JP2011099152A - 防錆剤、防錆皮膜および表面処理金属材 - Google Patents
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Abstract
【課題】車載環境下などにおいて、高温、振動、冷熱サイクルに耐え、長期的に優れた防錆効果を維持できる防錆剤および防錆被膜を提供すること。
【解決手段】分子構造中に疎水基とキレート基とを有する化合物と、液状ゴムとを含有し、前記化合物と前記液状ゴムとの合計中における液状ゴムの含有量が10〜99.9質量%の範囲内である防錆剤とする。液状ゴムは、シリコーンRTVゴムが好ましい。さらに、ノニオン系界面活性剤が含まれていると良い。また、ゴムマトリックス中に、分子構造中に疎水基とキレート基とを有する化合物よりなる防錆成分が分散された防錆被膜とする。防錆被膜は、上記防錆剤を塗布後、加湿等により液状ゴムを硬化することにより形成できる。
【選択図】図1
【解決手段】分子構造中に疎水基とキレート基とを有する化合物と、液状ゴムとを含有し、前記化合物と前記液状ゴムとの合計中における液状ゴムの含有量が10〜99.9質量%の範囲内である防錆剤とする。液状ゴムは、シリコーンRTVゴムが好ましい。さらに、ノニオン系界面活性剤が含まれていると良い。また、ゴムマトリックス中に、分子構造中に疎水基とキレート基とを有する化合物よりなる防錆成分が分散された防錆被膜とする。防錆被膜は、上記防錆剤を塗布後、加湿等により液状ゴムを硬化することにより形成できる。
【選択図】図1
Description
本発明は、防錆剤、防錆皮膜および表面処理金属材に関し、さらに詳しくは、自動車用電線における導体や端子などの金属表面に塗布するものとして好適な防錆剤と、これを用いた防錆皮膜および表面処理金属材に関するものである。
従来、様々な分野において金属材料が用いられており、産業上、金属材料は重要な役割を担っている。しかしながら、金属材料は、錆びやすい性質を有しており、長期にわたって安定してその役割を果たすためには、防錆処理を施す必要がある。そのため、従来より、種々の金属材料に対して、その金属種に応じた種々の防錆方法が提案されている。
金属材料の防錆方法としては、例えば、金属表面にめっきを施す方法や、金属表面を塗装する方法などが良く知られている。これらの方法は、金属表面に皮膜を形成し、金属表面を物理的に覆うことにより、水や酸素等といった錆びの原因となる因子の侵入を防ぎ、これにより防錆効果を発揮している。しかしながら、めっきや塗装は、大がかりな方法になりやすい。
これに対し、比較的簡易な防錆方法としては、防錆剤を金属表面に塗布する方法が知られている。例えば、各種ワセリンやグリース等を金属表面に塗布する方法が知られている。また、特許文献1には、亜鉛系めっき鋼板またはアルミニウム系めっき鋼板の表面に防錆剤を塗布する方法であるが、特定のポリアミノ化合物を有機高分子樹脂マトリックスとした高分子キレート化剤による皮膜を金属表面に形成する方法が開示されている。
しかしながら、各種ワセリンやグリース、特許文献1に記載の防錆剤は、いずれも防錆剤を金属表面に塗布することにより金属表面に連続する皮膜を形成し、金属表面を物理的に覆うことにより、防錆効果を発揮する構成のものである。そのため、例えば車載環境下などで用いられた場合には、熱や溶剤等により容易に揮発、溶出するおそれがあった。これにより、防錆剤を塗布していた金属表面においては、表面欠陥部分などから局所的に腐食が起こり、錆が発生するおそれがあった。また、防錆剤を塗布していた部分が異種金属接触部である場合には、防錆剤の揮発、流出等により、異種金属接触腐食が起こりやすくなり、錆が発生するおそれがあった。
さらに、車載環境下では、振動や冷熱サイクルが生じる。用いる防錆剤に柔軟性が乏しいと、振動や冷熱サイクルによって、塗布した防錆剤の表面に割れが生じ、防錆効果が低下するおそれがある。したがって、このような環境下に置かれる部材に塗布する防錆剤には柔軟性も求められる。
本発明が解決しようとする課題は、車載環境下などにおいて、高温、振動、冷熱サイクルに耐え、長期的に優れた防錆効果を維持できる防錆剤と、これを用いた防錆皮膜および表面処理金属材を提供することにある。
上記課題を解決するため本発明に係る防錆剤は、分子構造中に疎水基とキレート基とを有する化合物と、液状ゴムとを含有し、前記化合物と前記液状ゴムとの合計中における前記液状ゴムの含有量が10〜99.9質量%の範囲内であることを要旨とするものである。
本発明に係る防錆剤においては、前記液状ゴムは、シリコーンRTVゴムであることが好ましい。また、さらにノニオン系界面活性剤を含有することが好ましい。この際、ノニオン系界面活性剤の含有量は、前記ノニオン系界面活性剤を除く成分100質量部に対して0.01〜20質量%の範囲内であることが好ましい。
本発明に係る防錆剤においては、前記疎水基としては、長鎖アルキル基および環状アルキル基から選択された1種または2種以上の基を好適に示すことができる。
また、前記キレート基としては、ポリリン酸塩、アミノカルボン酸、1,3−ジケトン、アセト酢酸(エステル)、ヒドロキシカルボン酸、ポリアミン、アミノアルコール、芳香族複素環式塩基類、フェノール類、オキシム類、シッフ塩基、テトラピロール類、イオウ化合物、合成大環状化合物、ホスホン酸、および、ヒドロキシエチリデンホスホン酸から選択された1種または2種以上のキレート配位子に由来するものを好適に示すことができる。
この際、前記疎水基とキレート基とは、エステル結合、エーテル結合、チオエステル結合、チオエーテル結合、および、アミド結合から選択された1種または2種以上の結合を介して結合されていると良い。
ここで、前記化合物は中性化合物であることが望ましい。
そして、上記防錆剤は、金属表面塗布用の防錆剤に好適である。
本発明に係る防錆皮膜は、ゴムマトリックス中に、分子構造中に疎水基とキレート基とを有する化合物よりなる防錆成分が分散されていることを要旨とするものである。
この際、さらに、ノニオン系界面活性剤が含まれていることが好ましい。また、80℃における溶融粘度が1000mPa・s以上、あるいは、弾性率が1Pa以上であることが好ましい。
本発明に係る表面処理金属材は、上記防錆皮膜が金属材の表面に形成されてなることを要旨とするものである。
この際、前記金属材としては、アルミニウム、鉄、銅、錫、金、ニッケル、クロム、亜鉛、アルミニウム合金、鉄合金、および、銅合金から選択された1種または2種以上の金属よりなるものを好適に示すことができる。そして、この金属材は、表面を、錫、金、ニッケル、クロム、亜鉛、および、銅から選択された1種または2種以上の金属によりめっきされたものであっても良い。
本発明に係る防錆剤は、分子構造中に疎水基とキレート基とを有する化合物と、特定量の液状ゴムとを含有するため、これを塗布し、液状ゴムを硬化させることにより、金属表面に密着して優れた防錆効果を発揮するとともに、高温に曝されても揮発、流出しにくく、さらに、柔軟性にも優れ、振動や冷熱サイクルによっても表面に割れが生じにくい防錆皮膜を形成することができる。これにより、例えば車載環境下においても、長期的に優れた防錆効果を維持できる。
この際、液状ゴムがシリコーンRTVゴムであると、金属表面への濡れ性に優れる。これにより、金属表面への密着性に優れる防錆皮膜が得られるため、長期的に優れた防錆効果を維持できる。
また、さらにノニオン系界面活性剤を含有する場合には、分子構造中に疎水基とキレート基とを有する化合物と、液状ゴムとの相溶性が向上する。また、防錆剤の柔軟性、粘性が高まる。これにより、さらに防錆性能が向上する。この際、ノニオン系界面活性剤の含有量が特定範囲内であると、防錆性能と柔軟性とのバランスに優れる。
また、本発明に係る防錆剤において、前記疎水基が上記各種の基よりなると、確実に金属表面に撥水性を付与することができる。また、前記キレート基が上記各種の基よりなると、確実に金属表面と結合することができる。この際、前記疎水基とキレート基とが上記各種の結合を介して結合されているものは、合成が容易であり、広く用いることができる。
ここで、前記化合物が中性化合物であると、例えば防錆剤が目的の塗布面以外の部分に付着したとしても、腐食あるいは人体への影響を抑えることができるため、安全性に優れる。また、前記化合物が中性化合物であると、環境の影響を受けにくく、保存安定性にも優れる。
そして、本発明に係る防錆皮膜によれば、ゴムマトリックス中に、分子構造中に疎水基とキレート基とを有する化合物よりなる防錆成分が分散されていることにより、金属表面に密着して優れた防錆効果を発揮するとともに、高温に曝されても揮発、流出しにくく、さらに、柔軟性にも優れ、振動や冷熱サイクルによっても表面に割れが生じにくい。これにより、例えば車載環境下においても、長期的に優れた防錆効果を維持できる。
この際、さらに、ノニオン系界面活性剤が含まれている場合には、分子構造中に疎水基とキレート基とを有する化合物と、液状ゴムとの相溶性が向上する。また、防錆剤の柔軟性、粘性が高まる。これにより、さらに防錆性能が向上する。
また、80℃における溶融粘度が1000mPa・s以上、あるいは、弾性率が1Pa以上である場合には、車載環境下において、確実に長期的に優れた防錆効果を維持できる。
一方、本発明に係る表面処理金属材によれば、上記防錆皮膜を金属材の表面に形成しているため、長期間にわたって安定して防錆効果を発揮することができる。
次に、本発明の実施形態について詳細に説明する。本発明に係る防錆剤は、分子構造中に疎水基とキレート基とを有する化合物と、液状ゴムとを含有するものからなる。本発明に係る防錆剤においては、上記成分以外に、優れた防錆性能や長期にわたって防錆性を維持する効果を損なわない範囲で、必要に応じて、他の添加剤を適宜配合することができる。
他の添加剤としては、粘着付与剤、酸化防止剤、結晶化防止剤、シリカ・マイカ・タルク・炭酸カルシウム・ベントナイト・スメクタイト・モンモリトナイトなどの無機化合物、シランカップリング剤、シリコーンオイル、プロセスオイル、塩素化ポリオレフィン・酸化ポリオレフィンなどのワックスまたはエチレン系共重合体などが挙げられる。
本発明に係る防錆剤は、例えば、金属材料の金属表面に塗布するものとして好適に用いることができる。金属材料としては、例えば、自動車等の車両における電線、ケーブル、コネクタ、ボディ等や、高圧電力ケーブル、電気・電子機器部品などを好適に示すことができる。特に、高温に曝されやすく、また、振動、冷熱サイクルが生じる車載環境下おいて用いられる自動車用の電線、ケーブル、コネクタなどの金属材料を好適に示すことができる。金属種としては、例えば、アルミニウム、鉄、銅、錫、金、ニッケル、クロム、亜鉛、アルミニウム合金、鉄合金、銅合金などを例示することができる。これらは、1種のみであっても良いし、2種以上組み合わされたものであっても良い。また、金属材料は、表面を錫、金、ニッケル、クロム、亜鉛、銅等によりめっきされたものであっても良い。
本発明に係る防錆剤において、液状ゴムは、防錆剤に柔軟性や増粘性などを付与する成分である。これにより、熱による流出や、振動、冷熱サイクルによる割れを防止できる。さらに、塗布等しやすくするための性状を調整する役割も担うことができる。また、上記化合物のキレート基との相互作用を抑制してキレート基の機能を妨げにくいものである。液状ゴムは、それ自体が防錆性能を有するものであっても良いし、防錆性能を有しないものであっても良い。
液状ゴムとしては、室温で液状またはペースト状のゴムであり、各種硬化方法により液状から弾性体に変化するものであれば、特に限定されるものではない。液状ゴムとしては、具体的には、例えばシリコーンRTVゴムなどが挙げられる。
この際、液状ゴムがシリコーンRTVゴムであると、金属表面への濡れ性に優れる。これにより、金属表面への密着性に優れる防錆皮膜が得られるため、長期的に優れた防錆効果を維持できる。
液状ゴムとしては、硬化方法によって分類されるところでは、一液型のものであっても良いし、二液型のものであっても良い。また、一液型および二液型のいずれかにおいては、縮合反応型、付加反応型、UV反応型、および、縮合反応とUV反応とを併用するハイブリッド反応型などのいずれであっても良い。これらは、1種のみ用いることもできるし、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
液状ゴムの含有量は、前記化合物と前記液状ゴムとの合計中において、10〜99.9質量%の範囲内であることが好ましい。液状ゴムの含有量が10質量%未満では、防錆剤に柔軟性や増粘性を付与する効果が低下しやすい。一方、液状ゴムの含有量が99.9質量%超では、上記化合物による防錆効果が低下しやすい。液状ゴムの含有量は、より好ましくは50〜95質量%の範囲内である。
本発明に係る防錆剤においては、上記化合物および液状ゴムの他に、さらに、ノニオン系界面活性剤を含有していることが好ましい。ノニオン系界面活性剤は、本発明に係る防錆剤において、上記化合物と液状ゴムとの間の相溶性を向上させることができる。また、本発明に係る防錆剤の柔軟性を高める効果もあるため、防錆剤が高温に曝されたときにも揮発・流出を抑え、振動や冷熱サイクルが生じたときにも表面に割れが生じにくくさせる効果もある。
ノニオン系界面活性剤としては、特に限定されるものではなく、ゴム、プラスチック、塗料、医薬品、化粧品、食品等において、2種以上の化合物を混合する際に相溶性を向上させるものとして用いられるものであれば良い。
ノニオン系界面活性剤としては、具体的には、例えば、ステアリン酸グリセリル・オレイン酸グリセリルなどのグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ステアリン酸ソルビタン・オレイン酸ソルビタンなどのソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ジステアリン酸グリコールなどのポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、アルキルグリセリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット、アルキルグリセリルエーテル、イソステアリルグリセリル、脂肪酸アルキレンオキサイド付加物、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、水添ヒマシ油、アルキルアルカノールアミド、脂肪酸アルカノールアミド、ラウリン酸ジエタノールアミド、脂肪酸アミドアルキレンオキサイド付加物、アミンアルキレンオキサイド、ジアミンアルキレンオキサイド付加物等を挙げることができる。これらは、1種のみ用いることもできるし、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
ノニオン系界面活性剤としては、より好ましくは、ステアリン酸グリセリル、ステアリン酸ソルビタン、ペンタエリスリトール脂肪酸エステルである。
ノニオン系界面活性剤の含有量は、ノニオン系界面活性剤を除く成分100質量部に対して0.01〜20質量部の範囲内であることが好ましい。より好ましくは、ノニオン系界面活性剤を除く成分100質量部に対して0.1〜10質量部の範囲内である。ノニオン系界面活性剤の含有量が0.01質量部未満では、上記化合物と液状ゴムとの間の相溶性を向上させる効果が低くなりやすい。一方、ノニオン系界面活性剤の含有量が20質量部超では、上記化合物による防錆効果が低下しやすい。
本発明に係る防錆剤において、上記化合物は、防錆性能を発揮する有効成分となるものである。上記化合物において、キレート基は、防錆する金属表面と結合形成する部位である。キレート基が金属表面と結合することにより、防錆剤が熱や溶剤等により容易に揮発や溶出しないようになる。これにより、長期間にわたって安定して防錆効果を発揮することが可能である。キレート基が金属表面と結合形成してキレート結合に変化していることは、例えば多重全反射赤外吸収法(ATR−IR)や顕微IRなどで確認することができる。
本発明に係る防錆剤において、疎水基は、金属表面と結合形成しているキレート基から外側に張り出すように配置される。疎水基は、金属表面への水の侵入を防ぐために、金属表面と結合形成しているキレート基の上に撥水性を持たせるものである。すなわち、単に金属表面を物理的に覆うことにより防錆効果を発揮するだけではなく、疎水基の撥水効果により金属表面への水の侵入を防ぐことによっても防錆効果を発揮する。
上記疎水基とキレート基とは、エステル結合、エーテル結合、チオエステル結合、チオエーテル結合、アミド結合などの結合を介して結合されていることが好ましい。これらの結合を介して疎水基とキレート基とが結合されている構造のものは、縮合反応等により容易に合成することができる。
上記疎水基とキレート基とを有する化合物は、酸性、アルカリ性、中性のいずれであっても良い。好ましくは中性である。上記化合物が中性である場合には、例えば防錆剤が目的の塗布面以外の部分に付着したとしても、防錆剤による付着部分の腐食は発生しにくい。また、仮に防錆剤が人体の皮膚等に付着した場合にも、肌荒れ等の人体への影響も少ない。すなわち、安全性に優れる。また、上記化合物が中性である場合には、酸性化合物やアルカリ性化合物と比較しても環境の影響を受けにくい。そのため、保存安定性にも優れる。
中性化合物としては、分子構造中に酸構造および塩基構造を有しない化合物(この場合には、キレート基中にも酸構造および塩基構造を有していない。)や、分子構造中に酸構造および塩基構造を有しているが、中性に保っている化合物などを挙げることができる。
中性化合物とは、pHが6〜8程度の範囲内にあるものとすることができる。化合物のpHは、一般的なpH測定器を用いて測定したものであっても良いし、pH試験紙を用いて測定したものであっても良い。pH測定条件は、通常の測定条件に従うことができる。
上記疎水基としては、例えば、長鎖アルキル基、環状アルキル基等を例示することができる。これらは、1種のみ有していても良いし、2種以上が組み合わされて有していても良い。この際、長鎖アルキル基や環状アルキル基にフッ素原子が導入されていれば、より撥水効果に優れる。
長鎖アルキル基は、直鎖状でも良いし、分岐していても良い。長鎖アルキル基の炭素数は、特に限定されるものではないが、好ましくは、5〜100の範囲内、より好ましくは、8〜50の範囲内である。環状アルキル基は、単環から形成されていても良いし、複数の環から形成されていても良い。環状アルキル基の炭素数は、特に限定されるものではないが、好ましくは、5〜100の範囲内、より好ましくは、8〜50の範囲内である。長鎖アルキル基や環状アルキル基中には、炭素−炭素不飽和結合や、アミド結合、エーテル結合、エステル結合などを含んでいても良い。
上記キレート基は、各種キレート配位子を用いて導入可能である。このようなキレート配位子としては、例えば、1,3−ジケトン(β−ジケトン)や3−ケトカルボン酸エステル(アセト酢酸エステル等)などのβ−ジカルボニル化合物、ポリリン酸塩、アミノカルボン酸、ヒドロキシカルボン酸、ポリアミン、アミノアルコール、芳香族複素環式塩基類、フェノール類、オキシム類、シッフ塩基、テトラピロール類、イオウ化合物、合成大環状化合物、ホスホン酸、ヒドロキシエチリデンホスホン酸などを例示することができる。これらの化合物は、配位結合可能な非共有電子対を複数有している。これらは、単独で用いても良いし、2種以上組み合わせて用いても良い。このうち、1,3−ジケトンおよび3−ケトカルボン酸エステルは、分子構造中に酸構造および塩基構造を有しておらず、中性化合物であるため、安全性、保存安定性に優れるなどの観点から、より好ましい。
各種キレート配位子としては、より具体的には、ポリリン酸塩としては、トリポリリン酸ナトリウムやヘキサメタリン酸などを例示することができる。アミノカルボン酸としては、エチレンジアミン二酢酸、エチレンジアミン二プロピオン酸、エチレンジアミン四酢酸、N−ヒドロキシメチルエチレンジアミン三酢酸、N−ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、ジアミノシクロヘキシル四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸、N,N−ビス(2−ヒドロキシベンジル)エチレンジアミン二酢酸、ヘキサメチレンジアミンN,N,N,N−四酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、イミノ二酢酸、ジアミノプロパン四酢酸、ニトリロ三酢酸、ニトリロ三プロピオン酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、ポリ(p−ビニルベンジルイミノ二酢酸)などを例示することができる。
1,3−ジケトンとしては、アセチルアセトン、トリフルオロアセチルアセトン、テノイルトリフルオロアセトンなどを例示することができる。また、アセト酢酸エステルとしては、アセト酢酸プロピル、アセト酢酸tert−ブチル、アセト酢酸イソブチル、アセト酢酸ヒドロキシプロピルなどを例示することができる。ヒドロキシカルボン酸としては、N−ジヒドロキシエチルグリシン、エチレンビス(ヒドロキシフェニルグリシン)、ジアミノプロパノール四酢酸、酒石酸、クエン酸、グルコン酸などを例示することができる。ポリアミンとしては、エチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、トリアミノトリエチルアミン、ポリエチレンイミンなどを例示することができる。アミノアルコールとしては、トリエタノールアミン、N−ヒドロキシエチルエチレンジアミン、ポリメタリロイルアセトンなどを例示することができる。
芳香族複素環式塩基としては、ジピリジル、o−フェナントロリン、オキシン、8−ヒドロキシキノリンなどを例示することができる。フェノール類としては、5−スルホサリチル酸、サリチルアルデヒド、ジスルホピロカテコール、クロモトロプ酸、オキシンスルホン酸、ジサリチルアルデヒドなどを例示することができる。オキシム類としては、ジメチルグリオキシム、サリチルアドキシムなどを例示することができる。シッフ塩基としては、ジメチルグリオキシム、サリチルアドキシム、ジサリチルアルデヒド、1,2−プロピレンジミンなどを例示することができる。
テトラピロール類としては、フタロシアニン、テトラフェニルポルフィリンなどを例示することができる。イオウ化合物としては、トルエンジチオール、ジメルカプトプロパノール、チオグリコール酸、エチルキサントゲン酸カリウム、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジチゾン、ジエチルジチオリン酸などを例示することができる。合成大環状化合物としては、テトラフェニルポルフィリン、クラウンエーテル類などを例示することができる。ホスホン酸としては、エチレンジアミンN,N−ビスメチレンホスホン酸、エチレンジアミンテトラキスメチレンホスホン酸、ニトリロトリスメチレンホスホン酸、ヒドロキシエチリデンジホスホン酸などを例示することができる。
上記キレート配位子には、適宜ヒドロキシル基やアミノ基などを導入することも可能である。上記キレート配位子は、塩として存在可能なものもある。この場合、塩の形態で用いても良い。また、上記キレート配位子またはその塩の水和物や溶媒和物を用いても良い。さらに、上記キレート配位子には、光学活性体のものも含まれているが、任意の立体異性体、立体異性体の混合物、ラセミ体などを用いても良い。
上記長鎖アルキル基は、長鎖アルキル化合物を用いて導入可能である。長鎖アルキル化合物としては、特に限定されないが、例えば、長鎖アルキルカルボン酸や、長鎖アルキルカルボン酸エステル、長鎖アルキルカルボン酸アミドなどの長鎖アルキルカルボン酸誘導体、長鎖アルキルアルコール、長鎖アルキルチオール、長鎖アルキルアルデヒド、長鎖アルキルエーテル、長鎖アルキルアミン、長鎖アルキルアミン誘導体、長鎖アルキルハロゲンなどを例示することができる。これらのうち、キレート基を導入しやすい点などから、長鎖アルキルカルボン酸、長鎖アルキルカルボン酸誘導体、長鎖アルキルアルコール、長鎖アルキルアミンが好ましい。
長鎖アルキル化合物としては、より具体的には、例えば、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ヘキサデカン酸、オクタデカン酸、イコサン酸、ドコサン酸、テトラドコサン酸、ヘキサドコサン酸、オクタドコサン酸、オクタノール、ノナノール、デカノール、ドデカノール、ヘキサデカノール、オクタデカノール、エイコサノール、ドコサノール、テトラドコサノール、ヘキサドコサノール、オクタドコサノール、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン、ドデシルカルボン酸クロリド、ヘキサデシルカルボン酸クロリド、オクタデシルカルボン酸クロリドなどを例示することができる。これらのうち、入手が容易である点などにおいては、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ドデカン酸、オクタデカン酸、ドコサン酸、オクタノール、ノナノール、デカノール、ドデカノール、オクタデカノール、ドコサノール、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、オクタデシルアミン、ドデシルカルボン酸クロリド、オクタデシルカルボン酸クロリドが好適である。
上記環状アルキル基は、環状アルキル化合物を用いて導入可能である。環状アルキル化合物としては、特に限定されないが、例えば、炭素数が3〜8のシクロアルキル化合物や、ステロイド骨格を有する化合物、アダマンタン骨格を有する化合物などを例示することができる。この際、これら各種化合物には、上記キレート配位子との結合形成が可能であるなどの観点から、カルボン酸基、水酸基、酸アミド基、アミノ基、チオール基などが導入されていることが好ましい。
環状アルキル化合物としては、より具体的には、コール酸、デオキシコール酸、アダマンタンカルボン酸、アダマンタン酢酸、シクロヘキシルシクロヘキサノール、シクロペンタデカノール、イソボルネオール、アダマンタノール、メチルアダマンタノール、エチルアダマンタノール、コレステロール、コレスタノール、シクロオクチルアミン、シクロドデシルアミン、アダマンタンメチルアミン、アダマンタンエチルアミンなどを例示することができる。これらのうち、入手が容易である点などにおいては、アダマンタノール、コレステロールが好適である。
本発明に係る防錆剤の主な防錆成分である上記化合物は、上記疎水基とキレート基とを有するものであるため、例えば、疎水基を有する化合物と、キレート基を有するキレート配位子とを接触させることにより得ることができる。より具体的には、疎水基を有する化合物と、キレート基を有するキレート配位子とを縮合反応させることにより得ることができる。このとき、溶媒を用いても良いし、撹拌させても良い。また、反応速度を上げるなどの目的で、加熱しても良いし、触媒を添加しても良い。さらに、副生物を除去するなどして、平衡反応を生成系に偏らせて、高収率で目的物が得られるようにしても良い。疎水基を有する化合物としては、上記する長鎖アルキル化合物、環状アルキル化合物などが挙げられる。
例えば、上記疎水基を有する化合物がカルボキシル基またはヒドロキシル基を有し、上記キレート配位子がヒドロキシル基またはカルボキシル基を有している場合には、上記疎水基とキレート基とがエステル結合を介して結合されているものを得ることができる。また、例えば、上記疎水基を有する化合物がカルボキシル基またはアミノ基を有し、上記キレート配位子がアミノ基またはカルボキシル基を有している場合には、上記疎水基とキレート基とがアミド結合を介して結合されているものを得ることができる。
本発明に係る防錆剤の有効成分となる上記化合物の分子量としては、特に限定されるものではないが、好ましくは、100〜1500の範囲内であり、より好ましくは、200〜800の範囲内である。
本発明に係る防錆剤の有効成分となる上記化合物の一例を構造式で表すと、例えば、以下のようになる。
ただし、式(1)において、Rは、上記長鎖アルキル基または上記環状アルキル基を示し、Xは、エステル結合部位、エーテル結合部位、チオエステル結合部位、または、アミド結合部位を示し、Yは、上記キレート基を示している。すなわち、上記長鎖アルキル基または上記環状アルキル基と上記キレート基とが、エステル結合、エーテル結合、チオエステル結合、または、アミド結合を介して結合されている。
本発明に係る防錆剤の有効成分となる上記化合物のうち好適な化合物としては、より具体的には、例えば、エチレンジアミン四酢酸二無水物とオクタデシルアルコールとの縮合反応生成物、ジエチレントリアミン五酢酸二無水物とドコサノールとの縮合反応生成物、tert−ブチルアセトアセテートとオクタデシルアルコールとの縮合反応生成物、tert−ブチルアセトアセテートとドコサノールとの縮合反応生成物、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸とステアロイルクロライドとの縮合反応生成物、N−(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン三酢酸とステアロイルクロライドとの縮合反応生成物、ジアミノプロパノール四酢酸とステアロイルクロライドとの縮合反応生成物、1−ヒドロキシエタン−1,1−ビスホスホン酸とステアロイルクロライドとの縮合反応生成物、エチレンジアミン四酢酸二無水物とコレステロールとの縮合反応生成物、ジエチレントリアミン五酢酸二無水物と1−アダマンタノールとの縮合反応生成物、tert−ブチルアセトアセテートとコレステロールとの縮合反応生成物、tert−ブチルアセトアセテートと1−アダマンタノールとの縮合反応生成物などを挙げることができる。
本発明に係る防錆剤を、例えば金属表面に塗布して用いる場合には、上述する各成分の混合物を直接金属表面に塗布する。この際、塗布方法としては、塗布法、浸漬法、スプレー法等の任意の方法を採用できる。また、スクイズコーター等による塗布処理、浸漬処理またはスプレー処理の後に、エアナイフ法やロール絞り法により塗布量の調整、外観の均一化、膜厚の均一化を行うことも可能である。
本発明に係る防錆剤は、金属表面に塗布した後、液状ゴムを硬化させる。硬化方法としては、特に限定されるものではない。例えば、UV照射、加湿、加熱などの通常の方法にしたがって液状ゴムを硬化させることが可能である。
本発明に係る防錆剤は、分子構造中に疎水基とキレート基とを有する化合物の化学的作用(キレート基による密着性や疎水基による撥水性など)と、塗布等により容易に形成できる厚膜の物理的作用により、例えば自動車用電線の端子圧着部のような複雑な構造においても優れた防錆効果を得ることができる。
次いで、本発明に係る防錆皮膜について説明する。本発明に係る防錆皮膜は、ゴムマトリックス中に、分子構造中に疎水基とキレート基とを有する化合物よりなる防錆成分が分散されたものから構成されている。ゴムマトリックスを構成するゴム成分としては、上記防錆剤の液状ゴムの硬化物を挙げることができる。また、防錆成分を構成する化合物としては、上記防錆剤の疎水基とキレート基とを有する化合物を挙げることができる。
本発明に係る防錆皮膜中には、さらに、ノニオン系界面活性剤が含まれていることが好ましい。この場合、ゴムマトリックス中における上記化合物の分散性に優れるからである。そしてこれにより、防錆効果を高めることができる。ノニオン系界面活性剤としては、上記防錆剤のノニオン系界面活性剤を挙げることができる。
本発明に係る防錆皮膜は、例えば、上記本発明に係る防錆剤を塗布した後、硬化させることにより得ることができる。硬化方法としては、上述するように、例えば、UV照射、加湿、加熱などの通常の方法を示すことができる。
本発明に係る防錆皮膜は、熱等により容易に流出しないために、所定の粘度、弾性率、あるいは、ゴム硬度を有することが好ましい。例えば車載用の部材を保護するものとしては、80℃における溶融粘度が1000mPa・s以上、弾性率が1Pa・s以上、あるいは、ゴム硬度が10以上であることが好ましい。
上記粘度、弾性率、あるいは、ゴム硬度とするためには、例えばゴムマトリックスを形成する液状ゴムの硬化条件を適宜調整すれば良い。この際、液状ゴムの塗布性に優れるとともに、上記粘度、弾性率、あるいは、ゴム硬度になりやすいなどの観点から、液状ゴムとしてはシリコーンRTVゴムが好ましい。さらに、シリコーンRTVゴムの含有量は10〜99.9質量%の範囲内であることが好ましい。また、ノニオン系界面活性剤の含有量は1〜20質量部の範囲内であることが好ましい。
次に、本発明に係る表面処理金属材について説明する。本発明に係る表面処理金属材は、上記本発明に係る防錆皮膜が金属材の表面に形成されてなるものである。上記本発明に係る防錆皮膜は、上記本発明に係る防錆剤を塗布後、液状ゴムを硬化することにより得ることができる。金属材は、アルミニウム、鉄、銅、錫、ニッケル、金、クロム、亜鉛、アルミニウム合金、鉄合金、銅合金などの金属よりなるものであることが好ましい。金属材は、上記金属のうちの1種よりなるものであっても良いし、2種以上よりなるものであっても良い。また、金属材は、上記金属よりなる母材の表面を、錫、ニッケル、金、クロム、亜鉛、銅などの金属によりめっきされたものであっても良い。めっき材は、上記金属の1種であっても良いし、2種以上であっても良い。防錆剤の塗布方法としては、上記する塗布方法であれば良い。液状ゴムの硬化方法としては、上記する硬化方法であれば良い。
本発明に係る表面処理金属材としては、例えば、自動車等の車両における電線、ケーブル、コネクタ、ボディ等の金属部分や、高圧電力ケーブル、電気・電子機器部品などの金属部分を好適に示すことができる。コネクタにおいては、例えば端子圧着部などを示すことができる。端子圧着部では、端子と電線とが同種の金属であっても良いし、異種の金属であっても良い。
以下に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
(供試材料および製造元など)
本実施例および比較例において使用した供試材料を製造元、商品名などとともに示す。また、一部のものについては、実験室にて合成したものを用いた。合成品については、以下に、その合成方法と、構造式、および、同定データを示す。
本実施例および比較例において使用した供試材料を製造元、商品名などとともに示す。また、一部のものについては、実験室にて合成したものを用いた。合成品については、以下に、その合成方法と、構造式、および、同定データを示す。
(A)防錆成分
・St−AA(式(2)の化合物)の合成
tert−ブチルアセトアセテート5g(31.6mmol)とステアリルアルコール8.5g(31.4mmol)をトルエン50mLに溶解し、攪拌しながら110℃まで加温し、副生成物のtert−ブタノールをDean−Starkトラップにて除きながら2時間反応させる。反応終了後、減圧濃縮し、白色のワックス状組成物を得る。そこに冷水20mLを加え固化させ、ろ取し目的物を得た(収率75%)。1H−NMR(CDCl3)σppm(TMS):0.89(t,3H)、1.26(m,32H)、1.64(m,2H)、2.27(s,3H)、3.44(s,2H)、4.13(t,2H)。IR(cm−1):2924(C−H伸縮)、1745、1720(βジケトン、エノール体)、1642(βジケトン、エノール体)、1420(カルボン酸のC−O伸縮)。
・St−AA(式(2)の化合物)の合成
tert−ブチルアセトアセテート5g(31.6mmol)とステアリルアルコール8.5g(31.4mmol)をトルエン50mLに溶解し、攪拌しながら110℃まで加温し、副生成物のtert−ブタノールをDean−Starkトラップにて除きながら2時間反応させる。反応終了後、減圧濃縮し、白色のワックス状組成物を得る。そこに冷水20mLを加え固化させ、ろ取し目的物を得た(収率75%)。1H−NMR(CDCl3)σppm(TMS):0.89(t,3H)、1.26(m,32H)、1.64(m,2H)、2.27(s,3H)、3.44(s,2H)、4.13(t,2H)。IR(cm−1):2924(C−H伸縮)、1745、1720(βジケトン、エノール体)、1642(βジケトン、エノール体)、1420(カルボン酸のC−O伸縮)。
・Chol−AA(式(3)の化合物)の合成
ステアリルアルコールに代えて、コレステロール12.1g(31.3mmol)を用いたこと以外、上記St−AAと同様にして合成した。(収率48%)。1H−NMR(CDCl3)σppm(TMS):0.5〜2.0(m,41H)、2.28(m,2H)、2.26(s,3H)、3.41(s,2H)、3.52(m,1H)、5.35(m,1H)。IR(cm−1):2925(C−H伸縮)、1745、1720(βジケトン、エノール体)、1642(βジケトン、エノール体)、1440(カルボン酸のC−O伸縮)。
ステアリルアルコールに代えて、コレステロール12.1g(31.3mmol)を用いたこと以外、上記St−AAと同様にして合成した。(収率48%)。1H−NMR(CDCl3)σppm(TMS):0.5〜2.0(m,41H)、2.28(m,2H)、2.26(s,3H)、3.41(s,2H)、3.52(m,1H)、5.35(m,1H)。IR(cm−1):2925(C−H伸縮)、1745、1720(βジケトン、エノール体)、1642(βジケトン、エノール体)、1440(カルボン酸のC−O伸縮)。
(B)柔軟・増粘成分
(b−1)シリコーンRTVゴム<1>[東レ・ダウコーニングシリコーン社製、商品名「SE9187L」、縮合型]
(b−2)シリコーンRTVゴム<2>[信越シリコーン社製、商品名「KE3420」、縮合型]
(b−3)シリコーンRTVゴム<3>[スリーボンド社製、商品名「3163」、UV反応型]
(C)相溶化成分
・ステアリン酸グリセリル[ライオン社製、商品名「カデナックスGS−90」]
(b−1)シリコーンRTVゴム<1>[東レ・ダウコーニングシリコーン社製、商品名「SE9187L」、縮合型]
(b−2)シリコーンRTVゴム<2>[信越シリコーン社製、商品名「KE3420」、縮合型]
(b−3)シリコーンRTVゴム<3>[スリーボンド社製、商品名「3163」、UV反応型]
(C)相溶化成分
・ステアリン酸グリセリル[ライオン社製、商品名「カデナックスGS−90」]
(実施例1)
St−AA85質量部と、シリコーンRTVゴム<1>15質量部と、ステアリン酸グリセリル5質量部とを、120℃加熱条件下で攪拌子を用いて1分間攪拌して混合した。これにより、実施例1に係る防錆剤を調製した。
St−AA85質量部と、シリコーンRTVゴム<1>15質量部と、ステアリン酸グリセリル5質量部とを、120℃加熱条件下で攪拌子を用いて1分間攪拌して混合した。これにより、実施例1に係る防錆剤を調製した。
(実施例2〜5)
St−AAとシリコーンRTVゴム<1>との混合割合を変えた点以外は、実施例1と同様にして、実施例2〜5に係る防錆剤を調製した。
St−AAとシリコーンRTVゴム<1>との混合割合を変えた点以外は、実施例1と同様にして、実施例2〜5に係る防錆剤を調製した。
(実施例6)
実施例2においてステアリン酸グリセリルを配合しなかった点以外は、実施例2と同様にして、実施例6に係る防錆剤を調製した。
実施例2においてステアリン酸グリセリルを配合しなかった点以外は、実施例2と同様にして、実施例6に係る防錆剤を調製した。
(実施例7〜11)
シリコーンRTVゴム<1>に代えてシリコーンRTVゴム<2>を用いた点以外は、それぞれ実施例1〜5と同様にして、実施例7〜11に係る防錆剤を調製した。
シリコーンRTVゴム<1>に代えてシリコーンRTVゴム<2>を用いた点以外は、それぞれ実施例1〜5と同様にして、実施例7〜11に係る防錆剤を調製した。
(実施例12〜16)
シリコーンRTVゴム<1>に代えてシリコーンRTVゴム<3>を用いた点以外は、それぞれ実施例1〜5と同様にして、実施例12〜16に係る防錆剤を調製した。
シリコーンRTVゴム<1>に代えてシリコーンRTVゴム<3>を用いた点以外は、それぞれ実施例1〜5と同様にして、実施例12〜16に係る防錆剤を調製した。
(実施例17〜32)
St−AAに代えてChol−AAを用いた点以外は、それぞれ実施例1〜16と同様にして、実施例17〜32に係る防錆剤を調製した。
St−AAに代えてChol−AAを用いた点以外は、それぞれ実施例1〜16と同様にして、実施例17〜32に係る防錆剤を調製した。
(比較例1)
St−AAとシリコーンRTVゴム<1>との混合割合を変え、ステアリン酸グリセリルを配合しなかった点以外は、実施例1と同様にして、比較例1に係る防錆剤を調製した。
St−AAとシリコーンRTVゴム<1>との混合割合を変え、ステアリン酸グリセリルを配合しなかった点以外は、実施例1と同様にして、比較例1に係る防錆剤を調製した。
(比較例2〜3)
St−AAとシリコーンRTVゴム<1>との混合割合を変えた点以外は、実施例1と同様にして、比較例2〜3に係る防錆剤を調製した。
St−AAとシリコーンRTVゴム<1>との混合割合を変えた点以外は、実施例1と同様にして、比較例2〜3に係る防錆剤を調製した。
(比較例4〜5)
St−AAに代えてChol−AAを用いた点以外は、それぞれ比較例1〜2と同様にして、比較例4〜5に係る防錆剤を調製した。
St−AAに代えてChol−AAを用いた点以外は、それぞれ比較例1〜2と同様にして、比較例4〜5に係る防錆剤を調製した。
調製した各防錆剤を用いて、下記測定方法にしたがって、防錆試験、粘度・弾性率・ゴム硬度の各測定、曲げ試験、相溶試験を行なった。その結果を表1〜2に示す。また、表1〜2には、防錆剤の配合割合、防錆剤の硬化条件を併せて示した。なお、表1〜2に示す配合割合は、質量部で示している。
(防錆試験)
上記方法により調製した液状あるいはペースト状の各防錆剤6mgを、室温下で、スズメッキを施した銅端子を圧着したアルミ電線(0.75mm2)の端子圧着部に塗布した。次いで、各防錆剤中のシリコーンRTVゴムを硬化させた。シリコーンRTVゴム<1>、シリコーンRTVゴム<2>を用いた場合には、25℃×50%RH×72時間の条件下で加湿により、シリコーンRTVゴム<3>を用いた場合には、UV照射後、25℃×50%RH×48時間の条件下で加湿により、シリコーンRTVゴムを硬化させた。
上記方法により調製した液状あるいはペースト状の各防錆剤6mgを、室温下で、スズメッキを施した銅端子を圧着したアルミ電線(0.75mm2)の端子圧着部に塗布した。次いで、各防錆剤中のシリコーンRTVゴムを硬化させた。シリコーンRTVゴム<1>、シリコーンRTVゴム<2>を用いた場合には、25℃×50%RH×72時間の条件下で加湿により、シリコーンRTVゴム<3>を用いた場合には、UV照射後、25℃×50%RH×48時間の条件下で加湿により、シリコーンRTVゴムを硬化させた。
硬化後、各防錆皮膜を形成した端子圧着部を、5%塩化ナトリウム水溶液(液温19℃)に1分浸漬した後、温度24℃、湿度22%RHで8時間乾燥させることを1サイクルとし、繰り返した。サイクルごとに表面のアルミ腐食の発生に伴い発生する水素ガスの有無をマイクロスコープを用いて表面を観察することで調べ、ガス発生が見られた場合に腐食していると判断した。最大20サイクルまで試験を行ない、水素ガスの発生が見られたときのサイクル数を示した。防錆成分にSt−AAを用いた場合には8サイクル以上、Chol−AAを用いた場合には12サイクル以上を合格とした。
(粘度測定)
各防錆剤について、シリコーンRTVゴム<1>、シリコーンRTVゴム<2>を用いた場合には、25℃×50%RH×72時間の条件下で加湿し、シリコーンRTVゴム<3>を用いた場合には、UV照射後、25℃×50%RH×48時間の条件下で加湿した。その後、ジャスコインタナショナル社製の平行円盤型レオメータ「Rheoexplorar」を用いて、80℃における粘度を測定した。
各防錆剤について、シリコーンRTVゴム<1>、シリコーンRTVゴム<2>を用いた場合には、25℃×50%RH×72時間の条件下で加湿し、シリコーンRTVゴム<3>を用いた場合には、UV照射後、25℃×50%RH×48時間の条件下で加湿した。その後、ジャスコインタナショナル社製の平行円盤型レオメータ「Rheoexplorar」を用いて、80℃における粘度を測定した。
(弾性率測定)
動的粘弾性測定器で測定した。具体的には、各防錆剤について、シリコーンRTVゴム<1>、シリコーンRTVゴム<2>を用いた場合には、25℃×50%RH×72時間の条件下で加湿し、シリコーンRTVゴム<3>を用いた場合には、UV照射後、25℃×50%RH×48時間の条件下で加湿した。その後、TAインスツルメント社製動的粘弾性測定器DMAで、周波数1Hzにおける弾性率を測定した。
動的粘弾性測定器で測定した。具体的には、各防錆剤について、シリコーンRTVゴム<1>、シリコーンRTVゴム<2>を用いた場合には、25℃×50%RH×72時間の条件下で加湿し、シリコーンRTVゴム<3>を用いた場合には、UV照射後、25℃×50%RH×48時間の条件下で加湿した。その後、TAインスツルメント社製動的粘弾性測定器DMAで、周波数1Hzにおける弾性率を測定した。
(曲げ試験)
厚さ0.5mmのアルミ板に防錆剤を厚さ約2μmで塗布した後、上記硬化条件にしたがって硬化させた。次いで、塗布部分が表となるように半径5mmのマンドレルに沿わせてアルミ板を曲げ、曲げた部分において防錆剤の表面に割れが発生するか否かを顕微鏡観察にて調べた。割れも亀裂もないものを「◎」とし、表面に僅かに白化が見られるものを「○」とし、割れが有ったものを「×」とした。
厚さ0.5mmのアルミ板に防錆剤を厚さ約2μmで塗布した後、上記硬化条件にしたがって硬化させた。次いで、塗布部分が表となるように半径5mmのマンドレルに沿わせてアルミ板を曲げ、曲げた部分において防錆剤の表面に割れが発生するか否かを顕微鏡観察にて調べた。割れも亀裂もないものを「◎」とし、表面に僅かに白化が見られるものを「○」とし、割れが有ったものを「×」とした。
(相溶試験)
相溶性は、各防錆剤を調製後、偏光顕微鏡で観察し、0.5mm以上の凝集構造の有無を確認した。0.5mm以上の凝集構造が無い場合を「○」とし、0.5mm以上の凝集構造が有る場合を「×」とした。
相溶性は、各防錆剤を調製後、偏光顕微鏡で観察し、0.5mm以上の凝集構造の有無を確認した。0.5mm以上の凝集構造が無い場合を「○」とし、0.5mm以上の凝集構造が有る場合を「×」とした。
表1、2に示す結果より、液状ゴムであるシリコーンRTVゴムの配合量が10質量%未満では、柔軟性に劣るため、曲げ試験において割れが発生した。一方、シリコーンRTVゴムの配合量が99.9質量%を超えると、防錆性に劣っている。これに対し、シリコーンRTVゴムの配合量が特定範囲内にある実施例では、防錆性、柔軟性ともに優れることが確認できた。そのため、例えば車載環境下において振動や冷熱サイクルが生じたときにも防錆剤表面に割れは発生しにくいと推察される。
また、実施例2を例に挙げて、形成した防錆皮膜の表面のマイクロスコープによる観察写真を図1に示した。図1より、防錆皮膜において、防錆成分(St−AA)が適度に分散されており、シリコーンRTVゴムよりなるゴムマトリックス中に防錆成分が分散されている様子が分かる。
以上より、実施例に係る防錆剤によれば、例えば車載環境下において、防錆剤の流出や振動・冷熱サイクルによる割れは生じにくいと推察されるため、長期間、優れた防錆性能を維持できるものと推察される。
そして、実施例同士を比較すると、相溶化成分を添加していない実施例6、22では、防錆性には特に影響がみられないが、防錆成分とゴム成分との相溶性が低下していることを確認した。防錆成分とゴム成分との相溶性の面からいえば、さらに相溶化成分を添加することが好ましいといえる。
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
Claims (15)
- 分子構造中に疎水基とキレート基とを有する化合物と、液状ゴムとを含有し、
前記化合物と前記液状ゴムとの合計中における前記液状ゴムの含有量が10〜99.9質量%の範囲内であることを特徴とする防錆剤。 - 前記液状ゴムは、シリコーンRTVゴムであることを特徴とする請求項1に記載の防錆剤。
- さらにノニオン系界面活性剤を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の防錆剤。
- 前記ノニオン系界面活性剤の含有量は、前記ノニオン系界面活性剤を除く成分100質量部に対して0.01〜20質量部の範囲内であることを特徴とする請求項3に記載の防錆剤。
- 前記疎水基は、長鎖アルキル基および環状アルキル基から選択された1種または2種以上の基であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の防錆剤。
- 前記キレート基は、ポリリン酸塩、アミノカルボン酸、1,3−ジケトン、アセト酢酸(エステル)、ヒドロキシカルボン酸、ポリアミン、アミノアルコール、芳香族複素環式塩基類、フェノール類、オキシム類、シッフ塩基、テトラピロール類、イオウ化合物、合成大環状化合物、ホスホン酸、および、ヒドロキシエチリデンホスホン酸から選択された1種または2種以上のキレート配位子に由来するものであることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の防錆剤。
- 前記疎水基とキレート基とは、エステル結合、エーテル結合、チオエステル結合、チオエーテル結合、および、アミド結合から選択された1種または2種以上の結合を介して結合されていることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の防錆剤。
- 前記化合物は中性化合物であることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の防錆剤。
- 金属表面塗布用であることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の防錆剤。
- ゴムマトリックス中に、分子構造中に疎水基とキレート基とを有する化合物よりなる防錆成分が分散されていることを特徴とする防錆皮膜。
- さらに、ノニオン系界面活性剤が含まれていることを特徴とする請求項10に記載の防錆皮膜。
- 80℃における溶融粘度が1000mPa・s以上、あるいは、弾性率が1Pa以上であることを特徴とする請求項10または11に記載の防錆皮膜。
- 請求項10から12のいずれかに記載の防錆皮膜が金属材の表面に形成されてなることを特徴とする表面処理金属材。
- 前記金属材は、アルミニウム、鉄、銅、錫、ニッケル、金、クロム、亜鉛、アルミニウム合金、鉄合金、および、銅合金から選択された1種または2種以上の金属よりなることを特徴とする請求項13に記載の表面処理金属材。
- 前記金属材は、表面を、錫、ニッケル、金、クロム、亜鉛、および、銅から選択された1種または2種以上の金属によりめっきされたものであることを特徴とする請求項13または14に記載の表面処理金属材。
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