以下、本発明の態様について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、同様または類似した機能を発揮する構成要素には全ての図面を通じて同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
図1は、本発明の一実施形態にかかる位相差板を概略的に示す斜視図である。図2は、図1に示す位相差板のII−II線に沿った断面図である。
図1および図2に示す位相差板10は、支持体110とカラーフィルタ層120と第1の固体化液晶層130と第2の固体化液晶層140とを含んでいる。
支持体110は、光透過性を有している。支持体110は、例えば透明基板である。
カラーフィルタ層120は、支持体110上に形成されている。カラーフィルタ層120は、吸収スペクトルが互いに異なり、支持体110上で隣り合った複数の着色層を含んでいる。具体的には、カラーフィルタ層120は着色層120a乃至120cを含んでおり、着色層120aが透過させる光は着色層120bが透過させる光と比較して波長がより長く、着色層120bが透過させる光は着色層120cが透過させる光と比較して波長がより長い。
カラーフィルタ層120は、着色層120a乃至120cとは吸収スペクトルが異なる1つ以上の着色層をさらに含んでいてもよい。ここでは、一例として、着色層120aは赤色着色層であり、第2着色層120bは緑色着色層であり、第3着色層120cは青色着色層であるとする。
着色層120a乃至120cの各々は、Y方向に延びた帯形状を有している。着色層120a乃至120cは、Y方向と交差するX方向に繰り返し並んでおり、ストライプ配列を形成している。なお、X方向およびY方向は、支持体110のカラーフィルタ層120と向き合った面に平行な方向である。また、後述するZ方向は、X方向およびY方向に対して垂直な方向である。
着色層120a乃至120cの各々は、他の形状を有していてもよい。例えば、着色層120a乃至120cの各々は矩形状であってもよい。この場合、着色層120a乃至120cは、正方配列またはデルタ配列を形成していてもよい。
着色層120a乃至120cの各々は、例えば、透明樹脂とその中に分散させた顔料とを含んだ混合物からなる。着色層120a乃至120cの各々は、顔料と顔料担体とを含んだ着色組成物のパターン層を形成し、このパターン層を硬化させることにより得られる。着色組成物については、後で説明する。
第1の固体化液晶層130および第2の固体化液晶層140はともに位相差層であり、カラーフィルタ層120上に形成されている。第1の固体化液晶層130および第2の固体化液晶層140は、典型的には連続膜であり、カラーフィルタ層120の一主面の全体を被覆している。
第1の固体化液晶層130とカラーフィルタ層120とは、互いに接触していてもよく、互いに接触していなくてもよい。後者の場合、第1の固体化液晶層130とカラーフィルタ層120との間には、配向膜が介在していてもよい。第2の固体化液晶層140と第1の固体化液晶層130についても、互いに接触していてもよく、互いに接触していなくてもよい。後者の場合、第2の固体化液晶層140と第1の固体化液晶層130との間には、同様に配向膜が介在していてもよい。
ただし、第1および第2の固体化液晶層が、いずれも支持体110の同一面に形成されること、および、第1の固体化液晶層130が第2の固体化液晶層140と支持体110との間に位置することは、本実施形態の位相差板に必須の要件である。
第1の固体化液晶層130は、その主面に平行な方向に並んだ複数の領域を含んでいる。それら複数の領域は面内に屈折率異方性を有しており、面内のうち一方向(例えば、X方向)の屈折率が最も高い。例えば、第1の固体化液晶層130の複数の領域は、いわゆる正のAプレートである。
例えば、第1の固体化液晶層130は、領域130a乃至130cを含んでいる。領域130a乃至130cは、Z方向に垂直な方向に隣り合っている。
具体的には、領域130a、130b、および130c、それぞれ、着色層120a、120b、および120cと向き合っている。領域130a乃至130cは、それぞれ、着色層120a乃至120cとほぼ等しい形状を有している。
第2の固体化液晶層140も同様に、その主面に平行な方向に並んだ複数の領域を含んでいる。それら複数の領域は厚み方向に屈折率異方性を有しており、厚み方向(Z方向)の屈折率が最も低い。例えば、第2の固体化液晶層140における複数の領域は、いわゆる負のCプレートである。
例えば、第2の固体化液晶層140は、領域140a乃至140cを含んでいる。領域140a乃至140cは、Z方向に垂直な方向に隣り合っている。
具体的には、第1の固体化液晶層の場合と同様に、領域140a、140b、および至140cは、それぞれ、着色層120a、120b、および120cと向き合っている。領域140a乃至140cは、それぞれ、着色層120a乃至120cとほぼ等しい形状を有している。
領域130a乃至130cは、サーモトロピック液晶化合物または組成物を重合および/または架橋させてなる。この領域130a乃至130cは、互いに組成が等しい第1の材料を用いて形成されている。領域140a乃至140cもまた、サーモトロピック液晶化合物または組成物を重合および/または架橋させてなる。この領域140a乃至140cは、互いに組成が等しい第2の材料を用いて形成されている。第2の材料は、第1の材料と同一でもよいが、典型的には、第1の材料と第2の材料とは異なる。
第1の固体化液晶層130においては、領域130a、領域130bおよび130cは、それぞれ面内に屈折率異方性を有し、かつ互いに面内の複屈折率が異なっている。一方、第2の固体化液晶層140においては、領域140a、領域140bおよび領域140cは、それぞれ厚み方向に屈折率異方性を有し、かつ互いに厚み方向の複屈折率が異なっている。
なお、本明細書において面内の複屈折率とは、固体化液晶層において面内で最大となる屈折率をnx、面内であってnx方向と直交する方向の屈折率をny、法線方向の屈折率をnzとしたときに、nx−nyで得られる値を指す。
同様に厚み方向の複屈折率とは、(nx+ny)/2−nzで得られる値を指す。
こうした複屈折率の相違の原因は、メソゲンの配向乱れの程度が各領域毎に異なって、サーモトロピック液晶化合物が重合または架橋されていることである。メソゲンの配向乱れの程度が低い状態で、サーモトロピック液晶化合物が重合または架橋された領域では、複屈折率は大きくなる。一方、メソゲンの配向乱れの程度が高い状態で、サーモトロピック液晶化合物が重合または架橋された領域では、乱れの程度が低い領域と比較して複屈折率は小さくなる。
ここで、「配向乱れの程度」とは、面内方向に隣り合った領域それぞれにおけるメソゲンMSの配向の状態を意味する。メソゲンMSの配向の状態は、その領域の全体にわたって一定であってもよく、Z方向に沿って変化していてもよい。例えば、ある領域においては、上面付近はより配向の揃った状態であり、下面付近はより配向が乱された状態であってもよい。この場合、「配向乱れの程度」とは、厚さ方向の平均を示す。
より具体的には、第1の固体化液晶層130のうち、領域130aでは、メソゲンの配向乱れの程度が低い状態で、サーモトロピック液晶化合物が重合または架橋されて形成されている。領域130bは、領域130aと比較してメソゲンの配向乱れの程度が高い状態で重合または架橋されて形成されている。そして130cでは、領域130bと比較してメソゲンの配向乱れの程度がより高い状態で重合または架橋されて形成されている。すなわち第1の固体化液晶層130において、面内の複屈折率は領域130aが最も大きく、領域130cが最も小さい。
また、第2の固体化液晶層140のうち、領域140aでは、メソゲンの配向乱れの程度が高い状態で、サーモトロピック液晶化合物が重合または架橋されて形成されている。領域140bは、領域140aと比較してメソゲンの配向乱れの程度が低い状態で重合または架橋されて形成されている。そして140cでは、領域140bと比較してメソゲンの配向乱れの程度がより低い状態で重合または架橋されて形成されている。すなわち第2の固体化液晶層140において、厚み方向の複屈折率は領域140aが最も低く、領域140cが最も高い。
このような構成とすることにより、2色以上の多数の画素によってドットマトリクス表示を行なうカラー液晶表示装置、特に液晶層の液晶が、初期状態において略垂直配向をした液晶表示装置に対して、良好な光学補償を行なうことが可能となる。
これら固体化液晶層におけるメソゲンの配向の種類は、第1の固体化液晶層および第2の固体化液晶層が次の条件を満たしていれば、いかなるものであってもよい。第1の固体化液晶層130においては面内に屈折率異方性を有し、面内のうち一方向の屈折率が最も高い状態が得られることであり、第2の固体化液晶140においては厚み方向に屈折率を有し、厚み方向の屈折率が最も低い状態が得られることである。
一例として、第1の固体化液晶層130では、棒状液晶についてその長軸が面内に水平となるように揃ったホモジニアス配向、円盤状液晶についてその面の法線方向が面内に水平となるように揃ったホモジニアス配向などを挙げることができる。第2の固体化液晶層140では、棒状液晶についてその長軸が面内に水平となり、かつ螺旋を巻いたコレステリック配向、円盤状液晶についてその面の法線方向が面内に垂直となるように揃ったホメオトロピック配向を挙げることができる。目的とする配向構造に応じて成分を適宜選択し、第1の材料および第2の材料をそれぞれ調製すればよい。
上述したような第1の固体化液晶層130および第2の固体化液晶層140は、以下の関係を満たすことが好ましい。
0.80≦Δn[A]/λd[A]≦1.25 (1)
0.90≦(2Δn[C]/λd’[C]+Δn[A]/λd[A])/3≦1.15 (2)
λd[A]=(d[A1]×λ[2])/(d[A2]×λ[1]) (3)
λd’[C]=(d[C1]×λ[1])/(d[C2]×λ[2]) (4)
Δn[A]は、第1の固体化液晶層において、第2の領域での面内複屈折率(Δn[A2])と第1の領域での面内複屈折率(Δn[A1])との比((Δn[A2])/(Δn[A1))であり、d[A1]およびd[A2]は、それぞれ第1の固体化液晶層の第1の領域および第2の領域の膜厚である。
Δn[C]は、第2の固体化液晶層において、第2の領域での厚み方向の複屈折率(Δn[C2])と第1の領域での厚み方向の複屈折率(Δn[C2])との比((Δn[C2])/(Δn[C1))であり、d[C1]およびd[C2]は、それぞれ第2の固体化液晶層の第1の領域および第2の領域の厚みである。
ただし、第1の固体化液晶層における第1の領域と、第2の固体化液晶層における第1の領域とは、いずれも第1の着色層と向き合っている領域が選択されなければならない。第1の固体化液晶層における第2の領域と、第2の固体化液晶層における第2の領域とは、いずれも第2の2の着色層と向き合っている領域が選択されなければならない。すなわち、第1の固体化液晶層における第1の領域を領域130aとした場合には、第2の固体化液晶層における第2の領域は領域140aとされる。第1の固体化液晶層における第1の領域を領域130bとした場合には、第2の固体化液晶層における第1の領域は領域140bとされ、第1の固体化液晶層における第1の領域を領域130cとした場合には、第2の固体化液晶層における第1の領域は領域140cとされる。
第1の固体化液晶層における第2の領域と、第2の固体化液晶層における第2の領域との関係も同様である。
λ[1]は、第1の着色層の色の基準波長であり、λ[2]は、第2の着色層の色の基準波長である。上述したように、第1および第2の固体化液晶層における第1の領域は、いずれも第1の着色層と向き合い、第1および第2の固体化液晶層における第2の領域は、いずれも第2の着色層と向き合う。したがって、第1および第2の固体化液晶層における第1の領域を、それぞれ130aおよび140aとした場合には、λ[1]は第1の120aの基準波長である。第1および第2の固体化液晶層における第1および第2の領域を、それぞれ130bおよび140bとした場合には、λ[1]は120bの基準波長である。第1および第2の固体化液晶層における第1および第2の領域を、それぞれ130cおよび140cとした場合には、λ[1]は120cの基準波長である。第1および第2の固体化液晶層における第2の領域とλ[2]との関係も同様である。
本発明において「基準波長」とは、最大の透過率が得られる波長に対してその90%以上の透過率が得られる波長のうち、550nmに最も近いものを指す。着色層120a、着色層120bおよび着色層120cがそれぞれ赤色着色層、緑色着色層、および青色着色層である場合、基準波長は、例えばそれぞれ620nm、550nm、および480nmなどとなる。
このように、領域130a乃至130cは、配向乱れの程度が互いに異なっている。つまり、本発明の位相差板10では、第1の固体化液晶層130における領域毎の光学特性の差異は、主として面内の複屈折率の差異により生じているので、領域130a乃至130cに所望の光学補償特性を付与するために各領域の厚さを変える必要がない。場合によっては、領域130a乃至130cの厚さを互いに異ならしめてもよいが、領域130a乃至130cの厚さを互いに等しくすることによって、固体化液晶層130を容易に形成することができる。
上述したように領域130a乃至130cの厚さを互いに等しくしてもよいので、第1の固体化液晶層130を連続膜として形成することが容易にできる。これによって、より簡便な工程で第1の固体化液晶層130を形成することが可能となる。さらに、均一な厚さの連続膜として形成された第1の固体化液晶層130には、第2の固体化液晶層140を積層しやすいという利点もある。
領域140a乃至140cについても、領域130a乃至130cの場合と同様である。すなわち本発明の位相差板10では、領域140a乃至140cの配向乱れの程度が互いに異なっており、第2の固体化液晶層140における領域毎の光学特性の差異は、主として厚み方向の複屈折率の差異により生じているので、領域140a乃至140cに所望の光学補償特性を付与するために各領域の厚さを変える必要がない。前述と同様、領域140a乃至140cの厚さを互いに異ならしめてもよいが、領域140a乃至140cの厚さを互いに等しくすることによって、固体化液晶層140を容易に形成することができる。
そしてまた、領域140a乃至140cの厚さを互いに等しくしてもよいので、第2の固体化液晶層140を連続膜として形成することが容易にでき、より簡便な工程で第2の固体化液晶層140を形成することが可能となる。
さらに、連続膜としての第1の固体化液晶層130および第2の固体化液晶層140は、離間して形成された固体化液晶層と比較して、カラーフィルタ層120から位相差板10の外部への物質移動を生じ難くする。したがって、連続膜としての第1の固体化液晶層130および第2の固体化液晶層140を含んだ位相差板10を例えば液晶表示装置において使用した場合、カラーフィルタ層120から液晶層中への不純物の混入を抑制することができる。
次に、この位相差板10の材料および製造方法の一例を説明する。
まず、支持体110を準備する。支持体110は、典型的には、ガラス板または樹脂板などの光透過性基板である。ガラス板の材料としては、例えば、ソーダ石灰ガラス、低アルカリ硼珪酸ガラスまたは無アルカリアルミノ硼珪酸ガラスを使用することができる。樹脂板の材料としては、例えば、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、環状ポリオレフィン、セルロースエステル、ポリエチレンテレフタラート等を使用することができる。また支持体110は、硬質でなくてもよい。例えば、光透過性のフィルム・シート等であってもよい。
支持体110は、単層構造を有していてもよく、多層構造を有していてもよい。例えば、位相差板10が液晶表示装置の一部品である場合、支持体110として、インジウム錫酸化物および錫酸化物などの透明導電体からなる透明電極が形成された光透過性基板を使用してもよい。あるいは、支持体110として、画素回路などの回路が形成された光透過性基板を使用してもよい。
次に、支持体110上に、以下に示す方法等によりカラーフィルタ層120を形成する。
カラーフィルタ層120は、例えば、顔料担体とこれに分散させた顔料とを含んだ着色組成物を塗布して所定パターンとし、これを硬化させることを繰り返して着色層120a乃至120cの各々を形成することによって得られる。
着色組成物の顔料としては、有機顔料および/または無機顔料を使用することができる。着色組成物は、1種の有機または無機顔料を含んでいてもよく、複数種の有機顔料および/または無機顔料を含んでいてもよい。
顔料は、発色性が高くかつ耐熱性、特には耐熱分解性が高いことが好ましく、通常は、有機顔料が用いられる。以下に、着色組成物に使用可能な有機顔料の具体例をカラーインデックス番号で示す。
赤色着色組成物の有機顔料としては、例えば、C.I.Pigment Red 7、14、41、48:2、48:3、48:4、81:1、81:2、81:3、81:4、146、168、177、178、179、184、185、187、200、202、208、210、246、254、255、264、270、272および279などの赤色顔料を用いることができる。赤色着色組成物の有機顔料として、赤色顔料と黄色顔料との混合物を使用してもよい。この黄色顔料としては、例えば、C.I.Pigment Yellow 1、2、3、4、5、6、10、12、13、14、15、16、17、18、24、31、32、34、35、35:1、36、36:1、37、37:1、40、42、43、53、55、60、61、62、63、65、73、74、77、81、83、93、94、95、97、98、100、101、104、106、108、109、110、113、114、115、116、117、118、119、120、123、126、127、128、129、138、147、150、151、152、153、154、155、156、161、162、164、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、179、180、181、182、185、187、188、193、194、199、198、213または214を使用することができる。
緑色着色組成物の有機顔料としては、例えば、C.I.Pigment Green 7、10、36および37などの緑色顔料を用いることができる。緑色着色組成物の有機顔料として、緑色顔料と黄色顔料との混合物を使用してもよい。この黄色顔料としては、例えば、赤色着色組成物について例示したのと同様のものを使用することができる。
青色着色組成物の有機顔料としては、例えば、C.I.Pigment Blue 15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、22、60および64などの青色顔料を用いることができる。青色着色組成物の有機顔料として、青色顔料と紫色顔料との混合物を使用してもよい。この紫色顔料としては、例えば、C.I.Pigment Violet 1、19、23、27、29、30、32、37、40、42または50を使用することができる。
無機顔料としては、例えば、黄色鉛、亜鉛黄、べんがら(赤色酸化鉄(III))、カドミウム赤、群青、紺青、酸化クロム緑およびコバルト緑などの金属酸化物粉、金属硫化物粉、または金属粉を使用することができる。無機顔料は、例えば、彩度と明度とをバランスさせつつ、良好な塗布性、感度および現像性などを達成するために、有機顔料と組み合わせて用いられ得る。
着色組成物は、顔料以外の着色成分をさらに含んでいてもよい。例えば、着色組成物は、十分な耐熱性を達成できるのであれば、染料を含有していてもよい。この場合、染料を用いた調色が可能である。
また前記着色組成物に含まれる顔料担体は、透明樹脂、その前駆体またはそれらの混合物により構成される。透明樹脂には、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、および感光性樹脂が含まれ、その前駆体には、放射線照射により硬化して樹脂を生成する多官能モノマーもしくはオリゴマーが含まれ、これらを単独でまたは2種以上混合して用いることができる。なお、透明樹脂は、可視光領域である400乃至700nmの全波長領域にわたって好ましくは80%以上、より好ましくは95%以上の透過率を有している樹脂である。
着色組成物において、透明樹脂は、顔料100重量部に対して、例えば30乃至700重量部、好ましくは60乃至450重量部の量で用いる。透明樹脂とその前駆体との混合物を顔料担体として用いる場合には、着色組成物において、透明樹脂は、顔料100重量部に対して、例えば20乃至400重量部、好ましくは50乃至250重量部の量で用いる。この場合、透明樹脂の前駆体は、着色組成物において、顔料100重量部に対して、例えば10乃至300重量部、好ましくは10乃至200重量部の量で用いる。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ブチラール樹脂、スチレンーマレイン酸共重合体、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂、アルキッド樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ゴム系樹脂、環化ゴム系樹脂、セルロース類、ポリブタジエン、ポリエチレン、ポリプロピレンまたはポリイミド樹脂を使用することができる。
熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性フマル酸樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂またはフェノール樹脂を使用することができる。
感光性樹脂としては、例えば、水酸基、カルボキシル基およびアミノ基などの反応性の置換基を有する線状高分子に、イソシアネート基、アルデヒド基およびエポキシ基などの反応性置換基を有するアクリル化合物、メタクリル化合物または桂皮酸を反応させて、アクリロイル基、メタクリロイル基およびスチリル基など光架橋性基を線状高分子に導入した樹脂を使用することができる。また、スチレン−無水マレイン酸共重合物およびα−オレフィン−無水マレイン酸共重合物などの酸無水物を含む線状高分子を、ヒドロキシアルキルアクリレートおよびヒドロキシアルキルメタクリレートなどの水酸基を有するアクリル化合物またはメタクリル化合物によりハーフエステル化した樹脂も使用することができる。
透明樹脂の前駆体であるモノマーおよび/またはオリゴマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、トリシクロデカニルアクリレート、トリシクロデカニルメタクリレート、メラミンアクリレート、メラミンメタクリレート、エポキシアクリレートおよびエポキシメタクリレートなどのアクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステル;アクリル酸、メタクリル酸、スチレン、酢酸ビニル、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−ヒドロキシメチルアクリルアミド、N−ヒドロキシメチルメタクリルアミド、アクリロニトリル、またはそれらの2種以上を含んだ混合物を使用することができる。
着色組成物を紫外線などの光を照射することによって硬化する場合、着色組成物には例えば光重合開始剤を添加する。
光重合開始剤としては、例えば、4−フェノキシジクロロアセトフェノン、4−t−ブチル−ジクロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、および2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オンなどのアセトフェノン系光重合開始剤;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテルおよびベンジルジメチルケタールなどのベンゾイン系光重合開始剤;ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、アクリル化ベンゾフェノン、および4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイドなどのベンゾフェノン系光重合開始剤;チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、および2,4−ジイソプロピルチオキサントンなどのチオキサントン系光重合開始剤;2,4,6−トリクロロ−s−トリアジン、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−トリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−ピペロニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−スチリル−s−トリアジン、2−(ナフト−1−イル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メトキシ−ナフト−1−イル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4−トリクロロメチル−(ピペロニル)−6−トリアジン、および2,4−トリクロロメチル(4’−メトキシスチリル)−6−トリアジンなどのトリアジン系光重合開始剤;ボレート系光重合開始剤;カルバゾール系光重合開始剤;イミダゾール系光重合開始剤、またはそれらの2種以上を含んだ混合物を使用することができる。
光重合開始剤は、着色組成物において、顔料100重量部に対して、例えば5乃至200重量部、好ましくは10乃至150重量部の量で使用する。
光重合開始剤とともに増感剤を使用してもよい。
増感剤としては、α−アシロキシエステル、アシルフォスフィンオキサイド、メチルフェニルグリオキシレート、ベンジル、9,10−フェナンスレンキノン、カンファーキノン、エチルアンスラキノン、4,4’−ジエチルイソフタロフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノンおよび4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノンなどの化合物を使用することができる。
増感剤は、光重合開始剤100重量部に対して、例えば0.1乃至60重量部の量で使用することができる。
着色組成物は、多官能チオールなどの連鎖移動剤をさらに含有していてもよい。
多官能チオールは、チオール基を2個以上有する化合物である。多官能チオールとしては、例えば、ヘキサンジチオール 、デカンジチオール 、1,4−ブタンジオールビスチオプロピオネート、1,4−ブタンジオールビスチオグリコレート、エチレングリコールビスチオグリコレート、エチレングリコールビスチオプロピオネート、トリメチロールプロパントリスチオグリコレート、トリメチロールプロパントリスチオプロピオネート、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレート、ペンタエリスリトールテトラキスチオプロピオネート、トリメルカプトプロピオン酸トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、1,4−ジメチルメルカプトベンゼン、2、4、6−トリメルカプト−s−トリアジン、2−(N,N−ジブチルアミノ)−4,6−ジメルカプト−s−トリアジン、またはそれらの2種以上を含んだ混合物を使用することができる。
多官能チオールは、着色組成物において、顔料100重量部に対して、例えば0.2乃至150重量部、好ましくは0.2乃至100重量部の量で使用する。
着色組成物は、溶剤をさらに含有していてもよい。溶剤を使用すると、顔料の分散性を向上させることができ、それゆえ、支持体110上に着色組成物を乾燥膜厚が例えば0.2乃至5μmとなるように塗布することが容易になる。
溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、ジエチルケトン、アセトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、およびシクロヘキサノンなどのケトン類;エチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、およびジプロピレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル系溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸−n−プロピル、酢酸イソプロピル、および酢酸n−ブチルなどのエステル系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、およびプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのセルソルブ系溶剤;メタノール、エタノール、イソ−プロパノール、n−プロパノール、イソ−ブタノール、n−ブタノール、およびアミルアルコールなどのアルコール系溶剤;ベンゼン、トルエン、およびキシレンなどのBTX系溶剤;ヘキサン、ヘプタン、オクタン、およびシクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素系溶剤などが挙げられる。
さらに、テレピン油、D−リモネン、およびピネンなどのテルペン系炭化水素油;ミネラルスピリット、スワゾール#310(コスモ松山石油(株))、およびソルベッソ#100(エクソン化学(株))などのパラフィン系溶剤;四塩化炭素、クロロホルム、トリクロロエチレン、およびジクロロメタンなどのハロゲン化脂肪族炭化水素系溶剤;クロロベンゼンなどのハロゲン化芳香族炭化水素系溶剤;およびカルビトール系溶剤等が挙げられる。
また、アニリン、トリエチルアミン、ピリジン、酢酸、アセトニトリル、二硫化炭素、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、およびN−メチルピロリドンなどの溶剤を用いることもできる。なかでも、ケトン類あるいはセロソルブ系溶剤が好ましい。これらの溶剤は、1種でまたは2種以上の混合溶剤として使用することができる。
溶剤は、着色組成物において、顔料100重量部に対して、例えば800乃至4000重量部、好ましくは1000乃至2500重量部の量で使用する。
着色組成物は、例えば、1種以上の顔料を、必要に応じて上記光重合開始剤などとともに、顔料担体および有機溶剤中に、三本ロールミル、二本ロールミル、サンドミル、ニーダおよびアトライタなどの分散装置を用いて微細に分散させることにより製造することができる。2種以上の顔料を含む着色組成物は、異なる顔料を含んだ分散体を調製し、それら分散体を混合することにより製造してもよい。
顔料を顔料担体および有機溶剤中に分散させる際には、樹脂型顔料分散剤、界面活性剤および色素誘導体などの分散助剤を使用することができる。分散助剤は、顔料の分散性を向上させ、分散後の顔料の再凝集を抑制する。したがって、分散助剤を用いて顔料を顔料担体および有機溶剤中に分散させてなる着色組成物を用いた場合には、透明性に優れたカラーフィルタが得られる。
分散助剤は、着色組成物において、顔料100重量部に対して、例えば0.1乃至40重量部、好ましくは0.1乃至30重量部の量で使用する。
樹脂型顔料分散剤は、顔料に吸着する性質を有する顔料親和性部位と、顔料担体と相溶性のある部位とを含んでいる。樹脂型顔料分散剤は、顔料に吸着して顔料の顔料担体への分散性を安定化する。
樹脂型顔料分散剤としては、例えば、ポリウレタン、ポリアクリレートなどのポリカルボン酸エステル、不飽和ポリアミド、ポリカルボン酸、ポリカルボン酸アミン塩、ポリカルボン酸部分アミン塩、ポリカルボン酸アンモニウム塩、ポリカルボン酸アルキルアミン塩、ポリシロキサン、長鎖ポリアミノアマイドリン酸塩および水酸基含有ポリカルボン酸エステル、これらの変性物、ポリ(低級アルキレンイミン)と遊離カルボキシル基を有するポリエステルとの反応により形成されたアミドおよびその塩などの油性分散剤、アクリル酸−スチレン共重合体、メタクリル酸−スチレン共重合体、アクリル酸−アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸−メタクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸−アクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、ポリビニルアルコールおよびポリビニルピロリドンなどの水溶性樹脂もしくは水溶性高分子化合物、ポリエステル類、変性ポリアクリレート類、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド付加化合物、燐酸エステル類、またはそれらの2種以上を含んだ混合物を使用することができる。
界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、スチレン−アクリル酸共重合体のアルカリ塩、アルキルナフタリンスルホン酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸モノエタノールアミン、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、ラウリル硫酸アンモニウム、ステアリン酸モノエタノールアミン、ステアリン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、スチレン−アクリル酸共重合体のモノエタノールアミンおよびポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルなどのアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレートおよびポリエチレングリコールモノラウレートなどのノニオン性界面活性剤、アルキル4級アンモニウム塩およびそれらのエチレンオキサイド付加物などのカオチン性界面活性剤、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタインなどのアルキルベタインおよびアルキルイミダゾリンなどの両性界面活性剤、またはそれらの2種以上を含んだ混合物を使用することができる。
色素誘導体は、有機色素に置換基を導入した化合物である。色素誘導体は、使用する顔料と色相が近いことが好ましいが、添加量が少なければ色相が異なっていてもよい。用語「有機色素」は、一般に色素とは呼ばれている化合物に加え、一般に色素とは呼ばれていないナフタレン系およびアントラキノン系化合物などの淡黄色の芳香族多環化合物を包含している。色素誘導体としては、例えば、特開昭63−305173号公報、特公昭57−15620号公報、特公昭59−40172号公報、特公昭63−17102号公報、または特公平5−9469号公報に記載されているものを使用できる。特に、塩基性基を有する色素誘導体は、顔料の分散性を高める効果が大きい。着色組成物は、1種の色素誘導体を含んでいてもよく、複数の色素誘導体を含んでいてもよい。
着色組成物には、その粘度の経時的安定性を高めるために貯蔵安定剤を添加してもよい。貯蔵安定剤としては、例えば、ベンジルトリメチルクロライド、ジエチルヒドロキシアミンなどの4級アンモニウムクロライド、乳酸およびシュウ酸などの有機酸、その有機酸のメチルエーテル、t−ブチルピロカテコール、テトラエチルホスフィンおよびテトラフェニルフォスフィンなどの有機ホスフィン、亜リン酸塩、またはそれらの2種以上を含んだ混合物を使用することができる。
貯蔵安定剤は、着色組成物において、顔料100重量部に対して、例えば0.1乃至10重量部の量で含有させる。
着色組成物には、基板との密着性を高めるために、シランカップリング剤などの密着向上剤を添加してもよい。
シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルエトキシシラン、およびビニルトリメトキシシランなどのビニルシラン類;γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランなどのアクリルシラン類およびメタクリルシラン類;β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、およびγ−グリシドキシプロピルトリエトキシシランなどのエポキシシラン類;N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジエトキシシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、およびN−フェニル−γ−アミノプロピルトリエトキシシランなどのアミノシラン類;γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、およびγ−メルカプトプロピルトリエトキシシランなどのチオシラン類;またはそれらの2種以上を含んだ混合物を使用することができる。
シランカップリング剤は、着色組成物において、顔料100重量部に対して、例えば0.01乃至100重量部の量で含有させる。
着色組成物は、例えば、グラビアオフセット用印刷インキ、水無しオフセット印刷インキ、シルクスクリーン印刷用インキ、インキジェット印刷用インキ、または溶剤現像型もしくはアルカリ現像型着色レジストの形態で調製することができる。着色レジストは、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂または感光性樹脂と、モノマーと、光重合開始剤と、有機溶剤とを含有する組成物中に色素を分散させたものである。
顔料は、着色組成物の全固形分100重量部に対して、例えば5乃至70重量部、好ましくは20乃至50重量部の量で用いる。なお、着色組成物の残りの固形分の多くは、顔料担体が含んでいる樹脂バインダである。
着色組成物を成膜に使用する前に、遠心分離、焼結フィルタおよびメンブレンフィルタなどの精製装置によって、着色組成物から、例えば5μm以上の粒子、好ましくは1μm以上の粒子、より好ましくは0.5μm以上の粒子を除去してもよい。
着色層120a乃至120cの各々は、例えば、印刷法によって形成することができる。印刷法によると、着色組成物の印刷と乾燥とを行なうことにより、着色層120a乃至120cの各々を形成することができる。したがって、印刷法は、低コストで量産性に優れている。しかも、近年の印刷技術の発展により、高い寸法精度および平滑度を有する微細パターンの印刷を行なうことができる。
印刷法を利用する場合、着色組成物が印刷版またはブランケット上で乾燥および固化を生じないように着色組成物の組成を設計する。また、印刷法では、印刷機内での着色組成物の流動性を最適化することが重要である。したがって、着色組成物に分散剤や耐湿顔料を添加して、その粘度を調整してもよい。
着色層120a乃至120cの各々は、フォトリソグラフィー法を利用して形成してもよい。フォトリソグラフィー法によれば、カラーフィルタ層120を、印刷法と比較してより高い精度で形成することができる。
この場合、まず、溶剤現像型またはアルカリ現像型着色レジストとして調製した着色組成物を、支持体110上に塗布する。この塗布には、スプレーコート、スピンコート、スリットコートおよびロールコートなどの塗布方法を利用する。この塗膜は、乾燥膜厚が例えば0.2乃至10μmとなるように形成する。
次いで、この塗膜を乾燥させる。塗布膜の乾燥には、例えば、減圧乾燥機、コンベクションオーブン、IRオーブンまたはホットプレートを利用する。塗膜の乾燥は、省略することができる。
続いて、塗膜に、フォトマスクを介して紫外線を照射する。すなわち、塗膜をパターン露光に供する。
その後、塗膜を溶剤もしくはアルカリ現像液に浸漬させるかまたは塗膜に現像液を噴霧する。これにより、塗膜から可溶部を除去して、着色層120aをレジストパターンとして得る。
さらに、これと同様の手順で、着色層120bおよび120cを順次形成する。以上のようにして、カラーフィルタ層120を得る。なお、この方法では、着色レジストの重合を促進するために、熱処理を施してもよい。
このフォトリソグラフィー工程では、アルカリ現像液として、例えば、炭酸ナトリウム水溶液または水酸化ナトリウム水溶液を使用することができる。あるいは、アルカリ現像液として、ジメチルベンジルアミンおよびトリエタノールアミンなどの有機アルカリを含んだ液を使用してもよい。
現像液には、消泡剤および界面活性剤などの添加剤を添加してもよい。現像には、例えば、シャワー現像法、スプレー現像法、ディップ現像法またはパドル現像法を利用することができる。
露光感度を高めるために、以下の処理を追加してもよい。すなわち、着色レジストの第1塗膜を乾燥させた後、この第1塗膜の上に、水溶性またはアルカリ水溶性樹脂、例えばポリビニルアルコールまたは水溶性アクリル樹脂を塗布する。そして、この第2塗膜を乾燥させた後に、上記のパターン露光を行なう。第2塗膜は、第1塗膜における重合が酸素によって阻害されるのを防止する。したがって、より高い露光感度を達成できる。
カラーフィルタ層120は、他の方法で形成してもよい。例えば、インキジェット法、電着法または転写法を利用して形成してもよい。インキジェット法によってカラーフィルタ層120を形成する場合、例えば、支持体110上に予め遮光性離画壁を形成しておき、この遮光性離画壁によって区画された領域に向けてノズルからインキを吐出することにより各着色層を得る。電着法によってカラーフィルタ層120を形成する場合、支持体110上に予め透明導電膜を形成しておき、着色組成物からなるコロイド粒子の電気泳動によって着色組成物を透明導電膜上に堆積させることにより各着色層を得る。転写法を利用する場合、剥離性の転写ベースシートの表面に予めカラーフィルタ層120を形成しておき、このカラーフィルタ層120をベースシートから支持体110上に転写する。
次に、第1の固体化液晶層130の形成方法について説明する。
図3および図4は、一例として、領域130a乃至130cを有する固体化液晶層を形成する方法について概略的に示した断面図である。
第1の固体化液晶層130は、例えば、カラーフィルタ層120上に、光重合性または光架橋性のサーモトロピック液晶材料を含んだ液晶材料層130’を成膜し、この液晶材料層130’をパターン露光と熱処理とに供することによって得る。
液晶材料層130’は、例えば、カラーフィルタ層120上に、サーモトロピック液晶化合物を含んだコーティング液を塗布し、必要に応じて塗膜を乾燥させることにより得られる。液晶材料層は、例えば、サーモトロピック液晶材料のメソゲンが、支持体110の主面に平行な一方向に配向した状態となるように形成する。
サーモトロピック液晶化合物としては、例えば、アルキルシアノビフェニル、アルコキシビフェニル、アルキルターフェニル、フェニルシクロヘキサン、ビフェニルシクロヘキサン、フェニルビシクロヘキサン、ピリミジン、シクロヘキサンカルボン酸エステル、ハロゲン化シアノフェノールエステル、アルキル安息香酸エステル、アルキルシアノトラン、ジアルコキシトラン、アルキルアルコキシトラン、アルキルシクロヘキシルトラン、アルキルビシクロヘキサン、シクロヘキシルフェニルエチレン、アルキルシクロヘキシルシクロヘキセン、アルキルベンズアルデヒドアジン、アルケニルベンズアルデヒドアジン、フェニルナフタレン、フェニルテトラヒドロナフタレン、フェニルデカヒドロナフタレン、これらの誘導体、それら化合物のアクリレート、またはそれら化合物のメタクリレートなどが挙げられる。こうした液晶化合物は、単独でまたは2種以上混合して使用することができる。
コーティング液には、サーモトロピック液晶化合物に加え、例えば、溶剤、光重合開始剤、増感剤、キラル剤などの成分を加えることができる。こうした成分の含有量は、前述のサーモトロピック液晶化合物を含んだ液晶材料層が液晶性を失なわない範囲内にとどめることが望まれる。
溶剤としては、前述の着色組成物に用いる化合物と同様のものを使用することができ、コーティング液中の液晶化合物100重量部に対して100乃至3000重量部、好ましくは200乃至1000重量部を用いることができる。
光重合開始剤としては、前述の着色組成物に用いる化合物と同様のものを使用することができる。その含有量は、コーティング液中における液晶化合物100重量部に対して0.1乃至30重量部が好ましく、0.3乃至10重量部がより好ましい。
増感剤を光重合開始剤と併用してもよく、これには、前述の着色組成物に用いる化合物と同様のものを使用することができる。増感剤は、光重合開始剤100重量部に対して0.1乃至60重量部の量で含有させることができる。
キラル剤としては、単独でコレステリック相を示す化合物、または単独ではコレステリック相を示さないが、前述の液晶化合物と混合されることによってコレステリック相を示す光学活性有機化合物を用いる。光学活性なキラル剤としては、光学活性エステル誘導体、光学活性シアノビフェニル誘導体、光学活性ビスフェノ一ル誘導体などのネマチック液晶類似化合物を用いることができる。キラル剤は、コーティング液中の液晶性化合物100重量部に対して1乃至40重量部、好ましくは2乃至15重量部の量で用いることができる。
コーティング液には、さらに必要に応じて、熱重合開始剤、重合禁止剤、界面活性剤、樹脂、多官能モノマーおよび/またはオリゴマー、連鎖移動剤、貯蔵安定剤および密着向上剤等を、適量添加することができる。
熱重合開始剤としては、例えば、過酸化ベンゾイル(BPO)、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサネート(PBO)、ジ−t−ブチルパーオキシド(PBD)、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート(PBI)、およびn−ブチル4,4,ビス(t−ブチルパーオキシ)バラレート(PHV)などのような過酸化物開始剤;2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロパン)、2,2’−アゾビス(2−メチルブタン)、2,2’−アゾビス(2−メチルペンタン)、2,2’−アゾビス(2,3−ジメチルブタン)、2,2’−アゾビス(2−メチルヘキサン)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルペンタン)、2,2’−アゾビス(2,3,3−トリメチルブタン)、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、3,3’−アゾビス(3−メチルペンタン)、3,3’−アゾビス(3−メチルヘキサン)、3,3’−アゾビス(3,4−ジメチルペンタン)、3,3’−アゾビス(3−エチルペンタン)、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、ジエチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、およびジ−tert−ブチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)などのアゾ系開始剤などを使用することができる。
重合禁止剤としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、3−t−ブチル−4−ヒドロキシアニソール、2−t−ブチル−4−ヒドロキシアニソール、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、スチレン化フェノール、スチレン化p−クレゾール、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、テトラキス〔メチレン−3−(3’,5’−ジ−1−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、オクタデシル3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオネート)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、2,2’−ジヒドロキシ−3,3’−ジ(α−メチルシクロヘキシル)−5,5’−ジメチルジフェニルメタン、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3’,5’−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾイル)イソシアヌレート、ビス〔2−メチル−4−(3−n−アルキルチオプロピオニルオキシ)−5−t−ブチルフェニル〕スルフィド、1−オキシ−3−メチル−イソプロピルベンゼン、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−ノニルフェノール)、アルキル化ビスフェノール、2,5−ジ−t−アミルハイドロキノン、ポリブチル化ビスフェノールA、ビスフェノールA、2,6−ジ−t−ブチル−p−エチルフェノール、2,6−ビス(2’−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5’−メチル−ベンジル)−4−メチルフェノール、1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌレート、テレフタロイルージ(2,6−ジメチル−4−t−ブチル−3−ヒドロキシベンジルスルフィド)、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−α−ジメチルアミノ−p−クレゾール、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール)、トルエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、ヘキサメチレングリコール−ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシトルエン、6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリン)−2,4−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシナミド)、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル−リン酸ジエチルエステル、2,4−ジメチル−6−t−ブチルフェノール、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(2−メチル−6−t−ブチルフェノール)、トリス〔β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル−オキシエチル〕イソシアヌレート、2,4,6−トリブチルフェノール、ビス〔3,3−ビス(4’−ヒドロキシ−3’−t−ブチルフェニル)−ブチリックアシッド〕グリコールエステル、4−ヒドロキシメチル−2,6−ジ−t−ブチルフェノール、およびビス(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルベンジル)サルファイドなどのフェノール系禁止剤が挙げられる。
さらに、N−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合物、およびジアリール−p−フェニレンジアミンなどのアミン系禁止剤;ジラウリル・チオジプロピオネート、ジステアリル・チオジプロピオネート、および2−メルカプトベンズイミダノールなどの硫黄系禁止剤;ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイトなどのリン系禁止剤などの重合禁止剤を用いることもできる。
界面活性剤、樹脂、多官能モノマーおよび/またはオリゴマー、連鎖移動剤、貯蔵安定剤および密着向上剤等は、前記した着色組成物に用いる化合物と同様のものを使用することができる。
コーティング液の塗布には、例えば、スピンコート法、スリットコート法、凸版印刷、スクリーン印刷、平版印刷、反転印刷およびグラビア印刷などの印刷法、これらの印刷法にオフセット方式を組み合わせた方法、インキジェット法、またはバーコート法を利用することができる。
液晶材料層130’は、例えば、均一な厚さを有している連続膜として形成する。上述した方法によれば、塗布面が十分に平坦である限り、液晶材料層130’を均一な厚さを有している連続膜として形成することができる。
コーティング液の塗布に先立って、カラーフィルタ層120の表面に、ラビングなどの配向処理を施してもよい。あるいは、コーティング液の塗布に先立って、カラーフィルタ層120上に、液晶化合物の配向を規制する配向膜を形成してもよい。この配向膜は、例えば、カラーフィルタ層120上にポリイミドなどの透明樹脂層を形成し、この透明樹脂層にラビングなどの配向処理を施すことにより得られる。この配向膜は、光配向技術を利用して形成してもよい。
以上のようにして得られた第1の液晶材料層130’に対し、露光工程を行なう。すなわち、第1の液晶材料層130’の複数の領域に、異なる条件となるように光を照射する。異なる条件とは、露光時間・照度・輝線等のうちいずれか一つ、あるいはこれらの組み合わせが相違していることを指す。通常、それぞれの領域に対して異なる照射エネルギー、すなわち異なる露光量となるように光を照射するが、材料によっては相反則不軌の性質がみられる。その場合には、必ずしも露光量を異ならせる必要はない。例えば、ある領域には高照度で短時間、別の領域には低照度で長時間露光を行ない、結果として双方の領域の露光量(照度×露光時間)が同じであってもよい。
以下、領域によって露光量を異ならせる場合を例に挙げて説明する。
例えば、図3に示すように、液晶材料層130’のうち領域130aに対応した領域130a’には、最大の露光量で光を照射する。液晶材料層のうち領域130bに対応した領域130b’には、領域130a’と比較してより小さな露光量で光を照射する。液晶材料層のうち領域130cに対応した領域130c’には、領域130b’と比較してさらにより小さな露光量で光を照射する。これにより、液晶材料層130’の光を照射した部分で、メソゲンが形成している配向構造を維持させたまま、サーモトロピック液晶化合物の重合または架橋を生じさせる。
サーモトロピック液晶化合物が重合または架橋した反応生成物では、そのメソゲンは固定化されている。露光量が最大の領域では、サーモトロピック液晶化合物の反応生成物の含有率が最も高く、未反応のサーモトロピック液晶化合物の含有率が最も低い。露光量が小さくなるにしたがって、反応生成物の含有率はより低くなり、未反応のサーモトロピック液晶化合物の含有率はより高くなる。
その結果、露光量がより大きな領域では、メソゲンはより高い割合で固定化され、露光量がより小さな領域では、メソゲンはより低い割合で固定化される。そして、露光量がゼロの領域では、メソゲンは固定化されない。
上述したように、サーモトロピック液晶化合物を不均一に重合または架橋させることができれば、露光工程はどのような方法で行なってもよい。
例えば、この露光工程では、フォトマスクを用いた露光を複数回行なってもよい。あるいは、ハーフトーンマスク、グレイトーンマスクまたは波長制限マスクを用いた露光を行なうこともできる。フォトマスクを使用する代わりに、光束を液晶材料層上で走査させてもよい。さらには、これらを組み合わせてもよい。
露光工程を完了した後、現像工程を行なう。すなわち、液晶材料層130’を、サーモトロピック液晶化合物が液晶相から等方相へと変化する相転移温度と等しい温度以上に加熱する。未反応化合物であるサーモトロピック液晶化合物のメソゲン部位は固定されていない。それゆえ、液晶材料層130’を相転移温度以上に加熱すると、未反応化合物のメソゲンの配向の程度が低下する。例えば、未反応化合物のメソゲンは、液晶相から等方相へと変化する。他方、サーモトロピック液晶化合物の重合または架橋した反応生成物では、メソゲンは固定されている。
したがって、露光工程における露光量がより小さな領域では、露光工程における露光量がより大きな領域と比較してメソゲンの配向の程度がより低くなる。例えば、図4に示されるように、領域130a’に比べて、領域130b’は配向の程度が低くなり、領域130c’は配向の程度がさらに低くなる。そして、露光工程において露光しなかった領域では、この熱処理によってメソゲンの配向構造が消失する。
その後、定着工程を実施する。すなわち、未反応のサーモトロピック液晶化合物について、メソゲンの配向の程度を低下させたまま重合および/または架橋させる。
定着工程は、例えば、図5に示すように基板全体に光L2を照射して行なう。すなわち、サーモトロピック液晶化合物が等方相から液晶相へと変化する相転移温度よりも高い温度に液晶材料層130’を維持したまま、液晶材料層130’の全体に光L2を照射する。光L2は、未反応化合物のほぼ全てが重合および/または架橋して反応を生じるのに十分な露光量とする。これにより、未反応化合物の重合または架橋を生じさせ、配向の程度を消失あるいは低下させたままメソゲンを固定化する。以上のようにして、第1の固体化液晶層130を得る。
なお、ある液晶化合物は、等方相から液晶相へと変化する第1相転移温度が、液晶相から等方相へと変化する第2相転移温度と比較してより低い。それゆえ、特定の場合には、定着工程における液晶材料層130’の温度は、現像工程の加熱温度と比較してより低くてもよい。ただし、通常は、簡便性の観点で、定着工程における液晶材料層130’の温度は、第1相転移温度以上とする。
定着工程での露光においては、光の種類等は特に限定されない。未反応のサーモトロピック液晶化合物の重合および/または架橋を誘起できれば、任意の条件で露光を行なうことができる。
定着工程における光照射では、液晶材料層130’の全体にわたって露光量が等しくてもよい。この場合、微細なパターンが設けられたフォトマスクを使用する必要がない。したがって、工程を簡略化することができる。
定着工程は、他の方法で行なってもよい。
例えば、未反応化合物、すなわちサーモトロピック液晶化合物が第1相転移温度よりも高い重合および/または架橋温度に加熱することによって重合および/または架橋する材料である場合、光を照射する代わりに、加熱を行なってもよい。具体的には、光を照射する代わりに、液晶材料層130’を重合および/または架橋温度以上に加熱して、未反応化合物を重合および/または架橋させる。これにより、第1の固体化液晶層130を得る。なお、現像工程における加熱温度は、例えば、第1相転移温度以上でありかつ重合および/または架橋温度未満とする。
あるいは、定着工程において、光照射と加熱とを順次行なってもよい。このように光と熱とを組み合わせると、未反応化合物の重合および/または架橋をより確実に進行させることができる。それゆえ、より強固な第1の固体化液晶層130を得ることができる。
ある温度に加熱することによって、未反応化合物が重合および/または架橋する材料である場合、現像工程における加熱温度は、それが重合および/または架橋する温度以上であってもよい。すなわち現像工程と定着工程とを同時に行なってもよい。ただし、この場合、サーモトロピック液晶化合物の重合および/または架橋は、メソゲンの配向の程度の低下と同時に進行する。そのため、製造条件が第1の固体化液晶層130の光学特性に及ぼす影響が比較的大きい。
続いて、第2の固体化液晶層140の形成方法について説明する。
図6および図7は、一例として、領域140a乃至140cを有する固体化液晶層を形成する方法について概略的に示した断面図である。
第2の固体化液晶層140は、例えば、第1の固体化液晶層130上に、光重合性または光架橋性のサーモトロピック液晶材料を含んだ液晶材料層140’を成膜し、この液晶材料層140’をパターン露光と熱処理とに供することによって得る。液晶材料層は、例えば、メソゲンが支持体110の主面に平行であり、かつ螺旋を巻いた配向状態となるように形成する。
液晶材料層140’は、例えば、第1の固体化液晶層130上に、サーモトロピック液晶化合物を含んだコーティング液を塗布し、必要に応じて塗膜を乾燥させることにより得られる。
第2の固体化液晶層140の材料として用いるコーティング液としては、第1の固体化液晶層130の項で説明したコーティング液と同様のものを選択することができる。ただし、第1の固体化液晶層130と第2の固体化液晶層140とでは、求められる光学特性、すなわち屈折率異方性の態様が異なるため、液晶材料層におけるメソゲンの配向の状態も別のものとなる。したがって、コーティング液の材料として選択されるサーモトロピック液晶化合物、溶剤、その他添加物は、第1の固体化液晶層130と第2の固体化液晶層140とでは、典型的には少なくとも一部が異なっている。
第2の固体化液晶層140の成膜工程におけるその他の条件は、第1の固体化液晶層130における場合とほぼ同様とすることができる。
次に、露光工程を行なう。第2の固体化液晶層140の露光工程についても、第1の固体化液晶層130とほぼ同様である。すなわち、液晶材料層の複数の領域に、異なる条件となるように光を照射する。「異なる条件」の定義も第1の固体化液晶層130と同じである。
露光工程において、領域によって露光量を異ならせる場合の一例を、図6を参照して説明する。
例えば、図6に示すように、液晶材料層140’のうち領域140cに対応した領域140c’には、最大の露光量で光を照射する。液晶材料層140’のうち領域140bに対応した領域140b’には、領域140c’と比較してより小さな露光量で光を照射する。液晶材料層140’のうち領域140aに対応した領域140a’には、領域140b’と比較してさらにより小さな露光量で光を照射する。これにより、液晶材料層の光を照射した部分で、メソゲンが形成している配向構造を維持させたまま、サーモトロピック液晶化合物の重合または架橋を生じさせる。
第2の固体化液晶層140形成において露光工程をこのように行なう効果もまた、第1の固体化液晶層130と同じである。
露光工程を終了した後、現像工程を行なう。すなわち、液晶材料層140’を、サーモトロピック液晶化合物が液晶相から等方相へと変化する相転移温度と等しい温度以上に加熱する。ここでの作用も、第1の固体化液晶層130における場合と同じである。
例えば、図7に示されるように、領域140c’に比べて、領域140b’は配向の程度が低くなり、領域140a’は配向の程度がさらに低くなる。そして、露光工程において露光しなかった領域では、この熱処理によってメソゲンの配向構造が消失する。
その後、定着工程を実施する。すなわち、未反応のサーモトロピック液晶化合物について、メソゲンの配向の程度を低下させたまま重合および/または架橋させる。第2の固体化液晶層140の定着工程の具体的方法や条件についても、第1の固体化液晶層130とほぼ同じである。以上のようにして、第2の固体化液晶層140を得る。
図3乃至図7を参照して説明したように、本発明の位相差板は、ウェット工程なしに位相差のパターンが形成される。ウェット工程によりパターンを形成するには、溶剤あるいはアルカリ性水溶液等、液晶材料層を溶解する能力を有する液体が用いられる。例えば、該液体に液晶材料層を浸漬することによって、あるいは、スプレーなどにより該液体を液晶材料層に噴霧することによって、未硬化部を除去してパターン化された固体化液晶層が形成される。こうして得られる固体化液晶層は、複屈折率が互いに等しく、かつ厚みが互いに異なる複数の領域を含んでいる。厚みが互いに異なっているので、各領域は位相差が互いに異なっている。
しかしながら、液体を用いたウェット工程は、その製造条件が最終製品の光学的特性に与える影響は極めて大きい。それゆえ、ウェット工程を含んだ方法によると、光学的特性の目標値からのずれを生じ易い。しかも、領域によって固体化液晶層の厚みが異なっているので、複数の固体化液晶層を積層することは困難である。
これに対して本発明の方法では、露光工程およびそれよりも後にウェット工程は行なわない。それゆえ、ウェット工程に起因して屈折率異方性が目標値からずれるのを防止することができ、また、膜厚が均一な固体化液晶層を得ることも可能になる。
なお、複屈折率と露光工程における露光条件、例えば露光量とは、必ずしも比例関係にある訳ではない。しかしながら、材料および露光条件が一定のもとでは、複屈折率の再現性は高い。それゆえ、ある複屈折率を達成するのに必要な条件、例えば露光量を見出すのは容易であり、また、安定した製造を行なうことも容易である。
図1乃至図7を参照しながら説明した位相差板10、すなわちパネル基板には、様々な変形が可能である。
この位相差板10では、第1の固体化液晶層130面内の複屈折率が互いに異なる領域130a乃至130cを含み、第2の固体化液晶層140は厚み方向の複屈折率が互いに異なる領域140a乃至140cを含んでいる。第1の固体化液晶層130および第2の固体化液晶層140は、それぞれ領域130a乃至130cおよび領域140a乃至140cとは屈折率異方性が異なる1つ以上の領域をさらに含んでいてもよい。例えば、半透過型液晶表示装置では、赤、緑および青色画素の各々が、透過部と反射部とを含んでいる。透過部と反射部とには、異なる光学的設計を採用する必要がある。それゆえ、固体化液晶層130のうち、赤、緑および青色画素に対応した部分の各々が、屈折率異方性が互いに異なる2つ以上の領域を含んでいてもよい。
また、カラーフィルタ層120は前述の着色層以外に、黒色離画壁を含んでいてもよい。黒色離画壁は、例えば、着色層120a乃至120cを互いに離間するように設けられる。
位相差板10からカラーフィルタ層120を省略してもよい。例えば、液晶表示装置では、その一方の基板がカラーフィルタ層と位相差層との双方を含んでいてもよいが、液晶表示装置の一方の基板がカラーフィルタ層を含み、他方の基板が位相差層を含んでいてもよい。後者の場合、位相差板10は、カラーフィルタ層120を含んでいる必要はない。ただし、位相差板10がカラーフィルタ層120と固体化液晶層130との双方を含んでいる場合、貼りあわせの際に、カラーフィルタ層120と固体化液晶層130とを位置合わせする必要がない。
第1の固体化液晶層130および第2の固体化液晶層140は、支持体110とカラーフィルタ層120との間に介在させてもよい。すなわち、支持体110/第1の固体化液晶層130/第2の固体化液晶層140/カラーフィルタ層120が、この順に積層された構成としてもよい。
図8は、一変形例にかかる位相差板を概略的に示す断面図である。この位相差板10は、第1の固体化液晶層130および第2の固体化液晶層140が支持体110とカラーフィルタ層120との間に介在していること以外は、図1および図2を参照しながら説明した位相差板10と同様である。
この構造を採用した場合、例えば位相差板10を含んだ液晶表示装置において、第1の固体化液晶層130および第2の固体化液晶層140は、カラーフィルタ層120から液晶層中への不純物の混入を抑制しない。しかしながら、この構造を採用した場合、カラーフィルタ層120が、固体化液晶層130を形成するための露光工程および熱処理工程に晒されることがない。それゆえ、この構造を採用した場合、図1および図2に示す構造を採用した場合と比較して、上記の露光工程における光や現像・定着工程における熱に起因したカラーフィルタ層120の劣化は生じ難い。
また、この構造を採用した場合、支持体110上に第1の固体化液晶層130を形成することができる。したがって、完全には平面とし難いカラーフィルタ層120上に第1の固体化液晶層130を形成する場合と比較して、設計通りの性能を有する第1の固体化液晶層130をより容易に得ることができる。
図示していないが、カラーフィルタ層120は、第1の固体化液晶層130と第2の固体化液晶層140との間に介在させてもよい。すなわち、支持体110/第1の固体化液晶層130/カラーフィルタ層120/第2の固体化液晶層140が、この順に積層された構成としてもよい。支持体110/第1の固体化液晶層130/第2の固体化液晶層140が、この順に、直接または他の層を介して積層されてさえいれば、カラーフィルタ層と固体化液晶層とは任意の位置関係とすることができる。
上述した位相差板10は、様々な用途に利用可能である。例えば、位相差板10は、液晶表示技術に代表される表示技術に利用可能である。
図9は、図1および図2に示す位相差板を用いて製造可能な液晶表示装置の一例を概略的に示す断面図である。
図9に示す液晶表示装置は、アクティブマトリクス駆動方式を採用した透過型液晶表示装置である。この液晶表示装置は、カラーフィルタ基板10’とアレイ基板20と液晶層30と一対の偏光板40と図示しないバックライトとを含んでいる。
カラーフィルタ基板10’は、上述した位相差板10と対向電極150と配向膜160とを含んでいる。
対向電極150は、第2の固体化液晶層140上に形成された、表示領域の全体にわたって広がった連続膜である。対向電極150は、例えば、上述した透明導電体からなる。
配向膜160は、対向電極150を被覆している。配向膜160は、配向膜は、例えば、対向電極150上にポリイミドなどの透明樹脂層を形成し、この透明樹脂層にラビングなどの配向処理を施すことにより得られる。この配向膜160は、光配向技術を利用して形成してもよい。
アレイ基板20は、配向膜160と向き合った基板210を含んでいる。基板210は、ガラス板または樹脂板などの光透過性基板である。
基板210の配向膜160との対向面上には、画素回路(図示せず)と走査線(図示せず)と信号線(図示せず)と画素電極250とが形成されている。画素回路は、各々が薄膜トランジスタなどのスイッチング素子を含んでおり、基板210上でマトリクス状に配列している。走査線は、画素回路の行に対応して配列している。各画素回路の動作は、走査線から供給される走査信号によって制御される。信号線は、画素回路の列に対応して配列している。各画素電極250は、画素回路を介して信号線に接続されている。各画素電極250は、着色層120a乃至120cの何れかと向き合っている。
画素電極250は、配向膜260で被覆されている。配向膜260は、配向膜は、例えば、画素電極250上にポリイミドなどの透明樹脂層を形成し、この透明樹脂層にラビングなどの配向処理を施すことにより得られる。この配向膜260は、光配向技術を利用して形成してもよい。
カラーフィルタ基板10’とアレイ基板20とは、枠形状の接着剤層(図示せず)を介して貼り合わされている。カラーフィルタ基板10’とアレイ基板20と接着剤層とは、中空構造を形成している。
液晶層30は、液晶化合物または液晶組成物からなる。この液晶化合物または液晶組成物は、流動性を有しており、カラーフィルタ基板10’とアレイ基板20と接着剤層とに囲まれた空間を満たしている。カラーフィルタ基板10’とアレイ基板20と接着剤層と液晶層30とは、液晶セルを形成している。本実施形態においては、液晶層30を構成する液晶は、初期状態には垂直配向をしている。「垂直配向」の「垂直」とは厳密な意味ではなく、「略垂直」も含まれる。
偏光板40は、液晶セルの両主面に貼り付けられている。偏光板40は、例えば、それらの透過軸が直交するように配置する。
この液晶表示装置において、第1の固体化液晶層130の領域130a乃至130cは、厚さがほぼ等しく、面内の複屈折率が異なっている。また、同じく、第2の固体化液晶層140の領域140a乃至140cは、厚さがほぼ等しく、厚み方向の複屈折率が異なっている。したがって、130a乃至130cおよび140a乃至140cの複屈折率を最適化することにより、赤、緑および青の各々について、理想的な光学補償を達成することができる。
上述したとおり、位相差板10は、アクティブマトリクス駆動方式を採用した透過型液晶表示装置において利用可能である。この位相差板10は、他の表示装置で利用することも可能である。
例えば、位相差板10は、半透過型液晶表示装置または反射型液晶表示装置において利用してもよい。また、液晶表示装置には、パッシブマトリクス駆動方式などのアクティブマトリクス駆動方式以外の駆動方式を採用してもよい。あるいは、位相差板10は、有機エレクトロルミネッセンス表示装置などの液晶表示装置以外の表示装置において利用してもよい。
更なる利益および変形は、当業者には容易である。それゆえ、本発明は、そのより広い側面において、ここに記載された特定の記載や代表的な態様に限定されるべきではない。したがって、添付の請求の範囲およびその等価物によって規定される本発明の包括的概念の真意または範囲から逸脱しない範囲内で、様々な変形が可能である。
以下、シミュレーションによる光学計算結果の例を挙げて本発明の効果について記載するが、本発明の望ましい構成はこれらに限られるものではない。
計算にあたっては、次に挙げる条件を共通に設定した。
偏光板は、膜厚20μmの偏光子がそれぞれ膜厚80μmの保護層によって挟まれた構造とし、保護層の屈折率は波長によらず、面内方向を1.5005、厚み方向を1.5000とした。偏光板の分光透過率を、図10〜12に示す。図10、11、および12は、それぞれ単体、2枚の平行配置、2枚の垂直配置についての分光透過率である。
支持体として用いるガラス基板は、波長によらず屈折率を1.5、透過率を100%であると仮定した。厚みは0.7mmとした。
カラーフィルタの色特性を、下記表2および3にまとめる。また、カラーフィルタの分光透過率を図13〜15に示す。図13、14、および15は、それぞれ赤色着色層、緑色着色層、および青色着色層についての分光透過率である。屈折率はいずれも波長によらず1.7、厚みは2.0μmとした。
液晶層に用いる液晶の長軸方向および短軸方向の屈折率を、下記表4にまとめる。弾性定数を13.2pN(広がり)・6.5pN(ねじれ)・18.3pN(曲がり)、長軸方向の誘電率を3.1、短軸方向の誘電率を8.3と仮定した。プレチルト角は、極角を89°、方位角は45°・135°・225°・315°の4方向配向分割(マルチドメイン)駆動とした。また、液晶の屈折率波長分散を図16に示す。
位相差層のうち第1の層(以下、A層と称する)は、光重合性液晶が色毎に所定の程度乱されたホモジニアス配向で固定化された状態を仮定した。A層に用いる光重合性液晶の屈折率を、下記表5にまとめる。また、A層の屈折率波長分散を図17に示す。
位相差層のうち第2の層(以下、C層と称する)は、光重合性液晶が色毎に所定の程度乱されたホメオトロピック配向で固定化された状態を仮定した。C層に用いる光重合性液晶の屈折率を、下記表6にまとめる。また、C層の屈折率波長分散を図18に示す。
液晶表示装置の層構成は、視認側から偏光板/ガラス基板/カラーフィルタ層/A層/C層/液晶層/ガラス基板/偏光板とし、液晶層の厚みは3.0μmとした。A層は、面内における遅相軸の方位角を90°とした。C層は、進和軸が厚み方向(膜面に対する垂線方向)と平行な向きであるとした。偏光板は視認側の吸収軸を0°とし、バックライト側の吸収軸を90°とした。
液晶層に印加する電圧が0Vのときを黒表示とし、5Vのときを白表示として、それぞれの極角45°および60°・方位角45°の分光透過率を求め、光源をC光源としてコントラストを算出した。なお、今回想定した液晶セルは上述の通り方位角は45°・135°・225°・315°の4方向配向分割(マルチドメイン)駆動であるため、方位角は45°・135°・225°・315°方向から見た光学特性は同一である。
上述した共通条件のもとで、次のようにシミュレーションを行なった。
(No.1)
A層の膜厚は、いずれの色に対応する領域についても1.28μmとし、C層の膜厚は、いずれの色に対応する領域についても1.70μmとした。基準波長における各領域の複屈折率を、A層およびC層について下記表7にまとめる。コントラストの光学計算を行なったところ、極角45°で1070、極角60°で430であった。
また、(Δn[A]/λd[A])および((2Δn[C]/λd’[C]+Δn[A]/λd[A])/3)を求めた。
各定数の算出にあたっては、着目する領域を第1の領域とし、比較対象となる領域を第2の領域とした。A層における第1の領域の面内複屈折率をΔn[A1]、第2の領域の面内複屈折率をΔn[A2]とし、C層における第1の領域の厚み方向の複屈折率をΔn[C1]、第2の領域の厚み方向の複屈折率をΔn[C2]とした。
同様に、A層における第1の領域の膜厚をd[A1]、第2の領域の膜厚をd[A2]、C層における第1の領域の膜厚をd[C1]、第2の領域の膜厚をd[C2]とした。
A層およびC層の第1の領域が対応する第1の画素で表示される色の基準波長をλ[1]とし、A層およびC層の第2の領域が対応する第2の画素で表示される色の基準波長をλ[2]とした。
以上の定義と下記式(3)および(5)から(Δn[A]/λd[A])が得られ、それに加えて下記式(4)および(6)から((2Δn[C]/λd’[C]+Δn[A]/λd[A])/3)が得られる。No.2以降のシミュレーションにおいても、同様である。
λd[A]=(d[A1]×λ[2])/(d[A2]×λ[1]) (3)
λd’[C]=(d[C1]×λ[1])/(d[C2]×λ[2]) (4)
Δn[A]=Δn[A2]/Δn[A1] (5)
Δn[C]=Δn[C2]/Δn[C1] (6)
算出された(Δn[A]/λd[A])を下記表8に示し、((2Δn[C]/λd’[C]+Δn[A]/λd[A])/3)を下記表9に示す。
また、極角を変化させたときの、方位角45°方向のコントラスト比の変化を図19および図20に示す。
(No.2)
A層の膜厚は、いずれの色に対応する領域についても1.28μmとし、C層の膜厚は、いずれの色に対応する領域についても1.70μmとした。基準波長における各領域の複屈折率を、A層およびC層について下記表10にまとめる。コントラストの光学計算を行なったところ、極角45°で970、極角60°で370であった。
上述と同様の手法により、(Δn[A]/λd[A])および((2Δn[C]/λd’[C]+Δn[A]/λd[A])/3)を求めた。その結果を、下記表11および12にまとめる。
また、極角を変化させたときの、方位角45°方向のコントラスト比の変化を図21および図22に示す。
(No.3)
A層の膜厚は、いずれの色に対応する領域についても1.35μmとし、C層の膜厚は、いずれの色に対応する領域についても1.70μmとした。基準波長における各領域の複屈折率を、A層およびC層について下記表13にまとめる。コントラストの光学計算を行なったところ、極角45°で990、極角60°で390であった。
上述と同様の手法により、(Δn[A]/λd[A])および((2Δn[C]/λd’[C]+Δn[A]/λd[A])/3)を求めた。その結果を、下記表14および15にまとめる。
また、極角を変化させたときの、方位角45°方向のコントラスト比の変化を図23および図24に示す。
(No.4)
A層の膜厚は、いずれの色に対応する領域についても1.28μmとし、C層の膜厚は、いずれの色に対応する領域についても1.70μmとした。基準波長における各領域の複屈折率を、A層およびC層について下記表16にまとめる。コントラストの光学計算を行なったところ、極角45°で960、極角60°で360であった。
上述と同様の手法により、(Δn[A]/λd[A])および((2Δn[C]/λd’[C]+Δn[A]/λd[A])/3)を求めた。その結果を、下記表17および18にまとめる。
また、極角を変化させたときの、方位角45°方向のコントラスト比の変化を図25および図26に示す。
(No,5)
A層の膜厚は、いずれの色に対応する領域についても1.28μmとし、C層の膜厚は、いずれの色に対応する領域についても1.85μmとした。基準波長における各領域の複屈折率を、A層およびC層について下記表19にまとめる。コントラストの光学計算を行なったところ、極角45°で950、極角60°で370であった。
上述と同様の手法により、(Δn[A]/λd[A])および((2Δn[C]/λd’[C]+Δn[A]/λd[A])/3)を求めた。その結果を、下記表20および21にまとめる。
また、極角を変化させたときの、方位角45°方向のコントラスト比の変化を図27および図28に示す。
(No.6)
A層の膜厚は、いずれの色に対応する領域についても1.28μmとし、C層の膜厚は、いずれの色に対応する領域についても1.70μmとした。どちらの層も、屈折率を面内で同一の特性として光学計算を行なった。基準波長における各領域の屈折率を、下記表22にまとめる。コントラストの光学計算を行なったところ、極角45°で650、極角60°で220であった。
上述と同様の手法により、(Δn[A]/λd[A])および((2Δn[C]/λd’[C]+Δn[A]/λd[A])/3)を求めた。その結果を、下記表23および24にまとめる。
また、極角を変化させたときの、方位角45°方向のコントラスト比の変化を図29および図30に示す。
(No.7)
A層の膜厚は、いずれの色に対応する領域についても1.28μmとし、C層の膜厚は、いずれの色に対応する領域についても1.78μmとした。A層について、No,1と同一の特性としつつ、C層の複屈折率については、A層と同様に赤色領域において最も大きく、青色領域において最も小さいとして光学計算を行なった。基準波長における各領域の屈折率を、下記表25にまとめる。コントラストの光学計算を行なったところ、極角45°で600、極角60°で200であった。
上述と同様の手法により、(Δn[A]/λd[A])および((2Δn[C]/λd’[C]+Δn[A]/λd[A])/3)を求めた。その結果を、下記表26および27にまとめる。
また、極角を変化させたときの、方位角45°方向のコントラスト比の変化を図31および図32に示す。
(シミュレーション結果)
上述のNo.1においては、方位角45°・極角45°のコントラストは430であり、方位角45°・極角60°のコントラストは1070である。No.1〜7のなかで、最も優れた結果が得られている。このNo.1の位相差板の方位角45°のコントラストを100として、No.2〜7のコントラストを求め、下記表28にまとめる。
No.1で得られたコントラストの概ね85以上が達成されれば、合格レベルとした。
No.1〜7の各位相差板について、(Δn[A]/λd[A])の範囲を図33に示した。ここで示した範囲は、前述の表8,11,14,17,20,23、および26それぞれにおける、赤色領域・緑色領域・青色領域と比較した最小値と最大値とである。
また、No.1〜7の各位相差板について、((2Δn[C]/λd’[C]+Δn[A]/λd[A])/3)の範囲を図34に示した。ここで示した範囲は、前述の表9,12,15,18、21,24、および27それぞれにおける、赤色領域・緑色領域・青色領域と比較した最小値と最大値との間である。
前記表28に示されるようにNo.1〜5においては、方位角45°・極角45°のコントラストは、いずれも概ね85以上であり、方位角45°・極角60°のコントラストはいずれも、概ね85以上である。
No.1〜5の位相差板は、いずれも次の条件を満たしていることが、図33および図34からわかる。具体的には、(Δn[A]/λd[A])が0.80以上1.25以下であって、しかも、((2Δn[C]/λd’[C]+Δn[A]/λd[A])/3)が0.90以上1.15以下である。
図33および図34に示されるように、No.6,7では、この2つの条件のいずれか一方が欠如している。その結果、方位角45°・極角45°のコントラストは最大でも51であり、方位角45°・極角60°のコントラストは最大でも61であることが、表28の結果から明らかである。