JP2011127650A - 滑り案内装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】簡易な構成により滑り案内装置における移動体の浮き上がりを防止する。
【解決手段】基準となる案内面S2が形成された支持体12と、潤滑油を介して案内面S2上を摺動する摺動面S1が形成された移動体11とを有する滑り案内装置であって、摺動面S1に、移動体11の移動方向に延在する細長の第一の溝15が形成され、第一の溝15は、移動体11の移動時に、移動体11の移動方向への潤滑油の流れ(矢印B)を発生させるような深さtaを有する。
【選択図】図3

Description

本発明は、潤滑油を介して移動可能に支持された移動体の滑り案内装置に関する。
工作機械等の分野においては、一般に、ベッド等の支持体に案内面を形成するとともに、テーブル等の移動体に摺動面を形成し、案内面と摺動面の間に潤滑油を供給して支持体上に移動体を滑り移動可能に支持するように案内装置が構成される。この種の案内装置では、移動体が移動するとき、潤滑油の油膜厚さが変動して移動体の端部が浮き上がり、移動体の姿勢が不安定になることがある。
このような移動体の浮き上がりを防止するため、支持体の表面側に、潤滑油が圧入される面圧調整ポケットを形成するとともに、支持体の裏面側に、潤滑油が流入する静圧ポケットを形成し、面圧調整ポケット内の圧油により移動体が浮上しようとする際に、静圧ポケット内の圧油により移動体を浮上方向と反対方向に押圧するようにした装置が知られている(例えば特許文献1参照)。
特開2005−238442号公報
しかしながら、上記特許文献1記載の装置は、構成が複雑であり、装置が大型化する。
本発明は、基準となる案内面が形成された支持体と、潤滑油を介して案内面上を摺動する摺動面が形成された移動体とを有する滑り案内装置であって、摺動面に、移動体の移動方向に延在する第一の溝が形成され、第一の溝は、移動体の移動時に、移動体の移動方向への潤滑油の流れを発生させるような深さを有することを特徴とする。
本発明によれば、移動体の摺動面に、移動体の移動方向への潤滑油の流れを発生させるような深さを有する第一の溝が形成されるので、簡易な構成により移動体の浮き上がりを防止できる。移動体が移動するとき、後部に溜まった潤滑油はこの第一の溝の深い部分を通って移動方向の前部へ流れ、潤滑油が後部に溜まり、後部の潤滑油の圧力が上がり移動体が浮き上がる現象がなくなる。
本発明の実施の形態に係る滑り案内装置が適用される工作機械の概略構成を示す図である。 滑り案内装置の全体構成を示す断面図である。 本発明の実施の形態に係る滑り案内装置の要部構成を示す拡大断面図である。 摺動面に設けられた溝の配置を示す図3の矢視IV図である。 (a)は図4のa−a線断面図であり、(b)は図4のb−b線断面図である。 図3の比較例を示す図である。 図4の変形例を示す図である。
以下、図1〜図7を参照して、本発明による滑り案内装置の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る滑り案内装置が適用される工作機械の概略構成を示す図であり、一例として立形のマシニングセンタを示している。
ベッド1上にコラム2が立設され、コラム2に主軸頭3が上下方向(Z方向)に昇降可能に支持されている。主軸頭3には下向きに工具4が取り付けられている。ベッド1上には水平方向(Y方向)にスライド可能にサドル5が支持され、サドル5上にはY方向と直交する水平方向(X方向)にスライド可能にテーブル6が支持されている。すなわち、主軸頭3、サドル5およびテーブル6は、滑り案内装置10により、それぞれコラム2、ベッド1およびサドル5に滑り移動可能に支持されている。この構成により工具4と、テーブル6上に取り付けられたワークWとは、X、Y、Z方向に相対移動し、ワークWが加工される。
図2は、滑り案内装置10の全体構成を示す断面図である。滑り案内装置10は、摺動面S1を有する移動体11と、摺動面S1に対向した案内面S2を有する支持体12とを備える。移動体11は、図1の主軸頭3、サドル5又はテーブル6のことであり、支持体12は、それぞれコラム2、ベッド1又はサドル5のことである。移動体11と支持体12は、例えば鋳鉄等の金属を構成材とした鋳造品であり、必要に応じて機械加工されて形成される。移動体11の下面にはナット部15が設けられ、ナット部15に、紙面垂直方向に延在する送りねじ16が螺合されている。送りねじ16は、モータにより回転駆動され、これにより移動体11が案内面S2上を紙面垂直方向に滑り移動する。
移動体11には、潤滑油供給孔14が穿設され、摺動面S1と案内面S2に潤滑油が供給される。潤滑油は、粘度が68cst程度の一般的な摺動面用潤滑油であり、ポンプにより例えば数分毎に数mlづつ供給される。なお、支持体12の両端部を抱き込むように移動体11が構成され、移動体11と支持体12の各接触面に摺動面S1と案内面S2が設けられている。
このような滑り案内装置10によれば、移動体11を面全体で滑り移動可能に支持するため、転がり案内装置に比べ高い支持剛性が得られ、負荷能力が大きく、吸振性、耐衝撃性にも優れる。このため、ワークWを精度よく支持することが必要な工作機械等に用いて好適であり、工作機械に滑り案内装置10を適用することで、ワーク加工時の負荷変動に拘わらず、ワークWを精度よく加工することができる。
一方、この種の滑り案内装置10において、案内面S2上を高速で移動体11を移動させると、移動体11の後部の案内面S2と摺動面S1との間に潤滑油が溜まって油膜が厚くなり、移動体11の端部が浮き上がる現象が生じる。このような移動体11の浮き上がりは、加工精度に悪影響を与えるおそれがある。これを防止するため、本実施の形態は、以下のように滑り案内装置10の摺動面S1に溝加工を施す。
図3は、本発明の実施の形態に係る滑り案内装置10の要部構成を示す拡大断面図であり、図4は、摺動面S1の平面図(図3の矢視IV図)である。なお、図3は、図4のIII−III線断面図に相当する。以下では、移動体11の移動方向である図4のX方向を長手方向と呼び、これに直交する図4のY方向を幅方向と呼ぶ。
移動体11の案内面S2側の表面には、所定厚さt0(例えば1mm程度)の低摩擦摺動材13が貼付され、低摩擦摺動材13により摺動面S1が形成されている。低摩擦摺動材13は、摩擦係数が小さく耐摩耗性の高い材質により構成すればよく、例えばフッ素樹脂等の樹脂材により構成できる。図示は省略するが、摺動面S1には潤滑性を保つため、その全範囲にわたって細かい凹凸を形成するきさげ加工又は機械加工が施されている。
摺動面S1にはその幅方向中央部に、長手方向にかけて延在する細長の第一の溝15(以下、縦溝と呼ぶ)が形成されている。また、摺動面S1にはこの縦溝15に連通して幅方向両側に延在する複数の細長の第二の溝16(以下、横溝と呼ぶ)が形成されている。潤滑油供給孔14は、縦溝15の長手方向中央部に開口している。
図5(a)は、縦溝15の断面図(図4のa−a線断面図)であり、図5(b)は、横溝16の断面図(図4のb−b線断面図)である。図5(a)に示すように縦溝15は、幅wa、深さtaの矩形状の溝断面を呈し、通常のエンドミルを用いた溝加工により形成される。縦溝15は、移動体11を図3の矢印A方向へ移動したときに、図3の矢印Bに示すように移動方向への潤滑油の流れを発生させる帰還回路として機能する。このことは、実際の工作機械の移動体には設けないが、実験装置の移動体11の縦溝15の移動方向前部および後部にそれぞれ圧力検出器P1,P2を取り付け(図3に一点鎖線で示す)、移動中の圧力の変化を観察することによってわかった。
68cstの潤滑油を用いた場合、縦溝15の深さが3mmのときは、後部の圧力P2が前部の圧力P1より大きくなり、潤滑油が縦溝15の後部に溜まる現象が起きる。縦溝15の深さが10mmのときは、後部の圧力P2と前部の圧力P1とがほぼ同じ値になり、潤滑油が矢印Bに示すように移動方向へ回流することがわかった。縦溝15をさらに深くした場合、圧力P2とP1とはほぼ同じ値になり、潤滑油の矢印Bに示す回流は起きているが、縦溝15の容積が大きくなり過ぎ、供給される潤滑油が縦溝15内に収納されるだけで、後述する横溝16を通って摺動面S1全体へ行き渡りにくくなるという別の問題が生じる。したがって、縦溝15の適正な深さtaは、潤滑油の粘度が68cstの場合は10mm程度である。なお、縦溝15の幅waは、深さtaよりも狭く、例えば6mm程度である。
一方、横溝16は、移動体11の幅方向に潤滑油を導き、摺動面S1の全体に油を行き渡らせて潤滑性を高める潤滑回路として機能するものであり、図4に示すように各横溝16は長手方向ほぼ等間隔に配列されている。横溝16により少量の油を面全体に行き渡らせるためには、溝深さtbは浅く、溝表面部の面積が広い方がよい。このため、図5(b)に示すように横溝16は、深さ方向にかけて溝幅が徐々に狭くなるように、なだらかな曲面状に形成され、表面部で最大幅Wb(例えば5mm程度)となっている。横溝16の深さtbは低摩擦摺動材13の厚さt0よりも浅く、例えば0.5mm程度もしくはそれ以下とすることが好ましい。なお、摺動面S1におけるきさげ加工又は機械加工の凹凸の深さは、横溝16の深さtbよりも浅く、例えば0.12mmである。
潤滑油供給孔14を介して縦溝15に潤滑油が供給されると、その潤滑油は横溝16を介して摺動面S1の幅方向に流れ、摺動面S1の全体に行き渡る。このため摺動面S1と案内面S2との間の油切れを防止することができ、摺動面S1の摩擦係数が小さくなり、摺動面S1の磨耗を抑えることができる。
このとき、移動体11が案内面S2上を図3のA方向に高速で移動すると、潤滑油は移動体11の動きに追従せずに縦溝15内に取り残され、縦溝15内の移動方向反対側に溜まる。この溜まった潤滑油は、縦溝15の端壁15aに沿って上昇し、図3の矢印Bに示すように移動体11の移動方向へ流れる。これにより縦溝15内に移動体11の移動方向への潤滑油の流れが発生し、縦溝15内の移動方向反対側における油の圧力が減少して、移動体11の浮き上がりを防止できる。
本実施の形態によれば以下のような作用効果を奏することができる。
(1)移動体11の摺動面S1に、移動体11の移動方向(長手方向)にかけて、移動方向への潤滑油の流れを発生させる帰還回路として機能する細長の縦溝15を形成したので、簡易な構成により移動体11の浮き上がりを防止できる。すなわち、例えば図6に示すように、移動体11の内部に移動方向の帰還回路151を形成し、図の矢印Bのように帰還回路151を介して潤滑油を帰還させる場合に比べ、帰還回路の加工が容易である。
(2)移動体11の摺動面S1に、縦溝15に連通し、幅方向にかけて複数の細長の横溝16を形成したので、縦溝15内に供給された潤滑油を摺動面S1の全面に行き渡らせることができ、摺動面S1における潤滑性が向上する。
(3)縦溝15の深さtaを横溝16の深さtbよりも深くしたので、縦溝15を帰還回路として機能させることができる。
(4)縦溝15を溝断面が略矩形状となるように形成したので、通常のエンドミルを用いて縦溝15を加工することができ、溝加工が容易である。
(5)横溝16を深さ方向にかけて溝幅が徐々に狭くなるように形成したので、案内面S2に接する油溝の面積が増大し、摺動抵抗を低減できる。
(6)潤滑油供給孔14を縦溝15に連通して設けたので、供給された潤滑油は一旦縦溝15内に収容され、収容された潤滑油は横溝16を通って徐々に摺動面S1へ行き渡らせることができる。
なお、上記実施の形態(図4)では、移動体11の摺動面S1に単一の縦溝15(第一の溝)を形成するとともに、縦溝15に連通して複数の横溝16(第二の溝)を形成したが、第一の溝と第二の溝の配置はこれに限らない。例えば図7(a)に示すように、摺動面S1に複数の縦溝15を形成し、各縦溝15に複数の横溝16を連通するとともに、中央の縦溝15に潤滑油供給孔14を連通するようしてもよい。また、図7(b)に示すように、一対の横溝16と、この横溝16と同一深さの一対の溝152とにより、摺動面S1の全体を囲むように溝を形成してもよい。横溝16を省略し、単一もしくは複数の縦溝15のみを摺動面S1に加工してもよい。
移動体11の移動時に、移動体11の移動方向への潤滑油の流れを発生させるような深さtaを有するのであれば、縦溝15の形状は上述したものに限らない。また、縦溝15に連通し、移動体11の移動方向に対し略垂直方向に延在するのであれば、横溝16の形状は上述したものに限らない。溝形状は直線状でなく、曲線状であってもよい。摺動面S1に潤滑油を供給する潤滑油供給孔14を縦溝15に連通して設けたが、供給通路を他の位置に設けてもよい。
以上では、立形のマシニングセンタに滑り案内装置10を適用した例を説明したが、横形のマシニングセンタや他の工作機械にも本発明による滑り案内装置を同様に適用可能である。また、高い支持剛性を必要とする他の機械(例えば材料試験機や各種計測器等)にも同様に適用可能である。
10 滑り案内装置
11 移動体
12 支持体
14 潤滑油供給孔
15 縦溝(第一の溝)
16 横溝(第二の溝)

Claims (4)

  1. 基準となる案内面が形成された支持体と、潤滑油を介して前記案内面上を摺動する摺動面が形成された移動体とを有する滑り案内装置であって、
    前記摺動面に、前記移動体の移動方向に延在する第一の溝が形成され、
    前記第一の溝は、前記移動体の移動時に、前記移動体の移動方向への潤滑油の流れを発生させるような深さを有することを特徴とする滑り案内装置。
  2. 請求項1に記載の滑り案内装置において、
    前記摺動面に、前記第一の溝に連通し、前記移動体の移動方向に対し略垂直方向に延在する複数の第二の溝が形成されている滑り案内装置。
  3. 請求項2に記載の滑り案内装置において、
    前記第一の溝は、前記第二の溝よりも深く形成されている滑り案内装置。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の滑り案内装置において、
    前記摺動面に潤滑油を供給する供給通路は、前記第一の溝に連通して設けられている滑り案内装置。
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