以下、本発明の実施形態について添付図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明では、「上」、「下」、「右」、「左」およびそれらの用語を含む別の用語など特定の方向を意味する用語を使用するが、それらの使用は図面を参照した発明の理解を容易にするためであって、それらの用語の意味によって本発明の技術的範囲が限定されるものではない。
本願発明者等は、金属製の閉断面部材の内部に樹脂製の補強部材が取り付けられてなる車両用フレーム構造において、軽量化を図りつつ該閉断面部材の曲げ抗力を効率的に確保することができる車両用フレーム構造の開発にあたり、先ず、閉断面状に形成された車体フレームに外部から曲げ荷重が入力されて曲げ変形される際の変形挙動について、CAE(Computer Aided Enginnering)によるシミュレーション解析を行った。
図11は、閉断面状に形成された車体フレームの曲げ変形挙動を解析するためのシミュレーションについて説明するための説明図であり、図11(a)は、車体フレームの曲げ変形挙動を解析するのに用いたモデルを示す図、図11(b)は、車体フレームに荷重が負荷されて車体フレームが湾曲した状態を示す図、図12は、車体フレームの曲げ変形挙動をシミュレーション解析した結果を示す斜視図、図13は、図12における車体フレームの屈曲部の断面を示す断面図である。なお、図12では、車体フレームの各部の変形量の大小を色の濃淡で表し、変形量が大きいほど濃い色で表している。また、図12及び図13では、車体フレームの曲げ変形の進行状態を(a)、(b)、(c)、(d)の順に表しており、後述する図14に示す圧子の下降ストロークがS0、S1、S2、S3の場合を順に示している。
このシミュレーションでは、金属製の閉断面状に形成した車体フレーム200として、図12及び図13に示すように、上面部200aと、上面部200aと離間した状態で平行に設けられる下面部200bと、上面部200aと下面部200bとに隣接し、車体フレーム200の上面部200aと下面部200bとの間に位置する両側の側面部200c、すなわち図12及び図13において上面部200aの右側端部と下面部200bの右側端部との間に位置する右側面部200c及び上面部200aの左側端部と下面部200bの左側端部との間に位置する左側面部200cとを有し、略矩形閉断面状に形成したモデルを用いて、この車体フレーム200に外部から曲げ荷重を負荷して車体フレーム200が曲げ変形される際の変形挙動をシミュレーション解析した。
具体的には、図11(a)に示すように、所定長さX1を有する車体フレーム200を、この長さX1より短い所定距離X2だけ離間させた2つの固定点201で支持させ、2つの固定点201の中間位置に対応する車体フレーム200の上面部200aの長手方向における中央部P1に上方から圧子202を一定速度で下降させ、圧子202を介して、車両衝突時に外部から入力される荷重を模擬した荷重Fを車体フレーム200に負荷し、車体フレーム200の曲げ変形挙動を調べた。
このようにして車体フレーム200に外部から曲げ荷重Fが負荷される場合、図11(b)に示すように、車体フレーム200は下側に凸状に湾曲して変形し、車体フレーム200は、上面部200aでは長手方向両端から圧縮方向の力が作用して圧縮力が生じ、下面部200bでは長手方向両端から引張方向の力が作用して引張力が生じることとなる。また、側面部200cには、中立軸210より上面部200a側では圧縮力が生じ、中立軸210より下面部200b側では引張力が生じることとなる。
図14は、車体フレームに荷重を負荷する圧子の下降ストロークと該荷重に対する反力との関係、及び圧子の下降ストロークとエネルギー吸収量との関係を示すグラフであり、図14では、圧子202が車体フレーム200の上面部200aに接触した位置から車体フレーム200の曲げ変形とともに下降する圧子202の下降ストロークを横軸にとり、荷重Fに対する反力F’を左側縦軸にとって表示し、エネルギー吸収量EAを右側縦軸にとって表示している。エネルギー吸収量EAは、車体フレーム200が曲げ変形されることにより吸収できるエネルギーであり、荷重Fに対する反力F’と圧子202の下降ストロークとの積で表されるものである。
図12から図14を参照して、シミュレーション解析による車体フレーム200の曲げ変形挙動について説明する。
図12及び図13の(a)に示すように、圧子202が車体フレーム200の上方から下降し、圧子202が上面部200aに接触した位置である圧子の下降ストロークがS0の場合、車体フレーム200において、上面部200aと側面部200cとの角部200dの頂点P2は、下面部200bと側面部200cとの角部200eの頂点P3の略垂直方向上方側に位置している。なお、頂点P2、P3は、車体フレーム200が曲げ変形される際の屈曲部、すなわち中央部P1を有する断面における角部200d、200eの頂点を表している。
この状態から圧子202を下方へ移動し、車体フレーム200に荷重Fを負荷すると、図14に示すように、圧子202の下降ストロークが大きくなるにつれて荷重Fに対する反力F’が大きくなり、車体フレーム200が下側に凸状に湾曲して変形され、車体フレーム200は、上面部200aで圧縮方向の力が作用し、下面部200bで引張方向の力が作用し、荷重Fが負荷される中央部P1から曲げ変形される。
そして、圧子202の下降ストロークがS1の場合に荷重Fに対する反力F’が最大となり、図12及び図13の(b)に示すように、車体フレーム200は下側に凸状に湾曲して変形されるとともに閉断面状に形成される車体フレーム200の内方側へ変形され、この変形に伴って上面部200aに隣接する側面部200cが上面部200aと側面部200cとの角部200dを起点として断面方向における外方側に膨らんで面外変形を生じ、角部200eの頂点P3に対する角部200dの頂点P2の位置が略垂直方向から外方側に傾斜し、図12における変形箇所αで示すように、角部200dに変形量の大きい部分が生じる。また、図13(b)に示すように、この変形に伴って下面部200bが車体フレーム200の内方側に変位している。なお、荷重Fに対する反力F’が最大となる最大荷重F’maxが曲げ抗力の程度を表すものである。
さらに圧子202の下降ストロークが大きくなると、図14に示すように、圧子202の下降ストロークに伴って荷重Fに対する反力F’が小さくなり、図12及び図13の(c)及び(d)に示すように、車体フレーム200はさらに曲げ変形され、上面部200aが車体フレーム200の内方側へさらに変形され、この変形に伴って側面部200cが断面方向における外方側へさらに膨らんで角部200eの頂点P3に対する角部200dの頂点P2の位置が垂直方向からさらに外方側に傾斜して面外変形を生じるとともに、下面部200dが車体フレーム200の内方側へさらに変位し、車体フレーム200が曲げ変形され座屈している。
このシミュレーション解析結果から、本願発明者等は、略矩形閉断面状に形成された閉断面部材に外部から曲げ荷重が入力されて曲げ変形される場合、曲げ荷重が入力される際に圧縮方向の力が作用する第1面部が荷重の入力方向に沿って閉断面部材の内方側へ変形し始め、この変形に伴って該第1面部に隣接する側面部が閉断面部材の外方側に膨らんで面外変形を生じるとともに、荷重が入力される際に引張方向の力が作用する第2面部が閉断面部材の内方側へ変形し、閉断面部材が曲げ変形されて座屈することを見出した。
なお、本願発明者等は、前述したシミュレーション解析に加えて、閉断面状に形成した実際の車体フレームについても同様に、車体フレームに外部から曲げ荷重を入力して曲げ変形する際の変形挙動を調べる実験を行ったが、かかる実験においても、前述したシミュレーション解析結果と略同様の結果が得られた。
そこで、これらシミュレーション解析結果及び実験結果に基づいて、閉断面部材の曲げ変形初期に生じ得る閉断面部材の内方側への第1面部の曲げ変形及び該変形に伴って変形する側面部の面外変形を抑制することができれば、閉断面部材が曲げ変形されることを有効に抑制することができ、軽量化を図りつつ閉断面部材の曲げ抗力を効率的に確保することができると考えられる。
以下、本発明の実施形態に係る車両用フレーム構造について説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る車両用フレーム構造を適用した車体フレームを示す斜視図、図2は、図1におけるY2a−Y2a線及びY2b−Y2b線に沿った車体フレームの断面図であり、図2(a)は、Y2a−Y2a線に沿った車体フレームの断面図、図2(b)は、Y2b−Y2b線に沿った車体フレームの断面図である。なお、図1、並びに後述する図4、図5、図7及び図9では、フレーム本体内の補強部材を明瞭に図示するため、フレーム本体を一点鎖線で示し、これを透過状態で示している。
図1及び図2に示すように、本発明の第1の実施形態に係る車両用フレーム構造を適用した車体フレーム1は、閉断面状に形成された閉断面部材としてのフレーム本体10と、フレーム本体10の長手方向に沿ってフレーム本体10の内部に取り付けられ、該フレーム本体10を補強するための補強部材20と、を有している。
フレーム本体10は、鋼板などの金属製の板状素材を断面ハット状にプレス加工して得られる第1の板状部材11と、鋼板などの金属製の板状素材でなる第2の板状部材12とから構成されている。第1の板状部材11は、略平面状に形成される底面部11aと、底面部11aの両側において該底面部11aから略垂直方向に延びる側面部11bと、側面部11bから略直角方向に外側に延びるフランジ部11cとを備え、第2の板状部材12は、略平面状に形成される平面部12aを備えており、第1の板状部材11のフランジ部11cを第2の板状部材12の平面部12aに当接させてスポット溶接等で接合することにより、フレーム本体10が略矩形閉断面状に形成されている。
補強部材20は、樹脂材料を射出成形等によって成形して得られるものであり、フレーム本体10を補強するためにフレーム本体10の内部に取り付けられている。補強部材20は、第1の板状部材11の底面部11aの形状に応じて略矩形状に形成される平板状の平板部21と、該平板部21に結合され平板部21から第2の板状部材12の平面部12aに向かって略垂直方向に延びるリブ部22とを備え、該リブ部22は、フレーム本体10の長手方向に延び第1の板状部材11の両側の側面部11bに沿って平行に配設される2つの板状の壁面部23と、この2つの壁面部23を結合し、格子状に配設されるリブ24とを有している。
格子状のリブ24は、図2(b)に示すように、第1の板状部材11の側面部11bに平行にフレーム本体10の長手方向に延びる複数の板状の縦リブ24aと、フレーム本体10の長手方向と直交し、フレーム本体10を横切る方向に延びる複数の板状の横リブ24bとを有している。
リブ24の複数の横リブ24bはそれぞれ、複数の縦リブ24bに結合されるとともに、フレーム本体10の一方の側面部11bに沿って配設された壁面部23からフレーム本体10の他方の側面部11bに沿って配設された壁面部23までフレーム本体10を横切る方向に延びて第1の板状部材11の両側の側面部11bに沿って配設される2つの壁面部23に結合され、該横リブ24bを介して両側の壁面部23を結合する。
複数の横リブ24bもまたそれぞれ平行に設けられ、横リブ24bと縦リブ24aとは互いに直角に結合されている。これにより、リブ部22では、図2(b)に示すように、両側の壁面部23の間の空間が縦リブ24aと横リブ24bとによって区画され、リブ24によって第1の板状部材11の底面部11aから第2の板状部材12の平面部12aに向かう方向に開口する四角形状の開口部25が形成されている。
リブ24はまた、図2(a)に示すように、横リブ24bが、フレーム本体10の最も側面部11b側で第1の板状部材11の底面部11aと第2の板状部材12の平面部12aとの間の略中間位置よりも短く形成され、フレーム本体10を横切る方向においてフレーム本体10の側面部11b側からその中央側に向かうにつれて平板部21からの長さが短く形成され、フレーム本体10を横切る方向において凹状に湾曲して形成されている。補強部材20の第2の板状部材12側が、縦リブ24a、横リブ24bとも、アーチ状に削り取ったような形状をなしている。
縦リブ24aもまた、フレーム本体10を横切る方向においてフレーム本体10の側面部11b側からその中央側に向かうにつれて平板部21からの長さが短く形成され、該縦リブ24aと結合される横リブ24bと平板部21から同じ長さを有するように形成されている。なお、補強部材20の壁面部23は、平板部21からの長さが該壁面部23と結合される横リブ24bと同じ長さを有するように形成されている。
このようにして、補強部材20のリブ24は、フレーム本体10を横切る方向においてフレーム本体10の側面部11b側からその中央側に向かうにつれて平板部21からの長さが短く形成され、フレーム本体10を横切る方向においてフレーム本体10の中央側ではフレーム本体10の側面部11b側に比して平板部21からの長さが短く形成されている。
この補強部材20は、平板部21が第1の板状部材11の底面部11aに沿って配設されて底面部11aに発泡性接着剤27によって接着結合され、フレーム本体10を横切る方向におけるリブ部22の両側の壁面部23が第1の板状部材11の側面部11bに沿って配設されて該側面部11bに発泡性接着剤27によって接着結合されている。
これにより、車体フレーム1では、図2(a)に示すように、補強部材20の平板部21と壁面部23とが連続して結合されて形成される角部26は、その外面側がフレーム本体10の第1の板状部材11の底面部11aと側面部11bとの角部10aに合致して接着結合され、その内面側がリブ24の横リブ24bで裏打ちされる。
このようにして構成される車体フレーム1は、曲げ荷重が入力されることが想定される方向に第1の板状部材11の底面部11aが対向するように配置される。したがって、車体フレーム1に外部から曲げ荷重が入力される際には、フレーム本体10の第1の板状部材11の底面部11aに曲げ荷重が入力され、該底面部11aに圧縮方向の力が作用して圧縮力が生じ、第2の板状部材12の平面部12aに引張方向の力が作用して引張力が生じることとなる。
図3は、フレーム本体と補強部材とに作用する荷重を説明するための説明図であり、図3(a)は、フレーム本体の一部を透過状態で示した車体フレームの要部を示す斜視図、図3(b)は、車体フレームの断面図である。図3に示すように、車体フレーム1に外部から曲げ荷重が入力され、フレーム本体10に曲げ荷重が入力される際には、フレーム本体10には、該フレーム本体10の曲げの中立軸L1より第1の板状部材11の底面部11b側では圧縮方向の力が作用して圧縮力が生じ、該中立軸L1より第2の板状部材12の平面部12a側では引張方向の力が作用して引張力が生じることとなる。
また、車体フレーム1に外部から曲げ荷重が入力される際には、フレーム本体10の内部に取り付けられた補強部材20にも曲げ荷重が負荷され、補強部材20には、該補強部材20の曲げの中立軸L2より第1の板状部材11の底面部11b側では圧縮方向の力が作用して圧縮力が生じ、該中立軸L2より第2の板状部材12の平面部12aでは引張方向の力が作用して引張力が生じることとなる。
本実施形態では、補強部材20は、該補強部材20の曲げの中立軸L2が、フレーム本体10の曲げの中立軸L1よりも圧縮側に位置するように配置され、図3(b)に示すように、フレーム本体10の曲げの中立軸L1よりも第1の板状部材11の底面部11b側に位置するように配置されている。
このようにして、補強部材20をフレーム本体10の曲げの中立軸L1よりも圧縮側に位置するように配置することで、車体フレーム1に外部から荷重が入力され、フレーム本体10に外部から荷重が入力される際に、車体フレーム1全体としての曲げの中立軸を、フレーム本体10のみの曲げの中立軸より該中立軸の圧縮側に移動させることができ、フレーム本体10の第1の板状部材11の底面部11bを圧縮に対して強くすることができる。
このように、本発明の第1の実施形態に係る車両用フレーム構造では、フレーム本体10は、外部から曲げ荷重が入力される際に、圧縮方向の力が作用する第1の板状部材11の底面部11bと、引張方向の力が作用する第2の板状部材12の平面部12aと、フレーム本体10の該底面部11bと該平面部12aとの間に位置する両側の第1の板状部材11の側面部11bとを有し、フレーム本体10の内部に取り付けられた補強部材20は、両側の側面部11bにそれぞれ接着結合される2つの壁面部23と、2つの壁面部23を結合し格子状に配設されるリブ24とを有するリブ部22を備え、フレーム本体10の曲げの中立軸L1より圧縮側に補強部材20の曲げの中立軸L2が位置するように配置されている。
前記車両用フレーム構造によれば、補強部材20は、フレーム本体10の曲げの中立軸L1より圧縮側に補強部材20の曲げの中立軸L2が位置するように配置されているので、フレーム本体10の内部全体を補強する場合に比して重量の増加を抑えつつ、外部から曲げ荷重が入力される際に、第1の板状部材11の底面部11bを圧縮に対して強くすることができ、フレーム本体10の曲げ変形初期に生じ得るフレーム本体10の内方側への該底面部11bの曲げ変形を抑制することができる。また、フレーム本体10の両側の側面部11bに接着結合された補強部材20の壁面部23によって該側面部11bの剛性を高めて該側面部11bの外方側への面外変形を抑制することができるとともに、2つの壁面部23を結合する補強部材20のリブ24によって該側面部11bの変形をさらに抑制することができる。したがって、フレーム本体10の曲げ変形初期に生じ得るフレーム本体10の内方側への底面部11aの曲げ変形及び該変形に伴って変形する側面部11bの面外変形を有効に抑制することができ、軽量化を図りつつ曲げ抗力を効率的に確保することができる。
また、補強部材20は、底面部11aに沿って配設されて該底面部11aに接着結合される平板部21を更に備え、平板部21に壁面部23及びリブ24が結合されていることにより、外部から曲げ荷重が入力される際に、平板部21によって直接底面部11aの剛性を高めて底面部11aの曲げ変形の抑制効果を高めることができるとともに、平板部21に結合される補強部材20のリブ24によって平板部21を圧縮に対して強くすることができるので、底面部11aの曲げ変形をさらに抑制することができる。
更に、リブ24は、平板部21から垂直方向に延び、フレーム本体10を横切る方向においてフレーム本体10の中央側ではフレーム本体10の側面部11b側に比して平板部21からの長さが短く形成されていることにより、重量の増加を抑えつつフレーム本体10の側面部11bの変形に対する抑制効果を確保することができる。フレーム側面部11bの面外変形抑止への貢献度が小さいため、中央部のリブ24の平板部21からの長さを小さくする、つまりアーチ状に削り取ったような形状にすることにより、側面部11b変形抑止の効果を損なうことなく、補強部材20の質量を低減できる。
また更に、平板部21と壁面部23とが連続して結合されて角部26が形成され、該角部26は、その外面側がフレーム本体10の第1の板状部材11の底面部11aと側面部11bとの角部10aに合致して接着結合され、その内面側がリブ24で裏打ちされていることにより、外部から曲げ荷重が入力される際に、フレーム本体10の第1の板状部材11の底面部11aの曲げ変形に伴って変形する側面部11bの外方側への面外変形の起点となる底面部11aと側面部11bとの角部10aを直接補強することができ、フレーム本体10の曲げ変形に対する抑制効果をさらに高めることができる。
この車両用フレーム構造を適用した車体フレーム1を製造する場合には、先ず、断面ハット状に形成した第1の板状部材11を第2の板状部材12と溶接し、第1の板状部材11と第2の板状部材12とからなるフレーム本体10の内部に、補強部材20の平板部21とリブ部22の両側の壁面部23とに発泡性接着剤27を塗布した状態で補強部材20を挿入し、図2(a)に示す所定位置に保持する。そして、電着塗装工程におけるベーキング時に発泡性接着剤27を発泡させて、発泡性接着剤27によって補強部材20をフレーム本体10に接着結合して製造する。これにより、電着塗装工程において、電着液がフレーム本体10の内部に入り込むことができ、耐食性向上の効果を得ることができる。
なお、格子状に配設されたリブ24は、縦リブ24aと横リブ24bとによって四角形状の開口部25が形成されているが、フレーム本体10を横切る方向に延びる横リブ24bをフレーム本体10の長手方向と直交する方向から傾斜させて、縦リブ24aと横リブ24bとによって形成される開口部を三角形状や六角形状など他の形状に形成するようにしてもよい。
図4は、本発明の第2の実施形態に係る車両用フレーム構造を適用した車体フレームを示す図であり、図4(a)は、本発明の第2の実施形態に係る車両用フレーム構造を適用した車体フレームの斜視図、図4(b)は、図4(a)におけるY4b−Y4b線に沿った車体フレームの断面図である。なお、第2の実施形態は、第1の実施形態とリブ部の形状が異なるのみであるので、第1の実施形態と同様の構成を備えて同様の作用をなすものについては同一符号を付して説明を省略する。
図4に示すように、本発明の第2の実施形態に係る車両用フレーム構造を適用した車体フレーム31は、フレーム本体10の内部に補強部材40が取り付けられ、補強部材40は、フレーム本体10の両側の側面部11bに沿って配設されて該両側の側面部11bにそれぞれ接着結合される2つの板状の壁面部43と、該2つの壁面部43を結合し格子状に配設されるリブ44とを有するリブ部42を備え、外部から曲げ荷重が入力される際のフレーム本体10の曲げの中立軸L1より圧縮側に補強部材40の曲げの中立軸L2が位置するように配置されているが、リブ部42は、その一部がフレーム本体10の曲げの中立軸L1よりも第2の板状部材12の平面部12a側に延びるように形成されている。
補強部材40のリブ部42は、補強部材20のリブ部22と同様に、フレーム本体10の長手方向に延びる縦リブ44aとフレーム本体10を横切る方向に延びる横リブ44bとが四角形状の開口部45を形成するように格子状に配置されたリブ44を有しており、該リブ44は、フレーム本体10を横切る方向においてフレーム本体10の側面部11b側からその中央側に向かうにつれて平板部21からの長さが短く形成されているが、フレーム本体10の側面部11b側ではフレーム本体10の曲げの中立軸L1よりも第2の板状部材12の平面部12a側まで延びるように形成されている。補強部材40の壁面部43もまた、平板部21からの長さが該壁面部43と結合される横リブ44bと同じ長さを有するように形成されている。
このように構成される車両用フレーム構造においても、補強部材40は、フレーム本体10の曲げの中立軸L1より圧縮側に補強部材40の曲げの中立軸L2が位置するように配置されており、外部から曲げ荷重が入力される際に、フレーム本体10の曲げ変形初期に生じ得るフレーム本体10の内方側への底面部11aの曲げ変形及び該変形に伴って変形する側面部11bの面外変形を有効に抑制することができ、軽量化を図りつつ曲げ抗力を効率的に確保することができる。
図5は、本発明の第3の実施形態に係る車両用フレーム構造を適用した車体フレームを示す斜視図である。また、図6は、図5におけるY6a−Y6a線及びY6b−Y6b線に沿った車体フレームの断面図であり、図6(a)は、Y6a−Y6a線に沿った車体フレームの断面図、図6(b)は、Y6b−Y6b線に沿った車体フレームの断面図である。なお、第3の実施形態は、第1の実施形態とリブ部の形状が異なるのみであるので、第1の実施形態と同様の構成を備えて同様の作用をなすものについては同一符号を付して説明を省略する。
図5及び図6に示すように、本発明の第3の実施形態に係る車両用フレーム構造を適用した車体フレーム51は、フレーム本体10の内部に補強部材60が取り付けられ、補強部材60は、フレーム本体10の両側の側面部11bに沿って配設されて該両側の側面部11bにそれぞれ接着結合される2つの板状の壁面部63と、該2つの壁面部63を結合し格子状に配設されるリブ64とを有するリブ部62を備え、外部から曲げ荷重が入力される際のフレーム本体10の曲げの中立軸L1より圧縮側に補強部材60の曲げの中立軸L2が位置するように配置されているが、リブ62は、平板部21から垂直方向に延びるリブの長さが等しく形成されている。
補強部材60のリブ部62は、補強部材20のリブ部22と同様に、フレーム本体10の長手方向に延びる縦リブ64aとフレーム本体10を横切る方向に延びる横リブ64bとが四角形状の開口部65を形成するように格子状に配置されたリブ64を有しているが、リブ64は、第1の板状部材11の底面部11aと第2の板状部材12の平面部12aとの間の略中間位置よりも短く形成され、フレーム本体10を横切る方向において平板部21からの長さが等しく形成されている。補強部材60の壁面部63もまた、平板部21からの長さが該壁面部63と結合される横リブ64bと同じ長さを有するように形成されている。
このように構成される車両用フレーム構造においても、補強部材60は、フレーム本体10の曲げの中立軸L1より圧縮側に補強部材60の曲げの中立軸L2が位置するように配置されており、外部から曲げ荷重が入力される際に、フレーム本体10の曲げ変形初期に生じ得るフレーム本体10の内方側への底面部11aの曲げ変形及び該変形に伴って変形する側面部11bの面外変形を有効に抑制することができ、軽量化を図りつつ曲げ抗力を効率的に確保することができる。
図7は、本発明の第4の実施形態に係る車両用フレーム構造を適用した車体フレームを示す斜視図である。また、図8は、図7におけるY8a−Y8a線及びY8b−Y8b線に沿った車体フレームの断面図であり、図8(a)は、Y8a−Y8a線に沿った車体フレームの断面図、図8(b)は、Y8b−Y8b線に沿った車体フレームの断面図である。なお、第4の実施形態は、第3の実施形態とリブ部の形状が異なるのみであるので、第3の実施形態と同様の構成を備えて同様の作用をなすものについては同一符号を付して説明を省略する。
図7及び図8に示すように、本発明の第4の実施形態に係る車両用フレーム構造を適用した車体フレーム71は、フレーム本体10の内部に補強部材80が取り付けられ、補強部材80は、フレーム本体10の両側の側面部11bに沿って配設されて該両側の側面部11bにそれぞれ接着結合される2つの板状の壁面部83と、該2つの壁面部83を結合し格子状に配設されるリブ84とを有するリブ部82を備え、外部から曲げ荷重が入力される際のフレーム本体10の曲げの中立軸L1より圧縮側に補強部材80の曲げの中立軸L2が位置するように配置され、リブ84は、平板部21から垂直方向に延びるリブの長さが等しく形成されているが、リブ84によって形成される開口部85の大きさがフレーム本体10を横切る方向に異なって形成されている。
補強部材80のリブ部82は、補強部材60のリブ部62と同様に、フレーム本体10の長手方向に延びる縦リブ84aとフレーム本体10を横切る方向に延びる横リブ84bとが四角形状の開口部85を形成するように格子状に配置されたリブ84を有し、リブ84は、第1の板状部材11の底面部11aと第2の板状部材12の平面部12aとの間の略中間位置よりも短く形成されている。補強部材80の壁面部83もまた、平板部21からの長さが該壁面部83と結合される横リブ84bと同じ長さを有するように形成されている。
しかしながら、車体フレーム71の補強部材80では、フレーム本体10を横切る方向に隣り合う縦リブ84aの間隔が、フレーム本体10を横切る方向においてフレーム本体10の中央側に比べてフレーム本体10の側面部11b側では狭く略半分の大きさで形成され、フレーム本体10を横切る方向においてフレーム本体10の中央側では略正方形状の開口部85aが形成され、フレーム本体10の側面部11b側では中央側の開口部85aを縦リブ84aによってフレーム本体10を横切る方向に2つに分割した矩形状の開口部85bが形成されるようにリブ84が設けられている。
このように、車体フレーム71においては、補強部材80のリブ84によって形成された開口部85の大きさがフレーム本体10を横切る方向においてフレーム本体10の側面部11b側に近づくにつれて小さく形成されており、補強部材80は、フレーム本体10を横切る方向においてフレーム本体10の側面部11b側に近づくにつれて強度が増加するように構成されている。
このように構成される車両用フレーム構造においても、補強部材80は、フレーム本体10の曲げの中立軸L1より圧縮側に補強部材80の曲げの中立軸L2が位置するように配置されており、外部から曲げ荷重が入力される際に、フレーム本体10の曲げ変形初期に生じ得るフレーム本体10の内方側への底面部11aの曲げ変形及び該変形に伴って変形する側面部11bの面外変形を有効に抑制することができ、軽量化を図りつつ曲げ抗力を効率的に確保することができる。また、車体フレーム71では、リブ部82は、フレーム本体10を横切る方向においてフレーム本体10の側面部11b側に近づくにつれて強度が増加するように構成されていることにより、フレーム本体10の側面部11bの変形に対する抑制効果をさらに高めることができる。
この第4の実施形態に係る車体フレーム71では、フレーム本体10を横切る方向においてフレーム本体10の側面部11b側に近づくにつれて開口部85の大きさが小さく形成され、強度が増加するように構成されているが、フレーム本体10を横切る方向においてフレーム本体10の側面部11b側に近づくにつれてリブ84の肉厚、すなわち縦リブ84a及び/又は横リブ84bの肉厚を厚く形成することにより、強度が増加するように構成することも可能である。
図9は、本発明の第5の実施形態に係る車両用フレーム構造を適用した車体フレームを示す斜視図である。また、図10は、図9におけるY10a−Y10a線及びY10b−Y10b線に沿った車体フレームの断面図であり、図10(a)は、Y10a−Y10a線に沿った車体フレームの断面図、図10(b)は、Y10b−Y10b線に沿った車体フレームの断面図である。なお、第5の実施形態は、第1の実施形態とリブ部の形状が異なるのみであるので、第1の実施形態と同様の構成を備えて同様の作用をなすものについては同一符号を付して説明を省略する。
図9及び図10に示すように、本発明の第5の実施形態に係る車両用フレーム構造を適用した車体フレーム91は、フレーム本体10の内部に補強部材100が取り付けられ、補強部材100は、フレーム本体10の両側の側面部11bに沿って配設されて該両側の側面部11bにそれぞれ接着結合される2つの板状の壁面部103と、該2つの壁面部103を結合し格子状に配設されるリブ104とを有するリブ部102を備え、外部から曲げ荷重が入力される際のフレーム本体10の曲げの中立軸L1より圧縮側に補強部材100の曲げの中立軸L2が位置するように配置されているが、リブ102によって形成される開口部105の大きさがフレーム本体10を横切る方向に異なって形成されている。
補強部材100のリブ部102は、格子状に配設されるリブ104が、フレーム本体10の長手方向に延びる縦リブ104aと、フレーム本体10を横切る方向に延びる横リブ104bとを有しているが、横リブ104bは、フレーム本体10の長手方向と直交する方向から所定角度傾斜してフレーム本体10を横切る方向に延び、両側の壁面部103を結合する第1の横リブ104b1と、フレーム本体10の長手方向と直交する方向から所定角度傾斜してフレーム本体10を横切る方向に壁面部103からフレーム本体10の最も側面部11b側に位置する縦リブ104aまで延び、壁面部103と最も側面部11b側に位置する縦リブ104aとを結合する第2の横リブ104b2とを有している。
第1の横リブ104b1は、図10(b)に示すように、フレーム本体10の長手方向に連続してジグザグ形状に形成され、2つの第1の横リブ104b1が、フレーム本体10を横切る方向の中央部分において交差するように形成されている。一方、第2の横リブ104b2は、壁面部103とフレーム本体10の最も側面部11b側の縦リブ104aとの間でフレーム本体10の長手方向に連続してジグザグ形状に形成される横リブを形成するように、壁面部103とフレーム本体10の最も側面部11b側の縦リブ104aとの間における第1の横リブ82b1と同じ形状をして設けられている。
これにより、補強部材100では、縦リブ104aと横リブ104bによって形成される開口部105は、フレーム本体10を横切る方向においてフレーム本体10の中央側では三角形状の開口部105a1と台形状の開口部105a2とからなる開口部105aを有するように形成され、フレーム本体10を横切る方向においてフレーム本体10の側面部11b側では三角形状の開口部105bを有するように形成されている。本実施形態では、開口部105a1と開口部105bが等しい大きさで形成され、開口部105b及び105a1が開口部105a2の三分の一の大きさで形成され、開口部105の大きさの平均が、フレーム本体10を横切る方向においてフレーム本体10の側面部11b側ではフレーム本体10の中央側に比べて二分の一の大きさで形成されている。
このように、車体フレーム91においては、補強部材100のリブ104によって形成された開口部105の大きさがフレーム本体10を横切る方向においてフレーム本体10の側面部11b側に近づくにつれて小さく形成されており、補強部材100は、フレーム本体10を横切る方向においてフレーム本体10の側面部11b側に近づくにつれて強度が増加するように構成されている。
このように構成される車両用フレーム構造においても、補強部材100は、フレーム本体10の曲げの中立軸L1より圧縮側に補強部材100の曲げの中立軸L2が位置するように配置されており、外部から曲げ荷重が入力される際に、フレーム本体10の曲げ変形初期に生じ得るフレーム本体10の内方側への底面部11aの曲げ変形及び該変形に伴って変形する側面部11bの面外変形を有効に抑制することができ、軽量化を図りつつ曲げ抗力を効率的に確保することができる。また、車体フレーム91では、リブ部102は、フレーム本体10を横切る方向においてフレーム本体10の側面部11b側に近づくにつれて強度が増加するように構成されていることにより、フレーム本体10の側面部11bの変形に対する抑制効果をさらに高めることができる。
この第5の実施形態に係る車体フレーム91では、フレーム本体10を横切る方向においてフレーム本体10の側面部11b側に近づくにつれて開口部105の大きさが小さく形成され、強度が増加するように構成されているが、フレーム本体10を横切る方向においてフレーム本体10の側面部11b側に近づくにつれてリブ104の肉厚、すなわち縦リブ104a及び/又は横リブ104bの肉厚を厚く形成することにより、強度が増加するように構成することも可能である。
なお、車体フレーム1、31、51、71、91に外部から曲げ荷重が入力される際に、圧縮方向の力が作用する第1の板状部材11の底面部11aが本願請求項に記載される第1面部に相当し、引張方向の力が作用する第2の板状部材12の平面部12aが本願請求項に記載される第2面部に相当し、フレーム本体10の該底面部11aと該平面部12aとの間に位置する両側の側面部11bが本願請求項に記載される両側の側面部に相当する。
また、本発明は、例示された実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計上の変更が可能である。例えば、前述した第1の実施形態に係る車両用フレーム構造と第4の実施形態に係る車両用フレーム構造とを組み合わせ、第4の実施形態に係る車体フレーム構造を適用した車体フレーム71において、リブ84をフレーム本体10の側面部11b側からその中央側に向かうにつれて平板部21からの長さを短く形成するなど、第1から第5の実施形態に係る車両用フレーム構造を適宜組み合わせて構成するようにしてもよい。