JP2011129389A - 空気電池のコンディショニング方法及び空気電池の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 空気極、電解質及び負極を有する発電部を作製する、発電部作製工程と、通常使用時における充放電レートと比較して高レートで、発電部の充放電を行う、コンディショニング工程とを有する、空気電池の製造方法により、空気電池を製造し、また、通常使用時における充放電レートと比較して高レートで空気電池の充放電を行う、空気電池のコンディショニング方法により、空気電池のコンディショニングを行う。
【選択図】 図6
Description
第1の本発明は、通常使用時における充放電レートと比較して高レートで、空気電池の充放電を行う、空気電池のコンディショニング方法である。
図1は、一実施形態に係る本発明の空気電池のコンディショニング方法S10(以下、単に「方法S10」という。)を説明するためのフローチャートである。図1に示されるように、方法S10は、通常使用時において所定のレートにて充放電を行う工程S1、電池容量を確認し、電池容量が所定値より大きいか否かを確認する工程S2、工程S2において否定判断(電池容量が所定値以下)がなされた場合に、上記通常使用時における充放電レートよりも高レートにて充放電を行う工程S3、及び、工程S2において肯定判断(電池容量が所定値よりも大きい)がなされた場合に、上記通常使用時における所定レートにて充放電を継続する工程S4を備えている。以下、各工程につき説明する。
工程S1は、予め設定された通常使用時におけるレートにて充放電を行うことで、空気電池を所定用途において作動させる工程である。通常使用時における充放電レートについては、特に限定されるものではなく、電池の用途や電池の接続形態等によって適宜選択すればよい。
工程S2は、空気電池の容量(例えば、放電容量)を確認し、容量が所定値よりも大きいか否かを判断する工程である。空気電池の容量の確認は、空気電池に電気的に接続された公知の手段により確認することができる。例えば、公知の充放電試験を行うことによって確認することができる。容量については、空気電池の初期状態(例えば、出荷当時)の容量を100%とした場合、50〜80%程度の任意の容量を上記所定値として設定することができる。
工程S3は、工程S2において否定判断(電池容量が所定値以下)がなされた場合に、工程S1に係る充放電レートよりも高いレートで充放電を行う工程である。工程S3により、空気電池の容量が所定値よりも大となるように、電池のコンディショニングが行われる。工程S3に係る充放電レートとしては、例えば、工程S1に係る充放電レートに対して2〜5倍程度の高レートとすることができる。工程S3においては、例えば充放電サイクルを2〜50回繰り返すように制御される。或いは、充放電サイクルを予め設定した所定時間繰り返すことでもよい。工程S3において、通常使用時よりも高レートにて充放電が行われることで、空気電池内では、寸法の小さな放電生成物が均一に析出するが、当該放電生成物は電子伝導や酸素・リチウムイオン拡散のためのパスを塞ぐことがない。そして、空気電池において、電極層への電解液浸透を促進させることができ、電池反応場を増大させることができる。また通常使用時よりも高レートで充電を行う場合、高レート放電によって生成した微小放電生成物を効率よく分解できるため、残存放電生成物が少なくすることができる。さらに、放電生成物の分解反応(例えば、Li2O2→2Li++O2↑+2e−)に伴い、電極層の内部まで、酸素供給を促進させることができ、電池反応に係る有効表面積を増大させることができる。工程S3によれば、このように空気電池のコンディショニングが行われ、電池容量を所定値よりも大となるように、空気電池性能を改善することができる。
一方、工程S2において肯定判断(電池容量が所定値より大きい)がなされた場合、空気電池は、通常使用時において必要十分な容量を維持していることとなる。従って、空気電池のコンディショニングを行う必要はなく、通常使用時におけるレートにてそのまま充放電を行えばよい。
上記方法S10においては、空気電池の通常使用時に適用されるものとして、本発明に係るコンディショニング方法を説明した。しかしながら、本発明に係る空気電池のコンディショニング方法は、電池製造時におけるコンディショニング方法としても適用可能である。図2は、本発明に係る空気電池の製造方法S20(以下、単に「製造方法S20」という。)を説明するためのフローチャートである。図2に示されるように、製造方法S20は、少なくとも、発電部を作製する工程S11と、当該発電部について通常使用時の充放電レート(電池製造後、所定の用途に供されるものとして予め設定された充放電レート)よりも高レートで充放電を行うことによりコンディショニングを行う工程S12と、を備えている。
工程S11は、空気電池の充放電を行う発電部を作製する工程である。発電部は空気電池の発電部として機能し得る形態であれば特に限定されるものではない。例えば、空気極及び空気極に接する酸素層と、負極と、空気極及び負極との間に設けられる電解質を含む層とを有し、任意に集電体等をさらに有する発電部とすることができる。発電部は、筐体に収納され、後述する工程S12を行った後、空気電池とされる。
工程S12は、工程S11にて作製された発電部に対して、通常使用時の充放電レートよりも高いレートで充放電を行う工程である。工程S12により、発電部のコンディショニングが行われる。工程S12に係る充放電レートとしては、空気電池製造後、所定の用途に供するものとして予め設定された充放電レートに対して2〜5倍程度の高レートにて充放電を行う。工程S12においては、例えば充放電サイクルを2〜50回繰り返すように制御される。或いは、充放電サイクルを予め設定した所定時間繰り返すことでもよい。工程S12において、製造後に想定された通常使用時の充放電レートよりも高レートにて充放電が行われることで、発電部には、寸法の小さな放電生成物が均一に析出するが、当該放電生成物は電子伝導や酸素・リチウムイオン拡散のためのパスを塞ぐことがない。そして、発電部において、電極層(空気極、負極)への電解液浸透を促進させることができ、電池反応場を増大させることができる。また通常使用時よりも高レートで充電を行う場合、高レート放電によって生成した微小放電生成物を効率よく分解できるため、残存放電生成物が少なくすることができる。さらに、放電生成物の分解反応(例えば、Li2O2→2Li++O2↑+2e−)に伴い、電極層の内部まで、酸素供給を促進させることができ、電池反応に係る有効表面積を増大させることができる。このように、電池製造時、工程S12を経ることにより、発電部のコンディショニングが適切に行われ、コンディショニングを行わない場合と比較して、電池性能が増大された空気電池を製造することができる。また、電解液に粘性の高い溶媒を用いる場合、電極(特に、多孔性の空気極)の濡れ性が悪く、充放電反応場が十分に形成されないため、十分に大きな充放電容量を得ることができない場合がある。そこで、工程S12においては、発電部の温度を通常使用時よりも高い温度に保持しながら、高レート充放電が行われることが好ましい。このようにすることで、電解液の粘度を低下させることができ、電極への液周りを向上させることができ、さらに高性能な空気電池を製造することができる。具体的には、リチウム空気電池を製造する場合、45〜100℃程度の温度に保持しながら、工程S12を行うことが好ましい。
空気極11は、導電性材料、触媒、及び、これらを結着させる結着材を含有している。
酸素層12は、筐体16内に存在する酸素ガスを、空気極11へと導く機能を担う。酸素層12は、空気極11へと導かれる空気の通り道であり、例えば、空気極11の内部又は外面に当接して、空気極11の集電を行う集電体に備えられる孔が、酸素層12として機能する。すなわち、酸素層12は、空気極集電体12と表現することもできる。
負極13は、負極活物質として機能する金属を含有している。また、負極13には、負極13の内部又は外面に当接して、負極13の集電を行う負極集電体(不図示)が任意に設けられる。
電解質層14は、空気極11及び負極13の間でイオンの伝導を担う電解質を有してなる層である。電解質としては、液系・固体系の電解質を特に限定されることなく用いることができる。
空気電池10において、発電部15は、上記(酸素層12)、空気極11、電解質層14、及び負極13が、この順に積層されてなる積層体である。空気極11、電解質層14、及び負極13の積層方法については特に限定されず、空気極11と負極13との間にセパレータ又はゲルポリマーを配し、当該セパレータ又はゲルポリマーに電解液を含ませることで、空気極11と負極13との間に電解液に係る電解質層14を設ける形態や、或いは、空気極11と負極13との間に、加圧成形した固体電解質に係る電解質層14を配置する形態等を例示することができる。
筐体16には、発電部40、酸素層12、及び酸素含有ガスが少なくとも収容される。空気電池10において、筐体16の形状は特に限定されるものではない。例えば、筐体16の一部をメッシュ状とすること、或いは、供給口を設けること等により、外部から空気等の酸素含有ガスを取り込み、空気電池10の空気極に酸素が供給される形態であってもよいし、筐体16内部にあらかじめ酸素含有ガス等を収容して密閉したうえで、空気電池10の空気極に酸素が供給される形態であってもよい。筐体16の構成材料は、空気電池の筐体に使用可能な材料を適宜用いることができる。筐体16に取り込まれる又は収容される酸素含有ガスについては、酸素が含有されているものであれば特に限定されるものではないが、空気、好ましくは乾燥空気や、圧力が1.01×105Pa、酸素濃度が99.99%の酸素ガス等を用いることができる。
ケッチェンブラック、MnO2、結着剤(PTFE)を質量比で80:10:10含む層(厚み300μm)を空気極(正極)として用いた。また、空気極には、空気極集電体としてNi 50メッシュ(ニラコ社製、NI−318501)を設けた。一方、負極として、金属リチウム(極東金属、厚み200μm、φ15mm)を用いた。また、セパレータとして、ポリプロピレン製の不織布(JH1004N、厚み200μm)を用い、電解液として0.32mol/kgの支持電解質(Li/TFSIを加えたイオン液体(関東化学社製、PP13/TFSI)、1.5mm)を用いた。これらを用いて、評価セル(F型セル、北斗電工社製)を作製し、ガス置換コック付きガラスデシケーター内(デシケーター内にはモレキュラーシーブを約50ml設置)で評価を行った。
従来の二次電池に対して行われてきた低レート充放電(0.02mA/cm2)により評価セルの充放電を行った。結果を図4に示す。図4に示されるように、従来の低レート充放電にあっては、評価セルの初期の放電容量は大きいが、2サイクル目以降、充放電を重ねることができなかった。これは、評価セル内で、絶縁体である放電生成物が電極表面を覆ってしまい、電子伝導や酸素・リチウムイオン拡散のためのパスが全く形成されなくなったためと考えられる。また、その後、高いレートでコンディショニングを行ったが、放電容量を回復することはできなかった。
中レート充放電(0.04mA/cm2)にて評価セルの充放電を続けた場合、及び、高レート充放電(0.1mA/cm2)にて評価セルの充放電を続けた場合について、電池挙動を評価した。結果を図5に示す。図5に示されるように、単に中レート充放電、或いは、高レート充放電を続けた場合は、評価セルの充放電サイクルを重ねることができた。この場合の評価セルの放電容量は、中レート充放電で約90mAh/g−正極材、高レート充放電で約70mAh/g−正極材となった。
高レート充放電(0.1mA/cm2)に係る充放電サイクルを5回重ねた後、中レート充放電(0.04mA/cm2)に切り替え、続けて充放電サイクルを重ねた場合について、電池挙動を評価した。結果を図6に示す。図6に示されるように、高レート充放電時は、図5と同様、放電容量が約70mAh/g−正極材であったが、中レート充放電に切り替えると、放電容量が約180mAh/g−正極材に増大し、図5の中レート充放電の約2倍の放電容量を実現できた。すなわち、空気電池の通常使用時の充放電レートよりも、高レートにて空気電池のコンディショニングを行うことで、空気電池の放電容量を増大させ、クーロン効率に優れる電池とすることができることが分かった。また、電池使用前(製造時)に、予め高レート充放電を行い電池のコンディショニングを行っておくことで、使用時に高い放電容量を有する空気電池とすることができることが分かった。
11 空気極
12 酸素層(集電体)
13 負極
14 電解質層
15 発電部
16 筐体
Claims (5)
- 通常使用時における充放電レートと比較して高レートで、空気電池の充放電を行う、空気電池のコンディショニング方法。
- 前記通常使用時における前記空気電池の容量が所定値以下となった場合に、前記通常使用時における充放電レートと比較して高レートで、前記空気電池の充放電を行う、請求項1に記載の空気電池のコンディショニング方法。
- 前記空気電池の温度を前記通常使用時よりも高い温度に保持しながら、前記空気電池の充放電を行う、請求項1又は2に記載の空気電池のコンディショニング方法。
- 空気極、電解質及び負極を有する発電部を作製する、発電部作製工程と、
通常使用時における充放電レートと比較して高レートで、前記発電部の充放電を行う、コンディショニング工程と、
を有する、空気電池の製造方法。 - 前記コンディショニング工程において、前記発電部の温度を前記通常使用時よりも高い温度に保持しながら、前記発電部の充放電を行う、請求項4に記載の空気電池の製造方法。
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