JP2011095332A - 光ファイバの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】細かく複雑な断面構造を有する光ファイバをより容易に製造できる光ファイバの製造方法を提供すること。
【解決手段】コアを形成するための少なくとも1つのコア形成部とクラッドを形成するためのクラッド形成部とを備える第1元材を準備する準備工程と、前記準備した第1元材を少なくとも1本含む2本以上の元材を束ねて第1束を形成して該第1束を加熱延伸し、第2元材を形成する第1延伸工程と、前記第2元材を少なくとも1本含む2本以上の元材を束ねて第2束を形成して該第2束を加熱延伸する第2延伸工程と、を含み、前記第2延伸工程において光ファイバを形成するまで前記第2束を加熱延伸する。
【選択図】図1
【解決手段】コアを形成するための少なくとも1つのコア形成部とクラッドを形成するためのクラッド形成部とを備える第1元材を準備する準備工程と、前記準備した第1元材を少なくとも1本含む2本以上の元材を束ねて第1束を形成して該第1束を加熱延伸し、第2元材を形成する第1延伸工程と、前記第2元材を少なくとも1本含む2本以上の元材を束ねて第2束を形成して該第2束を加熱延伸する第2延伸工程と、を含み、前記第2延伸工程において光ファイバを形成するまで前記第2束を加熱延伸する。
【選択図】図1
Description
本発明は、光ファイバの製造方法に関するものである。
マルチコア光ファイバ(Multi-core optical fiber、MCF)は、1本の光ファイバに複数のコアを備えた光ファイバであり、省スペースに多くのコアを設けることができる新しいタイプの光ファイバである。マルチコア光ファイバにより、大容量のイメージ伝送や空間多重伝送等の新たな光伝播の実現が期待される。特に、コア間での光干渉を抑制したタイプのマルチコア光ファイバでは、コア数が2倍になれば2倍の、3倍になれば3倍の伝送容量を実現できるため、将来の大容量伝送のキー技術となりうる。そのため、光伝送路としての使用に向けたマルチコア光ファイバの検討が盛んに行なわれている。
マルチコア光ファイバには、通常の光ファイバのように、コアにゲルマニウム(Ge)などを添加してその屈折率をクラッドの屈折率よりも高くして、コアに光を閉じ込めるタイプのものがある(以下、適宜、ソリッド型のマルチコア光ファイバと称する)。たとえば、非特許文献1では、クラッドに対する比屈折率差が互いにわずかに異なるコアを外径125μmのクラッド内に配置した、ソリッド型のマルチコア光ファイバが開示されている。一方、マルチコア光ファイバには、ホーリーファイバ(Holey Fiber、HF)型と称されるタイプのものがある。ホーリーファイバとは、クラッドに空孔を規則的に配列し、空孔構造を形成することにより、クラッドの平均屈折率を下げ、全反射の原理を用いて、光の閉じ込め・伝播を実現する光ファイバである。ホーリーファイバでは、屈折率制御に空孔を用いることで、従来の光ファイバでは実現不可能なEndlessly Single Mode(ESM)や短波長での異常分散等の特殊な特性が実現可能である。たとえば、非特許文献2では、500nmから1620nmにわたる波長帯域において100kmにおよぶ光伝送が可能なHF型のマルチコア光ファイバが開示されている。
ここで、マルチコア光ファイバの製造方法としては、従来ホーリーファイバ等の製造方法として用いられているスタック&ドロー法、ドリル法などがある。スタック&ドロー法とは、コアを形成するための中実のガラスロッドの周囲に、HF型の場合は空孔を有するクラッドを形成するため中空のガラスキャピラリー管を配置し、ソリッド型の場合は屈折率がコアよりも低いクラッドを形成するためのガラスロッドを配置し、これらをジャケット管に挿入したものを加熱延伸して光ファイバ母材を形成するというものである。また、ドリル法とは、ガラスからなるロッド状の元材にドリルで空孔を形成し、HF型の場合はこの空孔をクラッドに配列すべき空孔とし、ソリッド型の場合はこの空孔にコアを形成するためのガラスロッドを挿入して、光ファイバ母材を形成するというものである。
M.Koshiba et al., IEICE Electron Express 2009, Vol.6, No.2, pp.98-103
K.Imamura et al.,OFC2009-OTuC3
しかしながら、上述したスタック&ドロー法、ドリル法等の方法では、コアの数が増加し、その断面構造が細かく複雑になるにつれて、マルチコア光ファイバの製造が急激に困難になるという問題があった。また、コアが1つのホーリーファイバを製造する場合にも、空孔の数が増加し、その断面構造が細かく複雑になるにつれて、その製造が急激に困難になるという問題があった。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、細かく複雑な断面構造を有する光ファイバをより容易に製造できる光ファイバの製造方法を提供することを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る光ファイバの製造方法は、コアを形成するための少なくとも1つのコア形成部とクラッドを形成するためのクラッド形成部とを備える第1元材を準備する準備工程と、前記準備した第1元材を少なくとも1本含む2本以上の元材を束ねて第1束を形成して該第1束を加熱延伸し、第2元材を形成する第1延伸工程と、前記第2元材を少なくとも1本含む2本以上の元材を束ねて第2束を形成して該第2束を加熱延伸する第2延伸工程と、を含み、前記第2延伸工程において光ファイバを形成するまで前記第2元材の束を加熱延伸することを特徴とする。
また、本発明に係る光ファイバの製造方法は、上記の発明において、前記第2延伸工程を2回以上行い、最後の第2延伸工程において前記光ファイバを形成するまで前記第2束を加熱延伸することを特徴とする。
また、本発明に係る光ファイバの製造方法は、上記の発明において、前記第1延伸工程または第2延伸工程において、前記第1束または第2束をジャケット管内に挿入して加熱延伸を行なうことを特徴とする。
また、本発明に係る光ファイバの製造方法は、上記の発明において、前記ジャケット管は前記クラッドと同じ材質からなることを特徴とする。
また、本発明に係る光ファイバの製造方法は、上記の発明において、前記第1元材または第2元材の外縁の一部領域を除去する除去工程をさらに含むことを特徴とする。
また、本発明に係る光ファイバの製造方法は、上記の発明において、前記第1元材または第2元材の直径を400μm以上とすることを特徴とする。
また、本発明に係る光ファイバの製造方法は、上記の発明において、前記準備工程において、前記コア形成部の屈折率が前記クラッド形成部の屈折率よりも高い第1元材を準備することを特徴とする。
また、本発明に係る光ファイバの製造方法は、上記の発明において、前記準備工程において、前記クラッド形成部に空孔構造を有する第1元材を準備することを特徴とする。
本発明によれば、取り扱い性のよいサイズの元材を用いて製造を行なえるため、細かく複雑な断面構造を有する光ファイバをより容易に製造できるという効果を奏する。
以下に、図面を参照して本発明に係る光ファイバの製造方法の実施の形態を詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、各図面において、同一または対応する構成要素には適宜同一の符号を付している。
(実施の形態1)
はじめに、本発明の実施の形態1に係る光ファイバの製造方法について説明する。本実施の形態1は、マルチコア光ファイバの製造方法である。図1は、本実施の形態1に係る製造方法によって製造するマルチコア光ファイバの模式的な断面図である。なお、図1においては、その断面の一部拡大図も示している。図1に示すように、このマルチコア光ファイバ1は、10,000個のコア1aと、コア1aの外周に形成されたクラッド1bとを備えている。このマルチコア光ファイバ1は、ソリッド型のものであり、各コア1aの屈折率は、クラッド1bの屈折率よりも高くなっている。また、コア1aは、たとえばGeを添加した石英ガラスからなり、クラッド1bは、たとえば屈折率調整用のドーパントを含まない純石英ガラス、またはフッ素(F)を添加した石英ガラス等からなる。また、コア1aの直径は、いずれも約10μmであり、クラッド1bに対する比屈折率差は、いずれも0.35%程度である。なお、非特許文献1に記載のように、このマルチコア光ファイバ1において、コア1aの比屈折率を互いにわずかに異ならせる(すなわち、異種のコア1aを用いる)場合は、コア1a同士の中心間距離を例えば約50μm(少なくとも40μm)だけ離隔させると、各コア1aを伝播する光の干渉が抑制され、クロストークを−30dB以下にできる。一方、比屈折率差を互いに同じとした同種のコア1aを用いる場合は、コア1a同士の中心間距離を少なくとも70μmだけ(長手方向における中心間距離の変動等を考慮すると、例えば80μmだけ)離隔させると、各コア1aを伝播する光の干渉が抑制され、クロストークを−30dB以下にできる。
はじめに、本発明の実施の形態1に係る光ファイバの製造方法について説明する。本実施の形態1は、マルチコア光ファイバの製造方法である。図1は、本実施の形態1に係る製造方法によって製造するマルチコア光ファイバの模式的な断面図である。なお、図1においては、その断面の一部拡大図も示している。図1に示すように、このマルチコア光ファイバ1は、10,000個のコア1aと、コア1aの外周に形成されたクラッド1bとを備えている。このマルチコア光ファイバ1は、ソリッド型のものであり、各コア1aの屈折率は、クラッド1bの屈折率よりも高くなっている。また、コア1aは、たとえばGeを添加した石英ガラスからなり、クラッド1bは、たとえば屈折率調整用のドーパントを含まない純石英ガラス、またはフッ素(F)を添加した石英ガラス等からなる。また、コア1aの直径は、いずれも約10μmであり、クラッド1bに対する比屈折率差は、いずれも0.35%程度である。なお、非特許文献1に記載のように、このマルチコア光ファイバ1において、コア1aの比屈折率を互いにわずかに異ならせる(すなわち、異種のコア1aを用いる)場合は、コア1a同士の中心間距離を例えば約50μm(少なくとも40μm)だけ離隔させると、各コア1aを伝播する光の干渉が抑制され、クロストークを−30dB以下にできる。一方、比屈折率差を互いに同じとした同種のコア1aを用いる場合は、コア1a同士の中心間距離を少なくとも70μmだけ(長手方向における中心間距離の変動等を考慮すると、例えば80μmだけ)離隔させると、各コア1aを伝播する光の干渉が抑制され、クロストークを−30dB以下にできる。
このマルチコア光ファイバ1は、10,000個のコア1aを備えており、今までに無いきわめて大容量の光伝送を実現できる可能性を有するものであるが、以下に説明する本実施の形態1に係る製造方法によって、従来よりも容易に製造することができる。本実施の形態1に係る製造方法は、準備工程、第1延伸工程、第2延伸工程を含んでいる。以下では、異種のコア1aを用いるとともに、コア1a同士の中心間距離を少なくとも50μmとする場合、および同種のコア1aを用いるとともに、コア1a同士の中心間距離を少なくとも80μmとする場合を例にとって、説明を行う。
はじめに、準備工程について説明する。図2は、準備工程を示す図である。まず、VAD法やMCVD法等の周知の方法を用いて、通常のソリッド型の光ファイバを製造するのと同様にして光ファイバ母材2を形成する。この光ファイバ母材2は、図2に断面を示すように、コア形成部2aと、コア形成部2aの外周に形成されたクラッド形成部2bとを備えるロッド状のものである。コア形成部2aは、コア1aを形成するためのものであり、コア1aと同じ材質からなる。一方、クラッド形成部2bは、クラッド1bを形成するためのものであり、クラッド1bと同じ材質からなる。また、コア形成部2aとクラッド形成部2bとの直径比は1:5または1:8とすると、加熱延伸によりコア形成部2aを最終的に直径約10μmのコア1aにした場合に、隣接するコア1a同士の中心間距離が約50μmまたは約80μmとなる。このように、隣接するコア1a同士の中心間距離は、コア形成部2aとクラッド形成部2bとの直径比により調整できる。なお、異種のコア1aを用いたマルチコア光ファイバ1を製造する場合には、互いに屈折率が異なるコア形成部2aを備えた異種の光ファイバ母材2を複数種類(たとえば3種類)形成する。
つぎに、この同種または異種の光ファイバ母材2を加熱延伸して第1元材3を形成する。この加熱延伸はたとえば光ファイバの製造に用いる線引き装置やガラス延伸装置を用いて実施することができる。このとき、後の工程で束ねやすいように第1元材3の直径をたとえば1.0mm程度とする。この第1元材3は、図2に断面を示すように、コア形成部3aとクラッド形成部3bとを備えたものとなる。コア形成部3aとクラッド形成部3bとの直径比は、光ファイバ母材2におけるコア形成部2aとクラッド形成部2bとの直径比とほぼ同じとなる。つぎに、この第1元材3を、束ねやすい長さ、たとえば500mmに切り分けて、多数の同種または異種の第1元材3を準備する。
つぎに、第1延伸工程について説明する。図3は、第1延伸工程を示す図である。まず、図3に示すように、準備工程において準備した第1元材3を100本束ねてジャケット管4a内に挿入し、元材の第1束4を形成する。なお、この100本の第1元材3は、同種のコア1aを用いたマルチコア光ファイバ1を製造する場合には、同種の100本の第1元材3である。一方、異種のコア1aを用いたマルチコア光ファイバ1を製造する場合は、異種の第1元材3から適宜複数本づつ選択した第1元材3である。このジャケット管4aは、たとえばクラッド1bと同じ材質からなるものであり、その内径は、100本の第1元材3を挿入できる程度の値とする。なお、図3では六方最密構造(三角格子状)に配置した90本の第1元材3のみを示しているが、第1元材3とジャケット管4aとの間の隙間に残りの10本の第1元材3を挿入する。また、第1元材3とジャケット管4aとの間の残りの隙間には、たとえばクラッド1bと同じ材質からなるロッド状の充填部材を適宜挿入し、隙間を充填する。つぎに、この第1束4を加熱延伸し、第2元材5を形成する。このとき、後の工程で束ねやすいように第2元材5の直径をたとえば1.0mm程度とする。この第2元材5は、100個のコア形成部5aと、その外周に形成されたクラッド形成部5bとを備え、コアが100個の通常のマルチコア光ファイバと同様の断面構造を有するものとなる。つぎに、この第2元材5を、束ねやすい長さ、たとえば500mmに切り分けて、多数の第2元材5を準備する。
つぎに、第2延伸工程について説明するが、この工程は第1延伸工程とほぼ同様である。図4は、第2延伸工程を示す図である。まず、図4に示すように、第1延伸工程において準備した第2元材5から適宜選択した100本を束ねてジャケット管6a内に挿入し、元材の第2束6を形成する。その結果、この第2束6には、10,000個のコア形成部5aが含まれることとなる。なお、ジャケット管6aも、たとえばクラッド1bと同じ材質からなるものであり、その内径は、100本の第2元材5を挿入できる程度の値とする。なお、図4では三角格子状に配置した90本の第2元材5のみを示しているが、第2元材5とジャケット管6aとの間の隙間に残りの10本の第2元材5を挿入する。また第2元材5とジャケット管6aとの間の残りの隙間には、たとえばクラッド1bと同じ材質からなるロッド状の充填部材を適宜挿入し、隙間を充填する。
つぎに、この第2束6を、コア形成部5aの直径が約10μmとなるまで加熱延伸する。これによって、直径が約10μmであり互いに所望の中心間距離で離隔した10,000個のコア1aを備えるマルチコア光ファイバ1が形成される。このとき、マルチコア光ファイバ1の直径は6mm程度となる。
ここで、従来のスタック&ドロー法を用いて10,000個のコアを備えるマルチコア光ファイバを製造しようとすると、限られた内径のジャケット管内に、コア形成用の元材を10,000本も挿入しなければならないので、元材の直径をきわめて細くしなければならない。その結果、元材の破損、折損等が生じやすくなり、取り扱い性が悪くなる。また、破損等を考慮すると、元材が細いとあまり長くできないので、延伸すべき元材の束を長くすることもできず、一度に製造できるマルチコア光ファイバの長さも長くできなくなる。また、コア形成用の元材の数が多いと、それらのジャケット管内での位置をすべて所望の位置に配置すること、またその配置を維持することが困難となり、コアの位置ずれが生じやすくなるため、コア同士の中心間距離を所望の値にすることも困難となる。
これに対して、本実施の形態1に係る製造方法によれば、元材を2本以上束ねて加熱延伸する工程を2回行い、マルチコア光ファイバ1を形成するので、各工程において取り扱い性のよいサイズの元材を用いて製造を行なえるため、10,000個のような多数のコアを備えるマルチコア光ファイバをより容易に製造できる。また、これとともに、コア1aを所望の配置にすることも容易であり、かつ一度に製造できるマルチコア光ファイバ1の長さを長くすることができる。
(実施の形態2)
つぎに、本発明の実施の形態2に係るマルチコア光ファイバの製造方法について説明する。図5は、本実施の形態2に係る製造方法によって製造するマルチコア光ファイバの模式的な断面図である。なお、図5においては、その断面の一部拡大図も示している。図5に示すように、このマルチコア光ファイバ7は、三角格子状に配列した10,000個のコア7aと、コア7aの外周に形成されるとともに、空孔7cが形成された空孔構造を有するクラッド7bとを備えているHF型のものである。このマルチコア光ファイバ7は、コア7aおよびクラッド7bが同じ材質、たとえば純石英ガラスからなるが、三角格子状に配列した空孔7cによってクラッド7bの平均屈折率を減少させることによって、各コア7aへの光閉じ込めが実現されている。また、空孔7cの空孔径dは2.15μmであり、空孔7cが形成する三角格子の格子定数Λは5μmである。したがって、d/Λは0.43であり、ESM特性が実現されている。また、コア7a同士の中心間距離は、いずれも少なくとも約50μmだけ離隔しているので、非特許文献2に開示されるように、各コア7aを伝播する光の干渉が、クロストークとして1kmで−60dB以下に抑制される。
つぎに、本発明の実施の形態2に係るマルチコア光ファイバの製造方法について説明する。図5は、本実施の形態2に係る製造方法によって製造するマルチコア光ファイバの模式的な断面図である。なお、図5においては、その断面の一部拡大図も示している。図5に示すように、このマルチコア光ファイバ7は、三角格子状に配列した10,000個のコア7aと、コア7aの外周に形成されるとともに、空孔7cが形成された空孔構造を有するクラッド7bとを備えているHF型のものである。このマルチコア光ファイバ7は、コア7aおよびクラッド7bが同じ材質、たとえば純石英ガラスからなるが、三角格子状に配列した空孔7cによってクラッド7bの平均屈折率を減少させることによって、各コア7aへの光閉じ込めが実現されている。また、空孔7cの空孔径dは2.15μmであり、空孔7cが形成する三角格子の格子定数Λは5μmである。したがって、d/Λは0.43であり、ESM特性が実現されている。また、コア7a同士の中心間距離は、いずれも少なくとも約50μmだけ離隔しているので、非特許文献2に開示されるように、各コア7aを伝播する光の干渉が、クロストークとして1kmで−60dB以下に抑制される。
このマルチコア光ファイバ7は、10,000個のコア7aを備えており、ESM特性をも有するので、実施の形態1のものよりもさらに大容量の光伝送を実現するものであるが、以下に説明する本実施の形態2に係る製造方法によって、従来よりも容易に製造することができる。本実施の形態2に係る製造方法は、準備工程、除去工程、第1延伸工程、第2延伸工程を含んでいる。
はじめに、本実施の形態2に係る製造方法における準備工程について説明する。図6は、準備工程を示す図である。この準備工程においては、通常のスタック&ドロー法を用いて第1元材を準備する。すなわち、図6に示すように、コア7aを形成するためのロッド状のコア形成部材8aの周囲に、空孔7cを有するクラッド7bを形成するための中空のキャピラリー管である90本のクラッド形成部材8bを三角格子状に配置して束ねた状態としたものをジャケット管8c内に挿入し、母材8を形成する。なお、コア形成部材8aおよびクラッド形成部材8bの直径は、たとえばそれぞれ束ねやすい1mm程度とする。また、クラッド形成部材8bとジャケット管8cとの間には、たとえばクラッド7bと同じ材質からなるロッド状の充填部材を適宜挿入し、隙間を充填する。つぎに、この母材8を加熱延伸し、第1元材9を形成する。このとき、後の工程で束ねやすいように第1元材9の直径をたとえば1.0mm程度とする。この第1元材9は、コア形成部9aと、コア形成部9aの外周に形成されるとともに、三角格子状に配列した90個の空孔9cが形成された空孔構造を有するクラッド形成部9bとを備えているものであり、HFと同様の断面構造を有するものとなる。つぎに、この第1元材9を、束ねやすい長さに切り分けて、多数の第1元材9を準備する。
つぎに、除去工程について説明する。図7は、除去工程を示す図である。この除去工程においては、たとえばフッ酸等のエッチング液を用いたエッチングや研磨等によって、第1元材9のクラッド形成部9bの外縁の一部領域9dを除去する。これによって、第1元材9は、より直径が小さい第1元材10となる。
つぎに、第1延伸工程について説明する。図8は、第1延伸工程を示す図である。まず、図8に示すように、除去工程を施した100本の第1元材10を束ねてジャケット管11a内に挿入し、第1束11を形成する。このジャケット管11aは、たとえばクラッド7bと同じ材質からなるものである。また、第1元材10とジャケット管11aとの間には、たとえばクラッド7bと同じ材質からなるロッド状の充填部材を適宜挿入し、隙間を充填する。なお、第1元材10は、除去工程によってその直径が第1元材9よりも小さくなっているので、より内径が小さいジャケット管11aを用いることができる。
つぎに、この第1束11を加熱延伸し、第2元材12を形成する。このとき、後の工程で束ねやすいように第2元材12の直径をたとえば1.0mm程度とする。この第2元材12は、100個のコアを備えたHF型のマルチコア光ファイバと同様の断面構造を有するものとなる。つぎに、この第2元材12を、束ねやすい長さに切り分けて、多数の第2元材12を準備する。そして、これら第2元材12を100本束ねてジャケット管に挿入し、さらに第1延伸工程と同様の第2延伸工程を行なうことによって、10,000個のコア7aを備えるマルチコア光ファイバ7が形成される。
本実施の形態2に係る製造方法によれば、実施の形態1の場合と同様に、各工程において取り扱い性のよいサイズの元材を用いて製造を行なえるため、10,000個のような多数のコアを備えるマルチコア光ファイバをより容易に製造でき、かつ一度に製造できるマルチコア光ファイバ1の長さを長くすることができる。
なお、本実施の形態2では、準備工程においてスタック&ドロー法を用いて第1元材9を準備しているが、従来HFを製造する際に用いられるドリル法やゾルゲル法を用いてもよい。
また、本実施の形態2では、除去工程を第1元材9に対してのみ行なっているが、第2元材12に対しても行なってもよいし、第2元材12に対してのみ行なってもよい。また、実施の形態1においても、第1元材3および/または第2元材5に対して除去工程を行なってもよい。
また、たとえば上記実施の形態2の第1延伸工程において、第1元材9を束ねると、第1元材9の外縁のガラス部分は他の第1元材9の空孔によって囲まれることとなる。その結果、最終的に製造したマルチコア光ファイバにおいてもこのガラス部分が空孔に囲まれて、本来のコアのように光を伝播する機能を有する場合がある。この場合、マルチコア光ファイバのコア間のクロストークを劣化させたり、コアを伝播する光のパワーがガラス部分に吸収されてしまったりするおそれがある。しかしながら、本実施の形態1では、除去工程において第1元材9の外縁の一部領域9dを除去した第1元材10を用いているので、このガラス部分の断面積が小さくなっており、上記のおそれは低減される。なお、除去工程において、第1元材9における空孔9cの配置した六角形の領域に沿った外形状になるようにして、ガラス部分の断面積をより小さくするとより好ましい。
また、実施の形態1、2の各延伸工程において、最終的に形成するマルチコア光ファイバのクラッドの屈折率とは屈折率が異なるようなジャケット管を使用する場合、このジャケット管の残部がマルチコア光ファイバの光伝播特性に悪影響を与える場合があるの。その場合には、延伸工程後に除去工程を行ない、このジャケット管に相当する外縁の領域を除去することが好ましい。
また、実施の形態1、2の各工程において、各元材の直径は、破損等が起こりにくい取り扱いやすい直径であれば特に限定されないが、たとえば400μm以上であると取り扱いやすく好ましい。
また、上記実施の形態1、2では、製造するマルチコア光ファイバのコアや空孔の配列は三角格子状であるが、他の配列のものを製造することもできる。また、コアの数についても、10,000個に限られず、束ねる第1または第2材の数についても特に限定されない。また、上記実施の形態1、2では、第2延伸工程を1回行なうものであるが、第2延伸工程を2回以上行なって、最後の第2延伸工程においてマルチコア光ファイバを形成するまで第2元材の束を加熱延伸するようにすれば、より多数のコアを備えるマルチコア光ファイバを容易に製造できる。
また、上記実施の形態1、2では、第1元材は1つのコア形成部を備えるものであるが、複数のコア形成部を備えてもよい。また、上記実施の形態1、2では、第1束を構成しているのは全て第1元材であり、第2束を構成しているのは全て第2元材である。しかしながら、本発明はこれに限らず、第1束または第2束に含める第1元材または第2元材は少なくとも1本であればよい。
以下、具体例により説明する。たとえば、実施の形態2のようなコア形成部と90個の空孔とを有する1本の第1元材と、第1元材においてコア形成部が無くコア形成部の位置に空孔が形成されていて91個の空孔を有する構造の99本の元材とを準備する。つぎに、これらを束ねて第1束とし、この第1束を加熱延伸して第2元材を形成する。この第2元材は1つのコア形成部と、90+91×99=9099個の空孔とを有するクラッド形成部とを備えるものとなる。
さらに、この第2元材を100本束ねて第2束を形成し、これを加熱延伸してマルチコア光ファイバを製造すると、100個のコアを備え、各コアが少なくとも9099個の空孔で囲まれたHF型のマルチコア光ファイバを得ることができる。また、1本の第2元材と、この第2元材においてコア形成部が無くコア形成部の位置に空孔が形成されていて9100個の空孔を有する構造の99本の元材とを束ねて第2束を形成し、これを加熱延伸して光ファイバを製造すると、1個のコアが9099+9100×99=909999個の空孔で囲まれたHF型の光ファイバを得ることができる。このようなきわめて多数の空孔を有するコアが1個の光ファイバまたはマルチコア光ファイバは、従来の方法により製造することはきわめて困難であるが、本発明によればきわめて容易に製造することができる。
また、たとえば第1束を全て第1元材で構成すると、コア形成部同士の中心間距離はいずれのコア形成部についても等距離となるが、この第1束の第1元材のいずれかをコア形成部の無い元材に置き換えれば、コア形成部同士の中心間距離を大きくすることができる。このように第1元材の一部を他の元材に置き換えた第1束を用いれば、コア同士の中心間距離が不等距離なマルチコア光ファイバを容易に製造することができる。
また、上記実施の形態1、2では、各延伸工程において、各元材をジャケット管に挿入して加熱延伸をしているが、ジャケット管に挿入しなくてもよい。図9は、延伸工程の他の一例を示す図である。図9に示すように、たとえば実施の形態1に係る製造方法の第1延伸工程に置き換えて、第1元材3を束ねてその両端を把持具13a、13bによって把持して、ヒータ14により第1元材3の束の側面を加熱しながら、把持具13a、13bをそれぞれ矢印A1、A2の方向に互いに距離が離れるように変位させて、第1元材3の束を延伸するようにしてもよい。
1、7 マルチコア光ファイバ
1a、7a コア
1b、7b クラッド
2 光ファイバ母材
2a、3a、5a、9a コア形成部
2b、3b、5b、9b クラッド形成部
3、9、10 第1元材
4、11 第1束
4a、6a、8c、11a ジャケット管
5、12 第2元材
6 第2束
7c、9c 空孔
8 母材
8a コア形成部材
8b クラッド形成部材
9d 一部領域
13a、13b 把持具
14 ヒータ
1a、7a コア
1b、7b クラッド
2 光ファイバ母材
2a、3a、5a、9a コア形成部
2b、3b、5b、9b クラッド形成部
3、9、10 第1元材
4、11 第1束
4a、6a、8c、11a ジャケット管
5、12 第2元材
6 第2束
7c、9c 空孔
8 母材
8a コア形成部材
8b クラッド形成部材
9d 一部領域
13a、13b 把持具
14 ヒータ
Claims (8)
- コアを形成するための少なくとも1つのコア形成部とクラッドを形成するためのクラッド形成部とを備える第1元材を準備する準備工程と、
前記準備した第1元材を少なくとも1本含む2本以上の元材を束ねて第1束を形成して該第1束を加熱延伸し、第2元材を形成する第1延伸工程と、
前記第2元材を少なくとも1本含む2本以上の元材を束ねて第2束を形成して該第2束を加熱延伸する第2延伸工程と、
を含み、前記第2延伸工程において光ファイバを形成するまで前記第2束を加熱延伸することを特徴とする光ファイバの製造方法。 - 前記第2延伸工程を2回以上行い、最後の第2延伸工程において前記光ファイバを形成するまで前記第2束を加熱延伸することを特徴とする請求項1に記載の光ファイバの製造方法。
- 前記第1延伸工程または第2延伸工程において、前記第1束または第2束をジャケット管内に挿入して加熱延伸を行なうことを特徴とする請求項1または2に記載の光ファイバの製造方法。
- 前記ジャケット管は前記クラッドと同じ材質からなることを特徴とする請求項3に記載の光ファイバの製造方法。
- 前記第1元材または第2元材の外縁の一部領域を除去する除去工程をさらに含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の光ファイバの製造方法。
- 前記第1元材または第2元材の直径を400μm以上とすることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の光ファイバの製造方法。
- 前記準備工程において、前記コア形成部の屈折率が前記クラッド形成部の屈折率よりも高い第1元材を準備することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載の光ファイバの製造方法。
- 前記準備工程において、前記クラッド形成部に空孔構造を有する第1元材を準備することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載の光ファイバの製造方法。
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