JP2011095737A - トナー用ポリエステル - Google Patents

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Abstract

【課題】低温定着性、耐ホットオフセット性に加えて、耐久性に優れる、電子写真用トナー、該トナーに用いられるトナー用ポリエステル及びトナー用結着樹脂を提供すること。
【解決手段】ヒドロキシ基数とカルボキシル基数との総和が4以上である脂肪族ヒドロキシカルボン酸化合物と、第二級炭素原子に結合した水酸基を有する脂肪族ジオールを50モル%以上含有するアルコール成分と、カルボン酸成分(ただし、前記脂肪族ヒドロキシカルボン酸化合物を含まない)とを縮重合反応させて得られる、トナー用ポリエステルであって、前記脂肪族ヒドロキシカルボン酸化合物と第二級炭素原子に結合した水酸基を有する脂肪族ジオールとのモル比(脂肪族ヒドロキシカルボン酸化合物/第二級炭素原子に結合した水酸基を有する脂肪族ジオール)が0.05〜0.8である、トナー用ポリエステル、該トナー用ポリエステルを含有してなるトナー用結着樹脂。
【選択図】なし

Description

本発明は、電子写真法、静電記録法、静電印刷法等において形成される潜像の現像に用いられるトナー用ポリエステル、該ポリエステルを含有したトナー用結着樹脂、及び該結着樹脂を含有した電子写真用トナーに関する。
近年、マシンの高速化、省エネ化に伴い、低温定着性と耐ホットオフセット性に優れたトナーが要求されている。
特許文献1には、低温定着性、耐オフセット性、粉砕性、内添剤の分散性及び保存性のいずれにも優れるトナーを提供することを課題として、結着樹脂として、ポリエステル系樹脂(A)及び該ポリエステル系樹脂(A)より軟化点が10℃以上高いポリエステル系樹脂(B)を含有してなるトナーであって、前記ポリエステル系樹脂(A)が、1,2-プロパンジオールを2価のアルコール成分中65モル%以上含有するアルコール成分と、(メタ)アクリル酸変性ロジンを含有するカルボン酸成分とを縮重合させて得られるポリエステルユニットを有する樹脂であり、前記ポリエステル系樹脂(B)が、1,2-プロパンジオール及び1,3-プロパンジオールを2価のアルコール成分中合わせて70モル%以上含有するアルコール成分と、精製ロジンを含有するカルボン酸成分とを縮重合させて得られるポリエステルユニットを有する樹脂である、トナーが開示されている。
特許文献2には、定着性、定着強度、耐オフセット性、および耐ブロッキング性に優れた生分解性を有するトナーとして、乳酸および3官能以上のオキシカルボン酸を含有する組成物を脱水重縮合して得られたポリエステル樹脂および着色剤を含有することを特徴とする静電荷像現像用トナーが開示されている。
特開2009−003116号公報 特開平9−274335号公報
しかしながら、上記特許文献では、低温定着性及び耐ホットオフセット性と耐久性とを満足することができない。
本発明の課題は、低温定着性、耐ホットオフセット性に加えて、耐久性に優れる、電子写真用トナー、該トナーに用いられるトナー用ポリエステル及びトナー用結着樹脂を提供することにある。
本発明は、
〔1〕 ヒドロキシ基数とカルボキシル基数との総和が4以上である脂肪族ヒドロキシカルボン酸化合物と、第二級炭素原子に結合した水酸基を有する脂肪族ジオールを50モル%以上含有するアルコール成分と、カルボン酸成分(ただし、前記脂肪族ヒドロキシカルボン酸化合物を含まない)とを縮重合反応させて得られる、トナー用ポリエステルであって、前記脂肪族ヒドロキシカルボン酸化合物と第二級炭素原子に結合した水酸基を有する脂肪族ジオールとのモル比(脂肪族ヒドロキシカルボン酸化合物/第二級炭素原子に結合した水酸基を有する脂肪族ジオール)が0.05〜0.8である、トナー用ポリエステル、
〔2〕 前記〔1〕記載のトナー用ポリエステルを含有してなるトナー用結着樹脂、並びに
〔3〕 前記〔2〕記載の結着樹脂を含有する、電子写真用トナー
に関する。
本発明のトナー用ポリエステルを結着樹脂として含有する電子写真用トナーは、低温定着性、耐ホットオフセット性及び耐久性において優れた効果を奏する。
本発明のトナー用ポリエステルは、原料モノマーとして、ヒドロキシ基数とカルボキシル基数の総和が4以上である脂肪族ヒドロキシカルボン酸化合物(以下、単に脂肪族ヒドロキシカルボン酸化合物という)と、第二級炭素原子に結合した水酸基を有する脂肪族ジオールを50モル%以上含有するアルコール成分と、カルボン酸成分とが用いられており、脂肪族ヒドロキシカルボン酸化合物と第二級炭素原子に結合した水酸基を有する脂肪族ジオールとの相乗効果により、優れた低温定着性、耐ホットオフセット性及び耐久性を有する。これは、前記脂肪族ヒドロキシカルボン酸化合物は、第二級炭素原子に結合した水酸基を有する脂肪族ジオールを含有するアルコール成分に対して反応性が高く、ポリエステルの高分子量化が可能であるため、低温定着性、耐ホットオフセット性に加えて耐久性が向上するものと考えられる。一方、乳酸、サリチル酸等の、前記脂肪族ヒドロキシカルボン酸化合物以外のヒドロキシカルボン酸や、グリセリン、トリメリット酸化合物等の化合物を使用した場合は、前記脂肪族ヒドロキシカルボン酸化合物を用いた場合と比べて、トナーの耐オフセット性や耐久性が低下するが、これは、反応性が低く、低分子量成分が増加するためと考えられる。
本発明における脂肪族ヒドロキシカルボン酸化合物は、低温定着性、耐ホットオフセット性及び耐久性に優れる観点から、ヒドロキシ基数とカルボキシル基数の総和が4以上であり、好ましくは4〜6、より好ましくは4〜5である。耐久性の観点から、1分子が有するカルボキシル基数は2以上が好ましく、2〜4がより好ましく、2〜3がさらに好ましい。耐久性の観点から、1分子が有するヒドロキシ基数は、1〜3が好ましく、1〜2がより好ましい。1分子が有するカルボキシル数とヒドロキシ基数との比(カルボキシル基数/ヒドロキシ基数)は、耐久性の観点から、1以上が好ましく、1〜4が好ましく、1〜3がより好ましい。なお、ヒドロキシカルボン酸化合物は、少なくともヒドロキシ基とカルボキシル基を、各々1以上含む。
脂肪族ヒドロキシカルボン酸化合物の炭素数は、低温定着性、耐ホットオフセット性及び耐久性の観点から、4以上が好ましく、4〜10がより好ましく、4〜8がさらに好ましい。
具体的には、酒石酸(炭素数4:カルボキシル基2、ヒドロキシ基2)、クエン酸(炭素数6:カルボキシル基3、ヒドロキシ基1)、イソクエン酸(炭素数6:カルボキシル基3、ヒドロキシ基1)、グルコン酸(炭素数6:カルボキシル基1、ヒドロキシ基5)等が挙げられ、低温定着性、耐ホットオフセット性及び耐久性の観点から、酒石酸及びクエン酸の少なくともいずれかであることが好ましい。カルボキシル基は、酸無水物や低級アルコール(炭素数1〜3)のエステルであってもよく、本発明においては、カルボン酸、酸無水物、アルキル(炭素数1〜3)エステル等の誘導体等を、総称してカルボン酸化合物という。
脂肪族ヒドロキシカルボン酸化合物の含有量は、脂肪族ヒドロキシカルボン酸化合物とアルコール成分とカルボン酸成分との合計量中、低温定着性、耐ホットオフセット性及び耐久性に優れる観点から、好ましくは0.5〜80モル%であり、より好ましくは1〜50モル%であり、さらに好ましくは2〜30モル%である。
アルコール成分は、トナーの耐ホットオフセット性に優れる観点から、第二級炭素原子に結合した水酸基を有する脂肪族ジオールを50モル%以上含む。なお、アルコール成分には、カルボキシル基を有する化合物は含めない。従って、前記脂肪族ヒドロキシカルボン酸化合物も、アルコール成分には含まれない。
第二級炭素原子に結合した水酸基を有する脂肪族ジオールは、トナーの低温定着性及び耐ホットオフセット性の観点から、炭素数3〜8が好ましく、炭素数3〜6がより好ましい。具体的な好適例としては、1,2-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、2,3-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,3-ヘキサンジオール、1,4-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、2,3-ヘキサンジオール、3,4-ヘキサンジオール、2,4-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール等が挙げられる。
第二級炭素原子に結合した水酸基を有する脂肪族ジオールの含有量は、トナーの低温定着性及び耐ホットオフセット性の観点から、アルコール成分中、50モル%以上であり、60モル%以上が好ましく、70モル%以上がより好ましく、75モル%以上がさらに好ましく、80モル%以上がさらに好ましく、90モル%以上がさらに好ましく、95モル%以上がさらに好ましい。従って、第二級炭素原子に結合した水酸基を有する脂肪族ジオールの含有量は、アルコール成分中、好ましくは50〜100モル%であり、60〜100モル%がより好ましく、70〜100モル%がさらに好ましく、75〜100モル%がさらに好ましく、80〜100モル%がさらに好ましく、90〜100モル%がさらに好ましく、95〜100モル%がさらに好ましい。
前記脂肪族ヒドロキシカルボン酸化合物と第二級炭素原子に結合した水酸基を有する脂肪族ジオールとのモル比(脂肪族ヒドロキシカルボン酸化合物/第二級炭素原子に結合した水酸基を有する脂肪族ジオール)が、トナーの低温定着性、耐ホットオフセット性及び耐久性の観点から、0.05〜0.8であり、好ましくは0.05〜0.6、より好ましくは0.1〜0.5である。
他のアルコールとしては、式(I):
Figure 2011095737
(式中、R1O及びOR1はオキシアルキレン基であり、R1はエチレン及び/又はプロピレン基であり、x及びyはアルキレンオキサイドの付加モル数を示し、それぞれ正の数であり、xとyの和の平均値は1〜16が好ましく、1〜8がより好ましく、1.5〜4がさらに好ましい)
で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物及び第二級炭素原子に結合した水酸基を有する脂肪族ジオール以外の脂肪族ジオールが好ましい。ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物は、トナーの保存性の観点から好ましい。式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物の具体例としては、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンのポリオキシプロピレン付加物、及び2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンのポリオキシエチレン付加物等のビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物等が挙げられる。
第二級炭素原子に結合した水酸基を有する脂肪族ジオール以外の脂肪族ジオールとしては、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-ブテンジオール、ネオペンチルグリコール等が挙げられる。
その他の3価以上のアルコールとして、グリセリン、ペンタエリスリトール、及びトリメチロールプロパン等の3価以上のアルコールも本発明の効果を損なわない範囲で用いられていてもよい。
カルボン酸成分としては、芳香族ジカルボン酸化合物、芳香族ヒドロキシカルボン酸化合物、脂肪族ジカルボン酸化合物等が挙げられ、これらの中ではトナーの保存性及び耐久性の観点から、芳香族カルボン酸化合物及び/又は芳香族ヒドロキシカルボン酸化合物が好ましい。なお、前記脂肪族ヒドロキシカルボン酸化合物は、カルボン酸成分には含まれない。
芳香族カルボン酸化合物と芳香族ヒドロキシカルボン酸化合物との合計含有量は、カルボン酸成分中、トナーの保存性及び耐久性の観点から、好ましくは20〜100モル%、より好ましくは30〜100モル%、さらに好ましくは40〜90モル%、よりさらに好ましくは50〜90モル%である。
芳香族ジカルボン酸化合物は、トナーの低温定着性、保存性及び耐久性の観点から、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等が好ましい。芳香族カルボン酸化合物の含有量は、カルボン酸成分中、トナーの低温定着性、保存性及び耐久性の観点から、好ましくは20〜100モル%、より好ましくは30〜100モル%、さらに好ましくは40〜90モル%、よりさらに好ましくは50〜90モル%である。
芳香族ヒドロキシカルボン酸化合物において、ヒドロキシ基数とカルボキシル基数の総和は、2〜4が好ましく、2〜3がより好ましい。これらの中では、トナーの帯電立ち上がり性及び保存性の観点から、アルコキシ基(炭素数1〜3)を有する芳香族ヒドロキシカルボン酸化合物が好ましく、メトキシ基とヒドロキシ基が互いに隣接した炭素原子に結合していることがより好ましい。具体的には、フェルラ酸、5-ヒドロキシフェルラ酸、バニリン酸、シナピン酸、及びシリンガ酸からなる群より選ばれた少なくとも1種の芳香族ヒドロキシカルボン酸が好ましい。これらの化合物は、芳香環内で、電子供与性を有するメトキシ基と水酸基が互いに隣接した炭素原子に結合しているため、pKa(等電点)の高いフェノール性の水酸基を有するモノマーとなり、芳香環中の電子密度が上がる結果、帯電の立ち上がり性が向上するものと考えられる。芳香族ヒドロキシカルボン酸化合物の含有量は、カルボン酸成分中、トナーの帯電立ち上がり性、保存性及び耐久性の観点から、好ましくは20〜100モル%、より好ましくは30〜100モル%、さらに好ましくは40〜90モル%、よりさらに好ましくは40〜80モル%である。
脂肪族ジカルボン酸化合物は、低温定着性の観点から、好ましくは炭素数2〜12、より好ましくは炭素数2〜10である。脂肪族ジカルボン酸化合物としては、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸等が挙げられる。
その他のカルボン酸化合物として、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸;トリメリット酸、ピロメリット酸等の3価以上の多価カルボン酸;ロジン;フマル酸、マレイン酸又はアクリル酸等で変性されたロジン;ヒドロキシ基とカルボキシル基との総数が3個以下の脂肪族ヒドロキシカルボン酸等が挙げられる。
前記脂肪族ヒドロキシカルボン酸化合物とカルボン酸成分とのモル比(脂肪族ヒドロキシカルボン酸化合物/カルボン酸成分)は、トナーの耐久性の観点から、好ましくは0.05〜1.5、より好ましくは0.1〜1.0、さらに好ましくは0.1〜0.5である。
アルコール成分には1価のアルコールが、カルボン酸成分には1価のカルボン酸化合物が、樹脂の分子量調整やトナーの耐オフセット性向上の観点から、適宜含有されていてもよい。
脂肪族ヒドロキシカルボン酸化合物とアルコール成分とカルボン酸成分とに含まれる、ヒドロキシ基の総モル数とカルボキシル基の総モル数のモル比(ヒドロキシ基の総モル数/カルボキシキの総モル数)は、ヒドロキシカルボン酸成分の反応性を制御してトナーの耐久性、高温高湿下での帯電性を向上させる観点から、好ましくは1.0を超えて、1.8以下であり、より好ましくは1.0を超えて、1.6以下であり、さらに好ましくは1.1〜1.5である。
脂肪族ヒドロキシカルボン酸化合物とアルコール成分とカルボン酸成分との縮重合反応は、例えば、錫化合物、チタン化合物等のエステル化触媒、重合禁止剤等の存在下、不活性ガス雰囲気中で行うことができ、温度条件は、好ましくは120〜250℃、より好ましくは140〜230℃が、それぞれ好ましい。
脂肪族ヒドロキシカルボン酸化合物と、第二級炭素原子に結合した水酸基を有する脂肪族ジオールを含有するアルコール成分とカルボン酸成分との縮重合反応の反応順序は、いずれであってもよいが、耐久性を向上させる観点から、好ましくは、前記アルコール成分とカルボン酸成分とを縮重合させた後、前記脂肪族ヒドロキシカルボン酸化合物を反応系に添加して、縮重合させることが好ましい。従って、本発明のトナー用ポリエステルは、以下の工程1、2を含む方法により得られるものが好ましい。
工程1:第二級炭素原子に結合した水酸基を有する脂肪族ジオールを含有するアルコール成分とカルボン酸成分とを縮重合させる工程
工程2:工程1の縮重合反応中又は縮重合反応後に、脂肪族ヒドロキシカルボン酸化合物を添加して、縮重合反応させる工程
工程1において、アルコール成分とカルボン酸成分との縮重合反応は、例えば、錫化合物、チタン化合物等のエステル化触媒の存在下、不活性ガス雰囲気中で行うことができ、その温度は、170〜250℃が好ましく、180〜230℃がより好ましい。
工程2において、脂肪族ヒドロキシカルボン酸化合物は、脂肪族ヒドロキシカルボン酸化合物同士の反応を抑制することができ、耐久性を向上させる観点から、工程1の縮重合反応の反応率が、理論反応水の排出完了時を100%として、好ましくは50〜100%、より好ましくは60〜100%、さらに好ましくは70〜95%の水が排出された時点で反応系に添加することが望ましい。
また、工程2における反応温度は、脂肪族ヒドロキシカルボン酸化合物の反応制御の観点から、120〜200℃が好ましく、140〜190℃がより好ましい。この反応温度では、脂肪族ヒドロキシカルボン酸化合物同士の反応を抑制することができ、耐久性を向上させることができる。
エステル化触媒として用いられる錫化合物としては、例えば、酸化ジブチル錫が知られているが、本発明では、ポリエステル中での分散性が良好である観点から、Sn-C結合を有していない錫(II)化合物が好ましい。
Sn-C結合を有していない錫(II)化合物としては、Sn-O結合を有する錫(II)化合物、Sn-X(Xはハロゲン原子を示す)結合を有する錫(II)化合物等が好ましく、Sn-O結合を有する錫(II)化合物がより好ましい。
Sn-O結合を有する錫(II)化合物としては、シュウ酸錫(II)、酢酸錫(II)、オクタン酸錫(II)、2-エチルヘキサン酸錫(II)、ラウリル酸錫(II)、ステアリン酸錫(II)、オレイン酸錫(II)等の炭素数2〜28のカルボン酸基を有するカルボン酸錫(II);オクチロキシ錫(II)、ラウロキシ錫(II)、ステアロキシ錫(II)、オレイロキシ錫(II)等の炭素数2〜28のアルコキシ基を有するアルコキシ錫(II);酸化錫(II);硫酸錫(II)等が、Sn-X(Xはハロゲン原子を示す)結合を有する錫(II)化合物としては、塩化錫(II)、臭化錫(II)等のハロゲン化錫(II)等が挙げられ、これらの中では、触媒能の点から、(R2COO)2Sn(ここでR2は炭素数5〜19のアルキル基又はアルケニル基を示す)で表される脂肪酸錫(II)、(R3O)2Sn(ここでR3は炭素数6〜20のアルキル基又はアルケニル基を示す)で表されるアルコキシ錫(II)及びSnOで表される酸化錫(II)が好ましく、(R2COO)2Snで表される脂肪酸錫(II)及び酸化錫(II)がより好ましく、オクタン酸錫(II)、2-エチルヘキサン酸錫(II)、ステアリン酸錫(II)及び酸化錫(II)がさらに好ましい。
チタン化合物としては、Ti−O結合を有するチタン化合物が好ましく、総炭素数1〜28のアルコキシ基、総炭素数2〜28のアルケニルオキシ基又は総炭素数1〜28のアシルオキシ基を有する化合物がより好ましい。
チタン化合物の具体例としては、チタンジイソプロピレートビストリエタノールアミネート〔Ti(C6143N)2(C37O)2〕、チタンジイソプロピレートビスジエタノールアミネート〔Ti(C4102N)2(C37O)2〕、チタンジペンチレートビストリエタノールアミネート〔Ti(C6143N)2(C511O)2〕、チタンジエチレートビストリエタノールアミネート〔Ti(C6143N)2(C25O)2〕、チタンジヒドロキシオクチレートビストリエタノールアミネート〔Ti(C6143N)2(OHC816O)2〕、チタンジステアレートビストリエタノールアミネート〔Ti(C6143N)2(C1837O)2〕、チタントリイソプロピレートトリエタノールアミネート〔Ti(C6143N)(C37O)3〕、チタンモノプロピレートトリス(トリエタノールアミネート)〔Ti(C6143N)3(C37O)〕等が挙げられ、これらの中ではチタンジイソプロピレートビストリエタノールアミネート、チタンジイソプロピレートビスジエタノールアミネート及びチタンジペンチレートビストリエタノールアミネートが好ましく、これらは、例えばマツモト交商(株)の市販品としても入手できる。
他の好ましいチタン化合物の具体例としては、テトラ-n-ブチルチタネート〔Ti(C49O)4〕、テトラプロピルチタネート〔Ti(C37O)4〕、テトラステアリルチタネート〔Ti(C1837O)4〕、テトラミリスチルチタネート〔Ti(C1429O)4〕、テトラオクチルチタネート〔Ti(C817O)4〕、ジオクチルジヒドロキシオクチルチタネート〔Ti(C817O)2(OHC816O)2〕、ジミリスチルジオクチルチタネート〔Ti(C1429O)2(C817O)2〕等が挙げられ、これらの中ではテトラステアリルチタネート、テトラミリスチルチタネート、テトラオクチルチタネート及びジオクチルジヒドロキシオクチルチタネートが好ましい。これらは、例えばハロゲン化チタンを対応するアルコールと反応させることにより得ることができ、又は、ニッソー社等の市販品としても入手できる。
上記錫(II)化合物及びチタン化合物は、1種又は2種以上を併せて使用することができる。
エステル化触媒の存在量は、アルコール成分とカルボン酸成分と前記脂肪族ヒドロキシカルボン酸化合物との総使用量100重量部に対して、0.01〜2.0重量部が好ましく、0.1〜1.5重量部がより好ましく、0.2〜1.0重量部がさらに好ましい。
本発明において、互いに隣接する3個の炭素原子に結合した水素原子が水酸基で置換されたベンゼン環を有するピロガロール化合物をエステル化触媒とともに助触媒として用いることが、トナーの耐久性を向上させる観点から好ましい。
ピロガロール化合物としては、ピロガロール、没食子酸、没食子酸エステル、2,3,4-トリヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,3,4-テトラヒドロキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン誘導体、エピガロカテキン、エピガロカテキンガレート等のカテキン誘導体等が挙げられ、これらの中では、得られる樹脂の耐久性の観点から、式(II):
Figure 2011095737
(式中、R4〜R6はそれぞれ独立して、水素原子又は−COOR7(R7は水素原子又は炭素数1〜12の炭化水素基、好ましくは炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数2〜12のアルケニル基を示す)を示す)
で表される化合物が好ましい。式中、R7の炭化水素基の炭素数は、1〜8が好ましく、反応活性の観点から、炭素数1〜4がより好ましい。式(II)で表される化合物のなかでは、R4及びR6が水素原子、R5が水素原子又は−COOR7である化合物がより好ましい。具体例としては、ピロガロール(R4〜R6:水素原子)、没食子酸(R4及びR6:水素原子、R5:−COOH)、没食子酸エチル(R4及びR6:水素原子、R5:−COOC25)、没食子酸プロピル(R4及びR6:水素原子、R5:−COOC37)、没食子酸ブチル(R4及びR6:水素原子、R5:−COOC49)、没食子酸オクチル(R4及びR6:水素原子、R5:−COOC817)、没食子酸ラウリル(R4及びR6:水素原子、R5:−COOC1225)等の没食子酸エステル等が挙げられる。トナーの保存性の観点からは、没食子酸及び没食子酸エステルが好ましい。
縮重合反応におけるピロガロール化合物の存在量は、アルコール成分とカルボン酸成分と前記脂肪族ヒドロキシカルボン酸化合物との総使用量100重量部に対して、トナーの保存性の観点から、0.001〜1.0重量部が好ましく、0.005〜0.4重量部がより好ましく、0.01〜0.2重量部がさらに好ましい。ここで、ピロガロール系化合物の存在量とは、縮重合反応に供したピロガロール系化合物の全配合量を意味する。
ピロガロール化合物は、エステル化触媒の助触媒として働いていると考えられる。ピロガロール化合物とともに用いられるエステル化触媒としては、錫化合物、チタン化合物、三酸化アンチモン、酢酸亜鉛、及び2酸化ゲルマニウムからなる群より選ばれた少なくとも1種の金属触媒が好ましい。
ピロガロール化合物とエステル化触媒の重量比(ピロガロール化合物/エステル化触媒)は、トナーの保存性の観点から、0.01〜0.5が好ましく、0.03〜0.3がより好ましく、0.05〜0.2がさらに好ましい。
なお、トナー用ポリエステルは、実質的にその特性を損なわない程度に変性されたポリエステルであってもよい。変性されたポリエステルとしては、ポリエステル・ポリアミドや、特開平11−133668号公報、特開平10−239903号公報、特開平8−20636号公報等に記載の方法によりフェノール、ウレタン、エポキシ等によりグラフト化やブロック化したポリエステルをいう。
また、ポリエステルは、ポリエステルとビニル系樹脂等の付加重合系樹脂とを含有した複合樹脂であってもよい。複合樹脂としては、ポリエステルと付加重合系樹脂との混合物であってもよいが、例えば、ポリエステルの原料モノマー及び付加重合系樹脂の原料モノマーを同一反応容器中で重合させることにより得ることもできる。
複合樹脂としては、ポリエステルの原料モノマー及び付加重合系樹脂の原料モノマーのいずれとも反応し得る両反応性モノマーを用いることにより、ポリエステル成分中に付加重合系樹脂成分がより微細に、かつ均一に分散したハイブリッド樹脂が好ましい。両反応性モノマーは、分子内に、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基、第1級アミノ基及び第2級アミノ基からなる群より選ばれた少なくとも1種の官能基、好ましくは水酸基及び/又はカルボキシル基、より好ましくはカルボキシル基と、エチレン性不飽和結合とを有する化合物であり、アクリル酸、メタクリル酸及びフマル酸等が好ましい。
本発明のトナー用ポリエステルの軟化点は、トナーの定着性、保存性及び耐久性の観点から、85〜160℃が好ましく、90〜150℃がより好ましく、95〜145℃がさらに好ましい。
結着樹脂として用いる場合、軟化点が好ましくは10℃以上、より好ましくは20〜60℃異なる高軟化点樹脂と低軟化点樹脂とを含むことがトナーの低温定着性、耐ホットオフセット性及び耐久性の観点から、好ましい。高軟化点樹脂の軟化点は、トナーの低温定着性、耐ホットオフセット性及び耐久性の観点から、好ましくは125〜160℃、より好ましくは130〜150℃であり、低軟化点樹脂の軟化点は、トナーの低温定着性、耐ホットオフセット性及び耐久性の観点から、好ましくは90〜120℃、より好ましくは90〜110℃である。高軟化点樹脂の低軟化点樹脂に対する重量比(高軟化点樹脂/低軟化点樹脂)は、トナーの低温定着性、耐ホットオフセット性及び耐久性の観点から、1/3〜3/1が好ましく、1/2〜2/1がより好ましい。
後述する本発明の結着樹脂は、本発明のポリエステルを、トナーの低温定着性、耐ホットオフセット性及び耐久性の観点から、高軟化点の樹脂として含むことが好ましい。その場合、低軟化点の樹脂は本発明のポリエステルでなくてもよいが、本発明の結着樹脂は、本発明のポリエステルを、トナーの低温定着性、耐ホットオフセット性及び耐久性の観点から、高軟化点樹脂と低軟化点樹脂として含むことがより好ましい。
ガラス転移点は、トナーの定着性、保存性及び耐久性の観点から、45〜80℃が好ましく、50〜70℃がより好ましい。
帯電立ち上がり性の観点から、酸価は、5〜90mgKOH/gが好ましく、10〜80mgKOH/gがより好ましく、10〜70mgKOH/gがさらに好ましい。
本発明のポリエステルを含む結着樹脂を用いることにより、トナーの低温定着性と耐ホットオフセット性と耐久性に優れた電子写真用トナーが得られる。
本発明の結着樹脂には、本発明の効果を損なわない範囲で、公知の結着樹脂、例えば、スチレン-アクリル樹脂等のビニル系樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、ポリウレタン等の他の樹脂が併用されていてもよいが、本発明のポリエステルの含有量は、結着樹脂中、70重量%以上が好ましく、80重量%以上がより好ましく、90重量%以上がさらに好ましく、実質的に100重量%であることがさらに好ましい。
本発明のトナーには、さらに、着色剤、離型剤、荷電制御剤、荷電制御樹脂、磁性粉、流動性向上剤、導電性調整剤、体質顔料、繊維状物質等の補強充填剤、酸化防止剤、老化防止剤、クリーニング性向上剤等の添加剤が適宜含有されていてもよい。
着色剤としては、トナー用着色剤として用いられている染料、顔料等のすべてを使用することができ、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、パーマネントブラウンFG、ブリリアントファーストスカーレット、ピグメントグリーンB、ローダミン−Bベース、ソルベントレッド49、ソルベントレッド146、ソルベントブルー35、キナクリドン、カーミン6B、ジスアゾエロー等が用いることができ、本発明のトナーは、黒トナー、カラートナーのいずれであってもよい。着色剤の含有量は、結着樹脂100重量部に対して、1〜40重量部が好ましく、2〜10重量部がより好ましい。
離型剤としては、ポリオレフィンワックス、パラフィンワックス、シリコーン類;オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノール酸アミド、ステアリン酸アミド等の脂肪酸アミド類;カルナバロウワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス、木ロウ、ホホバ油等の植物系ワックス;ミツロウ等の動物系ワックス;モンタンワックス、オゾケライト、セレシン、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス等の鉱物・石油系ワックス等のワックスが挙げられ、これらは単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
離型剤の融点は、トナーの低温定着性と耐オフセット性の観点から、60〜160℃が好ましく、60〜150℃がより好ましい。
離型剤の含有量は、結着樹脂100重量部に対して、結着樹脂中への分散性の観点から、0.5〜10重量部が好ましく、1〜8重量部がより好ましく、1.5〜7重量部がさらに好ましい。
荷電制御剤は、特に限定されず、正帯電性荷電制御剤及び負帯電性荷電制御剤のいずれを含有していてもよい。
正帯電性荷電制御剤としては、ニグロシン染料、例えば「ニグロシンベースEX」、「オイルブラックBS」、「オイルブラックSO」、「ボントロンN-01」、「ボントロンN-07」、「ボントロンN-09」、「ボントロンN-11」(以上、オリエント化学工業社製)等;3級アミンを側鎖として含有するトリフェニルメタン系染料、4級アンモニウム塩化合物、例えば「ボントロンP-51」(オリエント化学工業社製)、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、「COPY CHARGE PX VP435」(ヘキスト社製)等;ポリアミン樹脂、例えば「AFP-B」(オリエント化学工業社製)等;イミダゾール誘導体、例えば「PLZ-2001」、「PLZ-8001」(以上、四国化成社製)等が挙げられる。
また、負帯電性の荷電制御剤としては、含金属アゾ染料、例えば「バリファーストブラック3804」、「ボントロンS-31」(以上、オリエント化学工業社製)、「T-77」(保土谷化学工業社製)、「ボントロンS-32」、「ボントロンS-34」、「ボントロンS-36」(以上、オリエント化学工業社製)、「アイゼンスピロンブラックTRH」(保土谷化学工業社製)等;ベンジル酸化合物の金属化合物、例えば、「LR-147」、「LR-297」(以上、日本カーリット社製);サリチル酸化合物の金属化合物、例えば、「ボントロンE-81」、「ボントロンE-84」、「ボントロンE-88」、「E-304」(以上、オリエント化学工業社製)、「TN-105」(保土谷化学工業社製);銅フタロシアニン染料;4級アンモニウム塩、例えば「COPY CHARGE NX VP434」(ヘキスト社製)、ニトロイミダゾール誘導体;有機金属化合物、例えば「TN105」(保土谷化学工業社製)等が挙げられる。
荷電制御剤の含有量は、トナーの帯電立ち上がり性の観点から、結着樹脂100重量部に対して、0.01〜10重量部が好ましく、0.01〜5重量部がより好ましく、0.3〜3重量部がさらに好ましく、0.5〜3重量部がよりさらに好ましく、1〜2重量部がよりさらに好ましい。
本発明には、帯電性を向上させるために、荷電制御樹脂を含有することが好ましい。荷電制御樹脂としては、スチレン系樹脂が好ましく、トナーの正帯電性発現の観点からは、4級アンモニウム塩基含有スチレン系樹脂が好ましく、トナーの負帯電性発現の観点からは、スルホン酸基含有スチレン系樹脂が好ましい。
4級アンモニウム塩基含有スチレン系樹脂としては、式(IIIa):
Figure 2011095737
(式中、R8は水素原子又はメチル基を示す)
で表される単量体、式(IIIb):
Figure 2011095737
(式中、R9は水素原子又はメチル基、R10は炭素数1〜12のアルキル基を示す)
で表される単量体、及び式(IIIc):
Figure 2011095737
(式中、R11は水素原子又はメチル基、R12及びR13はそれぞれ独立して炭素数1〜4のアルキル基を示す)
で表される単量体又はその4級化物を含有する単量体混合物の重合により得られる4級アンモニウム塩基含有スチレンアクリル系樹脂がより好ましい。予め単量体を4級化してもよく、重合後に4級化してもよい。4級化剤としては、塩化メチル、ヨウ化メチル等のハロゲン化アルキル、硫酸ジエチル、硫酸ジ-n-プロピル等が挙げられる。
式(IIIa)で表される単量体としては、好ましくはR8が水素原子であるスチレン、式(IIIb)で表される単量体としては、R9が好ましくは水素原子であり、R10が好ましくは炭素数1〜6、より好ましくは炭素数1〜4のアルキル基である。式(IIIb)で表される単量体の具体例としては、アクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル等が挙げられる。式(IIIc)で表される単量体としては、好ましくはR11がメチル基、R12及びR13がメチル基又はエチル基である単量体、より好ましくはR11、R12及びR13がメチル基であるメタクリル酸ジメチルアミノエチルが、それぞれ望ましい。
4級アンモニウム塩基含有スチレン系樹脂において、単量体混合物中の式(IIIa)で表される単量体の含有量は、好ましくは60〜97重量%、より好ましくは70〜90重量%であり、式(IIIb)で表される単量体の含有量は、好ましくは1〜33重量%、より好ましくは5〜20重量%であり、式(IIIc)で表される単量体又はその4級化物の含有量は、好ましくは2〜35重量%、より好ましくは5〜20重量%であることが望ましい。
式(IIIa)〜(IIIc)で表される単量体を用いて得られる4級アンモニウム塩基含有スチレン系樹脂の具体例としては、アクリル酸ブチル・N,N-ジエチル-N-メチル-2-(メタクリロイルオキシ)エチルアンモニウム・スチレン共重合体等が挙げられる。
スルホン酸基含有スチレン系樹脂としては、前記の式(IIIa)で表される単量体、式(IIIb)で表される単量体、及びスルホン酸基含有単量体を含有する単量体混合物を重合することにより得られるスルホン酸基含有スチレン系樹脂が好ましい。
スルホン酸基含有モノマーとしては、(メタ)アリルスルホン酸、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸が挙げられる。具体的には、アクリル酸2-エチルヘキシル・2-アクリルアミド-2-メチル-1-プロパンスルホン酸・スチレン共重合物等が挙げられる。
スルホン酸基含有スチレン系樹脂において、単量体混合物中の式(IIIa)で表される単量体の含有量は、好ましくは60〜97重量%、より好ましくは70〜90重量%であり、式(IIIb)で表される単量体の含有量は、好ましくは1〜33重量%、より好ましくは5〜20重量%であり、スルホン酸基含有モノマーの含有量は、好ましくは2〜35重量%、より好ましくは5〜20重量%であることが望ましい。
4級アンモニウム塩基含有スチレン系樹脂及びスルホン酸基含有スチレン系樹脂のいずれにおいても、単量体混合物の重合は、例えば、単量体混合物をアゾビスジメチルバレロニトリル等の重合開始剤の存在下で不活性ガス雰囲気下、50〜100℃に加熱することにより、行うことができる。なお、重合法としては、溶液重合、懸濁重合又は塊状重合のいずれでもよいが、好ましくは溶液重合である。
スチレン系樹脂の軟化点は、トナーの低温定着性の観点から、100〜140℃が好ましく、110〜130℃がより好ましい。
荷電制御樹脂として含有されるスチレン系樹脂の使用量は、トナーの帯電性発現の観点から、結着樹脂100重量部に対して、3〜40重量部が好ましく、4〜30重量部がより好ましく、5〜20重量部がさらに好ましい。
本発明のトナーは、溶融混練法、乳化転相法、重合法等の従来より公知のいずれの方法により得られたトナーであってもよいが、生産性や着色剤の分散性の観点から、溶融混練法による粉砕トナーが好ましい。溶融混練法による粉砕トナーの場合、例えば、結着樹脂、着色剤、荷電制御剤等の原料をヘンシェルミキサー等の混合機で均一に混合した後、密閉式ニーダー、1軸もしくは2軸の押出機、オープンロール型混練機等で溶融混練し、冷却、粉砕、分級して製造することができる。一方、トナーの小粒径化の観点からは、重合法によるトナーが好ましい。
本発明のトナーの体積中位粒径(D50)は、3〜15μmが好ましく、3〜10μmがより好ましい。なお、本明細書において、体積中位粒径(D50)とは、体積分率で計算した累積体積頻度が粒径の小さい方から計算して50%になる粒径を意味する。
本発明のトナーには、転写性を向上させるために、無機微粒子を外添剤として用いるのが好ましい。具体的には、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化錫、及び酸化亜鉛からなる群から選ばれる1種以上が好ましく挙げられ、これらの中では、シリカが好ましく、埋め込み防止の観点から、比重の小さいシリカが含有されているのがより好ましい。
シリカは、トナーの転写性の観点から、疎水化処理された疎水性シリカであるのが好ましい。
シリカを疎水化する方法としては、シリカ粒子の表面のシラノール基を好ましくは炭素数1〜12のアルキルシリル基(例えば、メチルシリル基、ヘキシルシリル基等)等の疎水基により修飾するか、または、疎水性樹脂により表面を被覆することが好ましい。
シリカ粒子の表面を疎水化するための疎水化処理剤としては、オルガノクロロシラン、オルガノアルコキシシラン、オルガノジシラザン、環状オルガノポリシラザン、線状オルガノポリシロキサン等が例示され、具体的には、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、ジメチルジクロロシラン(DMDS)、シリコーンオイル、オクチルトリエトキシシラン(OTES)、メチルトリエトキシシラン等が挙げられ、これらの中ではジメチルジクロロシランが好ましい。
シリカ粒子表面のシラノール基をアルキルシリル基等の疎水基で置換する方法としては、例えば、水分散シリカコロイドにアルキルシラノールアルカリ金属塩を反応させる方法(特公平7−33250号公報等参照);水分散シリカコロイドに有機溶剤、カチオン性界面活性剤、アルキルトリアルコキシシランを添加した後、共沸脱水し、さらに加熱還流する方法(特開平6−73389号公報参照);湿式シリカ又は乾式シリカにアルキルトリアルコキシシラン、有機ハロゲン化ケイ素化合物等の反応させる方法(特開平6−206720号公報、特開平7−187647号公報等参照)等が挙げられる。
シリカ粒子表面のシラノール基の少なくとも一部が疎水基により置換され疎水化されたシリカにおいて、シリカ粒子表面のシラノール基は、好ましくはその5モル%以上、より好ましくは10モル%以上、さらに好ましくは20モル%以上が疎水基により置換されていることが望ましい。
なお、シリカ粒子表面のシラノール基は、アミノ基やイミノ基をイオン的に吸着することができることから、シラノール基が前記疎水基により修飾された割合は、例えば、修飾反応前及び修飾後の各々のシリカに対するジ-n-ブチルアミンの吸着量を測定することにより知ることができる。疎水化処理剤の処理量は、シリカの表面積当たり1〜7mg/m2が好ましい。
外添剤の平均粒径は、トナーの帯電性や流動性、転写性の観点から、10〜250nmであり、10〜200nmが好ましく、15〜90nmがより好ましい。
外添剤の含有量は、外添剤で処理する前のトナー粒子100重量部に対して、好ましくは0.05〜5重量部であり、より好ましくは0.1〜3重量部であり、さらに好ましくは0.3〜3重量部である。
本発明のトナーは、一成分現像用トナーとして、又はキャリアと混合して二成分現像剤として用いることができる。
〔樹脂の軟化点〕
フローテスター(島津製作所、CFT-500D)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/分で加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押出する。温度に対し、フローテスターのプランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出した温度を軟化点とする。
〔樹脂のガラス転移点〕
示差走査熱量計(セイコー電子工業社製、DSC210)を用いて、試料を0.01〜0.02gをアルミパンに計量し、200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/分で0℃まで冷却したサンプルを昇温速度10℃/分で昇温し、吸熱の最高ピーク温度以下のベースラインの延長線とピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの最大傾斜を示す接線との交点の温度とする。
〔樹脂の酸価〕
JIS K0070の方法に基づき測定する。但し、測定溶媒のみJIS K0070の規定のエタノールとエーテルの混合溶媒から、アセトンとトルエンの混合溶媒(アセトン:トルエン=1:1(容量比))に変更した。
〔樹脂の水酸基価〕
JIS K0070の方法に基づき測定する。
〔離型剤の融点〕
示差走査熱量計(セイコー電子工業社製、DSC210)を用いて200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/分で0℃まで冷却したサンプルを昇温速度10℃/分で昇温し、融解熱の最大ピーク温度を融点とする。
〔外添剤の平均粒径〕
平均粒径は、個数平均粒径を指し、外添剤の走査型電子顕微鏡(SEM)写真から測定した、500個の粒子の粒径の平均値をいう。長径と短径がある場合は長径を指す。
〔トナーの体積中位粒径(D50)〕
測定機:コールターマルチサイザーII(ベックマンコールター社製)
アパチャー径:50μm
解析ソフト:コールターマルチサイザーアキュコンプ バージョン 1.19(ベックマンコールター社製)
電解液:アイソトンII(ベックマンコールター社製)
分散液:エマルゲン109P(花王社製、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、HLB:13.6)5%電解液
分散条件:分散液5mlに測定試料10mgを添加し、超音波分散機にて1分間分散させ、その後、電解液25mlを添加し、さらに、超音波分散機にて1分間分散させる。
測定条件:ビーカーに電解液100mlと分散液を加え、3万個の粒子の粒径を20秒で測定できる濃度で、3万個の粒子を測定し、その粒度分布から体積中位粒径(D50)を求める。
樹脂製造例1〔樹脂A1〜A7、A10〕
表1、2に示すアルコール成分とカルボン酸成分、及びエステル化触媒を、窒素導入管、100℃の熱水を通した分留管を装備した脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した5リットル容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、180℃で1時間保温した後に180℃から230℃まで10℃/hrで昇温し、その後230℃で10時間縮重合反応させた。さらに、反応率が80%に達した後、表1、2に示す脂肪族ヒドロキシカルボン酸化合物を添加して、160℃で反応させ、10kPaにて表1、2に記載の軟化点に達するまで反応を行って、ポリエステルを得た。
樹脂製造例2〔樹脂A8、A9〕
表2に示すアルコール成分とテレフタル酸、及びエステル化触媒を、窒素導入管、100℃の熱水を通した分留管を装備した脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した5リットル容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、180℃で1時間保温した後に180℃から230℃まで10℃/hrで昇温し、その後230℃で10時間縮重合反応させた。さらに、表2に示すフマル酸又はフェルラ酸を180℃で添加し、5時間反応させた後、反応率が80%に達した後、表2に示す脂肪族ヒドロキシカルボン酸化合物を添加して、160℃で反応させ、10kPaにて表2に記載の軟化点に達するまで反応を行って、ポリエステルを得た。
樹脂製造例3〔樹脂A11〕
表4に示す架橋剤成分以外のポリエステルの原料モノマー及びエステル化触媒を、窒素導入管、100℃の熱水を通した分留管を装備した脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した5リットル容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、160℃まで昇温した。その後、表4に示す両反応性モノマー(アクリル酸)、ビニル系樹脂の原料モノマー及び重合開始剤の混合物を滴下ロートにより1時間かけて滴下した。滴下後、160℃に保持したまま、1時間付加重合反応を熟成させた後、230℃で10時間縮重合反応させ、さらに230℃、8.0kPaにて1時間反応を行った。最後に、反応率が80%に達した後、表4に示す脂肪族ヒドロキシカルボン酸化合物を投入し、160℃、10kPaにて表4に記載の軟化点に達するまで反応を行って、ハイブリッド樹脂を得た。
樹脂製造例4〔樹脂A12〜A16〕
表2、3に示すアルコール成分、カルボン酸成分及びエステル化触媒を、窒素導入管を装備した脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した5リットル容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、230℃で10時間縮重合反応させ、さらに230℃、8.0kPaにて1時間反応を行った。さらに、反応率が80%に達した後、表2、3に示す乳酸、サリチル酸、グリセリン、無水トリメリット酸又はクエン酸を添加して、200℃で反応させ、10kPaにて表2、3に記載の軟化点に達するまで反応を行って、ポリエステルを得た。
樹脂製造例5〔樹脂A17〕
表3に示すアルコール成分とカルボン酸成分、及びエステル化触媒を、窒素導入管、100℃の熱水を通した分留管を装備した脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した5リットル容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、180℃で1時間保温した後に180℃から230℃まで10℃/hrで昇温し、その後230℃で10時間縮重合反応させて、10kPaにて表3に記載の所望の軟化点に達するまで反応を行って、ポリエステルを得た。
Figure 2011095737
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Figure 2011095737
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実施例1〜11及び比較例1〜6
表5に示す結着樹脂100重量部、負帯電性荷電制御剤「ボントロン S-34」(オリエント化学工業社製、アゾ金属化合物)1重量部、着色剤「Regal 330R」(キャボット社製、カーボンブラック)4.0重量部、及びポリプロピレンワックス「NP-105」(三井化学社製、融点:140℃)2.0重量部を、ヘンシェルミキサーを用いて混合した。得られた混合物を二軸押出機により溶融混練し、冷却後、ハンマーミルを用いて1mm程度に粗粉砕した。得られた粗粉砕物をエアージェット方式の粉砕機(IDS-2型、日本ニューマチック(株)製)により微粉砕後、分級し、体積中位粒径(D50)が7.5μmのトナー粒子を得た。
得られたトナー粒子100重量部に、外添剤として疎水性シリカ「アエロジル R-972」(日本アエロジル(株)製、平均粒径16nm、疎水化処理剤:ジメチルジクロロシラン)1.0重量部を添加し、ヘンシェルミキサーで混合することにより、トナーを得た。
試験例1〔低温定着性〕
複写機「AR-505」(シャープ(株)製)の定着機を装置外での定着が可能なように改良し、総定着圧が40kgfになるように調整した定着機(定着速度390mm/sec)で、100℃から240℃へと10℃ずつ順次上昇させながら、各温度で未定着画像の定着試験を行った。定着画像に「ユニセフセロハン」(三菱鉛筆社、幅:18mm、JISZ-1522)を貼り付け、30℃に設定した定着ローラーに通過させた後、テープを剥がした。テープを貼る前と剥がした後の光学反射密度を反射濃度計「RD-915」(マクベス社製)を用いて測定し、両者の比率(剥離後/貼付前)が最初に90%を越える定着ローラーの温度を最低定着温度とし、以下の評価基準に従って、低温定着性を評価した。結果を表5に示す。なお、定着試験に用いた紙は、シャープ(株)製のCopyBond SF-70NA(75g/m2)である。
〔評価基準〕
A:最低定着温度が150℃未満である。
B:最低定着温度が150℃以上、170℃未満である。
C:最低定着温度が170℃以上である。
試験例2〔耐ホットオフセット性〕
試験例1において、定着ロールの温度を90℃から240℃へと順次上昇させた際に、最初にオフセットが確認される温度を目視により判断し、以下の評価基準により、耐ホットオフセット性を評価した。結果を表5に示す。
〔評価基準〕
A:ホットオフセット発生温度が230℃以上
B:ホットオフセット発生温度が190℃以上、230℃未満
C:ホットオフセット発生温度が190℃未満
試験例3〔耐久性〕
「ページプレスト N-4」(カシオ計算機社製、定着:接触定着方式、現像:非磁性一成分現像方式、現像ロール径:2.3cm)にトナーを実装し、温度32℃、湿度85%の環境下にて黒化率5.5%の斜めストライプのパターンを連続して印刷した。途中、500枚ごとに黒ベタ画像を印字し、画像上のスジの有無を確認した。印刷は、画像上にスジが発生した時点で中止し、最高5000枚まで行った。画像上にスジが目視にて観察された時点までの印字枚数を、現像ロールにトナーが融着・固着したことによりスジが発生した枚数とし、以下の評価基準に従って、耐久性を評価した。即ち、スジの発生しない枚数が多いほど、トナーの耐久性が高いものと判断できる。結果を表5に示す。
〔評価基準〕
A:スジが5000枚の印字で発生せず
B:スジが2000枚以上5000枚未満の印字で発生
C:スジが2000枚未満の印字で発生
Figure 2011095737
以上の結果より、脂肪族ヒドロキシカルボン酸化合物を用いていないポリエステルを結着樹脂として含有する比較例1〜6と対比して、実施例1〜11では、低温定着性、耐ホットオフセット性及び耐久性のいずれもが良好であることが分かる。
本発明のトナー用ポリエステルは、例えば、電子写真法、静電記録法、静電印刷法等において形成される潜像の現像等に用いられるトナーの結着樹脂として好適に用いられる。

Claims (6)

  1. ヒドロキシ基数とカルボキシル基数との総和が4以上である脂肪族ヒドロキシカルボン酸化合物と、第二級炭素原子に結合した水酸基を有する脂肪族ジオールを50モル%以上含有するアルコール成分と、カルボン酸成分(ただし、前記脂肪族ヒドロキシカルボン酸化合物を含まない)とを縮重合反応させて得られる、トナー用ポリエステルであって、前記脂肪族ヒドロキシカルボン酸化合物と第二級炭素原子に結合した水酸基を有する脂肪族ジオールとのモル比(脂肪族ヒドロキシカルボン酸化合物/第二級炭素原子に結合した水酸基を有する脂肪族ジオール)が0.05〜0.8である、トナー用ポリエステル。
  2. 脂肪族ヒドロキシカルボン酸化合物が、酒石酸及びクエン酸の少なくともいずれかである、請求項1記載のトナー用ポリエステル。
  3. カルボン酸成分が、芳香族カルボン酸化合物及び/又は芳香族ヒドロキシカルボン酸化合物を含む、請求項1又は2記載のトナー用ポリエステル。
  4. 工程1:第二級炭素原子に結合した水酸基を有する脂肪族ジオールを含有するアルコール成分とカルボン酸成分とを縮重合させる工程、及び
    工程2:工程1の縮重合反応中又は縮重合反応後に、脂肪族ヒドロキシカルボン酸化合物を添加して、縮重合反応させる工程
    を含む方法により得られる、請求項1〜3いずれか記載のトナー用ポリエステル。
  5. 請求項1〜4いずれか記載のトナー用ポリエステルを含有してなるトナー用結着樹脂。
  6. 請求項5記載の結着樹脂を含有する、電子写真用トナー。
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