JP2011093478A - 車両運動制御システム - Google Patents

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Abstract

【課題】単一の前輪とその前輪より後方側に配設された左輪および右輪とを有する車両に搭載されて車両の運動を制御するシステムであって、車両の斜め前方への転倒を防止することが可能な車両運動制御システムを提供する。
【解決手段】制動かつ旋回状態にある場合において車両が転倒する可能性が高くなった場合に、車両がさらに旋回内側を向くように車両の運動を制御する。車両を旋回内側に向けることで、制動旋回によって車体に作用する力の向きを、車両が転倒しにくい向き、例えば、車幅方向に平行な向き等に変更することが可能となる。したがって、本車両運動制御システムによれば、車両の転倒を防止することが可能となる。
【選択図】図4

Description

本発明は、自身の前方側に配設された単一の前輪とその前輪より後方側で自身の左右にそれぞれ配設された左輪および右輪とを有する車両に関し、特に、その車両の運動を制御するためのシステムに関する。
近年では、例えば、下記特許文献1に記載されているように、自身の前方側に配設された単一の前輪とその前輪より後方側で自身の左右にそれぞれ配設された左輪および右輪とを有する車両が検討されている。また、下記特許文献2に記載されているように、前輪と左右輪とに加え、さらに車両後方側に単一の車輪が配設された車両、つまり、4つの車輪が菱形状に配設された車両が検討されている。
特開2006−130985号公報 中国授権公告号CN1304237C 特開2004−66940号公報
4つの車輪が四隅に配設された一般的な車両は、車幅方向の転倒のみを考慮すればよい。そこで、そのような車輪が四隅に配設された車両においては、車両の転倒を防止するために、例えば、上記特許文献3に、車両の横加速度が制限値を超えないように各車輪の制動力を制御する技術が記載されている。それに対して、上記特許文献1,2に記載されたような車両は、車両の斜め前方へ最も転倒しやすい。本発明は、そのような実情に鑑みてなされたものであり、自身の前方側に配設された単一の前輪とその前輪より後方側で自身の左右にそれぞれ配設された左輪および右輪とを有する車両に搭載されて車両の運動を制御する車両運動制御システムであって、特に車両の斜め前方への転倒を防止することが可能な車両運動制御システムを提供することを課題とする。
本発明の車両運動制御システムは、自身の前方側に配設された単一の前輪とその前輪より後方側で自身の左右にそれぞれ配設された左輪および右輪とを有する車両に搭載され、制動かつ旋回状態にある場合(以下、「制動旋回」という場合がある)において車両が転倒する可能性が高くなった場合に、車両がさらに旋回内側を向くように車両の運動を制御することを特徴とする。
本発明の車両運動制御システムは、車両を旋回内側に向けることで、制動旋回によって車体に作用する力の向きを、車両が転倒しにくい向き、例えば、車幅方向に平行な向き等に変更することが可能となる。したがって、本発明の車両運動制御システムによれば、車両の転倒を防止することが可能となる。
発明の態様
以下に、本願において特許請求が可能と認識されている発明(以下、「請求可能発明」という場合がある)の態様をいくつか例示し、それらについて説明する。各態様は請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも請求可能発明の理解を容易にするためであり、それらの発明を構成する構成要素の組み合わせを、以下の各項に記載されたものに限定する趣旨ではない。つまり、請求可能発明は、各項に付随する記載,実施例の記載等を参酌して解釈されるべきであり、その解釈に従う限りにおいて、各項の態様にさらに他の構成要素を付加した態様も、また、各項の態様から何某かの構成要素を削除した態様も、請求可能発明の一態様となり得るのである。
なお、以下の各項において、(1)項が請求項1に相当し、請求項1に(2)項の技術的特徴を付加したものが請求項2に、請求項1または請求項2に(4)項の技術的特徴を付加したものが請求項3に、請求項1ないし請求項3のいずれか1つに(3)項の技術的特徴を付加したものが請求項4に、請求項1ないし請求項4のいずれか1つに(5)項の技術的特徴を付加したものが請求項5に、請求項1ないし請求項5のいずれか1つに(6)項の技術的特徴を付加したものが請求項6に、それぞれ相当する。
(1)自身の前方側に配設された単一の前輪とその前輪より後方側で自身の左右にそれぞれ配設された左輪および右輪とを有する車両に搭載され、その車両の運動を制御する車両運動制御システムであって、
制動かつ旋回状態にある場合において車両が転倒する可能性が高くなった場合に、車両がさらに旋回内側を向くように車両の運動を制御することを特徴とする車両運動制御システム。
本項に記載の車両運動制御システムは、3つの車輪が三角形状に配設された車両に搭載される。なお、本項の車両運動制御システムが搭載される車両は、車輪が3つのものに限定されない。例えば、後に詳しく説明するように、左右輪よりさらに車両後方に配設された後輪を有するもの、車輪がいわゆる菱形配置された車両であってもよい。そのような車両は、車両の前方に単一の車輪しか配設されていないため、重心位置から前輪と左輪とを結ぶ直線までの距離,重心位置から前輪と右輪とを結ぶ直線までの距離が、重心位置から左右輪までの車幅方向の距離より短く、車両の斜め前方へ転倒しやすい。具体的には、制動かつ旋回状態にある場合、当然に車体に斜め前方への力が作用し、その力によって車両が転倒する可能性があるのである。なお、本項に記載の「制動かつ旋回状態(以下、単に「制動旋回」という場合がある)」とは、運転者がステアリング操作に加えてブレーキ操作をも行っている状態に限定されず、路面とタイヤとの摩擦による抵抗,いわゆるエンジンブレーキや駆動用モータの回転抵抗等によって、車輪に何らかの制動力が働いている状態でステアリング操作された状態、つまり、今の車両の状態のままでは車速が低下する状態をも意味する。
本項に記載の車両運動制御システムは、制動旋回中において車両が斜め前方へ転倒する可能性が高くなった場合に、車両がさらに旋回内側を向くように、車両の運動を制御する。なお、本項にいう「車両が旋回内側を向くように車両の運動を制御する」とは、例えば、車両の旋回半径が小さくなるようにすること、ヨーレートが大きくなるようにすること、オーバステア傾向とすること、車両を旋回内側に向かって車体の重心まわりに回転させるようにすること等を意味する。つまり、本システムによれば、制動旋回により車体に作用する力の向きが、転倒しやすい斜め前方から、真横に近づくことになり、車両の転倒を防止することが可能となるのである。
ちなみに、本項に記載のシステムにおける車両を旋回内側に向けるための制御(以下、「車両方向変更制御」という場合がある。)は、その制御手法が特に限定されない。後に詳しく説明するように、本項のシステムが搭載される車両が備える種々の装置等を制御して、車両が旋回内側を向くようにする種々の制御を採用可能である。なお、車両が転倒する可能性が高い場合、速やかに車両が旋回内側を向くことが望ましく、本項のシステムが、車両方向変更制御として複数の制御手法を実行可能である場合には、それらが並行して実行されることが望ましい。
(2)当該車両運動制御システムが、
車体に生じる加速度の向きが、左旋回時においては車体の重心位置から右輪に向かう向きに近づき、右旋回時においては車体の重心位置から左輪に向かう向きに近づくように、車両の運動を制御する(1)項に記載の車両運動制御システム。
本項に記載の態様は、車両の向きを変更する際の目標を定めた態様であり、車体に生じる加速度の向きが、旋回外輪に向かう向きに近づくように車両の運動を制御する態様である。加速度の向きが、旋回外輪に向かう向きに近くなるほど、その加速度の前輪と旋回外輪とを結ぶ直線に直交する方向の成分が小さくなると考えられる。したがって、本項の態様によれば、車両を斜め前方に転倒させる力がより小さくなるように、車両の向きを変更することが可能である。
(3)前輪,左輪および右輪のうちの1以上ものが、転舵輪とされ、
当該車両運動制御システムが、
前記転舵輪の転舵を制御する転舵制御部を備え、
車両が転倒する可能性が高くなった場合に、車両が旋回内側に向くように前記転舵輪をさらに転舵させるように構成された(1)項または(2)項に記載の車両運動制御システム。
本項に記載の態様は、車両方向変更制御を具体化した一態様であり、転舵輪をさらに転舵させることにより車両の向きを変更する態様である。速やかに車両の向きを変更するという観点からすれば、車両が転倒する可能性が高くなった直後には、すべての転舵輪を大きく転舵することが望ましく、転舵可能な最大量となるまで転舵することが望ましい。
また、本項の態様は、例えば、検出された加速度の向きと旋回外輪に向かう向きとの角度差に基づいて、その角度差がなくなるように、転舵輪の転舵角を制御する態様とすることが可能である。そのような態様とすれば、車体に生じる加速度の向きを旋回外輪に向かう向きに維持させることも可能である。
(4)前記左輪および右輪の各々が、独立して制動可能とされ、
当該車両運動制御システムが、
左輪および右輪の各々の制動力を制御する制動力制御部を備え、
車両が転倒する可能性が高くなった場合に、左輪および右輪のうちの旋回内輪の制動力がそれらのうちの旋回外輪の制動力より大きくなるように制御することで、車両が旋回内側を向くように構成された(1)項ないし(3)項のいずれか1つに記載の車両運動制御システム。
本項に記載の態様は、車両方向変更制御を具体化した一態様であり、左右輪の各々の制動力に差をつけることで車両の向きを変更する態様である。速やかに車両の向きを変更するという観点からすれば、車両が転倒する可能性が高くなった直後には、旋回内輪と旋回外輪との制動力差はできる限り大きい方が望ましく、旋回外輪の制動力を0とし、かつ、左輪と右輪とに対応するブレーキで発生させるべき制動力のすべてを旋回内輪に対応するブレーキに発生させるようにすることが望ましい。
また、本項の態様は、例えば、検出された加速度の向きと旋回外輪に向かう向きとの角度差がなくなるように、その角度差に基づいて、左輪と右輪との制動力差を制御する態様とすることが可能である。そのような態様とすれば、車体に生じる加速度の向きを旋回外輪に向かう向きに維持させることも可能である。
(5)当該車両運動制御システムが搭載される車両が、さらに、
前輪,左輪および右輪に対応して設けられ、それぞれが、自身に対応するばね上部とばね下部との接近離間動作に対する減衰力を発生させるとともに、その減衰力を発生させるための自身の能力であってその減衰力の大きさの基準となる減衰係数を変更可能な3つのショックアブソーバを有し、
当該車両運動制御システムが、
前記3つのショックアブソーバの各々の減衰係数を制御する減衰係数制御部を備え、
車両が転倒する可能性が高くなった場合に、それら3つのショックアブソーバの各々の減衰係数を通常より高くするように構成された(1)項ないし(4)項のいずれか1つに記載の車両運動制御システム。
本項に記載の態様は、上述した車両方向変更制御を補助する制御、つまり、車両方向変更制御とは別の車両の転倒を防止するための制御を実行する態様である。本項の態様によれば、ショックアブソーバの減衰係数が高くされることで、車体の重心位置の変動が抑制される。つまり、車両の向きを旋回内側に向ける最中に、車体が斜め前方に傾倒することが抑制され、より確実に車両の転倒が防止されるのである。
(6)当該車両運動制御システムが、
車両が転倒する可能性が高い状況下からその可能性が低くなった場合に、車両の向きが旋回外側を向くように車両の運動を制御するように構成された(1)項ないし(5)項のいずれか1つに記載の車両運動制御システム。
本項に記載の態様によれば、車両の向きを、転倒を防止するために変更した状態から、元の向きに戻すことが可能である。具体的には、例えば、車両が旋回外側に向くように前記転舵輪を転舵させること、左輪および右輪のうちの旋回外輪の制動力が旋回内輪の制動力より大きくなるように制御すること、あるいは、それらの両者を行うことで、車両の向きが旋回外側に向くようにする態様とすることが可能である。
(7)前記前輪が、転舵輪とされた(1)項ないし(6)項のいずれか1つに記載の車両運動制御システム。
(8)前記左輪および右輪の各々が、駆動輪とされ、それぞれが独立して駆動可能とされた(1)項ないし(7)項のいずれか1つに記載の車両運動制御システム。
上記2つの項に記載の態様は、車両運動制御システムが搭載される車両の構成を限定した態様である。
(9)当該車両運動制御システムが搭載される車両が、さらに、左輪および右輪より後方側に配設された単一の後輪を有する(1)項ないし(8)項のいずれか1つに記載の車両運動制御システム。
(10)前記後輪が、転舵輪とされた(9)項に記載の車両運動制御システム。
上記2つの項に記載の態様は、車両運動制御システムが搭載される車両を、4つの車輪が菱形状に配設された車両に限定した態様である。後者の態様は、さらに、前輪,左輪および右輪のうちの転舵輪とされたものに加えて、後輪も転舵輪とされた態様である。後者の態様において、前輪と後輪とを逆相に転舵するように構成すれば、最小回転半径の小さな車両が実現することになる。したがって、後者の態様は、車両が旋回内側に向くように転舵輪を転舵させる態様に、特に有効な態様となる。
請求可能発明の実施例である車両用運動制御システムを搭載する車両の全体構成を示す模式図である。 前輪に対応するシャシーを示す側面図である。 左輪に対応するシャシーを示す車両後方から眺めた正面断面図である 請求可能発明の実施例である車両運動制御システムによって実行される転倒防止制御の概念図である。 車両が転倒する可能性が高い加速度の範囲である過大加速度範囲を示す図である。 図1に示す電子制御ユニットによって実行される実行制御切換プログラムを表すフローチャートである。 図1に示す電子制御ユニットによって実行される転舵制御プログラムを表すフローチャートである。 図1に示す電子制御ユニットによって実行される制動力制御プログラムを表すフローチャートである。 図1に示す電子制御ユニットによって実行される減衰力制御プログラムを表すフローチャートである。 請求可能発明の実施例である車両運動制御システムの制御装置として機能する電子制御ユニットの機能に関するブロック図である。
以下、請求可能発明を実施するための最良の形態として、本発明の一実施例を、図を参照しつつ詳しく説明する。なお、請求可能発明は、下記実施例の他、前記〔発明の態様〕の項に記載された態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することができる。また、〔発明の態様〕の各項の説明に記載されている技術的事項を利用して、下記の実施例の変形例を構成することも可能である。
<車両運動制御システム搭載車両の構成>
図1に、請求可能発明の実施例である車両運動制御システムが搭載される車両を模式的に示す。本車両は、菱形状に配設された4つの車輪12を有している。詳しく言えば、車両の前方側に配設された前輪12Fと、車両前後方向のほぼ中間で車幅方向の両端の各々に配設された左輪12MLおよび右輪12MRと、車両の後方側に配設された後輪12Rとを有している。また、本車両には、サスペンションシステムが搭載され、そのサスペンションシステムは、4つの車輪12F,ML,MR,Rと車体14との間に、それら4つの車輪12の各々に対応して独立懸架式の4つのサスペンション装置16を備えている。さらに、本車両には、ブレーキシステムも搭載され、そのブレーキシステムは、いわゆる電気機械式ブレーキ(EMB)とされている。詳しく言えば、そのブレーキシステムは、ブレーキペダル20を主体とするブレーキ操作装置と、4つの車輪12の各々に対応して設けられた4つの制動装置22とが物理的に分離され、各車輪12毎に、対応する制動装置22が有する動力源の動力によって制動力を発生させるシステムである。なお、それらサスペンション装置16,制動装置22は総称であり、4つの車輪のいずれに対応するものであるかを明確にする必要のある場合には、車輪12と同様に、図にも示すように、車輪位置を示す添え字として、前輪,左輪,右輪,後輪の各々に対応するものにF,ML,MR,Rを付す場合がある。
本車両においては、4つの車輪12のうちの前輪12Fおよび後輪12Rが、転舵輪とされている。本車両には、ステアリングシステムも搭載され、そのステアリングシステムは、いわゆるステアバイワイヤ型のものとされている。つまり、そのステアリングシステムは、ステアリングホイール30を主体とするステアリング操作装置32と、前輪12Fおよび後輪12Rの各々に対応して設けられた2つの転舵装置34とが機械的に分離され、ステアリングホイール30に加えられる操作力によらずに、2つの転舵装置34の各々が有する動力源の動力によって前輪12F,後輪12Rを転舵するシステムである。なお、2つの転舵装置34については、後に詳しく説明する。
また、本車両においては、4つの車輪12のうちの左輪12MLおよび右輪12MRが、駆動輪とされている。本車両は、いわゆるドライブバイワイヤ方式のものであり、アクセルペダル40を主体とするアクセル操作装置と、左輪12MLおよび右輪12MRの各々に対応して設けられた2つの駆動装置42とが機械的に分離されている。そして、アクセルペダル40の操作に応じ、2つの駆動装置42の各々が有するモータが駆動され、それらの各々のモータの動力によって推進される。なお、2つの駆動装置42については、後に詳しく説明する。
転舵輪である前輪12Fと後輪12Rとの各々に対応するシャシーは、略同様の構成とみなせるため、説明の簡略化に配慮して、図2を参照しつつ、前輪12Fに対応するシャシーを代表して説明する。前輪12Fに対応するシャシーは、上述したように、サスペンション装置16F,制動装置22F,転舵装置34Fを含んで構成される。サスペンション装置16Fは、ダブルウィッシュボーンに類似する構造のものであり、アッパアーム50とロアアーム52とを備えている。それらアッパアーム50とロアアーム52とのそれぞれの一端部は、車体14に回動可能に連結され、他端部は、車輪12を回転可能に保持するキャリア54の上方にボールジョイントを介して連結されている。そのような構成により、キャリア54は、車体14に対して略一定の軌跡を描くような上下動が可能とされるとともに、2本のアーム50,52の各々の他端部を連結する2つのボールジョイントを結ぶ軸(キングピン軸)の回りに回動可能とされている。
また、サスペンション装置16Fは、サスペンションスプリングとしてのコイルスプリング60と、ショックアブソーバ62とを備えている。それらコイルスプリング60とショックアブソーバ62とは、それぞれ、車体14の一部であるばね上部としてのマウント部と、ばね下部の一部分を構成するロアアーム52との間に、互いに並列的に配設されている。ショックアブソーバ62は、いわゆる電磁式ショックアブソーバであり、電磁モータ64を有して、その電磁モータ64が発生させる力に依拠してばね上部とばね下部とに対して接近・離間する向きの力を発生させるものとされている。つまり、ショックアブソーバ62は、ばね上部とばね下部との接近・離間動作に対する減衰力を発生させることが可能とされている。また、ショックアブソーバ62は、電磁モータ64が発生させる力を変更することによって、減衰力の大きさを変更すること、つまり、減衰係数を変更することが可能とされている。なお、ショックアブソーバ62は、ばね上部とばね下部との接近・離間動作に対する推進力をも発生させることが可能とされており、いわゆるスカイフックダンパ理論に基づく制御等を実行することが可能とされている。
制動装置22Fは、先にも説明したように、電気機械式ブレーキであり、車輪12と一体的に回転するディスクロータ70と、車輪とともに回転しない車両の一部、具体的には、キャリア54に配設されたブレーキパッドと、そのブレーキパッドをディスクロータ70に押し付ける電磁モータ72とを含んで構成される。つまり、制動装置22Fは、電磁モータ72が発生させる力に依拠してディスクロータ70とブレーキパッドとの間に摩擦力を発生させ、その摩擦力により制動力を発生させるものとされている。
キャリア54の上端部には、電磁モータ80が連結されている。その電磁モータ80のステータが車体14に固定され、ロータがキャリア54に固定されている。つまり、その電磁モータ80が発生させる力に依拠して、キャリア54をキングピン軸回りに回転させること、つまり、前輪12Fを転舵させることが可能とされている。したがって、電磁モータ80とキャリア54とを含んで、転舵装置34Fが構成されている。
次に、駆動輪である左輪12MLと右輪12MRとの各々に対応するシャシーについて説明する。それら左輪12MLと右輪12MRとの各々に対応するシャシーは、略同様の構成とみなせるため、説明の簡略化に配慮して、図3を参照しつつ、左輪12MLに対応するシャシーを代表して説明する。左輪12MLに対応するシャシーは、上述したように、サスペンション装置16ML,制動装置22ML,駆動装置42MLを含んで構成される。サスペンション装置16MLは、ダブルウィッシュボーン式のもであり、アッパアーム90とロアアーム92とを備えている。それらアッパアーム90とロアアーム92とのそれぞれの一端部は、車体14に回動可能に連結され、他端部は、車輪12を回転可能に保持するキャリア94に回動可能に連結されている。そのような構成により、キャリア94は、車体14に対して略一定の軌跡を描くような上下動が可能とされている。また、サスペンション装置16MLは、前後輪12F,Rのものと同様に、コイルスプリング60MLと、電磁式のショックアブソーバ62MLとを備えている。それらコイルスプリング60MLとショックアブソーバ62MLとは、それぞれ、車体14の一部であるばね上部としてのマウント部と、ばね下部の一部分を構成するロアアーム92との間に、互いに並列的に配設されている。
駆動装置42MLは、電磁モータ100を主体とするものであり、その電磁モータ100は、キャリア94に固定されたステータ102と、キャリア94に回転可能に保持されたモータ軸104と、そのモータ軸104に固定されたロータ106とを含んで構成される。車輪12は、モータ軸104に固定されており、電磁モータ100は、車輪12を直接回転させることが可能とされている。つまり、駆動装置42MLは、いわゆるインホイールモータとされており、電磁モータ100が発生させる力に依拠して駆動力を発生させるものとされている。
制動装置22MLは、前後輪12F,Rのものと略同様の構成の電気機械式ブレーキであり、電磁モータ72MLが発生させる力に依拠して、モータ軸104に固定されたディスクロータ110とブレーキパッド112との間に摩擦力を発生させ、その摩擦力により制動力を発生させるものとされている。
本車両においては、図1に示すように、電子制御ユニット200(以下、「ECU200」という場合がある)によって、車両の運動が制御される。具体的には、上述した4つの電磁式ショックアブソーバ62,4つの制動装置22,2つの転舵装置34,2つの駆動装置42のそれぞれが有するモータの作動が制御されることで、車両の運動が制御される。なお、ECU200は、CPU,ROM,RAM等を備えたコンピュータを主体として構成されたものである。また、ECU200には、図示は省略するが、各モータの駆動回路として機能する複数のインバータが接続されており、それらインバータを制御することで、それらインバータに接続された電源から各モータに電力が供給される。
図1に示すように、車両には、車両走行速度(以下、「車速」と略す場合がある)を検出する車速センサ[v]220,ステアリングホイールの操作角を検出する操作角センサ[MA]222,車体14の鉛直軸回りの回転速度であるヨーレートを検出するヨーレートセンサ[ω]224,車体14に実際に発生する前後加速度である実前後加速度を検出する前後加速度センサ[Gx]226,車体14に実際に発生する横加速度である実横加速度を検出する横加速度センサ[Gy]228,各車輪12に対応する車体14の各マウント部の上下方向の加速度を検出する4つのばね上縦加速度センサ[Gz]230,アクセルペダルに加えられた操作力を検出するアクセル操作力センサ[aD]232,ブレーキペダルに加えられた操作力を検出するブレーキ操作力センサ[aB]234,前輪12Fおよび後輪12Rの実際の転舵角を検出する2つの転舵角センサ[θF,θR]236等が設けられており、それらはECU200のコンピュータに接続されている。ECU200は、それらのスイッチ,センサからの信号に基づいて、モータの作動の制御を行うものとされている。ちなみに、[ ]の文字は、上記スイッチ,センサ等を図面において表わす場合に用いる符号である。また、ECU200のコンピュータが備えるROMには、後に詳しく説明する制御に関するプログラム,各種のデータ等が記憶されている。
<通常時の車両運動制御>
i)電磁式ショックアブソーバの制御
本車両運動制御システムでは、4つのショックアブソーバ62の各々を独立して制御することが可能となっている。それらショックアブソーバ62の各々において、アブソーバ力が独立して制御されて、車体14の振動、つまり、ばね上振動を減衰するための制御(以下、「振動減衰制御」という場合がある)が実行される。その振動減衰制御では、車体14の振動を減衰するためにその振動の速度に応じた大きさのアブソーバ力を発生させるべく、目標アブソーバ力FAが決定される。つまり、振動減衰制御は、いわゆるスカイフックダンパ理論に基づいた制御である。具体的には、車体14のマウント部に設けられたばね上縦加速度センサ230によって検出されるばね上縦加速度から得られる車体14のマウント部の上下方向の動作速度、いわゆる、ばね上絶対速度VSに基づいて、次式に従って、アブソーバ力FAが演算される。
A=CS・VS (CS:減衰係数)
そして、その目標アブソーバ力FAを発生させるためのモータ64の作動制御は、インバータによって行われる。詳しく言えば、上記目標アブソーバ力FAに基づいて決定されたデューティ比についての指令がインバータに送信され、インバータによって、その指令に基づいたモータ64の駆動制御がなされる。
ii)制動装置の制御
本車両運動制御システムでは、4つの制動装置22の各々を独立して制御することが可能となっており、各車輪12に対応する制動力が独立して制御される。この制動力制御では、ブレーキペダル20に加えられた操作力に応じて、車両全体として発生させるべき制動力である目標制動力FBが決定される。具体的には、まず、ブレーキ操作力センサ234によってブレーキ操作力aBが検出される。ECU200のROMには、そのブレーキ操作力aBをパラメータとする目標制動力FBのマップデータが格納されており、目標制動力FBの決定にあたっては、そのマップデータが参照される。次いで、その目標制動力FBと、予め設定された各車輪12へ制動力を配分する割合である制動力配分比に基づいて、前輪12Fに対応する制動装置22F,左輪12MLに対応する制動装置22ML,右輪12MRに対応する制動装置22MR,後輪12Rに対応する制動装置22Rの各々の目標制動力FB-F,FB-ML,FB-MR,FB-Rが決定される。なお、左輪12MLに対応する力FB-MLと右輪12MRに対応する制動力FB-MRとは、通常、同じ大きさとされるようになっている。
ちなみに、駆動装置42の電磁モータ100による回生制動が可能である場合には、その回生制動による制動力を優先させて、制動装置22による制動力を決定するように構成することも可能である。
iii)転舵装置の制御
本車両運動制御システムでは、2つの転舵装置34の各々を独立して制御することが可能となっており、前後輪12F,Rの転舵が独立して制御される。この転舵制御は、ステアリングホイール30の操作量と車速とに応じて、車両がその旋回方向に向きを変える速度、つまり、目標ヨーレート(ヨー角速度)を決定し、その目標ヨーレートとなるように前後輪12F,Rを転舵させる制御である。具体的には、まず、操作角センサ222により検出されたステアリングホイール30の操作角MAと車速センサ220により検出された車速vとに基づき、次式に従って、目標ヨーレートω*が演算される。
ω*=Gω・{v/(1+Kh・v2)・MA
(G:ゲイン,Kh:目標スタビリティファクタ)
次いで、ヨーレートセンサ224によって、実際のヨーレートωrが取得され、目標ヨーレートω*に対する実ヨーレートωrの偏差であるヨーレート偏差Δω(=ω*−ωr)が認定され、そのヨーレート偏差Δωが0となるように、前輪12Fの転舵角θF *および後輪12Rの転舵角θR *が決定されるのである。
なお、目標となる前輪12Fの転舵角θF *および後輪12Rの転舵角θR *は、ECU200において、上記ヨーレート偏差Δωに基づき、次式のPDI制御則に従って決定される。
θF *=KP1-θF・Δω+KD1-θF・Δω’+KI1-θF・∫(Δω)dt
θR *=KP1-θR・Δω+KD1-θR・Δω’+KI1-θR・∫(Δω)dt
ここで、第1項,第2項,第3項は、それぞれ、目標転舵角における比例項成分,微分項成分,積分項成分を、KP,KD,KIは、それぞれ、比例ゲイン,微分ゲイン,積分ゲインを意味する。
iv)駆動装置の制御
本車両運動制御システムでは、2つの駆動装置42の各々を独立して制御することが可能となっており、各車輪12に対応する駆動力が独立して制御される。この駆動力制御では、アクセルペダル40に加えられた操作力に応じて、車両全体として発生させるべき駆動力である目標駆動力FDが決定される。具体的には、まず、アクセル操作力センサ232によってアクセル操作力aDが検出される。ECU200のROMには、そのアクセル操作力aDをパラメータとする目標駆動力FDのマップデータが格納されており、目標駆動力FDの決定にあたっては、そのマップデータが参照される。次いで、その目標駆動力FDと、予め設定された左右輪12ML,MRへ駆動力を配分する割合である駆動力配分比に基づいて、左輪12MLに対応する駆動装置42ML,右輪12MRに対応する駆動装置42MRの各々の目標駆動力FD-ML,FD-MRが決定される。なお、それら目標駆動力FD-ML,FD-MRは、通常、同じ大きさとされるようになっている。
<転倒防止制御>
i)転倒防止制御の概要
本車両は、車両の前方に単一の車輪12Fしか配設されていないため、重心位置から前輪12Fと左輪12MLとを結ぶ直線までの距離,重心位置から前輪12Fと右輪12MRとを結ぶ直線までの距離が最も短く、車両の斜め前方へ転倒しやすい。具体的には、制動旋回中に、車体に斜め前方への力が作用すると、車両が転倒する可能性があるのである。そこで、本車両運動制御システムでは、制動旋回中において車両が斜め前方に転倒する可能性が高くなった場合に、その転倒を防止すべく転倒防止制御が実行されるようになっている。その転倒防止制御は、簡単に言えば、車両がさらに旋回内側を向くように、車両の運動を制御するものである。詳しくは、図4に示すように、車体に生じる加速度が、車体の重心位置から旋回外輪に向かう向きとなるように、車両を重心位置回りに旋回内側に向かって回転させるのである。そのことにより、車体に生じる力が、旋回外輪に向かう向きの力となるのである。本車両は、重心位置から前輪12Fと旋回外輪とを結ぶ直線までの距離に比較して、重心位置から旋回外輪までの車幅方向の距離の方が長いため、旋回外輪に向かう向きの力が車体に作用する場合は、車両の斜め前方に向かう力が車体に作用する場合に比較して、転倒し難い。つまり、本車両運動制御システムは、上記のような制御によって、車両の転倒を防止するのである。なお、転倒防止制御は、上述のように車両が旋回内側を向くように車両の運動を制御する制御(図4における(a)〜(b),以下、「車両方向変更制御」という場合がある)と、転倒する可能性がなくなった場合に、通常の状態に復帰させる制御(図4における(b)〜(c),以下、「復帰制御」という場合がある)とを含んで構成されるため、以下に、それらの制御について、順次、具体的に説明する。
ii)転倒の判定
車両が転倒する可能性が高いか否かは、車体14に生じている加速度の大きさと向きに基づいて判定される。まず、図5に示すように、車両の前後加速度Gxと、車両の横加速度Gyとを座標軸とする座標平面を考える。例えば、車両前方への転倒を考える。その場合、重心高Hは高くなるほど車両が転倒しやすく、重心位置から前輪12Fまでの距離LFが短くなるほど車両が転倒しやすい。そのことより、車両前方への加速度の大きさの制限値GxMAXは、次式に従って演算される。
GxMAX=Kx・LF/H
また、車幅方向への転倒を考える場合、重心高Hは高くなるほど車両が転倒しやすく、重心位置から左輪12MLあるいは右輪12MRまでの距離(トレッドTrの半分)が短くなるほど車両が転倒しやすい。つまり、車幅方向への加速度の大きさの制限値GyMAXは、次式に従って演算される。
GyMAX=Ky・(Tr/2)/H
そして、車両の斜め方向の加速度の制限値が、それら前後加速度制限値GxMAX,横加速度制限値GyMAXに基づいて設定されている。詳しくは、図5に示すように、上述した座標平面上において、前後加速度制限値GxMAXを示す点と横加速度制限値GyMAXを示す点とを結ぶ線が、加速度の閾線とされており、その閾線の外部が、過大加速度範囲とされているのである。本車両運動制御システムでは、前後加速度センサ226の検出値と横加速度センサ228の検出値とから定まる上記座標平面上の点が、過大加速度範囲に入った場合に、車両が転倒する可能性が高くなったと判定されるようになっている。
iii)車両方向変更制御
上述した方法により車両が転倒する可能性が高くなったと判定された場合、ECU200は、車両が旋回内側を向くように、左右輪12ML,MRに対応する制動装置22ML,MRと、前後輪12F,Rに配設された2つの転舵装置34とを制御する。詳しく言えば、ECU200は、左右輪12ML,MRのうちの旋回外輪の制動力が小さく、かつ、旋回内輪の制動力が大きくなるように、左右輪12ML,MRの制動力配分比を変更する。また、それに併せて、運転者のステアリング操作に関係なく、さらに旋回内側に向けるように前後輪12F,Rを転舵させる。つまり、旋回半径が小さくなるように、前輪12Fは旋回内側に向かって転舵させ、後輪12Rは前輪12Fと逆相に転舵させるのである。
先にも説明したように、ECU200は、車体14に生じる加速度が車体の重心位置から旋回外輪に向かう向きとなるように、制動装置22ML,MRと、2つの転舵装置34とを制御する。例えば、車両が転倒する可能性が高くなったと判定された時点における車体14に生じている加速度が図5に示したベクトルGrであった場合、車体14の重心位置から旋回外輪(この場合は右輪12MR)に向かう向きのベクトルとのなす角度が、車両の向きを変更させる角度φに相当する。本車両運動制御システムでは、その角度φが0となるように、上記左右輪の制動力配分比と前後輪の転舵角とが決定される。具体的には、目標となる制動力配分比rB *(=旋回内輪の制動力/旋回外輪の制動力)と、目標となる前輪12Fの転舵角θF *および後輪12Rの転舵角θR *は、ECU200において、上記の角度である車両方向変更角φに基づき、次式のPDI制御則に従って決定されるのである。
B *=KP-r・φ+KD-r・φ’+KI-r・∫(φ)dt
θF *=KP2-θF・φ+KD2-θF・φ’+KI2-θF・∫(φ)dt
θR *=KP2-θR・φ+KD2-θR・φ’+KI2-θR・∫(φ)dt
このように、左右輪12ML,MRの制動力配分比と前後輪12F,Rの転舵角とが決定されることにより、車両方向変更角φが大きな場合は、車両の方向を早急に変更するように制御されるとともに、車両が目標となる向きに達すれば、その向きを維持するように制御されることになる。
また、本車両方向変更制御においては、より確実に車両の転倒を防止すべく、4つの車輪12に対応して設けられた4つのショックアブソーバ62が制御される。詳しくは、ECU200は、ショックアブソーバ62の減衰力を大きくして、車体14の傾倒を防止するのである。つまり、通常時のアブソーバ力FAの決定において用いられていた減衰係数CSを、それより高い減衰係数CS’に変更して、アブソーバ力FA=CS’・VSが決定されるようになっている。
iv)車両方向復帰制御
上記車両方向変更制御の実行中において、車両が転倒する可能性が低くなったと判定された場合には、車両の向きを元の向きに復帰させるように、車両の運動が制御される。つまり、車両が旋回外側を向くように車両の運動が制御されるのである。詳しく言えば、ECU200は、左右輪12ML,MRのうちの旋回内輪の制動力が小さく、かつ、旋回外輪の制動力が大きくなるように、左右輪12ML,MRの制動力配分比を変更する。また、それに併せて、運転者のステアリング操作に関係なく、さらに旋回外側に向けるように前後輪12F,Rを転舵させる。つまり、前輪12Fは旋回外側に向かって転舵させ、後輪12Rは前輪12Fと逆相に転舵させるのである。
車両が転倒する可能性が高くなったと判定された時点から現時点までの、車両の向きの実際の回転角αは、ヨーレートセンサにより検出された実ヨーレートωrを積分することで、演算される。
α=∫(ωr)dt
しかしながら、例えば、上記車両方向変更制御が実行されなかったと仮定すると、車両の向きは、図4(b)において点線で示すように、車両が転倒する可能性が高くなったと判定された時点から現時点までで、ステアリング操作に応じて変わっていると考えられる。そこで、本車両方向復帰制御では、その車両方向変更制御が実行されなかったと仮定した場合の車両の向きに変更されるようになっている。具体的には、車両が転倒する可能性が高くなったと判定された時点でのヨーレートを基準ヨーレートω0として、その基準ヨーレートω0で車両の向きが変化したと考え、その車両方向変更制御が実行されなかったと仮定した場合の車両の回転角が推定される。つまり、その推定回転角βが、次式によって演算される。
β=ω0・t
ここで、tは、車両が転倒する可能性が高くなったと判定された時点から現時点までの時間である。したがって、本車両方向復帰制御では、車両方向変更制御が実行されなかったと仮定した場合の車両の向きに合わせるべく、制動装置22ML,MRと、2つの転舵装置34とが、実回転角αと推定回転角βとの差分δ(=β−α)に基づいて制御されるようになっっている。具体的には、目標となる制動力配分比rB *と、目標となる前輪12Fの転舵角θF *および後輪12Rの転舵角θR *が、ECU200において、回転角差δに基づき、次式のPDI制御則に従って決定される。
B *=KP-r・δ+KD-r・δ’+KI-r・∫(δ)dt
θF *=KP2-θF・δ+KD2-θF・δ’+KI2-θF・∫(δ)dt
θR *=KP2-θR・δ+KD2-θR・δ’+KI2-θR・∫(δ)dt
v)中立位置復帰制御
車両の向きが、車両方向変更制御が実行されなかったと仮定した場合の車両の向きに一致したとしても、運転者のステアリング操作とは別に前後輪12F,Rを転舵させたために、ステアリングホイール30の操作の中立位置と、前後輪12F,Rの転舵の中立位置とを一致させる必要がある。そこで、本車両運動制御システムでは、通常時の転舵装置34の制御において決定される目標転舵角θF *,θR *と、2つの転舵角センサ236により検出された実際の転舵角θrF,θrRとを一致させる制御が実行される。通常の転舵装置34の制御においては、目標転舵角θF *,θR *に基づいて、インバータを制御するためのデューティ比が決定されていた。それに対して、実際の転舵角θrF,θrRが目標転舵角θF *,θR *となるまでは、目標転舵角θF *,θR *に対する実転舵角θrF,θrRの偏差である転舵角偏差ΔθF(=θF *−θrF),ΔθR(=θR *−θrR)に基づいて、デューティ比が、PDI制御則に従って決定されるようになっている。
<制御プログラム>
通常の制御と転倒防止制御とを切り換えるための処理は、図6にフローチャートを示す実行制御切換プログラムが、イグニッションスイッチがON状態とされている間、短い時間間隔Δt(例えば、数msec)をおいてECU200により繰り返し実行されることによって行われる。また、実行制御切換プログラムと同じ期間、前述のような転舵装置34の制御が、図7にフローチャートを示す転舵制御プログラムが実行されることによって行われ、制動装置22の制御が、図8にフローチャートを示す制動力制御プログラムが実行されることによって行われ、ショックアブソーバ62の制御が、図9にフローチャートを示す減衰力制御プログラムが実行されることによって行われる。以下に、それらの制御のフローを、図に示すフローチャートを参照しつつ、簡単に説明する。
i)実行制御切換プログラム
本車両運動制御システムにおいて実行されるプログラムによる処理では、通常の制御と、転倒防止制御の車両方向変更制御,車両方向復帰制御,中立位置復帰制御とのいずれの制御を実行するかを示す実行制御フラグFLが採用されている。実行制御切換プログラムは、そのフラグFLのフラグ値を決定することにより、転舵制御,制動力制御,減衰力制御の各々において、通常の制御と、転倒防止制御の車両方向変更制御,車両方向復帰制御,中立位置復帰制御とが切り換えられるようになっている。そのフラグFLのフラグ値は、通常の制御を実行する場合に0に、車両方向変更制御を実行する場合に1に、車両方向復帰制御を実行する場合に2に、中立位置復帰制御を実行する場合に3にされる。
実行制御切換プログラムによる処理では、まず、ステップ1(以下、「S1」と略す、他のステップも同様である)において、前後加速度Gx,横加速度Gyが取得され、S2において、それらに基づいて車両が転倒する可能性が高いか否かが判定される。通常の走行状態においては、実行制御フラグFLのフラグ値は0とされており、S2,S8の判定により、それ以降の処理がスキップされる。そして、S2において、車両が制動旋回中において、車体に生じる加速度が図5に示した過大加速度範囲に入った場合に、車両が転倒する可能性が高いと判定され、S3以下の転倒防止制御が実行される。
車両が転倒する可能性が高いと判定された直後には、まず、S4において、実行制御フラグFLが1とされるとともに、その時点でのヨーレートセンサ224の検出値が、基準ヨーレートω0として認定される。次いで、S5,6において、車両の向きの実際の回転角αと、車両方向変更制御が実行されなかったと仮定した場合の車両の回転角βが演算される。そして、S7において、図5に示したように、現時点での加速度と、重心位置から旋回外輪に向かう向きの加速度とのなす角、つまり、車両方向変更制御において用いられる車両方向変更角φが演算される。
車両が転倒する可能性が高かった状態から低い状態になった場合には、S10以下の処理が行われる。S10では、S6と同様に、実回転角αと推定回転角βとが推定され、S11において、それらの差分、つまり、車両方向復帰制御において用いられる車両の向きの回転角差δが演算される。次いで、S12において、その回転角差δが0か否かが判定され、0でない場合には、実行制御フラグFLのフラグ値が2とされ、0となった場合に、フラグ値が3とされる。なお、フラグ値が3とされて中立位置復帰制御が実行される場合には、S14において、実回転角αと推定回転角βとがリセットされる。以上の一連の処理の後、実行制御切換プログラムの1回の実行が終了する。
ii)転舵制御プログラム
図7にフローチャートを示す転舵制御プログラムによる処理では、先にも説明したように、上述した実行制御切換プログラムにおいて決定された実行制御フラグFLのフラグ値に基づいて、制御が切り換えられる。通常は、S23からS26において、先に説明したような手法でヨーレート偏差Δωに基づいて、前後輪12F,Rの目標転舵角θF *,θR *が決定される。また、実行制御フラグFLのフラグ値が1である場合には、S30において、車両方向変更角φに基づいて、目標転舵角θF *,θR *が決定され、フラグ値が2である場合には、S31において、車両の向きの回転角差δに基づいて、目標転舵角θF *,θR *が決定される。そして、それらの場合には、S29において、その決定された目標転舵角θF *,θR *に基づいて、インバータの制御のためのデューティ比が決定される。さらに、実行制御フラグFLのフラグ値が3である場合には、ステアリングホイール30の操作中立位置と転舵輪である前後輪の転舵中立位置とを一致させるべく、S32,33において、転舵角偏差Δθ(=θ*−θr)が認定され、S35において、その転舵角偏差Δθに基づいて、インバータの制御のためのデューティ比が決定される。なお、その転舵角偏差Δθが0となった場合には、S28において、実行制御フラグFLのフラグ値が0とされるようになっている。
iii)制動力制御プログラム
図8にフローチャートを示す転舵制御プログラムによる処理では、先にも説明したように、実行制御フラグFLのフラグ値に基づいて、制御が切り換えられる。通常は、S45において、左輪の制動力と右輪の制動力とが同じとなるように、制動力が配分される。それに対して、実行制御フラグFLのフラグ値が1である場合には、S46において、車両方向変更角φに基づいて制動力配分比が決定されて、旋回内輪の制動力が旋回外輪の制動力より大きくなるように配分される。また、実行制御フラグFLのフラグ値が2である場合には、S47において、車両の向きの回転角差δに基づいて制動力配分比が決定されて、旋回外輪の制動力が旋回内輪の制動力より大きくなるように配分される。
iv)減衰力制御プログラム
図9にフローチャートを示す減衰力制御プログラムによる処理では、先にも説明したように、実行制御フラグFLのフラグ値に基づいて、制御が切り換えられる。実行制御フラグFLのフラグ値が1で、車両が転倒する可能性が高い場合に、S54において、通常時の減衰係数CSより高い減衰係数CS’を用いて、目標となるアブソーバ力FA(=CS’・VS)が決定されるようになっている。
<制御装置の機能構成>
上述したような制御を実行して車両の運動を制御するための制御装置として機能するECU200は、前述した各種の処理を実行する各種の機能部を有していると考えることができる。詳しく言えば、図10に示すように、ECU200は、上記転舵制御プログラムを実行して前後輪12F,Rの転舵を制御する機能部である転舵制御部300と、上記制動力制御プログラムを実行して4つの車輪12の制動力を制御する機能部である制動力制御部302と、上記減衰力制御プログラムを実行して4つの車輪12に対応するショックアブソーバ62の減衰係数変更して減衰力を制御する機能部である減衰係数制御部304とを有している。また、ECU200は、車両が転倒する可能性が高いか否かを車体14に生じている加速度が過大加速度範囲に入っているか否かによって判定する過大加速度判定部310と、車両が転倒する可能性が高いか否かによって、上記転舵制御部300,制動力制御部302,減衰係数制御部304において実行される制御を、制御通常の制御と転倒防止制御との間で切り換える実行制御切換部312とを有している。
12F:前輪 12ML:左輪 12MR:右輪 12R:後輪 14:車体 16F,ML,MR,R:サスペンション装置 20:ブレーキペダル 22F,ML,MR,R:制動装置 30:ステアリングホイール 34F,R:転舵装置 40:アクセルペダル 42ML,MR:駆動装置 60:コイルスプリング(サスペンションスプリング) 62F,ML,MR,R:電磁式ショックアブソーバ 64:電磁モータ 72:電磁モータ(制動装置) 80:電磁モータ(転舵装置) 100:電磁モータ(駆動装置) 200:電子制御ユニット(ECU) 220:車速センサ[v] 222:操作角センサ[MA] 224:ヨーレートセンサ[ω] 226:前後加速度センサ[Gx] 228:横加速度センサ[Gy] 230:ばね上縦加速度センサ[Gz] 232:アクセル操作力センサ[aD] 234:ブレーキ操作力センサ[aB] 236:転舵角センサ[θF,θR] 300:転舵制御部 302:制動力制御部 304:減衰係数制御部 310:過大加速度判定部 312:実行制御切換部
B:(車両の)目標制動力 aB:ブレーキ操作力 FB-F,FB-ML,FB-MR,FB-R:(車輪ごとの)目標制動力 VS:ばね上絶対速度 FA:目標アブソーバ力 CS:減衰係数 MA:操作角 v:車速 ω*:目標ヨーレート ωr:実ヨーレート Δω:ヨーレート偏差 θF *,θR *:目標転舵角 Gx:前後加速度 Gy:横加速度 φ:車両方向変更角 rB *:左右輪の制動力配分比 CS’:減衰係数(>CS) α:実回転角 β:推定回転角 δ:回転角差 θrF,θrR:実転舵角 ΔθF,ΔθR:転舵角差

Claims (6)

  1. 自身の前方側に配設された単一の前輪とその前輪より後方側で自身の左右にそれぞれ配設された左輪および右輪とを有する車両に搭載され、その車両の運動を制御する車両運動制御システムであって、
    制動かつ旋回状態にある場合において車両が転倒する可能性が高くなった場合に、車両がさらに旋回内側を向くように車両の運動を制御することを特徴とする車両運動制御システム。
  2. 当該車両運動制御システムが、
    車体に生じる加速度の向きが、左旋回時においては車体の重心位置から右輪に向かう向きに近づき、右旋回時においては車体の重心位置から左輪に向かう向きに近づくように、車両の運動を制御する請求項1に記載の車両運動制御システム。
  3. 前記左輪および右輪の各々が、独立して制動可能とされ、
    当該車両運動制御システムが、
    左輪および右輪の各々の制動力を制御する制動力制御部を備え、
    車両が転倒する可能性が高くなった場合に、左輪および右輪のうちの旋回内輪の制動力がそれらのうちの旋回外輪の制動力より大きくなるように制御することで、車両が旋回内側を向くように構成された請求項1または請求項2に記載の車両運動制御システム。
  4. 前輪,左輪および右輪のうちの1以上ものが、転舵輪とされ、
    当該車両運動制御システムが、
    前記転舵輪の転舵を制御する転舵制御部を備え、
    車両が転倒する可能性が高くなった場合に、車両が旋回内側に向くように前記転舵輪をさらに転舵させるように構成された請求項1ないし請求項3のいずれか1つに記載の車両運動制御システム。
  5. 当該車両運動制御システムが搭載される車両が、さらに、
    前輪,左輪および右輪に対応して設けられ、それぞれが、自身に対応するばね上部とばね下部との接近離間動作に対する減衰力を発生させるとともに、その減衰力を発生させるための自身の能力であってその減衰力の大きさの基準となる減衰係数を変更可能な3つのショックアブソーバを有し、
    当該車両運動制御システムが、
    前記3つのショックアブソーバの各々の減衰係数を制御する減衰係数制御部を備え、
    車両が転倒する可能性が高くなった場合に、それら3つのショックアブソーバの各々の減衰係数を通常より高くするように構成された請求項1ないし請求項4のいずれか1つに記載の車両運動制御システム。
  6. 当該車両運動制御システムが、
    車両が転倒する可能性が高い状況下からその可能性が低くなった場合に、車両の向きが旋回外側を向くように車両の運動を制御するように構成された請求項1ないし請求項5のいずれか1つに記載の車両運動制御システム。
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