JP2011110619A5 - - Google Patents
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Description
この発明は、ステンレス鋼のエンドミル切削加工技術に係り、多量の切削油剤を使用しない方法で、環境に負荷をかけない方法において、工具刃先の欠損、チッピング(工具刃先の微小な欠損)の発生を抑制し、なおかつ平滑な加工面を得るエンドミル切削加工法とそのエンドミル切削加工装置に関するものである。
ステンレス鋼は、工具刃先に凝着、ステンレス鋼表面における加工硬化等が生じやすく、工具刃先の欠損、チッピング(工具刃先の微小な欠損)が生じるので、多量の切削油剤を単独で工具刃先に噴射しながら切削加工が行われている。
「難削材の切削加工技術」狩野 勝吉著 工業調査会
「ステンレス鋼便覧」長谷川正義監修 日刊工業新聞社
ステンレス鋼のエンドミル切削加工の欠点として、ステンレス鋼は、工具刃先に凝着、ステンレス鋼表面における加工硬化等が生じやすく、工具刃先の欠損、チッピング(工具刃先の微小な欠損)が生じ、工具寿命が短く、切削した加工面が粗い等、様々な問題がある。また、ステンレス鋼のエンドミル切削加工において、高品質、高能率、低コストを目標に、エンドミル切削工具への冷却効果及び潤滑効果を目的として、工具刃先に多量の切削油剤が噴射されている。切削油剤の種類によっては、環境悪化の要因となる塩素系化合物等が含有されているので、環境等の問題が生じている。さらに、使用後の切削油剤における最終的な廃液処理は、重油を混入して焼却処分されるため、焼却による二酸化炭素の膨大な排出が余儀なくされているのが現状である。あるいは、窒素化合物を含有する切削油剤は、廃液を焼却処理した場合、窒素酸化物(NOx)を生成する可能性があるので、大気汚染の問題が生じる場合があると考えられる。環境問題への関心が高まり、それに伴う産業廃棄物の削減やリサイクル化の促進が謳われているので、使用後の切削油剤の大部分が産業廃棄物として処理されることが問題となっている。ステンレス鋼のエンドミル切削加工において、上記の多量な切削油剤の使用は、環境問題になる可能性がある。切削油剤を使用してもエンドミル切削工具の刃先における異常な摩耗、チッピング等が発生し、工具寿命が短く、平滑な切削加工面を得ることが困難である。
また、圧縮空気によって植物油をベースにした極微量の油剤を霧状に噴霧して、切削加工を行う方法(ミスト)も一部試験的に行われている。しかし、ミスト単独によるエンドミル切削加工の予備試験の結果、過酷な切削加工条件、特に、切削速度100m/minでは、工具摩耗が著しく、平滑な切削加工面を得るが困難であった。
この発明は、上記のような課題に鑑み、その課題を解決すべく創案されたものであって、その目的とするところは、環境問題になる可能性がある上記の切削油剤を使用せずに、植物油をベースにした極微量の油剤(ミスト)及びドライアイスガスを使用し、かつ環境にやさしい冷却方法及び潤滑方法で、工具刃先の異常な摩耗、チッピング(工具刃先の微小な欠損)が発生せず、平滑な加工面を得ることが可能となるステンレス鋼のエンドミル切削加工法とステンレス鋼のエンドミル切削加工装置を提供することにある。
以上の目的を達成するために、請求項1の発明は、ステンレス鋼を作業台に固定した後、ミスト噴射用ノズルから霧状になった植物油をベースにした極微量の油剤を回転しているエンドミル切削工具とステンレス鋼の切削部分に噴霧し、もう一つのドライアイスガス噴射用ノズルから霧状になったドライアイスガスを回転しているエンドミル切削工具とステンレス鋼の切削部分に噴射させながら切り屑を除去することを特徴とするドライアイスガスとミストの混合ガスを用いたステンレス鋼のエンドミル切削加工法よりなるものである。請求項2の発明は、フライス盤に下向きに取り付けられたエンドミル切削工具の切削部分に、霧状になった植物油を噴霧するミスト噴射用ノズルと、霧状になったドライアイスガスを噴射させながら切り屑を除去するドライアイスガス噴射用ノズルが取り付けられていることを特徴とするドライアイスガスとミストの混合ガスを用いたステンレス鋼のエンドミル切削加工装置である。
以上の記載より明らかなように、本発明によれば、ステンレス鋼のエンドミル切削加工において、ステンレス鋼を作業台に固定した後、ミスト噴射用ノズルから霧状になった植物油をベースにした極微量の油剤を回転しているエンドミル切削工具とステンレス鋼の切削部分に噴霧し、もう一つのドライアイスガス噴射用ノズルから霧状になったドライアイスガスを回転しているエンドミル切削工具とステンレス鋼の切削部分に噴射させながら切り屑を除去することにより、工作機械(フライス盤)が錆びることなく、エンドミル切削工具刃先の摩耗幅が小さく、平滑な加工面粗さを得ることが可能である。
以下に、この発明を実施するための形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下、この発明をより具体的に説明する。ここで、図1は、ドライアイスガスとミストの混合ガスを用いたステンレス鋼のエンドミル切削加工法の模式図である。図1において、ステンレス鋼1を作業台としてのフライス盤5に固定し、この下向きに取り付けられたエンドミル切削工具2を挟んでドライアイスガス噴射用ノズル3とミスト噴射用ノズル4が取り付けられている。図面では、エンドミル切削工具2を装着する装置本体部分は省略している。ドライアイスガス噴射用ノズル3は、ドライアイスガスとして、例えばドライアイスパウダー(2mm〜3mm)を圧縮空気によって、ドライアイスガスを回転しているエンドミル切削工具2に向けて、噴射量50cc/sで噴霧するものである。ドライアイスとして、例えば、ドライアイスガス噴射用ノズル3のノズルの先端はエンドミル切削工具2に向けて取り付けられている。ドライアイスガス噴射用ノズル3にはドライアイスガスを圧縮空気によってガス状に送り出す供給装置等に一端が接続され、図示しないホースの他端側が接続されている。ミスト噴射用ノズル4は、圧縮空気によって霧状になった植物油をベースにした極微量の油剤を回転しているエンドミル切削工具2に向けて、噴射量4cc/時間で噴霧するものである。ミスト用の植物油としては、化粧品、食用油等に利用されているヤシ油、パーム油、オリーブ油、ひまわり油等が挙げられ、具体的にその成分は、上記の植物油をベースとして抽出・ブレンドした天然有機成分で、植物油の含有量は、99%以上である。ミスト噴射用ノズル4のノズルの先端はエンドミル切削工具4に向けて取り付けられている。ミスト噴射用ノズル4には極微量の油剤を圧縮空気によって霧状に送り出すタンク等に一端が接続され、図示しないホースの他端側が接続されている。
ドライアイスガスを利用したステンレス鋼のエンドミル切削加工は、以下のとおりである。(1)ステンレス鋼1をフライス盤5に固定する。(2)エンドミル切削工具2を所定の回転数に上げ、所定の回転数になったエンドミル切削工具2に向けて、ドライアイスガス噴射用ノズル3からドライアイスガスを噴射し、ミスト噴射用ノズル4からミストを噴霧する。なお、ドライアイスガス噴射用ノズル3の形状は、高さ30mm、幅10mm、長さ300mmの形状で噴射孔の形状が、高さ20mm、幅5mmである。(3)エンドミル切削工具2にドライアイスガス、ミストを噴射あるいは噴霧を行いながら、ステンレス鋼1の側面において、エンドミル切削加工を行う。(4)所定量のエンドミル切削加工が終了すれば、エンドミル切削工具の刃先における摩耗量(逃げ面摩耗幅)を測定し、顕微鏡で工具刃先の摩耗状況を観察した。さらに切削加工を行った加工面の凹凸(加工面の表面粗さ)を測定した。評価(表1)において、×印は、工具刃先の逃げ面摩耗幅が、10μm以上の場合、加工面の表面粗さ(最大高さRy)が、4μm以上の場合である。○印は、工具刃先の逃げ面摩耗幅が、10μmより小さく、かつ加工面の表面粗さ(最大高さRy)が、4μmより小さい場合である。
被削材のステンレス鋼は、SUS304を使用した。切削工具は、TiAlNコーテッド超硬エンドミル切削工具(外径8mm、3枚刃)を使用した。ステンレス鋼の形状は、長さ100mmX幅50mmX高さ45mmである。 ステンレス鋼のエンドミル切削加工試験では、図1に示すエンドミル切削工具にドライアイスガス、ミストを噴射させながら、切削加工を行った。実験結果は表1のとおりである。予備実験の結果より、ミストの噴射量3cc/時間〜5cc/時間で行った。ミストの噴射量3cc/時間より小さい場合、逃げ面摩耗幅、表面粗さにおいて、良好な結果が得られなかった。また、ミストの噴射量5cc/時間より大きい場合、逃げ面摩耗幅、表面粗さにおいて、良好な結果が得られなかった。ドライアイスガスの噴射量30cc/s〜70cc/sで行った。ドライアイスガスの噴射量30cc/sより小さい場合、逃げ面摩耗幅、表面粗さにおいて、良好な結果が得られなかった。ドライアイスガスの噴射量70cc/sより大きい場合、逃げ面摩耗幅、表面粗さにおいて、良好な結果が得られなかった。切削加工条件は、切削速度100m/min、送り速度358mm/min、半径方向の切り込み量0.5mm、軸方向の切り込み量0.5mm、工具突き出し長27mmで同一の条件で行った。表中の切削油剤、ミスト、ドライアイスはそれぞれノズル1本で、切削油剤は切削油剤の噴射量50cc/s、ミストは、ミストの噴射量4cc/時間、ドライアイスはドライアイスガスの噴射量50cc/sの結果である。表中のドライアイス+ミストは、ドライアイスガス及びミストの混合ガスであり、ドライアイスガスの
噴射量50cc/s、ミストの噴射量4cc/時間の結果である。ドライアイスガスが発生する冷却効果、ミストによる潤滑効果が、工具刃先の摩耗防止、切り屑の除去において、相乗効果として作用し、逃げ面摩耗幅、表面粗さが極めて良好な結果を得ることができたと考えられる。なお、この発明は上記発明を実施するための最良の形態に限定されるものでなく、この発明の精神を逸脱しない範囲で種々の改変をなし得ることは勿論である。
噴射量50cc/s、ミストの噴射量4cc/時間の結果である。ドライアイスガスが発生する冷却効果、ミストによる潤滑効果が、工具刃先の摩耗防止、切り屑の除去において、相乗効果として作用し、逃げ面摩耗幅、表面粗さが極めて良好な結果を得ることができたと考えられる。なお、この発明は上記発明を実施するための最良の形態に限定されるものでなく、この発明の精神を逸脱しない範囲で種々の改変をなし得ることは勿論である。
1 ステンレス鋼2 エンドミル切削工具3 ドライアイスガス噴射用ノズル(ドライアイスガス供給装置に接続)4 ミスト噴射用ノズル(ミスト供給装置に接続)5 フライス盤
Claims (2)
- ステンレス鋼を作業台に固定した後、ミスト噴射用ノズルから霧状になった植物油をベースにした極微量の油剤を回転しているエンドミル切削工具とステンレス鋼の切削部分に噴霧し、もう一つのドライアイスガス噴射用ノズルから霧状になったドライアイスガスを回転しているエンドミル切削工具とステンレス鋼の切削部分に噴射させながら切り屑を除去することを特徴とするドライアイスガスとミストの混合ガスを用いたステンレス鋼のエンドミル切削加工法。
- フライス盤に下向きに取り付けられたエンドミル切削工具の切削部分に、霧状になった植物油を噴霧するミスト噴射用ノズルと、霧状になったドライアイスガスを噴射させながら切り屑を除去するドライアイスガス噴射用ノズルが取り付けられていることを特徴とするドライアイスガスとミストの混合ガスを用いたステンレス鋼のエンドミル切削加工装置。
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JP2009266255A JP2011110619A (ja) | 2009-11-24 | 2009-11-24 | ドライアイスガスとミストの混合ガスを用いたステンレス鋼のエンドミル切削加工法 |
Applications Claiming Priority (1)
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