JP2005329861A - 左右独立駆動式車両 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】目標ヨー角加速度を達成するために、左右の駆動輪2FL,2FRには駆動力差を設ける。駆動力差のみでは目標ヨー角加速度に対して不足する場合(ステップS4でNo)、駆動輪2FL,2FRの駆動力を実用限界値J以内で制御するとともに、転舵角制御装置6が駆動輪2FL,2FRに補助転舵角を付与して転舵角制御を実行する(ステップS9)。
【選択図】図2
Description
ところで、車輪と路面との間には輪荷重および摩擦係数に比例する摩擦力が発生しており、特許文献1に記載の車輪独立駆動式車両の車両に限らず、車輪で走行する全ての車両は、この摩擦力を利用して、車輪の駆動力を路面に伝達して走行するため、車輪の駆動力がこの摩擦力に応じて決まる限界値(摩擦により決定される駆動力限界値ともいう)を越えないようにする必要がある。
つまり車両は、車輪および路面間でスリップが生じることなく、全て駆動力を路面に伝達する必要があるところ、駆動力が増大して車輪および路面間の摩擦により決定される駆動力限界値に近づけば、左右の駆動モータのうち一方のモータ出力を、摩擦により決定される駆動力限界値を超えて増大側に制御することができなくなる。
さらに、目標とする前後方向加速度の達成に支障が生じてはならないため、左右輪の駆動力合計を確保しなければならず、左右の駆動モータのうち他方のモータ出力を大きく下げて、左右輪に駆動力差をつけることもできなくなる。
このように、一方のモータ出力を大きくすることができず、かつ他方のモータ出力を小さくすることができないことになれば、実現可能な左右輪の駆動力差の範囲が減少する。このことは、車体のヨー角の制御可能範囲が小さくなることを意味し、実際のヨー角角速度が、目標とするヨー角加速度に対して不足する場合が生じる。
少なくとも1対の左右駆動輪を具え、目標前後方向加減速度を達成するよう前記左右駆動輪の駆動力和を制御するとともに、目標ヨー角加速度を達成するために必要な前記左右駆動輪の駆動力差を算出する手段とを具え、算出した駆動力差に基づき前記左右駆動輪の駆動力を個々に独立して制御する左右独立駆動方式の車両において、
運転者の操舵操作とは別個に前記左右駆動輪の転舵角を制御する車輪転舵手段を具え、
算出した駆動力差に基づく駆動力制御時には、車輪と路面間の摩擦により決定される駆動力限界値よりも少ない実用限界値を設定し、前記左右駆動輪の駆動力を該実用限界値以内に制御するとともに、
前記実用限界値以内の駆動力制御では、前記目標ヨー角加速度に対して不足する場合には、前記車輪転舵手段の転舵角制御により前記目標ヨー角加速度を達成するよう構成したことを特徴とするものである。
図1は本発明の一実施例になる左右独立駆動方式の車両を、その駆動系および操舵系と共に示す要部平面図である。
この車両1は、左前輪2FL、右前輪2FR、左後輪2RL、および右後輪2RRの4つの車輪具え、このうち前輪2FL,2FRは、以下に説明する操舵装置により転舵されるものとする。すなわち、運転者の操作により回転するステアリングホイール4はステアリングシャフト5を介して転舵角制御装置6と連結する。転舵角制御装置6は遊星歯車列またはテコ等の可変機構を具え、ステアリングホイール4に入力された操作角と、前輪2FL,2FRの転舵角との比率を変化可能にラックアンドピニオン7へ出力する。
なお、転舵角制御装置6はステアリングシャフト5とラックアンドピニオン7とを機械的に連結せず、ステアリングホイール4に入力された操作角をセンサで検出し、この検出値に可変係数を乗じた数値を目標値として、電動モータ等がラックアンドピニオン7を作動するいわゆるステアリングバイワイヤとしてもよい。
駆動装置3FL,3FRは、例えば特開平5-91607に示される左右独立の駆動モータである。あるいは、1つの駆動源から出力された駆動力を左右に分配し、多板クラッチ機構等により左右前輪2FL,2FRの駆動力をそれぞれ可変制御可能にする装置であってもよい。
これがため、車両制御装置11には、転舵角制御装置6からの信号θと、アクセルペダル9からの信号apoと、ブレーキペダル10からの信号bと、車速センサ12L,12Rからの信号vspl,vsprと、ヨーレイト検出装置13からの信号φと、前後方向加減速度検出センサ14からの信号Gを入力する。
先ずステップS1では、上記の各センサ等6,9,10,12,13,14からの信号に基づき、車両の走行状態を読み込む。具体的には、転舵角θと、アクセル操作量apoと、ブレーキ操作量bと、車速vspと、ヨーレイトφと、前後走行加減速度Gを読み込む。
次のステップS2では、上記ステップS1で読み込んだ車両の走行状態から、目標とするヨー角加速度tφを算出する。
次のステップS3では、上記ステップS1で読み込んだ車両の走行状態から目標前後方向加減速度を求め、この目標前後方向加減速度を達成するための駆動力和を算出し、上記ステップS2で算出した目標ヨー角加速度tφから、この目標ヨー角加速度を達成するための駆動力差を算出する。そして、これら駆動力和および駆動力差から、駆動装置3FL,3FRの必要駆動力T1l,T1rを算出する。
車両1が走行するためには、駆動輪2FR,2FLおよび路面間の摩擦を確保して駆動輪2FR,2FLの駆動力を全て路面に伝達する必要がある。駆動力は駆動輪2FR,2FLおよび路面間の最大摩擦力を越えることは出来ない。駆動力が最大摩擦力を越えた場合、駆動輪2FR,2FLは摩擦を失ってスリップし、走行性能が低下する。
最大摩擦力は、駆動輪2FR,2FLの輪荷重と摩擦係数との積で決定され、輪荷重が大きいほど、摩擦係数が大きいほど、最大摩擦力は大きくなる。
。
最大摩擦力は図中の円の半径Rに相当する。総摩擦力Sはこの円Rを越えて大きくなることができない。したがって、摩擦により決定される駆動力限界値は、縦軸と円が交差する半径Rに相当する。
本実施例では、駆動輪2FR,2FLの最大駆動力を、摩擦により決定される駆動力限界値Rとせず、これより少ない実用限界値J以内とする。駆動輪2FR,2FLの駆動力を実用限界値J以内に制御することにより、図3中、横力Yを得ることができる。
ステップS4において、上記ステップS3で算出した必要駆動力が、実用限界値J以内であり、駆動力制御のみで目標ヨー角加速度tφを達成可能と判断する場合(Yes)、上述のとおり駆動輪2FR,2FLが路面に横力Yを伝達することが可能なため、駆動力制御のみで目標ヨー角加速度tφを達成することができる。このためステップS5へ進み、上記の必要駆動力T1r,T1lを駆動力指令値Tr,Tlとして駆動装置3FR,3Flを制御し、駆動輪2FR,2FLは必要駆動力T1r,T1lを路面に伝達する。
一方、越える場合(Yes)、ヨーレイトφを参照し、ヨーレイトφが略0である、つまり略直進走行中ならば、駆動輪2FR,2FLの駆動力を、上記の必要駆動力から摩擦により決定される駆動力限界値Rに変更して、本制御を終了する。
この結果、急加速時には駆動輪2FL,2FRを駆動力限界値Rで駆動して加速性能を優先させることができ、直進走行時の走行性能が向上する。また急制動時には駆動装置3FL,3FRが−Rに相当する制動力限界値を駆動輪2FL,2FRに伝達して、ブレーキ性能を向上させる。
この結果、駆動輪2FR,2FLのスリップを防止しつつ、目標ヨー角加速度を達成することができる。
ここで、駆動輪2FR,2FLの転舵角を切り増しして、目標ヨー角加速度を達成しようとすれば、従来においては、既に駆動力が駆動力限界値Rに達していることから、横力Yを確保することができず、駆動輪2FR,2FLがスリップする。
そこで本実施例では、横力Yを確保することができる実用限界値Jを設定し、上記ステップS4で動輪2FR,2FLを実用限界値J以内で制御する。この条件下、目標ヨー角加速度に対して不足する場合には、上記ステップS8以下で左右の駆動輪2FR,2FLを実用限界値J以内で駆動するとともに、駆動輪2FR,2FLに上記の補助転舵角θaddを付与してこれらを操舵するよう転舵角制御を行うことから、
駆動輪2FR,2FLの横力Yを確保して、駆動輪2FR,2FLを操舵してもスリップすることなく目標ヨー角加速度tφを達成することができる。
なお、本実施例にいう駆動力とは、加速走行および一定速走行に必要な正の駆動力をいう他、制動中に駆動装置3FR,3FLが駆動輪2FR,2FLに伝達する負の駆動力(制動力ともいう)を含むものである。
駆動輪2FR,2FLの横力Yを確保して、駆動輪2FR,2FLを操舵してもスリップすることなく目標ヨー角加速度を達成することができる。
急加速時や急制動時には加減速性能を優先させることができ、直進走行時の操作性が向上する。
積載荷重が変化した場合であっても適切な実用限界値Jを設定して、実用性に優れた駆動力制御を実現することができる。
図4は他の実施例になる左右独立駆動方式の車両を、その駆動系および操舵系と共に示す要部平面図である。
本実施例の車両1では前輪2FR,2FLは操舵輪であり、図1に示した上記実施例と同様、運転者のステアリングホイール4の操作により転舵せしめるものとする。駆動装置3RR、3RLは後輪2RR,2RLを個々に独立駆動する。
本発明の効果を奏することが可能である。
さらに、前輪2FR,2FLを転舵角θで制御し、後輪2RR,2RLに補助転舵角θaddを付与することから、前輪2FR,2FLまたは後輪2RR,2RLのいずれか一方を、転舵角θおよび補助転舵角θaddを合算した転舵角で転舵せしめるよりも、車輪2FR,2FL,2FR,2FLに作用する横力Yが減少し、スリップの危険が低下する。したがって、走行性能上有利である。
なお、上記した図1および図4の実施例の他、図示しないが前輪2FR,2FLおよび後輪2RR,2RLを同様に制御(いわゆる全輪駆動)するものであっても、本発明の効果を奏すること勿論である。
算出した制動力差に基づく制動力制御時には、車輪と路面間の摩擦により決定される制動力限界値Rよりも少ない実用限界値Jを設定し、前記左右駆動輪の制動力を実用限界値J以内に制御するとともに、
実用限界値J以内の駆動力制御では、目標ヨー角加速度に対して不足する場合には、転舵角制御装置6が駆動輪2FR,2FLに補助転舵角θaddを付与して転舵角制御を実行し、これにより目標ヨー角加速度tφを達成する。
2FL 左側前方の車輪
2FR 右側前方の車輪
2RL 左側後方の車輪
2RR 右側後方の車輪
3FL 左側前方車輪の駆動装置
3FR 右側前方車輪の駆動装置
3RL 左側後方車輪の駆動装置
3RR 右側後方車輪の駆動装置
4 ステアリングホイール
6 転舵角制御装置
9 アクセルペダル
10 ブレーキペダル
11 車両制御装置
12R,12L 車速センサ
13 ヨーレイト検出装置
14 前後方向加減速度検出センサ
15 補助操舵装置
16 ストロークセンサ
Claims (6)
- 少なくとも1対の左右駆動輪を具え、目標前後方向加減速度を達成するよう前記左右駆動輪の駆動力和を制御するとともに、目標ヨー角加速度を達成するために必要な前記左右駆動輪の駆動力差を算出する手段とを具え、算出した駆動力差に基づき前記左右駆動輪の駆動力を個々に独立して制御する左右独立駆動方式の車両において、
運転者の操舵操作とは別個に前記左右駆動輪の転舵角を制御する車輪転舵手段を具え、
算出した駆動力差に基づく駆動力制御時には、車輪と路面間の摩擦により決定される駆動力限界値よりも少ない実用限界値を設定し、前記左右駆動輪の駆動力を該実用限界値以内に制御するとともに、
前記実用限界値以内の駆動力制御では、前記目標ヨー角加速度に対して不足する場合には、前記車輪転舵手段の転舵角制御により前記目標ヨー角加速度を達成するよう構成したことを特徴とする左右独立駆動式車両。 - 請求項1に記載の左右独立駆動式車両において、前記左右駆動輪の少なくとも一方の駆動輪の駆動力が前記実用限界値を越える場合には、越える方の前記左右駆動輪の駆動力を該実用限界値で制御することを特徴とする左右独立駆動式車両。
- 請求項1乃至2のいずれか1項に記載の左右独立駆動式車両において、
運転者のアクセル操作または車両の前後方向加減速度を検出する手段を具え、略直進走行中に該検出量が所定値を越えた場合には、前記目標前後方向加速度にかかわらず、左右駆動輪の駆動力を前記摩擦により決定される駆動力限界値で制御するよう構成したことを特徴とする左右独立駆動式車両。 - 請求項1乃至3のいずれか1項に記載の左右独立駆動式車両において、左右駆動輪の輪荷重に基づき前記実用限界値を設定することを特徴とする左右独立駆動式車両。
- 請求項1乃至4のいずれか1項に記載の左右独立駆動式車両において、前輪または後輪の少なくとも一方が、或いは前輪および後輪の双方が、前記左右駆動輪を構成することを特徴とする左右独立駆動式車両。
- 前記左右駆動輪から負の駆動力を回生エネルギーとして取り出し可能な請求項1乃至5のいずれか1項に記載の左右独立駆動式車両において、
前記実用限界値を駆動側および回生側について設定したことを特徴とする左右独立駆動式車両。
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