JP2011128014A - 温度センサ及びその取付け構造 - Google Patents
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Abstract
【課題】温度センサが取付けられる取付けねじ穴の奥の環状座面に、センサの環状押圧部をあてがい、後方からねじ込み用固定部材をねじ込むことで、環状押圧部を環状座面に押付けてシールを保持して取付けられるセンサの取付け構造で、取付けねじ穴、環状押圧部等のいずれかの熱膨張係数が相対的に他より大でも、取付け後の温度上昇、温度低下にかかわらず発生する熱膨張差、収縮差によるシール不良の発生を防ぐ。
【解決手段】センサ101の環状押圧部31とねじ込み用固定部材61との間に、圧縮状態のバネ部材51を介在させた。取付け後の温度上昇、低下による膨張差、収縮差により、環状押圧部31が環状座面を押す力が減少するような場合でも、そのバネ部材51があるため、シール不良の発生を防止できる。
【選択図】 図5
【解決手段】センサ101の環状押圧部31とねじ込み用固定部材61との間に、圧縮状態のバネ部材51を介在させた。取付け後の温度上昇、低下による膨張差、収縮差により、環状押圧部31が環状座面を押す力が減少するような場合でも、そのバネ部材51があるため、シール不良の発生を防止できる。
【選択図】 図5
Description
本発明は、流体の温度を検出する温度センサ及びその取付け構造に関する。詳しくは、エンジンの排気ガス等の流体の温度を測定するため、流体が流通する対象物(例えば排気管)に設けられた取付けねじ穴に取付けられる温度センサ(以下、単にセンサともいう)、及びその取付け構造に関する。
図9は、この種の温度センサ201及びその取付け構造の一例を示した縦断面図である。図9に示した温度センサ201は、排気管500内の排気ガスの温度を測定するためのもの(排気温センサ)であり、先端(図示下端)が閉じられたチューブ11の内部の先端部分に、サーミスタなどの温度センサ素子(以下、センサ素子又は単に素子とも言う)21を備え、次のように構成されている。すなわち、この素子21を内蔵するチューブ11は、例えばその後端寄り部位の外側にフランジ状に突出する環状押圧部31を備えている。この環状押圧部31は、排気管500におけるセンサの取付け対象部位(ボス)501に設けられた取付けねじ穴(以下、単にねじ穴ともいう)503の奥のシール保持用の環状座面505に押付けられるところであり、例えば溶接や圧入によりチューブ11に固定されている。また、この環状押圧部31の後端側において後方に突出状に設けられた筒状部の外側には、上記したチューブ11より大径をなす大径チューブ(保護チューブ)41がその先端を外嵌され、後方に延びる形で同心状に固定されている。そして、環状押圧部31の後方には、後方にスライド可能でその大径チューブ41に遊嵌状に外嵌され、外周面に、上記取付けねじ穴503にねじ込み可能のねじ62を備えた筒状又は環状のねじ込み用固定部材61を備えている。なお、素子21から延びる電極線23は、シース管25に配置された芯線24に接続され、この芯線24が、大径チューブ41の後端から外部に引き出される信号取り出し用のリード線28にカシメ端子27を介して接続されている。そして、このリード線28は、大径チューブ41の後端部45内に配置されたシール部材47内を通され、その後端部45を縮径状に加締めることで固定されている。
このような構成を有する温度センサ201では、それ自身が取付けられる排気管500の取付け対象部位である例えばボス(突出部)501に設けられた取付けねじ穴503の奥の環状座面505に、上記の環状押圧部31の先端向き面(円錐状のテーパ面)36をあてがい、後方からねじ込み用固定部材61をその取付けねじ穴503にねじ込む(締め付ける)ことで取付けられる。すなわち、センサ201は、ねじ込み用固定部材61をねじ込み、その先端63にて環状押圧部31を環状座面505に押付けて、その間のシールを保持しつつ、ねじ穴503に取付けられる。
ところで、このような排気ガスの温度の測定に用いられるセンサ201は、その取付けは常温で行われるのが普通である。しかし、その取付け後においては排気ガスの熱による高温に晒される。一方、エンジン停止時や寒冷時には氷点下以下の温度に晒されるなど、幅広い温度変化を受ける。とくに、排気ガスの熱で高温に晒される場合には、センサ201が取付けられている排気管500のボス501の部位、すなわち、取付けねじ穴503及びその環状座面505、さらには、これに押付けられているセンサ201の環状押圧部31、及びねじ込み用固定部材61を含むセンサ201の部分は、例えば、200℃〜500℃、或いは、取付け対象部位によってはそれ以上の高温になる。したがって、センサ201を構成する環状押圧部31、及びねじ込み用固定部材61、さらに、センサ201が取付けられている取付けねじ穴503を形成するボス501のうち、その1つでも他より熱膨張係数が大きく相違する素材から形成されている場合には、その熱膨張係数の相違に基づく熱伸縮量の相違により、シール不良やねじ込み状態に緩みが生じることがある。
例えば、取付けねじ穴503を含むセンサ201の取付け対象部位(排気管500及びボス501)が、JIS H 5052にAC2Bとして規定されるアルミニウム合金製(熱膨張係数:23.5×10−6/℃)であり、センサ201側の環状押圧部31がSUS310製(熱膨張係数:17.3×10−6/℃)で、ねじ込み用固定部材61がSUS430製(熱膨張係数:10.4×10−6/℃)からなる場合には、その三者の熱膨張係数に大きな相違がある。このため、このような素材からなる上記センサの取付け構造においては、それらが高温の排気ガスに晒されると、排気管500の取付けねじ穴503を構成するボス501が相対的に大きく(軸G方向に長く)膨張する。したがって、センサ201の環状押圧部31が取付けねじ穴503の環状座面505を押付けていた力(圧縮力)が小さくなり、シール性が低下する。そして、熱膨張量の差によっては、センサ201の環状押圧部31が取付けねじ穴503の環状座面505から浮き、ねじ込み状態に緩みが生じるといった問題が発生することもある。
また、上記において、ねじ込み用固定部材61がボス501と同素材(アルミニウム合金)からなり、環状押圧部31のみがこれらと異なるSUS310からなる場合、或いは、環状押圧部31がボス501と同素材(アルミニウム合金)からなり、ねじ込み用固定部材61のみがこれらと異なるSUS430からなる場合でも、その熱膨張係数の相違により、温度次第では同様の問題が生じる。そして、これらの問題はシール性の低下による排気ガスのリークの発生という問題のみならず、センサ201の取付けが不完全となることを意味するから、振動によりセンサ201が故障する原因ともなる。
こうした中、センサ201の取付けねじ穴503を形成する取付け対象部位であるボス(センサの取付け座)501、センサ201における環状押圧部(封止部材、リブ)31、ねじ込み用固定部材(ナット)61の熱変形量が略同一となるようにして、冷熱サイクル時におけるねじの緩みを防止するという技術がある(特許文献1)。すなわち、センサ201の取付けねじ穴503を形成するボス(センサの取付け座)501、センサ201における環状押圧部(封止部材、リブ)31、及びねじ込み用固定部材(ナット)61の各熱膨張係数を略同一として、各部が同様に熱膨張するようにしたり、その差を、2×10−6/℃以下として熱膨張差を小さくするというものである。
また、別の技術としては、環状押圧部(フランジ)31をその熱膨張係数が、取付けねじ穴503を形成するボス501の熱膨張係数より所定値(2.5×10−6/℃)以上大きい素材で形成することや、環状押圧部(フランジ)31とねじ込み用固定部材(ナット)61との熱膨張係数の差を前記所定値未満とし、かつ、ねじ込み用固定部材61をその熱膨張係数が取付けねじ穴503を形成するボス501の熱膨張係数より所定値(2.5×10−6/℃)以上大きい素材で形成するといった技術も知られている(特許文献2)。これらは、特許文献1における技術ではシール性が温度変化にかかわらず略一定であるために、600℃以上の高温時のシール性に懸念があるのに対し、環状押圧部31又はねじ込み用固定部材(ナット)をそのような高温時においてボス501よりも大きく熱膨張させることで、環状押圧部31が環状座面505を押付ける力を増大させ、高温領域において高いシール性を確保できるというものである。
ところが、特許文献1の技術では、センサ201の取付けねじ穴503を形成するボス501、及びセンサ201をなす環状押圧部31、ねじ込み用固定部材61ともに熱変形量が略同一となるように構成する技術であるから、センサ201側のみでなく、ボス501のようなセンサ201の取付け対象部位をも略同一の熱膨張係数の素材(例えば、同一素材)で形成する必要があり、或いは、その差を、2×10−6/℃以下とする必要があるなどの制約がある。したがって、センサの取付け構造として具体化できる範囲が極めて狭いといった重大な欠点がある。例えば、センサ201をなす環状押圧部31、ねじ込み用固定部材61ともに上記のようなSUS310、又は430製であるような温度センサ201において、その取付け対象部位(ボス501)の取付けねじ穴503が上記のようなアルミニウム合金製からなるもののように、そのボス501の熱膨張係数が、センサ201のそれらよりはるかに大きい金属素材で形成されている場合には、もはや特許文献1の技術の適用の余地はない。
また、特許文献2の技術では高温時のシール性の向上は図られるが、反面、以下の問題が生ずることがある。というのは、温度範囲が非常に大きい冷熱サイクルを受けた場合に、環状押圧部31は熱膨張係数がボスより大きい素材からなるため、温度低下時に相対的に環状押圧部31の収縮量が大きくなる。したがって、このような場合には、シール性能が低下することがある。
上記したことから明らかなように、特許文献1では、熱膨張係数を同じか、略同じ素材で各部を形成するといった材質の制約があるから、センサ及びその取付け構造を具体化できる範囲が極めて狭くなる。また、高温域でのシール性に不安がある。一方、材質の制約を外せば、センサ及びその取付け構造の自由度ないし適用範囲は拡がるが、ボス501が他より熱膨張係数の大なる金属素材で形成されている場合には、高温時におけるシール性に問題があるのは上記した通りである。また、特許文献2のように、それと逆に、環状押圧部31、又はねじ込み用固定部材62に、ボス501より熱膨張係数が大きい素材からなるものを使用すれば、高温時には環状押圧部31が環状座面505を押付ける力の増大が図られるが、上記したように低温時のシール性に問題がある。このように、従来のセンサの取付け構造においては、環状押圧部31等のうち、いずれか1つをなす部材、部位の素材の熱膨張係数が他のそれと大きく異なる場合には、高温時又は低温時のいずれかにおいて環状押圧部が環状座面を押付ける力が低下する。したがって、シール不良等を招く可能性があるといった問題があった。
本発明は、温度センサの取付け構造における上記した問題点に鑑みてなされたもので、センサが取付けられる取付けねじ穴を形成する部位、センサ側の環状押圧部又はねじ込み用固定部材をなす素材に、熱膨張係数に大きな相違があるとしても、その取付け後、高温領域だけでなく低温領域においても、上記のようなシール不良やねじ込み状態の弛緩などの問題が発生することを有効に防止できる温度センサ及びその取付け構造を提供することをその目的とする。
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、対象物内の流体の温度を測定するため、その対象物に設けられた取付けねじ穴へ取付けられる温度センサであって、
温度センサ自身が前記取付けねじ穴へ取付けられた状態においてその奥のシール保持用の環状座面に押付けられる環状押圧部と、
環状又は筒状に形成されて自身の外周面に前記取付けねじ穴にねじ込み可能のねじが形成されたねじ込み用固定部材とを備えており、
前記環状座面に前記環状押圧部をあてがい、前記ねじ込み用固定部材を前記取付けねじ穴にねじ込むことによって、前記環状押圧部を前記環状座面に押付けることによって該取付けねじ穴にシールを保持して取付けられる構成を有する温度センサにおいて、
前記環状押圧部と前記ねじ込み用固定部材との間に、前記環状押圧部を前記環状座面に押付けるように前記ねじの軸方向に圧縮されるバネ部材を介在させたことを特徴とする。
温度センサ自身が前記取付けねじ穴へ取付けられた状態においてその奥のシール保持用の環状座面に押付けられる環状押圧部と、
環状又は筒状に形成されて自身の外周面に前記取付けねじ穴にねじ込み可能のねじが形成されたねじ込み用固定部材とを備えており、
前記環状座面に前記環状押圧部をあてがい、前記ねじ込み用固定部材を前記取付けねじ穴にねじ込むことによって、前記環状押圧部を前記環状座面に押付けることによって該取付けねじ穴にシールを保持して取付けられる構成を有する温度センサにおいて、
前記環状押圧部と前記ねじ込み用固定部材との間に、前記環状押圧部を前記環状座面に押付けるように前記ねじの軸方向に圧縮されるバネ部材を介在させたことを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、対象物内の流体の温度を測定するための温度センサの取付け構造であって、
温度センサをその対象物に設けられた取付けねじ穴へ取付けるのに、該取付けねじ穴の奥のシール保持用の環状座面に、温度センサ自身に設けられた環状押圧部をあてがい、環状又は筒状に形成されて自身の外周面に前記取付けねじ穴にねじ込み可能のねじが形成されたねじ込み用固定部材を、前記取付けねじ穴にねじ込み、このねじ込みによって、前記環状押圧部を前記環状座面に押付けることで、該温度センサが前記取付けねじ穴にシールを保持して取付けられてなる温度センサの取付け構造において、
前記環状押圧部と前記ねじ込み用固定部材との間に、前記環状押圧部を前記環状座面に押付けるように前記ねじの軸方向に圧縮されたバネ部材を介在させたことを特徴とする。
温度センサをその対象物に設けられた取付けねじ穴へ取付けるのに、該取付けねじ穴の奥のシール保持用の環状座面に、温度センサ自身に設けられた環状押圧部をあてがい、環状又は筒状に形成されて自身の外周面に前記取付けねじ穴にねじ込み可能のねじが形成されたねじ込み用固定部材を、前記取付けねじ穴にねじ込み、このねじ込みによって、前記環状押圧部を前記環状座面に押付けることで、該温度センサが前記取付けねじ穴にシールを保持して取付けられてなる温度センサの取付け構造において、
前記環状押圧部と前記ねじ込み用固定部材との間に、前記環状押圧部を前記環状座面に押付けるように前記ねじの軸方向に圧縮されたバネ部材を介在させたことを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、前記バネ部材は、前記ねじ込み用固定部材が前記取付けねじ穴にねじ込まれる前において、前記温度センサに外嵌された環状又は筒状のものであることを特徴とする請求項2に記載の温度センサの取付け構造である。そして、請求項4に記載の発明は、前記対象物が、エンジンの排気管であることを特徴とする、請求項2又は3のいずれか1項に記載の温度センサの取付け構造である。
本発明において、前記環状押圧部は、前記環状座面に間接的に(別部材を介して)押付けられる構成のものであってもよい。また、前記ねじ込み用固定部材と、前記環状押圧部との間に介在されるバネ部材は、これらによって直接挟まれる構成のもの以外に、間接的に(ワッシャ等の別部材を介して)挟まれるものであってもよい。なお、バネ部材は、センサ又はその取付け構造に応じて、所定のたわみ変形量(圧縮変形量)及び所定のバネ定数を有するものから選択すればよい。詳細は後述する。
例えば、対象物における取付けねじ穴を形成する部位をなす素材が、JIS H 5052にAC2Bとして規定されるアルミニウム合金製(熱膨張係数:23.5×10−6/℃)であり、センサ側の環状押圧部がSUS310製(熱膨張係数:17.3×10−6/℃)であり、ねじ込み用固定部材がSUS430製(熱膨張係数:10.4×10−6/℃)である場合の従来のセンサの取付け構造の場合においては、その取付け後の温度上昇による熱膨張差によって前記環状押圧部が前記環状座面を押付ける力(前記軸方向の圧縮応力)は減少することとなるのは上記した通りである。すなわち、この場合、取付けねじ穴を形成する部位が、環状押圧部及びねじ込み用固定部材を形成する素材の熱膨張係数より大きいため、その取付け後の温度上昇により、取付けねじ穴の軸方向における熱膨張量が、環状押圧部等のなすセンサ側の軸方向における熱膨張量(合計膨張量)より大きくなる。このため、前記環状押圧部が受けていた軸方向の圧縮応力は、温度上昇によりその上昇前よりも低下する。したがって、シール性が低下し、取付けに緩みがでる可能性がある。
また、これとは逆に、ボスがSNB16製(熱膨張係数:13.6×10−6/℃)で、環状押圧部又はねじ込み用固定部材がSUS310製(熱膨張係数:17.3×10−6/℃)である場合の従来のセンサの取付け構造の場合(特許文献2)においては、その取付け後の温度低下によるそれらの収縮差によって、その低下前より、前記環状押圧部が前記環状座面を押付ける力(前記軸方向の圧縮力)は減少することとなる。したがって、上記したように、この場合にもシール性が低下し、取付けに緩みがでる可能性がある。
このような従来技術に対し本発明においては、例えば、上記のいずれの素材からなるセンサの取付け構造となるとしても、前記環状押圧部と前記ねじ込み用固定部材との間に、前記バネ部材を圧縮して介在させている。したがって、このような取付け構造では、その後、温度上昇や温度低下があり、環状押圧部が環状座面に押付けられている力が低下するような場合でも、圧縮されていたバネ部材がその弾性による復元力により、環状押圧部を環状座面に押付ける状態を保持する。これにより、シール性の低下の低減や取付け状態の緩みの発生の防止に寄与する。このように本発明では、バネ部材が介在されているため、それがある分、ない場合に比べると、前記環状押圧部が前記環状座面を押していた力が低下することによるシール性能の低下や、ねじ込み状態の緩みの発生を低減又は防止できるという注目すべき効果が得られる。
また、特許文献1の技術のように、取付けねじ穴を形成する取付け対象部位(センサの取付け座、ボス)、及びセンサをなす環状押圧部、ねじ込み用固定部材ともに熱変形量が略同一となる構成とするには、上記もしたように、センサ側のみでなく、センサの取付け対象部位をも略同一の熱膨張係数の素材(例えば、同一素材)で形成する必要があるから、上記した素材の構成の場合には適用(ないし対応)の余地がない。これに対し、本発明ではそれらの素材の異同にかかわらず適用できる。この意味で、その効果には際立って優れたものがあるといえる。すなわち、本発明によれば、取付けねじ穴を形成する取付け対象部位(センサの取付け座、ボス)、及びセンサをなす環状押圧部等を形成する素材についての制約なく、幅広い温度領域において、シール性能の低下や、ねじ込み状態の緩みの発生を低減又は防止できるという注目すべき効果が得られる。
なお、このような本発明における「バネ部材」は、センサを取付けねじ穴にねじ込み方式で取付けた後、すなわち、センサの取付け構造とした後の熱膨張差又は熱収縮差で、このばね部材が設けられていないと仮定したときに、環状押圧部と環状座面との間に生ずる可能性のある最大の空隙量を超える弾性的なたわみ変形量(必要圧縮変形量)を有するものを用いる。また、「バネ部材」は、弾性限度内で、環状押圧部が環状座面を適度の力で押付けることのできるバネ定数を有するものを用いる。ただし、シールを確保するのに必要なバネ定数を有するものを用いるのが好ましい。しかし、センサの取付け構造において受ける温度変化範囲や、流体(例えば排気ガス等)の圧力等は、様々であり、また、センサ及びその取付け構造を構成する素材や寸法関係によって熱膨張差又は熱収縮差も異なるし、シール性確保に必要な環状押圧部が環状座面を押付ける力も異なる。したがって、これらを考慮し、センサ又はその取付け構造の個々において、適宜の安全率を加味するなどして、バネ部材の選択又は設定をすればよい。例えば、たわみ変形量(圧縮変形量)を比較的大きく確保できる構造のバネ部材(例えば、圧縮コイルスプリング)を用いる場合には、バネ定数のみを問題とすればよいと考えられる。
一方、たわみ量が大きく確保できない、例えば皿バネのようなバネ構造のバネ部材を用いる場合において、その最大たわみ量が、上記の必要圧縮変形量より小さい場合には、これを複数、重ねて配置すればよい。本発明では、センサの取付け後において、取付けねじ穴と、センサ側の前記環状押圧部等の熱膨張差又は熱収縮差から予想される必要圧縮変形量を考慮し、そのような変形が生じたとしても、前記環状押圧部が前記環状座面を押付けることのできるたわみ量を有するバネ部材を、1個又は要すれば複数重ねるなどして用いればよい。
本発明を具体化した温度センサ及びその取付け構造の実施の形態(第1実施形態)について、図1〜図5に基づいて詳細に説明する。ただし、本例ではエンジンの排気ガスの温度を測定する温度センサ101を排気管(又排気マニホールド)500の取付け対象部位(ボス)501に設けられた取付けねじ穴503に取付ける場合で説明する。図中、101は、センサであって、SUS310製で、先端(図示下端)が閉じられてなる横断面円形のチューブ11と、そのチューブ11内の先端又は先端寄り部位に配置された温度センサ素子21とを主体として構成されている。このうち、素子21は、チューブ11内に内挿、配置されたシース管25の先端側に配置されている。このシース管25内には、2本の芯線24を挿通させた状態で絶縁粉末が充填されており、シース管25の先端から突出する芯線24の先端部に、素子21の後方から延びる2本の電極線23が接続されている。なお、このチューブ11の先端寄り部位は、その内部においてシース管25の先端を受けるように若干、細くなるように縮径され、シース管25を内挿している部位より小径をなしている。そして、チューブ11内には、素子21の揺動を抑制するために、セメントが充填されている。
このチューブ11の後端寄り部位の外周には、排気管500のセンサの取付け対象部位をなすボス501の取付けねじ穴503の奥のシール保持用の環状座面505に押付けられるよう、外方に突出するフランジ状の環状押圧部31が圧入され、さらに溶接により固定されている。この取付け用の環状押圧部31は、SUS310製(熱膨張係数:17.3×10−6/℃)で、センサ101をなすチューブ11の軸G方向から見て(先端側から見て)円形で環状をなすように形成され、その内周面に沿って後方に円筒状に延びる筒状部33を備えている。そして、環状押圧部31は、この筒状部33の内周面を介してチューブ11の後端寄り部位の外周面に、圧入、さらには溶接により固定されている。なお、環状押圧部31は、その後側が、チューブ11の中心軸(軸線)Gに垂直な円形環状の後端向き面35をなしているが、その先端面(先端向き面ともいう)36は、その外周寄り部位が、図2,3に示したような、取付けねじ穴503の奥の急先すぼまり状の環状座面505に押付けられるように急先細り状に形成されたテーパ面部36aをなしており、チューブ11の中心軸G寄り部位はその軸Gに垂直な環状平面36bをなしている。なお、この環状押圧部31の外周面37はその外径が取付けねじ穴503のねじの内径より小さい円筒面をなしている。
一方、この環状押圧部31において後方に延びる筒状部33の外周面には、チューブ11及びシース管25と同心で、それらより大径で後方に延びる横断面円形の大径チューブ(保護管)41が固定されている。この大径チューブ41は先端寄り部位を環状押圧部31の筒状部33の外周面に外嵌され、その先端を環状押圧部31の後端向き面35に当接状にし、環状押圧部31の筒状部33の外周面に溶接等により固定されている。一方、シース管25の後端は、この大径チューブ41内の先後の中間部位に位置しており、その後端から引き出された芯線24の端子と、電気信号取り出し用の各電線(リード線)28とがカシメ端子27を介して接続され、その電線28が大径チューブ41の後端において外部に引き出されている。なお、大径チューブ41の後端部45内には弾性シール材47が配置され、各電線28はこのシール材47中を通されている。そして、大径チューブ41の後端部45を縮径状にカシメを行うことで、内部のシールを保持すると共に、各電線28をその後端において固定している。
さて、上記した環状押圧部31の後端向き面35の後側(後方。図示上方)には、本発明の要部をなす、円環状のバネ部材51が大径チューブ41の外側に同心状で配置されている。このバネ部材51は、自由状態において内径が大径チューブ41の外径より大きく、外径が取付けねじ穴503のねじの内径より小さくされ形成されている。そして、大径チューブ41に対し、センサ101が取付けねじ穴503に取付けられる前には、その軸G方向にスライド可能に(隙間嵌状態で)配置されている。なお、このバネ部材51は、本例では、ねじ62の軸Gを通る仮想平面で切断した断面が、図示のような、略U字形(半円弧状)をなし、その凹部開口が外周側を向くように、例えば、SUS304製の金属板から形成されている。そして、このようなこのバネ部材51は、その図示先端(下端)53側を、環状押圧部31の後端向き面35に当接させ、その図示後端(上端)側を次記するねじ込み用固定部材61の先端63に当接させ得るように形成、配置されている。
また、このバネ部材51の後端57側であって大径チューブ41の外側には、SUS430製(熱膨張係数:10.4×10−6/℃)のねじ込み用固定部材61を遊嵌状に外嵌させている。このねじ込み用固定部材61は、内径が大径チューブ41の外径より大きい筒状部(筒状部)60を有している。そして、その筒状部60の外周面に、排気管500に形成された取付けねじ穴503にねじ込み可能のねじ(平行ねじ)62をその略全長にわたり備えている。このようなねじ込み用固定部材61は、大径チューブ41の後方から抜き取り可能に配置されているが、本例では、ねじ込み用固定部材61はその先端63が、上記したようにバネ部材51の後端57に当接するように配置されている。なお、ねじ込み用固定部材61の後端の外周には、ねじ込み用の多角形部67が形成されている。
しかして、上記の構成を有する温度センサ101は、排気管500に形成された取付けねじ穴503内に次のようにして取付けられる。すなわち、図2に示したように、センサ101を、ねじ込み用固定部材61を後方にスライドさせ、取付けねじ穴503内にその先端側から内挿する。なお、図2では、バネ部材51を環状押圧部31の後端向き面35から離して図示している。そして、図3に示したように、奥のシール保持用の環状座面505に、温度センサ101に設けられた環状押圧部31をあてがうようにし、その後端向き面35にバネ部材51を当接させる。そして、図4、5に示したように、バネ部材51の後方にあるねじ込み用固定部材61を取付けねじ穴503に所定の締め付けトルクでねじ込む。このねじ込みによって環状押圧部31は、バネ部材51を介して環状座面505に押付けられ、そこでシールを保持して取付けねじ穴503に取付けられる。この取付け状態において、バネ部材51は、ねじ込み用固定部材61のねじ込み前(自由状態。無荷重のとき)には、図5の拡大図中に2点鎖線で示したように先後方向の寸法が大きかったのが、同方向に圧縮されて弾性限度内でたわみ変形している。なお、このバネ部材51の最大たわみ変形量は、本例の取付け構造において、その後に受ける熱膨張差又は熱収縮差で、このばね部材51が設けられていないと仮定したときに、環状押圧部31と環状座面505との間に生ずる可能性のある最大の空隙量を十分に超える大きさとされている。そして、バネ部材51は、このような最大の熱膨張差又は熱収縮差が生じることで復元したときてもで、その弾性による圧縮力で上記のシールが確保されるバネ定数を有するものとされている。
これにより、圧縮されているバネ部材51はそのバネ性(弾性歪みエネルギー)により、環状押圧部31の後端向き面35と、ねじ込み用固定部材61の先端63との間の間隔を押し広げるよう作用している。すなわち、このような取付け状態においては、センサ101側の環状押圧部31、バネ部材51は、環状座面505とねじ込み用固定部材61と間で、ねじ62の軸G方向に圧縮されている。
このようなセンサ101の取付け構造においては、その後、高温の排気ガスの熱に晒されると、その取付け構造部位をなす取付けねじ穴503、センサ101側の環状押圧部31等の各部位は、それぞれの熱膨張係数の相違により異なる熱膨張をする。このとき、本形態のように圧縮されたバネ部材51が設けられていない場合には、環状押圧部31が環状座面505を押付ける力が減少するか、或いは、環状押圧部31と環状座面505との間に空隙ができるようになるが、本形態では上記のように先後方向に圧縮されたバネ部材51が設けられている。これにより、このような熱膨張があるときには、圧縮状態にあるそのバネ部材51は、その弾性歪みエネルギーにより復元するように変形する。すなわち、その弾性的な復元により環状押圧部31が環状座面505を押付ける状態が保持される。
このように、本例のセンサ101の取付け構造によれば、センサ101の取付け後に温度上昇があっても、上記のようにバネ部材51が介在されているため、それが設けられている分、それが設けられていない従来の取付け構造に比べると、環状押圧部31が環状座面505を押していた圧縮力の低下を低減又は防止できるから、シール性能の低下や、ねじ込み状態の緩みの発生を低減又は防止できる。
前記したように本例のセンサ101、及びその取付け構造による場合には、温度上昇におけるシール性の低下防止策としての例を説明するため、取付けねじ穴503を形成する取付け対象部位(ボス501)に比べて、センサ101側の構成部材である、環状押圧部31等の熱膨張係数が小さい場合で説明した。一方、熱膨張係数の大小がこれと逆の関係にある場合には、その取付け後の温度低下によるそれらの収縮差によって、シール性の低下が問題となるところ、上記形態では前記したのと同様の効果が得られる。このように本形態によれば、取付けねじ穴503を形成するボス501、及びセンサ101をなす環状押圧部31等を形成する素材(熱膨張係数)についての制約なく、幅広い温度領域において、シール性能の低下や、ねじ込み状態の緩みの発生を低減又は防止できる、温度センサ101の取付け構造となすことができる。
上記例では、バネ部材51は環状で、その切り口の切断面をU字形状のものとしたため、ねじ62の軸G方向におけるバネ部材51の配置スペース(寸法)を小さくできる。ただし、本発明において具体化できるバネ部材はこのようなものに限定されるものではない。バネ部材は、温度上昇の前後において、センサが安定して取付けねじ穴に取付けられ、かつ上記のシール性の低下の低減、又はシール性の確保に必要な圧縮力、すなわち、環状押圧部31が環状座面505を押す力が得られるようなバネ部材であればよく、したがって、次のような各種の公知のバネ部材を用いることができる。
図6は、上記形態(第1実施形態)におけるバネ部材51に代えて、円筒状をなす圧縮コイルスプリングからなるバネ部材51bとし、これを大径チューブ41に外嵌するように配置した変形例である。バネ部材の設置スペースを大きく確保できる場合には好適である。なお、図6ではバネ部材51bのみが上記形態と異なるのみであるため、同一の部位には同一の符号を付すに止め、他の説明を省略する。以下、同様とする。
図7は、上記形態(第1実施形態)におけるバネ部材51に代えて、円環状の皿バネからなるバネ部材51cとし、これを大径チューブ41に外嵌するように配置した変形例である。このようなバネ部材51cでは、そのたわみ変形量は大きく確保できないため、温度変化による熱膨張差又は収縮差が比較的小さい場合、或いは、バネ部材の設置スペースを大きく確保できない場合に好適である。なお、このような皿ばねからなるバネ部材51cは、図8に示したように、必要なたわみ変形量に応じて、軸G方向に複数重ねるように配置してもよい。なお、図8では、平坦な環状座金81を介して、2つの皿ばねからなるバネ部材51cを介在させている場合を例示している。
なお、上記各例では、バネ部材が環状押圧部31とねじ込み用固定部材61とで直接挟まれる構成のものとして具体化したが、これらとの間に、例えばスリップワッシャを介在させてもよい。また、取付けねじ穴503の環状座面505と、センサ101側の環状押圧部31との間に、シール保持用のガスケットを介在させてもよい。このようにすれば、シール性確保が容易となる。また、本発明では、バネ部材を介在させて、そのバネの復元力により環状押圧部31が、取付けねじ穴503の奥の環状座面505を押付ける構成としたものであるから、取付けネジ穴503や環状押圧部31等の材質の異同(熱膨張係数の異同)に関係なく具体化できることは上記したとおりである。したがって、上記形態(第1実施形態)でも、ねじ込み用固定部材61は、取付けねじ穴503を形成するのと同様のアルミニウム合金製としてもよいなど、その材質的な制限はない。
本発明は、上記した各例のものに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、適宜に変更して具体化できる。したがって、本発明におけるバネ部材は、バネ性を有する部分を有していれば十分であり、バネ部材の一部又は部分(大部分でもよい)にバネ性を有しない部位があってもよい。バネ部材は、温度センサが対象物の取付けねじ穴に取付けられた後の温度上昇、温度低下があっても、バネ性により、安定した取付け状態が確保され、かつシール性の低下の低減、又はシール性が確保されるものであればよいためであり、適宜に選択して使用すればよい。なお、上記例では、対象物がエンジンの排気管(マニホルド)であり、流体がその内部を流れる排気ガスで、その温度を測定するセンサで具体化したが、本発明における対象物、流体(気体、液体)はこれに限られるものでない。本発明は、広く対象物内の流体の温度測定用のセンサ及びその取付け構造に適用できる。
36 温度センサの環状押圧部
51,51b,51c バネ部材
61 ねじ込み用固定部材
62 ねじ込み用固定部材のねじ
101 温度センサ
500 排気管(対象物)
503 取付けねじ穴
505 取付けねじ穴の奥のシール保持用の環状座面
G ねじの軸
51,51b,51c バネ部材
61 ねじ込み用固定部材
62 ねじ込み用固定部材のねじ
101 温度センサ
500 排気管(対象物)
503 取付けねじ穴
505 取付けねじ穴の奥のシール保持用の環状座面
G ねじの軸
Claims (4)
- 対象物内の流体の温度を測定するため、その対象物に設けられた取付けねじ穴へ取付けられる温度センサであって、
温度センサ自身が前記取付けねじ穴へ取付けられた状態においてその奥のシール保持用の環状座面に押付けられる環状押圧部と、
環状又は筒状に形成されて自身の外周面に前記取付けねじ穴にねじ込み可能のねじが形成されたねじ込み用固定部材とを備えており、
前記環状座面に前記環状押圧部をあてがい、前記ねじ込み用固定部材を前記取付けねじ穴にねじ込むことによって、前記環状押圧部を前記環状座面に押付けることによって該取付けねじ穴にシールを保持して取付けられる構成を有する温度センサにおいて、
前記環状押圧部と前記ねじ込み用固定部材との間に、前記環状押圧部を前記環状座面に押付けるように前記ねじの軸方向に圧縮されるバネ部材を介在させたことを特徴とする温度センサ。 - 対象物内の流体の温度を測定するための温度センサの取付け構造であって、
温度センサをその対象物に設けられた取付けねじ穴へ取付けるのに、該取付けねじ穴の奥のシール保持用の環状座面に、温度センサ自身に設けられた環状押圧部をあてがい、環状又は筒状に形成されて自身の外周面に前記取付けねじ穴にねじ込み可能のねじが形成されたねじ込み用固定部材を、前記取付けねじ穴にねじ込み、このねじ込みによって、前記環状押圧部を前記環状座面に押付けることで、該温度センサが前記取付けねじ穴にシールを保持して取付けられてなる温度センサの取付け構造において、
前記環状押圧部と前記ねじ込み用固定部材との間に、前記環状押圧部を前記環状座面に押付けるように前記ねじの軸方向に圧縮されたバネ部材を介在させたことを特徴とする温度センサの取付け構造。 - 前記バネ部材は、前記ねじ込み用固定部材が前記取付けねじ穴にねじ込まれる前において、前記温度センサに外嵌された環状又は筒状のものであることを特徴とする請求項2に記載の温度センサの取付け構造。
- 前記対象物が、エンジンの排気管であることを特徴とする、請求項2又は3のいずれか1項に記載の温度センサの取付け構造。
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-
2009
- 2009-12-17 JP JP2009286698A patent/JP2011128014A/ja active Pending
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