JP2011108684A - 半導体装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】アバランシェ耐量のマージンが小さいスイッチング素子のジャンクション又はチャネルの温度が上昇した場合であっても、過電圧を印加されたときの降伏によってスイッチング素子が破壊されるのを防止することが可能な半導体装置を提供する。
【解決手段】縦型のMOSFETからなる保護トランジスタ20は、半導体基板2の一面にゲート電極23及びソース電極22を、他面にドレイン電極21を形成してある。出力トランジスタ10が形成された半導体基板1の一面に存するソース電極12と、半導体基板2の一面とを導電性の接着剤6で接着して、ソース電極12にソース電極22及びゲート電極23を電気的に接続し、熱的に密結合させる。ドレイン電極11,21同士はリード線32で接続する。高温の場合、保護トランジスタ20は、閾値が0V以下に低下してオンし、出力トランジスタのアバランシェ電流の一部又は全部を分担する。
【選択図】図8

Description

本発明は、MOSFET、IGBT等のスイッチング素子が、過電圧を印加されたときの降伏によって破壊されるのを防止する機能を備える半導体装置に関する。
近年、半導体材料からなるスイッチング素子の性能が飛躍的に向上しており、DC−DCコンバータ、インバータ等の電力変換器をはじめとしてスイッチング素子の用途が多様化しつつある。これに伴い、電界効果トランジスタ(FET)、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等のスイッチング素子に対する高耐圧化、大電力化への要望が高まる一方で、適用する電圧によってはスイッチング素子に十分な耐圧マージンを確保することが難しい場合がある。
さて、スイッチングをオフさせている状態でスイッチング素子の耐圧を超える電圧が印加された場合、スイッチング素子に降伏(ブレークダウン)が発生して過大なアバランシェ電流が流れることにより、スイッチング素子の電流破壊又はエネルギ破壊が生じる。電流破壊は、スイッチング素子内部の寄生トランジスタがアバランシェ電流によって破壊するものであり、エネルギ破壊は、スイッチング素子内部のpn接合の温度が最大定格値を超えて熱的に破壊するものであって、何れも不可逆的なものである。
これに対し、例えば特許文献1では、ツェナダイオードを用いてドレイン電圧を所定の電圧にクランプすることにより、FETを過電圧から保護する技術が開示されている。更に、特許文献2では、FETに保護用のツェナダイオードを内蔵するのに加えて、ドレイン領域の深さを調整することにより、過電圧による破壊耐量を更に向上させた半導体装置が開示されている。
一方、耐圧の定格を超えた場合であっても、アバランシェ電流による破壊が生じる上限値(以下、アバランシェ耐量という)を超えないことを条件に、安全動作が保証(規定)された電力用のスイッチング素子が提供されている。このようなスイッチング素子を用いることにより、ツェナダイオードのような特性のばらつきが大きい素子に性能が左右されることがなく、耐圧マージンが小さくて済むことから、耐圧選定の最適化及び経済性の向上が図れるとされている。
特開平6−296362号公報 特開2009−111304号公報
しかしながら、上述した安全動作が保証されるためには、アバランシェ電流が流れ始めるときのスイッチング素子のジャンクション(バイポーラの場合)又はチャネル(チャネル領域:ユニポーラの場合)の温度に応じてディレーティングさせたアバランシェ耐量を超えないようにする必要がある。その結果、通常の使用温度ではアバランシェ耐量のマージンが十分大きいスイッチング素子を採用せざるを得ないのが実状である。
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、アバランシェ耐量のマージンが小さいスイッチング素子のジャンクション又はチャネルの温度が上昇した場合であっても、過電圧を印加されたときの降伏によってスイッチング素子が破壊されるのを防止することが可能な半導体装置を提供することにある。
本発明に係る半導体装置は、スイッチング素子と、該スイッチング素子と熱的に結合されている過電圧保護用の過電圧保護回路とを備える半導体装置であって、前記過電圧保護回路は、前記スイッチング素子の一電極及び他電極夫々に、ソース電極及びドレイン電極が各接続されたエンハンスメント型のMOSFETを含み、該MOSFETは、ゲート電極及びソース電極間を接続してあることを特徴とする。
本発明にあっては、ドレイン−ソース間が導通するときの閾値Vthが0Vより高いエンハンスメント型のMOSFETのゲート電圧Vgsが0Vであり、通常の動作状態でMOSFETのドレイン−ソース間が導通することがないため、スイッチング素子の他電極にはMOSFETが接続されていないのと等価になる。これに対し、スイッチング素子のチャネル温度又はジャンクション温度が上昇した場合、スイッチング素子と熱的に結合してあるMOSFETの温度が上昇し、閾値Vthが0Vより低下してドレイン−ソース間が導通することにより、スイッチング素子の他電極及び一電極間がMOSFETのオン抵抗でシャントされる。
これにより、スイッチング素子及びMOSFET間の熱抵抗が十分小さくなるようにし、スイッチング素子のチャネル又はジャンクションの温度が許容する最大値を超える前に、MOSFETのゲート電圧の閾値Vthが0V以下となるようにした場合は、スイッチング素子の他電極に耐圧を超える電圧が印加されたとしても、アバランシェ電流となるべき電流の一部を他電極からMOSFETに分流させて、スイッチング素子に加わるエネルギがアバランシェ耐量を超えないようにする。
また、MOSFETの閾値Vthが常温で0Vに近いものである場合、温度が上昇して閾値Vthが0V以下に低下したときに、オン電流の増加に伴ってMOSFET内部の寄生トランジスタが導通し易くなることからドレイン−ソース間の耐圧が低下して行く。
これにより、常温での耐圧がスイッチング素子より若干高いMOSFETを用いることとした場合は、スイッチング素子のチャネル温度又はジャンクション温度が上昇したときに、先にMOSFETが降伏してスイッチング素子を保護する。
本発明に係る半導体装置は、前記スイッチング素子は、半導体材料がシリコンからなり、前記MOSFETは、バンドギャップがシリコンより大きい半導体材料からなることを特徴とする。
本発明にあっては、スイッチング素子の半導体材料がシリコンであるの対し、MOSFETの半導体材料は、シリコンよりバンドギャップが大きいものにしてあるため、MOSFETはスイッチング素子よりも動作温度の上限が高い。
これにより、スイッチング素子のチャネル温度又はジャンクション温度が絶対最大定格に近い温度であったとしても、MOSFETを過電圧保護回路として確実に動作させることができる。
本発明に係る半導体装置は、前記MOSFETの半導体材料は、炭化珪素であることを特徴とする。
本発明にあっては、過電圧保護回路としてのMOSFETの半導体材料が炭化珪素であるため、熱伝導度がシリコンよりも数倍良好である上に、許容される温度が400〜500℃にもなって、高温でもMOSFETとして安定に動作する。
本発明に係る半導体装置は、前記スイッチング素子及びMOSFETは、各別の半導体基板に形成してあることを特徴とする。
本発明にあっては、スイッチング素子及びMOSFETを別々の半導体基板に形成してあるため、半導体材料の組み合わせが自由となるのに加えて、各半導体基板間の絶縁及び導通を適当に行うことにより、スイッチング素子及びMOSFET間の熱的な結合度を任意に構成することができる。
本発明に係る半導体装置は、前記MOSFETは、一の半導体基板の一面にゲート電極及びソース電極を、他面にドレイン電極を形成した縦型MOSFETであり、前記一の半導体基板の大きさは、他の半導体基板の一面に形成した前記一電極の大きさより小さく、前記一電極に前記ソース電極及びゲート電極を電気的に接続すべく、前記他の半導体基板の一面及び前記一の半導体基板の一面を導電性の接着剤で接着してあることを特徴とする。
本発明にあっては、MOSFETはいわゆる縦型であって、一の半導体基板の一面にゲート電極及びソース電極が、他面にドレイン電極が存するように形成されている。また、一の半導体基板の大きさは、スイッチング素子が形成された他の半導体基板の一面に存する前記一電極の大きさより小さくしてある。更に、一の半導体基板の一面及び他の半導体基板の一面を導電性の接着剤で接着して、スイッチング素子の一電極にMOSFETのソース電極及びゲート電極が電気的に接続されるようにしてある。
これにより、スイッチング素子の前記一電極と、MOSFETのソース電極及びゲート電極とをリード線によらずに接続することができる上に、スイッチング素子及びMOSFETを熱的に密結合させることができる。
本発明によれば、ゲート電極及びソース電極間を接続したMOSFETのソース電極及びドレイン電極を、スイッチング素子の一電極及び他電極に夫々接続する。
これにより、スイッチング素子及びMOSFET間の熱抵抗が十分小さくなるようにし、スイッチング素子のチャネル又はジャンクションの温度が許容する最大値を超える前に、MOSFETのゲート電圧の閾値Vthが0V以下となるようにした場合は、スイッチング素子の他電極に耐圧を超える電圧が印加されたとしても、アバランシェ電流となるべき電流を他電極からMOSFETに分流させて、スイッチング素子のアバランシェ耐量を超えないようにする。
また、常温での耐圧がスイッチング素子より若干高いMOSFETを用いることとした場合は、スイッチング素子のチャネル温度又はジャンクション温度が上昇したときに、先にMOSFETが降伏してスイッチング素子を保護する。
従って、アバランシェ耐量のマージンが小さいスイッチング素子のジャンクション又はチャネルの温度が上昇した場合であっても、過電圧を印加されたときの降伏によってスイッチング素子が破壊されるのを防止することが可能となる。
本発明に係る半導体装置の回路図である。 エンハンスメント型のnチャネルMOSFETの入出力特性を示す特性図である。 閾値の温度依存性を模式的に示す特性図である。 保護トランジスタの構成を模式的に示す縦断面図である。 保護トランジスタの入出力特性及び降伏特性を示す特性図である。 チャネル領域の温度によって保護トランジスタの動作が異なる様子を模式的に示す説明図である。 本発明に係る半導体装置の模式的な平面図である。 本発明に係る半導体装置の模式的な立面図である。
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。
図1は、本発明に係る半導体装置の回路図である。図中10はシリコンを半導体材料とするMOSFETからなる出力トランジスタであり、出力トランジスタ10のドレイン電極11は、炭化珪素(SiC)を半導体材料とするエンハンスメント型のMOSFETからなる保護トランジスタ20のドレイン電極21に接続されている。出力トランジスタ10のソース電極12は、保護トランジスタ20のソース電極22及びゲート電極23に接続されている。保護トランジスタ20は、出力トランジスタ10に固着させて熱的に密結合させる(後述の図7,8参照)。
出力トランジスタ10のゲート電極13及びソース電極12の夫々には、外部で直列に接続された信号源抵抗Rs及び信号源S1が各接続されている。出力トランジスタ10のドレイン電極11は、図示しない外部の負荷を介して直流電源に接続してあり、ソース電極12は、接地電位に接続してある。
上述した構成において、保護トランジスタ20は通常の動作状態でオフしており、出力トランジスタ10が、信号源S1から与えられた駆動信号によって外部の負荷と直流電源との接続をオン/オフさせるようになっている。
以下、保護トランジスタ20がオン/オフするときのゲート電圧の境界付近における動作について説明する。
図2は、エンハンスメント型のnチャネルMOSFETの入出力特性を示す特性図である。図の横軸は、入力としてのゲート電圧(ゲート−ソース間の電圧)Vgsを表し、縦軸は出力としてのドレイン電流Idを表す。図2において、ドレイン−ソース間の電圧Vdsを一定にしてゲート電圧Vgsを0から増加させた場合、ドレイン電流Idが立ち上がるときのゲート電圧Vgsを閾値Vthとする。このように、エンハンスメント型のnチャネルMOSFETでは、閾値Vthより高い正のゲート電圧Vgsを与えたときにMOSFETがオンしてドレイン電流Idが流れる。
図3は、閾値Vthの温度依存性を模式的に示す特性図である。図の横軸はMOSFETのチャネル領域の温度Tchを表し、縦軸は閾値Vthを表す。半導体材料が炭化珪素の場合、閾値Vthは、チャネル領域の温度Tchの上昇に対して略一定の割合で低下して行く。ここでは、保護トランジスタ20の製造プロセスをコントロールして、例えば、チャネル領域の温度Tchが140℃のときに閾値Vthが0Vとなるように作り込むものとする。保護トランジスタ20は、図1に示すようにゲート電極23及びソース電極22を接続してゲート電圧Vgsが0Vとなるようにしてあるため、チャネル領域の温度Tchが140℃より高い(又は低い)ときにオン(又はオフ)する。
次に、保護トランジスタ20の降伏について説明する。
図4は、保護トランジスタ20の構成を模式的に示す縦断面図である。図中27はn+型の半導体(ここでは炭化珪素)からなるサブストレートであり、サブストレート27の下面にはドレイン電極21が形成されている。サブストレート27の上面にはn−型半導体層26を積層してあり、n−型半導体層26の上面の中央部にはp型半導体層25を形成してある。そして、p型半導体層25の上面の周縁部及び中央部は、ゲート電極23に接続された多結晶シリコンゲート23bを覆うゲート酸化膜23a及びソース電極22と夫々接している。また、p型半導体層25の上面において、ソース電極22及びゲート酸化膜23aと接する境界部付近に、n+型半導体層24を形成してある。
尚、p型半導体層25の不純物(アクセプタ)濃度を低くして製造することにより、高温で閾値Vthが0V以下となるようなMOSFETが得られる。
図4において、p型半導体層25及びn−型半導体層26がpn接合を、n+型半導体層24、p型半導体層25及びn−型半導体層26がnpn接合を夫々構成しており、これらは、夫々寄生ダイオード28及び寄生トランジスタ29とみなされる。寄生ダイオード28のアノード及びカソードには、夫々ソース電極22及びドレイン電極21から逆バイアスが印加されており、この逆バイアスに応じた空乏層が、p型半導体層25及びn−型半導体層26に生じている。
ここで保護トランジスタ20の温度が上昇した場合、半導体の温度依存性によって、図4に破線で示した上記空乏層の境界が、白抜き矢印で示すようにソース電極22側及びドレイン電極21側に広がる。これにより、保護トランジスタ20がオンするときにp型半導体層25に形成されるチャネル領域(反転層)の深さが、温度の上昇と共に浅くなる。
一方、寄生トランジスタ29のベース抵抗29aの抵抗値は、上記チャネル領域が浅くなるほど増大するため、ベース抵抗29aの抵抗値は、保護トランジスタ20の温度の上昇と共に増大する。
さて、保護トランジスタ20のドレイン電極21及びソース電極22間に電圧が印加されている場合、ベース抵抗29aに対応するp型半導体層25内のチャネル領域には漏れ電流が流れている。また、チャネル領域の温度Tchが140℃を超えて保護トランジスタ20がオンしたときは、チャネル領域を通じてオン電流(ドレイン電流Id)がベース抵抗29aを流れるようになる。そして、上記漏れ電流にオン電流を加えた電流によるベース抵抗29aの電圧降下が、寄生トランジスタ29のベース−エミッタ間のオン電圧を超えた場合、寄生トランジスタ29がオンして保護トランジスタ20は降伏に至る。
以上のことから、保護トランジスタ20のチャネル領域の温度Tchが上昇するほど、保護トランジスタ20が降伏し易くなる。また、Tchが140℃を超えて保護トランジスタ20がオンした場合は、オン電流が流れるほど、保護トランジスタ20が更に降伏し易くなると言える。
次に、保護トランジスタ20がオンするときの電圧−電流特性、及び降伏特性について説明する。
図5は、保護トランジスタ20の入出力特性及び降伏特性を示す特性図である。図の横軸は、入力としてのドレイン電圧(ドレイン−ソース間の電圧)Vdsを表し、縦軸は出力としてのドレイン電流Idを表す。図5では、パラメータとするゲート電圧Vgsに5通りの電圧(Vth及びVth+Vn;n=1、2、3、4)を与えたときの複数の特性曲線を実線で示す。ドレイン電圧Vdsを0Vから増加させたときにドレイン電流Idが略直線的に増加する領域が三極管領域であり、ドレイン電圧Vdsの増加に対してドレイン電流Idが略一定である領域が飽和領域である。これら2つの領域の境界(ピンチオフ電圧)を破線で示す。
ゲート電圧Vgsが閾値Vthに等しい場合、図2に示したようにドレイン電流Idはゼロであるため、図5では特性曲線が横軸と重なる直線となる。三極管領域及び飽和領域では、ドレイン電圧Vdsを一定にしてゲート電圧Vgsを閾値Vthより高めた場合、ゲート電圧Vgsの低/高に応じてドレイン電流Idが小/大に変化する。
逆に、ゲート電圧Vgsを一定にした場合、ドレイン電圧Vdsの低/高に応じてドレイン電流Idが小/大に変化する。但し、ドレイン電圧Vdsが、破線で示されたピンチオフ電圧より高いときは、ドレイン電流Idが略一定となる。ドレイン電圧Vdsをドレイン電流Idで割った値が、MOSFETのオン抵抗Ronに相当する。
ここで、ゲート電圧Vgsを図1に示すように0Vに保った状態でチャネル領域の温度Tchを140℃より高めた場合、閾値Vthが0Vより低下するため、ゲート電圧Vgsとして閾値Vthより高い電圧を与えたのと等価になる。つまり、チャネル領域の温度Tchが140℃より高い場合、チャネル領域の温度Tchの上昇に伴って増大するゲート電圧Vgsが、保護トランジスタ20に与えられるのと等価になり、保護トランジスタ20には、より多くのドレイン電流Idが流せるようになる。
飽和領域にある保護トランジスタ20のドレイン電圧Vdsを更に高めた場合、ドレイン電圧Vdsに対するドレイン電流Idの増加率が急激に増大する点が存在する。このときのドレイン電圧Vdsが降伏電圧であり、ドレイン電流Idが急激に増大する領域が降伏領域である。図5では、飽和領域及び降伏領域の境界を二点鎖線で示す。
ところで、閾値Vthが数V程度になるように製造された通常のエンハンスメント型のMOSFETでは、内部の寄生トランジスタの影響が抑制されている。このため、図5に一点鎖線で示すように、飽和領域における各ゲート電圧Vgsに対するドレイン電流Id(オン電流)は、ドレイン電圧Vdsが一定の降伏電圧BVdsに達するまで略一定の値となる。
一方、本発明に係る保護トランジスタ20では、閾値Vthを0Vに近付けるためにp型半導体層25の不純物濃度を低くしてあり、通常のエンハンスメント型のMOSFETよりも寄生トランジスタ29のベース抵抗29aの抵抗値が高くなっている。つまり、保護トランジスタ20の温度が上昇してオンした場合、上述したように閾値Vthが0Vより低下してオン電流が増大するほど保護トランジスタ20の降伏電圧が低下する。これは、ベース電流を多く流すほど降伏電圧が低下するバイポーラトランジスタに類似した振る舞いであると言える。
図6は、チャネル領域の温度Tchによって保護トランジスタ20の動作が異なる様子を模式的に示す説明図である。図6(a)及び6(b),(c)の夫々は、チャネル領域の温度Tchが140℃より低い場合及び140℃より高い場合を示す。また、図6(c)は、保護トランジスタ20が出力トランジスタ10より先に降伏した場合を示す。
図6(a)では、上述したように、保護トランジスタ20の閾値Vthが0Vより高いために保護トランジスタ20がオフしており、出力トランジスタ10のドレイン電極11及びソース電極12間には、保護トランジスタ20が接続されていないのと等価になる。
次に、図6(b)では、保護トランジスタ20の閾値Vthが0Vより低いために保護トランジスタ20がオンしており、出力トランジスタ10のドレイン電極11及びソース電極12間には、保護トランジスタ20のオン抵抗Ronが接続されているのと等価になる。これにより、出力トランジスタ10のドレイン電極11に外部の負荷からサージ電圧が印加されて出力トランジスタ10がアバランシェ降伏に至った場合であっても、出力トランジスタ10のアバランシェ電流となるべき電流の一部を、ドレイン電極11から保護トランジスタ20に分流させることができる。
ところで、出力トランジスタ10にアバランシェ耐量の範囲内でアバランシェ電流が流入している場合、出力トランジスタ10は降伏状態を維持している。つまり、出力トランジスタ10は、アバランシェ電流を流すことによって、印加された過電圧を降伏電圧まで引き下げるように作用する。
一方、保護トランジスタ20の降伏電圧は、常温の動作状態で出力トランジスタ10の降伏電圧より若干高くなるようにしてあり、チャネル領域が高温となって図5に示したように保護トランジスタ20の降伏電圧が低下した場合に、出力トランジスタ10より保護トランジスタ20の降伏電圧が低くなるようになっている。従って高温の場合は、出力トランジスタ10のアバランシェ電流となるべき電流が全て保護トランジスタ20に流入し、保護トランジスタ20のドレイン電極21の電圧は、図5に示すゲート電圧Vgsに応じた降伏電圧を維持する。
つまり、出力トランジスタ10及び保護トランジスタ20が高温の場合、図6(c)に示すように、出力トランジスタ10のドレイン電極11及びソース電極12間には、ツェナダイオードが接続されているのと等価になる。これにより、出力トランジスタ10にアバランシェ耐量以上のアバランシェ電流が流入しないようにすることができる。
図7及び8は、夫々本発明に係る半導体装置の模式的な平面図及び立面図である。本実施の形態にあっては、出力トランジスタ10及び保護トランジスタ20は、半導体基板1,2に各別に形成されており、出力トランジスタ10のドレイン電極11が形成された半導体基板1の下面と回路基板4の上面とが、ハンダ5によって電気的及び機械的に接続されている。保護トランジスタ20は縦型のMOSFETであり、半導体基板2の上面にドレイン電極21を、下面にソース電極22及びゲート電極23を形成してある。半導体基板2の平面視の大きさは、半導体基板1の上面に形成された出力トランジスタ10のソース電極12の大きさより小さくしてあるため、出力トランジスタ10のソース電極12上に、電極の周囲からはみ出すことなく半導体基板2を載置することができる。
出力トランジスタ10のソース電極12と半導体基板2の下面とは、導電性のフィラーがエポキシ、シリコン等の樹脂でバインドされた導電性の接着剤6で接着してある。これにより、出力トランジスタ10のソース電極12と、保護トランジスタ20のソース電極22及びゲート電極23とが電気的に接続されると共に、熱的に低抵抗で結合される。出力トランジスタ10のドレイン電極11及び保護トランジスタ20のドレイン電極21間は、回路基板4を介してリード線32で接続してある。また、出力トランジスタ10のソース電極12及びゲート電極13と、回路基板4上の図示しないパターンとは、夫々リード線31,33で接続してある。
尚、ソース電極12上で半導体基板2を接着する位置は、出力トランジスタ10の発熱部位に最も近いソース電極12の中央寄りの位置が好ましい。
以上のように本実施の形態によれば、エンハンスメント型のMOSFETである保護トランジスタのゲート電圧Vgsが0Vであり、チャネル領域の温度Tchが140℃までは保護トランジスタのドレイン電極及びソース電極間が導通することがないため、出力トランジスタのドレイン電極には保護トランジスタが接続されていないのと等価になる。これに対し、出力トランジスタのチャネル領域の温度(以下、単にチャネル温度という)が上昇し、出力トランジスタと熱的に密結合してある保護トランジスタのチャネル領域の温度Tchが140℃より高くなった場合、保護トランジスタの閾値Vthが0Vより低下してドレイン電極及びソース電極間が導通することにより、出力トランジスタのドレイン電極及びソース電極間が保護トランジスタのオン抵抗Ronでシャントされる。これにより、出力トランジスタのアバランシェ電流となるべき電流の一部をドレイン電極から保護トランジスタに分流させ、出力トランジスタに加わるエネルギがアバランシェ耐量を超えないようにする。
また、保護トランジスタの閾値Vthが常温で0Vに近いものであるため、チャネル領域の温度が上昇して閾値Vthが0V以下に低下したときに、オン電流の増加に伴って保護トランジスタ内部の寄生トランジスタが導通し易くなることからドレイン−ソース間の降伏電圧が低下して行く。加えて、常温の動作状態での降伏電圧が出力トランジスタより若干高い保護トランジスタを用いているため、出力トランジスタのチャネル温度が上昇したときに、降伏電圧が低下した保護トランジスタが先に降伏して出力トランジスタを保護する。
従って、アバランシェ耐量のマージンが小さいスイッチング素子のジャンクション又はチャネルの温度が上昇した場合であっても、過電圧を印加されたときの降伏によってスイッチング素子が破壊されるのを防止することが可能となる。
また、出力トランジスタの半導体材料がシリコンであるの対し、保護トランジスタの半導体材料は、シリコンよりバンドギャップが大きいものにしてあるため、保護トランジスタは出力トランジスタよりも動作温度の上限が高い。
従って、出力トランジスタのチャネル温度が絶対最大定格に近い温度であったとしても、保護トランジスタを過熱保護回路として確実に動作させることが可能となる。
更にまた、保護トランジスタの半導体材料が炭化珪素であるため、熱伝導度がシリコンよりも数倍良好である上に、許容される温度が400〜500℃にもなって、高温でもMOSFETとして安定に動作させることが可能となる。
更にまた、出力トランジスタ及び保護トランジスタを別々の半導体基板に形成してあるため、半導体材料の組み合わせが自由となるのに加えて、各半導体基板間の絶縁及び導通を適当に行うことにより、出力トランジスタ及び保護トランジスタ間の熱的な結合度を任意に構成することが可能となる。
更にまた、保護トランジスタのMOSFETはいわゆる縦型であって、一の半導体基板の一面にゲート電極及びソース電極が、他面にドレイン電極が存するように形成されている。また、一の半導体基板の大きさは、出力トランジスタが形成された他の半導体基板の一面に存するソース電極の大きさより小さくしてある。更に、一の半導体基板の一面及び他の半導体基板の一面を導電性の接着剤で接着して、出力トランジスタのソース電極に保護トランジスタのソース電極及びゲート電極が電気的に接続されるようにしてある。
従って、出力トランジスタのソース電極と、保護トランジスタのソース電極及びゲート電極とをリード線によらずに接続することができる上に、出力トランジスタ及び保護トランジスタを熱的に密結合させることが可能となる。
尚、本実施の形態にあっては、出力トランジスタ10は、縦型のMOSFETであるが、これに限定されるものではなく、例えば横型のMOSFET又はIGBTであってもよい。
また、保護トランジスタ20の半導体材料を炭化珪素としているが、これに限定されるものではなく、例えばシリコンでもよいし、窒化ガリウムをはじめとする炭化珪素以外のワイドバンドギャップ半導体であってもよい。
更にまた、保護トランジスタ20について、チャネル領域の温度Tchが140℃のときに閾値Vthが0Vとなるように作り込んであるが、140℃に限定されるものではなく、出力トランジスタ10のチャネル温度が、絶対最大定格である150℃を超えないように保護できる範囲で、閾値Vthが0Vとなる温度を任意に選択して作り込んでもよい。
更にまた、保護トランジスタ20を縦型にしてあるが、縦型に限定されるものではなく、たとえば、電極間を接続するリード線の本数の増加が許容できるのであれば、横型であってもよい。
更にまた、出力トランジスタ10のソース電極と半導体基板2の下面とを導電性の接着剤6で接着して固着してあるが、これに限定されるものではなく、接着剤等を用いずに圧接するようにしてもよい。
1 半導体基板(他の半導体基板)
2 半導体基板(一の半導体基板)
31、32、33 リード線
4 回路基板
5 ハンダ
6 導電性の接着剤
10 出力トランジスタ(スイッチング素子)
11 ドレイン電極(他電極)
12 ソース電極(一電極)
13 ゲート電極
20 保護トランジスタ(エンハンスメント型の縦型MOSFET)
21 ドレイン電極
22 ソース電極
23 ゲート電極

Claims (5)

  1. スイッチング素子と、該スイッチング素子と熱的に結合されている過電圧保護用の過電圧保護回路とを備える半導体装置であって、
    前記過電圧保護回路は、前記スイッチング素子の一電極及び他電極夫々に、ソース電極及びドレイン電極が各接続されたエンハンスメント型のMOSFETを含み、
    該MOSFETは、ゲート電極及びソース電極間を接続してあること
    を特徴とする半導体装置。
  2. 前記スイッチング素子は、半導体材料がシリコンからなり、
    前記MOSFETは、バンドギャップがシリコンより大きい半導体材料からなること
    を特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
  3. 前記MOSFETの半導体材料は、炭化珪素であることを特徴とする請求項2に記載の半導体装置。
  4. 前記スイッチング素子及びMOSFETは、各別の半導体基板に形成してあること
    を特徴とする請求項1から3までの何れか1項に記載の半導体装置。
  5. 前記MOSFETは、一の半導体基板の一面にゲート電極及びソース電極を、他面にドレイン電極を形成した縦型MOSFETであり、
    前記一の半導体基板の大きさは、他の半導体基板の一面に形成した前記一電極の大きさより小さく、
    前記一電極に前記ソース電極及びゲート電極を電気的に接続すべく、前記他の半導体基板の一面及び前記一の半導体基板の一面を導電性の接着剤で接着してあること
    を特徴とする請求項4に記載の半導体装置。
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