以下、本発明を図に示す実施形態について説明する。なお、説明の簡略化を図るため、以下の各実施形態相互において、同一部分には図中、同一符号を付してある。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る燃焼圧センサ付きグロープラグ100の全体概略をディーゼルエンジン(内燃機関)のエンジンヘッド(被取付部)1へ取り付けた状態にて示す縦断面図である。
グロープラグ100は、大きくは、発熱体を備えかつ燃焼圧伝達の媒体を果たすプラグ本体部200と、燃焼圧に伴いプラグ本体部200に作用する力を圧電素子の圧電特性に基づく電気信号に変換することによりエンジンの燃焼圧を検出する手段である圧力センサ(本発明でいう燃焼圧センサ)300と、を備えて構成されている。
ここで、プラグ本体部200は、大きくは、一端側(図1中の下方側)が燃焼室1a側に位置し他端側(図1中の上方側)がエンジンヘッド1の外部に位置するようにエンジンヘッド1にネジ結合される金属製筒状のハウジング201と、一端側がハウジング201の一端から露出し他端側がハウジング201の内部に保持された筒状のシース管(本発明でいうパイプ部材)202と、シース管202の一端側に収納保持され通電により発熱する発熱コイル(本発明でいう発熱部材)203と、一端側が発熱コイル203に電気的に導通されるとともに他端側がハウジング201の他端から突出するようにハウジング201の内部に保持された金属製棒状の中軸(電極体、棒状電極)204とを備えている。
エンジンヘッド1には、その外表面から内部の燃焼室1aまで貫通するネジ穴(グローホール)が形成されており、プラグ本体部200は、このネジ穴に対してプラグの軸方向(長手方向)に挿入されている。
ハウジング201は、硫黄快削鋼または炭素鋼からなり、その外形形状は一端側(燃焼室1a側)が小径で他端側が大径の段付形状になっている。そして、ハウジング201の小径部外周面におけるプラグ軸方向の中間部には取付ネジ部201bが形成されている。
また、ハウジング201の大径部外周面にはグロープラグ100をエンジンヘッド1にネジ結合する際に利用される六角部201aが形成されている。そして、グロープラグ100のプラグ本体部200は、ハウジング201の取付ネジ部201bによって、エンジンヘッド1のネジ穴とネジ結合されている。
また、ハウジング201の一端にはテーパ状のシート面201cが形成され、このシート面201cとこれに対向するエンジンヘッド1のネジ穴のシート面とが密着して、燃焼室1aからのガス漏れ防止がなされている。ここで、ハウジング201の六角部201aは、エンジン装着スペースに合わせて、六角部の頂角の一部を除去・円周面を形成して外形を細化しても良い(図示せず)。
シース管202は、耐熱・耐食性合金(例えばステンレス材SUS310等)等よりなる。シース管202において、ハウジング201の一端から露出する一端側の先端部は閉塞し、ハウジング201内に位置する他端は開口している。また、発熱コイル203はNiCr及びCoFe等の抵抗線からなるもので、シース管202の先端側内部に配設されている。
一方、シース管202の他端側内部には、中軸204の一端側が挿入配置されている。そして、発熱コイル203の他端はシース管202の一端に結合し、発熱コイル203の他端はシース管202に挿入された中軸204の一端に結合している。また、発熱コイル203及び中軸204とシース管202との問には、耐熱性を有する酸化マグネシウム等の絶縁粉末205が充填されている。
シース管202にはスウェージングによる絞り加工が施されており、それによって、内部に充填された絶縁粉末205の緻密性を高めるている。つまり、絶縁粉末205の充填密度を高めることにより熱伝導効率を上げている。それとともに、上記絞り加工によって、該絶縁粉末205を介して中軸204及び発熱コイル203が、シース管202に強固に保持固定されている。
ここで、シース管202のうち発熱コイル203を包含する部分において、これらシース管202、発熱コイル203及び絶縁粉末205により、発熱体206が構成されている。そして、発熱体206は、その先端部(シース管202の一端側)が露出するように、ハウジング201の一端側の内部に固定され保持されている。
これら発熱体206の外周面すなわちシース管202の外周面とハウジング201の内周面とは、嵌合圧入による固着、または、銀ロウ等のロウ付けにより接合、固定されている。
それによって、ハウジング201の一端側にてハウジング201の内面とシース管202の外面とが全周に渡って実質的に隙間無く固定された部分K1が固定部として形成される。そして、この固定部K1により、燃焼室1aからの燃焼ガスがハウジング201内部に侵入しないようになっている。
なお、固定部K1は、図中の引き出し線にて指示されたハウジング201の内面とシース管202の外面とが接触している界面であり、プラグ径方向の全周に渡っていれば、当該界面の一部でも全部でも構わない。
また、シース管202の他端(開口端)において、当該他端と中軸204との問には、絶縁粉末205がスウェージングの際に抜けないようにするためのシール部材(シーリング)205aが設けられている。
また、ハウジング201の他端側の内部において、シリコンゴム、フッ素ゴム、EPDM、NBR、H−NBR等からなる円筒リング207が中軸204の他端側から挿入配置されている。
ここで、円筒リング207は中軸204の芯出しと振動抑制及びハウジング201内の防水・気密性確保とを目的としたものである。そして、ハウジング201の他端側のうち円筒リング207と接触する部分をテーパ形状にすることによって、円筒リング207とハウジング201との密着性が良くなり、制振効果・防水・気密性はさらに向上する。
また、中軸204の他端側には、樹脂系(例えばフェノール樹脂・PPS・積層マイカ)あるいはセラミック系(例えばアルミナ)の絶縁材料から成る絶縁ブッシュ210が嵌め込まれている。また、ハウジング201の六角部201aの内部には段付の大径穴部201dを設けることにより、その大径穴部201dと中軸204の外周面との問に収納部201eが形成されている。
この収納部201eには略円環状の圧力センサ300(詳細後述)が収納されている。この圧力センサ300は、収納部201eに収納された後、絶縁ブッシュ210を中軸204に嵌め込み、中軸204の他端に設けられた端子ネジ204aに固定ナット211を締め付けることにより、絶縁ブッシュ210とハウジング201との間に固定保持されている。
このように、ハウジング他端側の収納部201eに設けられた圧力センサ300は、押圧部材としての固定ナット211の軸力によって、中軸204の一端側方向に向かってハウジング201へ押しつけるように固定されている。
ここにおいて、本実施形態では、グロープラグ100をエンジンヘッド1に装着した状態で、圧力センサ300には、固定ナット211によって中軸204の一端側方向へ900N以上の荷重が印加されている。
また、ハウジング201の大径穴部201dの内周面と圧力センサ300の外周面との問にはOリング208が配置され、圧力センサ300の内周面と中軸204の外周面との問には円筒リング209が挿入され配置されている。なお、このOリング208と円筒リング209は、シリコンゴム、フッ素ゴム、EPDM、NBR、H−NBR等からなる。
ここで、Oリング208は、ハウジング201内の防水・気密性確保を目的としたものであり、円筒リング209は、中軸204の振動抑制とハウジング201内の防水・気密性確保とを目的としたものである。そして、センサ300の円筒リング209と接触する部分はテーパー形状にすると円筒リング209との密着性が良くなり、防水・気密性はさらに向上する。
また、圧力センサ300と固定ナット211とは、絶縁ブッシュ210により電気的に絶縁されている。さらに、圧力センサ300と中軸204とは円筒リング209によって電気的に絶縁されている。
また、中軸204の他端に設けられた端子ネジ204aには、各気筒問との結線用としてコネクティングバー2が端子ナット212によって固定され電気的に接続されている。このコネクティングバー2は図示しない電源に接続され、中軸204、発熱コイル203、シース管202、ハウジング201を介してエンジンヘッド1にアースされている。
これにより、グロープラグ100において発熱体206は発熱し、ディーゼルエンジンの着火始動の補助を行うことが可能となっている。なお、各気筒間との結線にあたっては、シース管202(本発明でいうパイプ部材)の微小変位の妨げにならないよう、柔軟性に優れたリードワイヤ(自動車用電線)を用いても良い。
[圧力センサの詳細構成]
次に、圧力センサ300の詳細構成を図2を参照して説明する。図2は、図1中の圧力センサ300の拡大断面図である。
圧力センサ300においては、円環状の極性を有した圧電セラミックス302が、ともに略円環状をなすメタルケース303と電極301に挟持されるようにパッケージングされてなるものである。
この圧電セラミックス302は例えば厚さ0.4mmのチタン酸鉛あるいはチタン酸ジルコン酸鉛からなるものである。また、圧力センサ300におけるメタルケース303および電極301とハウジング201の収納部201eとの間には、インシュレータ304が介在されている。
このインシュレータ304は天然マイカ、積層マイカ及びアルミナ等のセラミックス材あるいは、ポリイミドフィルム、フェノール等の樹脂材からなるもので、例えば厚さ0.2mm程度のものである。インシュレータ304は、圧力センサ300で発生した出力信号がハウジング201ヘ短絡しない様、電極301を電気的に絶縁している。
なお、メタルケース303および電極301における圧電セラミックス302との接触面は、表面粗さ6.3Z以下(例えば3.2Zや1.6Z)となるような研削または研磨加工を施すことにより平面度を向上させることが好ましい。
それにより、メタルケース303および電極301が圧電セラミックス302と接触する面において面圧の均一化が図られ、密着性の向上と組み付け加圧時の素子割れを防止しやすくできる。ここで、メタルケース303と電極301の材質は、上記の研削又は研磨加工を容易にするため、磁性材である例えばSUS430を選定することができる。
また、メタルケース303は大きくは略円環状のフランジ部303aと突出したパイプ状の小円形部303dで形成されているので、上記の研削又は研磨加工する上では、加工が容易ではない。そこで、メタルケース303をフランジ部と小円筒部に分離し、研削又は研磨力加工を必要とするフランジ部を単純な円盤状とし、加工後に双方をロウ付け等により一体化しても良い。
また、メタルケース303の一端側のフランジ部303aには、プラグ軸方向に延びる貫通穴が形成されており、その貫通穴には筒状のプロテクションチューブ303bの一端が挿入され、溶接、ロウ付け等にて一体に形成されている。一方、絶縁ブッシュ210にもプラグ軸方向に延びる貫通穴210aが形成され、その貫通穴210aにプロテクションチューブ303bの他端が挿入されている。
このプロテクションチューブ303bには、圧力センサ300の信号を取り出す出力線としてのシールド付き電線305が、挿入されて支持されるようになっている。メタルケース303内に挿入されたシールド付き電線305においては、その芯線305aが電極301に溶接されて結線されている。
また、芯線305aとは絶縁されたシールド線305bは、プロテクションチューブ303bとかしめられることにより、ボディーアースでもあるメタルケース303に結線されている。
なお、本例の圧力センサ300では、圧電セラミックス302を1枚としているが、その目的は、圧力センサ300の簡素化と低重心化を図り、圧力センサ300自体が発生する振動ノイズを低減し信号出力のS/N比を向上させることにある。
しかし、上記した特許文献1の第2図に記載の圧力センサのように、圧電セラミックス302が2枚でも検出は可能である。なお、この場合、電極301の下側のインシュレータ304を排除し圧電セラミックス302を配置することとなる。このように、圧電セラミックス302を2枚並列結合させることにより、出力感度が2倍に高まり、出力信号の対ノイズ性が向上できる。
[圧力センサの組付け方法]
この圧力センサ300の組付けは、次のようである。まず、メタルケース303の小径部303dの円周側面にシリコン製の熱収縮性の絶縁チューブ306を加熱して密着させる。
次に、圧電セラミックス302、電極301の順に、これらをメタルケース303の小径部303dにはめ込む。ここで、絶縁チューブ306は、圧電セラミックス302および電極301とメタルケース303との電気的短絡を防止している。
上記の組付け後、メタルケース303にはめ込まれた電極301に対して、シールド付き電線305の芯線305aを、抵抗溶接あるいはレーザ溶接等にて結線する。
また、シールド付き電線305とプロテクションチューブ303bとをシールド線305bを含む部分でかしめる。それにより、シールド線305bとメタルケース303との電気的接続、シールド付き電線305の保持固定、及び、シールド付き電線305とプロテクションチューブ303bとの密着性を確保する。
そして、このようにして、メタルケース303、圧電セラミックス302、電極301およびシールド付き電線305が一体化された圧力センサ300は、後述するように、ハウジング201の収納部201eへインシュレータ304を介して配設される。
それにより、圧力センサ300は、金属性のメタルケース303と、金属性のプラグ本体部200により包含された形となる。その結果、完全密閉型かつ完全電気シールド型の圧力センサを提供することができる。
[燃焼圧センサ付きグロープラグの組付方法]
次に、本実施形態の燃焼圧センサ付きグロープラグ100の組付方法について図1、図2を参照して説明する。まず、中軸204が組み付けられた発熱体206と、メッキを施したハウジング201とを用意する。用意される発熱体206におけるシース管202の外径は、ハウジング201の内径部に対してやや大きく、例えば+60〜+140μmの寸法差を有したものとする。
そして、発熱体206のシース管202をハウジング201へ嵌合圧入し、ハウジング201とシース管202とを相互の弾性力で固着して密閉する。こうして、ハウジング201、中軸204及び発熱体206が一体化される。なお、ハウジング201と発熱体206との組付けは、上記以外に、双方を銀ロウ等のロウ付けにより完全接合しても良い。この結果、ハウジング201内部の高い気密性が確保出来る。
続いて、中軸204の他端側(つまり、端子ネジ204a側)からハウジング201内に、円筒リング207、インシュレータ304を順に投入して配置する。そして、フランジ部303aの外周にOリング208を挿入した状態で、圧力センサ300を収納部201e内に配置する。
続いて、中軸204の他端側より円筒リング209を投入し、さらには、圧力センサ300に結線されたシールド付き電線305の他端側よりOリング309を投入し、所定場所に配置する。この状態にて絶縁ブッシュ210を中軸204の他端側より投入するとともに、シールド付き電線305は、絶縁ブッシュ210の貫通穴210aを通して外部へ導出する。
なお、図2に示すように、Oリング309は、シールド付き電線305の外周面とプロテクションチューブ303bの端面と絶縁ブッシュ210に設けた貫通穴210aの底部端面に接触するように押圧され挿入されている。このOリング309は、シリコンゴム、フッ素ゴム、EPDM、NBR、H−NBR等からなるもので、防水、防振を目的とするものである。
また、絶縁ブッシュ210は、樹脂系(例えばフェノール樹脂、PPS、積層マイカ)あるいはセラミック系(例えばアルミナ)の絶縁材料であれば問題はないが、好ましくは、比重が小さく、ヤング率が大きく、クリープ特性に優れた素材が有効である。
これにより、絶縁ブッシュ210を軽くして圧力センサ300の低重心化が図られ、振動ノイズレベルを低減できる。また、絶縁ブッシュ210の経時変化すなわちクリープを抑制できるため、このクリープに伴う圧力センサ300に印加される予荷重(つまり固定ナット211による圧力センサ300の加圧力)の変化で生じる出力変動を、低減できる。
そこで、絶縁ブッシュ210としては、例えばガラス繊維を配合した熱硬化性のフェノール樹脂を選定し、さらに熱処理として例えば175℃〜205℃、3〜20時間加熱を加えることによりクリープ特性を改善したものを採用できる。
こうして、絶縁ブッシュ210まで組み付けた後、中軸204の端子ネジ204aに沿って固定ナット211を締め付けることにより、圧力センサ300を収納部201e内に固定して保持する。
ここにおいて、本実施形態では、グロープラグ100をエンジンヘッド1に装着した状態で、圧力センサ300には、固定ナット211によって中軸204の一端側方向へ900N以上の荷重が印加されるようにする。
[燃焼圧センサ付きグロープラグの取付方法]
このような荷重が印加された状態を実現するためのグロープラグ100の取付方法について、図3の工程図を参照して述べる。図3(a)に示すように、ハウジング201の他端側に上記圧力センサ300および絶縁ブッシュ210までが組み付けられた状態のグロープラグ100を用意する。図3では圧力センサ300は六角部201a内に収納され見えていない。
なお、このグロープラグ100の状態では、固定ナット211は、中軸204の端子ネジ204aに仮締めされた形で組み付けられているが、固定ナット211は無いものでも良い。
そして、図3(b)に示すように、この状態のグロープラグ100を、パイプ部材202すなわち発熱体206が燃焼室1a内に露出するように、エンジンヘッド1に対して規定の締め付けトルクにてネジ結合して取り付ける。具体的には、六角部201aをトルクレンチ等で締め付ける。
その後、図3(c)に示すように、仮締めされて中軸204の他端側に取り付けられた固定ナット(押圧部材)211をトルクレンチ等によって締め付ける。なお、固定ナット211は、グロープラグ100をエンジンヘッド1にネジ結合した後に、中軸204の端子ネジ204aに挿入し、ネジ締めするようにしても良い。
この固定ナット211の締め付けにより、圧力センサ300に対して中軸204の一端側方向へ荷重が印加され、圧力センサ300がグロープラグ100のハウジング201の収納部201e内にて固定される。
このとき、固定ナット211の締め付けトルクを調整することで、上記圧力センサ300への荷重を900Nとすれば、エンジンヘッド1に装着後のグロープラグ100において、圧力センサ300に対して中軸204の一端側方向へ900N以上の荷重が印加されている状態を実現できる。
[圧力センサへの予荷重の測定方法]
ここで、固定ナット211の締め付け時の軸力が圧力センサ300への予荷重となるが、この軸力の測定方法について、図4を参照して述べる。エンジンヘッド1にネジ結合されて装着されたグロープラグ100におけるハウジング201の他端部にて、既に荷重に対する発生出力電圧を校正・換算した略円環状の圧電式ロードワッシャRWを中軸204に貫通させて配置する。
続いて、絶縁ブッシュ210を中軸204に貫通させ、ロードワッシャRWの上面にて、固定ナット211を中軸204の端子ネジ204aに螺着する。このとき、固定ナット211の締め付けトルク(トルクレンチ使用)に対するロードワッシャRWの発生出力電圧を測定し、この発生出力電圧を軸力(予荷重)に換算する。なお、厳密には、ロードワッシャRWはチャージアンプに接続して電荷−電圧増幅し、例えばオシロスコープにて発生出力電圧を測定した。
それにより、例えば、図5に示すような固定ナット211の締め付けトルク(N・m)と軸力(予荷重)(N)との関係が得られる。締め付けトルクの値がある大きさのところまでは、締め付けトルクと軸力とは線形の関係にある。
したがって、このような関係に基づいて、所望の軸力となる締め付けトルクを求め、この求めた締め付けトルクにて固定ナット211の螺着を行えば良い。例えば、図5から900N以上の予荷重(軸力)を実現するには、約1.0N・m以上の締め付けトルクとすれば良い。
このようにして、エンジンに装着されたグロープラグ100に対して、固定ナット211を締め付けて圧力センサ300を固定した状態が、上記図3(c)に示される。その後、固定ナット211の上面にて、コネクティングバー2を端子ネジ204aに取り付け、端子ナット212で固定する。こうして、上記図1に示す状態になる。
なお、固定ナット211を締め付けた後、固定ナット211の六角面の1箇所をかしめて変形させるか、あるいは予め螺着面(ネジの部分)にネジロック剤を塗布して固定ナット211を締め付けることで、振動に対する固定ナット211の緩み防止策を講じても良い。
また、絶縁ブッシュ210は、略円環状のものであるが、その円周面の一部に対向し合うフラットな2面を有するものとして良い。このような絶縁ブッシュ210を用いれば、完全に円環状のものに比べて、固定ナット211を締め付ける際に、絶縁ブッシュ210の対向し合うフラットな2面をスパナ等で拘束することで、絶縁ブッシュ210が回転しないように固定ナット211を回転させることができる。
それにより、圧力センサ300を構成する圧電セラミック302や電極301と芯線305aとの溶接部へのねじり力を回避しつつ、圧力センサ300へ予荷重を加えることが可能となる。これにより、圧電セラミック302や芯線305へのねじりによる破壊や破断を防止することができる。
[燃焼圧センサ付きグロープラグにおける燃焼圧の検出メカニズム]
次に、本実施形態のグロープラグ100における基本的な燃焼圧の検出メカニズムについて、上記図1、図2に加えて、図6も参照して説明する。図6は、燃焼圧の伝達経路を説明するための簡略モデルを示す説明図(半断面図)である。
上記図1において、圧力センサ300は予め固定ナット211により、プラグ本体部200に固定保持され一体化が図られている。この時、圧力センサ300に内蔵されている圧電セラミックス302には、エンジン装着後に900N以上の予荷重が負荷されるように、グロープラグ100がエンジンヘッド1に装着されている。
エンジン始動時、コネクテイングバー2を介して電圧が印加され、中軸204、発熱コイル203、シース管202、ハウジング201、取付けネジ部201bを介してエンジンヘッド1にアースされる。
これにより、グロープラグ100における発熱体206が発熱し、ディーゼルエンジンの着火始動の補助を行うことができる。そして、エンジン始動後、エンジン内で発生した燃焼圧は、図6の太線矢印に示す如く2つの経路R1及びR2に分散され、圧力センサ300に作用する。
第1の経路R1は、発熱体206に印加された燃焼圧が、発熱体206と接合されたハウジング201に伝達され、圧力センサ300に作用するものである。この経路R1においては、ハウジング201自体は取付けネジ部201bによりエンジンヘッド1へ強固に拘束されている。
そのため、それより上部では力の伝達は著しく減衰され、圧力センサ300が配置されているハウジング201の収納部201e近傍の位置変動は極めて小さい。
一方、第2の経路R2は、発熱体206に印加された燃焼圧が、発熱体206自身に充填された絶縁粉末205、中軸204、固定ナット211、絶縁ブッシュ210の4つの部材を介して圧力センサ300に作用するものである。この経路R2においては、これら4つの部材には位置変動を阻害する部材等の要因は無く、全く開放されている。
また、ハウジング201とシース管202とが固定部K1にて固定されていても、シース管202は、ハウジング201の弾性力を利用してプラグの軸方向(図6中の上下方向)へ変位できる。そのため、第2の経路R2に沿って発熱体206に燃焼圧が印加されたとき、シース管202及び中軸204は一体に、プラグの軸方向へ変位する。
この結果、第1の経路R1で発生するハウジング201の収納部201e近傍の変位量と、第2の経路R2で発生する主たる中軸204の変位量とでは差が生じる。つまり、第2の経路R2の変位量の方が第1の経路R1の変位量よりも大きくなる。この変動に伴い、圧力センサ300には、固定ナット211にて予め負荷されている予荷重が緩和される。
こうして、圧力センサ300に内蔵された圧電セラミックス302に負荷される荷重状態が変化するために、圧電セラミックス302の有する圧電特性に伴って出力される電気信号としての発生電荷が変化する。
そして、この電気信号は、図2に示す電極301を介してシールド付き電線305の芯線305aと、アースであるメタルケース303、プロテクションチューブ303bを介してアース線を兼用したシールド線305bとの問に出力される。
この出力信号を、シールド付き電線305を介して、出力である発生電荷を電圧に変換して増幅させるチャージアンプ(図示せず)及び車載ECU(エンジン制御回路/図示せず)へ入力することによって、燃焼圧を電気信号として、燃焼制御に応用することができる。本実施形態の燃焼圧の検出メカニズムは、以上であるが、図7に本実施形態による検出波形の一例を示す。
[検出波形の一例]
図7(a)及び(b)は、図1に示したグロープラグ100において、エンジン条件を1200rpmで40N負荷時とした場合の検出結果を示している、図7において、(a)は、指圧計のエンジン出力波形(つまり基準筒内圧)とグロープラグ100における圧力センサ300の出力波形(実施形態)との比較図、(b)は、グロープラグ100における圧力センサ300からの出力を縦軸に、指圧計からの出力を横軸にとった相関出力波形を示す。
図7からわかる様に、本グロープラグ100における圧力センサ300からの出力と指圧計からの出力とはほぼ同一形状波形を示し、また、相関出力波形も圧力上昇時、減少時を含めほぼ直線的な値を示し応答性に優れていることがわかる。ちなみに、図7(b)には、ヒステリシスを有し応答性の悪い相関出力波形の模式的な例を破線にて並記してある。
このことから、本グローブラグ100による燃焼圧の検出において、エンジン内の圧力変動に対応して圧力センサ300に作用する荷重の変動が正確に測定できていることがわかる。つまり、SN比が小さく、出力感度も優れ且つヒステリシスがほとんどなく応答性に優れた出力特性を実現できている。
[圧力センサへの予荷重とセンサ出力特性との関係についての検討]
このように、本実施形態において、安定した出力特性が得られるのは、圧力センサ(燃焼圧センサ)300に対して、固定ナット(押圧部材)211によって中軸204の一端側方向へ900N以上の荷重が印加されている取付構造を採用していることによる。
このような取付構造は、本発明者らの行った圧力センサへの予荷重についての検討の結果を根拠としたものである。上記図15に示したように、グロープラグをエンジンに装着した後、予荷重の低下により、圧力センサ300とハウジング201との間および圧力センサ300を構成する各部品間などにおいて微小な隙間が生じる。
特に、本実施形態の圧力センサ300では、上記図2に示すように、メタルケース303、圧電セラミックス302、電極301の3部品より構成され、さらに、絶縁ブッシュ210とインシュレータ304を介した計5点からなる独立した部品の積層構造をなしている。そのため、上記の微小な隙間も多数形成されることとなる。
本発明者らは、このような微小な隙間を極力無くしてセンサ出力特性の変動を抑制するには、エンジン装着状態の圧力センサ300に対して中軸204の一端側方向へある大きさ以上の荷重を印加すれば良いと考えた。そして、そのような荷重の大きさを検討した。
具体的には、燃焼圧センサ付きグロープラグ100を規定の締め付けトルクでエンジンヘッド1に装着した後、圧力センサ300ヘの予荷重を300Nから1300Nに変化させて、エンジン評価にて基本特性の挙動を観察した。その結果を図8に示す。
図8において(a)はセンサ出力への振動ノイズの影響を出力信号におけるSN比として示した図、(b)はセンサ出力感度を示す図、(c)はセンサの応答性をヒステリシスを指標として示す図である。なお、これら出力特性の測定は、上記図7と同様のエンジン条件にて行った。
ここで、SN比は、上記図7(a)中の圧力センサ300の出力波形におけるピーク高さhに対するノイズの振幅の比率であり、小さいほど良い。また、ヒステリシスは、上記図7(b)中の破線で示すヒステリシスを有する相関出力波形において、ヒステリシスの高さW1と幅W2との比率W2/W1(%)であり、これも小さいほど良い。
図8に示すように、エンジン装着後のグロープラグ100において、圧力センサ300への予荷重を900N以上に確保することにより、センサ出力の基本特性の全てにおいて特性の改善がなされ、かつそれ以上の予荷重範囲では予荷重に影響されること無く、非常に特性が安定することがわかった。
[本実施形態の効果等について]
このように、本実施形態によれば、圧力センサ300への荷重が900N以上であるグロープラグ100の取付構造とすることにより、エンジン装着後の弛緩力を排除することで上記微小な隙間を極力除去している。そのため、エンジン装着後の燃焼圧センサ付きグロープラグ100において、センサ出力特性の変動を抑制し、安定したセンサ出力特性を実現することができる。
ちなみに従来では、グロープラグ単体の状態で固定ナットにより、燃焼圧センサ300には500N〜1000Nの予荷重が印加されていたが、エンジン装着後は、上記した図15(b)に示すように、予荷重の低下が起こり、900N未満の荷重となっていた。
また、圧力センサ300への荷重(予荷重)は、中軸204の破壊強度の70%以下の大きさであることが好ましい。上記図5に示されているように、固定ナット211による圧力センサ300への予荷重(軸力)が大きすぎると、この固定ナット211のネジ締め付けによる中軸204の破壊が発生する。
そのため、本発明者らは安全率を考慮して、当該予荷重を900N以上としても中軸204の破壊強度の70%以下の大きさとすることで、中軸204の破壊を極力抑制するようにした。
また、本実施形態では、上記図3を参照して述べたようなグロープラグの取付方法を採用している。
すなわち、圧力センサ300をハウジング201の他端側に設けるとともに、ハウジング201を規定の締め付けトルクでエンジンヘッド1にネジ結合してグロープラグ100をエンジンに取り付けた後、中軸204の他端側に取り付けられた押圧部材としての固定ナット211によって、圧力センサ300に対して中軸204の一端側方向へ荷重を印加することで、圧力センサ300をグロープラグ100に固定するという方法である。
それによれば、グロープラグ100をエンジンに装着した後、固定ナット211によって圧力センサ300に対して中軸204の一端側方向へ印加する荷重を900N以上とすることで、本実施形態の取付構造を適切に実現することができる。
なお、上述したように、固定ナット211の螺着の際、嫌気性接着剤等のネジロック剤を塗布することにより、ネジ緩みを防止することが好ましい。これにより、エンジン装着に伴う圧力センサ300ヘの弛緩力が排除されるため、予荷重負荷の変動要因をひとつ排除することができ、基本特性の向上・安定化につながる。
また、この取付方法を行うにあたっては、中軸204および絶縁ブッシュ210に対して必要最小限の予荷重の負荷にて対応することが好ましい。その結果、細径且つ長尺の中軸204には必要以上の引張り力が、樹脂製の絶縁ブッシュ210には必要以上の圧縮力が作用しないようすることができ、ともに耐クリープ性等の信頼性の改善が図れる。
(第2実施形態)
本第2実施形態は上記第1実施形態に示した圧力センサ300への予荷重が900N以上であるグロープラグ100の取付構造を実現するための、もう一つの取付方法に関するものである。
図9は本実施形態に係るグロープラグの取付方法を示す工程図である。本実施形態の取付方法においても、グロープラグ100をエンジンヘッド1に装着した状態で、圧力センサ300には、固定ナット211によって中軸204の一端側方向へ900N以上の荷重が印加されるようにする。
図9(a)に示すように、ハウジング201の他端側に上記圧力センサ300(図示せず)および絶縁ブッシュ210までが組み付けられた状態のグロープラグ100を用意する。このとき、図示例では、固定ナット211は、中軸204の端子ネジ204aに仮締めされた形で組み付けられているが、固定ナット211は無いものでも良い。
そして、図9(b)に示すように、エンジンヘッド1と同様の形態でグロープラグ100を取付可能な代替治具500を用意する。この代替治具500は、例えば金属製のものにでき、エンジンヘッド1そのものでもよいし、グローホールを有するものであってグロープラグ100がネジ結合可能ならばよい。
そして、圧力センサ300をハウジング201の他端側に設けるとともに、エンジンヘッド1への締め付け時における規定の締め付けトルク以上でハウジング201を代替治具500にネジ結合する。
その後、図9(c)に示すように、仮締めされて中軸204の他端側に取り付けられた固定ナット(押圧部材)211をトルクレンチ等によって締め付ける。なお、固定ナット211は、グロープラグ100を代替治具500にネジ結合した後に、中軸204の端子ネジ204aに挿入し、ネジ締めするようにしても良い。
この固定ナット211の締め付けにより、圧力センサ300に対して中軸204の一端側方向へ荷重が印加され、圧力センサ300がグロープラグ100のハウジング201の収納部201e内にて固定される。
このとき、固定ナット211の締め付けトルクを調整することで、上記圧力センサ300への荷重を900Nとすれば、代替治具500に装着されたグロープラグ100において、圧力センサ300に対して中軸204の一端側方向へ900N以上の荷重が印加されている状態を実現できる。この荷重調整も、上記第1実施形態と同様に行うことができる。
そして、図9(d)に示すように、グロープラグ100を代替治具500から取り外す。次に、グロープラグ100を規定の締め付けトルクにてエンジンヘッド1にネジ結合する。その後、固定ナット211の上面にて、コネクティングバー2を端子ネジ204aに取り付け、端子ナット212で固定する。こうして、上記図1に示す状態になる。
なお、本実施形態の取付方法においても、固定ナット211を締め付けた後かしめて変形させたり、ネジロック剤の塗布等により、振動に対する固定ナット211の緩み防止策を講じても良い。また、絶縁ブッシュ210として上記と同様の回転防止形状を採用しても良い。
この本実施形態の取付方法によれば、グロープラグ100を代替治具500から取り外して、同様の締め付けトルクにてエンジンヘッド1に装着したときには、圧力センサ300には、上記した微小な隙間を極力無くしセンサ出力特性の変動を抑制するのに十分な荷重が、固定ナット211によって印加されている。
そのため、本実施形態によっても、エンジン装着後の燃焼圧センサ付きグロープラグにおいて、センサ出力特性の変動を抑制し、安定したセンサ出力特性を実現することができる。
また、グロープラグの組付け段階で、既にエンジン装着に伴う予荷重の弛緩力を補正することができるため、エンジン装着後において、固定ナット211をあらためて締め付けるなどの組付け作業を廃止できる。
また、本取付方法では、代替治具500にグロープラグ100を規定の締め付けトルク以上でネジ結合したときに、上記図15(b)に示したようなハウジング210の圧縮が生じる。そして、この状態で900N以上の高い予荷重を圧力センサ300に負荷する。
そのため、グロープラグ100を代替治具500から取り外した際には、エンジン装着時に発生する本来の予荷重の弛緩力が補正されたグロープラグとなる。また、規定の締め付けトルクは、必ずハウジング201の弾性域内で設定されているため、代替治具500から取り外せば、ハウジング201は締め付け力から解放されて元の状態に戻ろうと伸びる。
このハウジング201の復帰しようとする力によって発生する荷重も、圧力センサ300に加わることとなる。そのため、代替治具500から取り外した後のグロープラグ単体の状態においては、固定ナット211の締め付けトルクにより実現可能な予荷重よりも大きな予荷重を、圧力センサ300に印加できるようになる。
例えば、上記図5によれば、固定ナット211の締め付けトルクのみでは、約1800N程度の予荷重が限界である。つまり、従来では、グロープラグ単体では、当該予荷重は、固定ナット211の締め付けトルクにより実現可能な大きさが限界であった。
しかし、同じく上記図5中には、中軸204の単純な引っ張り強度が並記してあり、この引っ張り強度は、固定ナット211の締め付けトルクにより実現可能な予荷重(例えば約1700N)よりも更に大きい(例えば約3000N)のが通常である。
そのため、本取付方法を採用することにより、中軸204の本来の強度を生かして、グロープラグ単体の状態にて従来よりも高い予荷重を実現することができるという利点もある。そして、このことは、センサ出力特性の更なる安定化につながる。
なお、上記第1および第2実施形態においては、発熱体206は、図1に示したような金属抵抗線(発熱コイル203)を基本としたいわゆる金属発熱体の他に、例えば図10に示すようなものであっても良い。図10は第1、第2実施形態の変形例としてのグロープラグ110を示す縦断面図である。
図10に示す発熱体400は、窒化珪素と珪化モリブデン又はタングステンカーバイドとを主成分とした導電性セラミックからなる発熱部材401とタングステン製の一対のリードワイヤ402とを、窒化珪素を主成分とした絶縁性セラミックからなる絶縁体403で内包する形で焼結してなるもので、いわゆるセラミック発熱体である。
この発熱体400は、耐熱・耐食性合金(例えばSUS430)等よりなる筒状の保護パイプ(本発明でいうパイプ部材)404に挿入され、保護パイプ404の一端側から露出するように保護パイプ404に保持されている。
この保護パイプ404は、その他端側がハウジング201の一端側に挿入され、上記のシース管と同様、圧入やロウ付け等により、ハウジング201の内面と保護パイプ404の外面とは、隙間無く固定されている。
また、リードワイヤ402の一方は、中軸204の一端に取り付けられたキャップリード405を介して中軸204に結合され、他方は、保護パイプ404を介してハウジング201にアースされている。これにより、中軸204と発熱部材401とは電気的に導通され、発熱部材401に通電されて、発熱体400は発熱するようになっている。
なお、中軸204とハウジング201との問には、中軸204の保持・固定及び芯出しを行うための溶着ガラス406及びインシュレータ407が介在している。
このグロープラグ110は出力感度が低下する点を除けば、上記図1に示すグロープラグ100と同様の効果を奏することができる。また、発熱体をセラミック化することにより、発熱体自体の寿命を飛躍的に向上することができ、実質的には、メンテナンスフリー化を実現できる。
(第3実施形態)
図11は、本発明の第3実施形態に係る燃焼圧センサ付きグロープラグ100’の全体概略をディーゼルエンジン(内燃機関)のエンジンヘッド(被取付部)1へ取り付けた状態にて示す縦断面図である。
図11に示すグロープラグ100’は、上記図1に示すグロープラグ100と図面上は同様のものである。本実施形態では、中軸204の一端側のうちパイプ部材202の内部に位置する部位204cの熱膨張係数を10.5×10-6/℃以下であるものとしたことが独自の特徴点である。
「課題」の欄にて述べたように、グロープラグ100をエンジンに装着した後においては、通電時の発熱体206の温度上昇によるセンサ出力特性の変動が問題となる。
これは、通電時の発熱に伴う熱膨張と固定ナット211による引っ張り力との作用により、中軸204がハウジング201の他端側へ容易に伸ばされることが原因である。そして、これにより圧力センサ300に印加されていた予荷重が開放され低下することで、センサ出力特性の変動が生じる。
そこで、本発明者らは実験検討を行い、中軸204の一端側のうちパイプ部材202の内部に位置する部位204cすなわち発熱部材203と隣り合う部位を、熱膨張係数が10.5×10-6/℃以下のものとすることで、通電後における中軸204の熱膨張による伸びを抑制し、センサ出力感度の低下を大幅に抑制できることを見出した。
その検討の一例を図12、図13に示す。図12は、出力感度の時間(通電時間)変化を調べたもので、(a)が中軸204の上記部位204cとして従来の一般的な材料である炭素鋼を用いた場合、(b)が中軸204の上記部位204cとして本実施形態独自の材料であるFe−27Cr(27%がCr、残部がFeの合金)を用いた場合である。
(a)の炭素鋼は30℃での熱膨張係数αが12×10-6/℃であり、(b)のFe−27Crは30℃での熱膨張係数αが10.5×10-6/℃である。図12において、グロープラグ100の装着条件はエンジン装着後に圧力センサ300に900Nの予荷重を印加したものとした。また、エンジン運転条件はアイドル状態、グロープラグ100への印加電圧は15Vとした。
図12(a)、(b)では、時間(通電時間)に対する基準筒内圧、圧力センサ300の出力(センサ出力)、さらにグロープラグに流れる電流であるGP電流の変化を示してある。
図12(a)では時間の経過とともにセンサ出力が基準筒内圧よりも小さくなり、あるところで飽和している。この基準筒内圧に対するセンサ出力の比(%)が感度変化であり、図12(a)において飽和した箇所では感度変化は約2%である。ちなみに、通電を停止すれば、もとの出力感度に回復することは確認している。
それに対して、本実施形態である図12(b)では、感度変化は0.5%以下に抑制されている。この感度変化は上述したように、時間とともに中軸204が伸びることで発生する。本実施形態では、通電後における中軸204の熱膨張による伸びを抑制し、発熱の有無に影響されることなく、基準筒内圧と同等の燃焼圧の検出精度を確保することができる。
さらに、図13は、中軸204の熱膨張係数と感度変化との関係を調べた結果を示す図である。この結果から、中軸204の一端側のうちパイプ部材202の内部に位置する部位204cを、熱膨張係数が10.5×10-6/℃以下のものとすれば、出力感度の低下を大幅に抑制できることがわかった。なお、その他、出力のSN比や応答性についても同様の傾向が確認された。
このように、本実施形態によれば、中軸204の一端側のうちパイプ部材202の内部に位置する部位204cの熱膨張係数を10.5×10-6/℃以下とすることで、通電時における中軸204の伸びを抑制し、上記の微小な隙間を極力無くすことができる。そして、エンジン装着後において、センサ出力特性の変動を抑制でき、安定したセンサ出力特性を実現することができる。
ここで、中軸204の一端側のうちパイプ部材202の内部に位置する部位204cの長さは、15mm以上であることが実用上好ましい。これは次の理由による。
一般に、スウェージング成形後の発熱体206において、中軸204は15mm以上、シース管202内に絶縁粉末205とともに包含されるように設計されている。
この狙いは、ネジサイズM4の固定ナット211による中軸204の端子ネジ204aへの螺着を想定した場合の、発生ねじり力並びに引っ張り力に対する必要最小限の保持強度を確保するためである。
もし、中軸204がシース管202内に絶縁粉末205とともに包含される長さが短かすぎると、固定ナット211の螺着の際に、中軸204が回転したり、発熱体206から抜けてしまったりする。
このような実用性を考慮して、中軸204の一端側のうちパイプ部材202の内部に位置する部位204cの長さは15mm以上とし、この15mm以上の部位204cを、熱膨張係数が10.5×10-6/℃以下の低熱膨張材とすることが好ましい。
また、温度的には、中軸204の先端より15mm以上離れた部分、いわゆる中軸204がシース管202から露出した付近では、周囲のハウジング温度と同様、中軸温度は150℃程度に低下するため、積極的にそれ以上の中軸部分に低熱膨張材を適用する必要はない。もちろん、中軸204全体を低熱膨張材としても良い。
具体的に、本実施形態の中軸204に用いられる熱膨張係数が10.5×10-6/℃以下である低熱膨張材としては、Feを主成分としてCr、Ni、Coから選択された少なくとも1種の金属が混合された合金からなるものを採用できる。
より具体的な中軸材料の例としては、次の材料等が挙げられる。なお、材料名の後の括弧内には熱膨張係数(30℃)を示してある。Fe−27Cr(10.5×10-6/℃)、Fe−47Ni−6Cr(10.2×10-6/℃)、Fe−50Ni(9.9×10-6/℃)、Fe−29Ni−17Co(4.8×10-6/℃)等である。ちなみに、ハウジング201の材質は硫黄快削鋼、炭素鋼等であり、その熱膨張係数は12×10-6/℃相当である。
(他の実施形態)
なお、グロープラグ100をエンジンに装着する際は、エンジン自体の冷間時が望ましい。これは、一般にグロープラグのハウジング材(硫黄快削鋼、炭素鋼等)に比ベ、エンジンヘッドを形成するアルミニウム合金の方がはるかに熱膨張係数が大きいことによる。
例えば、エンジンの温間時にグロープラグを装着した場合、エンジンヘッドが膨張した状態で装着されることとなる。この状態で、エンジンが冷却されると、エンジンヘッドの収縮に伴い、グロープラグのハウジングが圧縮される。そのため、上記図15と同様、中軸が浮き上がった状態となり、当初負荷した圧力センサへの予荷重は開放され、低下を招くこととなる。
このこととは逆に、エンジンの冷間時に装着すれば、予荷重は加算されることとなる。そのため、グロープラグ100をエンジンに装着する際は、エンジン自体の冷間時が望ましい。
また、圧力センサ300の固定・保持手段は図14に示す変形例のようであっても良い。図14の例では、圧力センサ300を中軸204の一端側方向に向かってハウジング201へ押しつけるように固定する押圧部材として固定ナットに代えてストップドリング213を用いたものである。
圧力センサ300、円筒リング209、Oリング208、Oリング309、及び絶縁ブッシュ210等を所定場所に配置した後、金属材料からなる円環状のストップドリング213(例えば板厚4mm)を中軸204の中段部204bへ嵌合圧入する。
それにより、ストップドリング213とハウジング201との問に、圧力センサ300と絶縁ブッシュ210とが挟まれた形で固定・保持される。この場合も、上記第1実施形態や第2実施形態のような取付方法を行うことができる。
すなわち、荷重計等で印加荷重をモニタしながら、ストップドリング213によって圧力センサ300に対して中軸204の一端側方向へ印加する荷重を900N以上とすることで、同様の効果が得られる。
なお、ストップドリング213の内径は、中軸204の中段部204bの外径に対しては、圧入締め代として、例えば−60μm〜−140μm程度小さめに設定するとともに、中軸204の端子ネジ204aの外径に対しては、干渉せず挿入できるように寸法を設定することで、嵌合圧入がなされている。
この結果、組付け性自体は多少悪化するが、中軸204はもちろん圧力センサ300にもねじり力が作用することなく予荷重の印加と固定・保持が可能となる。こうして、中軸204の強度を含め、シールド付き電線305の芯線305aの断線といった品質上のトラブルは皆無となり、信頼性は向上する。
また、燃焼圧センサは、荷重に基づいてエンジンの燃焼圧を検出するものであれば、圧電セラミックスを用いたものでなくとも良く、例えば半導体圧力センサ等であっても良い。