JP5251837B2 - 車両運動制御システム - Google Patents

車両運動制御システム Download PDF

Info

Publication number
JP5251837B2
JP5251837B2 JP2009256061A JP2009256061A JP5251837B2 JP 5251837 B2 JP5251837 B2 JP 5251837B2 JP 2009256061 A JP2009256061 A JP 2009256061A JP 2009256061 A JP2009256061 A JP 2009256061A JP 5251837 B2 JP5251837 B2 JP 5251837B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
wheel
vehicle
failure
turning
amount
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2009256061A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2011098692A (ja
Inventor
一平 山崎
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Toyota Motor Corp
Original Assignee
Toyota Motor Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Toyota Motor Corp filed Critical Toyota Motor Corp
Priority to JP2009256061A priority Critical patent/JP5251837B2/ja
Publication of JP2011098692A publication Critical patent/JP2011098692A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5251837B2 publication Critical patent/JP5251837B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Steering Control In Accordance With Driving Conditions (AREA)
  • Regulating Braking Force (AREA)

Description

本発明は、自身の前方部に配置された単一の前輪と、それより後方において自身の左右にそれぞれ配置された左輪および右輪とを有する車両の運動を制御するためのシステムに関する。
近年では、例えば、下記特許文献1に記載されているように、単一の前輪と、それの後方に設けられた左輪および右輪と、それら左輪および右輪のさらに後方に設けられた単一の後輪とを有する車両、つまり、車輪が菱形状に配置された車両(以下、「菱形車輪配置車両」という場合がある)が検討されている。
中国授権公告号CN1304237C
上述のような菱形車輪配置車両は、車輪の配置が、左右2つの前輪,左右2つの後輪を有する通常の車両とは異なることから、車両運動の制御において特別に配慮することが望ましい。そのような菱形車輪配置車両に関する運動制御には、充分な改良の余地が残されており、何らかの改良を施すことにより、菱形車輪配置車両の実用性を向上させることが可能である。本発明は、そのような実情に鑑みてなされたものであり、菱形車輪配置車両の実用性を向上させるための車両運動制御システムを提供することを課題とする。
上記課題を解決するため、本発明の車両運動制御システムは、上記菱形車輪配置車両のための車両運動制御システムであって、前輪と後輪との少なくとも一方を転舵させる転舵装置を制御するための制御装置が有する制御部が、左輪および右輪のいずれか一方に目標とされる駆動力と目標とされる制動力との少なくとも一方を付与できない失陥が駆制動装置に生じた場合に、その失陥に起因して生じる車両のヨーイングを抑制すべく、転舵輪とされた1以上のものの転舵量を制御するように構成される。
本発明の車両運動制御システムは、転舵輪のうちの少なくとも1つのものを転舵させることで、上記失陥に起因して生じる車両のヨーイングと逆向きのヨーモーメントを発生させ、その失陥に起因するヨーイングを低減させることが可能とされている。つまり、本発明の車両運動制御システムによれば、上記のような失陥時においても、車両の直進性を確保することが可能である。
発明の態様
以下に、本願において特許請求が可能と認識されている発明(以下、「請求可能発明」という場合がある)の態様をいくつか例示し、それらについて説明する。各態様は請求の範囲と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも請求可能発明の理解を容易にするためであり、それらの発明を構成する構成要素の組み合わせを、以下の各項に記載されたものに限定する趣旨ではない。つまり、請求可能発明は、以下の各項に付随する記載,実施形態の記載等を参酌して解釈されるべきであり、その解釈に従う限りにおいて、各項の態様にさらに他の構成要素を付加した態様も、また、各項の態様から何某かの構成要素を削除した態様も、請求可能発明の一態様となり得るのである。
なお、以下の(1)項が請求項1に相当し、請求項1に(2)項に記載の発明特定事項を付加したものが請求項2に、請求項1または請求項2に(4)項に記載の発明特定事項を付加したものが請求項3に、請求項1ないし請求項3のいずれか1つに(5)項に記載の発明特定事項を付加したものが請求項4に、請求項4に(6)項に記載の発明特定事項を付加したものが請求項5に、それぞれ相当する。
(1)(a)自身の前方部に配置された単一の前輪と(b)その前輪より後方において自身の左右にそれぞれ配置された左輪および右輪と(c)それら左輪および右輪より後方に配置された単一の後輪とを有する車両に搭載され、その車両の運動を制御する車両運動制御システムであって、
前記前輪と前記後輪との少なくとも一方を転舵させる転舵装置と、
前記車両を駆動するための駆動力および前記車両を制動するための制動力である駆制動力を前記左輪,前記右輪に対してそれぞれ付与する駆制動装置と、
前記車両の制御を司る制御装置と
を備え、
前記制御装置が、
前記転舵装置を制御して前記前輪と後輪との少なくとも一方の転舵量を制御する転舵量制御部を有し、
その転舵量制御部が、
前記左輪および前記右輪のいずれか一方に目標とされる駆動力と目標とされる制動力との少なくとも一方を付与できない失陥が前記駆制動装置に生じた場合に、その失陥に起因して生じる車両のヨーイングを抑制すべく、(i)前記前輪と前記後輪との一方が前記転舵装置により転舵可能とされている場合においてはその一方を(ii)前記前輪と前記後輪との両者が前記転舵装置により転舵可能とされている場合においてはそれら両者のうちの少なくとも一方を失陥対処転舵輪として、その1以上の失陥対処転舵輪の各々の転舵量を制御する失陥時制御部を含んで構成された車両運動制御システム。
本項に記載の車両運動制御システムが対象とする車両は、上述した菱形車輪配置車両であり、さらに、前輪と後輪との少なくとも一方が転舵輪とされ、左輪および右輪が駆動されることと制動されることとの少なくとも一方が可能とされた車両を前提としている。そのような車両において、例えば、左輪および右輪のいずれかに駆動力を正常に付与することができない失陥が生じると、左輪に与える駆動力と右輪に与える駆動力との間に差が生じ、車両にはヨーイング(ヨーモーメント)が生じてしまうことになる。具体的には、右輪に与える駆動力が目標となる駆動力より小さい場合、あるいは、右輪に駆動力を与えることができない場合には、車両には右回りのヨーイングが生じることになる。また、左輪に与える駆動力が目標となる駆動力より小さい場合、あるいは、左輪に駆動力を与えることができない場合には、左回りのヨーモーメントが生じることになる。さらに、上記のような車両において、右輪に制動力を正常に与えられない場合には、車両には左回りのヨーイングが生じ、左輪に制動力を正常に与えられない場合には、右回りのヨーモーメントが生じることになる。
本項に記載の車両運動制御システムは、例えば、上記失陥に起因して生じる車両のヨーイングと逆向きのヨーモーメントを発生させるように、転舵輪のうちの失陥対処転舵輪とされたものを転舵させることで、上記失陥に起因するヨーイングを低減させることが可能とされている。つまり、本項の車両運動制御システムによれば、上記のような失陥時においても、車両の直進性を確保することが可能である。なお、本項に記載の「失陥時制御部」は、前記駆制動装置の失陥による左輪および右輪の一方に付与する駆制動力の不足によって生じるヨーイングを抑制するだけでなく、後に詳しく説明するが、その駆制動力の不足分を補うべく左輪および右輪の他方に付与する駆制動力の大きさを増加させた場合には、その駆制動力を増加させたことにより生じるヨーイングをも抑制するように構成することが可能である。ちなみに、本明細書において「転舵輪」とは、ステアリング操作の操作,制御等によって、任意の転舵量とすることが可能な車輪を意味する。例えば、キャスターのように自由に向きが変わる車輪は、転舵輪ではなく非転舵輪となる。もちろん、向きが固定された車輪も非転舵輪である。
本項に記載のシステムにおいては、転舵輪を転舵させる「転舵装置」は、いわゆるステアバイワイヤ型の装置つまり、駆動源を有してステアリング操作部材と機械的に分離され、そのステアリング操作部材の操作に応じて、駆動源を制御しつつその駆動源の力によって前輪を転舵させるように構成されたものである。そのため、後に詳しく説明するが、失陥対処転舵輪を、失陥に起因するヨーイングを抑制すべく転舵された位置を基準として、ステアリング操作に応じた量だけ転舵させるように制御することで、失陥時においても、通常時と同様のステアリング操作で、車両を旋回運動させることが可能となる。ちなみに、ステアリング操作部材は、ステアリングホイールを始め、ジョイスティック,レバー等、種々の形式のものを採用可能である。
また、本項の態様の「転舵装置」は、前輪と後輪とのいずれかのみを転舵させるものであってもよく、それら前輪と後輪との両者を転舵させるものであってもよい。前輪と後輪との両者を転舵可能に構成されたシステムにおいては、上記「失陥時制御部」は、失陥に起因するヨーイングを抑制すべく、それら前輪と後輪とのいずれか一方のみの転舵量を制御するものであってもよく、前輪と後輪との両者の転舵量を制御するものであってもよい。
本項における「駆制動力」は、車輪を駆動する力と、車輪を制動する力とを総合的若しくは一元的に取り扱うための概念である。ちなみに、車輪を駆動する力,車輪を制動する力は、それぞれ、車両を駆動する力,車両を制動する力と考えることも可能である。したがって、本項における「駆制動装置」は、(A)エンジン,モータ等の駆動源とその駆動源の力を車輪の回転として伝達する伝達機構等を含んで構成される駆動装置と、(B)液圧ブレーキ装置,電気ブレーキ装置,駆動源がモータである場合におけるそのモータの起電力を利用したブレーキ装置(例えば回生ブレーキ)等の制動装置とを含んで構成される装置と考えることが可能である。なお、本項の態様における駆制動装置は、後に説明するような互いに独立して左輪,右輪に駆制動力を付与可能なものに限られず、左輪,右輪に対して互いに等しい若しくは互いに関連した大きさの駆制動力を付与可能なものであってもよい。
(2)前記失陥時制御部が、
前記失陥対処転舵輪の転舵量の一成分であって前記失陥に起因して生じる車両のヨーイングを抑制するための転舵量である失陥対処転舵量を、前記失陥に起因して生じる車両のヨーイングをちょうど打ち消すように決定し、その失陥対処転舵量に基づいて、前記1以上の失陥対処転舵輪の各々の目標とされる転舵量を決定するように構成された(1)項に記載の車両運動制御システム。
本項に記載のシステムによれば、先に述べたような失陥時においても、車両にはヨーイングが生じないようにすることが可能である。本項に記載の態様は、例えば、失陥に起因して生じるヨーモーメントと同じ大きさで、かつ、それと逆向きのヨーモーメントを生じさせるように、失陥対処転舵輪の転舵を制御する態様とすることが可能である。
(3)前記失陥時制御部が、
前記右輪に対して目標とされる駆動力を付与できない失陥あるいは前記左輪に対して目標とされる制動力を付与できない失陥が前記駆制動装置に生じた場合に、前記車両を直進させる際、その失陥がなければ前記車両が左旋回するように、前記1以上の失陥対処転舵輪の各々の転舵量を制御し、
前記左輪に対して目標とされる駆動力を付与できない失陥あるいは前記右輪に対して目標とされる制動力を付与できない失陥が前記駆制動装置に生じた場合に、前記車両を直進させる際、その失陥がなければ前記車両が右旋回するように、前記1以上の失陥対処転舵輪の各々の転舵量を制御するように構成された(1)項または(2)項に記載の車両運動制御システム。
本項に記載の態様は、失陥対処転舵輪の転舵させる方向を具体化した態様であり、その方向に失陥対処転舵輪を転舵させることで、失陥に起因して生じるヨーモーメントと逆向きのヨーモーメントを生じさせ、失陥に起因して生じるヨーイングを抑制することが可能である。
(4)前記転舵装置が、前記前輪と前記後輪との両者を転舵させるものとされ、
前記失陥時制御部が
前記前輪と前記後輪との両者を前記失陥対処転舵輪として、それら2つの失陥対処転舵輪の各々の転舵量を制御するものとされ、
前記失陥が生じた場合に、前記車両を直進させる際、前記前輪と前記後輪とが互いに逆相となるように、前記2つの失陥対処転舵輪の各々の転舵量を制御するように構成された(1)項ないし(3)項のいずれか1つに記載の車両運動制御システム。
車輪を転舵させた場合、その転舵輪において車両に横力が作用することなるが、本項に記載のシステムにおいては、前輪と後輪とが互いに逆相となるように転舵されるため、前輪において車両に作用する横力と、後輪において作用する横力とが、互いに打ち消し合う向きとなる。つまり、本項の態様によれば、失陥対処転舵輪が1つである場合に比較して車両に生じる横力を低減すること、あるいは、車両に横力が生じないようにすることが可能である。また、本項の態様によれば、比較的大きなヨーモーメントを発生させることができるため、失陥時において比較的大きな駆動力あるいは制動力を発生させる場合であっても、その比較的大きな駆動力あるいは制動力によって生じるヨーモーメントを十分に低減させることが可能となる。換言すれば、失陥対処転舵輪が1つである場合に比較して、前後輪の各々の転舵量を小さくすることが可能である。
(5)前記失陥時制御部が、
前記失陥対処転舵輪の転舵量の一成分であって前記失陥に起因して生じる車両のヨーイングを抑制するための転舵量である失陥対処転舵量を、前記駆制動装置が失陥したことにより前記左輪および前記右輪のいずれか一方に付与できない分に相当する大きさの駆制動力に基づいて決定し、その決定された失陥対処転舵量に基づいて前記失陥対処転舵輪の転舵量を制御するように構成された(1)項ないし(4)項のいずれか1つに記載の車両運動制御システム。
本項の態様は、失陥に起因するモーメントの向きと逆向きのヨーモーメントを発生させる向きで、駆制動装置の失陥による左輪および右輪の一方に付与する駆制動力の不足分に応じた転舵量だけ失陥対処転舵輪を転舵させることで、車両の直進性を確保する構成とすることが可能である。失陥に起因するヨーモーメントは、駆制動力の不足分の大きさに比例するものであるため、その不足する駆制動力の大きさに応じた転舵量に基づいて失陥対処転舵輪を転舵させることで、上述した失陥に起因するヨーイングをちょうど打ち消すような態様を、容易に実現できる。
(6)前記転舵量制御部が、
前記前輪と後輪との少なくとも一方の前記車両を旋回させるための転舵量である旋回転舵量を、ステアリング操作部材の操作に基づいて決定し、その旋回転舵量に基づいて前記前輪と後輪との少なくとも一方の転舵量を制御するように構成され、
前記失陥時制御部が、
前記失陥対処転舵輪の転舵量が前記旋回転舵量と前記失陥対処転舵量とを足し合わせた転舵量となるように、その失陥対処転舵輪の転舵量を制御するように構成された(5)項に記載の車両運動制御システム。
失陥対処転舵輪を、失陥対処転舵量だけ転舵させた転舵位置は、車両を直進させる基準となる転舵位置と考えることが可能である。つまり、その基準となる転舵位置から、ステアリング操作に応じた量だけ転舵させることで、車両を旋回運動させることが可能となる。本項の態様は、そのことに鑑み、失陥対処転舵輪の転舵量を、失陥対処転舵量と、ステアリング操作部材の操作に応じた旋回転舵量とを足し合わせた転舵量となるように制御する態様とされている。本項の態様によれば、駆制動装置の失陥時においても、通常時と同様のステアリング操作で、車両を旋回運動させることが可能となる。
(7)前記駆制動装置が、前記左輪,前記右輪に対して互いに独立して前記駆制動力を付与可能に構成されており、
前記制御装置が、
前記駆制動装置を制御して前記左輪,前記右輪の各々に対して付与する駆制動力を制御する駆制動力制御部を有する(1)項ないし(6)項のいずれか1つに記載の車両運動制御システム。
本項の態様は、駆制動装置に限定を加えた態様である。その駆制動装置は、例えば、左輪,右輪の各々に対して専用の駆動源を有して左輪,右輪が独立して駆動されるように構成された駆動装置を含むように構成することが可能である。また、ブレーキバイワイヤ型のブレーキ装置、左輪,右輪の各々に対する専用の駆動源として配備された電磁モータの起電力を利用したブレーキ装置等、左輪,右輪が独立して制動されるように構成されたブレーキ装置を採用可能である。
(8)前記駆制動力制御部が、
ステアリング操作部材の操作に応じた前記車両のヨーイングを実現すべく、前記左輪の駆制動力と前記右輪の駆制動力との差である左右輪駆制動力差を制御する左右輪駆制動力差制御部を有する(7)項に記載の車両運動制御システム。
本項の態様は、左輪の駆制動力と右輪の駆制動力とに差をつけることによって、車両の運動を制御するように構成された態様である。例えば、左輪,右輪のうちの旋回外輪(旋回中心から遠い方の車輪)となるものの駆制動力と、旋回内輪(旋回中心に近い方の車輪)の駆制動力とに差をつけることによっても、車両の向きを変更することができる。つまり、車両旋回における車両のヨーイングを、駆制動力差によって制御することが可能なのである。本項の態様は、そのことに鑑み、ステアリング操作部材の操作に基づいて、車両旋回における車両のヨーイングを、上記駆制動力差を制御することで、車両の旋回運動を制御する態様である。本項の態様によれば、良好な特性の車両旋回運動を実現させることが可能になる。ちなみに、「駆制動力差」は、上述した駆動装置による左右の車輪の駆動力の差であってもよく、上述した制動装置による左右の車輪の制動力の差であってもよい。言い換えれば、車両が加速中若しくは車速が維持される場合には、主に駆動力差となり、車両が減速中には、主に、制動力差となる。
(9)前記駆制動力制御部が、
前記左輪および前記右輪のいずれか一方に目標とされるべき駆動力を付与できない前記制動装置の失陥が生じている場合に、それら左輪および右輪の他方に付与する駆動力を増加させるように構成された(7)項または(8)項に記載の車両運動制御システム。
左輪と右輪とのうちの正常に駆動力を付与可能なものに対して、通常時の制御において左輪と右輪とに分担させていた駆動力のすべてを発生させるように構成することが可能である。そのような構成とすれば、通常時の制御における駆動力とほぼ同じ大きさの駆動力を発生させることができ、失陥時における運転者の操作の違和感を軽減することが可能である。
(10)前記失陥時制御部が、
前記失陥対処転舵輪の転舵量の一成分であって前記失陥に起因して生じる車両のヨーイングを抑制するための転舵量である失陥対処転舵量を、前記駆制動装置が失陥したことにより前記左輪および前記右輪のいずれか一方に付与できない分に相当する駆動力と、前記左輪と右輪との他方に付与する駆動力の増加させた分に相当する駆動力とに基づいて決定し、その決定された失陥対処転舵量に基づいて前記1以上の失陥対処転舵輪の各々の転舵量を制御するように構成された(9)項に記載の車両運動制御システム。
左輪と右輪とのうちの正常に駆動力を付与可能なものに対して、付与する駆動力を増加させた場合には、車両に生じるヨーイングは、さらに大きなものとなる。本項の態様は、増加させた分に相当する駆動力をも考慮して失陥対処転舵量を決定するため、その大きなヨーイングを効果的に抑制することが可能となる。
(11)前記駆制動力制御部が、
前記左輪および前記右輪のいずれか一方に目標とされるべき制動力を付与できない前記制動装置の失陥が生じている場合に、それら左輪および右輪の他方に付与する制動力を増加させるように構成された(7)項ないし(10)項のいずれか1つに記載の車両運動制御システム。
(12)前記失陥時制御部が、
前記失陥対処転舵輪の転舵量の一成分であって前記失陥に起因して生じる車両のヨーイングを抑制するための転舵量である失陥対処転舵量を、前記駆制動装置が失陥したことにより前記左輪および前記右輪のいずれか一方に付与できない分に相当する制動力と、前記左輪と右輪との他方に付与する制動力の増加させた分に相当する制動力とに基づいて決定し、その決定された失陥対処転舵量に基づいて前記1以上の失陥対処転舵輪の各々の転舵量を制御するように構成された(11)項に記載の車両運動制御システム。
上記2つの項に記載の態様によれば、左輪および右輪のいずれか一方に目標とされるべき制動力を与えられない失陥が生じている場合において、先に述べた駆動力を与えられない失陥が生じている場合と同様の効果が得られることになる。
請求可能発明の実施例である車両運動制御システムが搭載された車両の概略側面図である。 図1に示す車両およびその車両に搭載されている車両運動制御システムの全体構成を示す概念図である。 図1に示す車両の左輪(右輪)およびそれに対して設けられた懸架装置,駆動装置,制動装置を示す断面図である。 図1に示す車両の前輪(後輪)およびそれに対して設けられた転舵装置を示す図である。 請求可能発明の実施例である車両運動制御システムによって実行される失陥時制御の概念図である。 図2に示す電子制御ユニットによって実行される車両運動制御プログラムを表すフローチャートである。 図6の車両運動制御プログラムにおいて実行される加減速制御サブルーチンを示すフローチャートである。 図7の加減速制御サブルーチンにおいて実行される左右輪駆制動力差制御サブルーチンを示すフローチャートである。 図6の車両運動制御プログラムにおいて実行される転舵制御サブルーチンを示すフローチャートである。 図9の転舵制御サブルーチンにおいて実行される前輪転舵量制御サブルーチンを示すフローチャートである。 図9の転舵制御サブルーチンにおいて実行される後輪転舵量制御サブルーチンを示すフローチャートである。 図2に示す制御装置としての電子制御ユニットの機能を示すブロック図である。
以下、請求可能発明の代表的な実施形態を、実施例として、図を参照しつつ詳しく説明する。なお、請求可能発明は、下記実施例の他、前記〔発明の態様〕の項に記載された態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することができる。
≪車両の構成≫
図1に、実施例の車両運動制御システムが搭載された車両を示す。本車両は、菱形車輪配置の車両であり、次世代コミュータとして期待されている。本車両は、車体10と、それの前方部に設けられた前輪12Fと、その前輪12Fの後方において車体10の左部,右部にそれぞれ設けられた左輪14L,右輪14Rと、それら左輪14L,右輪14Rの後方に設けられた後輪12Rとを有している。当該車両の平面視を示す図2から解るように、前輪12F,後輪12Rは、車幅方向における中央に配設されている。なお、以下の説明において、前輪12F,後輪12Rの区別を要しない場合には、車輪12と総称し、左輪14L,右輪14Rの区別を要しない場合には、車輪14と総称することとする。前輪12F,後輪12R,左輪14L,右輪14Rに関係する構成要素,パラメータ等についても同様とする。
本車両では、後に詳しく説明するが、前輪12F,後輪12Rが転舵輪とされており、左輪14L,右輪14Rは転舵輪とはされていない。また、左輪14L,右輪14Rが駆動輪(車両を駆動するために回転駆動される車輪)とされてはいるものの、前輪12F,後輪12Rは、駆動輪とはされていない。同様に、左輪14L,右輪14Rが制動輪(車両を制動するために回転が制動される車輪)とされてはいるものの、前輪12F,後輪12Rは、制動輪とはされていない。
本車両には、運転者が当該車両を操作するための操作部材として、3つの操作部材が設けられている。その1つが、車両に旋回動作を行わせるためのステアリング操作部材であるステアリングホイール20であり、もう1つが、車両を加速させるためのアクセル操作部材であるアクセルペダル22,さらにもう1つが、車両を減速させるためのブレーキ操作部材であるブレーキペダル24である。ちなみに、本車両は、前進ばかりでなく後退も可能であるが、本明細書が冗長となることを避けるべく、以下の説明では、前進についてのみ説明することとする。
左輪14L,右輪14Rに関して説明すれば、図3から解るように、車輪14は、ホイール本体30と、タイヤ32とから構成されている。ホイール本体30は、アクスル34に固定され、そのアクスル34は、キャリア36に回転可能に保持されている。キャリア36は、それぞれがサスペンション装置を構成するサスペンションアームであるロアアーム38,アッパアーム40によって、車体に対して揺動可能とされている。ロアアーム38には、液圧式のショックアブソーバ42の下端部が取付られている。このショックアブアブソーバ42の上端部は、ばね支持位置調整装置44を介して、車体に支持されている。このばね支持位置調整装置44は、ショックアブソーバ42の上端部と、車体の支持部との上下方向における間隔を大きくしたり、小さくしたりするためのものであり、電磁モータを有し、その電磁モータの作動を制御することによって、後に説明するサスペンションスプリング46の上端部の車体に対する支持位置(以下、「ばね支持位置」という場合がある)を調整することが可能とされている。
液圧式のショックアブソーバ42は、ロアチューブ48とアッパチューブ50とを有し、それらが相対移動可能とされていることで、伸縮可能とされている。ロアチューブ48には、下部リテーナ52が、アッパチューブ50には、上部リテーナ54が、それぞれ固定されており、それら下部リテーナ52,上部リテーナ54によって、サスペンションスプリング46が挟持されている。このような構成により、車輪14は、回転可能にかつ、弾性的に上下に揺動可能とされているのである。
キャリア36は、アクスル34を保持するハブ部56の外方に短円筒状のコイル保持部58を有しているこのコイル保持部58の外周部には、電磁モータを構成する複数のコイル60が保持されている。一方、ホイール本体30のリム部には、それの内周面に沿って、複数の磁石62が配設されている。それら、複数のコイル60および複数の磁石62は互いに向かい合っており、それらは、ブラシレスDCモータを構成するものとなっている。つまり、車輪14は、ホイール本体30の内部に仕込まれたインホイールモータによって回転駆動され、そのインホイールモータは、当該車両における駆動装置64として機能するものとされている。なお、詳しい説明は省略するが、インホイールモータは、車輪14の回転によって発電機としても機能する。このモータが起電力によって発生させる電流を回生することで、駆動装置64は、回生ブレーキ装置としても機能するようにされているのである。
また、アクスル34には、ブレーキディスク66が固定されている。一方、キャリア36には、ブレーキパッドを保持するキャリパ装置68が固定されている。キャリパ装置68は、電磁モータの力によってブレーキパッドをブレーキディスク66に押し付けるようにされている。つまり、本車両では、それらブレーキディスク66,キャリパ装置68によって構成されるディスク型の制動装置70を有しているのである。
次に、前輪12F,後輪12Rに関して説明すれば、図4から解るように、車輪12は、ホイール本体80と、タイヤ82とから構成されている。ホイール本体80は、1対の液圧式のショックアブソーバ84によって、左右から挟持されている。詳しく言えば、ホイール本体80のハブ部86に設けられたアクスル88が、1対のショックアブソーバ84の各々の下端部に設けられた軸受部90によって回転可能に保持されていることで、車輪12は回転可能とされているのである。
1対のショックアブソーバ84の各々の上端部は、車幅方向に延びる支持板92に固定されており、支持板92は、1対のショックアブソーバ84の上端部を繋ぐものとなっている。支持板92には、軸94が固定的に付設されており、その軸94が、車体に設けられた軸受部96に回転可能に保持されている。軸94は、軸受部96から上方に延びだしており、その延びだした部分を転舵装置98が回転させることで、車輪12は、転舵される。この転舵装置98は、電磁モータを有し、その電磁モータの作動が制御されることで、車輪12を任意の転舵角で転舵するように構成されている。なお、転舵装置98は、車輪12が左右ともに90°以上転舵されないようにするためのストッパを有している。
1対のショックアブソーバ84の各々は、ロアチューブ100とアッパチューブ102とを有し、それらが相対移動可能とされていることで、伸縮可能とされている。ロアチューブ100には、下部リテーナ104が、アッパチューブ102には、上部リテーナ106が、それぞれ固定されており、それら下部リテーナ104,上部リテーナ106によって、1対のサスペンションスプリング108の各々が挟持されている。このような構成により、車輪12は、弾性的に上下に揺動可能とされているのである。
≪車両運動制御システムの構成≫
本車両の運動は、図2に全体構成を示す車両運動制御システムによって制御される。このシステムは、当該システムの中核をなす制御装置としての電子制御ユニット(以下、「ECU」と略す)130を備えている。この、ECU130は、コンピュータを主体とする装置であり、左輪駆動装置[DL]64L,右輪駆動装置[DR]64R,左輪制動装置[BL]70L,右輪制動装置[BR]70R,左輪ばね支持位置調整装置[HL]44L,右輪ばね支持位置調整装置[HR]44R,前輪転舵装置[SF]98F,後輪転舵装置[SR]98Rを制御することで、当該車両の運動を制御するように構成されている。ちなみに、ECU130は、それら各装置の電磁モータの作動の制御のためのドライバ回路をも有している。
なお、本車両運動システムは、制御のためのパラメータを取得するデバイスとして、種々のセンサを備えている。具体的には、車両の走行速度(車速)vを検出するための車速センサ[v]132,ステアリングホイール20の操作角θを検出するためのステアリングセンサ[θ]134,アクセルペダル22の操作量aOを検出するためのアクセルセンサ[aO]136,ブレーキペダル24の操作量bOを検出するためのブレーキセンサ[bO]138,車体に生じている横加速度Gyを検出するための横加速度センサ[Gy]140,車両のヨーレートγを検出するためのヨーレートセンサ[γ]142,前輪の転舵量である前輪転舵角δFを検出するための前輪転舵角センサ[δF]146F,後輪の転舵量である後輪転舵角δRを検出するための後輪転舵角センサ[δR]146Rが、車体に設けられており、それらのセンサがECU130に繋げられている。なお、横加速度センサ[Gy]は、車体に実際に生じている横加速度Gyを検出するためのものであるが、車両に実際に生じる横加速度Gyは、互いに反対方向の横加速度Gyであるため、本車両運動システムの制御では、車体に生じている横加速度Gyを、車両に実際に生じている横加速度Gyとして扱って、車両の運動制御を行うようにされている。
≪車両運動制御の内容≫
a)加減速制御
本車両の運動の制御のうち、車両を加速させる制御および車両をさせる制御である加減速制御は、以下のように行われる。車両の加速させる場合には、運転者によってアクセルペダル22が操作されるため、アクセルセンサ136によって検出されたアクセルペダル22の操作量aO に基づいて、次式(1)に従って、車両に与えられるべき駆動力FD,すなわち、左右の車輪14L,14Rに与えられる駆動力FDが決定される。KDは、駆動力FDを決定するための駆動力ゲインである。
D=KD・aO ・・・(1)
一方で、車両を減速させる場合には、運転者によってブレーキペダル24が操作されるため、ブレーキセンサ138によって検出されたブレーキペダル24の操作量bOに基づいて、次式(2)に従って、車両に与えられるべき制動力FB,すなわち、左右の車輪14L,14Rに与えられる制動力FBが決定される。KBは、制動力FBを決定するための制動力ゲインである。
B=KB・bO ・・・(2)
なお、上記駆動力ゲインKD,制動力ゲインKBは、定数であってもよく、また、何らかのパラメータに基づいて変化するようなものであってもよい。
加減速制御では、上記駆動力FDと上記制動力FBとを一元化して扱うため、駆制動力Fが、次式(3)に従って求められる。
F=FD−FB ・・・(3)
つまり、F>0の場合には、車両に駆動力Fを与えるものとし、F<0の場合には、車両に制動力Fを与えるもとされる。次いで、その駆制動力Fを左輪,右輪に分担させるべく、次式(4),(5)に従って、左輪駆制動力FL,右輪駆制動力FRが求められる。
L=F/2 ・・・(4)
B=F/2 ・・・(5)
上記左輪駆制動力FL,右輪駆制動力FRに基づいて、それら駆制動力FL,FRがそれぞれ得られるように、駆動装置64L,64R,制動装置70L,70Rが制御される。詳しく説明すれば、FL>0の場合には、左輪駆制動力FLに応じた大きさの電流が、バッテリから左輪駆動装置64Lの電磁モータに供給される。一方、FL<0の場合は、以下のようにされる。駆動装置64は、先に説明したように、回生ブレーキ装置としての機能を有しているため、左輪駆制動力FLが回生制動力で賄える場合には、左輪駆制動力FLに応じた大きさの電流が左輪駆動装置64Lの電磁モータによって発電されてバッテリに回生されるように、左輪駆動装置64Lが制御される。左輪駆制動力FLが回生制動力で賄えない場合には、その時点で最大の回生制動力が得られるように左輪駆動装置64Lが制御され、その最大の回生制動力によっては賄えない分に応じた制動力が得られるように、左輪制動装置70Lの電磁モータにその制動力に応じた大きさの電流が供給される。右輪14Rについては、左輪14Lと同様であるので、ここでの説明は省略する。
なお、後に詳しく説明するが、上記左輪駆制動力FL,右輪駆制動力FRは、旋回時制御によって必要とされる左右輪駆制動力差ΔFに基づく補正が、次式(6),(7)に従ってなされる。
L=FL+ΔF/2 ・・・(6)
R=FR−ΔF/2 ・・・(7)
したがって、車両旋回時には、駆動装置64L,64R,制動装置70L,70Rの制御は、補正後の左輪駆制動力FL,右輪駆制動力FRに基づいて行われる。
b)旋回時制御
本車両運動制御では、車両の旋回時には、前輪12Fの転舵角である前輪転舵角δF、、後輪12Rの転舵角である後輪転舵角δRのそれぞれの目標が決定されて、前輪転舵量制御,後輪転舵量制御がなされ、左輪14L,右輪14Rの各々に与えられるべき駆制動力FL,右輪駆制動力FRの差ΔFが決定されて、左右輪駆制動力差制御がなされる。
i)前輪転舵量制御
前輪12Fの転舵角δFの制御は、ステアリングホイール20の操作量である操作角θに基づいて行われる。まず、ステアリングセンサ134によって検出されている操作角θに基づいて、次式(8)に従って、車両旋回において車両に生じるべき横加速度Gyである目標横加速度Gy*が決定される。つまり、目標横加速度Gy*が上記操作角θに応じた大きさに決定される。ちなみに、KGは、目標横加速度Gy*を決定するための横加速度ゲインであり、定数であってもよく、何らかのパラメータによって値が変化するようなものであってもよい。
Gy*=KG・θ ・・・(8)
車両に実際に生じている実際の横加速度(実横加速度)Gyは、横加速度センサ140の検出値から取得されており。上記目標横加速度Gy*に対する実横加速度Gyの偏差である横加速度偏差ΔGyが、次式(9)に従って認定される。
ΔGy=Gy*−Gy ・・・(9)
そして、上記横加速度偏差ΔGyに基づくフィードバック制御則に従って、前輪転舵角δFの目標となる目標前輪転舵角δF *が決定される。詳しく言えば、PID制御則に基づく次式(10)に従って、目標前輪転舵角δF *が決定される。
δF *=PF・ΔGy+IF・∫ΔGy・dt+DF・dΔGy/dt ・・・(10)
上記式(10)の右辺第1項,第2項,第3項は、それぞれ、比例項(P項),積分項(I項),微分項(D項)であり、PF,IF,DFは、目標前輪転舵角δF *を決定するための比例ゲイン,積分ゲイン,微分ゲインである。なお、それらゲインPF,IF,DFは、いずれも、定数であってもよく、何らかのパラメータによって値が変化するようなものであってもよい。目標前輪転舵角δF *の決定後、前輪転舵角センサ146Fによって検出されている実際の前輪転舵角δFが、その目標前輪転舵角δF *となるように、前輪転舵装置98Fの有する電磁モータへの供給電流量が決定され、その電流量の電流がその電磁モータに供給される。なお、上記制御方法に代えて、上記式(10)によって、直接、上記電磁モータへの供給電流量を決定し、その電流量の電流が、電磁モータに供給されるような制御を行うようにしてもよい。
ii)左右輪駆制動力差制御
左輪14Lの駆制動力FLと右輪14Rの駆制動力FRに駆制動力差ΔFをつける制御は、ステアリングホイール20の操作量である操作角θと、車両が走行している速度vとに基づいて行われる。まず、ステアリングセンサ134によって検出されている操作角θにと、車速センサ132によって検出されている車速vとに基づいて、次式(11)に従って、車両旋回において実現すべきヨーレートγである目標ヨーレートγ*が決定される。つまり、目標ヨーレートγ*が上記操作角θを車速vで除したものに応じた大きさに決定される。ちなみに、Kγは、目標ヨーレートγ*を決定するためのヨーレートゲインであり、定数であってもよく、何らかのパラメータによって値が変化するようなものであってもよい。
γ*=Kγ・θ・v ・・・(11)
実際に実現している車両のヨーレート(実ヨーレート)γは、ヨーレートセンサ142の検出値から取得されており。上記目標ヨーレートγ*に対する実ヨーレートγの偏差であるヨーレート偏差Δγが、次式(12)に従って認定される。
Δγ=γ*−γ ・・・(12)
そして、上記ヨーレート偏差Δγに基づくフィードバック制御則に従って、実現すべき左右輪駆制動力差ΔFが決定される。詳しく言えば、PID制御則に基づく次式(13)に従って、適切な左右輪駆制動力差ΔFが決定される。
ΔF=PLR・Δγ+IF・∫Δγ・dt+DF・dΔγ/dt ・・・(13)
上記式(13)の右辺第1項,第2項,第3項は、それぞれ、比例項(P項),積分項(I項),微分項(D項)であり、PLR,ILR,DLRは、上記左右輪駆制動力差ΔFを決定するための比例ゲイン,積分ゲイン,微分ゲインである。なお、それらゲインPLR,ILR,DLRは、いずれも、定数であってもよく、何らかのパラメータによって値が変化するようなものであってもよい。左右輪駆制動力差ΔFの決定後、その左右輪駆制動力差ΔFに基づいて、先に説明したように、上記左輪駆制動力FL,右輪駆制動力FRの補正が行われる。
iii)後輪転舵量制御
後輪12Rの転舵角δRの制御は、前輪転舵制御において認定された横加速度偏差ΔGyと、左右輪駆制動力差制御において認定されたヨーレート偏差Δγに基づいて行われる。まず、それら横加速度偏差ΔGy,ヨーレート偏差Δγに基づいて、次式(14)に従って、公転求心加速度偏差ΔGoが決定される。
ΔGo=ΔGy−v・Δγ ・・・(14)
この公転求心加速度偏差ΔGoは、目標公転求心加速度Go*に対する、実際の公転求心加速度(実公転求心加速度)Goの偏差と等価なものと考えることができる。ちなみに、目標公転求心加速度Go*は、次式(15)で、実公転求心加速度Goは、次式(16)で、それぞれ表わされるものである。
Go*=Gy*−v・γ* ・・・(15)
Go=Gy−v・γ ・・・(16)
そして、上記公転求心加速度偏差ΔGoに基づくフィードバック制御則に従って、後輪転舵角δRの目標となる目標後輪転舵角δF *が決定される。詳しく言えば、PID制御則に基づく次式(17)に従って、後輪目標転舵角δR *が決定される。
δR *=PR・ΔGO+IR・∫ΔGO・dt+DR・dΔGO/dt ・・・(17)
上記式(17)の右辺第1項,第2項,第3項は、それぞれ、比例項(P項),積分項(I項),微分項(D項)であり、PR,IR,DRは、目標後輪転舵角δF *を決定するための比例ゲイン,積分ゲイン,微分ゲインである。なお、それらゲインPR,IR,DRは、いずれも、定数であってもよく、何らかのパラメータによって値が変化するようなものであってもよい。目標後輪転舵角δR *の決定後、後輪転舵角センサ146Rによって検出されている実際の後輪転舵角δRが、その目標後輪転舵角δR *となるように、後輪転舵装置98Rの有する電磁モータへの供給電流量が決定され、その電流量の電流がその電磁モータに供給される。なお、上記制御方法に代えて、上記式(17)によって、直接、上記電磁モータへの供給電流量を決定し、その電流量の電流が、電磁モータに供給されるような制御を行うようにしてもよい。
≪失陥時制御≫
例えば、左輪駆動装置64Lと右輪駆動装置64Rとの一方が失陥した場合には、左輪14Lに与える駆動力と右輪14Rに与える駆動力との間に差が生じ、車両にはヨーイングが生じてしまうことになる。また、左輪制動装置70Lと右輪制動装置70Rとの一方が失陥した場合には、左輪14Lに与える制動力と右輪14Rに与える制動力との間に差が生じ、この場合にも、車両にはヨーイングが生じてしまうことになる。そこで、本車両運動制御システムは、上記のような失陥が生じた場合には、失陥時制御が実行されるようになっている。その失陥時制御は、左輪14Lに対応する装置と右輪14Rに対応する装置のうちの失陥した装置が発生できない駆動力あるいは制動力を、それらのうちの正常な装置に発生させるとともに、そのことにより生じる左右輪の間の駆動力あるいは制動力の差である駆制動力差に起因する車両のヨーイングを打ち消すべく、転舵輪である前輪12Fと後輪12Rとの転舵を制御するものである。つまり、本システムにおいては、前輪12Fと後輪12Rとの両者が、失陥対処転舵輪とされている。以下に、その失陥時制御について、詳しく説明する。
例えば、右輪14Rに対応する駆動装置64Rが失陥した場合であって、車両を直進させるように制御する場合を考える。つまり、上記式(3)により求められた車両に付与する駆制動力F(=FD−FB)が正である場合には、失陥時制御は、まず、車両に与える駆動力を、左輪12Lに対応する駆動装置64Lのみで発生させるようになっている。つまり、左輪駆動装置64Lの目標の駆動力となる左輪駆制動力FLが、上記車両に与える駆制動力Fとされるとともに、右輪駆動装置64Rの目標の駆動力となる右輪駆制動力FRが、0とされる。そして、それら駆制動力FL,FRがそれぞれ得られるように、駆動装置64L,64Rが制御される。
上記のように左輪駆動装置64Lのみで車両に駆動力を与えた場合、車両には、図5に示すような右回りのヨーイング(ヨーモーメントMyaw)が生じることになる。そこで、失陥時制御では、その駆動力差に起因するヨーモーメントMyawを打ち消すように、前輪12Fと後輪12Rとを転舵させるべく、前輪転舵装置98Fと後輪転舵装置98Rとが制御されるようになっている。具体的には、それら前後輪12を転舵させることで、左回りのモーメントを発生させ、上記の駆動力差に起因するヨーモーメントMyawを打ち消し、車両としてはヨーモーメントが発生していない状態とするのである。つまり、前輪12Fを、前方側が左方を向くように転舵させるとともに、後輪12Rを、前方側が右方を向くように転舵させるのである。
その駆動力差に起因するヨーモーメントMyawを打ち消すための前輪12Fの転舵角δFOと後輪12Rの転舵角δROとは、以下のように求められる。まず、前輪12Fを転舵角δFOだけ転舵させた場合におけるその前輪12Fにおいて車両に作用する横力をFyFとし、後輪12Rを転舵角δROだけ転舵させた場合におけるその後輪12Rにおいて車両に作用する横力をFyRとして、車両の重心位置回りのモーメントを考える。そして、前輪12Fと後輪12Rとにおいて作用する横力に応じたモーメントが、駆動力差Fに起因するヨーモーメントで打ち消される。つまり、それらが釣り合うため、次式が成り立つ。
F・Tr/2=FyF・LF+(−FyR)・LR ・・・(18)
ここで、Trは、トレッドであり、LF,LRは、それぞれ、重心位置から前輪12F,後輪12Rまでの距離である。また、車両には、横力が働かない状態であることが望ましい。つまり、前輪12Fにおいて車両に作用する横力FyFと、後輪12Rにおいて車両に作用する横力FyRとは、逆向きで同じ大きさであることが望ましい。したがって、上記式(18)において、FyR=−FyFとすれば、その横力FyF,FyRが、次式のように求められるのである。ちなみに、前方に向かう力を正,左方に向かう横力を正としている。
FyF=F・Tr/{2・(LF+LR)} ・・・(19)
FyR=−F・Tr/{2・(LF+LR)} ・・・(20)
そして、それらの横力FyF,FyRは、それぞれ、上記の前輪転舵角δFO,後輪転舵角δROに比例するものであるため、次式に従って、前輪転舵角δFO,後輪転舵角δROが求められるのである。
δFO=KδF・FyF ・・・(21)
δRO=KδR・FyR ・・・(22)
ここで、KδF,KδRは、前輪12F,後輪12Rに対応して定まる定数である。つまり、左輪駆動装置64Lのみで駆動力Fを発生させる場合には、前輪12F,後輪12Rを、それぞれ、前輪転舵角δFO,後輪転舵角δROだけ転舵させることで、車両にはヨーモーメントも横力も発生せず、車両は直進することが可能となるのである。なお、それら前輪転舵角δFO,後輪転舵角δROが、失陥対処転舵量である。
また、左輪14Lに対応する駆動装置64Lが失陥した場合であって、上記式(3)により求められた駆制動力F(=FD−FB)が正である場合には、右輪駆動装置64Rのみで車両に駆動力Fを与えるように、その右輪駆動装置64Rが制御される。そして、その場合には、駆動力差に起因するモーメントが、左回りのものであるため、そのモーメントを打ち消すべく、前輪12Fを、前方側が右方を向くように転舵させるとともに、後輪12Rを、前方側が左方を向くように転舵させる。
さらに、例えば、右輪14Rに対応する制動装置70Rが失陥した場合であって、上記式(3)により求められた車両に付与する駆制動力F(=FD−FB)が負である場合には、車両に与える制動力を、左輪12Lに対応する制動装置70Lのみで発生させ、左輪14Rに対応する制動装置70Lが失陥した場合には、車両に与える制動力を、右輪12Rに対応する制動装置70Rのみで発生させる。つまり、右輪制動装置70Rが失陥した場合には、制動力差Fに起因する左回りのモーメントが生じ、左輪制動装置70Lが失陥した場合には、制動力差Fに起因する右回りのモーメントが生じることになる。そして、その制動力差に起因するモーメントを打ち消すべく、前輪12F,後輪12Rを、それぞれ、前輪転舵角δFO,後輪転舵角δROだけ転舵させるのである。
ただし、車両の旋回時には、先に述べた左右輪駆動力差制御が実行され、車両のヨーイングが制御されるようになっている。そこで、失陥時制御においても、そのステアリング操作に応じた車両のヨーイングは発生させるようになっている。具体的に言えば、車両の重心位置回りのモーメントを考えた場合に、前輪12Fと後輪12Rとにおいて作用する横力に応じたモーメントと、左輪14Lあるいは右輪14Rのいずれかに付与することになる駆制動力Fに起因するヨーモーメントとの差が、上記のステアリング操作に応じて発生させるべき車両のヨーモーメントとなればよい。つまり、次式が成り立つのである。
F・Tr/2−{FyF・LF+(−FyR)・LR}=ΔF・Tr/2
・・・(23)
上記式(23)において、FyR=−FyFとすれば、その横力FyF,FyRが、次式のように求められる。
FyF=(F−ΔF)・Tr/{2・(LF+LR)} ・・・(24)
FyR=−(F−ΔF)・Tr/{2・(LF+LR)} ・・・(25)
そして、先に示した式(21),式(22)に従って、前輪失陥対処転舵角δFO(=KδF・FyF),後輪失陥対処転舵角δRO(=KδR・FyR)が求められる。続いて、旋回転舵量である上記式(10)により得られた目標前輪転舵角δF *(旋回転舵量である)に前輪失陥対処転舵角δFOが加えられ、上記式(17)により得られた目標後輪転舵角δR *に後輪失陥対処転舵角δROが加えられ、それらが、次式のように補正されるのである。
δF *=δF *+δFO ・・・(26)
δR *=δR *+δRO ・・・(27)
上述したような失陥時制御により、先に述べた旋回時制御を、失陥時においも実行可能とされているのである。
≪制御プログラム≫
上述した車両の運動制御は、図6にフローチャートを示す車両運動制御プログラムが、イグニッションスイッチがON状態とされている間、短い時間間隔(例えば、数msec)をおいてECU130により繰り返し実行されることによって行われる。以下に、その制御のフローを、図に示すフローチャートを参照しつつ、簡単に説明する。
車両運動制御プログラムによる処理では、まず、ステップ1(以下、「S1」と略す、他のステップも同様である),S2において、車速センサ132により車速vが取得されるとともに、ステアリングセンサ134によりステアリングホイール20の操作角θが取得される。そして、S3において、駆動装置64および制動装置70を制御するため処理が行われ、S4において、転舵装置98を制御するための処理が行われる。
S3における処理は、図7にフローチャートを示す加減速制御サブルーチンが実行されることによって行われる。この処理では、まず、S11,12において、アクセルセンサ136により取得されたアクセルペダル操作量aOに基づいて車両に与えられるべき駆動力FDが決定されるとともに、S13,14において、ブレーキセンサ138により取得されたブレーキペダル操作量bOに基づいて車両に与えられるべき制動力FBが決定される。そして、S15において、それら駆動力FDと制動力FBとから、車両に与えられるべき駆制動力F(=FD−FB)が決定される。
次いで、S16,17において、左輪駆制動力FLと右輪駆制動力FRとが、決定される。具体的には、先に述べた旋回時制御の左右輪駆動力差制御が、図8にフローチャートを示す左右輪駆動力差制御サブルーチンが実行されることにより行われる。つまり、その左右輪駆動力差制御サブルーチンにおいて、先に述べたような手法により、車両のヨーレートγに基づいて左右輪駆動力差ΔFが決定されるのである。次いで、加減速制御サブルーチンのS17において、車両に付与する駆制動力Fと左右輪駆制動力差ΔFとに基づいて左輪駆制動力FLと右輪駆制動力FRとが決定されるのである。
次いで、S18において、上記のように決定された左輪駆制動力FLを発生可能か否かが判定されるとともに、S19において、右輪駆制動力FRを発生可能か否かが判定される。詳しく言えば、左輪駆制動力FLあるいは右輪駆制動力FRが正で駆動力である場合には、左輪駆動装置64Lあるいは右輪駆動装置64Rが失陥しているか否かが判定され、左輪駆制動力FLあるいは右輪駆制動力FRが負で制動力である場合には、左輪制動装置70Lあるいは右輪制動装置70Rが失陥しているか否かが判定される。そして、S18において、左輪駆制動力FLを発生不能であると判定された場合には、S20において、左輪駆制動力FLが0とされるとともに、右輪駆制動力FRがFとされる。また、S19において、右輪駆制動力FRを発生不能であると判定された場合には、右輪駆制動力FRが0とされるとともに、左輪駆制動力FLがFとされる。そして、左輪駆制動力FLあるいは右輪駆制動力FRのいずれかを発生できない場合には、失陥制御フラグFLのフラグ値が1とされる。一方、左輪駆制動力FLおよび右輪駆制動力FRのいずれをも発生可能な場合には、S23において、失陥制御フラグFLのフラグ値が0とされる。
以上のように決定された左輪駆制動力FLと右輪駆制動力FRとに基づいて、S24において、それら駆制動力FL,FRがそれぞれ得られるように、駆動装置64L,64R,制動装置70L,70Rが制御される。以上で、加減速制御サブルーチンの実行が終了する。
続いて、車両運動制御プログラムのS3における処理は、図9にフローチャートを示す転舵制御サブルーチンが実行されることによって行われる。この処理では、まず、S51において、失陥制御フラグFLのフラグ値が確認される。失陥制御フラグFLのフラグ値が0である場合には、S56において、駆動装置64L,64Rのいずれか、あるいは、2つの制動装置70L,70Rのいずれかが失陥した場合に車両を直進させるための転舵角、つまり、先に説明した前輪失陥対処転舵角δFOおよび後輪失陥対処転舵角δROが、0とされ、S57において、前輪12Fの転舵の制御が行われるとともに、S58において、後輪12Rの転舵の制御が行われる。
前輪12Fの転舵の制御は、図10にフローチャートを示す前輪転舵量制御サブルーチンが実行されることにより行われる。つまり、その前輪転舵量制御サブルーチンにおいて、先に述べたような手法により、車両の横加速度Gyに基づいて目標前輪転舵角δF *が決定され、実際の前輪転舵角δFが、その目標前輪転舵角δF *となるように、前輪転舵装置98Fの電磁モータへの供給電流が決定され、その電流供給が行われる。また、後輪12Rの転舵の制御は、図11にフローチャートを示す後輪転舵量制御サブルーチンが実行されることにより行われる。つまり、その後輪転舵量制御サブルーチンにおいて、先に述べたような手法により、車両の公転球心加速度偏差ΔGOに基づいて目標後輪転舵角δR *が決定され、実際の後輪転舵角δRが、その目標後輪転舵角δR *となるように、後輪転舵装置98Rの電磁モータへの供給電流が決定され、その電流供給が行われる。
なお、上記の目標前輪転舵角δF *および目標後輪転舵角δR *は、2つの駆動装置64L,64R、2つの制動装置70L,70Rに失陥が生じている場合には、補正されるようになっている。具体的には、S52〜55において、2つの駆動装置64L,64Rのいずれかのみで駆動力を発生させる場合、あるいは、2つの制動装置70L,70Rのいずれかのみで制動力を発生させる場合に生じるヨーモーメントを打ち消すとともに、ステアリング操作に応じた車両のヨーイングを発生させるように、前後輪12を転舵させるべく、前輪失陥対処転舵角δFOおよび後輪失陥対処転舵角δROが決定される。なお、それら前輪失陥対処転舵角δFOおよび後輪失陥対処転舵角δROは、互いに逆向きで同じ大きさの横力Fyが車両に作用するように決定されるのであり、S52において、その横力Fyが、左右輪14のいずれか一方に発生させる駆動力Fと、ステアリング操作に応じた車両のヨーイングを発生させるための左右輪駆動力差ΔFとに基づいて決定されるようになっている。そして、前輪転舵量制御サブルーチンにおいて、前輪失陥対処転舵角δFOを加えて目標前輪転舵角δF *が決定され、後輪転舵量制御サブルーチンにおいて、後輪失陥対処転舵角δROを加えて目標後輪転舵角δR *が決定される。
以上のように、転舵制御サブルーチンの実行が終了すると、車両運動制御プログラムの1回の実行が終了する。
≪制御装置の機能構成≫
上述したような制御を実行して車両の運動を制御するための制御装置として機能するECU130は、前述した各種の処理を実行する各種の機能部を有していると考えることができる。詳しく言えば、図12に示すように、ECU130は、上記転舵制御サブルーチンを実行して前輪12Fの転舵量と、後輪12Rの転舵量とを制御する機能部である転舵量制御部200と、上記加減速制御サブルーチンを実行して左輪14L,右輪14Rの各々に付与する駆制動力を制御する機能部である駆制動力制御部202とを有している。その転舵量制御部200は、駆制動装置の失陥に起因するヨーイングを抑制すべく、失陥対処転舵輪である前後輪12の転舵量を制御する失陥時制御部210を有しており、その失陥時制御部210は、転舵制御サブルーチンのS52〜S55を実行する部分を含んで構成される。また、駆制動力制御部202は、左右輪駆動力差制御サブルーチンを実行して、ステアリング操作に応じた車両のヨーイングを実現すべく左右輪駆制動力差を制御する左右輪駆制動力差制御部220を有している。また、駆制動力制御部202は、左輪14Lと右輪14Rとのいずれか一方に目標とされるべき駆制動力を付与できない駆制動装置の失陥が生じた場合に、左輪14Lと右輪14Rとの他方に付与する駆制動力を増加させる失陥時制御部222を有している。
≪車両運動制御システムの効果≫
菱形車輪配置車両において、左右輪14の駆動装置64L,64Rのいずれか、左右輪14の制動装置70L,70Rのいずれかに失陥が生じた場合には、車両にヨーイングが生じることになるが、本車両運動制御システムによれば、そのヨーイングを打ち消すように、前後輪12が転舵されるため、車両の直進性が確保されることになる。したがって、本実施例の車両運動制御システム搭載した菱形車輪配置車両は、実用性の高いものとなるのである。
10:車体 12F:前輪 12R:後輪 14L:左輪 14R:右輪 20:ステアリングホイール(ステアリング操作部材) 22:アクセルペダル 24:ブレーキペダル 64L:左輪駆動装置 64R:右輪駆動装置 70L:左輪制動装置 70R:右輪制動装置 98F:前輪転舵装置 98R:後輪転舵装置 130:電子制御ユニット(ECU) 132:車速センサ 134:ステアリングセンサ 136:アクセルセンサ 138:ブレーキセンサ 140:横加速度センサ 142:ヨーレートセンサ 146F:前輪転舵角センサ 146R:後輪転舵角センサ 200:転舵量制御部 202:駆制動力制御部 210:失陥時制御部(転舵量制御部) 220:左右輪駆制動力差 222:失陥時制御部(駆制動力制御部)
v:車両走行速度(車速) θ:ステアリングホイールの操作角 aO:アクセルペダルの操作量 bO:ブレーキペダルの操作量 Gy:横加速度(実横加速度) Gy*:目標横加速度 ΔGy:横加速度偏差 γ:ヨーレート(実ヨーレート) γ*:目標ヨーレート Δγ:ヨーレート偏差 Go:公転求心加速度(実公転求心加速度) Go*:目標公転求心加速度 ΔGo:公転求心加速度偏差 δF:前輪転舵角 δF *:目標前輪転舵角 δFO:前輪失陥対処転舵角 δR:後輪転舵角 δR *:目標後輪転舵角 δRO:後輪失陥対処転舵角 F:駆制動力 FD:駆動力 FB:制動力 FL:左輪駆制動力 FR:右輪駆制動力 ΔF:左右輪駆制動力差 FyF:前輪横力 FyF:後輪横力 Tr:トレッド LF:重心から前輪までの距離 LR:重心から後輪までの距離

Claims (5)

  1. (a)自身の前方部に配置された単一の前輪と(b)その前輪より後方において自身の左右にそれぞれ配置された左輪および右輪と(c)それら左輪および右輪より後方に配置された単一の後輪とを有する車両に搭載され、その車両の運動を制御する車両運動制御システムであって、
    前記前輪と前記後輪との少なくとも一方を転舵させる転舵装置と、
    前記車両を駆動するための駆動力および前記車両を制動するための制動力である駆制動力を前記左輪,前記右輪に対してそれぞれ付与する駆制動装置と、
    前記車両の制御を司る制御装置と
    を備え、
    前記制御装置が、
    前記転舵装置を制御して前記前輪と後輪との少なくとも一方の転舵量を制御する転舵量制御部を有し、
    その転舵量制御部が、
    前記左輪および前記右輪のいずれか一方に目標とされる駆動力と目標とされる制動力との少なくとも一方を付与できない失陥が前記駆制動装置に生じた場合に、その失陥に起因して生じる車両のヨーイングを抑制すべく、(i)前記前輪と前記後輪との一方が前記転舵装置により転舵可能とされている場合においてはその一方を(ii)前記前輪と前記後輪との両者が前記転舵装置により転舵可能とされている場合においてはそれら両者のうちの少なくとも一方を失陥対処転舵輪として、その1以上の失陥対処転舵輪の各々の転舵量を制御する失陥時制御部を含んで構成された車両運動制御システム。
  2. 前記失陥時制御部が、
    前記失陥対処転舵輪の転舵量の一成分であって前記失陥に起因して生じる車両のヨーイングを抑制するための転舵量である失陥対処転舵量を、前記失陥に起因して生じる車両のヨーイングをちょうど打ち消すように決定し、その失陥対処転舵量に基づいて、前記1以上の失陥対処転舵輪の各々の目標とされる転舵量を決定するように構成された請求項1に記載の車両運動制御システム。
  3. 前記転舵装置が、前記前輪と前記後輪との両者を転舵させるものとされ、
    前記失陥時制御部が
    前記前輪と前記後輪との両者を前記失陥対処転舵輪として、それら2つの失陥対処転舵輪の各々の転舵量を制御するものとされ、
    前記失陥が生じた場合に、前記車両を直進させる際、前記前輪と前記後輪とが互いに逆相となるように、前記2つの失陥対処転舵輪の各々の転舵量を制御するように構成された請求項1または請求項2に記載の車両運動制御システム。
  4. 前記失陥時制御部が、
    前記失陥対処転舵輪の転舵量の一成分であって前記失陥に起因して生じる車両のヨーイングを抑制するための転舵量である失陥対処転舵量を、前記駆制動装置が失陥したことにより前記左輪および前記右輪のいずれか一方に付与できない分に相当する大きさの駆制動力に基づいて決定し、その決定された失陥対処転舵量に基づいて前記失陥対処転舵輪の転舵量を制御するように構成された請求項1ないし請求項3のいずれか1つに記載の車両運動制御システム。
  5. 前記転舵量制御部が、
    前記前輪と後輪との少なくとも一方の前記車両を旋回させるための転舵量である旋回転舵量を、ステアリング操作部材の操作に基づいて決定し、その旋回転舵量に基づいて前記前輪と後輪との少なくとも一方の転舵量を制御するように構成され、
    前記失陥時制御部が、
    前記失陥対処転舵輪の転舵量が前記旋回転舵量と前記失陥対処転舵量とを足し合わせた転舵量となるように、その失陥対処転舵輪の転舵量を制御するように構成された請求項4に記載の車両運動制御システム。
JP2009256061A 2009-11-09 2009-11-09 車両運動制御システム Expired - Fee Related JP5251837B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2009256061A JP5251837B2 (ja) 2009-11-09 2009-11-09 車両運動制御システム

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2009256061A JP5251837B2 (ja) 2009-11-09 2009-11-09 車両運動制御システム

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2011098692A JP2011098692A (ja) 2011-05-19
JP5251837B2 true JP5251837B2 (ja) 2013-07-31

Family

ID=44190233

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2009256061A Expired - Fee Related JP5251837B2 (ja) 2009-11-09 2009-11-09 車両運動制御システム

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5251837B2 (ja)

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP6988280B2 (ja) * 2017-09-01 2022-01-05 株式会社豊田自動織機 リーチ式フォークリフト

Family Cites Families (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH03125687U (ja) * 1990-03-31 1991-12-18
CN1304237C (zh) * 2003-12-31 2007-03-14 湖南大学 菱形电动车
JP4114657B2 (ja) * 2004-10-25 2008-07-09 三菱自動車工業株式会社 車両の旋回挙動制御装置
JP2006321271A (ja) * 2005-05-17 2006-11-30 Jtekt Corp 車両用操舵装置

Also Published As

Publication number Publication date
JP2011098692A (ja) 2011-05-19

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5177298B2 (ja) 車両運動制御システム
US8997911B2 (en) Vehicle
CN108602532B (zh) 用于影响机动车的行驶方向的方法
JP6706634B2 (ja) 車両を操舵する方法、自動車用のコントローラおよび自動車
JP6107689B2 (ja) 車両
WO1990011905A1 (en) Electric car
JP2001322557A (ja) 車両の複数輪独立操舵装置
JP2020050327A (ja) ステアリングシステムおよびそれを備えた車両
WO2011102108A1 (ja) 車両
JP2013144471A (ja) 車両
US20210300457A1 (en) Vehicle steering system
JP5893486B2 (ja) 電気自動車
GB2480732A (en) Method for vehicle steering using a vehicle steering device
JP5278200B2 (ja) 車体傾動制御装置及びその方法
JP5251837B2 (ja) 車両運動制御システム
JP4736402B2 (ja) モータ組み込みサスペンション装置およびそれを備えた電動車両
WO2011052078A1 (ja) 車両運動制御システム
JP7342808B2 (ja) 車輪配設モジュール
WO2011052077A1 (ja) 車両運動制御システム
JP2021169248A (ja) 車両用ステアリングシステム
JP2006182050A (ja) 4輪独立駆動車の制駆動力制御装置
JP2011116269A (ja) 車両運動制御システム
JP2011093478A (ja) 車両運動制御システム
JP2013112234A (ja) 車両
JP5617652B2 (ja) 車両

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20120118

TRDD Decision of grant or rejection written
A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20130314

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20130319

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20130401

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20160426

Year of fee payment: 3

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees