニスカスへ投入したパウダーの量(kg)}
/{鋳造速度(m/分)×{鋳片の幅(m)+鋳片の厚み(m)}×2×鋳造時間(分)}
ここで、鋳造時間とは、例えば、150〜350トン程度の1チャージの溶鋼を鋳造する時間や、複数チャージの溶鋼を鋳造する時間を意味する。
また、鋳片の割れ発生率は、以下のように定義した。
(鋳片の割れ発生率)=(割れが発生した鋳片の本数)/(鋳片の全本数)×100(%)
(鋳片の全本数)={鋳造全長(m)}/{10(m/本)}
鋳片の全本数は、鋳造後に10m間隔で切断した鋳片単位で、本数をカウントしているため、上記した式で表している。
割れが発生した鋳片の本数は、表面割れと内部割れの一方又は双方が1箇所でも発生した場合を、割れが発生した鋳片としてカウントした。
この結果を表1に示す。なお、表1では、上段に鋳片の温度偏差を、下段に鋳片の割れ発生率を、それぞれ示している。
この温度偏差は、鋳片の幅方向両端部(鋳片の幅方向両端から中央部へ100mmの領域)を除く鋳片の幅方向の「最大温度(℃)」−「最小温度(℃)」で定義した。
また、鋳片の割れ発生率は、2%未満を最も良好(◎)、2%以上5%未満を良好(○)、5%以上20%未満をやや不良品(△)、20%以上を不良品(×)とした(以下に示す表2も同様)。
Figure 2011131239
まず、スプレー水量密度P1を100L/m/分に設定した結果について説明する。
スプレー水量密度P2が250L/m/分の場合、カメラによる観察では、鋳片の表面にパウダーが付着しており、300℃を超える温度偏差が発生した(割れ発生率:20%以上)。
スプレー水量密度P2が300L/m/分、700L/m/分の場合、平均的には、温度偏差が200℃以下になるが、高温起因の内部割れが生じた(割れ発生率:20%以上)。
スプレー水量密度P2が750L/m/分の場合、過冷却起因の割れや、高温起因の内部割れが生じた(割れ発生率:20%以上)。
次に、スプレー水量密度P1を150L/m/分に設定した結果について説明する。
スプレー水量密度P2が250L/m/分の場合、カメラによる観察では、鋳片の表面にパウダーが付着しており、300℃を超える温度偏差が発生した(割れ発生率:20%以上)。
スプレー水量密度P2が300L/m/分、700L/m/分の場合、良好なパウダーの剥離状況がカメラにより観察され、温度偏差も小さく、過冷却起因の割れや高温起因の割れの発生もなく、割れ発生率の低減が可能であった(割れ発生率:2%以上5%未満)。
スプレー水量密度P2が750L/m/分の場合、過冷却起因の割れが生じた(割れ発生率:20%以上)。
そして、スプレー水量密度P1を280L/m/分に設定した結果について説明する。
スプレー水量密度P2が250L/m/分の場合、カメラによる観察では、鋳片の表面にパウダーが付着しており、300℃を超える温度偏差が発生した(割れ発生率:20%以上)。
スプレー水量密度P2が300L/m/分、700L/m/分の場合、良好なパウダーの剥離状況がカメラにより観察され、温度偏差も小さく、過冷却起因の割れや高温起因の割れの発生もなく、割れ発生率の低減が可能であった(割れ発生率:2%以上5%未満)。
スプレー水量密度P2が750L/m/分の場合、過冷却起因の割れが生じた(割れ発生率:20%以上)。
最後に、スプレー水量密度P1を300L/m/分に設定した結果について説明する。
スプレー水量密度P2が250L/m/分の場合、カメラによる観察では、鋳片の表面にパウダーが付着しており、300℃を超える温度偏差が発生した(割れ発生率:20%以上)。
スプレー水量密度P2が300L/m/分、700L/m/分の場合、平均的には、温度偏差が200℃以下になって割れ発生率は改善するが、300℃超えの温度偏差が散発した(割れ発生率:パウダーの消費量によって、5%以上20%未満、又は20%以上)。
スプレー水量密度P2が750L/m/分の場合、過冷却起因の割れが生じた(割れ発生率:20%以上)。
以上より、パウダーに起因した温度低下や温度偏差を抑制するためには、冷却範囲R1での冷却水の水量密度P1を150L/m/分以上280L/m/分以下とし、冷却範囲R2での冷却水の水量密度P2を300L/m/分以上700L/m/分以下とする必要があり、これにより、鋳片の割れ発生率を2%以上5%未満にできることを確認できた。
更に、連続鋳造機に使用するロールとして、鋳型直下から、鋳造方向に少なくとも0.4Dの位置まで、分割ロールを適用した場合には、バルジング起因の内部割れが減少し、スプレー水量密度の低減による復熱の活用ができることから、表1中の「○」評価の割れ発生率(割れ発生率が2%以上5%未満)を、1〜2%程度低減できることが推定できた。なお、この結果は、温度偏差の減少効果と復熱活用の効果から推定した。
次に、連続鋳造機への温度計設置の有無による鋳片の割れ発生率への影響と、温度計を設置した場合に水量密度を変更したときの鋳片の割れ発生率への影響を示した結果を、表2に示す。
Figure 2011131239
なお、表2の実施例1は、連続鋳造機に温度計を設置することなく鋳造を行った場合の結果であり、実施例4は、温度計を、鋳型直下から鋳造方向に8m位置に設置し、温度計で測定した鋳片の温度偏差が300℃を超えた際に、0.4Dの位置より上流のスプレー水量密度を変更して鋳造した場合の結果を示している。
また、表2中の実施例2、3、5、6は、温度計を、鋳型直下から鋳造方向に、それぞれ5.6m(0.35D)、6.4m(0.40D)、10.4m(0.65D)、11.2m(0.70D)の位置に設置した場合の推定結果を示している。なお、鋳片割れ発生率の推定は、鋳造方向における鋳片の温度履歴と鋳片の幅方向の温度分布(温度偏差)を推定するモデルを、実施例4の実測データを用いて作成することで行った。
表2から、0.4D以上0.65D以下の範囲内に温度計を設置して鋳片の表面温度を測定し、鋳片の幅方向の表面温度差が300℃を超えたことを条件として、冷却範囲より下流、かつ0.4Dの位置より上流の範囲で、鋳片に吹き付けるスプレー水量密度を、上記条件時に鋳片に吹き付けられていた冷却水の水量密度よりも減少させることで、鋳片の割れ発生率を2%未満まで改善できることを確認できた(表2中の実施例3〜5)。
なお、鋼種については、10質量%以上Cr含有鋼と、0.5質量%以上C含有鋼についても、Si含有鋼と略同等の結果が得られた。
以上のことから、本発明の鋼の連続鋳造方法を使用することで、鋳片の幅方向の温度偏差と、鋳片の表面の過冷却とを抑制して、鋳片の内部割れ防止と表面割れ防止の両立を図り、良質の鋳片を製造できることを確認できた。
以上、本発明を、実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。例えば、前記したそれぞれの実施の形態や変形例の一部又は全部を組合せて本発明の鋼の連続鋳造方法を構成する場合も本発明の権利範囲に含まれる。
10:鋳型、11:二次冷却帯、12:連続鋳造機、13:鋳片、14:曲げ戻し部

Claims (4)

  1. 鋳型と、該鋳型の下流側に配置された二次冷却帯とを有する連続鋳造機を用い、前記鋳型から、Siを1.0質量%以上、又はCrを10質量%以上、又はCを0.5質量%以上含む鋳片を引き抜き、該鋳片を前記二次冷却帯に設けられた多数の冷却用ノズルで冷却する鋼の連続鋳造方法において、
    前記二次冷却帯のうち、前記鋳型の直下から、鋳造方向に0.6mまでの冷却範囲R1と、前記鋳型の直下から鋳造方向に、0.6mから1.2mまでの冷却範囲R2とで、前記冷却用ノズルから前記鋳片にそれぞれ吹き付けられる冷却水の水量密度P1、P2が、以下の条件を満足することを特徴とする鋼の連続鋳造方法。
    150リットル/m/分≦P1≦280リットル/m/分
    300リットル/m/分≦P2≦700リットル/m/分
  2. 請求項1記載の鋼の連続鋳造方法において、少なくとも前記冷却範囲R2で冷却水を吹き付ける前記冷却用ノズルに、気水ノズルを用いることを特徴とする鋼の連続鋳造方法。
  3. 請求項1又は2記載の鋼の連続鋳造方法において、前記二次冷却帯には、前記鋳型から引き抜かれた前記鋳片を、厚み方向から挟み込んで鋳造方向に搬送する多数のロールが配置され、該多数のロールの一部又は全部に、前記鋳片の幅方向両端部を除く位置で分割された分割ロールを用いることを特徴とする鋼の連続鋳造方法。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の鋼の連続鋳造方法において、前記鋳型の直下から前記連続鋳造機の曲げ戻し部までの距離をDとして、前記鋳型の直下から0.4Dの位置から0.65Dの位置までの範囲内に温度計を設置して前記鋳片の表面温度を測定し、前記鋳片の幅方向両端から中央部へ向けて100mmまでの範囲を除いた領域の前記鋳片の幅方向の表面温度差が300℃を超えたことを条件として、前記冷却範囲R2より下流、かつ前記0.4Dの位置より上流の範囲の全部又は一部で前記冷却用ノズルから前記鋳片に吹き付けられる冷却水の水量密度を減少させることを特徴とする鋼の連続鋳造方法。
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