以下、本発明の実施の形態における画像形成装置について説明する。
画像形成装置は、スキャナ機能、複写機能、プリンタとしての機能、ファクシミリ機能、データ通信機能、及びサーバ機能を備えたMFP(Multi Function Peripheral)である。スキャナ機能では、セットされた原稿の画像を読み取ってそれをHDD等に蓄積する。複写機能では、さらにそれを用紙等に印刷(プリント)する。プリンタとしての機能では、PC等の外部端末から印刷指示を受けるとその指示に基づいて用紙に印刷を行う。ファクシミリ機能では、外部のファクシミリ装置等からファクシミリデータを受信してそれをHDD等に蓄積する。データ通信機能では、接続された外部機器との間でデータを送受信する。サーバ機能では、複数のユーザでHDD等に記憶したデータなどを共有可能にする。
画像形成装置は、電子写真方式により画像を形成するものであって、例えばカラータンデム方式によりカラー画像を形成可能である。カラータンデム方式の画像形成装置においては、各々現像器を含んだ4色の作像部が、中間転写体である中間転写ベルトに沿うように配列されている。それぞれの作像部に形成された各色のトナー画像が中間転写ベルトに転写され(1次転写)、各色のトナー画像が重ね合わされることで多色画像が形成される。中間転写ベルト上で重ね合わされた画像は、印刷媒体である用紙上に転写され(2次転写)、定着工程を経て出力される。
[第1の実施の形態]
図1は、画像形成装置を示す正面図である。
図を参照して画像形成装置1は、画像読取部10と、用紙搬送部20と、画像形成部30と、用紙格納部40と、制御回路100とを備える。画像形成装置1は、タンデム方式のデジタルカラー複写機であって、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、及びブラック(K)の4色のトナーを順次重ね合わせることによってカラー画像を形成する。
画像読取部10は、搬送部2と、原稿をセットするための戴荷台3と、原稿台ガラス11と、読み取られた原稿を排出するための排出台4とを含む。さらに、画像読取部10は、図示しないスキャナを含む。搬送部2は、戴荷台3にセットされた原稿を原稿台ガラス11に自動的に1枚ずつ搬送する。
スキャナは、スキャンモータによって原稿台ガラス11に平行に移動する。スキャナには、原稿を照射する露光ランプ、原稿からの反射光の向きを変える反射ミラー、反射ミラーからの光路を変えるミラー、反射光を集光するレンズ、及び受光した反射光に応じて電気信号を発生する3列のCCD(Charge Coupled Device)などの光電変換素子が含まれる。
搬送部2によって搬送された原稿は、原稿台ガラス11上にセットされる。原稿は、スキャナが原稿台ガラス11に平行に移動するときに、スキャナにより露光走査される。原稿からの反射光は光電変換素子によって電気信号に変換され、画像形成部30に入力される。
画像形成部30は、CMYKの各色について、作像部21Y,21M,21C,21K(これらを代表させて作像部21と呼ぶことがある。)と、現像器23Y,23M,23C,23K(これらを代表させて現像器23と呼ぶことがある。)と、転写ローラ25Y,25M,25C,25K(これらを代表させて転写ローラ25と呼ぶことがある。)と、感光体(像担持体の一例)27Y,27M,27C,27K(これらを代表させて感光体27と呼ぶことがある。)と、光学装置50Y,50M,50C,50K(これらを代表させて光学装置50と呼ぶことがある。)とを有している。また、画像形成部30は、クリーニング装置29と、中間転写ベルト31と、2次転写ローラ35と、定着器36と、光学センサ(IDC(イメージ・デンシティ・コントロール)センサ)55とを有している。
中間転写ベルト31は、無端ベルトであり、3つのローラ32,33,34により、ゆるまないように懸架されている。中間転写ベルト31は、これらのローラが図中において反時計回りに回転することで、所定速度で同方向に回転する。
作像部21Y,21M,21C,21Kは、中間転写ベルト31に沿って所定間隔で配置されるイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、及びブラック(K)各色のトナーに対応する。各作像部21には、現像器23と感光体27とが含まれる。現像器23は、感光体27に形成された潜像にトナーを付着させ、感光体27上にトナー像を形成する(現像)。
光学装置50は、ポリゴンモータにより回動されるポリゴンミラーによりレーザ光(走査線)を偏向させて、各色の感光体27に出射する。光学装置50は、レーザ光で感光体27上を走査することにより、帯電された感光体27上に潜像(画像)の書き込みを行う。
転写ローラ25は、中間転写ベルト31を介して各色の感光体27に対向するように、感光体27と対をなすように配置されている。転写ローラ25は、感光体27上に形成されたトナー像を中間転写ベルト31上に転写する。
2次転写ローラ35は、中間転写ベルト31を介してローラ34に対向するように配置されている。2次転写ローラ35は、中間転写ベルト31上に形成されたトナー像を用紙搬送部20により搬送される用紙に転写する。
光学センサ55は、中間転写ベルト31のブラック色の作像部21Kよりも回転方向下流側すなわち2次転写ローラ35側に配置されている。光学センサ55は、中間転写ベルト31上に形成されたトナー像を読み取り可能である。
クリーニング装置29は、中間転写ベルト31に沿うように配置されている。クリーニング装置29は、2次転写後に中間転写ベルト31上に残留するトナーを除去する。
定着器36は、2次転写ローラ35によりトナー像が転写された用紙をヒートローラで挟みながら加熱し、トナー像を用紙に定着させる。
用紙格納部40は、給紙カセット41を含んでいる。給紙カセット41には、印刷媒体である用紙が収納されている。なお、用紙格納部40は、給紙カセット41を複数有し、各給紙カセット41に互いに異なるサイズ、方向の用紙を収納可能にしてもよい。
用紙搬送部20は、ローラ42,43,37を有している。用紙搬送部20は、ローラ42で給紙カセット41から用紙を給紙し、ローラ43で用紙を画像形成部30に搬送する。また、用紙搬送部20は、定着器36でトナー像が定着された用紙を、ローラ37により、画像形成部30の上部に配置された排紙トレイ38に排出する。
図2は、画像形成装置1の制御回路100の構成を示すブロック図である。
図を参照して、制御回路100は、システムコントローラ部110と、画像形成制御部120とを有している。
システムコントローラ部110は、CPU111を有している。システムコントローラ部110は、画像形成制御部120や、その他画像形成装置1の各部の動作を制御する。例えば、CPU111は、画像形成制御部120内のCPU121に対して、プリントの実施や画像安定化の実施等を指示する。
画像形成制御部120は、CPU121、ROM123、RAM125、不揮発性メモリ127、リアルタイムクロック129、及び光学センサ55を備えている。
リアルタイムクロック129は、電池により常に駆動されており、画像形成装置1が電源オフ状態であっても動作する。リアルタイムクロック129は、現在の年月日及び時分秒を示す情報(以下、日時情報と呼ぶことがある。)を、例えば1秒置きに、CPU121に出力する。
ROM123には、種々の制御プログラム123aが格納されている。制御プログラム123aとしては、例えば、画像形成制御部120におけるプリント処理に関するプログラムや、画像安定化処理に関するプログラムや、後述の色ずれ補正動作に関するプログラムなどがある。なお、ROM123は、書き換えが可能なものであってもよい。
RAM125は、揮発性のメモリである。RAM125は、例えば、CPU121が制御プログラム123aを実行する際のワークエリアとして機能する。
不揮発性メモリ127は、例えばSSD(Solid State Disk)やHDD(Hard Disk Drive)である。不揮発性メモリ127は、CPU121が制御プログラム123aを実行する際のデータ保存エリアとして機能する。
光学センサ55は、中間転写ベルト31上に形成されたトナー像を読み取り、それに応じてCPU121に信号を送信する。
CPU121は、ROM123からプログラムを読み出して、タイミングを計りながら各動作を統一的に制御する。CPU121は、例えば、プリントジョブの実行や後述の色ずれ補正動作などが円滑に行われるように制御する。CPU121は、色ずれ補正動作実施時に、温度情報等を不揮発性メモリ127に格納する。なお、CPU121は、画像形成装置1の電源をオフするときには、事前にリアルタイムクロック129から日時情報を取得し、不揮発性メモリ127内に予め確保されている専用の記憶領域に格納する。このとき、CPU121は、2度目以降に電源オフするとき、すなわち既に記憶領域に日時情報が格納されているときには、既に格納済みの日時情報の上書きを行う。
本実施の形態において、画像形成装置1は、電源オン時モード、待機中モード、及び画像形成中モードの3つの動作モードを有している。電源オン時モードでは、画像形成装置1の電源がオンとなっており、画像形成装置1は、プリントジョブなどを受付可能な状態である。待機中モードでは、CPU121は、例えばヒートローラを余熱したりポリゴンミラーを回転させたりなど、画像形成部30などの各部を必要に応じて動作させ、画像形成装置1を速やかに画像形成動作を行うことができるように待機させる。画像形成中モードでは、画像形成装置1は、画像形成動作を行う。
[色ずれ補正動作の説明]
以下、本実施の形態において画像形成装置1が行う色ずれ補正動作の一例について説明する。
色ずれ補正動作は、主に、光学装置50の温度が上昇することなどにより生じる色ずれを補正して、適正に画像を形成可能にするために行われる。光学装置50の温度上昇は、ポリゴンモータが動作して発熱することが主な原因となって、発生する。
色ずれ補正動作は、CPU121の制御により実行される。色ずれ補正動作においては、まず、色ずれが発生しているかどうかの推定処理や前回の補正制御からの色ずれ量の推定処理など、色ずれに関する推定処理が行われる。本実施の形態においては、色ずれに関する推定処理として、温度推定処理が行われる。温度推定処理では、光学装置50の駆動状態に基づいて光学装置50の温度が推定される。そして、その結果に基づいて、実際に色ずれが発生しているか否かが検出され、色ずれが発生していることが検出されると、その色ずれの補正処理が行われる。
図3は、温度推定処理を示すフローチャートである。
温度推定処理は、後述のように色ずれ補正動作の実行時に行われるサブルーチンである。温度推定処理は、色ずれ補正動作が所定時間毎にすなわち所定の更新周期で実行されるのに伴い、所定の更新周期で実行される。更新周期は、例えば、3分程度である。
図を参照して、ステップS101において、CPU121は、光学装置50の現在の駆動率(R)を算出する。駆動率は、例えばポリゴンモータの駆動時間に対応する。本実施の形態において、光学装置50の現在の駆動率(R)は、次の計算式により算出される。
現在駆動率(R) = ポリゴンモータの駆動時間 ÷ 更新周期(例えば3分間) × 100%
ステップS103において、CPU121は、算出した光学装置50の駆動率の変化を検知する。CPU121は、ステップS101において算出した現在駆動率(R)と、前回に温度推定処理を行ったときに算出した前回駆動率(Rpre)とを比較し、駆動率の変化を検知する。
ステップS103で駆動率が減少しているとき、ステップS105において、CPU121は、前回に温度推定処理を行ったときに推定した光学装置50の温度(以下、前回推定温度(Tpre)と呼ぶ。)と、現在駆動率(R)における飽和温度(TRMAX)とを比較する。なお、飽和温度(TRMAX)とは、画像形成装置1を連続印字させたとき、光学装置50内の発熱量と放熱量とが均衡して、それ以上運転を継続してもその温度以上にはならないという温度である。飽和温度(TRMAX)は、例えば、実際の印字状態で求められた実験値である。飽和温度(TRMAX)は、ポリゴンモータの発熱の他、例えば定着器36や、感光体27を駆動するモータや、各種電気基板などの発熱も加味された、装置固有の値である。
ステップS105で前回推定温度(Tpre)が飽和温度(TRMAX)以上であるとき、ステップS107において、CPU121は、光学装置50の内部の温度が下降中であると判断する。
ステップS109において、CPU121は、現在駆動率(R)と後述する温度上昇テーブル及び温度下降テーブルとに基づいて、現在の光学装置50の内部の温度を推定する。以下、推定された温度を現在推定温度(T)と呼ぶ。このとき、CPU121は、温度下降テーブルから温度下降値(Tdown)を算出し、温度上昇テーブルから現在駆動率(R)における温度上昇値(Tup)を算出する。温度上昇値(Tup)は、現在駆動率(R)における温度上昇分を加算するために算出される。また、CPU121は、次の計算式に示されるように、算出した温度上昇値(Tup)と温度下降値(Tdown)とを、前回推定温度(Tpre)に加減算することにより、現在推定温度(T)を算出する。
現在推定温度(T) = 前回推定温度(Tpre) + 温度上昇値(Tup) − 温度下降値(Tdown)
他方、ステップS103で駆動率が増加又は変化無し(同じ)であるとき、又はステップS105で前回推定温度(Tpre)が飽和温度(TRMAX)未満であるとき、ステップS111において、CPU121は、光学装置50の内部の温度が上昇中であると判断する。
ステップS113において、CPU121は、現在駆動率(R)と温度上昇テーブルとに基づいて、現在推定温度(T)を算出する。このとき、CPU121は、温度上昇テーブルから現在駆動率(R)における温度上昇値(Tup)を算出する。温度上昇値(Tup)は、現在駆動率(R)における温度上昇分を加算するために算出される。CPU121は、次の計算式に示されるように、算出した温度上昇値(Tup)を前回推定温度(Tpre)に加算することにより、現在推定温度(T)を算出する。
現在推定温度(T) = 前回推定温度(Tpre) + 温度上昇値(Tup)
ステップS115において、CPU121は、現在駆動率(R)を前回駆動率(Rpre)として設定する。
ステップS117において、CPU121は、ステップS109又はステップS113において算出した現在推定温度(T)を、前回推定温度(Tpre)として設定する。
ステップS119において、CPU121は、次の更新周期が到来するまでに光学装置50の駆動率が変化しないと仮定した場合における、所定時間後(所定の更新周期後;例えば3分後)の光学装置50の内部の温度を推定する。以下、推定された温度を次回推定温度(Tnext)と呼ぶ。次回推定温度(Tnext)は、次の計算式に示されるとおり、ステップS113で現在推定温度(T)を求めた方法と同様の方法で算出することができる。
次回推定温度(Tnext) = 現在推定温度(T) + 温度上昇値(Tup)
ステップS119で次回推定温度(Tnext)が算出されると、温度推定処理は終了する。
なお、温度推定処理において、温度上昇値(Tup)や温度下降値(Tdown)は、温度上昇テーブルや温度下降テーブルに基づいて、以下に示すようにして算出される。温度上昇テーブル及び温度下降テーブルは、いわば光学装置50の内部の温度を推定する際の判断基準である。なお、温度上昇テーブルや温度下降テーブルは、例えば、ROM123や不揮発性メモリ127などに予め記憶されている。
図4は、温度上昇テーブルの一例を示す図である。
図を参照して、温度上昇テーブルは、ポリゴンモータの駆動率を横軸にとり、経過時間を縦軸にとり、各条件での光学装置50の内部の温度の上昇値を示した表である。温度上昇テーブルは、例えば、予め各条件下での光学装置50の内部の温度を実験的に求めることにより、作成される。本実施の形態において、温度上昇テーブルは、ポリゴンモータの駆動率が0%、12.5%、25%、50%、75%、100%である場合についての温度の上昇値が求められたものである。なお、例えば駆動率について10%異なる毎に温度の上昇値を求めるなど、図示したものよりさらに詳細な条件下でのデータを有する温度上昇テーブルを用いることにより、算出する温度上昇値(Tup)の精度をより高くすることができる。
CPU121は、温度上昇テーブルを参照して、温度上昇値(Tup)を容易に算出できる。例えば、前回駆動率が12.5%であって、現在駆動率が25%であり、かつ、前回推定温度が1.0℃である場合を想定する。このとき、CPU121は、温度上昇テーブルのうち、駆動率が25%である列において、1.0℃となる「3分後」から所定時間である3分後の「6分後」の行を参照する。これにより、現在推定温度は、1.7℃となる。CPU121は、温度上昇値(Tup)を、1.7℃−1.0℃より0.7℃と算出する。
図5は、温度下降テーブルの一例を示す図である。
図を参照して、温度下降テーブルは、飽和下降温度を横軸にとり、経過時間を縦軸にとり、各飽和下降温度での所定時間後の光学装置50の内部の温度の下降値を示した表である。温度下降テーブルは、例えば、予め各条件下での光学装置50の内部の温度を実験的に求めることにより、作成される。本実施の形態において、温度下降テーブルは、4つの飽和下降温度についての温度の下降値が求められたものである。なお、図示したものよりさらに詳細な飽和下降温度でのデータを有する温度下降テーブルを用いることにより、算出する温度下降値(Tdown)の精度をより高くすることができる。なお、図において、温度下降値は負符号を付して表されているが、上記計算式には負符号を付さない絶対値が代入される。
CPU121は、温度下降テーブルを参照して、温度下降値(Tdown)を容易に算出できる。本実施の形態において、CPU121は、温度下降テーブルの飽和下降温度を前回推定温度として、推定下降温度を算出する。前回推定温度が温度下降テーブルの飽和下降温度と一致しない場合には、CPU121は、最も近い飽和下降温度の列を参照する。例えば、温度下降テーブルにより、前回推定温度が1.0℃であった場合、3分後の推定下降温度は0.1℃となる。
図6は、第1の実施の形態における色ずれ補正動作を示すフローチャートである。
図を参照して、色ずれ補正動作は、大まかに、温度推定処理(S201)、色ずれ検出処理(S205,S207)、及び補正処理(S209,S211)を含んでいる。
ステップS201において、CPU121は、所定時間毎にすなわち所定の更新周期で温度推定処理を実行する。温度推定処理により、次回推定温度(Tnext)が算出される。
ステップS203において、CPU121は、算出された次回推定温度(Tnext)と前回色ずれ補正を実施した時の温度(前回補正実施時の温度)とを比較する。CPU121は、両者の温度差が所定の温度(以下、色ずれ発生変化温度と呼ぶことがある。)以上であるか否か、すなわち次回推定温度が前回補正実施時の温度から所定温度以上変化したものであるか否かを判断する。色ずれ発生変化温度は、例えば、予め設定されており、ROM123や不揮発性メモリ127に記憶されている。色ずれ発生変化温度は、いわば、色ずれの検出処理を行うか否かに関する判断基準である。
ステップS203で温度差が色ずれ発生変化温度未満であれば、CPU121は、色ずれ検出処理や補正処理を実行しない。この場合、CPU121は、更新周期が到来した時、ステップS201からの処理を再開する。
ステップS203で温度差が色ずれ発生変化温度以上であれば、CPU121は、まず、色ずれ検出処理を実行する(ステップS205,S207)。
ステップS205において、CPU121は、画像形成部30に、色ずれ検出用のトナー像である第1のパターンを形成させる。第1のパターンは、中間転写ベルト31上の、用紙に転写されるトナー像が形成されていない部分に形成される。ここで、CPU121は、複数枚の用紙にトナー像が転写される場合、あるトナー像と次のトナー像との間(像間)に第1のパターンの形成を行う。
ステップS207において、CPU121は、光学センサ55からの検知信号に基づいて、中間転写ベルト31上に形成された第1のパターンに色ずれが発生しているか否かを検出する。
ステップS207で色ずれが発生していれば、CPU121は、色ずれの補正処理を実行する。
ステップS209において、CPU121は、画像形成部30に、色ずれ補正用のトナー像である第2のパターンを形成させる。第2のパターンは、中間転写ベルト31上に形成される。
ステップS211において、CPU121は、中間転写ベルト31上に形成された第2のパターンを光学センサ55に読み取らせ、その検知信号に基づいて、各色のレーザ光の走査開始位置を補正する(色ずれ補正)。すなわち、CPU121は、第2のパターンを検出して色ずれ量を検出し、その色ずれ量に基づいて色ずれの補正を行う。CPU121は、光学装置50の感光体27上を走査する位置を補正することにより、色ずれの補正を行う。これにより、色ずれが解消される。なお、色ずれを補正する方法としては、これに限られるものではない。
ステップS213において、CPU121は、温度推定処理で算出された現在推定温度(T)を補正実施時の温度として設定する。この温度は、次回以降に行われる一連の色ずれ補正動作で、ステップS203において用いられる。
他方、ステップS207で色ずれが発生していなければ、CPU121は、上述の補正処理を実行しない。この場合、ステップS215において、CPU121は、色ずれ発生変化温度を変更する。このとき、CPU121は、色ずれ発生変化温度を例えば10%加算する。例えば、ステップS203で閾値として用いられた色ずれ発生変化温度が2℃であった場合、色ずれ発生変化温度を2.2℃に変更する。
ステップS213、S215の処理が終了し、更新周期が到来したら、CPU121は、ステップS201から処理を再開する。
なお、第1のパターンと第2のパターンとの違いは、例えば以下のようなものである。すなわち、第1のパターンは、色ずれを検出することのみを目的とした、像間に形成可能な、比較的小規模で簡素なものである。像間にパターンを出力する制御については、例えば特開平8−85234号公報などに示される従来技術を用いて行うことができる。他方、第2のパターンは、色ずれを補正するために十分な、第1のパターンよりも規模が大きいものである。第2のパターンは、このように比較的規模が大きいものであるため、像間に形成することができない。そのため、第2のパターンは、印刷を中断して形成される。
このように、本実施の形態では、温度センサを用いることなく、光学装置50の内部の温度を推定し、色ずれを補正することができる。光学装置50の駆動率に応じて光学装置50の内部の温度について確度の高い推定を行い、色ずれが発生している可能性の有無を判断することができる。また、色ずれの発生の有無は、実際に第1のパターンを形成することにより判断される。したがって、実際に色ずれが発生しているときにのみ、比較的大規模な第2のパターンを形成して補正処理が行われるので、必要外の動作による画像形成動作の遅延やトナーの無駄な消費を防止することができる。
また、色ずれ検出処理は、像間に第1のパターンを形成することにより、画像形成動作の妨げにならないように行われる。したがって、色ずれが発生していない場合に画像形成動作の遅延が生じることを防止することができる。
また、色ずれ検出処理で色ずれが発生していなければ、色ずれ発生変化温度が変更される。したがって、その後に実行される色ずれ補正動作では、色ずれが発生している可能性が高いタイミングで色ずれ検出処理が行われるようになり、トナーの無駄な消費が防止される。
なお、図6のステップS207で色ずれが検出された後、CPU121は、色ずれ発生変化温度を低くする処理を行うようにしてもよい。これにより、より確実に色ずれが検出されるようにすることができ、画像形成装置1が、適正に画像を形成可能になる。
[第2の実施の形態]
第2の実施の形態における画像形成装置の基本的な構成は、第1の実施の形態におけるそれと同じであるためここでの説明を繰り返さない。以下、第2の実施の形態に係る画像形成装置1の色ずれ補正動作について説明する。第2の実施の形態の色ずれ補正動作において、温度推定処理の一部と色ずれ検出処理後の動作の一部とが、上述の第1の実施の形態の色ずれ補正動作とは異なる。
図7は、第2の実施の形態における温度推定処理を示すフローチャートである。
図を参照して、ステップS301からステップS313は、第1の実施の形態における温度推定処理のステップS101からステップS113と同様である。すなわち、CPU121は、光学装置50の現在の駆動率(R)を算出する(S301)。また、CPU121は、駆動率が前回から減少しており前回推定温度(Tpre)が飽和温度(TRMAX)以上であれば、光学装置50の内部の温度が下降中と判断し(S303〜S307)、現在駆動率と、温度上昇テーブル及び温度下降テーブルとから、現在推定温度(T)を算出する(S309)。他方、駆動率が前回から減少してない場合(S303)又は前回推定温度(Tpre)が飽和温度(TRMAX)未満である場合(S305)は、CPU121は、温度が上昇中と判断し(S311)、現在駆動率と温度上昇テーブルとから、現在推定温度(T)を算出する(S313)。
ここで、ステップS309において現在推定温度(T)が算出されると、ステップS315において、CPU121は、更新周期を変更し、より長い更新周期とする。飽和温度近傍からの温度変化は少ないからである。
他方、ステップS313において現在推定温度(T)が算出されると、ステップS317において、CPU121は、現在推定温度(T)が前回推定温度(Tpre)から所定温度以上したか否かを判断する。このとき、例えば、CPU121は、閾値となる温度を1.0℃とし、それ以上の急激な温度変化があったかどうかを確認する。
ステップS317で所定温度以上の変化があれば、ステップS319において、CPU121は、更新周期を変更し、より短い更新周期とする。より速やかに色ずれの発生を検知可能にするためである。
ステップS317で変化が所定温度未満であるとき、及びステップS315、S319の処理が終了したとき、CPU121は、ステップS321からステップS325の処理を実行する。ステップS321からステップS325の処理は、第1の実施の形態における温度推定処理のステップS115からステップS119の処理と同様に行われる。すなわち、CPU121は、算出した現在駆動率(R)を前回駆動率(Rpre)とし(S321)、現在推定温度(T)を前回推定温度(Tpre)とする(S323)。また、CPU121は、駆動率が変化しないと仮定した場合の次回推定温度(Tnext)を算出する(S325)。
図8は、第2の実施の形態における色ずれ補正動作を示すフローチャートである。
図を参照して、ステップS401からステップS413は、第1の実施の形態における色ずれ補正動作のステップS201からステップS213と同様である。すなわち、CPU121は、温度推定処理を行い(S401)、前回補正実行時の温度からの次回推定温度の変化量が所定温度以上であるか否かを判断し(S403)、所定温度以上であれば、画像形成部30に第1のパターンを出力させる(S405)。CPU121は、第1のパターンについて色ずれを検出し(S407)、色ずれがあれば、画像形成部30に第2のパターンを出力させ(S409)、色ずれ補正を実施する(S411)。補正を行うと、CPU121は、現在推定温度(T)を補正実施時の温度として設定する(S413)。
ここで、第2の実施の形態において、ステップS407で色ずれが発生していなければ、ステップS415において、CPU121は、現在、光学装置50の内部の温度が上昇中であるか下降中であるかを判断する。CPU121は、例えば、温度推定処理においてした判断(S307,S311)に従って、この判断を行う。
ステップS415で温度上昇中である場合には、ステップS417において、CPU121は、温度上昇テーブルを修正する。温度上昇テーブルの変更は、例えば、現在の温度上昇テーブル中の温度変化の値を、それぞれ所定量ずつ減少させる(例えば10%ずつ減少させる)ことにより行われる。
他方、ステップS415で温度下降中である場合には、ステップS419において、CPU121は、温度下降テーブルを修正する。温度下降テーブルの変更は、例えば、現在の温度下降テーブル中の温度変化の値を、それぞれ所定量ずつ減少させる(例えば10%ずつ減少させる)ことにより行われる。
ステップS413,S417,S419の処理が終了すると、CPU121は、所定の更新周期が到来した時、再度ステップS401からの一連の処理を再開する。
このように、第2の実施の形態においては、温度推定処理の結果に基づいて更新周期を変更するので、光学装置50の内部の温度変化の大小に応じた間隔で色ずれ補正動作を実行可能である。したがって、必要に応じてCPU121を動作させることができ、CPU121の処理負担を軽減させることができる。
また、色ずれ検出処理において色ずれが発生していなければ、CPU121は、光学装置50の内部の温度が上昇中か下降中かに応じて温度上昇テーブルや温度下降テーブルを修正する。したがって、より色ずれが発生している可能性が高い場合に、色ずれ検出処理が行われ、トナーの無駄な消費が防止される。
[第3の実施の形態]
第3の実施の形態における画像形成装置の基本的な構成は、第1の実施の形態におけるそれと同じであるためここでの説明を繰り返さない。以下、第3の実施の形態に係る画像形成装置1の色ずれ補正動作について説明する。第3の実施の形態の色ずれ補正動作においては、CPU121は、画像形成装置1の動作モードに応じて互いに若干異なる処理を行う。
図9は、第3の実施の形態における色ずれ補正動作を示すフローチャートである。
CPU121は、所定の更新周期毎に、色ずれ補正動作を開始する。図を参照して、ステップS501において、CPU121は、画像形成装置1の動作モードが画像形成中モード、待機中モード、及び電源オン時モードのうちいずれであるかを判断する。
ステップS501で動作モードが待機中モードであれば、ステップS503において、CPU121は、現在推定温度(T)を算出する。現在推定温度(T)の算出は、第1の実施の形態において算出する場合(例えば、図3のステップS113)と同様にして、待機中(駆動率0%)の温度上昇テーブルに基づいて行われる。
また、ステップS501で動作モードが電源オン時モードであれば、ステップS505において、CPU121は、電源オン時点での推定温度(電源オン時推定温度)を現在推定温度(T)として算出する。電源オン時推定温度は、電源オフ状態(駆動率0%)での温度上昇テーブルと、電源オフ時間と、前回電源オフした時点における推定温度などに基づいて、第1の実施の形態において算出する場合(例えば、図3のステップS109)と同様にして算出される。このとき、CPU121は、前回電源オフした時点における推定温度からの温度の下降量を算出する。
ステップS503又はステップS505において現在推定温度(T)を算出したとき、ステップS507において、CPU121は、現在推定温度(T)が前回補正実施時の温度から所定温度以上変化したか否かを判断する。この判断は、例えば、第1の実施の形態における図6のステップS203と同様にして行われる。
ステップS507で現在推定温度(T)が所定温度以上変化している場合、ステップS509において、CPU121は、プリント前色ずれ検出予約を行う。ここで、プリント前色ずれ検査予約が行われているときには、後述のように、用紙への画像形成に先だって色ずれ検出処理及び補正処理が行われる。
ステップS507で現在推定温度(T)が所定温度以上変化していない場合、及びステップS509の処理が終わった場合、ステップS511において、CPU121は、現在推定温度(T)を前回推定温度として設定する。この処理が終了すると、CPU121は、次に所定の更新周期が到来した時から、再びステップS501からの処理を実行する。
他方、ステップS501で動作モードが画像形成中であれば、ステップS513において、CPU121は、プリント前色ずれ検出予約の有無を確認する。
ステップS513でプリント前色ずれ検出予約が行われていれば、ステップS515において、CPU121は、プリント前色ずれ検出予約をクリアする。
ステップS517において、CPU121は、画像形成部30に、中間転写ベルト31上に第1のパターンを形成させる。第1のパターンの形成後は、CPU121は、ステップS525からステップS533の処理を行う。
他方、ステップS513でプリント前色ずれ検査予約が行われていなければ、CPU121は、ステップS519からステップS533の処理を実行する。ここで、ステップS519からステップS533の処理は、第1の実施の形態におけるステップS201からステップS215の処理と同様にして行われるので、ここでの説明は省略する。
ステップS521で所定温度未満であった場合、又はステップS531の処理若しくはステップS533の処理が終了した場合、CPU121は、次に所定の更新周期が到来した時から、再びステップS501からの処理を開始する。
なお、上述のステップS505において、CPU121は、電源オン時推定温度を以下の方法により算出してもよい。すなわち、画像形成装置1が設置されている、LL(低温低湿)環境、NN(中温中湿)環境、HH(高温高湿)環境などのそれぞれについて、CPU121は、電源オン時の初期準備動作の完了時点での光学装置50内の温度を推定する。例えば、CPU121は、LL環境で電源オンした場合は初期準備動作の完了時点で16度であり、NN環境で電源オンした場合は初期準備動作の完了時点で26度であるなど、画像形成装置1の設置環境に基づいて、光学装置50内の温度を推定することができる。
このように、第3の実施の形態では、画像形成装置1の動作モードに基づいて温度推定処理が行われる。画像形成装置1が画像形成中でないときであって光学装置50の内部の温度変化が大きいと推定される場合に、プリント前色ずれ検査予約が自動的に行われる。色ずれが発生している可能性が比較的高い場合にプリント前色ずれ検査予約が行われることで、色ずれが発生している場合にはその色ずれが補正された状態で画像形成が実行される。したがって、より確実に、適正な画像形成を行うことができる。
[実施の形態における効果]
以上のように構成された画像形成装置では、ポリゴンモータの駆動履歴に基づいて、光学装置の内部の温度上昇値と温度変化傾向とを推定することにより、色ずれが発生している可能性の有無について確度の高い判断を行うことができる。また、色ずれの発生の有無は、第1のパターンを形成し読み取ることにより確実に判断される。したがって、画像形成装置は、光学装置内の温度を検出するサーミスタなどの温度センサを用いることなく、光学装置の内部の温度を推定し、色ずれを補正することができる。温度センサを用いないので、画像形成装置の製造コストを低減することができる。
また、実際に色ずれが発生しているときにのみ補正処理が行われるので、必要外の動作による画像形成動作の遅延やトナーの無駄な消費を防止することができる。すなわち、最小限にすることができる。また、画像形成装置は、画像形成動作をスムーズに行うことができる。
また、色ずれ検出処理は、画像形成中であっても、像間に第1のパターンを形成することにより画像形成動作の妨げにならないように行われる。したがって、色ずれが発生していない場合に画像形成動作の遅延が生じることが防止される。すなわち、最小限にすることができる。画像形成装置は、スムーズに画像形成動作を行うことができる。
[その他]
なお、上記第1から第3の実施の形態のそれぞれの色ずれ補正動作を適宜部分的に組み合わせて色ずれ補正動作を行うようにしてもよい。
また、画像形成装置は、一つの光学装置で、各色の感光体を走査するものであってもよい。また、光学装置は、ポリゴンモータを用いてポリゴンミラーを回転させて走査を行うものに限られず、ミラーを揺動させることによりレーザ光を走査するものであってもよい。
また、CPUは、光学装置の内部の温度に限らず、色ずれの発生のその他の要因に関する推定を行うことによって色ずれに関する推定を行い、その結果に応じて色ずれ検出処理を実行するようにしてもよい。
また、画像形成装置としては、モノクロ/カラーの複写機、プリンタ、ファクシミリ装置やこれらの複合機(MFP)などいずれであってもよい。
また、上述の実施の形態における処理は、ソフトウェアによって行っても、ハードウェア回路を用いて行ってもよい。
また、上述の実施の形態における処理を実行するプログラムを提供することもできるし、そのプログラムをCD−ROM、フレキシブルディスク、ハードディスク、ROM、RAM、メモリカードなどの記録媒体に記録してユーザに提供することにしてもよい。また、プログラムはインターネットなどの通信回線を介して、装置にダウンロードするようにしてもよい。上記のフローチャートで文章で説明された処理は、そのプログラムに従ってCPUなどにより実行される。
なお、上記実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。