JP2011127225A - 可動接点用銀被覆ステンレス条及びこれを用いたスイッチ - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ステンレス鋼基材の表面の少なくとも一部にニッケル、コバルト、ニッケル合金、コバルト合金のいずれかの下地層が形成され、その上層に銀または銀合金層を形成した銀被覆ステンレス条であって、銀または銀合金層と下地層の中間に厚さが0.05μm〜2.0μmの銅または銅合金層を設けた可動接点用銀被覆ステンレス条及びこれを用いたスイッチ。
【選択図】なし
Description
前記複合接点材料のうち、基材にステンレス鋼を用いたものは、銅合金を用いたものより機械的特性、疲労寿命などに優れるため接点の小型化が可能であり、長寿命のタクティルプッシュスイッチや検出スイッチなどの可動接点に使用されている。近年では、携帯電話のプッシュボタンに多用されており、メール機能やインターネット機能の充実によって、スイッチの動作回数が激増している。
銀または銀合金を被覆したステンレス条は、下地にニッケルめっきを施したものが多用されている(例えば、特許文献1参照)。だが、これをスイッチに利用する場合、スイッチの動作回数が増加することによって、接点部の銀が摩耗によって削れ、下地のニッケルめっき層が露出して接触抵抗が上昇し、導通が取れなくなる不具合が顕在化している。特に、小径のドーム型可動接点では、この現象が起こり易く、益々小型化するスイッチには大きな技術課題になっている。
このため、導電性を向上させる目的でステンレスにニッケルめっき、銅めっき、ニッケルめっき、金めっきを順に施したものがある(特許文献3参照)。しかし、ニッケルめっき自体は耐食性に優れるが硬いため曲げ加工時に上層にクラックが発生するため、下層が露出してしまい耐食性が劣化する問題が発生した。
(1)ステンレス鋼基材の表面の少なくとも一部にニッケル、コバルト、ニッケル合金、コバルト合金のいずれかの下地層が形成され、その上層に銀または銀合金層を形成した銀被覆ステンレス条であって、銀または銀合金層と下地層の中間に厚さが0.05μm〜2.0μmの銅または銅合金層を設けたことを特徴とする可動接点用銀被覆ステンレス条、
(2)銀または銀合金層と、銅又は銅合金層の間に、銀と銅の合金層が形成されていることを特徴とする請求項1の可動接点用銀被覆ステンレス条、
(3)ステンレス鋼基材の表面の少なくとも一部にニッケル、コバルト、ニッケル合金、コバルト合金のいずれかの下地層を形成した後、銅または銅合金の中間層を形成し、その後、銀または銀合金を被覆して、非酸化性雰囲気中で熱処理を行うことを特徴とする可動接点用銀被覆ステンレス条の製造方法、
(4)ステンレス鋼基材の表面の少なくとも一部にコバルト又はコバルト合金の下地層が形成され、その上層に銀または銀合金層を形成した銀被覆ステンレス条であって、銀または銀合金層と下地層の中間に厚さが0.05μm〜2.0μmの銅または銅合金層を設けたことを特徴とする可動接点用銀被覆ステンレス条、
(5)ステンレス鋼基材の表面の少なくとも一部にコバルトを1〜10質量%含有するニッケル合金の下地層が形成され、その上層に銀または銀合金層を形成した銀被覆ステンレス条であって、銀または銀合金層と下地層の中間に厚さが0.05μm〜2.0μmの銅または銅合金層を設けたことを特徴とする可動接点用銀被覆ステンレス条、
(6)ステンレス鋼基材の表面の少なくとも一部にニッケル、コバルト、ニッケル合金、コバルト合金のいずれかの下地層が形成され、その上層に銀または銀合金層を形成した銀被覆ステンレス条であって、銀または銀合金層と下地層の中間に厚さが0.05μm〜2.0μmの銅合金層を設け、該銅合金層はスズ、亜鉛、ニッケルから選ばれる1種又は2種以上の元素を1〜10質量%含有する銅合金からなることを特徴とする可動接点用銀被覆ステンレス条、
(7)ステンレス鋼基材の表面の少なくとも一部にニッケル、コバルト、ニッケル合金、コバルト合金のいずれかの下地層が形成され、その上層に銀または銀合金層を形成した銀被覆ステンレス条であって、銀または銀合金層と下地層の中間に厚さが0.05μmの銅層を設けたことを特徴とする可動接点用銀被覆ステンレス条、
(8)ステンレス鋼基材の表面の少なくとも一部にニッケル、コバルト、ニッケル合金、コバルト合金のいずれかの下地層が形成され、その上層にアンチモンを0.1〜2.0質量%含有する銀合金層を形成した銀被覆ステンレス条であって、銀または銀合金層と下地層の中間に厚さが0.05μm〜2.0μmの銅または銅合金層を設けたことを特徴とする可動接点用銀被覆ステンレス条、
(9)ドーム型可動接点と固定接点とを有するスイッチであって、
前記固定接点は、銀めっきされた接点であり、前記ドーム型可動接点は、ステンレス鋼基材の表面の少なくとも一部にニッケル、コバルト、ニッケル合金、コバルト合金のいずれかの下地層が形成され、その上層に銀または銀合金層を形成した銀被覆ステンレス条であって、銀または銀合金層と下地層の中間に厚さが0.05μm〜2.0μmの銅または銅合金層を設けた可動接点用銀被覆ステンレス条からなることを特徴とするスイッチ、および
(10)ドーム型可動接点と固定接点とを有するスイッチであって、前記ドーム型可動接点は、前記(2),(4)〜(8)のいずれか1項に記載の可動接点用銀被覆ステンレス条からなることを特徴とするスイッチ
を提供するものである。
本発明は、ステンレス鋼基材の表面の少なくとも一部にニッケル、コバルト、ニッケル合金またはコバルト合金の下地層が形成され、次いで、銅または銅合金の中間層、上層に銀または銀合金層を形成したことを特徴とする可動接点用材料であり、スイッチの動作回数が増加しても接触抵抗の上昇が起き難いものである。
本発明においては、ステンレス鋼基材は可動接点に用いたとき、その機械的強度を担うものであるので、ステンレス鋼基材としては応力緩和特性に優れ疲労破壊し難いSUS301、SUS304、SUS316などの圧延調質材またはテンションアニール材が用いられる。
下地層を形成する金属は、公知のようにニッケル、コバルト、ニッケル合金、コバルト合金のいずれかが選ばれるが、ニッケルが好ましい。この下地層は、ステンレス基材を陰極にして、例えば塩化ニッケルおよび遊離塩酸を含む電解液を用いて電解することにより、めっき厚さを0.05〜2.0μmにするのが好ましい。(なお以下、下地層の金属としてニッケルを例に説明する。これはニッケルに限るものではなく、コバルト、ニッケル合金及びコバルト合金の場合も同様である。)
本発明では、下地層を酸化させない手段としても、銅または銅合金から成る中間層を配置している。酸化は、銀層中の酸素の透過によるものであり、銅または銅合金の配置によって、銀と銅の合金層が形成され、その銀−銅合金層が酸素の透過を抑え、密着性の低下を防止する役割を果たす。
また、せん断応力に対しては、互いに接する層(銀と銅、銅とニッケル)が固溶する組み合わせにすることで改善される。従来のAg層−Ni層では、銀中へのニッケルの固溶濃度は極微量であり、せん断応力に対する破断強度が弱いものであった。発明者等は鋭意研究の結果、銀とニッケルの間に銅層を施すことで、銀と銅の界面に合金が形成し、せん断強度が向上することを見出した。
非酸化性の雰囲気ガスとしては、水素、ヘリウム、アルゴン又は窒素を使用することができるが、アルゴンが好ましい。
銅または銅合金層の厚さは0.05〜2.0μmが好ましく、さらに好ましい範囲は0.1〜1.2μmである。銅または銅合金としては、限定するものではないが、純銅のほか、スズ、亜鉛、ニッケルから選ばれる1種又は2種以上の元素を1〜10質量%含む銅合金が好ましい。
銅または銅合金層の厚さは、薄すぎると層を設けた効果が少なく、厚すぎると基材の可動接点の作動力が低下するため好ましくない。
下地層を形成するニッケル、コバルトとしては、限定するものではないが、純ニッケルのほか、コバルトを1〜10質量%含むニッケル合金が好ましい。ニッケルまたはニッケル合金の下地層の厚さは、薄すぎると効果が少なく、厚すぎると基材の可動接点の作動力が低下する。
SUS301条を連続的に通板して巻き取るめっきラインにおいて、厚さ0.06mm、条幅100mmのSUS301条を電解脱脂、水洗、電解活性化、水洗、ニッケルめっき(又はニッケル−コバルトめっき)、水洗、銅めっき、水洗、銀ストライクめっき、銀めっき、水洗、乾燥の各処理を行った。
処理条件は次のとおりである。
1.(電解脱脂、電解活性化) ステンレス条をオルソケイ酸ソーダ100g/lの水溶液で陰極電解脱脂、10%塩酸で酸洗して活性化。
2.(ニッケルめっき) 塩化ニッケル250g/lと遊離塩酸50g/lとを含む電解液で陰極電流密度5A/dm2で電解。
3.(銅めっき) 硫酸銅150g/lと遊離硫酸100g/lとを含む電解液で陰極電流密度5A/dm2で電解。
4.(銀ストライクめっき) シアン化銀5g/lとシアン化カリウム50g/lとを含む電解液で陰極電流密度2A/dm2で電解。
5.(銀めっき) シアン化銀50g/lとシアン化カリウム50g/lと炭酸カリウム30g/lを含む電解液で陰極電流密度5A/dm2で電解。
ここで、中間層である銅めっき層の厚さは種々に変化させて表1に示した各可動接点用銀めっきステンレス条を製造した。また、実施例6の試料については熱処理(250℃×2時間、アルゴン(Ar)ガス雰囲気中)を行った。
従来例のもは、同様に、SUS301条を通板して巻き取るめっきラインにおいて、銅めっき及びそれに続く水洗工程を省略したものである。
打鍵試験は、接点圧力:9.8N/mm2、打鍵速度:5Hzで最大100万回の打鍵を行って接触抵抗の経時変化を測定し、その結果を表1に示した。また、100万回の打鍵試験を行った後、可動接点部の状況を観察し、その結果も表に記した。
銅の中間層の厚さが0.01μmの比較例では、従来例より優れるものの10万回から接触抵抗が上昇し始め、100万回では250mΩに達し、接点部は僅かに下地層が露出していた。
中間層の無い従来例では、10万回で接触抵抗が上昇し、100万回では1000mΩを超える接触抵抗になり、接点部は銀の剥がれが見られ下地層が露出していた。
2 固定接点
3 充填材
4 樹脂ケース
Claims (7)
- ドーム型可動接点と固定接点とを有するスイッチであって、
前記固定接点は、銀めっきされた接点であり、
前記ドーム型可動接点は、ステンレス鋼基材の表面の少なくとも一部にニッケル、コバルト、ニッケル合金、コバルト合金のいずれかの下地層が形成され、その上層に銀または銀合金層を形成した銀被覆ステンレス条であって、銀または銀合金層と下地層の中間に厚さが0.05μm〜2.0μmの銅または銅合金層を設けた可動接点用銀被覆ステンレス条からなることを特徴とするスイッチ。 - ステンレス鋼基材の表面の少なくとも一部にコバルト又はコバルト合金の下地層が形成され、その上層に銀または銀合金層を形成した銀被覆ステンレス条であって、銀または銀合金層と下地層の中間に厚さが0.05μm〜2.0μmの銅または銅合金層を設けたことを特徴とする可動接点用銀被覆ステンレス条。
- ステンレス鋼基材の表面の少なくとも一部にコバルトを1〜10質量%含有するニッケル合金の下地層が形成され、その上層に銀または銀合金層を形成した銀被覆ステンレス条であって、銀または銀合金層と下地層の中間に厚さが0.05μm〜2.0μmの銅または銅合金層を設けたことを特徴とする可動接点用銀被覆ステンレス条。
- ステンレス鋼基材の表面の少なくとも一部にニッケル、コバルト、ニッケル合金、コバルト合金のいずれかの下地層が形成され、その上層に銀または銀合金層を形成した銀被覆ステンレス条であって、銀または銀合金層と下地層の中間に厚さが0.05μm〜2.0μmの銅合金層を設け、該銅合金層はスズ、亜鉛、ニッケルから選ばれる1種又は2種以上の元素を1〜10質量%含有する銅合金からなることを特徴とする可動接点用銀被覆ステンレス条。
- ステンレス鋼基材の表面の少なくとも一部にニッケル、コバルト、ニッケル合金、コバルト合金のいずれかの下地層が形成され、その上層に銀または銀合金層を形成した銀被覆ステンレス条であって、銀または銀合金層と下地層の中間に厚さが0.05μmの銅層を設けたことを特徴とする可動接点用銀被覆ステンレス条。
- ステンレス鋼基材の表面の少なくとも一部にニッケル、コバルト、ニッケル合金、コバルト合金のいずれかの下地層が形成され、その上層にアンチモンを0.1〜2.0質量%含有する銀合金層を形成した銀被覆ステンレス条であって、銀または銀合金層と下地層の中間に厚さが0.05μm〜2.0μmの銅または銅合金層を設けたことを特徴とする可動接点用銀被覆ステンレス条。
- ドーム型可動接点と固定接点とを有するスイッチであって、
前記ドーム型可動接点は、請求項2〜6のいずれか1項に記載の可動接点用銀被覆ステンレス条からなることを特徴とするスイッチ。
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