JP2011102011A - 印刷装置およびモーター制御方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】特定の制御対象について、速度変動を抑えた安定した動作を実現することが困難であった。
【解決手段】制御対象を駆動するモーターと、制御対象の速度を検出し、検出した速度と制御対象の目標速度との差に基づいてモーターに対する第一制御量を演算し、第一制御量に基づいてモーターを駆動させるフィードバック制御を実行可能な制御部とを備える印刷装置であって、制御部は、モーターをフィードバック制御して駆動させることにより特定の制御対象を動作させた所定期間における特定の制御対象の速度変動量を取得し、速度変動量に基づいてモーターに対する第二制御量を決定する第二制御量決定部と、モーターをフィードバック制御して駆動させることにより特定の制御対象を動作させる際に、動作の特定区間において、第一制御量および決定済みの第二制御量に基づいてモーターを駆動させる特定制御部と備える構成とした。
【選択図】図8

Description

本発明は、印刷装置およびモーター制御方法に関する。
プリンターにおいては、キャリッジやローラー等の制御対象を動作させるモーターを駆動制御する際に、PID制御(フィードバック制御)が行なわれている。すなわち、制御対象の現在の速度と目標速度との偏差を求め、当該速度偏差に比例ゲインを乗算した結果と、当該偏差に積分ゲインを乗算した結果の積算値と、当該偏差の変化量に微分ゲインを乗算した結果と、の加算結果に基づいて、モーターに供給する電圧をパルス幅変調(Pulse Width Modulation)するためのデューティー比(制御量)を決定し、当該デューティー比に基づいてモーターを制御している(特許文献1参照。)。
特開2006‐272763号公報
上記フィードバック制御は、制御対象に速度偏差が現れてから後追いで制御をするものである。そのため、モーターの駆動により、プリンターが備える制御対象のうち特定の制御対象に、短期的に大きな外的負荷を伴う動作(特定動作)を実行させた場合、瞬間的に発生する大きな速度偏差、および上記後追い制御による制御遅れに起因して、制御対象に大きな速度変動が生じてしまう。また、このような特定動作を制御対象に実行させる際に、プリンターにおいて、上記デューティー比の変化(モーターのトルク変化)に対する制御対象の速度の追従性が安定しない場合等には、制御対象の速度変動の振幅がより大きくなってしまい、上記特定動作を安定した速度で実現できないこともある。
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、制御対象の速度変動を抑えた安定した動作を実現するための印刷装置およびモーター制御方法を提供する。また本発明は、モーターのトルク変化に対する制御対象の速度の追従性が安定しない等といった状態であっても、結果的に制御対象の速度変動を抑えた安定した動作を実現可能とすることで、製品の製造や調整にかかるコストを低減することが可能な印刷装置およびモーター制御方法を提供する。
本発明の態様の一つは、制御対象を駆動するモーターと、当該制御対象の速度を検出し、当該検出した速度と当該制御対象の目標速度との差に基づいて当該モーターに対する第一制御量を演算し、当該第一制御量に基づいて当該モーターを駆動させるフィードバック制御を実行可能な制御部とを備える印刷装置であって、上記制御部は、上記モーターをフィードバック制御して駆動させることにより特定の制御対象を動作させた所定期間における当該特定の制御対象の速度変動量を取得し、当該速度変動量に基づいて上記モーターに対する第二制御量を決定する第二制御量決定部と、上記モーターをフィードバック制御して駆動させることにより上記特定の制御対象を動作させる際に、当該動作の特定区間において、上記第一制御量および決定済みの上記第二制御量に基づいて上記モーターを駆動させる特定制御部と、を備える構成としてある。
本発明によれば、モーターをフィードバック制御して特定の制御対象を動作させたときの当該特定の制御対象の速度変動量に基づいて、第二制御量が求められる。その後、モーターをフィードバック制御して当該特定の制御対象を動作させる際に、動作中の特定区間に限り、上記第一制御量にフィードフォワード制御量としての第二制御量が加えられた制御量に基づいて、モーターが駆動される。そのため、当該特定の制御対象について、速度変動を抑えた安定した動作を実現させることができる。また本発明によれば、モーターのトルク変化に対する当該特定の制御対象の速度追従性が安定しない等といった状況下でも、結果的に当該特定の制御対象の速度変動を抑えた安定した動作を実現することで、印刷装置の製造や調整にかかるコストを低減することができる。
上記特定の制御対象とは、印刷装置が備える複数の制御対象の中の一つであり、その構造上、モーターの駆動により動作したときに、短期的あるいは突発的に所定程度の大きな負荷を伴うものを言う。このような特定の制御対象は、例えば、上記モーターの駆動によりインク吐出用の印字ヘッドのインク吐出面に対する接近動作および当該インク吐出面からの退避動作を実行可能なインクキャップである。そして、上記第二制御量決定部は、上記モーターを駆動させることにより上記インクキャップに上記退避動作をさせた期間における速度変動量を取得し、上記特定制御部は、上記モーターを駆動させることにより上記インクキャップに上記退避動作をさせる際に、当該退避動作の特定区間において、上記第一制御量および決定済みの上記第二制御量に基づいて上記モーターを駆動させる。当該構成によれば、インクキャップに速度変動を抑えた安定した退避動作を実現させることができる。
上記第二制御量決定部は、上記特定の制御対象の動作について予め定められた目標速度と、当該特定の制御対象を動作させた期間における当該制御対象の速度の最大値または最小値と、の差を速度変動量として取得するとしてもよい。当該構成によれば、特定の制御対象の速度変動量を的確かつ容易に取得することができる。
また、上記第二制御量決定部は、上記速度変動量が大きいほど第二制御量を大きな値とする。当該構成によれば、特定区間において、第一制御量に追加されるフィードフォワード制御量としての第二制御量は、上記速度変動量が大きいほど大きな値とすることができる。そのため、上記特定区間において短期的あるいは突発的に発生する負荷の影響による速度変動を、的確に抑えることができる。
上記第二制御量決定部は、上記速度変動量に基づいて、上記特定の制御対象の動作区間内の複数の特定区間毎の第二制御量を決定し、上記特定制御部は、各特定区間において、上記第一制御量および特定区間毎に決定されている第二制御量に基づいて上記モーターを駆動させるとしてもよい。あるいは、上記第二制御量決定部は、上記特定の制御対象の動作区間内の複数の特定区間毎に当該特定の制御対象の速度変動量を取得し、当該特定区間毎の速度変動量に基づいて特定区間毎の第二制御量を決定し、上記特定制御部は、各特定区間において、上記第一制御量および特定区間毎に決定されている第二制御量に基づいて上記モーターを駆動させるとしてもよい。これら構成によれば、複数の特定区間毎に必要なフィードフォワード制御量としての各第二制御量を適切に決定し、当該特定の制御対象について速度変動を抑えた安定した動作を実現させることができる。
上記第二制御量決定部は、速度変動量を入力して第二制御量を出力する関数を用いて第二制御量を決定する際に、特定区間毎に対応する各関数であって少なくとも一部の関数間で入出力特性が異なる各関数を用いて特定区間毎の第二制御量を決定するとしてもよい。当該構成によれば、複数の特定区間毎に最適なフィードフォワード制御量としての各第二制御量を決定することができる。
上記第二制御量決定部は、上記速度変動量が所定のしきい値以下である場合は、第二制御量を0又は上記速度変動量が当該しきい値を上回る場合に決定する第二制御量より少ない所定の基準量に決定し、上記特定制御部は、特定区間において、上記第一制御量のみに基づいて、又は、上記第一制御量および上記所定の基準量に基づいて上記モーターを駆動させるとしてもよい。当該構成によれば、上記速度変動量が所定のしきい値以下である場合、すなわち第一制御量によるフィードバック制御で上記特定の制御対象の速度が略安定している場合には、第一制御量に第二制御量を加えないか、或いは加えたとしても上記所定の基準量といった少ない値を加えるのみとし、状況に応じた最適なモーター駆動制御を実現している。
上記第二制御量決定部は、上記印刷装置において所定の動作が実行される度に、上記速度変動量の取得および当該速度変動量に基づく上記第二制御量の決定を実行するとしてもよい。当該構成によれば、印刷装置において所定の動作が実行される度に上記第二制御量が最新の値に更新される。そのため、常時、特定の制御対象について、速度変動を的確に抑えた安定した動作を実現させることができる。印刷装置において所定の動作が実行されたとは、例えば、印刷装置が所定枚数の印刷を実行した状況や、印刷装置の電源が投入されて印刷装置が起動した状況などを言う。
印刷装置は、上記モーターから上記特定の制御対象へ動力を伝達するために、第一プーリーと、上記特定の制御対象と接続して当該特定の制御対象に動力を伝えるローラーと共に回転する第二プーリーと、第一プーリーと第二プーリーと上記モーターの軸に結合したギアとに架け渡されたタイミングベルトと、第二プーリーと上記モーターの軸に結合したギアとの間の所定位置においてタイミングベルトの面に向かう方向に付勢されてタイミングベルトの面に接することによりタイミングベルトのテンションを略一定に保つための可動テンションローラーと、可動テンションローラーの近傍に固定されることにより上記付勢方向に沿った可動テンションローラーの可動域を制限するブロック部材とを備えるとしてもよい。当該構成によれば、ブロック部材の取付け位置の精度に左右される上記可動域(可動テンションローラーとブロック部材との隙間)の有無や大きさ、当該隙間の存在により可動テンションローラーが動くことによるタイミングベルトのテンションの低下、等に起因して、モーターのトルク変化に対する特定の制御対象の速度追従性が安定しない(モーターのトルクが第二プーリー側に伝わりにくい)ことがある。この結果、上記フィードバック制御だけの場合は、特定の制御対象の速度変動量が増大し得る。しかしながら本発明によれば、このようなブロック部材の取付け位置の精度不足やタイミングベルトのテンション低下等がある場合であっても、結果的に上記特定の制御対象の速度変動を抑えた安定した動作を実現することができる。そのため、ブロック部材の取付け位置の精度維持やタイミングベルトのテンション維持のために従来要していた部品調達や作業時間や人件費といった各種コストを削減できる。
本発明の技術的思想は、印刷装置以外によっても実現可能である。例えば、上述した印刷装置の各部が実行する処理工程を有する方法(モーター制御方法)の発明や、上述した印刷装置の各部が実行する機能を所定のハードウェア(印刷装置が内蔵するコンピューター等)に実行させるプログラムの発明をも把握可能である。なお、本発明の印刷装置は、単一の装置のみならず、複数の装置によって分散して存在可能である。
プリンターの構造を概略的に示す図である。 プリンターの機能構成を概略的に示す図である。 PF制御部の詳細等を示すブロック図である。 インクキャップやキャリッジ等の位置関係を示す斜視図である。 PFモーターとPFローラーとの接続箇所の構造を簡易的に示す図である。 隙間が無い機体でフィードバック制御のみによるインクキャップの下降動作をした際の速度変化等を示す図である。 隙間がある機体でフィードバック制御のみによるインクキャップの下降動作をした際の速度変化等を示す図である。 FF制御量決定処理を示すフローチャートである。 FFdを算出するための関数の一例を示す図である。 FFdを算出するための関数の他の例を示す図である。 FFdプロファイルを例示する図である。 補正係数を算出するための各関数の一例を示す図である。 特定区間毎の速度変動量に応じてFFdを算出するための各関数の一例を示す図である。 インクシステムの動作を伴う印刷処理を示すフローチャートである。 隙間がある機体でフィードバック制御とフィードフォワード制御の組み合わせによるインクキャップの下降動作をした際の速度変化等を示す図である。 本実施形態の効果を例示する図である。
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。
1.プリンターの概略説明
図1は、本実施形態にかかるプリンター1の概略構造を例示する側面図である。プリンター1は印刷装置に該当する。また、プリンター1はモーター制御方法の実行主体に該当する。プリンター1は、給紙トレー2を有する。給紙トレー2は、プリンター1の底部に略水平に配設される。給紙トレー2には印刷用紙(印刷媒体)を載置することができる。給紙トレー2を搬送経路上流位置として、印刷用紙は給紙トレー2から所定の搬送経路に供給され、搬送経路を搬送され、プリンター1の前面側に配設される図示外の排紙トレーへ排出される。給紙トレー2に載置された印刷用紙のうち最も上に載置された印刷用紙に対して、PU(ピックアップ)ローラー12がその外周を接するように備えられている。PUローラー12は、後述するPFモーター(搬送モーター)14と図示しないギア等によって結合されており、PFモーター14の駆動によりPUローラー12が印刷用紙に平行な回転軸を中心として回転駆動する。
PUローラー12は、図1において時計回りに正回転し、外周にて接する印刷用紙を後方に送り出す。すると、印刷用紙はプリンター1の後方に向かって進行しつつ、印刷用紙の搬送経路下流側の端部(用紙先端)が搬送ガイド13に誘導される。搬送ガイド13は、略半円を描くように湾曲した搬送経路を一部に形成しており、PUローラー12によって給紙トレー2から送り出された印刷用紙は、搬送ガイド13に誘導されて搬送経路下流側(排紙トレー側)へ進行する。これにより、印刷用紙は、搬送ガイド13に沿って湾曲しつつ上方に供給される。搬送ガイド13の湾曲する経路の中央部には、中間ローラー19が備えられている。中間ローラー19は、その外周が搬送ガイド13の印刷用紙に外側から接しつつ、印刷用紙に平行な回転軸を中心として回転する。中間ローラー19は、PFモーター14と図示しないギア等によって結合されており、PFモーター14の駆動により能動的に回転駆動する。図1において中間ローラー19が正回転する方向は、反時計回りである。印刷用紙を挟んで中間ローラー19に対向するように中間従動ローラー19aが設けられている。
中間ローラー19が回転駆動することにより、印刷用紙は、搬送ガイド13に沿ってさらに上方に搬送される。用紙先端は、搬送ガイド13の湾曲部分を抜けると、プリンター1の前方(搬送経路下流側)に向かって搬送ガイド13の略水平部分に沿って略水平に進行する。略水平にしばらく進行すると、用紙先端がPFローラー(搬送ローラー)17に到達する。PFローラー17は、その外周が印刷用紙に対して下側から接する。PFローラー17も、PFモーター14と図示しないギア等によって結合されており、PFモーター14の駆動により能動的に回転駆動する。図1においてPFローラー17が正回転する方向は、時計回りである。印刷用紙を挟んでPFローラー17に対向するようにPF従動ローラー17aが設けられている。用紙先端がPFローラー17に到達すると、印刷用紙はPFローラー17によって搬送される。印刷用紙が中間ローラー19およびPFローラー17の両方と接触している期間においては、PFモーター14の駆動によるPFローラー17と中間ローラー19の双方の回転駆動によって印刷用紙が搬送される。プリンター1においては、PFローラー17と中間ローラー19による印刷用紙の搬送速度が互いに同じとなるようにローラー径やギア比が設定されている。
PFローラー17よりも搬送経路下流側にはプラテン22が設けられており、プラテン22が搬送される印刷用紙を下方から支持する。プラテン22に印刷用紙を挟んで上方から対向するようにキャリッジ21が備えられている。キャリッジ21は下方に印字ヘッド21aを備えており、印字ヘッド21aの下面に配列する多数のノズルからインクを吐出することが可能である。キャリッジ21は、図1の紙面に対して垂直な方向に移動(主走査)することが可能である。キャリッジ21は、主走査を行いながらインクを吐出することにより、プラテン22上の印刷用紙におけるノズルに対向する領域(印刷位置)に対して、主走査方向に沿ったラスタラインを描画することができる。主走査を行った後に、PFモーター14を駆動させ、印刷用紙を搬送することにより、印刷用紙における印字位置をずらす(副走査)ことができる。従って、印刷用紙における異なる位置にラスタラインを描画することができる。すなわち、上述した主走査と副走査を順次繰り返して実行することにより、印刷用紙上に印刷画像を形成することができる。主走査と副走査を繰り返し、印刷用紙に対する必要な印刷画像の形成が全て終了した後に、印刷用紙が搬送(排紙搬送)され排紙トレーに排出される。
図2は、プリンター1の機能構成を示すブロック図である。プリンター1は、既に説明した以外の構成として、外部I/F(外部インターフェイス)30と、CPUとROMとRAMとからなるマイクロコンピューター31と、ASIC32と、モータードライバー15と、ロータリーエンコーダー33等を備えている。外部I/F30は外部のホストコンピューター60との仲介をなし、外部I/F30を介してホストコンピューター60から印刷データPDを取得する。印刷データPDは、ハーフトーン処理等が行われた印刷画像を構成するラスターデータと、プリンター1を制御するための制御データ等から構成されている。
ロータリーエンコーダー33は、PFローラー17またはPFローラー17と結合されたいずれかのギアに備えられたスケール板と当該スケール板を挟んで配置された発光部と受光部とから構成され、受光部における受光状態に基づいてPFローラー17の回転速度に応じたパルス周期を有するパルス信号を生成する。
ASIC32は、PF制御部32aと、キャリッジ制御部32bと、PU制御部32cとを備えている。PF制御部32aは、ロータリーエンコーダー33から出力されるパルス信号(パルス周期)に基づいて、現在のPFローラー17の回転速度(回転量に比例する値)を演算するとともに、この速度が、予め決められた速度プロファイルに沿ったものとなるように、微小な時間(制御ステップ。PID制御周期とも言う。)毎に、PFモーター14の駆動をPID制御(フィードバック制御)する。このようなフィードバック制御は、印刷処理のための印刷用紙の搬送にはもちろん、後述するような、インクシステム(インクキャップ40)を動作させる際にも実行される。
上述したように、PFローラー17はPFモーター14の駆動により回転するものであるため、ロータリーエンコーダー33からの出力を監視することで、PF制御部32aはPFモーター14の駆動状況を間接的に把握することができる。
また、キャリッジ制御部32bはキャリッジ21や印字ヘッド21aを駆動制御するための処理を実行し、PU制御部32cはPUローラー12を駆動制御するための処理を実行する。
図3は、主にPF制御部32aの詳細をブロック図により示している。PF制御部32aは、PFモーター14を駆動する制御機能を備えており、マイクロコンピューター31から、制御対象の目標位置が入力されると、入力値に応じてPFモーター14を制御する。PF制御部32aは、位置演算部6a、減算器6b,6e、目標速度演算部6c、速度演算部6d、比例要素6f、積分要素6g、微分要素6h、加算器6i,6k、PWM回路6j、PID演算部6pid、FF(フィードフォワード)制御量演算部7を備える。
位置演算部6aは、ロータリーエンコーダー33から出力されるパルス信号の立ち上がりエッジ、立ち下がりエッジを検出し、検出されたエッジの個数を計数することにより、現在のPFローラー17の回転位置を演算する。減算器6bは、マイクロコンピューター31から送られてくる目標回転位置と、位置演算部6aによって求められた回転位置との回転位置偏差を演算する。
目標速度演算部6cは、減算器6bの出力である回転位置偏差と上記速度プロファイルとに基づいてPFローラー17の目標回転速度(目標速度)を演算する。この演算は回転位置偏差にゲインKpを乗算することにより行われる。ゲインKpは回転位置偏差に応じて決定される。速度演算部6dは、ロータリーエンコーダー33から出力されるパルス信号のエッジを検出する時間間隔に基づいて現在のPFローラー17の回転速度を演算する。減算器6eは、目標回転速度と、速度演算部6dによって演算された回転速度との回転速度偏差を演算する。
PID演算部6pidは、比例要素6f、積分要素6g、微分要素6hの各演算要素と、加算器6iを備える。PID演算部6pidの各演算要素には、所定の定数(ゲイン)が予め設定されている。またPID演算部6pidは、各演算要素における随時更新されるゲインによって特性が変更される適応型のPID演算を実行可能である。比例要素6fは、上記回転速度偏差に比例ゲインGpを乗算し、乗算結果を出力する。積分要素6gは、回転速度偏差に積分ゲインGiを乗じたものを積算し、積算結果を出力する。微分要素6hは、現在の回転速度偏差と、1つ前の回転速度偏差との差に微分ゲインGdを乗算し、乗算結果を出力する。
比例要素6f、積分要素6g及び微分要素6hの出力は、加算器6iにおいて加算される。加算器6iによる加算結果(PID演算部6pidからの出力)は、PFモーター14を駆動するフィードバック制御量であり、第一制御量に該当する。第一制御量は、加算器6kを経てPWM回路6jに送られる。加算器6kは、第一制御量と、FF制御量演算部7から出力されるフィードフォワード制御量としての第二制御量と、を加算し、加算結果をPWM回路6jに出力する。ただし後述するように、FF制御量演算部7から第二制御量が出力される場面は限られており、FF制御量演算部7から第二制御量が出力されない場合には、第一制御量のみがPWM回路6jに送られる。PWM回路6jは、加算器6kから出力された制御量に相当するデューティー比DRを決定し、モータードライバー15に出力する。モータードライバー15は、電源電圧としての直流電圧をデューティー比DR(パルスの周期に対するONの期間の比率)に応じてパルス幅変調することにより、パルスとしてのPWM信号を生成し、PFモーター14に出力する。PFモーター14は、DCモーターであり、モータードライバー15から出力されたPWM信号を駆動電源として駆動する。すなわち、PFモーター14は、PWM信号(PWM信号のデューティー比DR)に応じたトルクを生じさせる。PWM信号のデューティー比DRが大きければ大きいほど、PFモーター14に印加される電圧Vmおよび電流Imの平均的な値は大きくなり、PFモーター14のトルクも大きくなる。
デューティー比DRは、DR=d/PWMcycleと表現することができる。PWMcycleは、例えば3000といった整数である。dは、デューティー(Duty)値であり、デューティー比DRにおける分子である。PWMcycle=3000とした場合、d=0〜3000の整数である。つまり本実施形態では、PF制御部32aは、上記デューティー比DRを、パルス周期の1/3000単位で調整して決定することができる。
FF制御量演算部7は、後述するように、第二制御量を予め決定(FF制御量決定処理)しておき、所定のタイミングで第二制御量を出力することにより、PF制御部32aが元来実行するフィードバック制御にフィードフォワード制御を組み合わせたPFモーター14の駆動を実現する。FF制御量演算部7は、第二制御量決定部に該当する。
マイクロコンピューター31のCPUは、ROMに記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、ASIC32に、後述の、FF制御量決定処理や、インクシステムの動作を伴う印刷処理を実現させる。
2.インクシステムへの動力伝達構造の説明
プリンター1においては、上述したようにPFモーター14が駆動することによってPFローラー17、中間ローラー19等を回転させることが可能であるが、更にPFモーター14は、インクシステムを動作させることが可能である。インクシステムとは、プリンター1に備えられた機構であって、印字ヘッド21aのノズル口の乾燥防止や、ノズルのクリーニングや、キャリッジ21の固定等に用いられるシステムである。インクシステムは、インクキャップ40を含む。インクキャップ40は、特定の制御対象の一例に該当する。
図4は、インクキャップ40やキャリッジ21等の位置関係を斜視図により簡易的に例示している。図4では、初期位置に配置されたキャリッジ21を示している。キャリッジ21の初期位置とは、キャリッジ21が上記主走査の方向に沿って往復移動可能な範囲の一端の位置である。キャリッジ21は、印刷を実行しない場合は、初期位置に停留される。インクキャップ40は、キャリッジ21の下方、つまり印字ヘッド21aの下面(インク吐出面)と対抗するように設けられている。インクキャップ40は、例えば略矩形の筺体40aや、筺体40aの内部に収容されたスポンジ40bや、不図示のキャリッジロック部材等を備え、初期位置に在るキャリッジ21の印字ヘッド21aのインク吐出面に対する接近動作(上昇動作)およびインク吐出面からの退避動作(下降動作)が可能である。つまり、インクキャップ40は、初期位置に在る(初期位置に戻ってきた)キャリッジ21に対して接近し、スポンジ40bでインク吐出面を塞いでノズル口の乾燥を防止するとともに、キャリッジロック部材をキャリッジ21の所定位置に係止させることによりキャリッジ21の移動を禁止する。一方、インクキャップ40は、初期位置に在るキャリッジ21から退避することにより、スポンジ40bをインク吐出面から離間させるとともにキャリッジロック部材によるキャリッジ21の固定を解除する。
インクキャップ40の接近・退避(上昇・下降)動作は、PFモーター14の駆動によって実現される。プリンター1においては、PFローラー17は不図示のギアの輪列やレバー等の機構を介してインクキャップ40と接続されており、PFローラー17の回転がインクキャップ40に伝達される構成となっている。具体的には、PFローラー17がPFモーター14の駆動によって正回転したときに、インクキャップ40は接近動作を行い、PFローラー17が逆回転したときに、インクキャップ40は退避動作を行なう。ただしPFローラー17とインクキャップ40とは常に接続されている訳ではなく、プリンター1は、PFローラー17とインクキャップ40との接続・非接続を切替える輪列切替え部41を備えている。マイクロコンピューター31に制御されることにより、輪列切替え部41は、PFローラー17とインクキャップ40とが接続されている状態(PFローラー17の回転がインクキャップ40に伝達される状態)と、PFローラー17とインクキャップ40とが切断されている状態(PFローラー17の回転がインクキャップ40に伝達されない状態)とを切替えることができる。
上述したようなインクキャップ40の動作にはある程度の負荷がかかる。特に、プリンター1の構造上、インクキャップ40の下降動作の過程におけるある地点で、非常に大きな外的負荷が発生する。これは、インクキャップ40の筺体40aは、その表面を、プリンター1内において筺体40aの周囲に配置されている周辺部品(図示せず)と接触させた状態で配設されており、下降動作のある途中地点で、当該接触により筺体40aと周辺部品との間に大きな摩擦が生じるからである。言い換えると、PFモーター14は、インクキャップ40に下降動作をさせるには、下降動作の途中で当該摩擦により突発的に生じる大きな外的負荷に打ち勝ってPFローラー17を回転させるトルクを発生させる必要がある。
図5は、プリンター1における、PFモーター14とPFローラー17との接続箇所についての構造を簡易的に示している。プリンター1においては、PFモーター14の軸14aに結合したギア14bにタイミングベルト46が接している。また、プリンター1には、第一プーリー44と、PFローラー17と共に回転する第二プーリー45が配設されている。タイミングベルト46は、第一プーリー44と第二プーリー45とギア14bとに架け渡されている。従って、PFモーター14が生み出した動力は、タイミングベルト46、第一プーリー44、第二プーリー45を介してPFローラー17、インクキャップ40に伝達される。
さらに、第一プーリー44とギア14bとの間の所定位置には、可動テンションローラー47が備えられている。可動テンションローラー47は、タイミングベルト46の面に接しタイミングベルト46の移動に応じて回転するローラー47aと、一端においてローラー47aを回転可能に支持する支持部47bと、を有する。支持部47bは、ローラー47aがタイミングベルト46の面に向かう方向にバネ47b1によって付勢されている。また支持部47bは、上記付勢方向と略直交する面47b3であってローラー47aが取り付けられている一端とは逆の端部の方向を向いた面47b3を持つ凹部47b2を形成している。さらに、プリンター1においては、凹部47b2に対応してブロック部材48がビス等で固定されている。ブロック部材48は、可動テンションローラー47の近傍に固定され、凹部47b2の面47b3に干渉することにより、上記付勢方向に沿った可動テンションローラー47の可動域を制限する(バネ47b1の縮みを制限する)。つまりブロック部材48の存在により、可動テンションローラー47がタイミングベルト46から離れる方向へ移動することが抑制され、この結果、理想的にはローラー47aがタイミングベルト46の面を押す力が略一定となり、タイミングベルト46のテンション(張力)が略一定に保たれる。
プリンター1においては、タイミングベルト46のテンションを理想的な値で略安定させるためには、面47b3とブロック部材48とが間を空けずに接していることが理想的である。しかし、プリンター1を数千台、数万台と製造する工程においては、プリンター1の全ての機体について、面47b3とブロック部材48との隙間を0mmに調整することは製造管理上困難であり、ある機体については、面47b3とブロック部材48とに隙間g(図5参照)が生じてしまう。また、このような隙間gの大きさも、厳密には一台一台のプリンター1毎に異なる。また隙間gは、プリンター1が市場に出荷された当初は0mmであっても、ブロック部材48のビスの締め付け具合や品質、その他各部品の経時的変化に応じて徐々に拡大してしまうこともある。
このような隙間gの存在は、可動テンションローラー47がタイミングベルト46から離れる方向へ移動することを許容するものであるため、タイミングベルト46のテンションを製品設計上理想とされているテンションよりも低下させる要因となる。そして、このようにタイミングベルト46のテンションが理想的な値よりも低下してしまうと、PFモーター14からPFローラー17側へトルクが正確に伝わらなくなり、追従性の優れたフィードバック制御が困難になるという弊害が生じる。
上述したようにインクキャップ40の下降動作には大きな外的負荷が発生するが、当該下降動作をPFモーター14の駆動によって実現する場合、以下のような現象が起きる。
輪列切替え部41によってPFローラー17とインクキャップ40が接続された状態で、PF制御部32aがPFモーター14を逆回転させるフィードバック制御を開始すると、PFモーター14のトルクがタイミングベルト46を介してPFローラー17に伝わりPFローラー17が逆回転し、インクキャップ40が下降動作を開始する。しかしながら、下降中のある時点でインクキャップ40に多大な上記外的負荷が載ることで、下降動作の速度(PFローラー17の回転速度)が急激に低下し、これに応じてPF制御部32aがモータードライバー15に与えるデューティー比DRが急上昇し、PFモーター14のトルクも増大する。この増大したトルクはPFローラー17を回転させようとする。しかし、多大な外的負荷が載ることでPFローラー17が重たくなっている状況下では、かかるトルクは主に、第二プーリー45からローラー47aを経てギア14bにかけてのベルト部分を引っ張る力に費やされ、これにより、可動テンションローラー47のローラー47aが押下げられる。このとき、上述した隙間gが存在している場合には、可動テンションローラー47がタイミングベルト46から離れる方向へ移動してしまう。
すると、図5において二点鎖線で示したようにタイミングベルト46の一部範囲が緩み、タイミングベルト46のテンションが低下し、PFモーター14のトルクがPFローラー17へ伝わりにくくなる。このように、PFローラー17に大きな負荷がかかり、これを契機として、上記隙間gの存在により可動テンションローラー47が動いてしまう(バネ47b1の付勢方向に沿って振動してしまう)状況下では、以降、タイミングベルト46のテンションが安定せず、結果、PFモーター14からPFローラー17へのトルクの伝わり方も安定しない。そのため、理想的なフィードバック制御が困難となり、上記下降動作について予め定められた速度プロファイルにおける目標速度での安定した下降動作が実現されなくなる。
図6では、可動テンションローラー47の面47b3とブロック部材48との間に隙間gが無いプリンター1(第一の機体)で、PFモーター14をフィードバック制御することによりインクキャップ40の下降動作を実行した際の様子を、グラフにより示している。一方、図7では、面47b3とブロック部材48との間に隙間gが存在するプリンター1(第二の機体)で、PFモーター14をフィードバック制御することによりインクキャップ40の下降動作を実行した際の様子を、グラフにより示している。図6,7の各グラフはいずれも、インクキャップ40の移動距離(0〜ZE)に対する、デューティー値dの変化(実線)およびPFローラー17の回転速度の変化(一点鎖線)を示している。距離0は、下降動作の出発位置であり、インクキャップ40が初期位置のキャリッジ21に最も接近した状態にあるときの位置を意味している。距離ZEは、下降動作の終着位置であり、インクキャップ40が初期位置のキャリッジ21から最も離れた状態にあるときの位置を意味している。また各グラフにおいては、インクキャップ40の下降動作における目標速度の変化を二点鎖線により示している。なお、図6に示した下降動作の目標速度の方が、図7に示した下降動作の目標速度よりも高い値に設定されている。
図6に示したように、第一の機体では、インクキャップ40が下降動作を開始した後のあるZn地点で、インクキャップ40に大きな外的負荷がかかることにより、それまで目標速度に略沿って安定していたインクキャップ40の速度(PFローラー17の回転速度)が突発的に低下している。この速度低下に反応してデューティー比DR(デューティー値d)が瞬間的に上昇することで、速度の安定化が図られている。上述したように第一の機体では隙間gが無い。そのため、上述したような、可動テンションローラー47の移動によるタイミングベルト46のテンション低下やテンション変動といった現象が禁止あるいは抑制され、タイミングベルト46のテンションがほぼ維持される。従って、Zn地点で多大な外的負荷が発生することでインクキャップ40の速度が一時的に低下し、いくらか速度変動が発生するものの、全体的にはフィードバック制御下で目標速度にほぼ沿った適切な下降動作が実現されている。
一方、図7に示したように第二の機体でも、Zn地点で突発的に速度が低下したことに反応して、デューティー比DR(デューティー値d)を上昇させ速度の安定化を図っている。しかしながら、隙間gの存在に起因する(可動テンションローラー47の移動による)タイミングベルト46のテンション低下およびテンション不安定化のため、デューティー比DRの変化(PFモーター14のトルク変化)に対するPFローラー17の速度変化の追従性が低下している。そのため、例えば、PFモーター14の回転速度が上昇しているにもかかわらずロータリーエンコーダー33の出力にこの速度上昇が敏感に反映されず、反映された頃にはPFモーター14の回転速度が過剰に上昇しており、今度は急激にPFモーター14を減速させ、しかし当該減速がロータリーエンコーダー33の出力になかなか反映されないため減速し過ぎる…、というような制御サイクルに陥る。つまり、フィードバック制御は、制御対象に速度偏差が現れてから後追いで制御をするため、上述したような突発的な負荷変動や、タイミングベルト46のテンション低下、変動等が重なったときには、制御対象の速度の乱れを収束させることが困難となり、図7に示したように、速度変動量が大きくなってしまう(速度変動が発振状態となる)。
そこで本実施形態では、特定の制御対象(インクキャップ40)の下降動作における速度変動量に注目し、この速度変動量に応じてフィードフォワード制御量(第二制御量)を決定し、以降のインクキャップ40の下降動作時には、第二制御量に基づくフィードフォワード制御でフィードバック制御を補うことにより、動作の安定化を図っている。
3.FF制御量決定処理
図8は、PF制御部32a(主にFF制御量演算部7)が実行するFF制御量決定処理をフローチャートにより示している。当該処理は、例えば、プリンター1が市場に流通する前(出荷前)のプリンター1の調整工程において実行される。
ステップS100では、フィードバック制御でPFモーター14を逆回転駆動することにより、インクキャップ40に下降動作を実行させ、下降動作中のインクキャップ40の速度を検出する。具体的には、マイクロコンピューター31が輪列切替え部41を制御してPFローラー17とインクキャップ40とを接続した上で、PF制御部32aが、当該下降動作について予め定められた速度プロファイルの下、PFモーター14を逆回転させるフィードバック制御を実行する。つまり、PID演算部6pidが出力する第一制御量のみに相当するデューティー比DRによってPFモーター14が駆動制御される。このとき、FF制御量演算部7は、速度演算部6dが制御ステップ毎に演算するPFローラー17の回転速度を、インクキャップ40の下降動作の速度として入力する。このように入力される速度は、例えば、図6に一点鎖線で示したような変動態様や、図7に一点鎖線で示したような変動態様を採り得る。
ステップS110では、FF制御量演算部7は、上記ステップS100で入力したインクキャップ40の速度に基づいて、速度変動量ΔVを取得する。この場合、FF制御量演算部7は、インクキャップ40の下降動作の定速期間中における速度変動量ΔVを求める。図7(図6も同様)の二点鎖線(目標速度)で示したように、当該下降動作における速度変化のグラフ形状は、理想的には、速度が上昇する加速期間と、速度が目標速度Vstdで略安定する定速期間と、速度が減少する減速期間とからなる。加速期間、定速期間、減速期間の区分は、上記ステップS100でインクキャップ40に下降動作を開始させた以降の制御ステップ数と、予め決められた制御ステップ数に対するしきい値(加速期間、定速期間、減速期間を区分するためのしきい値)とを比較することで実現可能である。あるいは、FF制御量演算部7は、位置演算部6aが演算するPFローラー17の回転位置に基づいて、定速期間であるか否かを判断してもよい。FF制御量演算部7は、このような定速期間中の速度の最大値Vmaxおよび最小値Vmin(図7参照)を取得するとともに、最大値Vmaxと目標速度Vstdとの差および、最小値Vminと目標速度Vstdとの差、を求め、これら2つの差のうち絶対値が大きいほうの差を、速度変動量ΔVとして取得する。
ステップS120では、FF制御量演算部7は、上記ステップS110で取得した速度変動量ΔVに基づいて、PFモーター14に対する第二制御量を決定する。速度変動量ΔVに基づく第二制御量の決定手法は種々考えられる。以下では、速度変動量ΔVに基づく第二制御量の各決定手法を、実施例1〜4として説明する。
実施例1:
ステップS120では、FF制御量演算部7は、所定の関数Fを読み出すとともに、関数Fに速度変動量ΔVを入力することにより、速度変動量ΔVに基づく第二制御量を算出する。そして、算出した第二制御量を、特定の制御対象の動作(インクキャップ40の下降動作)のための第二制御量として保存する。ここでは、第二制御量をフィードフォワードデューティー値(FFd)と表記する。関数Fは、速度変動量ΔVとFFdとの理想的な対応関係を規定するものとして予め実験等により求められ、例えば、プリンター1内部の所定の記憶領域に記憶されている。
図9は関数Fを例示している。図9においては、横軸を速度変動量ΔVとし、縦軸をFFdとした2軸平面上に、一次関数としての関数Fを示している。本実施例では、関数Fは、速度変動量ΔVが所定のしきい値Th1以下である場合には出力値(FFd)を0とし、速度変動量ΔVがしきい値Th1を超える場合に、速度変動量ΔVが大きいほど出力値を大きくする特性を持つ。
ただし、関数Fは図9に示したものに限られない。例えば、図10に示すように、関数Fは、速度変動量ΔVが所定のしきい値Th1,Th2,Th3…を超える毎に、階段状に出力値を増加させる特性のものであってもよい。
このように速度変動量ΔVと関数Fによって決定され、保存されたFFdは、後述するように、フィードバック制御によるインクキャップ40の下降動作が実行される際に、下降動作区間(0〜ZE)内の特定区間に限って、FF制御量演算部7から出力される。
実施例2:
上記実施例1では、速度変動量ΔVに基づいて一つのFFdを決定した。しかし、ステップS120では、速度変動量ΔVに基づいて、インクキャップ40の下降動作区間内の複数の特定区間毎のFFdを決定するとしてもよい。つまり、インクキャップ40の下降動作区間の各特定区間において、それぞれに最適なFFdがFF制御量演算部7から出力されるようにしてもよい。具体的には、FF制御量演算部7は、プリンター1内部の所定の記憶領域に予め記憶されているFFdプロファイル70を参照することにより、速度変動量ΔVに対応するFFdの組を取得する。
図11は、FFdプロファイル70を例示している。FFdプロファイル70は、速度変動量ΔVが属する数値範囲(しきい値Th1,Th2,Th3…との大小関係)と、“FFdの組”と、の対応関係を規定している。“FFdの組”は、Z1地点〜Z2地点の第1区間、Z2地点〜Z3地点の第2区間、Z3地点〜Z4地点の第3区間、Z4地点〜Z5地点の第4区間…(図7参照)、といった特定区間毎に対応して予め規定されたFFdの集合である。第1区間、第2区間、第3区間、第4区間…の具体的位置は、インクキャップ40の下降動作区間(0〜ZE)の中で予め決められており、例えば第1区間は、インクキャップ40が下降動作を開始した後にインクキャップ40の上記摩擦等により最初に大きな負荷が生じる上記Zn地点を含むような所定範囲となっている。
FF制御量演算部7は、速度変動量ΔVが属する数値範囲に対応するFFdの組をFFdプロファイル70から取得し、インクキャップ40の下降動作のための第二制御量として保存する。例えば、Th1<ΔV≦Th2である場合には、第1区間のFFd「200」と、第2区間のFFd「400」と、第3区間のFFd「300」と、第4区間のFFd「300」と、を取得する。なお、図11に示したFFdプロファイル70内の各数値はあくまで一例であるが、FFdプロファイル70においては、ΔV≦Th1であるときのFFdは、いずれの特定区間においても「0」と規定している。またFFdプロファイル70では、基本的に、速度変動量ΔVの値が増加するにつれて、少なくとも一つの特定区間(例えば、第2区間)のFFdが増加するように、各FFdを規定している。
実施例3:
ステップS120において速度変動量ΔVに基づき上記複数の特定区間毎のFFdを決定する手法は、上記実施例2のようにFFdプロファイル70を参照する手法に限られない。例えば、基準値としての“FFdの組”が、一つだけ予めプリンター1内部に記憶されており、FF制御量演算部7は、この一つの“FFdの組”を構成する各FFdを、速度変動量ΔVに応じて補正するとしてもよい。ここでは便宜上、当該一つの“FFdの組”における第1区間、第2区間、第3区間、第4区間…に対応する各FFdを、第1基準FFd、第2基準FFd、第3基準FFd、第4基準FFd…と呼ぶ。
図12は、第1基準FFd、第2基準FFd、第3基準FFd、第4基準FFd…を補正するための補正関数G(実線)および補正関数H(二点鎖線)を例示している。補正関数G,Hはいずれも、速度変動量ΔVを入力し、補正係数pを出力する関数である。FF制御量演算部7は、速度変動量Δを補正関数Gに入力して得られる補正係数pを、第1基準FFd、第2基準FFdそれぞれに乗算して補正後の第1基準FFd、第2基準FFdを取得する。また、速度変動量Δを補正関数Hに入力して得られる補正係数pを、第3基準FFd、第4基準FFdそれぞれに乗算して補正後の第3基準FFd、第4基準FFdを取得する。そして、このような特定区間毎の補正後の各FFdからなる組を、インクキャップ40の下降動作のための第二制御量として保存する。
補正関数G,Hはいずれも、ΔV≦Th1である場合は出力=0となり、ΔV>Th1の範囲ではΔVの増加に応じて出力を増加させる入出力特性を持つ。なお、図12から明らかなように、第1基準FFdおよび第2基準FFdの補正に適用される補正関数Gの方が、第3基準FFdおよび第4基準FFdの補正に適用される補正関数Hよりも傾きが大きい。これは、インクキャップ40の下降動作中、複数の特定区間のうち、インクキャップ40の上記摩擦等により最初に大きな負荷が乗るZn地点に近い第1区間や第2区間といった前半の区間において比較的大きなFFdを出力することで、インクキャップ40の速度変動を好適に抑制できる傾向があるからである。ただし、補正関数G,Hそれぞれの入出力特定は、図12に示したものに限られず、図10に示したような階段状の入出力特性を持つものでも良いし、指数関数による非線形の入出力特性を持つものであってもよい。さらに上記では、第1基準FFdおよび第2基準FFdの補正に適用される補正関数Gを共通化し、第3基準FFdおよび第4基準FFdの補正に適用される補正関数Hを共通化したが、第1基準FFdの補正に適用する関数、第2基準FFdの補正に適用する関数、第3基準FFdの補正に適用する関数、第4基準FFdの補正に適用する関数、をそれぞれ個別に設定して用いても良い。
実施例4:
上記実施例2,3では、一つの速度変動量ΔVに基づき複数の特定区間毎のFFdを決定する手法を採用しているが、FF制御量演算部7は、当該複数の特定区間毎に速度変動量ΔVを取得し、特定区間毎の速度変動量ΔVに基づいて特定区間毎のFFdを決定し、保存するとしてもよい。この場合、上記ステップS110において、FF制御量演算部7は、特定区間毎の、速度最大値Vmax−目標速度Vstd、または、|速度最小値Vmin−目標速度Vstd|に基づいて、特定区間毎の速度変動量ΔVを取得する。そして、ステップS120において、FF制御量演算部7は、特定区間毎の速度変動量ΔVをそれぞれ関数Fに入力することにより、特定区間毎のFFdを決定する。ただし、このように特定区間毎の速度変動量ΔVに基づいて特定区間毎のFFdを決定する場合には、特定区間毎に対応する各関数Fであって少なくとも一部の関数F間で入出力特性が異なる各関数Fを用いるものとする。
図13は、当該実施例4において、第1区間のFFdおよび第2区間のFFdを算出するための関数F1(実線)、および、第3区間のFFdおよび第4区間のFFdを算出するための関数F2(二点鎖線)を例示している。FF制御量演算部7は、ステップS110で取得した第1区間の速度変動量ΔVおよび第2区間の速度変動量ΔVを関数F1に夫々入力し、第1区間のFFdおよび第2区間のFFdを算出する。同様に、ステップS110で取得した第3区間の速度変動量ΔVおよび第4区間の速度変動量ΔVを関数F2に夫々入力して、第3区間のFFdおよび第4区間のFFdを算出する。関数F1,F2も、上記補正関数G,Hと同様に、ΔV≦Th1である場合は出力=0となり、ΔV>Th1の範囲ではΔVの増加に応じて出力を増加させる入出力特性を持つ。また、関数F1の方が、関数F2よりも傾きが大きい。これは、上述したように、第1区間や第2区間といった前半の区間において比較的大きなFFdを出力することで、インクキャップ40の速度変動を好適に抑制できる傾向があるからである。
また、上記隙間gが存在する場合、タイミングベルト46のテンション低下やテンション変動の影響により、複数の特定区間のうち前半の第1区間や第2区間よりも、後半の第3区間や第4区間の方が、速度変動の振幅が増幅される傾向にある。そのため、上記ステップS110で取得される特定区間毎の速度変動量ΔVも、第1区間や第2区間よりも、第3区間や第4区間の方が大きくなる傾向にある。よって、共通の入出力特性の関数Fを用いて、特定区間毎の速度変動量ΔVに基づく特定区間毎のFFdの算出を行なうと、第3区間や第4区間についてのFFdが過剰に大きくなり、以後のインクキャップ40の下降動作制御において、却って制御結果を悪化させる虞がある。そこで、上記のように関数F1と関数F2とに特性の差を設けている。むろん、当該実施例4でFFd算出のために用いる関数についても、図10に示したような階段状の入出力特性を持つものでも良いし、指数関数による非線形の入出力特性を持つものであってもよいし、さらに、第1区間のFFd、第2区間のFFd、第3区間のFFd、第4区間のFFd、を各々算出するために互いに異なる特性の関数を設定して用いても良い。
以上の実施例1〜4のいずれかがステップS120において実行されることにより、FF制御量決定処理が完了する。ただし、プリンター1が市場に出荷された後も、プリンター1において所定の動作が実行されることを契機としてFF制御量決定処理が実行される。例えば、FF制御量演算部7は、プリンター1で所定枚数分(例えば数千枚)の印刷が行なわれた度にFF制御量決定処理を実行したり、ユーザーがプリンター1の電源を投入したタイミングでFF制御量決定処理を実行したりする。プリンター1では、出荷後において、上述したような隙間gの変化(拡大)や、第一プーリー44の軸と第二プーリー45の軸との間隔の変化や、タイミングベルト46の変化などの様々な経時的変化により、タイミングベルト46のテンションが変り得るため、速度変動量ΔVも変化し得る。そのため、プリンター1では、FF制御量決定処理を定期的あるいは不定期に繰り返してFFdを更新することにより、上記特定の制御対象の動作のためのFFdを最新の値に保つようにしている。
4.インクシステムの動作を伴う印刷処理
図14は、プリンター1において実行される印刷処理を示したフローチャートである。当該フローチャートの開始時点では、キャリッジ21は初期位置に在り、かつインクキャップ40は、上昇動作後の状態すなわちインクキャップ40がキャリッジ21に最も接近した位置に在る状態となっている。ステップS300では、マイクロコンピューター31は、ホストコンピューター60から印刷指示を受け付けたか否か判定する。印刷指示とは、例えば、印刷データPDを伴う印刷コマンドであり、外部I/F30を介して受け付ける。印刷指示を受け付けた場合、マイクロコンピューター31が印刷データPDに基づく印刷処理をASIC32に指示し、ステップS310以降の処理が実行される。
ステップS310では、PF制御部32aは、PFモーター14を逆回転駆動することによりインクキャップ40に下降動作を実行させる。つまり、マイクロコンピューター31が輪列切替え部41を制御してPFローラー17とインクキャップ40とを接続した上で、PF制御部32aが、当該下降動作について予め定められた速度プロファイルの下、PFモーター14を逆回転させるフィードバック制御を実行する。ただし当該下降動作中においては、インクキャップ40の位置が特定区間に属している期間に限って、フィードバック(FB)制御およびフィードフォワード(FF)制御が実行される。
具体的には、FF制御量演算部7は、現在のインクキャップ40の位置が特定区間に属するか否か判定するとともに、インクキャップ40の位置が特定区間に属している期間中は、直近のFF制御量決定処理(図8)で決定済みの、当該特定区間に対応するFFdを、加算器6k(図3)に出力する。FF制御量演算部7は、例えば、位置演算部6aが演算するPFローラー17の回転位置に基づいて、現在のインクキャップ40の位置が特定区間に属しているか否か判定することができる。
FF制御量演算部7は、例えば、上記実施例1により一つのFFdを決定(保存)済みである場合は、特定区間において当該一つのFFdを出力する。当該一つのFFdを出力する対象の特定区間は予め決められている。例えば、下降動作中のインクキャップ40へ上記摩擦等により最初に大きな外的負荷が掛かることが予め判っている上記Zn地点を含むような区間(例えば、第1区間や、第1区間および第2区間を含む区間、など。)が、当該一つのFFdを出力するための特定区間となる。
また、FF制御量演算部7は、上記実施例2〜4のいずれかにより、特定区間毎のFFdを決定済みである場合は、複数の特定区間のうちインクキャップ40の現在位置が属している特定区間に対応するFFdを出力する。つまり、各特定区間において、特定区間毎に決定されているFFdを出力する。
加算器6kは、FF制御量演算部7から出力されたFFdと、PID演算部6pidから出力された第一制御量とを加算して、PWM回路6jに出力する。なお、PID演算部6pidから出力される第一制御量も、デューティー値d(デューティー値dの一部)となる整数であり、ここでは第一制御量をフィードバックデューティー値(FBd)と表記する。この結果、インクキャップ40が特定区間に属している期間中は、デューティー値d=FBd+FFdによるデューティー比DRが、PWM回路6jからモータードライバー15に出力され、PFモーター14の駆動が制御される。このように、FBdおよびFFdに基づいてPFモーター14を駆動する点で、PF制御部32aは、特定制御部としても機能すると言える。
上述したFF制御量決定処理では、速度変動量ΔVが所定のしきい値Th1以下である場合は、FFd=0となる。このように、FFdの値が0に決定されている場合、当該ステップS310において、インクキャップ40の位置が特定区間に属している期間中であっても、FF制御量演算部7から加算器6kへFFdは出力されない。つまり、インクキャップ40の位置が特定区間に属している期間中であっても、FFd=0であれば、フィードバック制御のみでPFモーター14の駆動が制御される。これは、速度変動量ΔVの大きさに応じて、フィードバック制御のみ(FFd=0)によるモーター駆動と、フィードバック制御およびフィードフォワード制御によるモーター駆動と、を切替えていることになる。
また、図6の説明で述べたように、上記隙間gが0又は略0というような理想値であるプリンター1では、インクキャップ40の下降動作中の速度変動(目標速度からのぶれ)が小さいため、PFモーター14に対するフィードバック制御のみによって、適切な下降動作が実現される。つまり、隙間gの大きさと、FF制御量決定処理の上記ステップS110で取得される速度変動量ΔVと、の間には一定の相関関係があると言える。従って本実施形態では、速度変動量ΔVを取得することで隙間gの大きさを間接的に取得(推定)しており、当該取得(推定)した隙間gの大きさに応じて、フィードバック制御のみ(FFd=0)によるモーター駆動と、フィードバック制御およびフィードフォワード制御によるモーター駆動と、を切替えていることになる。
インクキャップ40の下降動作完了後は、キャリッジロック部材によるキャリッジ21の固定が解除され、キャリッジ21の移動が可能となる。また、マイクロコンピューター31は輪列切替え部41を制御してPFローラー17とインクキャップ40との接続を切る。この後、ASIC32は、給紙トレー2からの印刷用紙の搬送を開始して印刷用紙をプラテン22上の所定の印刷開始位置まで搬送し(ステップS320)、当該搬送された印刷用紙に対し、キャリッジ21の主走査による印刷データPDに基づくインク吐出と、副走査と、を繰り返すことにより印刷を実行し(ステップS330)、印刷データPDが表す画像の印刷が完了すると、排紙搬送を行なって印刷用紙を排出し(ステップS340)、印刷処理を終了させる。
図15は、上記図7の説明における第二の機体(隙間g有りのプリンター1)で、上記ステップS310のフィードバック制御とフィードフォワード制御の組み合わせによるインクキャップ40の下降動作を実行した際の様子を、グラフにより示している。ここでは、上記実施例2により決定した特定区間毎のFFdをフィードフォワード制御に用いた場合を例示しており、図6,7と同様に、デューティー値dの変化(実線)、PFローラー17の回転速度の変化(一点鎖線)、および目標速度(二点鎖線)を示している。むろん、図15に示したデューティー値dは、各特定区間においてはd=FBd+FFdであり、特定区間外においてはd=FBdである。図15では、第1区間にFFd=200を加え、第2区間にFFd=1200を加え、第3区間にFFd=300を加え、第4区間にFFd=300を加えた場合の計測結果を示している。図15によれば、まず上記Zn地点を含む第1区間にFFd=200を加え、その後、第2区間にFFd=1200を加えることにより、図7の第1区間、第2区間に見られていたような速度低下がある程度改善している。この結果、以降の速度変動の振幅が抑えられ、さらに第3区間、第4区間の各FFdの効果も加わることで、図7の第3区間、第4区間に見られていたような速度の乱高下が確実に解消されている。
図16は、図7に示した速度変動の計測結果(ケース1)と、図15に示した速度変動の計測結果(ケース2)との比較を示している。なお図7,15,16では、インクキャップ40の下降動作の定速期間中における目標速度Vstd=8.5ips(インチ/秒)としている。ケース1について見ると、フィードバック制御のみの場合は、インクキャップ40の下降動作の定速期間中に計測された速度変動量ΔV(=最大値Vmax−目標速度Vstd)は、3.5ipsである。一方、ケース2について見ると、上記ステップS310のようにフィードバック制御にフィードフォワード制御を組み合わせた場合は、インクキャップ40の下降動作の定速期間中に計測された速度変動量ΔV(=最大値Vmax−目標速度Vstd)は、1.2ipsである。つまりケース1よりもケース2の方が、インクキャップ40の下降動作中の速度変動量が2.3ips減っており、下降動作の安定性が確実に増していると言える。
なお上記では、FF制御量演算部7は、ステップS110で取得した速度変動量ΔVが所定のしきい値Th1以下である場合にはFFd=0とし、以降のインクキャップ40の下降動作の特定区間においてもフィードバック制御のみが実行されるようにした。ただし、FF制御量演算部7は、上記取得した速度変動量ΔVが所定のしきい値Th1以下である場合に、速度変動量ΔVが当該しきい値Th1を上回る場合に決定するFFdよりは少ないが0ではない所定の基準量を、FFdとして決定してもよい。このように、速度変動量ΔVが小さい場合でも、FFd≠0として、以降のインクキャップ40の下降動作の特定区間においてフィードバック制御に上記基準量に基づくフィードフォワード制御が追加されるようにすることで、当該下降動作中の速度変動をより的確に小さくすることができる。
5.まとめ
このように本実施形態によれば、インクキャップ40の下降動作のように、プリンター1が備える特定の制御対象の短期的に大きな負荷がかかる動作について、速度変動量ΔVを取得し、速度変動量ΔVの大きさに応じてフィードフォワード制御量としてのFFdを決定するとした。そして、以降、PFモーター14をPID演算部6pidから出力されたフィードバック制御量としてのFBdに基づいて駆動制御して上記特定の制御対象に上記動作をさせる際に、当該動作区間内のうち、上記大きな負荷が発生する区間等の特定区間に限って、FBdにFFdを加えた制御量に基づいてPFモーター14を制御するとした。その結果、フィードバック制御下で生じていた制御遅れ等に起因する上記特定の制御対象の速度変動を的確に抑え、上記特定の制御対象に安定した動作(目標速度からのぶれが少ない動作)を実現させることができる。またプリンター1では、FF制御量決定処理を定期的あるいは不定期に繰り返してFFdを更新する。そのため、経時的に変化するプリンター1の最新の状態(隙間gやタイミングベルト46のテンション等)が反映された最適なFFdを用いてPFモーター14の駆動を制御することができる。
PFモーター14が生み出した動力をインクキャップ40に伝達する構成の一部に、上述したような第一プーリー44、第二プーリー45、タイミングベルト46、可動テンションローラー47、ブロック部材48等を有する構成において本実施形態は特に有用である。つまり、可動テンションローラー47の面47b3とブロック部材48との隙間gの存在や、インクキャップ40の下降動作時の多大な負荷等に起因して、可動テンションローラー47の移動、タイミングベルト46のテンション低下やテンション変動が生じ、更に、フィードバック制御特有の制御遅れが加わることで、インクキャップ40の下降動作に大きな速度変動が生じてしまう。このような速度変動が生じやすい状況下においても、本実施形態では、速度変動量ΔVの大きさに応じたFFdによるフィードフォワード制御を、上記下降動作中の上記特定区間に加えるとしたため、速度変動を的確に抑制することができる。
上述したように本実施形態によれば、上記隙間gが生じていたり、そのためにタイミングベルト46のテンションの低下、変動が生じ易かったりする第二の機体(プリンター1)においても、結果的に、上記特定の制御対象の速度変動を抑えた安定した動作を実現することができる。従って、プリンター1の製造工程で、従来要求されていた上記隙間gを0mmに調整するための時間的コスト、人為的コスト、部品コスト等を削減することができる。また、タイミングベルト46のテンションをこれまで理想とされてきた値で維持するために必要であった、PFモーター14や当該モーターの電源電圧を、小型化、低下させることができ、プリンター1のコストダウンに資する。
なお、上記特定の制御対象はインクキャップ40に限られない。つまり本実施形態のように、動作中の速度変動量を取得し、速度変動量に基づいてFFdを決定し、以降の当該動作における特定区間においてFFdによるフィードフォワード制御を加える構成は、短期的、突発的に大きな負荷が生じる様々な動作、例えば、キャリッジモーターのコギング等の周期的な負荷変動を伴う動作についても、適用することが可能である。
上述した本実施形態の構成に、さらに速度変動量ΔVに基づくゲイン補正を加えるとしてもよい。例えば、PF制御部32aは、上記速度変動量ΔVに基づいて、当該速度変動量ΔVが大きいほど小さな比率となる補正比率Xを算出し、補正比率Xにより、PID演算部6pidの各演算要素のゲイン(例えば、比例ゲインGpや積分ゲインGi)補正する。そして、以降PFモーター14の駆動により、上記特定の制御対象に上記大きな負荷がかかる動作をさせる際に、当該補正済みのゲインを用いたPID演算によりFBdを算出するとしてもよい。かかる構成を本実施形態に加えることで、上記特定の制御対象に、より一層速度変動を抑えた安定した動作を実現させることができる。
1…プリンター、2…給紙トレー、6a…位置演算部、6b,6e…減算器、6c…目標速度演算部、6d…速度演算部、6f…比例要素、6g…積分要素、6h…微分要素、6i,6k…加算器、6j…PWM回路、6pid…PID演算部、7…FF制御量演算部、12…PUローラー、13…搬送ガイド、14…PFモーター、14a…軸、14b…ギア、15…モータードライバー、17…PFローラー、17a…PF従動ローラー、19…中間ローラー、19a…中間従動ローラー、21…キャリッジ、21a…印字ヘッド、22…プラテン、30…外部I/F、31…マイクロコンピューター、32…ASIC、32a…PF制御部、32b…キャリッジ制御部、32c…PU制御部、33…ロータリーエンコーダー、40…インクキャップ、40a…筺体、40b…スポンジ、41…輪列切替え部、44…第一プーリー、45…第二プーリー、46…タイミングベルト、47…可動テンションローラー、47a…ローラー、47b…支持部、47b1…バネ、47b2…凹部、47b3…面、48…ブロック部材、60…ホストコンピューター、70…FFdプロファイル

Claims (11)

  1. 制御対象を駆動するモーターと、当該制御対象の速度を検出し、当該検出した速度と当該制御対象の目標速度との差に基づいて当該モーターに対する第一制御量を演算し、当該第一制御量に基づいて当該モーターを駆動させるフィードバック制御を実行可能な制御部とを備える印刷装置であって、
    上記制御部は、
    上記モーターをフィードバック制御して駆動させることにより特定の制御対象を動作させた所定期間における当該特定の制御対象の速度変動量を取得し、当該速度変動量に基づいて上記モーターに対する第二制御量を決定する第二制御量決定部と、
    上記モーターをフィードバック制御して駆動させることにより上記特定の制御対象を動作させる際に、当該動作の特定区間において、上記第一制御量および決定済みの上記第二制御量に基づいて上記モーターを駆動させる特定制御部と、
    を備えることを特徴とする印刷装置。
  2. 上記特定の制御対象は、上記モーターの駆動によりインク吐出用の印字ヘッドのインク吐出面に対する接近動作および当該インク吐出面からの退避動作を実行可能なインクキャップであり、上記第二制御量決定部は、上記モーターを駆動させることにより上記インクキャップに上記退避動作をさせた期間における速度変動量を取得し、上記特定制御部は、上記モーターを駆動させることにより上記インクキャップに上記退避動作をさせる際に、当該退避動作の特定区間において、上記第一制御量および決定済みの上記第二制御量に基づいて上記モーターを駆動させることを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
  3. 上記第二制御量決定部は、上記特定の制御対象の動作について予め定められた目標速度と、当該特定の制御対象を動作させた期間における当該制御対象の速度の最大値または最小値と、の差を速度変動量として取得することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の印刷装置。
  4. 上記第二制御量決定部は、上記速度変動量が大きいほど第二制御量を大きな値とすることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の印刷装置。
  5. 上記第二制御量決定部は、上記速度変動量に基づいて、上記特定の制御対象の動作区間内の複数の特定区間毎の第二制御量を決定し、上記特定制御部は、各特定区間において、上記第一制御量および特定区間毎に決定されている第二制御量に基づいて上記モーターを駆動させることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の印刷装置。
  6. 上記第二制御量決定部は、上記特定の制御対象の動作区間内の複数の特定区間毎に当該特定の制御対象の速度変動量を取得し、当該特定区間毎の速度変動量に基づいて特定区間毎の第二制御量を決定し、上記特定制御部は、各特定区間において、上記第一制御量および特定区間毎に決定されている第二制御量に基づいて上記モーターを駆動させることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の印刷装置。
  7. 上記第二制御量決定部は、速度変動量を入力して第二制御量を出力する関数を用いて第二制御量を決定する際に、特定区間毎に対応する各関数であって少なくとも一部の関数間で入出力特性が異なる各関数を用いて特定区間毎の第二制御量を決定することを特徴とする請求項5または請求項6に記載の印刷装置。
  8. 上記第二制御量決定部は、上記速度変動量が所定のしきい値以下である場合は、第二制御量を0又は上記速度変動量が当該しきい値を上回る場合に決定する第二制御量より少ない所定の基準量に決定し、上記特定制御部は、上記特定区間において、上記第一制御量のみに基づいて、又は、上記第一制御量および上記所定の基準量に基づいて上記モーターを駆動させることを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれかに記載の印刷装置。
  9. 上記第二制御量決定部は、上記印刷装置において所定の動作が実行される度に、上記速度変動量の取得および当該速度変動量に基づく上記第二制御量の決定を実行することを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれかに記載の印刷装置。
  10. 上記モーターから上記特定の制御対象へ動力を伝達するために、第一プーリーと、上記特定の制御対象と接続して当該特定の制御対象に動力を伝えるローラーと共に回転する第二プーリーと、第一プーリーと第二プーリーと上記モーターの軸に結合したギアとに架け渡されたタイミングベルトと、第二プーリーと上記モーターの軸に結合したギアとの間の所定位置においてタイミングベルトの面に向かう方向に付勢されてタイミングベルトの面に接することによりタイミングベルトのテンションを略一定に保つための可動テンションローラーと、可動テンションローラーの近傍に固定されることにより上記付勢方向に沿った可動テンションローラーの可動域を制限するブロック部材とを備えることを特徴とする請求項1〜請求項9のいずれかに記載の印刷装置。
  11. 制御対象を駆動するモーターを備え、当該制御対象の速度を検出し、当該検出した速度と当該制御対象の目標速度との差に基づいて当該モーターに対する第一制御量を演算し、当該第一制御量に基づいて当該モーターを駆動させるフィードバック制御を実行可能な印刷装置によって実行する、モーター制御方法であって、
    上記モーターをフィードバック制御して駆動させることにより特定の制御対象を動作させた所定期間における当該特定の制御対象の速度変動量を取得し、当該速度変動量に基づいて上記モーターに対する第二制御量を決定する第二制御量決定工程と、
    上記モーターをフィードバック制御して駆動させることにより上記特定の制御対象を動作させる際に、当該動作の特定区間において、上記第一制御量および決定済みの上記第二制御量に基づいて上記モーターを駆動させる特定制御工程とを備えることを特徴とするモーター制御方法。
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