JP2011093095A - 溶剤吸収体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】基材上に、シリコーンブランケットの表面に接触して前記シリコーンブランケットに含浸された溶剤を吸収して除去するための吸収層を設けるとともに、前記吸収層を、前記シリコーンブランケットの表面に接触する表面を構成する表層と、前記表層より基材側に配設される、前記表層より前記溶剤の膨潤率の高い層(下層)とを含む2層以上の積層構造とした溶剤吸収体である。
【選択図】なし
Description
例えば電気配線のパターンや蛍光体のパターン、あるいはプラズマディスプレイパネル(PDP)や液晶ディスプレイパネル(LCD)の構成部品等における各種のパターンといった、微細でかつ高精度のパターンの形成が求められる分野において、従来のフォトリソグラフ法によるパターン形成に代えて、前記オフセット印刷方法が普及してきている。
ブランケットとしては、少なくともその表面を、インキに対する離型性に優れたシリコーンゴムまたはシリコーン樹脂によって形成したシリコーンブランケットが広く用いられる。
シリコーンブランケットの表面に、溶剤を吸収する機能を有する溶剤吸収体を接触させて、前記シリコーンブランケット中に含浸された溶剤を溶剤吸収体へ移動させて除去することが提案されている(特許文献1、2等参照)。この方法によればシリコーンブランケットを加熱せずに溶剤を除去できるため、印刷の精度を高いレベルに維持することができる。溶剤吸収体による溶剤の除去は、1回ないし数回の印刷ごとに実施される。
具体的には、例えば溶剤吸収体を長尺のベルト状に形成してロール状に捲回しておき、前記ロールから繰り出した溶剤吸収体の所定長の領域をシリコーンブランケットの表面に接触させて溶剤を吸収させる操作を、同じ領域を用いて1回ないし数回行うとともに、前記所定回の操作を行うごとに、前記ロールから溶剤吸収体の新たな領域を繰り出して、同様に溶剤吸収に使用すること等が検討されている。
しかしいずれの操作を行うにしても、その間は印刷をストップさせなければならないため、これらの操作を頻繁に行うほどオフセット印刷方法のタクトタイム、つまりオフセット印刷機に基板をセットし、先に説明した手順にしたがって前記基板の表面にインキを印刷してパターンを形成したのちオフセット印刷機に新たな基板をセットするまでに要する平均の時間が長くなって、オフセット印刷方法によって製造される製品の生産性が低下するという問題を生じる。
本発明の目的は、従来に比べて交換や溶剤除去の操作を頻繁に行う必要がないため、前記印刷のタクトタイムを短くして製品の生産性を向上できる新規な溶剤吸収体を提供することにある。
本発明はこの現象を利用したものであり、前記のように吸収層を、表層を含む2層以上の積層構造とし、かつ前記表層より基材側(下側)に、前記表層よりも溶剤の膨潤率の高い層を配設しているため、溶剤吸収の工程でシリコーンブランケットから吸収層に移動した溶剤の多くは前記表層に留まることなく、前記膨潤率の相違に基づいて下側の層に移動する。
なお膨潤率を、本発明では室温23±1℃、相対湿度55±1%の環境下、下記の測定をして求めた値でもって表すこととする。
次いで、溶剤中から引き上げた直後のサンプルの質量W2を測定して、式(1):
膨潤率(%)=〔(W2−W1)/W1〕×100 (1)
により、溶剤の膨潤による質量変化率としての膨潤率(%)を求める。
また前記表層は、シリコーンブランケットの表面を形成するのと同種のシリコーンゴムまたはシリコーン樹脂によって形成するのが好ましい。これにより、吸収層の表面のシリコーンブランケットの表面への密着性を高めて、前記シリコーンブランケットに含浸された溶剤をできるだけスムースに、前記吸収層によって吸収して除去することができる。
前記下層は、表層と同種のシリコーンゴム等によって形成するのが好ましい。これにより前記両層間での密着性を高めて、シリコーンブランケットから吸収した溶剤を表層から下層へできるだけスムースに移動させることができる。また、溶剤吸収のために溶剤吸収体をシリコーンブランケットの表面に追従させて湾曲させた際などに両層間での剥離を生じにくくすることもできる。
前記シリコーンゴム等からなる下層における溶剤の膨潤率を表層よりも高くするためには、例えば膨潤に寄与するシリコーンゴム等の架橋度を両層間で違えたり、前記両層を形成するシリコーンゴム等として前記膨潤率の異なるものを選択して組み合わせたりすればよい。
表層の膨潤率が前記範囲未満では、前記表層それ自体における溶剤を吸収する能力が不足して、シリコーンブランケットの表面から、前記溶剤を短時間でスムースに吸収して除去できなくなるおそれがある。そのため溶剤吸収の工程に要する時間が長くなって、印刷のタクトタイムを短くする効果が不十分になるおそれがある。
下層の膨潤率が前記範囲未満では、組み合わせる表層の膨潤率にもよるが前記表層の膨潤率との差が小さくなって、前記膨潤率の差に基づいて表層において含浸した溶剤を下層にスムースに移動できなくなるおそれがある。そのため表層の表面を、溶剤の含浸量が少なく溶剤を吸収しやすい状態に比較的長く維持し続けることで交換や溶剤除去の操作を行う頻度を少なくして印刷のタクトタイムを短くする効果が不十分になるおそれがある。
また表層と下層との膨潤率の差は3ポイント以上、特に5ポイント以上であるのが好ましく、11ポイント以下、特に9ポイント以下であるのが好ましい。
膨潤率の差が前記範囲未満では、両層間の膨潤率の差が小さくなって、前記膨潤率の差に基づいて表層において含浸した溶剤を下層にスムースに移動できなくなるおそれがある。そのため表層の表面を、溶剤の含浸量が少なく溶剤を吸収しやすい状態に比較的長く維持し続けることで交換や溶剤除去の操作を行う頻度を少なくして印刷のタクトタイムを短くする効果が不十分になるおそれがある。
前記表層および下層を構成するシリコーンゴム等としては、先に説明したように未硬化時に液状ないしペースト状を呈するものが好ましい。
また下層は、前記液状ないしペースト状を呈するシリコーンゴム等を、その表面形状に対応する賦形面を有し、基材をセットした金型内に注入して硬化させることで形成してもよい。同様に表層は、前記液状ないしペースト状を呈するシリコーンゴム等を、その表面形状に対応する賦形面を有し、下層を形成した基材をセットした金型内に注入して硬化させることで形成してもよい。
前記二液付加反応型のシリコーンゴム等は、硬化反応に際して副生成物(脱水縮合反応による水等)を生じないため下層や表層の寸法精度を向上し、かつ前記副生成物に基づく気泡等を含まない均一な下層や表層を形成できる。
厚みが前記範囲未満の薄い吸収層には十分な量の溶剤を吸収させることができないため、溶剤吸収体を交換したり、加熱等によって溶剤を除去したりする操作をする頻度を少なくして印刷のタクトタイムを短くする効果が不十分になるおそれがある。
また吸収層の重量が増加して、前記のようにシリコーンブランケットの表面に接触させる際の取扱性が低下したり、前記取り扱い時に基材が折れたりシワになったりしやすくなるおそれもある。
吸収層の全体の硬さを、シリコーンブランケットの表面の硬さ以下にするためには、例えば吸収層を構成する各層のもとになるシリコーンゴム等として、いずれも硬化後の硬さがシリコーンブランケットの表面の硬さと同等またはそれ以下であるものを選択して用いればよい。これにより吸収層の全体の硬さを、シリコーンブランケットの表面よりも柔らかくすることができる。
前記表面の表面粗さの具体的な範囲は、特に限定されないが、日本工業規格JIS B0601:2001「製品の幾何特性仕様(GPS)−表面性状:輪郭曲線方式−用語,定義及び表面性状パラメータ」の付属書1で規定された十点平均粗さRzJIS94で表して0.01μm以上、5μm以下、特に0.05μm以上、1μm以下程度であるのが好ましい。
基材としては、種々の樹脂のフィルムまたはシートや、金属の薄板等が挙げられる。このうち樹脂のフィルムまたはシートとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンおよびその共重合物、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、フッ素樹脂、ポリカーボネート、セルロースアセテート、ポリアミド、ポリイミド、変性ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリアリレート、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンサルファイド、TPXポリマ、およびポリパラキシレン等の樹脂からなるフィルムまたはシートが挙げられる。
特に任意の厚み、および表面粗さを有するフィルム状またはシート状に加工しやすい上、寸法安定性に優れたPETのフィルムまたはシートを基材として用いるのが好ましい。
基材の厚みは0.05mm以上、特に0.1mm以上であるのが好ましく、0.35mm以下、特に0.25mm以下であるのが好ましい。
また厚みが前記範囲を超える場合には、溶剤吸収体全体としての柔軟性と、それに伴うシリコーンブランケットの表面への追従性が低下して、例えばブランケット胴の外周に捲回される等した状態で使用されるシリコーンブランケットの表面に、前記吸収層をできるだけ隙間なく接触させた状態で溶剤を吸収させることができないおそれがある。
吸収層は、基材の片面に形成してもよいし、両面に形成してもよい。両面に吸収層を形成した溶剤吸収体は、片面の吸収層を溶剤の吸収に使用した後、裏返して反対面の吸収層を溶剤の吸収に使用できる。
例えば溶剤吸収体を長尺のベルト状に形成してロール状に捲回しておき、前記ロールから繰り出した溶剤吸収体の所定長の領域をシリコーンブランケットの表面に接触させて溶剤を吸収させる操作を、同じ領域を用いて1回ないし数回行うとともに、前記所定回の操作を行うごとに、前記ロールから溶剤吸収体の新たな領域を繰り出して、同様に溶剤吸収に使用することができる。
しかもこのいずれの場合においても、溶剤吸収体の吸収層が、前記のように表層と、前記表層よりも溶剤の膨潤率の高い層との積層構造を有しているため、吸収層の表面である表層の表面を、溶剤の含浸量が少なく溶剤を吸収しやすい状態に比較的長く維持し続けることができ、従来に比べて交換や溶剤除去の操作を行う頻度を少なくし、印刷のタクトタイムを短くして製品の生産性を向上することが可能となる。
(1) 凹版、平版等の版の表面にパターン形成したインキをシリコーンブランケットの表
面に転写したのち、被印刷体としての基板の表面に再転写させるオフセット印刷方法、
(2) シリコーンブランケットの表面の全面にインキを塗布したのち凹版と接触させるこ
とで、前記凹版の凹部以外の領域と接触したインキを選択的にシリコーンブランケットの表面から除去して前記表面のインキ層をパターン形成したのち、前記基板の表面に転写する反転印刷方法、
(3) シリコーンブランケットの表面に直接にインキパターンを描画したのち、前記基板
の表面に転写する印刷方法、
等の、シリコーンブランケットを用いる種々の印刷方法に使用できる。
シリコーンブランケットとしては、少なくともその表面がシリコーンゴム等によって形成された種々のシリコーンブランケットが使用可能である。具体的には、例えばフィルム状またはシート状の基材と、前記基材の片面に形成した、少なくともシリコーンゴム等を含む組成物からなる表面ゴム層とを備えたシリコーンブランケットが好ましい。
前記シリコーンゴム等としては、やはり室温硬化型(RTV)であるものが好ましい。前記室温硬化型のシリコーンゴム等は加熱しなくても室温で硬化させることが可能であるため、シリコーンブランケットの製造工程および製造のための設備を簡略化できる上、加熱による膨張と冷却時の収縮を経ないため、表面ゴム層の厚みの精度を向上できる。
前記二液付加反応型のシリコーンゴム等は、硬化反応に際して副生成物(脱水縮合反応による水等)を生じないため、表面ゴム層の寸法精度を向上し、かつ前記副生成物に基づく気泡等を含まない均一な表面ゴム層を形成できる。
基材としては、先に説明した溶剤吸収体において使用したのと同様の種々の樹脂のフィルムまたはシートまた、金属の薄板等が挙げられ、特に任意の厚み、および表面粗さを有するフィルム状またはシート状に加工しやすい上、寸法安定性に優れたPETのフィルムまたはシートが好ましい。
表面ゴム層を形成する前の基材の表面には、前記表面ゴム層の密着性を高めるために、例えばプラズマ処理、フレーム処理等の前処理を施したり、任意の下地層を形成したりしてもよい。
またシリコーンブランケットの表面状態は、インキパターンが微細になるほどその精度に影響を及ぼすため、できるだけ平坦であることが好ましい。例えば前記精密印刷用のシリコーンブランケットの表面粗さは、前記JIS B0601:2001「製品の幾何特性仕様(GPS)−表面性状:輪郭曲線方式−用語,定義及び表面性状パラメータ」の付属書1で規定された十点平均粗さRzJIS94で表して0.01μm以上、1μm以下程度であるのが好ましい。
〈実施例1〉
室温硬化型で、かつ二液付加反応型の液状ジメチルシリコーンゴム〔越化学工業(株)製のKE1241〕の主剤100質量部、および硬化剤10質量部を混合したのち脱泡して下層用の塗布液を調製し、前記塗布液を、基材としての厚み0.25mmのPETフィルムの片面にバーコータを用いて塗布したのち室温で24時間静置して硬化させて、厚み0.4mm、PETフィルムの面方向の寸法が縦60cm×横50cmである下層を形成した。
〈実施例2〉
下層の厚みを0.25mm、表層の厚みを0.25mmとしたこと以外は実施例1と同様にして、前記下層と表層の2層構造を有する溶剤吸収体を製造した。
下層の厚みを0.1mm、表層の厚みを0.4mmとしたこと以外は実施例1と同様にして、前記下層と表層の2層構造を有する溶剤吸収体を製造した。
〈比較例1〉
実施例1で調整したのと同じ表層用の塗布液を、基材としての厚み0.25mmのPETフィルムの片面にバーコータを用いて塗布したのち室温で24時間静置して硬化させて、厚み0.5mm、PETフィルムの面方向の寸法が縦60cm×横50cmである単層構造の吸収層を備えた溶剤吸収体を製造した。
実施例1で調製したのと同じ表層用の塗布液を、基材としての厚み0.25mmのPETフィルムの片面にバーコータを用いて塗布したのち室温で24時間静置して硬化させて、厚み0.25mm、PETフィルムの面方向の寸法が縦60cm×横50cmである下層を形成した。
〈印刷特性試験〉
(シリコーンブラケットの作製)
室温硬化型で、かつ二液付加反応型の液状シリコーンゴム〔硬化後のタイプAデュロメータ硬さ(JIS K6253:2006準拠)がA30/Sであるもの〕の主剤91質量部と硬化剤9質量部とを混合したのち脱泡して表面ゴム層用の塗布液を調製し、前記塗布液を、基材としての厚み0.25mmのPETフィルムの片面にバーコータを用いて塗布したのち室温で24時間静置して硬化させて、厚み0.70mm、PETフィルムの面方向の寸法が縦60cm×横50cmである表面ゴム層を形成してシリコーンブランケットを作製した。
前記シリコーンブランケットを、凹版オフセット印刷機〔ナカン(株)製、360mm×460mm対応の平板型精密印刷機〕のブランケット胴の外周に捲回して固定した。また凹版としては、ガラス板の表面に線幅20μm、ピッチ300μm、深さ8μmの凹部を格子状にパターン形成したものを用いた。
また前記各実施例、比較例で製造したいずれかの溶剤吸収体を、両端をつなぎ合わせて無端ベルト状として、前記ブランケット胴の外周に巻きつけたシリコーンブランケットと同期回転させながら互いに接触させて溶剤吸収の工程を実施できるようにセットした。同期回転時の無端ベルトの送り速度は40mm/sに設定した。溶剤吸収の工程は、印刷を1回行うごとに実施した。
そしてガラス基板の表面に印刷されたパターンを観察して、前記パターンの線幅が徐々に広くなって25μmを超えるか、逆に徐々に狭くなって15μmを下回るか、あるいは断線が生じるまでに印刷できた印刷枚数を計数した。
Claims (3)
- フィルム状またはシート状の基材と、前記基材の少なくとも片面に形成した吸収層とを備え、シリコーンブランケットを用いた印刷方法に用いるインキ中に含まれ前記シリコーンブランケットに含浸される溶剤を、前記吸収層の表面を前記シリコーンブランケットの表面に接触させることで、前記吸収層によって吸収して除去するための溶剤吸収体であって、前記吸収層を、前記表面を構成する表層を含む2層以上の積層構造とし、かつ前記表層より基材側に、前記表層よりも前記溶剤の膨潤率の高い層を配設したことを特徴とする溶剤吸収体。
- 前記吸収層を、前記表層と、前記表層よりも溶剤の膨潤率の高い下層の2層構造とした請求項1に記載の溶剤吸収体。
- 前記表層を、シリコーンゴムまたはシリコーン樹脂によって形成した請求項1または2に記載の溶剤吸収体。
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