JP2011121931A - 5−メンチルオキシ−2(5h)−フラノンの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】5−メンチルオキシ−2(5H)−フラノンを経済的に、かつ高収率で、工業的に有利に製造しうる方法を提供する。
【解決手段】本発明の5−メンチルオキシ−2(5H)−フラノンの製造方法は、5−アルコキシ−2(5H)−フラノンと、メントールとを、酸触媒下、発生するアルコールを留去しながら反応する工程を含む点に特徴を有する。
【選択図】なし
【解決手段】本発明の5−メンチルオキシ−2(5H)−フラノンの製造方法は、5−アルコキシ−2(5H)−フラノンと、メントールとを、酸触媒下、発生するアルコールを留去しながら反応する工程を含む点に特徴を有する。
【選択図】なし
Description
本発明は、5−メンチルオキシ−2(5H)−フラノンの製造方法に関する。本発明により得られる5−メンチルオキシ−2(5H)−フラノンは、例えば、医薬の原料として有用である。
従来、5−メンチル−2(5H)−フラノンを製造する方法として、例えば、5−メトキシ−2(5H)−フラノンを原料とし、これを無溶媒でL−メントールと反応する方法(非特許文献1)が知られている。非特許文献1に記載の技術では、約6:4のジアステレオマー混合物を石油エーテルから晶析し、(5R)−5−(l−メンチルオキシ)−2(5H)−フラノンを結晶として得ている。
また、5−メンチル−2(5H)−フラノンを製造する別の方法として、5−ヒドロキシ−2(5H)−フラノンを原料とし、これを溶媒(乾燥ベンゼン)中、触媒としてのD−(+)−カンファースルホン酸の存在下、D−メントールと反応する方法(非特許文献2)が知られている。非特許文献2に記載の技術では、1:1のジアステレオマー混合物として得られたD−メンチルオキシ−2(5H)−フラノンを石油エーテルから晶析し、(5S)−5−(d−メンチルオキシ)−2(5H)−フラノンを結晶として得ている。
ジャーナル オブ ザ ケミカル ソサエティ. パーキン トランザクションズ 1(Journal of Chemical Society. Perkin transactions 1)、1993年、2621〜2629頁
オーガニック シンセセス(Organic Syntheses)、2003年、第80巻、66〜74頁
しかしながら、上述した非特許文献1に記載の技術では、最終的に得られる光学活性体の収率が極めて低く、工業的に実施するには依然として改善の余地が存在する。
また、上述した非特許文献2に記載の技術において原料として用いられている5−ヒドロキシ−2(5H)−フラノンは工業的に入手可能な化合物ではない。このため、工業的に実施する際には、例えば当該原料のアルコールとのアセタール(例えば、5−イソプロポキシ−2(5H)−フラノン)を入手し、酸触媒下での加水分解を経て当該原料を入手する必要がある。しかしながら、当該原料は水溶性が非常に高く単離困難であるばかりか、加水分解反応の選択性も低いという問題が存在する。
そこで本発明は、5−メンチルオキシ−2(5H)−フラノンを経済的に、かつ高収率で、工業的に有利に製造しうる方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上述した従来技術における問題点を解決するために鋭意検討を行なった。その結果、5−アルコキシ−2(5H)−フラノンと、メントールとを、酸触媒下、発生するアルコールを留去しながら反応することで、工業的に入手可能な原料から高収率で5−メンチルオキシ−2(5H)−フラノンが製造されうることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明の5−メンチルオキシ−2(5H)−フラノンの製造方法は、5−アルコキシ−2(5H)−フラノンと、メントールとを、酸触媒下、発生するアルコールを留去しながら反応する工程を含む点に特徴を有する。
本発明によれば、医薬の原料として有用な5−メンチルオキシ−2(5H)−フラノンを経済的に、かつ高収率で、工業的に有利に製造することができる。
本発明の5−メンチルオキシ−2(5H)−フラノンの製造方法は、5−アルコキシ−2(5H)−フラノンと、メントールとを、酸触媒下、発生するアルコールを留去しながら反応する工程(以下、「工程(A)」とも称する)を含む。このように、本発明の製造方法は、工業的に入手可能な5−アルコキシ−2(5H)−フラノンを原料として用いる点で、5−ヒドロキシ−2(5H)−フラノンを原料として用いる非特許文献2の技術とは異なる。また、酸触媒下で反応を行なう点で、触媒を用いずに反応を行なう非特許文献1の技術とは異なる。さらに、反応の際に発生するアルコールを留去しながら反応を行なう点で、非特許文献1〜2の技術とは異なる。本発明は、このように従来技術との相違点を多く有し、それらの総合的な結果として、経済的かつ高収率での5−メンチルオキシ−2(5H)−フラノンの製造を可能としたものである。以下、本発明を実施するための具体的な形態について、より詳細に説明する。ただし、下記の具体的な形態のみに本発明の技術的範囲が限定されることはない。
[工程(A)]
工程(A)では、5−アルコキシ−2(5H)−フラノンと、メントールとを反応させる。
工程(A)では、5−アルコキシ−2(5H)−フラノンと、メントールとを反応させる。
工程(A)において原料の1つとして用いられる「5−アルコキシ−2(5H)−フラノン」は、下記化学式1で表される。
化学式1において、Rは、直鎖または分岐のアルキル基である。Rの炭素数は、好ましくは1〜12であり、より好ましくは1〜8であり、さらに好ましくは1〜4であり、特に好ましくは1または2であり、最も好ましくは1である。R(直鎖または分岐)の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基などが挙げられる。
これに対応して、5−アルコキシ−2(5H)−フラノンの具体例が挙げられるが、工業的な実施を考慮した場合には、5−メトキシ−2(5H)−フラノン、5−エトキシ−2(5H)−フラノン、5−(n−プロポキシ)−2(5H)−フラノン、5−イソプロポキシ−2(5H)−フラノン、5−(n−ブトキシ)−2(5H)−フラノンなどが好ましく用いられうる。
工程(A)において原料として用いられる5−アルコキシ−2(5H)−フラノンの入手については、市販品が存在する場合にはその市販品を購入することにより準備することが可能である。また、自ら調製することにより当該化合物を準備してもよい。5−アルコキシ−2(5H)−フラノンを自ら調製する手法について特に制限はなく、有機化学の技術分野において従来公知の知見が適宜参照されうる。
工程(A)において用いられるもう1つの原料は、メントールである。メントールには鏡像異性体(D−メントール、L−メントール)が存在する。工程(A)において用いられるメントールは、ラセミ体であってもよいし、いずれか一方の鏡像異性体であってもよい。好ましくは、いずれか一方の鏡像異性体が用いられる。なお、メントールとしてラセミ体を用いた場合であっても、「副生アルコールの留去による収率の向上」という本願発明の作用効果は同様に達成されうる。
工程(A)において用いられる原料の配合比について特に制限はなく、一例としては、5−アルコキシ−2(5H)−フラノン1モルに対して、メントールを好ましくは0.8〜2モル使用し、より好ましくは0.9〜1.5モル使用する。
工程(A)は、溶媒の存在下または非存在下で実施することができる。溶媒としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどの飽和脂肪族炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン、プソイドクメン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素類、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテルなどのグリコールジメチルエーテル類、酢酸エチル、フタル酸ジオクチルなどのエステル類、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類およびそれらの混合物などが挙げられる。溶媒を使用する場合、その使用量は特に制限されないが、反応速度、経済性、環境保全の観点から、5−アルコキシ−2(5H)−フラノン1質量部に対して100質量部以下であることが好ましく、50質量部以下であることがより好ましく、10質量部以下であることがさらに好ましい。
工程(A)は、酸触媒の存在下に行なわれる。用いられる酸触媒としては、例えば、p−トルエンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸ピリジニウム、メタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸などの有機酸;塩酸、硫酸、リン酸、硝酸などの無機酸;塩化アルミニウム、四塩化チタンなどのルイス酸;およびそれらの混合物が挙げられる。これらの中でも、p−トルエンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸ピリジニウムなどの有機酸がより好ましい。酸触媒の使用量は特に制限されないが、5−アルコキシ−2(5H)−フラノン1モルに対して、0.01モル〜0.5モルが好ましく、0.01モル〜0.1モルがより好ましい。
工程(A)の反応温度は特に制限されないが、反応速度、反応収率の観点から、好ましくは40〜200℃であり、より好ましくは70〜150℃である。
工程(A)を行なう際の反応圧力は特に制限されないが、0.1〜30MPaの範囲が好ましく、0.1〜10MPaの範囲がより好ましい。低圧では必要以上の長時間を要し、また高圧では反応速度は上昇するものの、あまり高すぎても顕著な有意性は認められず、経済的に不利である。
工程(A)では、5−アルコキシ−2(5H)−フラノンとメントールとの反応の副生生物として、アルコールが生成する。副生するアルコールは、上述した化学式1におけるRを用いて、「R−OH」の一般式で表される。例えば、後述する実施例1のように、5−アルコキシ−2(5H)−フラノンとして5−イソプロポキシ−2(5H)−フラノン(Rがイソプロピル基である場合に相当)を用いた場合には、アルコールとしてイソプロパノールが副生する。
本発明の特徴の1つは、反応において副生するアルコールを留去しながら反応を行なう点にある。この際、副生するアルコールを反応中に留去する具体的な手法について特に制限はなく、有機化学の分野において従来公知の知見が適宜参照されうる。なお、副生するアルコールについては、生成する都度その全量を留去してもよいし、場合によっては、その一部のみを留去することとしてもよい。いずれにせよ、副生するアルコールの少なくとも一部を反応の進行とともに留去する限り、本発明の技術的範囲に包含され、所望の作用効果も達成されうる。
本発明によれば、上述したような構成とすることにより、原料として工業的に入手可能な5−アルコキシ−2(5H)−フラノンを用いた場合であっても、目的物である5−メンチルオキシ−2(5H)−フラノンを経済的に、かつ高収率で製造することができるという、当業者であっても予測することが困難な顕著な効果が発揮されうるのである。
工程(A)では、5−アルコキシ−2(5H)−フラノンとメントールとの反応の結果、生成物(目的物)として5−メンチルオキシ−2(5H)−フラノンが生成する。この生成物(目的物)は、原料として用いたメントールの立体配座(d体またはl体)に対応した立体配座を有する。そして、5−アルコキシ−2(5H)−フラノン由来のフラン環の5位の立体配座については、2種(R体およびS体)の混合物として存在するのが通常である。したがって、原料のメントールとして光学活性メントール(すなわち、d−メントールまたはl−メントールのいずれか一方)を用いた場合、反応終了後の生成物には2種のジアステレオマーの混合物(エピマー混合物)が含まれることとなる。例えば、反応原料のメントールとして光学活性メントールであるD−メントールを用いた場合には、反応終了後の生成物として、(5S)−5−(d−メンチルオキシ)−2(5H)−フラノンおよび(5R)−5−(d−メンチルオキシ)−2(5H)−フラノンの2種のジアステレオマー(エピマー)が含まれる。このエピマー混合物からは、種々の任意の手法によってジアステレオマー(エピマー)の一方のみを分離することが可能である。以下、原料のメントールとして光学活性メントールを用いた場合に、反応終了後のエピマー混合物からジアステレオマー(エピマー)の一方のみを分離する工程(以下、「工程(B)」と称する)について、詳細に説明する。
[工程(B)]
工程(B)において反応終了後のエピマー混合物からジアステレオマー(エピマー)の一方のみを分離する具体的な手法について特に制限はないが、典型的には晶析技術が用いられる。「晶析」とは、目的物の溶解度の温度依存性を利用し、冷却によって目的物を晶出させることにより分離する操作をいう。本発明において工程(A)で得られる2種のジアステレオマーはそれぞれ溶解度の温度依存性が異なることから、晶析による分離が可能となるのである。例えば、上述したD−メントールを原料として用いた場合に生成する2種のジアステレオマー混合物を晶析処理すると、(5S)−5−(d−メンチルオキシ)−2(5H)−フラノンが晶出する(後述する実施例1を参照)。このようにして晶出した一方のジアステレオマー(エピマー)については、ろ過・乾燥などの工程を経て、精製することができる。
工程(B)において反応終了後のエピマー混合物からジアステレオマー(エピマー)の一方のみを分離する具体的な手法について特に制限はないが、典型的には晶析技術が用いられる。「晶析」とは、目的物の溶解度の温度依存性を利用し、冷却によって目的物を晶出させることにより分離する操作をいう。本発明において工程(A)で得られる2種のジアステレオマーはそれぞれ溶解度の温度依存性が異なることから、晶析による分離が可能となるのである。例えば、上述したD−メントールを原料として用いた場合に生成する2種のジアステレオマー混合物を晶析処理すると、(5S)−5−(d−メンチルオキシ)−2(5H)−フラノンが晶出する(後述する実施例1を参照)。このようにして晶出した一方のジアステレオマー(エピマー)については、ろ過・乾燥などの工程を経て、精製することができる。
工程(B)において、晶析は従来公知の知見を適宜参照することにより行なわれることができ、その詳細について特に制限はない。一例を説明すると、晶析の際に用いられる溶媒としては、工程(A)の説明の欄において反応溶媒として例示した化合物が同様に用いられうる。晶析の際の溶媒の使用量についても特に制限はなく、生成物である5−メンチルオキシ−2(5H)−フラノン1質量部に対して100質量部以下であるのが好ましく、50質量部以下であるのがより好ましく、10質量部以下であるのがさらに好ましい。晶析温度についても特に制限はないが、30℃〜−50℃が好ましく、20℃〜−30℃がより好ましい。
工程(B)において、晶出した一方のジアステレオマー(エピマー)を分取した後のろ液には、溶媒のほか、晶出しなかった他方のジアステレオマー(エピマー)、並びに、未反応原料(5−アルコキシ−2(5H)−フラノンおよびメントール)が含まれている。本発明の好ましい形態では、工程(B)において分離されなかったエピマーをリサイクルする。具体的には、当該エピマーを、上述した工程(A)へとリサイクルする。これにより、最終的に得られる目的物の収率を向上させることが可能となる。なお、本形態は、原料のメントールとして光学活性メントールを用いた場合に有効なものである。よって、以下では、後述した実施例1および実施例2に記載のように、原料のメントールとして光学活性メントールであるD−メントールを用いる場合を例に挙げて、この好ましい形態について、より詳細に説明する。
[好ましい形態]
本形態においても、工程(A)および工程(B)については、上述したように行なえばよい。なお、以下では、後述する工程(A1)から工程(C1)へのリサイクルまで含めた定常状態について説明する。
本形態においても、工程(A)および工程(B)については、上述したように行なえばよい。なお、以下では、後述する工程(A1)から工程(C1)へのリサイクルまで含めた定常状態について説明する。
具体的には、まず工程(A)として、(5R)−5−(d−メンチルオキシ)−2(5H)−フラノン、5−アルコキシ−2(5H)−フラノン、およびD−メントールを、酸触媒下、発生するアルコールを留去しながら反応する(本工程を「工程(A1)」とも称する)。工程(A1)の具体的な形態としては、工程(A)について上述した形態が同様に採用されうるため、ここでは詳細な説明を省略する。
ここで、本形態では後述の工程(C1)から工程(A1)へのリサイクルまで含めた定常状態を想定していることから、工程(A)においても既に原料として(5R)−5−(d−メンチルオキシ)−2(5H)−フラノンが存在している。この(5R)−5−(d−メンチルオキシ)−2(5H)−フラノンは、リサイクルされたものである。リサイクルによって(5R)−5−(d−メンチルオキシ)−2(5H)−フラノンが工程(A1)に導入される経緯については、後述する。
工程(A1)に導入された(5R)−5−(d−メンチルオキシ)−2(5H)−フラノンは、酸触媒の存在下で加熱されることによってその一部がエピマー化されて、(5S)−5−(d−メンチルオキシ)−2(5H)−フラノンを生成する。この(5S)−5−(d−メンチルオキシ)−2(5H)−フラノンは、工程(A1)において反応により生成した(5S)−5−(d−メンチルオキシ)−2(5H)−フラノンとともに、後の工程(B1)において分離される。このため、リサイクルを行なわない場合と比較して、最終収率を向上させることができる。
続いて、工程(B)として、例えば晶析処理などの手法により、(5R)−5−(d−メンチルオキシ)−2(5H)−フラノンと(5S)−5−(d−メンチルオキシ)−2(5H)−フラノンとを分離する(本工程を「工程(B1)」とも称する)。これにより、上述したように目的物である(5S)−5−(d−メンチルオキシ)−2(5H)−フラノンが精製される。
工程(B1)の後、目的物の分離後に残存している反応液(例えば、工程(B1)におけるろ液)に含まれる他方のエピマーである(5R)−5−(d−メンチルオキシ)−2(5H)−フラノンを、上述した工程(A1)にリサイクルする(本工程を「工程(C1)」とも称する)。リサイクルの具体的な形態について特に制限はなく、残存した反応液をそのまま工程(A1)の反応液として用いることができる。かような形態によれば、極めて簡便な手法によってエピマーのリサイクルが可能である。また、残存したエピマー以外にも、未反応原料としての5−アルコキシ−2(5H)−フラノンや光学活性メントールも同時にリサイクルされうるという点で、経済的にも好ましい形態であるといえる。ただし、その他の形態が排除されるわけではなく、場合によっては、任意の手法によって残存反応液中のエピマー(ここでは(5R)−5−(d−メンチルオキシ)−2(5H)−フラノン)を分離(またはさらに精製)したものを工程(A1)へとリサイクルしても、もちろんよい。
リサイクルの具体的な形態について特に制限はなく、工程(B1)から残存した反応液の全量を工程(A1)にリサイクルしてもよいし、この一部のみをリサイクルしてもよい。また、工程(B1)から残存した複数の反応液をそれぞれ回収し、これらをまとめて一度に工程(A1)にリサイクルしてもよい。
以上、本発明の好ましい形態について、原料のメントールとして光学活性メントールであるD−メントールを用いる場合を例に挙げて詳細に説明したが、この好ましい形態は、原料のメントールとしてL−メントールを用いる場合((5R)−5−(l−メンチルオキシ)−2(5H)−フラノンが目的物である)であっても同様に実施可能である。すなわち、この場合の(5R)−5−(l−メンチルオキシ)−2(5H)−フラノンの製造方法は、以下の工程を有することになる。
工程(A2):(5S)−5−(l−メンチルオキシ)−2(5H)−フラノン、5−アルコキシ−2(5H)−フラノン、およびL−メントールを、酸触媒下、発生するアルコールを留去しながら反応する工程;
工程(B2):(5S)−5−(l−メンチルオキシ)−2(5H)−フラノンと(5R)−5−(l−メンチルオキシ)−2(5H)−フラノンとを分離する工程;
工程(C2):(5S)−5−(l−メンチルオキシ)−2(5H)−フラノンを前記工程(A2)にリサイクルする工程。
工程(B2):(5S)−5−(l−メンチルオキシ)−2(5H)−フラノンと(5R)−5−(l−メンチルオキシ)−2(5H)−フラノンとを分離する工程;
工程(C2):(5S)−5−(l−メンチルオキシ)−2(5H)−フラノンを前記工程(A2)にリサイクルする工程。
L−メントールを原料として用いる場合における工程(A2)〜工程(C2)のそれぞれの具体的な手法については、上述したのと同様の手法が採用されうるため、ここでは詳細な説明を省略する。
本発明の製造方法により製造される5−メンチルオキシ−2(5H)−フラノン(特に、光学活性体である(5S)−5−(d−メンチルオキシ)−2(5H)−フラノンおよび(5R)−5−(l−メンチルオキシ)−2(5H)−フラノン)は、医薬、農薬その他の精密化学品の原料などとして好適に用いられうる。
以下、実施例を用いて本発明の実施形態をより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲は下記の実施例のみには限定されない。
<実施例1>
(5S)−5−(d−メンチルオキシ)−2(5H)−フラノンの合成
攪拌機、温度計、蒸留塔を取り付けた内容積1リットルの四つ口フラスコに、5−イソプロポキシ−2(5H)−フラノン100.2g(0.70mol)、D−メントール110.73g(0.71mol)、n−ヘプタン410g、p−トルエンスルホン酸ピリジニウム8.7g(0.035mol)を仕込み、攪拌しながら内温100℃に加熱した。反応は生成するイソプロパノールを留去しながら行った。内温103℃で7時間攪拌した後、室温まで冷却した。反応混合物を5質量%炭酸水素ナトリウム水溶液174.6gで洗浄し、分液した有機層をさらに水150gで水洗し、5−メンチルオキシ−2(5H)−フラノン n−ヘプタン溶液662.2gを得た。該溶液中には(5S)−5−(d−メンチルオキシ)−2(5H)−フラノン51.3g(0.22mol)、(5R)−5−(d−メンチルオキシ)−2(5H)−フラノン46.6g(0.20mol)が含有されていた。
(5S)−5−(d−メンチルオキシ)−2(5H)−フラノンの合成
攪拌機、温度計、蒸留塔を取り付けた内容積1リットルの四つ口フラスコに、5−イソプロポキシ−2(5H)−フラノン100.2g(0.70mol)、D−メントール110.73g(0.71mol)、n−ヘプタン410g、p−トルエンスルホン酸ピリジニウム8.7g(0.035mol)を仕込み、攪拌しながら内温100℃に加熱した。反応は生成するイソプロパノールを留去しながら行った。内温103℃で7時間攪拌した後、室温まで冷却した。反応混合物を5質量%炭酸水素ナトリウム水溶液174.6gで洗浄し、分液した有機層をさらに水150gで水洗し、5−メンチルオキシ−2(5H)−フラノン n−ヘプタン溶液662.2gを得た。該溶液中には(5S)−5−(d−メンチルオキシ)−2(5H)−フラノン51.3g(0.22mol)、(5R)−5−(d−メンチルオキシ)−2(5H)−フラノン46.6g(0.20mol)が含有されていた。
得られた5−メンチルオキシ−2(5H)−フラノン n−ヘプタン溶液を−20℃まで冷却し、析出した結晶をろ取、乾燥することにより、(5S)−5−(d−メンチルオキシ)−2(5H)−フラノン24.5g(0.10mol)を得た(ジアステレオマー過剰率91.0%)。
<実施例2>
晶析ろ液のリサイクル
攪拌機、温度計、蒸留塔を取り付けた内容積1リットルの四つ口フラスコに、実施例1と同様の手法により得たろ液687.7g(該ろ液中には(5S)−5−(d−メンチルオキシ)−2(5H)−フラノン27.9g(0.12mol)、(5R)−5−(d−メンチルオキシ)−2(5H)−フラノン45.5g(0.19mol)が含有されている)、p−トルエンスルホン酸ピリジニウム1.6g(0.006mol)、5−イソプロポキシ−2(5H)−フラノン14.2g(0.10mol)、D−メントール15.6g(0.10mol)を仕込み、内温103℃で6時間攪拌した。反応は生成するイソプロパノールを留去しながら行った。室温まで冷却した後、反応混合物を5質量%炭酸水素ナトリウム水溶液31.8gで洗浄し、分液した有機層をさらに水30gで水洗し、5−メンチルオキシ−2(5H)−フラノン n−ヘプタン溶液684.5gを得た。該溶液中には(5S)−5−(d−メンチルオキシ)−2(5H)−フラノン51.8g(0.22mol)、(5R)−5−(d−メンチルオキシ)−2(5H)−フラノン47.8g(0.20mol)が含有されていた。
晶析ろ液のリサイクル
攪拌機、温度計、蒸留塔を取り付けた内容積1リットルの四つ口フラスコに、実施例1と同様の手法により得たろ液687.7g(該ろ液中には(5S)−5−(d−メンチルオキシ)−2(5H)−フラノン27.9g(0.12mol)、(5R)−5−(d−メンチルオキシ)−2(5H)−フラノン45.5g(0.19mol)が含有されている)、p−トルエンスルホン酸ピリジニウム1.6g(0.006mol)、5−イソプロポキシ−2(5H)−フラノン14.2g(0.10mol)、D−メントール15.6g(0.10mol)を仕込み、内温103℃で6時間攪拌した。反応は生成するイソプロパノールを留去しながら行った。室温まで冷却した後、反応混合物を5質量%炭酸水素ナトリウム水溶液31.8gで洗浄し、分液した有機層をさらに水30gで水洗し、5−メンチルオキシ−2(5H)−フラノン n−ヘプタン溶液684.5gを得た。該溶液中には(5S)−5−(d−メンチルオキシ)−2(5H)−フラノン51.8g(0.22mol)、(5R)−5−(d−メンチルオキシ)−2(5H)−フラノン47.8g(0.20mol)が含有されていた。
得られた5−メンチルオキシ−2(5H)−フラノン n−ヘプタン溶液を−20℃まで冷却し、析出した結晶をろ取、乾燥することにより、(5S)−5−(d−メンチルオキシ)−2(5H)−フラノン23.3g(0.10mol)を得た(ジアステレオマー過剰率90.8%)。
Claims (3)
- 5−アルコキシ−2(5H)−フラノンと、メントールとを、酸触媒下、発生するアルコールを留去しながら反応する工程(A)を含むことを特徴とする、5−メンチルオキシ−2(5H)−フラノンの製造方法。
- 以下の工程:
工程(A1):(5R)−5−(d−メンチルオキシ)−2(5H)−フラノン、5−アルコキシ−2(5H)−フラノン、およびD−メントールを、酸触媒下、発生するアルコールを留去しながら反応する工程;
工程(B1):(5R)−5−(d−メンチルオキシ)−2(5H)−フラノンと(5S)−5−(d−メンチルオキシ)−2(5H)−フラノンとを分離する工程;
工程(C1):(5R)−5−(d−メンチルオキシ)−2(5H)−フラノンを前記工程(A1)にリサイクルする工程、
を含むことを特徴とする、(5S)−5−(d−メンチルオキシ)−2(5H)−フラノンの製造方法。 - 以下の工程:
工程(A2):(5S)−5−(l−メンチルオキシ)−2(5H)−フラノン、5−アルコキシ−2(5H)−フラノン、およびL−メントールを、酸触媒下、発生するアルコールを留去しながら反応する工程;
工程(B2):(5S)−5−(l−メンチルオキシ)−2(5H)−フラノンと(5R)−5−(l−メンチルオキシ)−2(5H)−フラノンとを分離する工程;
工程(C2):(5S)−5−(l−メンチルオキシ)−2(5H)−フラノンを前記工程(A2)にリサイクルする工程、
を含むことを特徴とする、(5R)−5−(l−メンチルオキシ)−2(5H)−フラノンの製造方法。
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