JP2011094085A - 熱可塑性樹脂シート及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】産業資材用の熱可塑性樹脂シートにおいて、カレンダー成形加工性に優れ、かつ高度の耐摩耗性を有する産業資材用シート及び、その製造方法の提供。
【解決手段】本発明の熱可塑性樹脂シートは、非相溶の熱可塑性樹脂ブレンドによる海島構造を構成し、この海島構造における海成分または島成分のいずれか一方を、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体アイオノマー樹脂、及びシリコーンオイルを含むようにすることにより、カレンダー成型によるフィルムまたはシートの成型を可能とする。
【選択図】図3
【解決手段】本発明の熱可塑性樹脂シートは、非相溶の熱可塑性樹脂ブレンドによる海島構造を構成し、この海島構造における海成分または島成分のいずれか一方を、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体アイオノマー樹脂、及びシリコーンオイルを含むようにすることにより、カレンダー成型によるフィルムまたはシートの成型を可能とする。
【選択図】図3
Description
本発明は熱可塑性樹脂シートに関し、特に大型テント、トラックウイング幌、シートシャッター、間仕切り、シート看板、電飾看板、床材、シートライニング、物流コンテナなどの用途において、柔軟性と耐摩耗性の要求が高い用途のパーツや構造物に好適な産業資材シート、及びその製造方法に関するものである。
テント膜材、シート看板、電飾看板などの産業資材フレキシブルシートには、ポリエステル繊維織物を基布として、その両面に軟質塩化ビニル樹脂による被覆加工を施した防水性と防炎性とを有するシート材が用いられている。このシート材はポリエステル繊維織物を基布とすることで、高度の破壊強さと柔軟性とを保持している。これらテント膜材による構造物では長いもので10年以上使用する事例も少なくなく、このため施工物の経年外観をクリーンな状態に保つために、これらのシート材表面には様々な防汚加工が施されている。しかし、フレキシブルシートの軟質塩化ビニル樹脂層は表面硬度が低いため、これをブラシ洗浄した場合に防汚加工層を損傷することがあった。
また、特に大型のテント膜構造物は、軟質塩化ビニル樹脂で被覆加工された多数のシートの高周波ウエルダーによる継ぎ合わせにより構築されている。高周波ウエルダーは、極性樹脂を高周波中(ウエルド金型押圧)に置いたときに極性樹脂の双極子の回転による発熱を利用して溶融接着を行うもので、特に塩化ビニル樹脂が高周波ウエルダーの適用性に優れている。従って産業資材フレキシブルシートにおいて高周波ウエルダーの適用性を欠く素材では使い勝手の悪いものとなる。塩化ビニル樹脂以外の高周波ウエルダー性熱可塑性樹脂としてはエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂やエチレン−アクリル酸エステル共重合体樹脂が知られているが、これらの共重合体樹脂では耐候性、防炎性、耐摩耗性などの特性に劣るため屋外用途には適していない。
そこで塩化ビニル樹脂層の表面のみを耐摩耗性に優れたアイオノマー樹脂で被覆することで、高周波ウエルダー適用性や防炎性を維持する改良が提案されている。(特許文献1)アイオノマー樹脂は、α,β−不飽和カルボン酸単位を有する共重合体樹脂のカルボン酸を金属陽イオンで中和した樹脂であり、熱溶融時に著しい金属との接着性を発現するため加工方法に著しい制限がある。例えばカレンダーフィルム成型時には金属熱ロールと密着してしまい、また押出成型フィルムのラミネート加工時にも、金属熱ロールと密着することで、これらのラミネート品を得ることは容易ではない。(特許文献2)従ってこれらアイオノマー樹脂フィルムの金属熱ロールからの離型性が改善されれば、これらのフィルムやシートを利用して表面摩耗性に優れたテント膜材、シート看板、電飾看板などの熱可塑性樹脂シートを得ることが可能となる。特許文献3には、シリコーンオイルを添加してなるスチレン系エラストマーとアイオノマー樹脂との相溶ブレンドによる射出成型用組成物が開示されている。また特許文献4には、脂肪酸アミドおよびシリコーン樹脂を添加してなるオレフィン系エラストマーとアイオノマー樹脂との相溶ブレンドによる射出成型用組成物が開示されている。特許文献5には、スチレン・(メタ)アクリル酸共重合体のアイオノマーに可塑剤を混合して、引張り弾性率、破断強度、破断歪の引張り物性のバランスに優れる柔軟な樹脂組成物が開示されている。しかしこれらの射出成型用組成物ではカレンダーフィルム成型における金属熱ロールからの離型性が改善されたものではなく、カレンダーフィルム成型に適したアイオノマー樹脂組成物は見出されていない。
本発明は上記従来事情に鑑みてなされたものであり、その課題とする処は、熱可塑性樹脂シートにおいて、カレンダー成形加工性に優れ、かつ高度の耐摩耗性を有する産業資材用シート及び、その製造方法を提供することにある。
上記課題を解決するための技術的手段は、非相溶の熱可塑性樹脂ブレンドによる海島構造を有し、この海島構造における海成分または島成分のいずれか一方が、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体アイオノマー樹脂、及びシリコーンオイルを含むようにすることにより、本発明の熱可塑性樹脂シートを構成するフィルムまたはシート成型を容易とすることを見出して本発明を完成するに至った。
すなわち本発明の熱可塑性樹脂シートは、非相溶の熱可塑性樹脂ブレンドによる海島構造を有し、前記海島構造における海成分または島成分のいずれか一方が、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体アイオノマー樹脂、及びシリコーンオイルとを含むことが好ましい。本発明の熱可塑性樹脂シートは、編織物からなるシート状基材を芯材に含むことが好ましい。本発明の熱可塑性樹脂シートは、前記シリコーンオイルが、ブリード抽出性を有することが好ましい。本発明の熱可塑性樹脂シートの製造は、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体アイオノマー樹脂、及びシリコーンオイルとを含む組成物Aと、前記アイオノマー樹脂と非相溶の熱可塑性樹脂からなる組成物B、との混合において、前記組成物Bの混練物に、前記組成物Aの混練物を分割投入して非相溶混練物を構成し、この非相溶混練物より海島構造含有シートをカレンダー成型する方法が好ましい。本発明の熱可塑性樹脂シートの製造は、編織物からなるシート状基材に、海成分または島成分のいずれか一方に、前記アイオノマー樹脂、及び前記シリコーンオイルとを含む前記海島構造含有シートを積層する方法が好ましい。
本発明による熱可塑性樹脂シートは、アイオノマー樹脂でありながら、カレンダー成型性を有し、しかも高度の耐摩耗性を有する産業資材用シートが得られるため、大型テント、トラックウイング幌、シートシャッター、間仕切り、シート看板、電飾看板、床材、シートライニング、物流コンテナなどに広く利用でき、特に金属材料との良好な密着性を有することから、金属線編織メッシュを芯材として、この表面に本発明による熱可塑性樹脂シートを積層すれば、防犯・防護のセキユリティ要求が高い用途のパーツに好適かつ有用である。また、これらの金属線編織メッシュ芯体含有シートは、高周波誘導加熱により接合が可能であるので建築用、土木工事などのコンクリート構造物に対しても適用可能である。
本発明の熱可塑性樹脂シートは、非相溶の熱可塑性樹脂ブレンドによる海島構造を有し、前記海島構造における海成分または島成分のいずれか一方が、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体アイオノマー樹脂、及び潤滑成分としてシリコーンオイルとを含む、厚さが、全体に均一で、0.05〜1.0mm、好ましくは0.1〜0.5mmのシートである。熱可塑性樹脂ブレンドによる海島構造は、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体アイオノマー樹脂と非相溶の熱可塑性樹脂との溶融混合による微分散によって形成することができる。エチレン・不飽和カルボン酸共重合体アイオノマー樹脂と非相溶の合成樹脂としては、例えば、塩化ビニル樹脂(軟質、硬質)、塩化ビニル系共重合体樹脂、ウレタン樹脂、ウレタン系共重合体樹脂、スチレン樹脂、スチレン系共重合体樹脂、ポリエステル樹脂(PET,PEN,PBTなど)、ポリエステル系共重合体樹脂、フッ素含有共重合体樹脂、シリコーン樹脂、シリコーンゴム、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリエーテル、ポリエステルアミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエステルなどの熱可塑性樹脂が挙げられる。
エチレン・不飽和カルボン酸共重合体アイオノマー樹脂は、エチレンと不飽和カルボン酸との共重合体の金属陽イオン配位体であり、不飽和カルボン酸としては、炭素数3〜8の不飽和カルボン酸、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、無水マレイン酸、マレイン酸モノメチルエステル、マレイン酸モノエチルエステルなどが用いられる。これらの不飽和カルボン酸のうち、アクリル酸、メタクリル酸が特に好ましい。これらの共重合体に含む不飽和カルボン酸含有量は6〜15モル%、好ましくは10〜15モル%である。またこれらの共重合体には不飽和カルボン酸エステル、酢酸ビニルなどのビニルエステルを第三成分として含んでいてもよい。またエチレン・不飽和カルボン酸共重合体アイオノマー樹脂は、不飽和カルボン酸が遷移金属陽イオンで中和されたものであって、その中和度が20%以上、特に40〜100%であるものが好ましい。遷移金属としてはマンガン、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、鉛などを例示でき、とくに亜鉛が最も好ましい。これら遷移金属は2種以上用いることもできる。エチレン・不飽和カルボン酸共重合体アイオノマー樹脂の具体例は、エチレン・メタクリル酸共重合体(金属イオン源:亜鉛)、エチレン・(メタ)アクリル酸 ・(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体樹脂(金属イオン源:亜鉛)が挙げられる。
非相溶の熱可塑性樹脂ブレンドによる海島構造において海成分と島成分は種類の異なる樹脂で構成され、例えば熱可塑性樹脂Aと熱可塑性樹脂Bからなる非相溶混合物において、熱可塑性樹脂Aと熱可塑性樹脂Bとの比率設定により、海成分を熱可塑性樹脂Aで構成し、島成分を熱可塑性樹脂Bで構成することができ、また海成分を熱可塑性樹脂Bで構成し、島成分を熱可塑性樹脂Aで構成することもできる。島成分を構成する樹脂の比率は、海成分を構成する樹脂の体積に対して1〜50体積%(好ましくは5〜35体積%)、熱可塑性樹脂層全体に対する島成分含有率は0.9〜33.3体積%(好ましくは4.7〜25.9体積%)である。島成分の形状は球状、歪んだ球状、碁石状、ラグビーボール状などである。島成分の平均粒径は0.1〜50μmであり、特に0.1〜30μmが好ましい。本発明の熱可塑性樹脂シートにおいて海島構造は、島成分がエチレン・不飽和カルボン酸共重合体アイオノマー樹脂であることが、カレンダー加工及びラミネート加工における金属熱ロール離型性の観点で好ましい。本発明の熱可塑性樹脂シートにおいて海島構造は、海成分がエチレン・不飽和カルボン酸共重合体アイオノマー樹脂であっても、カレンダー加工及びラミネート加工における金属熱ロール離型性を改善する効果を得ることができる。
本発明の熱可塑性樹脂シートは、1).海島構造において、島成分がエチレン・不飽和カルボン酸共重合体アイオノマー樹脂を含み、かつ、シリコーンオイルの潤滑成分を含み、海成分を構成する熱可塑性樹脂には、シリコーンオイルを含まない。この構成により本発明の熱可塑性樹脂シートをカレンダー成型により製造でき、また得られたシートをラミネーターで複合積層することができる。シートの製造後には、シリコーンオイルは経時的に島成分からブリード抽出することで残存してなくてもよく、シリコーンオイルが海成分に拡散移行していてもよい。2).海島構造において、海成分がエチレン・不飽和カルボン酸共重合体アイオノマー樹脂を含み、かつ、シリコーンオイルの潤滑成分を含み、島成分を構成する熱可塑性樹脂には、シリコーンオイルを含まない。この構成により本発明の熱可塑性樹脂シートをカレンダー成型により製造でき、また得られたシートをラミネーターで複合積層することができる。シートの製造後には、シリコーンオイルは経時的に海成分からブリード抽出することで残存してなくてもよく、シリコーンオイルが島成分に拡散移行していてもよい。
本発明の熱可塑性樹脂シートにおいて、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体アイオノマー樹脂と併用するシリコーンオイルとしては、ジメチルシリコーンオイル、ポリジメチルシロキサンジオール、メチルハイドロジェンシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイルなどのストレートシリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、高級脂肪酸変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、フルオロアルキル変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、カルボキシル変性シリコーンオイル、アルコール変性シリコーンオイル、アルキル・ポリエーテル変性シリコーンオイル、メタクリル酸変性シリコーンオイルなどの変性シリコーンオイルが挙げられ、なかでもアルキル変性シリコーンオイル、高級脂肪酸変性シリコーンオイルが好ましい。これらのシリコーンオイル及び変性シリコーンオイルは、25℃におけるオストワルド粘度が100〜10,000cSt(mm2/s)の範囲にあるものが好ましい。これらのシリコーンオイルの併用添加量は、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体アイオノマー樹脂100質量部に対して、0.05〜5質量部、好ましくは0.1〜2.5質量部である。併用添加量が0.05質量部未満だとカレンダー成型時に、フィルムの十分な金属ロール離型性を得ることができないことがあり、また併用添加量が5質量部を超えると、混練性を悪くするだけでなく、得られるフィルムやシートの表面にシリコーンオイルがブリードして転写汚染することがある。
上述の1)〜2)の海島構造において海成分または島成分のいずれか一方の相が、シリコーンオイルの潤滑成分を含み、もう一方の相にはシリコーンオイルを含まない。すなわち、島成分にシリコーンオイルを含む場合は、海成分にはシリコーンオイルを含まず、また、海成分にシリコーンオイルを含む場合は、島成分にはシリコーンオイルを含まない。海成分または島成分のいずれか一方にシリコーンオイルを含ませるには、合成樹脂非相溶対を構成する2種類の合成樹脂のいずれか一方にあらかじめシリコーンオイルを配合し、シリコーンオイル非含有合成樹脂とシリコーンオイル含有合成樹脂との溶融混合によって、シリコーンオイル含有海成分とシリコーンオイル非含有島成分による構成、またはシリコーンオイル非含有海成分とシリコーンオイル含有島成分による構成を得ることができる。シリコーンオイル非含有合成樹脂とシリコーンオイル含有合成樹脂との混合は一括混合しても良いが、分割混合が好ましい。分割混合は、海成分の混練物に対して島成分混練物を分割投入する方法が海島構造形成の観点において好ましい。本発明の熱可塑性樹脂シートにおいて、海成分または島成分に含むシリコーンオイルは、シートの製造後に、シリコーンオイルが経時的にブリード抽出してもよく、他方成分に拡散移行してもよい。この拡散移行によりエチレン・不飽和カルボン酸共重合体アイオノマー樹脂からシリコーンオイルが抜け出し、本発明の熱可塑性樹脂シートを金属材料と積層した際の金属材料との接着力を経時的に向上させる。
本発明の熱可塑性樹脂シートにおいて、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体アイオノマー樹脂との非相溶ブレンドに用いる熱可塑性樹脂には滑剤を含んでいることがカレンダーによるフィルムまたはシートの成型において好ましい。滑剤としては、炭化水素系(低分子ポリエチレン、パラフィン)、脂肪酸系(ステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸、複合型ステアリン酸、オレイン酸)、脂肪族アルコール系、脂肪族アマイド系(ステアロアミド、オキシステアロアミド、オレイルアミド、エルシルアミド、リシノールアミド、ベヘンアミド、メチロールアミド、メチレンビスステアロアミド、メチレンビスステアロベヘンアミド、高級脂肪酸のビスアミド酸、ステアロアミド、複合型アミド)、脂肪族エステル系(n−ブチルステアレート、メチルヒドロキシステアレート、多価アルコール脂肪酸エステル、飽和脂肪酸エステル、エステル系ワックス)、脂肪酸金属石鹸系族などを用いることができる。また非相溶ブレンドに用いる熱可塑性樹脂が軟質塩化ビニル樹脂の場合、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ブチルベンジル、アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル、セバシン酸ジ−2−エチルヘキシル、リン酸トリクレジル、ポリエステル系高分子可塑剤など公知の可塑剤を用いることができる。
本発明の熱可塑性樹脂シートには、必要に応じて公知の添加剤を含んでいても良い。添加剤としては、例えば、帯電防止剤、難燃剤、軟化剤、充填剤、接着剤、架橋剤(イソシアネート系化合物、カルボジイミド系化合物、オキサゾリン系化合物)、シランカップリング剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、安定剤、抗菌剤、防黴剤、着色剤、蛍光増白剤、蛍光顔料、蓄光顔料などが挙げられる。
本発明の熱可塑性樹脂シートには、編織物からなるシート状基材を芯材に含んでいてもよい。この場合、本発明のシートの厚さは、全体に均一で、0.3〜2.0mm、好ましくは0.5〜1.0mmである。編織物は、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、ビニロン繊維、アクリル繊維などの合成繊維、ジアセテート繊維、トリアセテート繊維などの半合成繊維、レーヨン繊維、ポリノジック繊維などの再生繊維、ガラス繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維、炭素繊維などの無機繊維など、これらの長繊維または短繊維を経糸条、及び緯糸条とする、平織物、綾織物、繻子織物、模紗織物などの織布、及びラッセル編布が挙げられ、特に本発明においてはフィラメント数3〜300本、繊度138〜2223dtex(デシテックス)、特に277〜1112dtexのマルチフィラメント糸条による平織物が経緯物性バランスに優れ好ましい。これら編織物は、糸間間隙を均等に多数配置した経糸条、及び糸間間隙を均等に多数配置した緯糸条を含んで構成される粗目状の編織物(空隙率35〜75%)目開き編織物(空隙率5〜35%)、及び非粗目状編織物(空隙率5%未満)を包含する。
本発明の熱可塑性樹脂シートには、金属線編織メッシュからなるシート状基材を芯材に含んでいてもよい。この場合、本発明のシートの厚さは、全体に均一で、0.3〜3.0mm、好ましくは0.5〜1.5mmである。金属線編織メッシュは、耐火性及び可撓性を有する金属製の線材からなる織物または編物であり、具体的には平織、溶接平織、畳織、綾織、杉綾織、模紗織、絽織、三軸織、トンキャップ織して得られるものである。金属線編織メッシュの好ましい例は、ステンレス製(例えばSUS304等)の線材(例えば線径0.2mm)を、縦と横の各々において4本/インチ〜60本/インチとなるような打ち込み密度の平織物で構成したものである。また、金属線編織メッシュの単位面積に占める空隙面積率は50%以上、特に75〜95%とすることが得られるシートの可撓性の観点で好ましい。金属線編織メッシュを構成する線材の他例としては、例えば、鉄、亜鉛引鉄線、真鍮、銅、燐青銅、各種ステンレス、ニッケル、モネルメタル(銅ニッケル)、ニクローム、鉄クローム、アルミニウム、チタニウム等、及びこれらの混用である。必要に応じて、金属線編織メッシュの表面には、イソシアネート系化合物、カルボジイミド系化合物、オキサゾリン系化合物、チタン系カップリング剤、シラン系カップリング剤から選ばれた1種以上の反応性化合物によって金属線編織メッシュの表面を改質することが好ましい。この表面改質は上記の反応性化合物を0.1〜10%質量濃度で含有する水溶液、もしくは溶剤の塗布、乾燥によって行われ、金属線編織メッシュの表面には反応性化合物の硬化物薄膜が形成されることで、金属線編織メッシュに対する樹脂被覆層の接着強度を一層強固なものにして、金属メッシュ複合シートの屈曲追従性及び屈曲耐久性をより良好なものとすることができる。
本発明において熱可塑性樹脂シートが編織物からなるシート状基材を芯材に含む構成とするには、シート状基材の両面に、熱可塑性樹脂ブレンドによる海島構造を有し、海島構造における海成分または島成分のいずれか一方が、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体アイオノマー樹脂、及びシリコーンオイルとを含んでなるフィルムまたはシートを積層して得ることができる。フィルムは、カレンダー成型またはTダイス押出法により成形した0.05〜0.5mm厚、またシートは、カレンダー成型またはTダイス押出法により成形した0.5〜1.0mm厚であり、これらは、接着剤を介して、あるいは熱ラミネートにより片面づつ積層してもよく、一度に両面に積層してもよい。
特に、本発明の熱可塑性樹脂シートが、金属線編織メッシュからなるシート状基材を芯材に含むものは、高周波誘導加熱による接合体を得ることができる。この接合体は、1).金属線編織メッシュ芯材含有シート同士の接合であり、これらは金属線編織メッシュ芯材含有シートを複数用い、これらのシート同士の端部を任意幅に積重し、この積重部に高周波電磁誘導機を押し当て、高周波電磁誘導によって金属線編織メッシュ芯材を発熱させ、積重部に内包される熱可塑性樹脂被覆部を溶融させて積重部を溶着して得られる。2).金属線編織メッシュ芯材含有シート上に物品を付帯させる接合であり、これらは金属線編織メッシュ芯材含有シート上に、樹脂成型物品、樹脂被覆物品、樹脂塗装物品、金属成型物品、及び金属被覆物品、から選ばれた1種以上の物品を積重し、この積重部に高周波電磁誘導機を押し当て、高周波電磁誘導によって金属線編織メッシュ芯材を発熱させ、積重部に内包される熱可塑性樹脂被覆部を溶融させて積重部を溶着して得られる。3).金属線編織メッシュ芯材含有シート片を他の物品に付帯させる接合であり、これらは金属線編織メッシュ芯材含有シートから任意のサイズ及び形状に加工されたシート部材を、樹脂成型物品、樹脂被覆物品、樹脂塗装物品、金属成型物品、及び金属被覆物品、から選ばれた1種以上の物品に積重し、この積重部に高周波電磁誘導機を押し当て、高周波電磁誘導によって金属線編織メッシュ芯材を発熱させ、積重部に内包される熱可塑性樹脂被覆層を溶融させて積重部を溶着して得られる。高周波電磁誘導加熱は、高周波電流の流れるコイルの中に置かれた導電体が、電磁誘導作用によって導電体に生じる渦電流損による発熱と、ヒステリシス損によって導電体に生じる発熱(磁性材料の各分子が交流磁束によって振動、摩擦して発生する熱量)により急速加熱される現象を利用するものである。
以下、本発明について実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
〈カレンダー成型性〉
1:金属熱ロールからフィルムの離れが良く、外観の良いフィルムが得られる
2:金属熱ロールからフィルムの離れが悪く、フィルム外観も悪い
3:樹脂混練物が金属熱ロールに粘着しフィルムが成型できない
〈摩耗強さ〉
JIS規格L1096・§8.17摩耗強さC法(テーバ法)により、摩耗輪H−38を用い、1kgf荷重、1000回転による摩耗減量を評価した。
1:摩耗減量0〜10mg
2:摩耗減量11〜25mg
3:摩耗減量26〜50mg
4:摩耗減量51〜
〈耐屈曲耐久性〉
JIS規格L1096・§8.17摩耗強さB法(スコット法)により、1kgf荷重500回での、編織物からなるシート状基材と熱可塑性樹脂層間の剥離の有無を評価した。
1:剥離なし
2:剥離を認める
〈カレンダー成型性〉
1:金属熱ロールからフィルムの離れが良く、外観の良いフィルムが得られる
2:金属熱ロールからフィルムの離れが悪く、フィルム外観も悪い
3:樹脂混練物が金属熱ロールに粘着しフィルムが成型できない
〈摩耗強さ〉
JIS規格L1096・§8.17摩耗強さC法(テーバ法)により、摩耗輪H−38を用い、1kgf荷重、1000回転による摩耗減量を評価した。
1:摩耗減量0〜10mg
2:摩耗減量11〜25mg
3:摩耗減量26〜50mg
4:摩耗減量51〜
〈耐屈曲耐久性〉
JIS規格L1096・§8.17摩耗強さB法(スコット法)により、1kgf荷重500回での、編織物からなるシート状基材と熱可塑性樹脂層間の剥離の有無を評価した。
1:剥離なし
2:剥離を認める
[実施例1]
下記配合1の軟質塩化ビニル樹脂の混練物に、下記配合2のエチレン・不飽和カルボン酸共重合体アイオノマー樹脂混練物を、塩化ビニル樹脂単体の質量に対して20質量%加えてバンバリーミキサーで溶融混練し、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体アイオノマー樹脂を均一分散させ非相溶樹脂混合物1を得た。この樹脂混合物1を165℃設定のカレンダーロール4本を通過させることで厚さ0.25mm、幅104cmのフィルムが成型できた。(カレンダー成型性評価:「1」)この熱可塑性樹脂シート表面を顕微鏡観察すると、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体アイオノマー樹脂が島成分を構成しており、軟質塩化ビニル樹脂が海成分を構成していた。(摩耗強さ評価:「2」)
<配合1>
ポリ塩化ビニル樹脂(重合度1300) 100質量部
フタル酸ジオクチル(可塑剤) 40質量部
リン酸トリクレジル(可塑剤) 20質量部
ステアリン酸亜鉛(安定剤兼滑剤) 2質量部
ステアリン酸バリウム(安定剤兼滑剤) 2質量部
<配合2>
エチレン・不飽和カルボン酸共重合体アイオノマー樹脂(Znイオン配位)
100質量部
(三井デュポンポリケミカル株式会社 商品名:商標ハイミラン1652)
シリコーンオイル(アルキル変性) 1質量部
(東芝シリコーン株式会社 商品名:TSF4421:500cSt)
下記配合1の軟質塩化ビニル樹脂の混練物に、下記配合2のエチレン・不飽和カルボン酸共重合体アイオノマー樹脂混練物を、塩化ビニル樹脂単体の質量に対して20質量%加えてバンバリーミキサーで溶融混練し、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体アイオノマー樹脂を均一分散させ非相溶樹脂混合物1を得た。この樹脂混合物1を165℃設定のカレンダーロール4本を通過させることで厚さ0.25mm、幅104cmのフィルムが成型できた。(カレンダー成型性評価:「1」)この熱可塑性樹脂シート表面を顕微鏡観察すると、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体アイオノマー樹脂が島成分を構成しており、軟質塩化ビニル樹脂が海成分を構成していた。(摩耗強さ評価:「2」)
<配合1>
ポリ塩化ビニル樹脂(重合度1300) 100質量部
フタル酸ジオクチル(可塑剤) 40質量部
リン酸トリクレジル(可塑剤) 20質量部
ステアリン酸亜鉛(安定剤兼滑剤) 2質量部
ステアリン酸バリウム(安定剤兼滑剤) 2質量部
<配合2>
エチレン・不飽和カルボン酸共重合体アイオノマー樹脂(Znイオン配位)
100質量部
(三井デュポンポリケミカル株式会社 商品名:商標ハイミラン1652)
シリコーンオイル(アルキル変性) 1質量部
(東芝シリコーン株式会社 商品名:TSF4421:500cSt)
[実施例2]
配合2のエチレン・不飽和カルボン酸共重合体アイオノマー樹脂混練物に、配合1の軟質塩化ビニル樹脂の混練物を、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体アイオノマー樹脂単体の質量に対して20質量%加えてバンバリーミキサーで溶融混練し、軟質塩化ビニル樹脂を均一分散させ非相溶樹脂混合物2を得た。この樹脂混合物2を160℃設定のカレンダーロール4本を通過させることで、厚さ0.25mm、幅104cmのフィルムに成型できた。(カレンダー成型性評価:「1」)この熱可塑性樹脂シートを顕微鏡観察すると、軟質塩化ビニル樹脂が島成分を構成しており、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体アイオノマー樹脂が海成分を構成していた。(摩耗強さ評価:「1」)
配合2のエチレン・不飽和カルボン酸共重合体アイオノマー樹脂混練物に、配合1の軟質塩化ビニル樹脂の混練物を、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体アイオノマー樹脂単体の質量に対して20質量%加えてバンバリーミキサーで溶融混練し、軟質塩化ビニル樹脂を均一分散させ非相溶樹脂混合物2を得た。この樹脂混合物2を160℃設定のカレンダーロール4本を通過させることで、厚さ0.25mm、幅104cmのフィルムに成型できた。(カレンダー成型性評価:「1」)この熱可塑性樹脂シートを顕微鏡観察すると、軟質塩化ビニル樹脂が島成分を構成しており、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体アイオノマー樹脂が海成分を構成していた。(摩耗強さ評価:「1」)
[実施例3]
実施例1における配合2を下記配合3とした以外、実施例1と同様にして、厚さ0.25mm、幅104cmのフィルムに成型できた。(カレンダー成型性評価:「1」)この熱可塑性樹脂シート表面を顕微鏡観察すると、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体アイオノマー樹脂が島成分を構成しており、軟質塩化ビニル樹脂が海成分を構成していた。(摩耗強さ評価:「2」)
<配合3>
エチレン・不飽和カルボン酸共重合体アイオノマー樹脂(Naイオン配位)100質量部
(三井デュポンポリケミカル株式会社 商品名:商標ハイミラン1605)
シリコーンオイル(ポリエーテル変性) 1質量部
(東芝シリコーン株式会社 商品名:TSF4445:800cSt)
実施例1における配合2を下記配合3とした以外、実施例1と同様にして、厚さ0.25mm、幅104cmのフィルムに成型できた。(カレンダー成型性評価:「1」)この熱可塑性樹脂シート表面を顕微鏡観察すると、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体アイオノマー樹脂が島成分を構成しており、軟質塩化ビニル樹脂が海成分を構成していた。(摩耗強さ評価:「2」)
<配合3>
エチレン・不飽和カルボン酸共重合体アイオノマー樹脂(Naイオン配位)100質量部
(三井デュポンポリケミカル株式会社 商品名:商標ハイミラン1605)
シリコーンオイル(ポリエーテル変性) 1質量部
(東芝シリコーン株式会社 商品名:TSF4445:800cSt)
[実施例4]
実施例2における配合2を配合3とした以外、実施例2と同様にして、厚さ0.25mm、幅104cmのフィルムに成型できた。(カレンダー成型性評価:「1」)この熱可塑性樹脂シート表面を顕微鏡観察すると、軟質塩化ビニル樹脂が島成分を構成しており、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体アイオノマー樹脂が海成分を構成していた。(摩耗強さ評価:「1」)
実施例2における配合2を配合3とした以外、実施例2と同様にして、厚さ0.25mm、幅104cmのフィルムに成型できた。(カレンダー成型性評価:「1」)この熱可塑性樹脂シート表面を顕微鏡観察すると、軟質塩化ビニル樹脂が島成分を構成しており、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体アイオノマー樹脂が海成分を構成していた。(摩耗強さ評価:「1」)
[実施例5]
実施例1のフィルムを、線径0.5mmのステンレス線(SUS304)を、縦3本/インチ×横3本/インチ×で打ち込んだ平織金網(空隙面積率88.2%)をシランカップリング剤(γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン)3質量部を含有する水溶液中に浸し、これを乾燥して得た長手方向300cm×幅方向100cm寸法のメッシュ芯材の両面に160℃設定のラミネーターを用いて積層して、金属線編織メッシュからなるシート状基材を芯材に含む熱可塑性樹脂シートを得た。この熱可塑性樹脂シートを顕微鏡観察すると、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体アイオノマー樹脂が島成分を構成しており、軟質塩化ビニル樹脂が海成分を構成していた。得られた幅100cm、長手300cmシートを長手方向150cmで裁断し、2枚の裁断シート(幅100cm、長手150cm)を、互いの長手方向端部を4cm幅で重ね、SMART CORPORATION社の高周波誘導加熱機:品番EASY WELDER:SEW−1110(AC110V)、及び発振アダプターAP−11B(5cm×14cm)を用い、アダプターをシートの重ね合わせ部に押圧し、20秒間通電、15秒間冷却して熱融着を行い、金属線編織メッシュからなるシート状基材を芯材に含む熱可塑性樹脂シートの接合体を得た。(耐屈曲耐久性評価:「1」)
実施例1のフィルムを、線径0.5mmのステンレス線(SUS304)を、縦3本/インチ×横3本/インチ×で打ち込んだ平織金網(空隙面積率88.2%)をシランカップリング剤(γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン)3質量部を含有する水溶液中に浸し、これを乾燥して得た長手方向300cm×幅方向100cm寸法のメッシュ芯材の両面に160℃設定のラミネーターを用いて積層して、金属線編織メッシュからなるシート状基材を芯材に含む熱可塑性樹脂シートを得た。この熱可塑性樹脂シートを顕微鏡観察すると、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体アイオノマー樹脂が島成分を構成しており、軟質塩化ビニル樹脂が海成分を構成していた。得られた幅100cm、長手300cmシートを長手方向150cmで裁断し、2枚の裁断シート(幅100cm、長手150cm)を、互いの長手方向端部を4cm幅で重ね、SMART CORPORATION社の高周波誘導加熱機:品番EASY WELDER:SEW−1110(AC110V)、及び発振アダプターAP−11B(5cm×14cm)を用い、アダプターをシートの重ね合わせ部に押圧し、20秒間通電、15秒間冷却して熱融着を行い、金属線編織メッシュからなるシート状基材を芯材に含む熱可塑性樹脂シートの接合体を得た。(耐屈曲耐久性評価:「1」)
[実施例6]
実施例2のフィルムを、線径0.2mmのステンレス線(SUS304)を、縦25本/インチ×横25本/インチ×で打ち込んだ平織金網(空隙面積率60%)をシランカップリング剤(γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン)3質量部を含有する水溶液中に浸し、これを乾燥して得た長手方向300cm×幅方向100cm寸法のメッシュ芯材の両面に160℃設定のラミネーターを用いて積層して、金属線編織メッシュからなるシート状基材を芯材に含む熱可塑性樹脂シートを得た。この熱可塑性樹脂シートを顕微鏡観察すると、軟質塩化ビニル樹脂が島成分を構成しており、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体アイオノマー樹脂が海成分を構成していた。得られた幅100cm、長手300cmシートを長手方向150cmで裁断し、2枚の裁断シート(幅100cm、長手150cm)を、互いの長手方向端部を4cm幅で重ね、SMART CORPORATION社の高周波誘導加熱機:品番EASY WELDER:SEW−1110(AC110V)、及び発振アダプターAP−11B(5cm×14cm)を用い、アダプターをシートの重ね合わせ部に押圧し、20秒間通電、15秒間冷却して熱融着を行い、金属線編織メッシュからなるシート状基材を芯材に含む熱可塑性樹脂シートの接合体を得た。(耐屈曲耐久性評価:「1」)
実施例2のフィルムを、線径0.2mmのステンレス線(SUS304)を、縦25本/インチ×横25本/インチ×で打ち込んだ平織金網(空隙面積率60%)をシランカップリング剤(γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン)3質量部を含有する水溶液中に浸し、これを乾燥して得た長手方向300cm×幅方向100cm寸法のメッシュ芯材の両面に160℃設定のラミネーターを用いて積層して、金属線編織メッシュからなるシート状基材を芯材に含む熱可塑性樹脂シートを得た。この熱可塑性樹脂シートを顕微鏡観察すると、軟質塩化ビニル樹脂が島成分を構成しており、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体アイオノマー樹脂が海成分を構成していた。得られた幅100cm、長手300cmシートを長手方向150cmで裁断し、2枚の裁断シート(幅100cm、長手150cm)を、互いの長手方向端部を4cm幅で重ね、SMART CORPORATION社の高周波誘導加熱機:品番EASY WELDER:SEW−1110(AC110V)、及び発振アダプターAP−11B(5cm×14cm)を用い、アダプターをシートの重ね合わせ部に押圧し、20秒間通電、15秒間冷却して熱融着を行い、金属線編織メッシュからなるシート状基材を芯材に含む熱可塑性樹脂シートの接合体を得た。(耐屈曲耐久性評価:「1」)
エチレン・不飽和カルボン酸共重合体アイオノマー樹脂は、熱溶融時に著しい金属と接着性を発現する特性にもかかわらず、実施例1〜4のシートは、熱可塑性樹脂ブレンドによる海島構造を有し、海島構造における海成分または島成分のいずれか一方が、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体アイオノマー樹脂、及びシリコーンオイルとを含んでおり、このような本発明の海島構造を形成することによって、カレンダー成型によるフィルム加工において、金属熱ロールに強固に貼り付くことなく、金属ロールとの接着性と剥離性を絶妙に抑制することでフィルム加工を可能とすることができた。また実施例5と6で得た金属線編織メッシュを芯材とする本発明の熱可塑性樹脂シートは、金属線編織メッシュと良好な接着性を保持するものであった。特に実施例5と6で得られたシートは、高周波誘導加熱法によりシート同士、及び熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、金属材料、およびコンクリート材料との接合可能で、得られた接合体においても良好な耐破壊強度を有していた。
[比較例1]
実施例1において、配合2のエチレン・不飽和カルボン酸共重合体アイオノマー樹脂の併用を省略した以外は実施例1と同様にしてシートを得た。得られたシートはエチレン・不飽和カルボン酸共重合体アイオノマー樹脂を含む海島構造を有さないため、カレンダー加工は容易ではあったが、得られたフィルムは耐摩耗性が劣るものであった。(カレンダー成型性評価:「1」/摩耗強さ評価:「4」)
実施例1において、配合2のエチレン・不飽和カルボン酸共重合体アイオノマー樹脂の併用を省略した以外は実施例1と同様にしてシートを得た。得られたシートはエチレン・不飽和カルボン酸共重合体アイオノマー樹脂を含む海島構造を有さないため、カレンダー加工は容易ではあったが、得られたフィルムは耐摩耗性が劣るものであった。(カレンダー成型性評価:「1」/摩耗強さ評価:「4」)
[比較例2]
実施例2において、配合1の軟質塩化ビニル樹脂の併用を省略した以外は実施例2と同様にした。得られたシートはエチレン・不飽和カルボン酸共重合体アイオノマー樹脂を含む海島構造を有さないため、α,β−不飽和カルボン酸共重合体樹脂がカレンダー加工機の金属熱ロールに粘着して離型不能となりフィルムを得ることができなかった。(カレンダー成型性評価:「3」/摩耗強さ評価:「不能」)
実施例2において、配合1の軟質塩化ビニル樹脂の併用を省略した以外は実施例2と同様にした。得られたシートはエチレン・不飽和カルボン酸共重合体アイオノマー樹脂を含む海島構造を有さないため、α,β−不飽和カルボン酸共重合体樹脂がカレンダー加工機の金属熱ロールに粘着して離型不能となりフィルムを得ることができなかった。(カレンダー成型性評価:「3」/摩耗強さ評価:「不能」)
[比較例3]
実施例1において、配合2からアルキル変性シリコーンオイル(TSF4421) 1質量部を省略した以外は実施例1と同様にしてシートを得た。得られたシートはシリコーンオイルを含む海島構造を形成して有さないため、カレンダー加工機の金属熱ロールに粘着して離型が困難となり、カレンダー加工機を止めて手作業で剥がし取ったわずかなフィルムは外観及び肉厚精度の悪いものであった。(カレンダー成型性評価:「2」/摩耗強さ評価:「2」)
実施例1において、配合2からアルキル変性シリコーンオイル(TSF4421) 1質量部を省略した以外は実施例1と同様にしてシートを得た。得られたシートはシリコーンオイルを含む海島構造を形成して有さないため、カレンダー加工機の金属熱ロールに粘着して離型が困難となり、カレンダー加工機を止めて手作業で剥がし取ったわずかなフィルムは外観及び肉厚精度の悪いものであった。(カレンダー成型性評価:「2」/摩耗強さ評価:「2」)
[比較例4]
実施例2において、配合2からアルキル変性シリコーンオイル(TSF4421) 1質量部を省略した以外は実施例2と同様とした。しかし、この組成物ではシリコーンオイルを含む海島構造を形成して有さないため、α,β−不飽和カルボン酸共重合体樹脂混練物がカレンダー加工機の金属熱ロールに粘着して離型不能となりフィルムを得ることができなかった。(カレンダー成型性評価:「3」/摩耗強さ評価:「不能」)
実施例2において、配合2からアルキル変性シリコーンオイル(TSF4421) 1質量部を省略した以外は実施例2と同様とした。しかし、この組成物ではシリコーンオイルを含む海島構造を形成して有さないため、α,β−不飽和カルボン酸共重合体樹脂混練物がカレンダー加工機の金属熱ロールに粘着して離型不能となりフィルムを得ることができなかった。(カレンダー成型性評価:「3」/摩耗強さ評価:「不能」)
本発明によれば、カレンダー成型によりエチレン・不飽和カルボン酸共重合体アイオノマー樹脂成分を含む熱可塑性樹脂シートを得ることが可能となる。従来はエチレン・不飽和カルボン酸共重合体アイオノマー樹脂は、熱溶融時に著しい金属と接着性を発現するため、例えばカレンダー成型によるフィルム加工においては、カレンダー機の金属熱ロールに貼り付いてしまい、これらのフィルムを得ることが至極困難とされていたが、熱可塑性樹脂非相溶ブレンドによる海島構造を形成し、この海島構造における海成分または島成分のいずれか一方を、シリコーンオイルを含有するエチレン・不飽和カルボン酸共重合体アイオノマー樹脂の相とすることによって、金属ロールとの接着性をバランス良く抑制し、カレンダー機の金属熱ロールから離型することに成功したものである。本発明により得られた熱可塑性樹脂シートは、耐摩耗性に優れた産業資材用シートが得られることで、大型テント、トラックウイング幌、シートシャッター、間仕切り、シート看板、電飾看板、床材、シートライニング、物流コンテナなどの構成部材に広く利用でき、特に金属材料との良好な密着性を有することから、金属線編織メッシュを芯材として、この表面に本発明による熱可塑性樹脂シートを積層すれば、防犯・防護のセキユリティ要求が高い用途のパーツに好適かつ有用である。また、これらの金属線編織メッシュ芯体含有シートは、高周波誘導加熱により接合が可能であるので建築用、土木工事などのコンクリート構造物に対しても適用可能である。
1:非相溶の熱可塑性樹脂ブレンドによる海島構造
2:島成分
2−1:エチレン・不飽和カルボン酸共重合体アイオノマー樹脂、
及びシリコーンオイルとを含む島成分
2−2:エチレン・不飽和カルボン酸共重合体アイオノマー樹脂、
及びシリコーンオイルとを含まない島成分
3:海成分
3−1:エチレン・不飽和カルボン酸共重合体アイオノマー樹脂、
及びシリコーンオイルとを含む海成分
3−2:エチレン・不飽和カルボン酸共重合体アイオノマー樹脂、
及びシリコーンオイルとを含まない海成分
4:熱可塑性樹脂シート
5:編織物からなるシート状基材
2:島成分
2−1:エチレン・不飽和カルボン酸共重合体アイオノマー樹脂、
及びシリコーンオイルとを含む島成分
2−2:エチレン・不飽和カルボン酸共重合体アイオノマー樹脂、
及びシリコーンオイルとを含まない島成分
3:海成分
3−1:エチレン・不飽和カルボン酸共重合体アイオノマー樹脂、
及びシリコーンオイルとを含む海成分
3−2:エチレン・不飽和カルボン酸共重合体アイオノマー樹脂、
及びシリコーンオイルとを含まない海成分
4:熱可塑性樹脂シート
5:編織物からなるシート状基材
Claims (5)
- 非相溶の熱可塑性樹脂ブレンドによる海島構造を有し、前記海島構造における海成分または島成分のいずれか一方が、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体アイオノマー樹脂、及びシリコーンオイルとを含むことを特徴とする熱可塑性樹脂シート。
- 編織物からなるシート状基材を芯材に含む、請求項1に記載の熱可塑性樹脂シート。
- 前記シリコーンオイルが、ブリード抽出性を有する、請求項1または2に記載の熱可塑性樹脂シート。
- エチレン・不飽和カルボン酸共重合体アイオノマー樹脂、及びシリコーンオイルとを含む組成物Aと、前記アイオノマー樹脂と非相溶の熱可塑性樹脂からなる組成物B、との混合において、前記組成物Bの混練物に、前記組成物Aの混練物を分割投入して非相溶混練物を構成し、この非相溶混練物より海島構造含有シートをカレンダー成型することを特徴とする熱可塑性樹脂シートの製造方法。
- 編織物からなるシート状基材に、海成分または島成分のいずれか一方に、前記アイオノマー樹脂、及び前記シリコーンオイルとを含む前記海島構造含有シートを積層する請求項4に記載の熱可塑性樹脂シートの製造方法。
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JP2009252089A JP2011094085A (ja) | 2009-11-02 | 2009-11-02 | 熱可塑性樹脂シート及びその製造方法 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
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2009
- 2009-11-02 JP JP2009252089A patent/JP2011094085A/ja active Pending
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