JP5542018B2 - シリコーンブランケット - Google Patents
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例えば電気配線のパターンや蛍光体のパターン、あるいはプラズマディスプレイパネル(PDP)や液晶ディスプレイパネル(LCD)の構成部品等における各種のパターンといった、微細でかつ高精度のパターンの形成が求められる分野において、従来のフォトリソグラフ法によるパターン形成に代えてオフセット印刷方法が普及してきている。
ブランケットとしては、少なくとも前記表面を構成する表面層を備え、前記表面層を、インキに対する離型性に優れたシリコーンゴムによって形成したシリコーンブランケットが広く用いられる。
シリコーンゴムを殆ど膨潤しない濡れ性の低い溶剤を含むインキを使用すれば、印刷を繰り返しても前記濡れ性は殆ど変化しないため、安定した印刷を行うことができるように思われる。しかし、濡れ性の低い溶剤を含むインキは版の表面から表面層の表面への転写性が低いことから、特に細線のパターンにおいて断線を生じやすい。
溶剤を吸収する機能を有する溶剤吸収体を表面層の表面に接触させて溶剤を除去することが提案されている(特許文献1等参照)。前記溶剤吸収体を使用すれば、シリコーンブランケットを加熱せずに溶剤を除去できるため、印刷の精度を高いレベルに維持できる。
しかし、その場合には表面層が軟らかくなりすぎて強度が低下したり、あるいは前記表面層が面方向に変形しやすくなるため用途によっては印刷の初期の精度が不足して使用できなくなったりする場合がある。
したがって、ジメチルシリコーンゴムとしては適度な架橋度を有するものを用いて表面層に適度な硬さを付与して強度の低下や印刷の初期の精度の低下等を防止しながら、前記表面層の表面の溶剤濃度の上昇、およびそれに伴う濡れ性の上昇を抑制して、比較的長期間に亘って印刷の精度を高いレベルに維持し続けることができるため、印刷途中の溶剤除去の工程を省略したり実施回数を減らしたりして印刷のタクトタイムを短くして製品の生産性を向上することが可能となる。
そのため、前記ジメチルシリコーンゴム中にポリエーテル変性シリコーンオイルをより一層均一に分散できるため、固さや強度ができるだけ均一で、しかもより一層溶剤の吸収能力にも優れた表面層を形成できる。
なおポリエーテル変性シリコーンオイルのHLB値を、本発明では、前記ポリエーテル変性シリコーンオイル中に含まれるオキシアルキレン基の含有割合(質量%)を5で除算した値でもって表すこととする。
前記ジメチルシリコーンゴムとしては種々のジメチルシリコーンゴムが挙げられるが、特に未硬化時に液状ないしペースト状を呈する液状のジメチルシリコーンゴムが好ましい。
またシリコーンブランケットは、前記液状ないしはペースト状を呈するジメチルシリコーンゴムを、表面層の表面形状に対応する賦形面を有し、基材をセットした金型内に注入して硬化させることによって製造してもよい。
前記二液付加反応型のジメチルシリコーンゴムは、硬化反応に際して副生成物を生じないため表面層の厚み等の寸法精度を向上し、かつ前記副生成物に基づく気泡等を含まない均一な表面層を形成できる。
これにより、表面層が軟らかくなりすぎて強度が低下したり、印刷時に版や基板に接触させる際の印圧やニップ幅等が大きく変化して印刷性に問題を生じたり、あるいは印刷の初期の精度が低下したりするのを抑制できる。
表面層に含有させるポリエーテル変性シリコーンオイルとしては、シリコーンオイルの
(a) 側鎖の少なくとも一部、
(b) 両末端、
(c) 片末端、または
(d) 側鎖の少なくとも一部と両末端もしくは片末端
のいずれかにポリエーテル基を導入してなり、ジメチルシリコーンオイルに対して反応性を有しない非反応性の種々のポリエーテル変性シリコーンオイルが挙げられる。
ポリエーテル変性シリコーンオイルのHLB値が2以上、10以下に限定されるのは、下記の理由による。
すなわちHLB値が2未満であるポリエーテル変性シリコーンオイルは親水性と親油性のうち親油性が強いため、基板上に印刷したパターンの平面形状に乱れ、例えば波打ちやがたつき等生じやすいという問題がある。
また前記ポリエーテル変性シリコーンオイルは、架橋前のジメチルシリコーンゴムとの相溶性も低く、前記ジメチルシリコーンゴム中に均一に分散させるのが容易でない。
また、前記のようにHLB値が10を超えるポリエーテル変性シリコーンオイルは架橋前のジメチルシリコーンゴム中に均一に分散させるのが容易でないことから、表面層の固さや強度が不均一になるおそれもある。
またポリエーテル変性シリコーンオイルは、25℃での動粘度が1000mm2/s以下であるのが好ましい。
動粘度が前記範囲を超えるポリエーテル変性シリコーンオイルはジメチルシリコーンゴムとの相溶性が低いため、前記ジメチルシリコーンゴム中に均一に分散させるのが容易でない。したがって、溶剤を前記表面層の内部に吸収しやすくして、前記表面層の表面の溶剤濃度の上昇、およびそれに伴う濡れ性の上昇を抑制する効果が十分に得られないおそれがある。また、表面層の固さや強度が不均一になるおそれもある。
なおポリエーテル変性シリコーンオイルの25℃での動粘度は、前記範囲内でも100mm2/s以上であるのが好ましい。
すなわち、ポリエーテル変性シリコーンオイルの量が前記範囲未満では、前記ポリエーテル変性シリコーンオイルを含有させることによる、先に説明した、溶剤を前記表面層の内部に吸収しやすくして、前記表面層の表面の溶剤濃度の上昇、およびそれに伴う濡れ性の上昇を抑制する効果が得られない。
なお、これらの効果をより一層向上することを考慮すると、ポリエーテル変性シリコーンオイルの量は、ジメチルシリコーンゴム100質量部あたり3質量部以上であるのが好ましく、20質量部以下であるのが好ましい。
表面層の硬さは、前出の温度23±3℃、相対湿度55±5%の環境下で測定されるJIS A硬さで表して20以上、特に25以上であるのが好ましく、60以下、特に50以下であるのが好ましい。
基材としては、種々の樹脂のフィルムまたはシートや、金属の薄板等が挙げられる。このうち樹脂のフィルムまたはシートとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンおよびその共重合物、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、フッ素樹脂、ポリカーボネート、セルロースアセテート、ポリアミド、ポリイミド、変性ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリアリレート、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンサルファイド、TPXポリマ、およびポリパラキシレン等の樹脂からなるフィルムまたはシートが挙げられる。
特に任意の厚み、および表面粗さを有するフィルム状またはシート状に加工しやすい上、寸法安定性に優れたPETのフィルムまたはシートを基材として用いるのが好ましい。
基材の厚みは、前記精密印刷用のシリコーンブランケットの場合は0.05mm以上、0.5mm以下であるのが好ましい。
本発明のシリコーンブランケットは、例えば
(1) 凹版、平版等の版の表面にパターン形成したインキをシリコーンブランケットの表面に転写したのち、被印刷体としての基板の表面に再転写させるオフセット印刷方法、
(2) シリコーンブランケットの表面の全面にインキを塗布したのち凹版と接触させることで、前記凹版の凹部以外の領域と接触したインキを選択的にシリコーンブランケットの表面から除去して前記表面のインキ層をパターン形成したのち、前記基板の表面に転写する反転印刷方法、
(3) シリコーンブランケットの表面に直接にインキパターンを描画したのち、前記基板の表面に転写する印刷方法、
等の種々の印刷方法に用いることができる。
すなわち表面層が軟らかくなり過ぎて強度が低下したり、印刷時に版や基板に接触させる際の印圧やニップ幅等が大きく変化して印刷性が低下したり、その結果として印刷の初期の精度が低下したりするのを防止できる。
〈実施例1〉
室温硬化型で、かつ二液付加反応型の液状ジメチルシリコーンオイル〔信越化学工業(株)製のKE−1606〕の主剤91質量部、および硬化剤9質量部に、さらにHLB値が4であるポリエーテル変性シリコーンオイル〔信越化学工業(株)製のKF−945、動粘度:130mm2/s(25℃)〕15質量部を加え、混合したのち脱泡して表面層用の塗布液を調製した。
前記シリコーンブランケットの表面層における、ジメチルシリコーンゴムの主剤と硬化剤計100質量部あたりのポリエーテル変性シリコーンオイルの量は15質量部であった。
HLB値が10であるポリエーテル変性シリコーンオイル〔信越化学工業(株)製のKF−353、動粘度:430mm2/s(25℃)〕を同量用いたこと以外は実施例1と同様にしてシリコーンブランケットを製造した。前記シリコーンブランケットの表面層における、ジメチルシリコーンゴムの主剤と硬化剤計100質量部あたりのポリエーテル変性シリコーンオイルの量は15質量部であった。
HLB値が2未満の1であるポリエーテル変性シリコーンオイル〔信越化学工業(株)製のX−22−2516、動粘度:70mm2/s(25℃)〕を同量用いたこと以外は実施例1と同様にしてシリコーンブランケットを製造した。前記シリコーンブランケットの表面層における、ジメチルシリコーンゴムの主剤と硬化剤計100質量部あたりのポリエーテル変性シリコーンオイルの量は15質量部であった。
HLB値が12であるポリエーテル変性シリコーンオイル〔信越化学工業(株)製のKF−6011、動粘度:130mm2/s(25℃)〕を同量用いたこと以外は実施例1と同様にしてシリコーンブランケットを製造した。前記シリコーンブランケットの表面層における、ジメチルシリコーンゴムの主剤と硬化剤計100質量部あたりのポリエーテル変性シリコーンオイルの量は15質量部であった。
ポリエーテル変性シリコーンオイルに代えて、ジメチルシリコーンオイル〔信越化学工業(株)製のKF96−100cs、動粘度:100mm2/s(25℃〕を同量用いたこと以外は実施例1と同様にしてシリコーンブランケットを製造した。前記シリコーンブランケットの表面層における、ジメチルシリコーンゴムの主剤と硬化剤計100質量部あたりのジメチルシリコーンオイルの量は15質量部であった。
実施例、比較例で製造したシリコーンブランケットを所定のサイズにカットしたのち、凹版オフセット印刷機〔ナカン(株)製、300mm×400mm対応の平板型精密印刷機〕のブランケット胴の外周に、表面層を外側にして捲回して固定した。また凹版としては、ガラス板の表面に線幅100μm、ピッチ200μm、深さ40μmの凹部を格子状にパターン形成したものを用いた。
印刷の条件は、凹版の凹部からシリコーンブランケットの表面層の表面へのインキの転写速度を100mm/s、前記表面層の表面から、被印刷体としてのガラス基板の表面へのインキの転写速度を100mm/sに設定して、前記ガラス基板を交換しながら連続印刷をした。
前記連続印刷可能枚数が多いほど、そのシリコーンブランケットは、長期間に亘って表面層の表面の濡れ性が大きく上昇するのを抑制して印刷の精度を高いレベルに維持し続けることができるものと評価することができる。本発明では20枚以上を良好、20枚未満を不良として評価した。
(印刷の初期の精度)
○:ガラス基板の表面に印刷されたパターンには線幅の増加は殆ど見られなかった。
△:パターンの線幅の増加が僅かに観察された。
(形状の乱れ)
○:ガラス基板の表面に印刷されたパターンには形状の乱れは殆ど見られなかった。
△:形状の乱れが僅かに観察された。
×:形状の乱れが大きかった。
〈実施例3〉
ポリエーテル変性シリコーンオイルの量を5質量部としたこと以外は実施例1と同様にしてシリコーンブランケットを製造した。前記シリコーンブランケットの表面層における、ジメチルシリコーンゴムの主剤と硬化剤計100質量部あたりのポリエーテル変性シリコーンオイルの量は5質量部であった。
ポリエーテル変性シリコーンオイルを配合しなかったこと以外は実施例1と同様にしてシリコーンブランケットを製造した。前記シリコーンブランケットの表面層における、ジメチルシリコーンゴムの主剤と硬化剤計100質量部あたりのポリエーテル変性シリコーンオイルの量は0質量部であった。
ポリエーテル変性シリコーンオイルの量を0.5質量部としたこと以外は実施例1と同様にしてシリコーンブランケットを製造した。前記シリコーンブランケットの表面層における、ジメチルシリコーンゴムの主剤と硬化剤計100質量部あたりのポリエーテル変性シリコーンオイルの量は0.5質量部であった。
ポリエーテル変性シリコーンオイルの量を40質量部としたこと以外は実施例1と同様にしてシリコーンブランケットを製造した。前記シリコーンブランケットの表面層における、ジメチルシリコーンゴムの主剤と硬化剤計100質量部あたりのポリエーテル変性シリコーンオイルの量は40質量部であった。
Claims (3)
- 印刷用のシリコーンブランケットであって、前記印刷用のインキを担持させる表面を構成する、ジメチルシリコーンゴムからなる表面層を少なくとも備え、前記表面層は、前記ジメチルシリコーンゴム100質量部あたり1質量部以上、30質量部以下の、HLB値が2以上、10以下であるポリエーテル変性シリコーンオイルを含むことを特徴とするシリコーンブランケット。
- 前記ポリエーテル変性シリコーンオイルは、25℃での動粘度が1000mm2/s以下のポリエーテル変性シリコーンオイルである請求項1に記載のシリコーンブランケット。
- フィルム状またはシート状の基材と、前記基材の片面に形成した前記表面層とを備えている請求項1に記載のシリコーンブランケット。
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