JP2011103243A - 優れた高温耐久性を有する燃料電池改質器用触媒コンバータ - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ステンレス鋼箔を加工してなるメタルハニカム基材と、ステンレス鋼箔上に形成した触媒層から構成される燃料電池改質器用触媒コンバータであって、前記ステンレス鋼箔は少なくともFe,Cr,およびAlを含有し、前記ステンレス鋼箔の表面にはステンレス鋼箔成分が酸化してできたアルミナ系酸化物皮膜を有し、該酸化物皮膜の含有するFeの濃度が酸化物に対する質量%で0.5%以上5.0%以下であることを特徴とする。燃料電池改質器用触媒コンバータ。
【選択図】なし
Description
触媒を担持する基材として、従来からペレットが用いられてきたが、近年、セラミックス、あるいは金属から構成されるハニカム基材を使用するようになってきている。これらハニカム基材は、ガスが通過する多数のセル状の流路を有し、各セルの壁面に触媒層をコーティングして触媒コンバータとする。このような構造にすることによって、通過するガスと触媒の接触面積を広くすることを可能にしている。
メタルハニカム基材は自動車排ガス浄化用として用いられる場合もあり、これまで各種の応用がなされてきた。
このように、従来公知技術にはステンレス鋼箔の表面にαアルミナ等の酸化物皮膜を形成させたメタルハニカム基材は開示されているが、改質器用メタルハニカム基材に関しては課題を示したり、課題解決に関する技術は無かった。
(1)ステンレス鋼箔を加工してなるメタルハニカム基材と、ステンレス鋼箔上に形成した触媒層とから構成される燃料電池改質器用触媒コンバータであって、前記ステンレス鋼箔は、少なくともFe,Cr,およびAlを含有し、かつ、該ステンレス鋼箔の表面にステンレス鋼箔成分が酸化してできたアルミナ系酸化物皮膜を有し、前記酸化物皮膜の含有するFeの濃度が酸化物に対する質量%で0.5%以上5.0%以下であることを特徴とする燃料電池改質器用触媒コンバータ。
(3)前記酸化物被膜の厚みが2.0μm以上4.0μm以下であることを特徴とする(1)に記載の燃料電池改質器用触媒コンバータ。
(4)前記触媒層がRu、Niのうち少なくとも一種を活性成分として含有することを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項に記載の燃料電池改質器用触媒コンバータ。
使用したステンレス鋼箔はCr:18mass%を含有したフェライト系ステンレス鋼であった。触媒層は、Ni系、あるいは、Ru系の改質触媒をそれぞれ担持したものである。ステンレス鋼箔表面に該触媒層を形成させた触媒コンバータ内を、メタンガスと水蒸気を混合した燃料ガスを通過させて、加熱条件下で改質反応によりH2ガスとCOガスを生成させた。
ステンレス鋼箔表面に担持した触媒層では、改質触媒の作用によって、原料の炭化水素と水蒸気が高温下でH2ガスとCOガスに変換されていた。このため、ステンレス鋼箔表面には生成した一部のH2ガスとCOガスが高温下で接触していた。このうちH2ガスは表面からステンレス鋼箔の内部へ浸透拡散し、運転停止の冷却時にそのままステンレス鋼箔中に残留した。また、COガスはステンレス鋼成分のCrと反応して箔表面近傍でCr炭化物を形成した。この現象は触媒層の活性成分がNi、あるいは、Ruである場合に顕著であった。
冷却後にメタルハニカム基材を構成するステンレス鋼箔の機械特性を分析した結果、破断伸びが低下したり、破断強度が低下しており、機械特性が残留水素や浸炭の影響によって劣化していることが判った。
本発明者らは、このアルミナ系酸化物皮膜に含有されるFeの濃度が酸化物皮膜に対する質量%で0.5%以上5%以下に制御されると、改質ガスであるH2ガスとCOガスの遮蔽効果と効果の長期持続性が得られることを見出した。その結果、メタルハニカム基材の残留水素や浸炭による劣化が長期間にわたって抑制できるようになるのである。
ステンレス鋼箔成分が酸化してできた酸化物皮膜には、ステンレス鋼箔中のAlが酸化してできるアルミナ系酸化物を少なくとも含有していることが必須である。アルミナ系酸化物が含有されると、酸化物皮膜中のFeの濃度が制御しやすく、その結果、酸化物皮膜自体の劣化を抑制しやすくなる。ここで、アルミナ系酸化物は、結晶構造による分類でα、γ、θ、χ、δ、η、κアルミナがあり、本発明の酸化物皮膜にはこれらのうちの少なくとも一種類以上のアルミナを含有することが望ましい。アルミナ系酸化物のAl原子をステンレス鋼箔成分のAl以外の金属元素等の他元素で一部置換した酸化物も本発明に含まれる。
Feの濃度が5.0%を超えると、Feを含有した酸化物皮膜がH2ガスとCOガスによって還元され易くなり、還元された部分に空孔を生じるようになる。特に、触媒層の活性成分がNi、あるいは、Ruの場合にこの影響は大きくなる。酸化物皮膜に空孔が増加すると、酸化物皮膜によるH2ガスとCOガスの遮蔽効果が低下して、残留水素や浸炭が増加し、劣化し易くなる。したがって、Feの濃度を5.0%以下とする。
なお、酸化物皮膜に含有されるFe濃度を測定するためには、例えば、定量GDS法を用いると良い。触媒層を剥ぎ取った後に、触媒層側から酸化物皮膜をグロー放電で剥ぎ取って行き、この中に含まれるFeの濃度分布を測定できる。
本発明のメタルハニカム基材のステンレス鋼箔にはAlを含有させる。含有されたAlはステンレス鋼箔の表面にアルミナ系酸化物を形成させたり、形成される酸化物皮膜の厚みを制御するために利用される。ステンレス鋼箔と酸化物皮膜に含有する全てのAl量の望ましい範囲は質量%で1.5%以上13%以下である。1.5%未満であると、本発明の酸化物皮膜を形成させることが困難になる。したがって、1.5%以上が望ましい。13%を超えると、ステンレス鋼箔の靭性が著しく低下し、排気ガスの圧力や振動によって箔の欠けや亀裂が発生して、構造信頼性が損なわれる。したがって、酸化物皮膜とステンレス鋼箔に含有する全Al濃度は1.5〜13質量%が好ましい。
本発明者らは、メタルハニカム基材を構成するステンレス鋼箔を制御された雰囲気と温度条件の下で高温酸化して、その表面に酸化物皮膜を形成させると酸化物皮膜中に含有されるFe濃度を本発明の範囲に制御できることを見出した。
Fe−Cr−Al箔を10-2〜10-4Pa程度の高真空中において1000〜1200℃で熱処理し、引き続き、水蒸気露点を制御した大気中において1000〜1300℃で熱処理すると本発明の酸化物皮膜を得ることができる。大気中で高温酸化させる際、雰囲気の水蒸気露点を10〜50℃に制御すると容易にFe濃度を本発明の範囲に制御することが可能である。大気中の熱処理温度が1000℃未満であると、酸化物皮膜の厚みが十分ではなく、また、Fe濃度を制御するのが難しくなるため、その結果、使用中に酸化物皮膜に亀裂が生じやすくなる。1300℃を超えると、酸化物皮膜の厚みが厚くなり過ぎ、また、Fe濃度を制御するのが難しくなるため、使用中に皮膜が剥離し易くなる。したがって、熱処理温度の望ましい範囲は1000℃〜1300℃である。
通常、ろう付けのための真空中熱処理の後に、上記に示した熱処理条件によってステンレス箔表面にアルミナ系酸化物皮膜を形成させる。この際、ろう付け部にも同様な酸化物皮膜が形成できるようにステンレス鋼に含有されたAlがろう付け部にも拡散している必要がある。また、ろう付け部に必ずしも最適な酸化物皮膜が形成されない場合がある。このような場合には、接合はろう付け法を用いず、箔同士を拡散接合で接合する方法も有効である。なお、アルミナ系酸化物皮膜を形成させた後に活性ろう材を利用してハニカム基材を形成することも可能である。
厚み40μmのステンレス鋼箔(I)を用意して、メタルハニカム基材を製造した。ステンレス鋼箔(I)の成分系は、質量%で20%Cr-5.0%Al-0.05%Zr-0.1%La-bal.Feであった。
メタルハニカム基材の製造は、ステンレス鋼箔にコルゲート加工を施した波箔と平箔を組み合わせた捲き回し、両者の接触部を真空中熱処理によるNi系ろう材で接合することで行った。この時、真空度は10-2Paに制御し、1050℃に加熱した。得られたメタルハニカム基材は、直径25mm×長さ50mm(24.5cm3)の円筒状であり、セル密度は400セル/inch2(62セル/cm2)であった。
触媒層を形成させる前に、ステンレス鋼箔の表面に形成された酸化物皮膜を観察した。XRD法を使用して酸化物相の同定を行った。GDS法を使用して酸化物皮膜に含有するFe濃度を測定した。また、SEM観察によって酸化物皮膜の厚みを求めた。これらの結果について、表1に示す。
評価は、断続的に改質反応と室温への冷却を繰り返し、一定回数を繰り返した後にステンレス鋼箔に含有される水素濃度、炭素濃度を測定して試験における増加分に基いて行なうものである。
改質反応は外熱方式で改質触媒コンバータを800℃に加熱し、水蒸気とメタンガスの混合ガスを流入させて行なった。この際、水蒸気とメタンガスのモル比は1.5であり、圧力は1atm、流量GHSVは10000h-1であった。改質反応は20時間連続させた。その後、冷却は外熱を止めて水蒸気のみを流してコンバータ全体を室温まで下げるものであった。繰り返し冷熱回数は1000回にした。
その結果を表1に示す。
No.2の改質触媒コンバータでは、ステンレス鋼箔表面にアルミナ系酸化物皮膜を形成させた。しかし、酸化物皮膜に含有されるFe濃度は本発明範囲から外れていた。繰り返し改質試験後のステンレス鋼箔における水素、炭素濃度の増加は大きく、何れも不合格であった。酸化物皮膜に含有されるFe濃度が高過ぎ、H2ガス、COガスの遮蔽効果が低下したものと考えられる。
以上示したように、メタルハニカム基材を構成するステンレス鋼箔の表面には箔成分が酸化してできた酸化物皮膜が形成されており、該酸化物皮膜に含有するFeの濃度が本発明の範囲内で制御されていれば、Ni系改質触媒層が形成されても、H2ガス、COガスによる劣化が抑制できることが明らかになった。
厚み30μmのステンレス鋼箔を用意して、メタルハニカム基材を製造した。ステンレス鋼箔の成分系は、質量%で20%Cr-7.8%Al-0.04%Ti-0.1%(La,Ce)-bal.Feであった。
メタルハニカム基材の製造は、ステンレス鋼箔にコルゲート加工を施した波箔と平箔を組み合わせた捲き回し、両箔の接触部と真空中熱処理による拡散接合することで行った。この時、真空度は10-2Paに制御し、1150℃に加熱した。得られたメタルハニカム基材は、直径25mm×高さ50mm(24.5cm3)の円筒状であり、セル密度は600セル/inch2であった。
触媒層を形成させる前に、ステンレス鋼箔の表面に形成された酸化物皮膜を観察した。観察方法は実施例1と同じであり、結果は表2に示す。
以上の方法で製造した改質触媒コンバータについて、改質反応で発生するH2ガス、COガスに対するメタルハニカム基材の耐久性を評価した。評価の方法は実施例1と同じである。その結果を表2に示す。
No.10の改質触媒コンバータでは、ステンレス鋼箔表面にアルミナ系酸化物皮膜を形成させた。しかし、酸化物皮膜に含有するFe濃度は本発明範囲から外れていた。繰り返し改質試験後のステンレス鋼箔における水素、炭素濃度の増加は大きく、何れも不合格であった。酸化物皮膜に含有するFe濃度が高過ぎ、H2ガス、COガスの遮蔽効果が低下したものと考えられる。
以上示したように、メタルハニカム基材を構成するステンレス鋼箔の表面には箔成分が酸化してできた酸化物皮膜が形成されており、該酸化物皮膜に含有するFeの濃度が本発明の範囲内で制御されていれば、Ru系改質触媒層が形成されても、H2ガス、COガスによる劣化が抑制できることが明らかになった。
Claims (4)
- ステンレス鋼箔を加工してなるメタルハニカム基材と、この基材のステンレス鋼箔上に形成した触媒層とから構成される燃料電池改質器用触媒コンバータであって、
前記ステンレス鋼箔は、少なくともFe,Cr,およびAlを含有し、かつ、該ステンレス鋼箔の表面にステンレス鋼箔成分が酸化してできたアルミナ系酸化物皮膜を有し、
前記酸化物皮膜の含有するFeの濃度が酸化物に対する質量%で0.5%以上5.0%以下であることを特徴とする燃料電池改質器用触媒コンバータ。 - 前記酸化物被膜の厚みが1.5μm以上6.0μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池改質器用触媒コンバータ。
- 前記酸化物被膜の厚みが2.0μm以上4.0μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池改質器用触媒コンバータ。
- 前記触媒層がRu、Niのうち少なくとも一種を活性成分として含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の燃料電池改質器用触媒コンバータ。
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