JP2011098407A - ワイヤソー及びワイヤソーの製造方法 - Google Patents

ワイヤソー及びワイヤソーの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】レジンボンド法で問題とされている寿命が短い点、電着法で問題とされている生産性が悪くコスト高であるという点、ろう付け法で問題とされている高炭素鋼が使えずコスト的に優位でないという点をいずれも解決でき、砥粒の多寡の調整も可能な長寿命で生産性の高い固定砥粒式ワイヤソーを提供せんとする。
【解決手段】予めワイヤ10表面にはんだめっき層13を形成し、該はんだめっき層13上に砥粒14を単層に分散・付着させた後、該はんだめっき層13の表面を溶融・固化することにより、砥粒14がその付着面で接合した砥粒仮付けワイヤ12となし、該砥粒仮付けワイヤ12を金属めっきすることで金属めっき層16により砥粒をワイヤの表面に固着させる。
【選択図】図2

Description

本発明は、シリコンやセラミック、サファイヤなどの硬質材料の切断工具として好適なワイヤソーに関する。
現在、シリコンやセラミック、サファイヤなどの硬質材料のマルチワイヤソーによるスライス加工において、ワイヤ表面にダイヤモンド砥粒を固着させたダイヤモンドワイヤ工具が一般化している。これらのダイヤモンドワイヤ工具において、ダイヤモンド砥粒をワイヤに固着する方法には現在、大きく分けて3種類の方法が存在している。レジンボンドによる方法、電着による方法、ロー付けによる方法の3つである。
レジンボンドによる方法は、例えばフェノール樹脂とダイヤモンドの混合物をピアノ線であるワイヤの表面にコーティングして焼付け、ダイヤモンドがフェノール樹脂の硬化によってワイヤに固着される。この方法は生産性がよく、砥粒の量の多寡の調整はでき、安価で長尺のワイヤソーを製作することができる。しかしながら、レジンによる保持力は弱いため、使用中にダイヤモンドが次々脱落する。このため切れ味の低下やワイヤ径の細りなどが生じ、寿命が短いという欠点がある。これに対し、レジンボンドワイヤソーの砥粒保持力を高めるために、表面に金属層をめっきによって形成したワイヤソーが示されている(特許文献1参照)。しかしながら、基本的にワイヤの表面とレジンの接合力が砥粒の保持力に影響すること、更に金属層も基本的にはレジンの表面に形成されるので、金属層とレジン層の剥離強度にも限界があり,硬質物質の切断に適した保持力を十分に確保することはできない。
電着による方法は、ダイヤモンドの固定をニッケルめっき法により行うものであり、たとえばダイヤモンドを布袋に満たしてニッケルめっき液中に沈め、ピアノ線であるワイヤをこの布袋に貫通させ陰極とし、めっき液中に設けたニッケル陽極間に通電する。ワイヤはダイヤモンドとめっき液中でニッケルを析出し次第に太る。このときダイヤモンドはニッケル膜中に取り込まれて、ワイヤの表面に軽く固着される。このめっきはワイヤをゆっくり巻き取りながら連続で行う。前記の布袋から出たワイヤは、析出したニッケルの厚みが所定の厚みになるまで引き続きめっき液中でめっきされる。この電着法で固着されたダイヤモンドの保持力は比較的強い。しかし、この方法においては、ダイヤモンドの固着がめっきの析出速度で決まるため生産が非常に遅く、生産性が悪くコスト高である。また、砥粒の付着量を多くすることなど調整が難しい。
ろう付け法による方法としては、金属ワイヤとろう付け金属接合材或いははんだ付け金属接合材により砥粒をワイヤに固着したワイヤソーが提案されている(例えば、特許文献2、3参照。)。特許文献2記載のろう付け法においてろう付け金属接合材を使った場合、800〜950℃の熱処理が必要であり、安価な高強度炭素鋼などのワイヤでは強度が大きく劣化するためワイヤソーとして使えない。実施例ではワイヤに高炭素鋼を使いつつ880℃、30分間の真空下でろう付けした例が示されているが、強度面で実用に耐えるとは思われない。また、同じく特許文献2の他の実施例には、はんだ付け金属接合材を使ったものとして、はんだ組成の金属(96%Sn/4%Ag粉末99gとCu粉末1g)にダイヤモンド粉末が適量混合されたペーストを通って250μm径のInconel 718ワイヤが350℃の管状炉を引っ張られ、ダイヤモンド被覆ワイヤを得た例が示されているが、ダイヤモンド砥粒の保持力は基本的にSnの強度に影響され、ニッケル電着に及ばない。
また特許文献3では、レジンボンド法と電着法の欠点・課題を解決するためとしてろう付けによる方法が提案され、この場合も固着強度を確保するためにろう材による固着を採用している。ろう材としてたとえば、Cu−Ag−Ti合金(溶融温度700℃以上)の採用が望ましいとあり、そのために高温下にさらされても強度が低下しないタングステンワイヤを線材に使うことが望ましいとされている。線材として広く使われているピアノ線、高炭素鋼が使えないことはコスト面で優位性を減じる原因になっている。また高温下でのろう付けのために真空中或いは不活性ガス雰囲気でのろう付けが必要であり、設備面或いは操業面で煩雑になるという面も課題となっている。この課題を克服するために、500〜600℃で溶融するろう材を採用し、熱処理時に20%以上の強度低下をきたさないステンレス鋼材のワイヤを採用することも提案されているが(特許文献4参照)、ピアノ線や高炭素鋼よりなるワイヤには強度面、コスト的には及ばず、依然として課題が残っている。つまりろう付け法においては、砥粒の多寡の調整ができるが、砥粒保持力を電着並みに高めようとすると、高温ロウ材が必要となり、タングステンなどの耐熱芯線が必要となり、コスト的に高くなる。
特開2007−253268号公報 特許第4008660号公報 特開2006−123024号公報 特開2008−221406号公報
そこで、本発明が前述の状況に鑑み、解決しようとするところは、レジンボンド法で問題とされている寿命が短い点、電着法で問題とされている生産性が悪くコスト高であるという点、ろう付け法で問題とされている高炭素鋼が使えずコスト的に優位でないという点をいずれも解決でき、砥粒の多寡の調整も可能な長寿命で生産性の高い固定砥粒式ワイヤソーを提供する点にある。
本発明は、前述の課題解決のために、ワイヤの表面に砥粒を分散固定したワイヤソーであって、ワイヤの表面にはんだめっき層を形成し、該はんだめっき層上に砥粒を単層に分散・付着させたうえ、該はんだめっき層の表面を溶融・固化して砥粒がその付着面で接合した砥粒仮付けワイヤとし、更に該砥粒仮付けワイヤを金属めっきすることにより砥粒をワイヤ表面に固着させてなることを特徴とするワイヤソーを提供する。
また本発明は、ワイヤの表面に砥粒を分散固定したワイヤソーの製造方法であって、予めワイヤ表面にはんだめっき層を形成し、該はんだめっき層上に砥粒を単層に分散・付着させた後、該はんだめっき層の表面を溶融・固化することにより、砥粒がその付着面で接合した砥粒仮付けワイヤとなし、該砥粒仮付けワイヤを金属めっきすることにより、前記砥粒をワイヤの表面に固着させるワイヤソーの製造方法をも提供する。
以上にしてなる本願発明によれば、ダイヤモンド等の砥粒がはんだによりワイヤに仮付けされ、更にその砥粒が仮付けされたワイヤをニッケルなどの金属でめっきして固着するので、レジンボンド法によるものに比べて砥粒保持力がきわめて強固である。また電着法と比較して、ワイヤへの砥粒の付着を液体による濡れを利用して行ったうえ、はんだの溶融固化により仮付けされるので、生産速度を高くすることができ、砥粒の多寡の調整も容易である。
また、この仮付けの際に砥粒との間にフィレットが形成されたうえで金属めっきされるので、はんだめっき及び金属めっきによる強固なフィレットによって砥粒付着部への応力集中を防止することができ、電着法よりも更に耐久性(砥粒保持力)に優れたワイヤソーを提供できる。また、ろう付け法と比較して、はんだめっきを用いた本発明では二百数十度以下の温度で製造可能であるため、タングステンやステンレスのワイヤ以外にピアノ線などの安価な高炭素鋼のワイヤを用いることができ、しかも真空炉を用いた煩雑な装置も不要であり、低コスト化を図ることができる。
本発明の代表的実施形態に係るワイヤソーを示す断面図。 (a)〜(d)は同じくワイヤソーを製造する手順を示す説明図。 第1の工程の製造プロセスを示す模式図。 第2ないし第3の工程の製造プロセスを示す模式図。 第4の工程の製造プロセスを示す模式図。 (a)はワイヤソーの変形例を示す断面図、(b)はA部拡大断面図。 実施例1、比較例1のワイヤソーの拡大写真。
次に、本発明の実施形態を添付図面に基づき詳細に説明する。図1は、本発明に係るワイヤソーを示す断面図であり、図2はその製造工程を示す説明図である。図中符号1はワイヤソー、10はワイヤ、13ははんだめっき層、14は砥粒、16は金属めっき層をそれぞれ示している。
本発明のワイヤソー1は、図1に示すように、ワイヤ10の表面に砥粒14を分散固定したものであり、ワイヤ10の表面にはんだめっき層13が形成され、該はんだめっき層13の上に砥粒14が単層に接合されるとともに、その上から金属めっきすることにより砥粒14をワイヤ表面に固着させた構造である。尚、本例では表面が導電性を有する砥粒14を用いたことから金属めっき層16が砥粒14の上にも被覆されているが、本発明はこれに限定されず、表面が導電性を有さない砥粒を用いることもでき、その場合、図6(a),(b)に示すように、砥粒14間のはんだめっき層13の上に金属めっき層16が成長し、砥粒14の間隙を隙間なく埋めて各砥粒14を囲い込み、結果として砥粒14が強固に固着されるのである。
ワイヤ10は、はんだめっきの溶融温度により強度が劣化しない種々の金属ワイヤを用いることができ、鉄、ニッケル、コバルト、クロム、タングステン、モリブデン、銅、チタン、アルミニウム及びそれらの合金のいずれかからなるものが好適に用いられる。特に、ピアノ線を含む高炭素鋼からなるものが安価且つ安定して入手でき、コスト低減できる点で好ましい。
はんだめっき層13に用いるはんだは、Sn単独、SnPb系、SnAgCu系、SnZnBi系、SnCu系、SnCuNi系、SnAgInBi系、SnZnAl系のいずれかが好ましい。これらのはんだ成分が好ましい理由は、次のとおりである。すなわち、450℃以下の金属接合材を一般的にはんだと称するが、本発明における狙いは、比較的安価で、かつ高強度のピアノ線を含む高炭素鋼からなるワイヤに砥粒を固定したワイヤソーの提供である。ピアノ線などの高炭素鋼は300℃近辺を超える熱環境に一定時間以上さらされると強度が低下するため、本発明に適用すべきはんだは、300℃以下、望ましくは270℃以下の融点を持つはんだが望ましく、上述のはんだの成分により、300℃以下の融点のはんだが設計・製造できるからである。
砥粒14は、従来からのワイヤソーに用いられている種々の砥粒を用いることができるが、本発明の狙いである高硬質のシリコン、セラミック、サファイヤなどを切断するには超砥粒で硬度の高いダイヤモンド、CBN、SiCのいずれか、或いはこれらの混合物を用いることが好ましい。
砥粒14には、はんだへの接合性を良好とするべく、ニッケル、銅、又はチタンの金属で被覆されている。
金属めっき層16は、好ましくは相互付着性を高められる点で砥粒14又はその被覆金属と同種の金属からなるめっきが好ましく、例えばニッケルコートしたダイヤモンド砥粒14に対してニッケルめっき層を電気めっきで形成することが好ましい。
以下、製造手順に沿ってワイヤソー1の詳細を説明する。ワイヤソー1の製造は、大きく分けて4つの工程からなる。
(第1の工程)
第1の工程は、図2(a)に示すようにワイヤ10の表面にはんだめっき層13を設ける工程である。はんだめっき層13は、例えばるつぼ内ではんだを溶融し、ワイヤを溶融したはんだの中を通して形成される。図3は、第1の工程の製造プロセスを示す模式図である。本プロセスは、ワイヤの繰り出しリール20から繰り出されたワイヤ10が、フラックス塗布装置21を経て、溶融はんだ槽22を通過して、その表面に溶融はんだめっき層を形成し、冷却ゾーン23を通って溶融はんだめっき層を固化し、プリコートワイヤ11として巻取りリール24に巻き取られるようにしたプロセスである。
フラックス塗布装置21は、フラックスをノズルから吹き付ける方法のものや、フラックスの貯槽を通過させる方法のものなどがある。溶融はんだ槽22には、はんだを溶融させるに十分な加熱装置が設けられているものとする。また、溶融はんだ槽ににワイヤが通せるように案内装置がもうけられていて、ワイヤ10が溶融はんだ内を通過する。同時にワイヤ10の表面に溶融はんだめっき層13を形成される。溶融はんだ槽22を離れたときにほとんど溶融はんだは固化しているが、固化をより確実にするため、巻取りリール24に巻き取られる前に冷却ゾーン23を設けてある。前述したように、図2(a)がこの第1の工程を終えて製造されたワイヤの断面を示すもので、ワイヤ10の表面にはんだめっき層13が形成されている様子を示している。これをプリコートワイヤ11と称す。
この第1の工程で形成されるはんだめっき層13の厚さは、はんだの溶融時の粘性・表面張力及び線の走行速度により変化するが、通常のはんだの場合で数μm以下である。はんだめっき層の厚さが6μmを越えてくると厚さムラが発生してきてワイヤ径が不均一になり、良好なワイヤソーが得られなくなるので、好ましくは5μm以下、より望ましくは3μm以下である。本例では溶融めっきとしているが、例えばスズの電気めっきによって金属めっき層を形成することもできるのは勿論である。
(第2の工程)
第2の工程は、図2(b)に示すように、第1の工程ではんだめっきしたワイヤ11の表面に砥粒14を単層に分散・付着させる工程である。例えば、はんだの溶融する温度以下で分解或いは蒸発する液体で第1の工程で製作したプリコートワイヤ11の表面を濡らし、その濡れたワイヤを砥粒の入った容器内を通過せしめ、ワイヤ表面にその濡れにより砥粒を付着させる。この場合、図2(b)には示していないが実際には、砥粒相互の凝集力で、砥粒の上に砥粒が乗った状態がみられる。
より具体的には、図4の模式図に示すように、繰り出しリール30から繰り出されたプリコートワイヤ11が液体塗布装置31にて表面が濡らされる。そして表面がぬれたプリコートワイヤ11が、砥粒付着ゾーン32内の砥粒散布装置32aを通過するときに表面に砥粒14が付着する。ここまでが第2の工程である。これにより図2(b)に示すようにプリコートワイヤ11のはんだめっき層13表面に液体層15が形成され、その液体の濡れにより砥粒14がプリコートワイヤ11の表面に張り付いた状況となる。ここで、ワイヤの走行スピード等を調整することで砥粒の付着密度をコントロールする機能を備えることが好ましい。
尚、第2の工程を実施する方法は本例以外にも考えられる。例えば、表面を同じように濡らしたプリコートワイヤを砥粒粉末の貯槽を通過させることでも行うことができるし、静電塗装の原理を使って砥粒をプリコートワイヤに付着させることもできる。また、単なるファンデルワールス力や帯電により付着させることも可能である。いずれもワイヤの走行スピードや吹きつけ量のコントロールにより、砥粒の付着量をコントロールできるのも特徴である。
(第3の工程)
第3の工程は、第2の工程で砥粒14を仮付着したワイヤのはんだめっき層13を加熱溶融した後、冷却固化して砥粒14をはんだめっき層13表面に接合させ、仮付けする工程である。具体的には、図4の模式図に示すように、第2の工程に連続して行なわれ、砥粒散布装置32を通過した砥粒付着プリコートワイヤワイヤは加熱炉33に導かれて加熱される。この加熱炉33は、プリコートのはんだめっき層13を溶融させるに十分な温度に過熱できるようになっており、加熱炉33内では、付着している液体層15の液体が蒸発し、同時にはんだめっきが溶融し、蒸発した液体層15の液体に代わって溶融はんだめっき層13により砥粒14がその接触面でワイヤに濡れた状況になる。このワイヤが加熱炉33を出て冷却ゾーン34を通ると、溶融はんだめっき層13が固化され、砥粒14はワイヤに接合されることとなる。
図2(c)は、この工程を終えたワイヤの断面で、溶融したはんだめっき層13のはんだが砥粒14の周囲に表面張力で引き寄せられた後に固まりフィレット13aを形成している様子を示している。すなわち、この方法の特長は、砥粒14の接着面の周辺にフィレット13aが形成された形となり、砥粒14が安定した形で接合されることである。このフィレット13aが存在することにより、後工程の金属めっきも滑らかに砥粒14を囲うこととなり、フィレット13aが形成されない電着による砥粒の接合状態と異なり砥粒保持力の大きなワイヤソーが得られるのである。
第2の工程で砥粒相互の凝集力により砥粒14上に余分に付着した砥粒は、はんだめっき層13と接触していないので第3の工程においてもワイヤに接合されることはなく、たとえば冷却ゾーン34で空気の流れを当てることにより除去されてワイヤ上の砥粒14は単層をなすこととなる。以下、第3の工程で作製されたワイヤを砥粒仮付けワイヤ12という。この砥粒のワイヤに対する接着力は、はんだと砥粒、はんだとワイヤの接着力により決まってくるが、ほとんど砥粒の一面だけで接着される状況なので、接着力が不十分で、このままワイヤソーになるものではない。したがって、ワイヤソーに使う場合は、後述の第4の工程により砥粒を更に強固にワイヤに固着させる必要がある。
(第4の工程)
第4の工程は、図2(d)に示すように砥粒仮付けワイヤ12に金属めっきを施し、砥粒14をワイヤに強固に固着する工程である。図5は、第4の工程の製造プロセスを示す模式図である。本装置において、第3の工程で製作された砥粒仮付けワイヤ12が繰り出しリール40から繰り出され、、脱脂槽42、酸洗い槽43、水洗い槽44、めっき槽45、水洗い槽46を経て巻取りリール47に巻き取られる。
めっき槽45には、アノード45cとワイヤをカソードとするための給電ロール45bが設置され、直流電源45aが設置されている。このめっき槽45を通過する間に砥粒仮付けワイヤ12の表面に金属めっき層が形成される。砥粒表面が導電性である場合、ワイヤのはんだめっき層の上のみならず砥粒上にも金属めっき層が形成され、砥粒はきわめて強固にワイヤに固着される。図2(d)及び図1の断面の固定砥粒ワイヤが得られる。金属めっきの厚さは、ワイヤの走行速度、めっき電流によってコントロールされる。この第4の工程で形成される金属めっきの厚さは、本例のように導電性の被覆をした砥粒14の場合、この砥粒14表面にも金属めっきが乗るため、厚すぎるとワイヤ使用前のドレッシング(めだて)に時間がかかり効率が落ちる。したがって、好ましくは3〜10μm、より好ましくは3〜5μmである。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこうした形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
次に、本発明の製造方法で作製した実施例1のワイヤソーと、電着方法により作製した比較例1のワイヤソーを図7の写真に基づき説明する。
実施例1のワイヤソーは、上述した図3〜5のプロセスを用いて作製した。ワイヤとして直径180μmのピアノ線を用い、溶融温度220℃の鉛フリーはんだを用いて2〜2.5μm厚のはんだめっき層を形成してプリコートワイヤを作製した。このプリコートワイヤを液体で濡らしたうえ、サイズ30〜40μmのニッケルコートダイヤモンド砥粒をワイヤ走行速度20m/分で分散・付着させ、溶融固化して砥粒仮付けワイヤを作製した。図7(a)はこの砥粒仮付けワイヤの拡大写真である。はんだが砥粒の周辺に引き寄せられてフィレットを形成している。このためワイヤ周辺のはんだめっき層の厚さはサブミクロンレベルになっているとみられる。
次に、この砥粒仮付けワイヤに対し、ワイヤ走行速度10m/分、電流20アンペアでニッケルめっきを10μmの厚さまで行った。図7(b)は金属めっき後の完成したワイヤソーの拡大写真である。金属めっき層はフィレット上をもカバーする形で被覆され、砥粒が完全に被覆された形で固着されているのが分かる。
比較例1のワイヤソーは、ダイヤモンド砥粒を電着でワイヤに固定したものである。ワイヤ径は180ミクロン、砥粒はダイヤモンド砥粒(平均粒子径30〜40ミクロン)、電着素材はニッケルである。
図7(c)は比較例1のワイヤソーの拡大写真である。金属めっきで被覆されている砥粒の付着面の周囲が黒い影のように見えるが、これは実施例1のように金属めっきの下地としてはんだめっき層のフィレットが存在しないため、金属めっきが当該付着面の周囲の隙間に十分に付着せず、ワイヤ表面の金属めっきと砥粒表面の金属めっきとが十分に結合できていないことを示している。
ワイヤソーを使用する際には砥粒にワイヤの走行方向と逆に力がかかり、砥粒とワイヤの間には砥粒を引き剥がそうという力がかかるが、この力が比較例1のような電着による場合の形状では、金属めっきがのっていない砥粒付着面に応力集中が生じ、砥粒が脱落しやすい。これに対し、実施例1でははんだめっき層のフィレットが当該付着面の周囲に形成され、そのうえに金属めっきが確実に載って前記した応力集中を避けることができ、これが電着法よりも更に耐久性(砥粒保持力)に優れたワイヤソーが実現できた理由になっていることが分かる。
1 ワイヤソー
10 ワイヤ
11 プリコートワイヤ
12 砥粒仮付けワイヤ
13 はんだめっき層
13a フィレット
14 砥粒
15 液体層
16 金属めっき層
20 繰り出しリール
21 フラックス塗布装置
22 溶融はんだ槽
23 冷却ゾーン
24 巻取りリール
30 繰り出しリール
31 液体塗布装置
32 砥粒付着ゾーン
32a 砥粒散布装置
33 加熱炉
34 冷却ゾーン
40 繰り出しリール
42 脱脂槽
43 酸洗い槽
44 水洗い槽
45 めっき槽
45a 直流電源
45b 給電ロール
45c アノード
46 水洗い槽
47 巻取りリール

Claims (2)

  1. ワイヤの表面に砥粒を分散固定したワイヤソーであって、ワイヤの表面にはんだめっき層を形成し、該はんだめっき層上に砥粒を単層に分散・付着させたうえ、該はんだめっき層の表面を溶融・固化して砥粒がその付着面で接合した砥粒仮付けワイヤとし、更に該砥粒仮付けワイヤを金属めっきすることにより砥粒をワイヤ表面に固着させてなることを特徴とするワイヤソー。
  2. ワイヤの表面に砥粒を分散固定したワイヤソーの製造方法であって、
    予めワイヤ表面にはんだめっき層を形成し、
    該はんだめっき層上に砥粒を単層に分散・付着させた後、
    該はんだめっき層の表面を溶融・固化することにより、砥粒がその付着面で接合した砥粒仮付けワイヤとなし、
    該砥粒仮付けワイヤを金属めっきすることにより、前記砥粒をワイヤの表面に固着させるワイヤソーの製造方法。
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