JP2011094128A - ポリアミド微粒子の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】粒径が任意に制御でき、かつ粒度分布が狭く、工業的な実施が容易である、新規なポリアミド微粒子の製造方法を提供する。
【解決手段】 ポリアミドとポリマーBと芳香族アルコールを含む有機溶媒とを溶解混合したときに、ポリアミドを主成分とする溶液相と、ポリマーBを主成分とする溶液相の2相に相分離する系において、エマルジョンを形成させた後に、ポリアミドの貧溶媒を接触させることにより、ポリアミドを析出させる。析出させたポリアミド微粒子は、固液分離−洗浄−乾燥を行うことで、ポリアミド微粒子として回収する。本手法によれば、粒子径分布の狭いポリアミド微粒子を簡便に合成することができ、また従来法に比べ粒径制御が非常に容易である。
【選択図】なし
【解決手段】 ポリアミドとポリマーBと芳香族アルコールを含む有機溶媒とを溶解混合したときに、ポリアミドを主成分とする溶液相と、ポリマーBを主成分とする溶液相の2相に相分離する系において、エマルジョンを形成させた後に、ポリアミドの貧溶媒を接触させることにより、ポリアミドを析出させる。析出させたポリアミド微粒子は、固液分離−洗浄−乾燥を行うことで、ポリアミド微粒子として回収する。本手法によれば、粒子径分布の狭いポリアミド微粒子を簡便に合成することができ、また従来法に比べ粒径制御が非常に容易である。
【選択図】なし
Description
本発明は、ポリアミド微粒子の新規な製造方法に関し、更に詳しくは従来法に比べ、任意に粒径制御ができ、粒子径分布が小さく、かつ工業的に有利なポリアミド微粒子の製造方法に関する。
ポリマー微粒子とは、ポリマーからなる微粒子のことであり、一般的にその直径は、数十nmから、数百μmの大きさまでの多岐の範囲にわたる微粒子のことである。ポリマー微粒子は、フィルム、繊維、射出成形品、押出成形品などのポリマー成形品とは異なり、比表面積が大きい点や、微粒子の構造を利用することで各種材料の改質、改良に用いられている。主要用途としては、化粧品の改質剤、トナー用添加剤、塗料などのレオロジー改質剤、医療用診断検査剤、自動車材料、建築材料などの成形品への機械特性改良剤などが挙げられる。特に、近年では、ポリマー微粒子の微粒子構造を活かし、レーザー加工技術と組み合わせてオーダーメードの成形品を作る手法であるラピッドプロトタイピング、ラピッドマニュファクチャリングの原料として用いられるようになってきている。
近年では、ポリマー微粒子のうち、耐熱性、耐溶剤性が高いことや、吸湿特性、吸油特性が良好であることからポリアミド微粒子の開発が行われており、化粧品ファンデーション、エポキシ樹脂の改質材、ラピッドプロトタイピング用原料などに広く用いられている。
これらポリアミド微粒子の製造方法の例として、溶融混練を行った後に媒体成分を除去することに微粒子を得る方法(特許文献1〜2)、フェノール等の溶媒に溶解させ、貧溶媒を加えたり、温度を降下させたりして、粒子を析出させる方法(特許文献3〜5、非特許文献1、2)、環状ラクタムモノマーを媒体中で重合させながら微粒子状に析出させる方法(特許文献6〜9)やポリアミド溶液を噴霧乾燥する方法などが挙げられる。
ジャーナル・オブ・アプライド・ポリマーサイエンス 45巻 1783−1788ページ (1992年発刊)
ジャーナル・オブ・アプライド・ポリマーサイエンス 54巻 1363−1369ページ (1994年発刊)
しかし、これら従来の方法には、それぞれ以下のような課題がある。溶融混練による方法は、ポリアミドを球状化させるために、混練温度をポリアミドの融点以上に上げる必要があり、概して、通常200℃以上の混練温度を必要とする。このため、工業的にはよりエネルギー負荷が低い方法が望まれている。
重合させながらの微粒子状に析出させる方法は、アルカリ金属による環状ラクタムの開環重合であることから、アルカリ金属使用における注意として、反応系への水の混入を防ぐことが必要となり、煩雑なプロセスである。
また微粒子化できるポリアミドは、環状ラクタムを出発原料とするものに限定されるプロセスである。最近では、ナイロン塩のエマルジョンを作成し、重合させながら粒子化する方法が考案されているが、系内からの脱水手法が煩雑であるのと同時に、粒度分布は広いなどの問題点がある。
フェノール等の溶媒にポリアミドを溶解させ、ポリアミドの非溶媒を加えたり、温度変化させたりすることによる微粒子析出法では、微粒子化の成長の原理が、ポリアミドの結晶核形成−成長であるため、粒子径制御を行うことは難しい手法である。
また、温度変化に伴う溶解度差を利用した場合においても、同様に粒径の制御の自由度が低く、望みの粒径を得ることは難しいプロセスである。
特にナイロン6などは、原材料が非常に安価であるため、ナイロン6を母材とする微粒子は、化粧品用ファンデーション用への応用が強く期待されているが、肌への質感がよい微粒子を得るためには、粒子径が制御され、粒度分布が狭い微粒子でなければならず、また使用状態によっては、表面形状が平滑なものがよい。これら観点から、任意の粒子径に制御でき、望ましくは微粒子表面が平滑なポリアミド微粒子の簡便かつ安価な製法の開発が望まれていた。特に、これらの技術は結晶性ポリアミドについては、難しい技術である。
またフィルムなどの薄膜状構造体に屈折率制御や、靭性改良の目的で添加する用途では、フィルム厚みより過度に粒子径の大きい微粒子は、フィルムの異物になるためフィルム厚みより薄くする必要があり、所望の粒子径に制御できるようにする技術が望まれている。
そこで、本発明者らが鋭意検討した結果、従来法に比べ粒径が任意に制御でき、得られる微粒子の粒度分布が狭く、且つ工業的に実施容易なポリアミド粒子を製造する方法を見出した。
即ち本発明は、
(I)ポリマーAとポリマーBと有機溶媒とを溶解混合したときに、ポリマーAを主成分とする溶液相と、ポリマーBを主成分とする溶液相の2相に相分離する系において、エマルジョンを形成させた後、ポリマーAの貧溶媒を接触させることにより、ポリマーAを析出させることを特徴とするポリマー微粒子の製造方法において、下記条件を満たすことを特徴とするポリアミド微粒子の製造方法、
(1)ポリマーAが、ポリアミドであること
(2)有機溶媒が芳香族アルコールを含む有機溶媒であること、
(II)ポリアミドが、融解熱量が 1J/g以上である結晶性ポリアミドであることを特徴とする(I)記載のポリマー微粒子の製造方法、
(III)芳香族アルコールが、フェノール、クレゾール、クロロフェノール類から選択されるものであることを特徴とする(I)または(II)に記載のポリマー微粒子の製造方法、
(IV)ポリアミドが、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12から選択されるものであることを特徴とする(I)〜(III)記載のポリマー微粒子の製造方法、
(V)ポリマーBが、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ヒドロキシアルキルセルロースから選択されるものであることを特徴とする(I)〜(IV)記載のポリマー微粒子の製造方法、
である。
(I)ポリマーAとポリマーBと有機溶媒とを溶解混合したときに、ポリマーAを主成分とする溶液相と、ポリマーBを主成分とする溶液相の2相に相分離する系において、エマルジョンを形成させた後、ポリマーAの貧溶媒を接触させることにより、ポリマーAを析出させることを特徴とするポリマー微粒子の製造方法において、下記条件を満たすことを特徴とするポリアミド微粒子の製造方法、
(1)ポリマーAが、ポリアミドであること
(2)有機溶媒が芳香族アルコールを含む有機溶媒であること、
(II)ポリアミドが、融解熱量が 1J/g以上である結晶性ポリアミドであることを特徴とする(I)記載のポリマー微粒子の製造方法、
(III)芳香族アルコールが、フェノール、クレゾール、クロロフェノール類から選択されるものであることを特徴とする(I)または(II)に記載のポリマー微粒子の製造方法、
(IV)ポリアミドが、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12から選択されるものであることを特徴とする(I)〜(III)記載のポリマー微粒子の製造方法、
(V)ポリマーBが、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ヒドロキシアルキルセルロースから選択されるものであることを特徴とする(I)〜(IV)記載のポリマー微粒子の製造方法、
である。
本発明を用いることにより、従来のプロセスに比べ、非常に簡便に、且つ粒子径分布の小さいポリアミド微粒子を入手することが可能になる。本発明で得られるポリアミド微粒子は、粒子径分布が小さいことから、質感が向上した化粧品ファンデーションや、フィルムなど、厚みが精密制御されたポリマー材料への添加剤などに好適に用いることができるようになる。
本発明の内容につき、以下詳細に説明する。
本発明は、ポリアミドであるポリマーAとポリマーBと芳香族アルコールを含む有機溶媒を溶解混合させ、ポリマーAを主成分とする溶液相(以下、ポリマーA溶液相と称することもある)と、ポリマーBを主成分とする溶液相(以下、ポリマーB溶液相と称することもある)の2相に相分離する系において、エマルジョンを形成させた後、ポリマーAの貧溶媒を接触させることにより、ポリマーAを析出させることを特徴とするポリマー微粒子の製造方法である。
上記において、「ポリマーAとポリマーBと有機溶媒を溶解混合させ、ポリマーAを主成分とする溶液相と、ポリマーBを主成分とする溶液相の2相に相分離する系」とは、ポリマーAとポリマーBと有機溶媒を混合したときに、ポリマーAを主として含む溶液相と、ポリマーBを主として含む溶液相の2相に分かれる系をいう。
このような相分離をする系を用いることにより、相分離する条件下で混合して、乳化させ、エマルジョンを形成させることができる。
なお、上記において、ポリマーが溶解するかどうかについては、本発明を実施する温度、即ちポリマーAとポリマーBを溶解混合して、2相分離させる際の温度において、有機溶媒に対し1質量%超溶解するかどうかで判別する。
このエマルジョンは、ポリマーA溶液相が分散相に、ポリマーB溶液相が連続相になり、そしてこのエマルジョンに対し、ポリマーAの貧溶媒を接触させることにより、エマルジョン中のポリマーA溶液相から、ポリマーAが析出し、ポリマーAで構成されるポリマー微粒子を得ることが出来る。
本発明の製造方法においては、ポリマーA、ポリマーB、これらを溶解する有機溶媒およびポリマーAの貧溶媒を用いるが、ポリマーA、ポリマーB、有機溶媒について、以下に詳述する。
本発明におけるポリマーAとは、ポリアミドであり、ポリアミドとは、分子内にアミド結合を有する重合体のことを指す。
ポリアミドとしては、3員環以上のラクタム、重合可能なアミノカルボン酸、二塩基酸とジアミンまたはそれらの塩、あるいはこれらの混合物の重縮合によって得られるポリアミドが挙げられる。
このようなポリアミドの例としては、ポリカプロアミド(ナイロン6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリペンタメチレンアジパミド(ナイロン56)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610)、ポリウンデカアミド(ナイロン11)、ポリドデカアミド(ナイロン12)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド(ナイロン6T)、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタンとドデカ二酸の共重合体(例示するならば、‘TROGAMID(登録商標)’CX7323 、デグサ社製)などの結晶性のポリアミド、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタンとイソフタル酸と12−アミノドデカン酸の共重合体(例示するならば、‘グリルアミド(登録商標)’TR55、エムザベルケ社製)、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタンとドデカ二酸の共重合体(例示するならば、‘グリルアミド(登録商標)’TR90、エムザベルケ社製)、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタンとイソフタル酸と12−アミノドデカン酸の共重合体と3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタンとドデカ二酸の共重合体との混合物(例示するならば、‘グリルアミド(登録商標)’TR70LX、エムザベルケ社製)、などの非晶性のポリアミドなどが挙げられる。
また、本発明でいうポリアミドの中には、ポリアミドの構造単位を50質量%以上含む、ポリアミドを主成分とする各種共重合体であってもよい。
ポリマーAの分子量は、好ましくは、重量平均分子量で、1,000〜10,000,000、より好ましくは、1,000〜1,000,000、さらに好ましくは、5,000〜500,000であり、特に好ましくは、10,000〜100,000の範囲であり、最も好ましい範囲は、10,000〜50,000の範囲である。
ここでいう重量平均分子量とは、溶媒として、ヘキサフルオロイソプロパノールを溶媒として用いた、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定し、ポリスチレンで換算した重量平均分子量を指す。
結晶性ポリアミドとは、ポリマー内部に結晶相を有するものをいい、これらは示差走査型熱分量分析法(DSC法)により判別することができる。即ち、DSC測定において、融解熱量が検出されるものを指す。好ましくは、融解熱量が、1J/g以上のポリアミドであり、より好ましくは5J/g以上のポリアミドであり、さらに好ましくは10J/g以上のポリアミドである。この際、DSC測定は、30℃から、当該ポリマーの融点よりも30℃超える温度までの温度範囲を、20℃/分の昇温速度で1回昇温させた後に、1分間保持した後、20℃/分で0℃まで降温させ、1分間保持した後、再度20℃/分で昇温させた時に測定される融解熱量のことを指す。2回目の昇温時に結晶化発熱が観測された場合は、融解熱量から結晶化熱量を差し引いたものをここでいう融解熱量と定義する。
本発明におけるポリマーBとは、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂などの重合体のことを指すが、後述する本発明で用いるポリマーAを溶解する有機溶媒かつポリマーAの貧溶媒に溶解するものが好ましい。中でも、工業上取扱性に優れる、アルコール系溶媒または水に溶解するものが好ましく、メタノール、エタノールまたは水に溶解するものが特に好ましい。
ポリマーBを具体的に例示するならば、ポリ(ビニルアルコール)(完全ケン化型や部分ケン化型のポリ(ビニルアルコール)であってもよい。ポリビニルアルコールと称する場合もある)、ポリ(ビニルアルコール−エチレン)共重合体(完全ケン化型や部分ケン化型のポリ(ビニルアルコール−エチレン)共重合体であってもよい)、ポリビニルピロリドン、ポリ(エチレングリコール)、ショ糖脂肪酸エステル、ポリ(オキシエチレン脂肪酸エステル)、ポリ(オキシエチレンラウリン脂肪酸エステル)、ポリ(オキシエチレングリコールモノ脂肪酸エステル)、ポリ(オキシエチレンアルキルフェニルエーテル)、ポリ(オキシアルキルエーテル)、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸ナトリウム、ポリスチレンスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム、ポリビニルピロリジニウムクロライド、ポリ(スチレン−マレイン酸)共重合体、アミノポリ(アクリルアミド)、ポリ(パラビニルフェノール)、ポリアリルアミン、ポリビニルエーテル、ポリビニルホルマール、ポリ(アクリルアミド)、ポリ(メタクリルアミド)、ポリ(オキシエチレンアミン)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(ビニルピリジン)、ポリアミノスルホン、ポリエチレンイミン等の合成樹脂、マルトース、セルビオース、ラクトース、スクロースなどの二糖類、セルロース、キトサン、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、エチルヒドロキシセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、セルロースエステル等のセルロース誘導体、アミロースおよびその誘導体、デンプンおよびその誘導体、デキストリン、シクロデキストリン、アルギン酸ナトリウムおよびその誘導体等の多糖類またはその誘導体、ゼラチン、カゼイン、コラーゲン、アルブミン、フィブロイン、ケラチン、フィブリン、カラギーナン、コンドロイチン硫酸、アラビアゴム、寒天、たんぱく質等が挙げられ、好ましくは、ポリ(ビニルアルコール)(完全ケン化型や部分ケン化型のポリ(ビニルアルコール)であってもよい)、ポリ(ビニルアルコールーエチレン)共重合体(完全ケン化型や部分ケン化型のポリ(ビニルアルコール−エチレン)共重合体であってよい)、ポリエチレングリコール、ショ糖脂肪酸エステル、ポリ(オキシエチレンアルキルフェニルエーテル)、ポリ(オキシアルキルエーテル)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、エチルヒドロキシセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、セルロースエステル等のセルロース誘導体、ポリビニルピロリドンであり、より好ましくは、ポリ(ビニルアルコール)(完全ケン化型や部分ケン化型のポリ(ビニルアルコール)であってよい)、ポリ(ビニルアルコール−エチレン)共重合体(完全ケン化型や部分ケン化型のポリ(ビニルアルコール−エチレン)共重合体であってよい)、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、エチルヒドロキシセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、セルロースエステル等のセルロース誘導体、ポリビニルピロリドンであり、特に好ましくは、ポリ(ビニルアルコール)(完全ケン化型や部分ケン化型のポリ(ビニルアルコール)であってよい)、ポリ(エチレングリコール)、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、エチルヒドロキシセルロース等のセルロース誘導体、ポリビニルピロリドンである。
ポリマーBの分子量は、好ましくは、重量平均分子量で、1,000〜100,000,000、より好ましくは、1,000〜10,000,000、さらに好ましくは、5,000〜1,000,000であり、特に好ましくは、10,000〜500,000の範囲であり、最も好ましい範囲は、10,000〜200,000の範囲である。
ここでいう重量平均分子量とは、溶媒として水を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定し、ポリエチレングリコール、またはポリメチルメタクリレートで換算した重量平均分子量を指す。
水で測定できない場合においては、ジメチルホルムアミドを用い、それでも測定できない場合においては、テトラヒドロフランを用い、さらに測定できない場合においては、ヘキサフルオロイソプロパノールを用いる。
本発明でいう、ポリマーAとポリマーBを溶解させる有機溶媒としては、芳香族アルコールを含む有機溶媒である。
芳香族アルコールは、芳香環に直接ないしはメチレン鎖一つを介してヒドロキシル基を1つ以上有すアルコールのことを指す。これらの条件を満たせば、他の原子団である、炭化水素基、ハロゲン基、アミノ基、チオール基、ホスホニル基、エーテル基を有していても良い。
芳香族アルコールの具体例としては、フェノール、1−ナフトール、2−ナフトール、2−メチル−1−ナフトール、2−ヒドロキシフルオレン、2−フェニルフェノール、3−フェニルフェノール、4−フェニルフェノール、4−ヒドロキシジフェニルメタン、4−クミルフェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、2−エチルフェノール、3−エチルフェノール、4−エチルフェノール、2−プロピルフェノール、3−プロピルフェノール、4−プロピルフェノール、2−イソプロピルフェノール、3−イソプロピルフェノール、4−イソプロピルフェノール、2−sec−ブチルフェノール、3−sec−ブチルフェノール、4−sec−ブチルフェノール、2−tert−ブチルフェノール、3−tert−ブチルフェノール、4−tert−ブチルフェノール、2−アリルフェノール、3−アリルフェノール、4−アリルフェノール、2−プロペニルフェノール、3−プロペニルフェノール、4−プロペニルフェノール、2−シクロペンチルフェノール、3−シクロペンチルフェノール、4−シクロペンチルフェノール、2,4-ジメチルフェノール、3,4−ジメチルフェノール、5,6,7,8−テトラヒドロ−1−ナフトール、2−ヒドロキシジフェニルメタン、2,6−ジフェニルフェノール、など炭化水素系フェノール類、2−メトキシフェノール(グアイアコール)、2−エトキシフェノール、2−イソプロポキシフェノール、2−プロポキシフェノール、3−メトキシフェノール、3−エトキシフェノール、3−イソプロポキシフェノール、3−プロポキシフェノール、4−メトキシフェノール、4−エトキシフェノール、4−プロポキシフェノール、4−イソプロポキシフェノールなどのエーテル基含有フェノール、ベンジルアルコール、sec−フェネチルアルコール、2−メチルベンジルアルコール、3−メチルベンジルアルコール、4−メチルベンジルアルコール、ベンズヒドロール、2−フェニル−2−プロパノール、1,1−ジフェニルメタノール、トリフェニルメタノール、などのベンジルアルコール類、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン、3−メチルカテコール、2−メチルレゾルシノール、オルシノール、4−メチルカテコール、4−エチルレゾルシノール、4−ヘキシルレゾルシノール、4−ドデシルレゾルシノール、3−メトキシカテコール、5−メトキシレゾルシノール、メトキシヒドロキノン、2,5−ジメチルレゾルシノール、4−tert−ブチルカテコール、3,5−ジイソプロピルカテコール、3,5−ジ−tert−ブチルカテコール、tert−ブチルジヒドロキノン、2,3−ジメチルヒドロキノン、2,5−ジ−tert−ブチルヒドロキノン、トリメチルヒドロキノン、ピロガロール、1,2,4−ベンゼントリオール、1,2−ジヒドロキシナフタレン、1,3−ジヒドロキシナフタレン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、2,2’−ビフェノール、4,4’−ビフェノール、ヒドロベンゾイン、4−ヒドロキシベンジルアルコールなどの多価ヒドロキシ芳香族アルコール類、2―フルオロフェノール、2−クロロフェノール、2−ブロモフェノール、2−ヨードフェノール、2−(トリフルオロメチル)フェノール、3−フルオロフェノール、3−クロロフェノール、3−ブロモフェノール、3−ヨードフェノール、3−(トリフルオロメチル)フェノール、4−フルオロフェノール、4−クロロフェノール、4−ブロモフェノール、4−ヨードフェノール、4−(トリフルオロメチル)フェノール、2,3−ジフルオロフェノール、2,6−ジクロロフェノール、2,6−ジブロモフェノール、3,5−ジフロロフェノール、3,5−ジクロロフェノール、3−フルオロカテコール、4−クロロレゾルシノール、4−ブロモレゾルシノール、4−フルオロベンジルアルコール、4−クロロベンジルアルコール、4−ブロモベンジルアルコール、などのハロゲン化フェノール類などが挙げられる。
中でも、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、ベンジルアルコール、2−クロロフェノール、3−クロロフェノール、4−クロロフェノールが好ましい。
また、有機溶媒としては、芳香族アルコール単独で用いても良いが、望みの使用環境においては、固体状態である場合があり、その場合においては、他の有機溶媒と混合し、混合溶媒として用いても良い。他の有機溶媒の具体例としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、n−デカン、n−ドデカン、n−トリデカン、テトラデカン、シクロヘキサン、シクロペンタン等の脂肪族炭化水素系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン、2−メチルナフタレン等の芳香族炭化水素系溶媒、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸ブチル、プロピオン酸ブチル、酪酸ブチル等のエステル系溶媒、クロロホルム、ブロモホルム、塩化メチレン、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、クロロベンゼン、2,6−ジクロロトルエン、ヘキサフルオロイソプロパノール等のハロゲン化炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルブチルケトン等のケトン系溶媒、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール等のアルコール系溶媒、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)、プロピレンカーボネート、トリメチルリン酸、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、スルホラン等の非プロトン性極性溶媒、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、乳酸等のカルボン酸系溶媒、アニソール、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジイソプロピルエーテル、ジオキサン、ジグライム、ジメトキシエタン等のエーテル系溶媒、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム アセテート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム ハイドロゲンスルフェート、1−エチル−3−イミダゾリウム アセテート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム チオシアネートなどのイオン性液体あるいはこれらの混合物が挙げられる。好ましくは、ハロゲン化炭化水素系溶媒、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、非プロトン性極性溶媒、カルボン酸溶媒であり、さらに好ましいものとしては、アルコール系溶媒、非プロトン性極性溶媒、カルボン酸系溶媒であり、著しく好ましいのは、非プロトン性極性溶媒、アルコール系溶媒である。
この際、芳香族アルコールと他の有機溶媒との混合比は、かつ本発明を実施する状況において液体であり、かつポリアミドを溶解する状態であればいずれでも良いが、具体的に例示するならば、芳香族アルコール:有機溶媒=100:0〜1:99、好ましい範囲としては、100:0〜10:90、より好ましい範囲としては、100:0〜20:80、さらに好ましい範囲としては、100:0〜30:70、特に好ましい範囲としては、100:0〜40:60、著しく好ましい範囲としては、100:0〜50:50である。
本発明におけるポリマーAの貧溶媒とは、ポリマーAを溶解させない溶媒のことをいう。溶媒を溶解させないとは、ポリマーAの貧溶媒に対する溶解度が1質量%以下のものであり、より好ましくは、0.5質量%以下であり、さらに好ましくは、0.1質量%以下である。
この際、ポリマーAの貧溶媒と、上記有機溶媒は、完全に相溶することが好ましいが、ポリマーAを析出させることができれば、必ずしも完全に相溶する必要はない。
本発明の製造方法において、ポリマーAの貧溶媒を用いるが、かかる貧溶媒としてはポリマーAの貧溶媒でありかつ、ポリマーBを溶解する溶媒であることが好ましい。これにより、ポリマーAで構成されるポリマー微粒子を効率よく析出させることができる。また、ポリマーAおよびポリマーBを溶解させる溶媒とポリマーAの貧溶媒とは均一に混合する溶媒であることが好ましい。
本発明における貧溶媒としては、用いるポリマーAであるポリアミドそれ自体の種類、さらには用いるポリマーA、B両方の種類の組み合わせによって様々に変わるが、具体的に例示するならば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、n−デカン、n−ドデカン、n−トリデカン、テトラデカン、シクロヘキサン、シクロペンタン等の脂肪族炭化水素系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン、2−メチルナフタレン等の芳香族炭化水素系溶媒、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸ブチル、プロピオン酸ブチル、酪酸ブチル等のエステル系溶媒、クロロホルム、ブロモホルム、塩化メチレン、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、クロロベンゼン、2,6−ジクロロトルエン、ヘキサフルオロイソプロパノール等のハロゲン化炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルブチルケトン等のケトン系溶媒、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール等のアルコール系溶媒、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、N、N−ジメチルホルムアミド、N、N−ジメチルアセトアミド、トリメチルリン酸、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、スルホラン等の非プロトン性極性溶媒、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、乳酸等のカルボン酸溶媒、アニソール、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジイソプロピルエーテル、ジオキサン、ジグライム、ジメトキシエタン等のエーテル系溶媒、水の中から少なくとも1種類から選ばれる溶媒などが挙げられる。
ポリアミドを効率的に粒子化させる観点から好ましくは、芳香族炭化水素系溶媒、脂肪族炭化水素系溶媒、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、水であり、最も好ましいのは、アルコール系溶媒、水である。
粒子表面の平滑性を得るためには、アルコール系溶媒を使用し、析出時の粒子間の融着を防ぐためには、水を用いる方が好ましい。
これら貧溶媒は、所望の特性に応じて単独で用いても良いし、複数種用いても良く、複合させて使用する方法が好ましい。
本発明において、ポリマーA、ポリマーB、これらを溶解する有機溶媒およびポリマーAの貧溶媒を適切に選択して組み合わせることにより、効率的にポリマーAを析出させてポリマー微粒子を得ることが出来る。
この際、ポリマーA、B、これらを溶解する有機溶媒を混合溶解させた液は、ポリマーAを主成分とする溶液相と、ポリマーBを主成分とする溶液相の2相に相分離することが必要である。
2相分離の状態を生成する条件は、ポリマーA、Bの種類、ポリマーA、Bの分子量、芳香族アルコールおよび同時に使用する有機溶媒の種類、比率、およびその量、ポリマーA、Bの濃度、本発明を実施しようとする温度、圧力によって異なってくる。
相分離状態になりやすい条件を得るためには、ポリマーAであるポリアミドとポリマーBの溶解度パラメーター(以下、SP値と称することもある)の差が離れていた方が好ましい。
この際、SP値の差としては1(J/cm3)1/2以上、より好ましくは2(J/cm3)1/2以上、さらに好ましくは3(J/cm3)1/2以上、特に好ましくは5(J/cm3)1/2以上、極めて好ましくは8(J/cm3)1/2以上である。SP値がこの範囲であれば、容易に相分離しやすくなる。
ポリマーAとポリマーBの両者が有機溶媒にとけるのであれば、特に制限はないが、SP値の差の上限として好ましくは20(J/cm3)1/2以下、より好ましくは、15(J/cm3)1/2以下であり、さらに好ましくは10(J/cm3)1/2以下である。
ここでいう、SP値とは、Fedorの推算法に基づき計算されるものであり、凝集エネルギー密度とモル分子容を基に計算されるもの(以下、計算法と称することもある。)である(「SP値 基礎・応用と計算方法」 山本秀樹著、株式会社情報機構、平成17年 3月 31日発行)。
本方法により、計算できない場合においては、溶解度パラメーターが既知の溶媒に対し溶解するか否かの判定による、実験法によりSP値を算出(以下、実験法と称することもある。)し、それを代用する(「ポリマーハンドブック第4版(Polymer Handbook Fourth Editon)」 ジェー・ブランド(J.Brand)著、ワイリー(Wiley)社 1998年発行)。
相分離状態になる条件を選択するためには、ポリマーA、ポリマーBおよびこれらを溶解する有機溶媒の3成分の比率を変化させた状態の観察による簡単な予備実験で作成できる、3成分相図で判別が出来る。
3成分相図の作成は、ポリマーA、Bおよび溶媒を任意の割合で混合溶解させ、静置を行った際に、界面が生じるか否かの判定を少なくとも3点以上、好ましくは5点以上、より好ましくは10点以上の点で実施し、2相に分離する領域および1相になる領域を峻別することで、相分離状態になる条件を見極めることが出来るようになる。
しかし、十分に安定なエマルジョンになる場合においては、3日放置しても巨視的な相分離をしない場合がある。その場合は、光学顕微鏡・位相差顕微鏡などを用い、微視的に相分離しているかどうかで、相分離状態を判別する。
相分離は、有機溶媒中でポリマーAを主とするポリマーA溶液相と、ポリマーBを主とするポリマーB溶液相に分離することによって形成される。この際、ポリマーA溶液相は、ポリマーAが主として分配された相であり、ポリマーB溶液相はポリマーBが主として分配された相である。この際、ポリマーA溶液相とポリマーB溶液相は、ポリマーA、Bの種類と使用量に応じた体積比を有するようである。
相分離の状態が得られ、且つ工業的に実施可能な濃度として、有機溶媒に対するポリマーA、Bの濃度は、有機溶媒に溶解する可能な限りの範囲内であることが前提であるが、好ましくは、それぞれ独立に1質量%超〜50質量%、より好ましくは、1質量%超〜30質量%、さらに好ましくは、2質量%〜20質量%である。
本発明における、ポリマーA溶液相とポリマーB溶液相の2相間の界面張力は、両相とも有機溶媒であることから、その界面張力が小さく、その性質により、生成するエマルジョンが安定に維持できることから、粒子径分布が小さくなるようである。特に、ポリマーA相とポリマーB相の有機溶媒が同一である時は、その効果が顕著である。
本発明における2相間の界面張力は、界面張力が小さすぎることから、通常用いられる溶液に異種の溶液を加えて測定する懸滴法などでは直接測定することは出来ないが、各相の空気との表面張力から推算することにより、界面張力を見積もることが出来る。各相の空気との表面張力をr1、r2とした際、その界面張力r12は、r12=r1−r2の絶対値で推算することができる。この際、このr12の好ましい範囲は、0超〜10mN/mであり、より好ましくは0超〜5mN/mであり、さらに好ましくは、0超〜3mN/mであり、特に好ましくは、0超〜2mN/mである。
表面張力は懸滴法などを使うことにより、測定することが出来る。
このようにして得られた相分離する系を用い、ポリマー微粒子を製造する。微粒子化を行うには、通常の反応槽で実施される。本発明を実施するにふさわしい温度は、工業的な実現性の観点から −50℃〜200℃の範囲であり、好ましくは、−20℃〜150℃であり、より好ましくは、0℃〜120℃であり、さらに好ましくは、10℃〜100℃であり、特に好ましくは、20℃〜80℃であり、最も好ましくは、20℃〜50℃の範囲である。本発明を実施するにふさわしい圧力は、工業的な実現性の観点から、減圧状態から100気圧の範囲であり、好ましくは、1気圧〜5気圧の範囲であり、さらに好ましくは、1気圧〜2気圧であり、特に好ましくは、大気圧である。
このような条件下にて、相分離状態を混合することにより、エマルジョンを形成させる。
すなわち上記で得られた相分離溶液に、剪断力を加えることにより、エマルジョンを生成させる。
エマルジョンの形成に際しては、ポリマーA溶液相が粒子状の液滴になるようにエマルジョンを形成させるが、一般に相分離させた際、ポリマーB溶液相の体積がポリマーA溶液相の体積より大きい場合に、このような形態のエマルジョンを形成させやすい傾向にあり、特にポリマーA溶液相の体積比が両相の合計体積1に対して0.4以下であることが好ましく、0.4〜0.1の間にあることが好ましい。上記相図を作成する際に、各成分の濃度における体積比を同時に測定しておくことにより、適切な範囲を設定することが可能である。
本微粒子の製造法では、得られる微粒子の粒子径分布は小さく、かつその平均粒子径は任意に制御することが出来る。これは、エマルジョン形成段階において、エマルジョンの粒子径分布が小さく、その状態を反映しつつ、引き続く微粒子化工程で微粒子化するためである。従ってこのエマルジョンの状態を制御することにより、目的とする微粒子の平均粒子径および粒子径分布の状態を制御することが出来る。
この平均粒子径を制御するための因子の一つにポリマーA相とポリマーB相の2相の粘度が上げられ、粘度比が小さい方が、粒子径分布が小さくなる傾向にあるようである。
上記目的を達成するために、本発明で実施しようとする温度条件下でのポリマーA溶液相/ポリマー溶液相Bと定義した場合において、粘度比の好ましい範囲としては、0.1以上10以下、より好ましい範囲としては、0.2以上5以下、さらに好ましい範囲としては、0.3以上3以下、特に好ましい範囲としては、0.5以上1.5以下であり、著しく好ましい範囲としては、0.8以上1.2以下である。粒子径分布を小さくするようにするための好ましい範囲は、微粒子化するポリマーAの種類、分子量、所望の粒子径により異なってくるため、その都度調整を行うことにより目的を達成することができる。
ポリマーA溶液相、ポリマーB溶液相の粘度は、E型回転粘度計を用いて測定することができる。
これらの粘度および粘度比などを調節することで任意の平均粒子径に制御することができる。経験的には上記粘度比が1に近づくほど平均粒子径が大きくなり、粘度比が小さくなるほど平均粒子径が小さくなる傾向にある。
微粒子の粒度分布を小さくするためには、エマルジョンを形成時に十分な剪断力を与えればよい。十分な剪断力を与えるためには、従前公知の方法による攪拌を用いれば十分であり、攪拌羽による液相攪拌法、連続2軸混合機による攪拌法、ホモジナイザーによる混合法、超音波照射等通常公知の方法で混合することが出来る。
特に、攪拌羽による攪拌の場合、攪拌羽の形状にもよるが、攪拌速度は、好ましくは50rpm〜1200rpm、より好ましくは、100rpm〜1000rpm、さらに好ましくは、200rpm〜800rpm、特に好ましくは、300rpm〜600rpmである。
また、攪拌羽としては、具体的には、プロペラ型、パドル型、フラットパドル型、タービン型、ダブルコーン型、シングルコーン型、シングルリボン型、ダブルリボン型、スクリュー型、ヘリカルリボン型などが挙げられるが、系に対して十分に剪断力をかけられるものであれば、これらに特に限定されるものではない。また、効率的な攪拌を行うために、槽内に邪魔板等を設置してもよい。
また、エマルジョンを発生させるためには、必ずしも、攪拌機だけでなく、乳化機、分散機など広く一般に知られている装置を用いてもよい。具体的に例示するならば、ホモジナイザー(IKA社製)、ポリトロン(キネマティカ社製)、TKオートホモミキサー(特殊機化工業社製)等のバッチ式乳化機、エバラマイルダー(荏原製作所社製)、TKフィルミックス、TKパイプラインホモミキサー(特殊機化工業社製)、コロイドミル(神鋼パンテック社製)、スラッシャー、トリゴナル湿式微粉砕機(三井三池化工機社製)、超音波ホモジナイザー、スタティックミキサーなどが挙げられる。
このようにして得られたエマルジョンは、引き続き微粒子を析出させる工程に供する。
ポリマーAの微粒子を得るためには、ポリマーAに対する貧溶媒を、前記工程で製造したエマルジョンに接触させることでエマルジョン径に応じた径で、微粒子を析出させる。
貧溶媒とエマルジョンの接触方法は、貧溶媒にエマルジョンを入れる方法でも良いし、エマルジョンに貧溶媒を入れる方法でも良いが、エマルジョンに貧溶媒を入れる方法が好ましい。
この際、貧溶媒を投入する方法としては、本発明で製造するポリマー微粒子が得られる限り特に制限はなく、連続滴下法、分割添加法、一括添加法のいずれでも良いが、貧溶媒添加時にエマルジョンが凝集・融着・合一し、粒子径分布が大きくなったり、1000μmを超える塊状物が生成しやすくならないようにするために、好ましくは連続滴下法、分割滴下法であり、工業的に効率的に実施するためには、最も好ましいのは、連続滴下法である。
また、貧溶媒を複数種用いて微粒子を析出させる場合は、貧溶媒を混合しても投入しても良いし、複数種の溶媒を別々に投入しても良い。
粒子表面の平滑性を得るためには、複数種の溶媒を別々に投入する方が好ましいことがある。
また、貧溶媒を加える時間としては、10分以上50時間以内であり、より好ましくは、30分以上10時間以内であり、さらに好ましくは1時間以上5時間以内である。
この範囲よりも短い時間で実施すると、エマルジョンの凝集・融着・合一に伴い、粒子径分布が大きくなったり、塊状物が生成する場合がある。また、これ以上長い時間で実施する場合は、工業的な実施を考えた場合、非現実的である。
この時間の範囲内で行うことにより、エマルジョンからポリマー微粒子に転換する際に、粒子間の凝集を抑制することができ、粒子径分布の小さいポリマー微粒子を得ることができる。
加える貧溶媒の量は、エマルジョンの状態にもよるが、好ましくは、エマルジョン総質量1質量部に対して、0.1から10質量部、より好ましくは、0.1から5質量部、さらに好ましくは、0.2から3質量部であり、特に好ましくは、0.2質量部から1質量部であり、最も好ましくは、0.2から0.5質量部である。
貧溶媒とエマルジョンとの接触時間は、微粒子が析出するのに十分な時間であればよいが、十分な析出を引き起こしかつ効率的な生産性を得るためには、貧溶媒添加終了後5分から50時間であり、より好ましくは、5分以上10時間以内であり、さらに好ましくは10分以上5時間以内であり、特に好ましくは、20分以上4時間以内であり、著しく好ましくは、30分以上3時間以内である。
このようにして作られたポリマー微粒子分散液は、ろ過、デカンテーション、減圧濾過、加圧ろ過、遠心分離、遠心ろ過、スプレードライ、酸析法、塩析法、凍結凝固法等の通常公知の方法で固液分離することにより、微粒子粉体を回収することが出来る。固液分離したポリマー微粒子は、必要に応じて、溶媒等で洗浄を行うことにより、付着または含有している不純物等の除去を行い、精製を行う。この際、好ましい溶媒としては、上記貧溶媒であり、より好ましくは、水、メタノール、エタノールから選ばれる1種または2種以上の混合溶媒である。
得られた粒子は、乾燥を行い、残留溶媒を取り除くことができる。この際、乾燥の方法としては、風乾、加熱乾燥、減圧乾燥、凍結乾燥などが挙げられる。加熱する場合の温度は、ガラス転移温度より低い温度が好ましく、具体的には、50−150℃が好ましい。
このようにして得られた微粒子の平均粒子径は、通常1000μm以下、好ましい態様によれば、500μm以下であり、より好ましい態様によれば、300μm以下、さらに好ましい態様によれば、100μm以下、特に好ましい態様によれば、50μm以下のものを製造することが可能である。下限としては、通常50nm以上、好ましい態様によれば、100nm以上であり、より好ましい態様によれば、500nm以上、さらに好ましい態様によれば、1μm以上、特に好ましい態様によれば、5μm以上のものを製造することが可能である。
また、粒子径分布は、粒子径分布指数として3以下であり、好ましい態様によれば、2以下であり、より好ましい態様によれば、1.5以下であり、特に好ましい態様によれば、1.2以下であり、最も好ましい態様によれば、1.1以下であるものを製造することが可能である。また、好ましい下限は1である。
微粒子の平均粒子径は、走査型電子顕微鏡写真から任意の50個以上の粒子直径を特定し、その算術平均を求めることにより算出することが出来る。上記写真において、真円状でない場合、即ち楕円状のような場合は、粒子の最大径をその粒子径とする。粒子径を正確に測定するためには、少なくとも1000倍以上、好ましくは、5000倍以上の倍率で測定する。
粒子径分布指数は、上記で得られた粒子直径の値を、下記数値変換式に基づき、決定される。
尚、Di:粒子個々の粒子径(直径)、n:測定数50以上、Dn:数平均粒子径、Dv:体積平均粒子径、PDI:粒子径分布指数とする。
このように本発明の方法で作成されたポリアミド微粒子は、粒子径分布の小さポリアミド微粒子が得られることや、任意の平均粒子径に制御することが出来、特に耐熱性に優れるポリマーへの適用ができることから、産業上、各種用途での利用可能である。
以下、本発明を実施例に基づき詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(1)平均粒子径および粒子径分布測定方法
微粒子の個々の粒子径は、走査型電子顕微鏡(日本電子株式会社製走査型電子顕微鏡JSM−6301NF)にて、微粒子を1000倍で観察し、測長した。尚、粒子が真円でない場合は、長径をその粒子径として測定した。
微粒子の個々の粒子径は、走査型電子顕微鏡(日本電子株式会社製走査型電子顕微鏡JSM−6301NF)にて、微粒子を1000倍で観察し、測長した。尚、粒子が真円でない場合は、長径をその粒子径として測定した。
平均粒子径は、写真から任意の50個以上の粒子直径を測長し、その算術平均を求めることにより算出した。
粒子径分布を示す粒子径分布指数は、上記で得られた個々の粒子直径の値を、下記数値変換式に基づき算出した。
尚、Di:粒子個々の粒子直径、n:測定数50以上、Dn:数平均粒子径、Dv:体積平均粒子径、PDI:粒子径分布指数とする。
実施例1
100mlの4口フラスコの中に、ポリマーAとしてナイロン66 2.5g(重量平均分子量 15,000 東レ株式会社製)、有機溶媒としてフェノール 31.5g、メタノール 13.5g、ポリマーBとしてヒドロキシプロピルセルロース 2.5g(東京化成工業株式会社製、重量平均分子量118,000 、SP値 28.99(J/cm3)1/2)を加え、60℃に加熱し、ポリマーが溶解するまで攪拌を行った。系の温度を室温に戻した後に、450rpmで攪拌しながら、貧溶媒として水20g、メタノール30gの混合溶媒を、送液ポンプを経由して、0.41g/分のスピードで滴下した。全量の貧溶媒を入れ終わった後に、30分間攪拌し、得られた懸濁液を、ろ過し、イオン交換水 100gで洗浄し、濾別したものを、80℃ 10時間真空乾燥を行い、白色固体を2.0g得た。得られた粉体を走査型電子顕微鏡にて観察したところ、多孔質状の微粒子形状(図1)であり、平均粒子径 15.2μm、粒子径分布指数 1.21であった。なお、本実施例で用いたポリアミドの融解熱量は、53.5J/gであり、このポリマーのSP値は、計算法より25.4(J/cm3)1/2だった。貧溶媒である水に対するこのポリアミドの溶解度(室温)は、0.1質量%以下であった。
100mlの4口フラスコの中に、ポリマーAとしてナイロン66 2.5g(重量平均分子量 15,000 東レ株式会社製)、有機溶媒としてフェノール 31.5g、メタノール 13.5g、ポリマーBとしてヒドロキシプロピルセルロース 2.5g(東京化成工業株式会社製、重量平均分子量118,000 、SP値 28.99(J/cm3)1/2)を加え、60℃に加熱し、ポリマーが溶解するまで攪拌を行った。系の温度を室温に戻した後に、450rpmで攪拌しながら、貧溶媒として水20g、メタノール30gの混合溶媒を、送液ポンプを経由して、0.41g/分のスピードで滴下した。全量の貧溶媒を入れ終わった後に、30分間攪拌し、得られた懸濁液を、ろ過し、イオン交換水 100gで洗浄し、濾別したものを、80℃ 10時間真空乾燥を行い、白色固体を2.0g得た。得られた粉体を走査型電子顕微鏡にて観察したところ、多孔質状の微粒子形状(図1)であり、平均粒子径 15.2μm、粒子径分布指数 1.21であった。なお、本実施例で用いたポリアミドの融解熱量は、53.5J/gであり、このポリマーのSP値は、計算法より25.4(J/cm3)1/2だった。貧溶媒である水に対するこのポリアミドの溶解度(室温)は、0.1質量%以下であった。
実施例2
200mlの4口フラスコの中に、ポリマーAとしてナイロン6 2.5g(重量平均分子量 18,000 東レ株式会社製)、有機溶媒としてフェノール 31.5g、メタノール 13.5g、ポリマーBとしてヒドロキシプロピルセルロース 2.5g(東京化成工業株式会社製、重量平均分子量118,000)を加え、60℃に加熱し、ポリマーが溶解するまで攪拌を行った。系の温度を室温に戻した後に、450rpmで攪拌しながら、貧溶媒として水25g、メタノール50gの混合溶媒を、送液ポンプを経由して、0.41g/分のスピードで滴下した。全量の貧溶媒を入れ終わった後に、30分間攪拌し、得られた懸濁液を、ろ過し、イオン交換水 100gで洗浄し、濾別したものを、80℃ 10時間真空乾燥を行い、白色固体を2.1g得た。得られた粉体を走査型電子顕微鏡にて観察したところ、多孔質状の微粒子形状であり、平均粒子径 17.6μm、粒子径分布指数1.14であった。なお、本実施例で用いたポリアミドの融解熱量は、47.9J/gであり、このポリマーのSP値は、計算法より25.4(J/cm3)1/2だった。貧溶媒である水に対するこのポリアミドの溶解度(室温)は、0.1質量%以下であった。
200mlの4口フラスコの中に、ポリマーAとしてナイロン6 2.5g(重量平均分子量 18,000 東レ株式会社製)、有機溶媒としてフェノール 31.5g、メタノール 13.5g、ポリマーBとしてヒドロキシプロピルセルロース 2.5g(東京化成工業株式会社製、重量平均分子量118,000)を加え、60℃に加熱し、ポリマーが溶解するまで攪拌を行った。系の温度を室温に戻した後に、450rpmで攪拌しながら、貧溶媒として水25g、メタノール50gの混合溶媒を、送液ポンプを経由して、0.41g/分のスピードで滴下した。全量の貧溶媒を入れ終わった後に、30分間攪拌し、得られた懸濁液を、ろ過し、イオン交換水 100gで洗浄し、濾別したものを、80℃ 10時間真空乾燥を行い、白色固体を2.1g得た。得られた粉体を走査型電子顕微鏡にて観察したところ、多孔質状の微粒子形状であり、平均粒子径 17.6μm、粒子径分布指数1.14であった。なお、本実施例で用いたポリアミドの融解熱量は、47.9J/gであり、このポリマーのSP値は、計算法より25.4(J/cm3)1/2だった。貧溶媒である水に対するこのポリアミドの溶解度(室温)は、0.1質量%以下であった。
実施例3
100mlの4口フラスコの中に、ポリマーAとしてポリアミド(重量平均分子量 17,000、デグザ社製 ‘TROGAMID(登録商標)’CX7323 )5.0g、有機溶媒としてフェノール 29.8g、メタノール 12.8g、ポリマーBとしてヒドロキシプロピルセルロース 2.5g(東京化成工業株式会社製、重量平均分子量 118,000)を加え、60℃に加熱し、ポリマーが溶解するまで攪拌を行った。系の温度を室温に戻した後に、十分に攪拌した状態を継続しながら、450rpmで攪拌をしながら、貧溶媒として水20g、メタノール 30gの混合溶媒を、送液ポンプを経由し、0.41g/分のスピードで滴下した。室温に戻した懸濁液を、ろ過し、イオン交換水50gで洗浄し、80℃ 10時間真空乾燥を行い、白色固体4.6gを得た。得られた粉体を走査型電子顕微鏡にて、観察したところ、多孔質状の微粒子形状であり、平均粒子径 8.7μm、粒子径分布1.26であった。なお、本実施例で用いたポリアミドの融解熱量は、9.4J/gであり、このポリマーのSP値は、計算法より23.3(J/cm3)1/2だった。貧溶媒である水に対するこのポリアミドの溶解度(室温)は、0.1質量%以下であった。
100mlの4口フラスコの中に、ポリマーAとしてポリアミド(重量平均分子量 17,000、デグザ社製 ‘TROGAMID(登録商標)’CX7323 )5.0g、有機溶媒としてフェノール 29.8g、メタノール 12.8g、ポリマーBとしてヒドロキシプロピルセルロース 2.5g(東京化成工業株式会社製、重量平均分子量 118,000)を加え、60℃に加熱し、ポリマーが溶解するまで攪拌を行った。系の温度を室温に戻した後に、十分に攪拌した状態を継続しながら、450rpmで攪拌をしながら、貧溶媒として水20g、メタノール 30gの混合溶媒を、送液ポンプを経由し、0.41g/分のスピードで滴下した。室温に戻した懸濁液を、ろ過し、イオン交換水50gで洗浄し、80℃ 10時間真空乾燥を行い、白色固体4.6gを得た。得られた粉体を走査型電子顕微鏡にて、観察したところ、多孔質状の微粒子形状であり、平均粒子径 8.7μm、粒子径分布1.26であった。なお、本実施例で用いたポリアミドの融解熱量は、9.4J/gであり、このポリマーのSP値は、計算法より23.3(J/cm3)1/2だった。貧溶媒である水に対するこのポリアミドの溶解度(室温)は、0.1質量%以下であった。
実施例4
200mlの4口フラスコの中に、ポリマーAとしてポリアミド2.5g(重量平均分子量 17,000、デグザ社製 ‘TROGAMID(登録商標)’CX7323 )、有機溶媒としてフェノール 32.4g、メタノール 13.8g、ポリマーBとしてヒドロキシプロピルセルロース 1.2g(東京化成工業株式会社製、重量平均分子量 118,000)を加え、60℃に加熱し、ポリマーが溶解するまで攪拌を行った。系の温度を50℃に戻した後に、450rpmで攪拌をしながら、貧溶媒として水20gを送液ポンプで0.41g/分のスピードで滴下した。その後、貧溶媒としてメタノール 50gを送液ポンプで0.41g/分のスピードで滴下した。室温に戻した懸濁液を、ろ過し、イオン交換水50gで洗浄し、80℃ 10時間真空乾燥を行い、白色固体2.4gを得た。得られた粉体を走査型電子顕微鏡にて、観察したところ、平滑な表面の微粒子であり、平均粒子径 15.3μm、粒子径分布1.26であった。なお、本実施例で用いたポリアミドの融解熱量は、9.4J/gであり、このポリアミドのSP値は、計算法より23.3(J/cm3)1/2だった。貧溶媒である水に対するこのポリアミドの溶解度(室温)は、0.1質量%以下であった。
200mlの4口フラスコの中に、ポリマーAとしてポリアミド2.5g(重量平均分子量 17,000、デグザ社製 ‘TROGAMID(登録商標)’CX7323 )、有機溶媒としてフェノール 32.4g、メタノール 13.8g、ポリマーBとしてヒドロキシプロピルセルロース 1.2g(東京化成工業株式会社製、重量平均分子量 118,000)を加え、60℃に加熱し、ポリマーが溶解するまで攪拌を行った。系の温度を50℃に戻した後に、450rpmで攪拌をしながら、貧溶媒として水20gを送液ポンプで0.41g/分のスピードで滴下した。その後、貧溶媒としてメタノール 50gを送液ポンプで0.41g/分のスピードで滴下した。室温に戻した懸濁液を、ろ過し、イオン交換水50gで洗浄し、80℃ 10時間真空乾燥を行い、白色固体2.4gを得た。得られた粉体を走査型電子顕微鏡にて、観察したところ、平滑な表面の微粒子であり、平均粒子径 15.3μm、粒子径分布1.26であった。なお、本実施例で用いたポリアミドの融解熱量は、9.4J/gであり、このポリアミドのSP値は、計算法より23.3(J/cm3)1/2だった。貧溶媒である水に対するこのポリアミドの溶解度(室温)は、0.1質量%以下であった。
実施例5
200mlの4口フラスコの中に、ポリマーAとしてポリアミド3.5g(重量平均分子量 17,000、デグザ社製 ‘TROGAMID(登録商標)’CX7323 )、有機溶媒としてm−クレゾール 90.0g、ポリマーBとしてポリエチレングリコール6.5g(東京化成工業株式会社製、重量平均分子量 6,000、SP値 19.2(J/cm3)1/2)を加え、60℃に加熱し、ポリマーが溶解するまで攪拌を行った。系の温度を50℃に戻した後に、450rpmで攪拌をしながら、貧溶媒として水50gを送液ポンプで0.41g/分のスピードで滴下した。その後、貧溶媒としてメタノール 50gを送液ポンプで0.41g/分のスピードで滴下した。室温に戻した懸濁液を、ろ過し、イオン交換水50gで洗浄し、80℃ 10時間真空乾燥を行い、白色固体3.3gを得た。得られた粉体を走査型電子顕微鏡にて、観察したところ、平滑な表面の微粒子であり、平均粒子径 46μm、粒子径分布1.46であった。なお、本実施例で用いたポリアミドの融解熱量は、9.4J/gであり、このポリアミドのSP値は、計算法より23.3(J/cm3)1/2だった。貧溶媒であるアセトニトリルに対するこのポリアミドの溶解度(室温)は、0.1質量%以下であった。
200mlの4口フラスコの中に、ポリマーAとしてポリアミド3.5g(重量平均分子量 17,000、デグザ社製 ‘TROGAMID(登録商標)’CX7323 )、有機溶媒としてm−クレゾール 90.0g、ポリマーBとしてポリエチレングリコール6.5g(東京化成工業株式会社製、重量平均分子量 6,000、SP値 19.2(J/cm3)1/2)を加え、60℃に加熱し、ポリマーが溶解するまで攪拌を行った。系の温度を50℃に戻した後に、450rpmで攪拌をしながら、貧溶媒として水50gを送液ポンプで0.41g/分のスピードで滴下した。その後、貧溶媒としてメタノール 50gを送液ポンプで0.41g/分のスピードで滴下した。室温に戻した懸濁液を、ろ過し、イオン交換水50gで洗浄し、80℃ 10時間真空乾燥を行い、白色固体3.3gを得た。得られた粉体を走査型電子顕微鏡にて、観察したところ、平滑な表面の微粒子であり、平均粒子径 46μm、粒子径分布1.46であった。なお、本実施例で用いたポリアミドの融解熱量は、9.4J/gであり、このポリアミドのSP値は、計算法より23.3(J/cm3)1/2だった。貧溶媒であるアセトニトリルに対するこのポリアミドの溶解度(室温)は、0.1質量%以下であった。
実施例6
200mlの4口フラスコの中に、ポリマーAとしてナイロン66 5.0g(重量平均分子量 15,000 東レ株式会社製)、有機溶媒としてフェノール 28g、メタノール 12g、ポリマーBとしてポリビニルアルコール 5.0g(アルドリッチ社製 ケン化度 80%、重量平均分子量 9,000、SP値32.8(J/cm3)1/2)を加え、60℃に加熱し、ポリマーが溶解するまで攪拌を行った。系の温度を室温に戻した後に、450rpmで攪拌しながら、貧溶媒として水25g、メタノール50gの混合溶媒を、送液ポンプを経由して、0.41g/分のスピードで滴下した。全量の貧溶媒を入れ終わった後に、30分間攪拌し、得られた懸濁液を、ろ過し、イオン交換水 100gで洗浄し、濾別したものを、80℃ 10時間真空乾燥を行い、白色固体を4.2g得た。得られた粉体を走査型電子顕微鏡にて観察したところ、多孔質状の微粒子形状であり、平均粒子径 20.5μm、粒子径分布指数1.3であった。なお、本実施例で用いたポリアミドの融解熱量は、53.5J/gであり、このポリマーのSP値は、計算法より25.4(J/cm3)1/2だった。貧溶媒である水に対するこのポリアミドの溶解度(室温)は、0.1質量%以下であった。
200mlの4口フラスコの中に、ポリマーAとしてナイロン66 5.0g(重量平均分子量 15,000 東レ株式会社製)、有機溶媒としてフェノール 28g、メタノール 12g、ポリマーBとしてポリビニルアルコール 5.0g(アルドリッチ社製 ケン化度 80%、重量平均分子量 9,000、SP値32.8(J/cm3)1/2)を加え、60℃に加熱し、ポリマーが溶解するまで攪拌を行った。系の温度を室温に戻した後に、450rpmで攪拌しながら、貧溶媒として水25g、メタノール50gの混合溶媒を、送液ポンプを経由して、0.41g/分のスピードで滴下した。全量の貧溶媒を入れ終わった後に、30分間攪拌し、得られた懸濁液を、ろ過し、イオン交換水 100gで洗浄し、濾別したものを、80℃ 10時間真空乾燥を行い、白色固体を4.2g得た。得られた粉体を走査型電子顕微鏡にて観察したところ、多孔質状の微粒子形状であり、平均粒子径 20.5μm、粒子径分布指数1.3であった。なお、本実施例で用いたポリアミドの融解熱量は、53.5J/gであり、このポリマーのSP値は、計算法より25.4(J/cm3)1/2だった。貧溶媒である水に対するこのポリアミドの溶解度(室温)は、0.1質量%以下であった。
比較例1(ポリマーBを入れずに微粒子を製造した例)
500mlのナスフラスコの中に、実施例1で用いたのと同じポリアミド6(重量平均分子量 18,000 東レ株式会社製)2.5g、m−クレゾール47.5gを加え、40℃、200rpmで攪拌しながら溶解させた。室温まで冷却後、この溶液に、メタノール250gと水50gの混合溶媒を40秒で添加した。混合直後は均一状態であったが、次第に白濁化した。本溶液を一晩放置し、得られた析出物を濾過に固液分離を行い、500mlのメタノールで3回洗浄を行った。得られた固形分を60℃ 8時間にて加熱乾燥を行い、引き続き、60℃ 8時間で真空乾燥を行い、白色固体2.1gを得た。得られた固形分をSEMにて観察した結果、不定形の粉状体であった(図2)。平均粒子径 9.8μm、粒子径分布2.35であった。
500mlのナスフラスコの中に、実施例1で用いたのと同じポリアミド6(重量平均分子量 18,000 東レ株式会社製)2.5g、m−クレゾール47.5gを加え、40℃、200rpmで攪拌しながら溶解させた。室温まで冷却後、この溶液に、メタノール250gと水50gの混合溶媒を40秒で添加した。混合直後は均一状態であったが、次第に白濁化した。本溶液を一晩放置し、得られた析出物を濾過に固液分離を行い、500mlのメタノールで3回洗浄を行った。得られた固形分を60℃ 8時間にて加熱乾燥を行い、引き続き、60℃ 8時間で真空乾燥を行い、白色固体2.1gを得た。得られた固形分をSEMにて観察した結果、不定形の粉状体であった(図2)。平均粒子径 9.8μm、粒子径分布2.35であった。
このように本発明の方法で作成された微粒子は、粒子径分布の小さい粒子が得られることや、これまで出来なかったポリマーでの微粒子化、特に耐熱性に優れるポリマーへの適用ができることから、具体的には、フラッシュ成形用材料、ラピッドプロトタイピング・ラピッドマニュファクチャリング用材料、プラスティックゾル用ペーストレジン、粉ブロッキング材、粉体の流動性改良材、接着剤、塗料、各種印刷用インク中の分散液、潤滑剤、ゴム配合剤、研磨剤、増粘剤、濾剤および濾過助剤、ゲル化剤、凝集剤、塗料用添加剤、吸油剤、離型剤、プラスティックフィルム・シートの滑り性向上剤、ブロッキング防止剤、光沢調節剤、つや消し仕上げ剤、光拡散剤、表面高硬度向上剤、靭性向上材、ポリマーアロイ用添加剤等の各種改質剤、液晶表示装置用スペーサー、クロマトグラフィー用充填材・担体、化粧品ファンデーション用基材・添加剤、マイクロカプセル用助剤、ドラッグデリバリーシステム・診断薬などの医療用材料、香料・農薬の保持剤、化学反応用触媒およびその担持体、ガス吸着剤、セラミック加工用焼結材、測定・分析用の標準粒子、食品工業分野用の粒子、粉体塗料用材料、電子写真現像用トナーに用いることができる。また、本発明における各工程の途中若しくはその前後に、酸性染料、塩基性染料、蛍光染料、蛍光増白剤などの各種染料を添加することにより着色された樹脂微粒子、硬化樹脂球状微粒子とすることもでき、この着色された微粒子は、塗料、インキ、プラスチック着色用の顔料として使用することも出来る。
Claims (5)
- ポリマーAとポリマーBと有機溶媒とを溶解混合したときに、ポリマーAを主成分とする溶液相と、ポリマーBを主成分とする溶液相の2相に相分離する系において、エマルジョンを形成させた後、ポリマーAの貧溶媒を接触させることにより、ポリマーAを析出させることを特徴とするポリマー微粒子の製造方法において、下記条件を満たすことを特徴とするポリアミド微粒子の製造方法。
(1)ポリマーAが、ポリアミドであること。
(2)有機溶媒が芳香族アルコールを含む有機溶媒であること。 - ポリアミドが、融解熱量が 1J/g以上である結晶性ポリアミドであることを特徴とする請求項1記載のポリマー微粒子の製造方法。
- 芳香族アルコールが、フェノール、クレゾール、クロロフェノール類から選択されるものであることを特徴とする請求項1または2記載のポリマー微粒子の製造方法。
- ポリアミドが、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12から選択されるものであることを特徴とする請求項1〜3いずれか記載のポリマー微粒子の製造方法。
- ポリマーBが、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ヒドロキシアルキルセルロースから選択されるものであることを特徴とする請求項1〜4いずれか記載のポリマー微粒子の製造方法。
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