JP2011111770A - フリクションカッタ - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、中空の杭の沈設側先端に取り付ける短円筒形のフリクションカッタに関し、“杭の高止まり”を防止して杭を容易に沈設させることができるフリクションカッタを提供することを目的とする。
【解決手段】中空のコンクリート杭10の沈設側先端に設けられた金属製の端板11に、閉塞用角鋼30を介し溶接で取付けられた、杭径より大きい外径を有する短円筒形のフリクションカッタ20の、筒体下端201近傍の内周面202上に、この内周面202を連続的に一周するリング状のカッタ補助用角鋼21を備えた。
【選択図】 図2

Description

本発明は、中空の杭の沈設側先端に取り付ける短円筒形のフリクションカッタに関する。
従来より、中空のコンクリート杭や鋼管杭の杭中空部に挿入したオーガによって杭先端地盤を掘削し、掘削した土砂を杭中空部を通して杭頭部から排出しながら杭の自重および圧入によって杭を地中に沈設させ、必要に応じてその杭の上部に上杭を連結し、同様に杭先端地盤を掘削して杭を地中に沈設させ、所定深度まで杭先端を沈設する、いわゆる中掘り工法が知られている。また、このような中掘り工法では、杭の沈設側先端に杭径より少し大径のフリクションカッタを取り付ける技術があり古くから知られている(例えば、非特許文献1参照。)。
フリクションカッタは、杭の外表面と土砂との摩擦力を低減して、杭の沈設抵抗を軽減したり、杭外周面から外方に突出した杭継手接合部を有する杭を中掘り工法によって地中に沈設させるときに杭継手接合部に生ずる沈設抵抗を軽減するためのカッタである。このようなフリクションカッタとして、杭の沈設側先端に溶接やボルトによって取付けられる杭径より大きい外径を有する短円筒形のものがある。
「既製コンクリート杭の施工管理」、社団法人コンクリートパイル建設技術協会、2003年4月、p.270−272
中空の杭の沈設側先端に短円筒形のフリクションカッタが取り付けられた杭の沈設では、その杭を地中に沈設させる際の、フリクションカッタの筒体内部に入り込んだ土砂が、フリクションカッタの内周面と杭の沈設側下端面とが形成する部分に圧密状態となって強固に固化するため、杭の沈設抵抗が増大し、杭の沈設作業能率を阻害する問題がある。そして、地層条件によっては杭の沈設抵抗が過大となり、杭に大きな圧入力を加えても所定深さまでの沈設が不可能な、いわゆる“杭の高止まり”を生ずる場合もある。高止まりした杭は一旦引き抜いて改めて杭を沈設し直す必要があり、莫大な手間とコストを要する。
本発明は、上記事情に鑑み、“杭の高止まり”を防止して杭を容易に沈設させることができるフリクションカッタを提供することを目的とするものである。
上記目的を達成する本発明のフリクションカッタは、中空の杭の沈設側先端に取り付ける短円筒形のフリクションカッタにおいて、フリクションカッタの筒体下端近傍の内周面上に、連続的に又は断続的に一周するリング状の部材を備えたことを特徴とする。
本発明のフリクションカッタは、フリクションカッタの筒体下端近傍の内周面上に、この内周面を連続的に又は断続的に一周するリング状の部材を備えたものである。この部材は、形状、構造、取付手段などに制約はなく、例えば鋼材取付、その他の手段でもよく、溶接肉盛り成形などであってもよい。
中空の杭の沈設側先端にこの部材を備えたフリクションカッタが取り付けられた杭の沈設において、その杭を地中に沈設させるとき、フリクションカッタの筒体下端部の内周面と上記リング状の部材の下端面とが形成する部分に土砂が詰まってなるテーパ体が形成され、その杭をこのテーパ体を越えて地中に沈設させる際、そのテーパ体および部材によって土砂が体積変化を発生させるとともに、その部材の上方に空隙が形成され、その部材より上方の、フリクションカッタの内周面と杭の沈設側下端面とが形成する部分に土砂が固化することが防止される。このような空隙が形成されると、フリクションカッタによる内面の拘束がないため、フリクションカッタの内周面側に向かう土砂の崩壊線が出やすく、杭先端直下の地盤の土砂が杭心側に加えてその内周面側に向かっても崩壊することとなり、従来のフリクションカッタが取り付けられた杭の沈設に比して杭の沈設抵抗が大幅に軽減される。
従って、本発明のフリクションカッタによれば、従来生じていた“杭の高止まり”を防止して杭を容易に沈設させることができるため、経済性の面で無駄を省くことができ、寄与するところが大である。
ここで、本発明のフリクションカッタは、上記部材が、角形断面を有する鋼材であることが好ましい。
このような好ましい形態によれば、中空の杭の沈設側先端にこのフリクションカッタが取り付けられた杭の沈設において、その杭を地中に沈設させるとき、フリクションカッタの筒体下端部の内周面と角形断面を有するリング状の鋼材の下端面とが形成する部分に土砂が詰まり易く、その部分に土砂が詰まって見掛上のテーパ体が形成されやすく、フリクションカッタの刃先抵抗を小さくすることができる。
本発明によれば、“杭の高止まり”を防止して杭を容易に沈設させることができるフリクションカッタが提供される。
本発明の実施例であるフリクションカッタを中空のコンクリート杭の沈設側先端外周に取り付けたものの部分正面図および部分縦断面図である。 図1に示すコンクリート杭の沈設途中の部分縦断面図である。 図1,図2に示すフリクションカッタの筒体下端部の内周面とカッタ補助用角鋼の下端面とが形成する部分に土砂が詰まってなるテーパ体を示す部分縦断面図である。 従来のフリクションカッタを中空のコンクリート杭の沈設側先端外周に取り付けたものの沈設途中の部分縦断面図である。 図4に示すフリクションカッタの内周面とコンクリート杭の沈設側下端面とが形成する部分に土砂が詰まってなるテーパ体を示す部分縦断面図である。
以下、本発明の実施の形態を説明するのに先立って、中空の杭の沈設側先端に取り付ける短円筒形のフリクションカッタについての従来の技術の問題点を、図4,図5を参照して分析する。
図4は、従来のフリクションカッタ40を中空のコンクリート杭10の沈設側先端外周に取り付けたものの沈設途中の部分縦断面図である。また、図5は、図4に示すフリクションカッタ40の内周面401とコンクリート杭10の沈設側下端面101とが形成する部分に土砂が詰まってなるテーパ体51を示す部分縦断面図である。
図4に示すフリクションカッタ40は、中空のコンクリート杭10の沈設側先端に設けられた金属製の端板11に、閉塞用角鋼30を介し溶接で取付けられた、コンクリート杭10の外径より大きい外径を有する短円筒形のカッタである。
コンクリート杭10は、例えば、杭径Dがφ1000mm、杭長Lが30m、肉厚tが130mmの杭である。また、フリクションカッタ40は、例えば、外径Dが1062mm、肉厚tsが19mmである。尚、フリクションカッタ40の外径Dや肉厚tsの値は一例であって、コンクリート杭10の杭径や地層条件や上杭の本数等によって決定する値である。
このフリクションカッタ40が取り付けられたコンクリート杭10は、中掘り工法によって沈設する杭である。即ち、コンクリート杭10は、杭中空部に挿入したオーガ(図示省略)によって杭先端地盤を掘削し、掘削した土砂を杭中空部を通して杭頭部から排出しながらコンクリート杭10の自重および圧入によって地中に沈設させ、必要に応じてコンクリート杭10の上部に上杭を連結し、同様に杭先端地盤を掘削して地中に沈設させ、所定深度まで杭先端を沈設する中掘り工法に用いる杭である。
また、このフリクションカッタ40が取り付けられたコンクリート杭10を地中に沈設させると、図5に示すように、フリクションカッタ40の内周面401とコンクリート杭10の沈設側下端面101とが形成する部分に土砂が詰まってなる、テーパ角θを有するテーパ体51が形成される。
そして、このフリクションカッタ40が取り付けられたコンクリート杭10を地中に沈設させるときに土圧がかかる部分の受圧面積Acは、(式1)に示すように、杭径Dがφ1000mmにおいては455722mmである。尚、Dはフリクションカッタ40の外径であり、Dはコンクリート杭10の内径である。また、Pはコンクリート杭10の降下推力である。この降下推力Pは、コンクリート杭10の自重や、圧入する場合は自重に圧入力を加えたものから、コンクリート杭10やフリクションカッタ40の外表面と土砂との摩擦抵抗を差し引いたものであって、その自重は、上杭を連結するごとに増大する。
Ac=(π/4)(D −D
=(π/4)(D −(D−2t)
=(π/4)(1062−(1000−2×130)
=(π/4)(1062−740
=455722(mm)・・・・・・・・・・・・・・・(式1)
従って、土圧qは、(式2)に示すように、P/455722である。
=P/Ac
=P/455722・・・・・・・・・・・・・・・(式2)
このような従来のフリクションカッタ40が取り付けられたコンクリート杭10を地中に沈設させる際の、フリクションカッタ40の筒体内部に入り込んだ土砂が、フリクションカッタ40の内周面401とコンクリート杭の沈設側下端面101とが形成する部分に圧密状態となって強固に固化するため、コンクリート杭10の沈設抵抗が大きく、コンクリート杭10の沈設作業能率を阻害する問題がある。また、図4に示すように、フリクションカッタ40の筒体内部に入り込んだ、杭先端直下の地盤の土砂は、杭心側(図の矢印A方向)に向かってのみ崩壊することとなるため、コンクリート杭10の沈設抵抗が大きく、コンクリート杭10の沈設作業能率が悪い。そして、地層条件によっては沈設抵抗が過大となって“杭の高止まり”を生ずる場合もある。高止まりした杭は一旦引き抜いて改めて杭を沈設し直す必要があり、莫大な手間とコストを要する。
本発明は、このような従来の問題を解決したもので、以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
以下、図4,図5を参照して説明した従来例における要素と同じ要素については同じ符号を付して説明を省略し、従来例との相違点についてのみ説明する。
図1は、本発明の実施例であるフリクションカッタ20を中空のコンクリート杭10の沈設側先端外周に取り付けたものの部分正面図および部分縦断面図である。尚、図1の左側が部分正面図であり、右側が部分縦断面図である。図2は、図1に示すコンクリート杭10の沈設途中の部分縦断面図である。また、図3は、図1,図2に示すフリクションカッタ20の筒体下端201部の内周面202とカッタ補助用角鋼21の下端面211とが形成する部分に土砂が詰まってなるテーパ体50を示す部分縦断面図である。
図1,図2に示すフリクションカッタ20は、中空のコンクリート杭10の沈設側先端に設けられた金属製の端板11に、閉塞用角鋼30を介し溶接で取付けられた、杭径より大きい外径を有する短円筒形のカッタである。また、このフリクションカッタ20は、フリクションカッタ20の筒体下端201近傍の内周面202上に、この内周面202を連続的に一周するリング状のカッタ補助用角鋼21を備えている。このカッタ補助用角鋼21は、本発明にいう部材の実施例であって、例えば溶接用圧延鋼材(SM400)等を用いることができる。
フリクションカッタ20は、例えば、外径Dが1062mm、肉厚tsが19mm、カッタ補助用角鋼21の幅wが16mmである。また、カッタ補助用角鋼21の取付位置は、例えば、フリクションカッタ20の筒体下端201から60mm離れた内周面202上である。尚、これらの数値は一例であって、コンクリート杭10の杭径や地層条件や上杭の本数等によって決定する値である。
このようなフリクションカッタ20が取り付けられたコンクリート杭10は、図4,図5を参照して説明した従来のフリクションカッタ40が取り付けられたコンクリート杭10と同様に、中掘り工法によって沈設する杭である。
図1,図2に示すフリクションカッタ20が取り付けられたコンクリート杭10を地中に沈設させると、図3に示すように、フリクションカッタ20の筒体下端201部の内周面202とカッタ補助用角鋼21の下端面211とが形成する部分に土砂が詰まってなる、テーパ角θを有するテーパ体50が形成される。このテーパ体50のテーパ角θは、図5に示す従来のフリクションカッタ40の内周面401とコンクリート杭10の沈設側下端面101とが形成する部分に土砂が詰まってなるテーパ体51のテーパ角θよりも鋭い角度であるため、土砂の崩壊性が高い。
本実施例では、コンクリート杭10を地中に沈設させる際、テーパ角θを有するテーパ体50およびリング状のカッタ補助用角鋼21によって土砂が体積変化を発生させるとともに、カッタ補助用角鋼21の上方に空隙が形成され、カッタ補助用角鋼21より上方の、フリクションカッタ20の内周面202とコンクリート杭10の沈設側下端面101とが形成する部分に土砂が固化することが防止される。このような空隙が形成されると、フリクションカッタ20による内面の拘束がないため、フリクションカッタ20の内周面202側(図の矢印B方向)に向かう土砂の崩壊線が出やすく、杭先端直下の地盤の土砂が杭心側(図の矢印A方向)に加えてその内周面202側(図の矢印B方向)に向かっても崩壊することとなり、従来のフリクションカッタ40が取り付けられたコンクリート杭10の沈設に比して沈設抵抗が大幅に軽減される。従って、本実施例のフリクションカッタ20によれば、従来しばしば生じていた“杭の高止まり”を防止してコンクリート杭10を容易に沈設させることができる。
このようなフリクションカッタ20が取り付けられたコンクリート杭10を地中に沈設させるときに土圧がかかる部分の受圧面積Acは、(式3)に示すように、杭径Dがφ1000mmにおいては112924mmである。尚、Dはフリクションカッタ20の外径であり、Dはフリクションカッタ20のカッタ補助用角鋼21が備えられた部分の内径である。また、Pはコンクリート杭10の降下推力である。
Ac=(π/4)(D −D
=(π/4)(D −(D−2(ts+w))
=(π/4)(1062−(1062−2×(19+16))
=(π/4)(1062−992
=112924(mm)・・・・・・・・・・・・・・・(式3)
従って、土圧qは、(式4)に示すように、P/112924である。
=P/Ac
=P/112924・・・・・・・・・・・・・・・(式4)
このように、フリクションカッタ20が取り付けられたコンクリート杭10を地中に沈設させるときに土圧がかかる部分の受圧面積Acは、上述した(式1)に示す従来の受圧面積Acよりも小さく、また、土圧qは、上述した(式2)に示す従来の土圧qよりも大きい。上述した例では、(式5)に示すように、土圧qは従来の土圧qの約4倍である。土圧qが従来例のものよりも大きいということは、従来例のものよりも土砂が崩壊し易いことを意味する。
/q=(P/112924)/(P/455722)
=455722/112924
=4・・・・・・・・・・・・・・・(式5)
尚、上述した実施例では、本発明にいう中空の杭が、中空のコンクリート杭である例について説明したが、本発明にいう中空の杭は、これに限られるものではなく、例えば、中空の鋼管杭であってもよい。
また、上述した実施例では、本発明にいう部材が、角形断面を有する鋼材(カッタ補助用角鋼)取付である例について説明したが、本発明にいう部材は、これに限られるものではなく、例えば、円形断面を有する鋼材(丸鋼)取付や、異形棒鋼取付や、本実施例にいうテーパ角θを有するテーパ体を含む形状の断面を有する鋼材取付や、溶接肉盛り成形などであってもよく、形状、構造、取付手段などに制約はない。
また、上述した実施例では、本発明にいう部材が、内周面を連続的に一周する例について説明したが、本発明にいう部材は、これに限られるものではなく、内周面を断続的に一周していてもよく、あるいは、内周面を連続的に又は断続的に二周以上にわたっていてもよい。
10 コンクリート杭
101 沈設側下端面
11 端板
20 フリクションカッタ
201 筒体下端
202 内周面
21 カッタ補助用角鋼
211 下端面
30 閉塞用角鋼
40 フリクションカッタ
401 内周面
50 テーパ体
51 テーパ体

Claims (2)

  1. 中空の杭の沈設側先端に取り付ける短円筒形のフリクションカッタにおいて、フリクションカッタの筒体下端近傍の内周面上に、該内周面を連続的に又は断続的に一周するリング状の部材を備えたことを特徴とするフリクションカッタ。
  2. 前記部材が、角形断面を有する鋼材であることを特徴とする請求項1記載のフリクションカッタ。
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