以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
(第1の実施の形態)
本表面処理方法を実施するために最良の表面処理装置は、図1〜図7に示す如く、処理槽(例えば、10N)の前方側(図1で左側)に前置干満槽10NFを配設するとともに図2,図3の導入側ゲート開閉手段20NFと前置側液供給手段31NFと前置側液排出手段41NFとを設け、処理槽10Nの後方側(図1で右側)に後置干満槽10NBを配設するとともに図2,図3の後置側液供給手段31NBと後置側液排出手段41NBと導出側ゲート開閉手段20NBとを設け、処理槽10Nに関する搬入側ゲート開閉手段20NIと搬出側ゲート開閉手段20NOとを設け、これら各手段を所定の手順に従って駆動制御する図5の駆動制御手段(100)を設け、平板形状物(ワーク200)を開放状態の図2に示す導入通路部11NFを通して干液状態の前置干満槽10NFに導入し、その後に満液状態とされた前置干満槽10NFから開放状態の搬入通路部11NIを通して処理槽10Nに搬入し、次いで表面処理後の平板形状物を開放状態の搬出通路部11NOを通して処理槽10Nから満液状態の後置干満槽10NBに搬出し、しかる後に干液状態とされた後置干満槽10NBから開放状態の後置側導出通路部11NBを通して導出しつつ平板形状物を後方側(図1で右側)に排搬送可能に形成されている。
すなわち、表面処理装置は、図1,図2に示す如く、導入側ゲート12NFで開閉可能な導入通路部11NFを有する前置干満槽10NFを処理槽10Nの前方側に配設しかつ導出側ゲート12NBで開閉可能な導出通路部11NBを有する後置干満槽10NBをその後方側に配設したことを特徴とする。
また、前置干満槽10NFと処理槽10Nとの間に搬入側ゲート12NIで開閉可能な搬入通路部11NIが設けられ、処理槽10Nと後置干満槽10NBとの間には搬出側ゲート12NOで開閉可能な搬出通路部11NOが設けられている。さらに、前置干満槽10NFおよび後置干満槽10NBのそれぞれを干液状態および満液状態のいずれかに選択的に切換え可能でかつ前置干満槽10NFと処理槽10Nとの間および処理槽10Nと後置干満槽10NBとの間のそれぞれを連通状態および隔離状態のいずれかに選択的に切換可能に形成されている。
そして、前方側から給搬送されて来た平板形状物(200)を干液状態の前置干満槽10NFに導入可能でかつ導入後に処理液を供給して前置干満槽を満液状態に切換え可能である。つまり、各平板形状物に第1工程を実施することができる。また、満液状態の前置干満槽10NFと処理槽10Nとの間を連通状態に切換え可能でかつ切換え後に平板形状物(200)を前置干満槽から処理槽に液中搬入可能に形成され、第2工程を実施可能に形成されている。
また、先の平板形状物の処理槽10Nへの搬入後に処理槽と前置干満槽との間を隔離状態に切換え可能でかつ切換え後に搬入された平板形状物に表面処理を実行可能に形成されている。したがって、第3工程の一部を実施することができる。処理槽との隔離状態への切換後で次の平板形状物が前方側から前置干満槽10NF内に導入される以前に、当該前置干満槽の処理液を外部(17NF)に排出させて前置干満槽を干液状態に切換え可能に形成されている。第3工程の残り部分を実施することができる。
ここで、処理槽10Nに搬入されたワーク200に表面処理(化成処理)を施す。この表面処理の終了後に、処理槽10Nと満液状態の後置干満槽10NBとの間を連通状態に切換え可能かつ切換え後に平板形状物(200)を処理槽から後置干満槽に搬出可能に形成され、第4工程を実施することができる。
さらに、平板形状物の後置干満槽10NBへの搬出後に処理槽10Nと後置干満槽10NBとの間を隔離状態に切換え可能でかつ切換え後に後置干満槽10NB内の処理液を外部(17NB)に排出させて後置干満槽を干液状態に切換え可能として第5工程を実施可能に形成するとともに、先の平板形状物の後方側への導出後でかつ処理槽10Nから後置干満槽10NB内に次の平板形状物が搬出されてくる以前に処理液を供給して後置干満槽を満液状態に切換える第6工程を実施可能に形成されている。
かくして、前方側から所定高さの水平状態でかつ縦吊状態で給搬送されて来た平板形状物(200)を前置干満槽10NFおよび後置干満槽10NBを介することで処理槽10N内を所定高さの水平状態のまま通過させて後方側に排搬送可能である。
確認的に、本表面処理装置(方法)の基本的構成・機能は、従来例(図10、図11)の場合と同様に、ワーク搬送手段(70N等)を用いて前方側から縦吊状態で給搬送されて来た平板形状物(200)を処理液が満たされた処理槽10Nに搬入し、搬入された平板形状物に処理液中で表面処理可能かつ表面処理後の平板形状物を処理槽から搬出して後方側に排搬送し、複数枚の平板形状物を連続的に表面処理するものである。
これを前提としつつ、本表面処理装置を構築する際の基本的技術事項を説明する。表面処理対象であるワーク200は、平板形状物である。この平板形状物は、従来各方式(装置)の場合のように処理液中に直接搬入(投入)すると、その先端に変形や折れ曲りが生じる虞があるプリント回路基板として、以下を説明する。搬送に関しては、薄くかつ可撓性に富んだプリント回路基板(ワーク200)の上端部を、図3に示す複数の冶具98を用いて挟持した縦吊状態(姿態)として、全処理槽10に搬入・搬出する。
さて搬送(X)方向で処理槽(例えば、10N)の前後に、新規で革新的な図1に示す前置干満槽10NFおよび後置干満槽10NBを採用する際に考慮される搬送時間については、次のように了解される。
従来(バッチ処理方式)の装置では、図10に示す如く、先の処理槽10PMから次の処理槽10PNに搬送する場合、ワーク200をワーク高さ寸法以上の寸法だけ槽上に引上げる上昇(V1)と、上昇後の水平移動(H1)と、処理液に浸漬させるまでの下降(V2)とが必要である。上昇(V1)はワーク200の揺れや振動が発生しないように制御するので水平搬送(H1)の場合よりも低速となる。さらに、下降(V2)はワーク200を自由端(先端…下端)から処理液中に投入しなければならないので、ワークの変形や湾曲を防止するためには上昇(V1)の場合よりも一段と低速化せざるを得ない。
ここで、大気中での水平搬送(H1)速度と前置干満槽10NFへの導入用水平搬送速度とが同一速度でかつ前置干満槽10NFから処理槽10Nへの液中での搬入用水平搬送速度が該導入用水平搬送速度とほぼ同じであるとともに送りピッチ(P)が同一であると仮定すれば、水平搬送(H1)時間と導入用水平搬送時間とは同じであり、搬入用水平搬送時間は上昇(V1)時間と下降(V2)時間との和より大幅に短い。例えば、1/2以下である。すなわち、各処理槽の前後に当該各前後干満槽を設けても、全体的搬送時間は短縮することができるから、従来のバッチ処理方式(装置)の場合に比較して生産性を大幅に向上できる。また、無用な反応や酸化進行も防止できる。
次に、本表面処理装置においても大気中での水平搬送(導入用搬送および導出用搬送)が残るが、これら搬送はいわば空の槽(10NFおよび10NB)内で行われる。したがって、槽上の大気中搬送[上昇(V1),水平(H1),下降(V2)]の場合に比較すれば、ワーク200に付着する塵埃やミストの付着量は非常に少ない。したがって、この点からも、一段の品質向上を担保できる。
さらに、干液状態の前・後置干満槽(10NFおよび10NB)で行われることに着目すれば、図3に示すカバー85L,85Rで槽の上部開放部分を閉鎖可能に形成することができるから、ワーク200への付着量を極減できる。つまり、塵埃等の付着による品質低下問題を、ほぼ完全に払拭することができる。
左右のカバー85L,85Rは、観音開き構造とし、槽中心(搬送経路)に対応する位置には保持部材95のX方向の通過スペースを確保し、また図3で右側のカバー85Rには各上下リンクバー(23,48等)との干渉を回避可能に図3で左右方向に延びるスリットを設けておくのが好ましい。
なお,詳細後記の搬送構造体が、ワーク搬送経路(槽中心)とレール90とを図3で左右方向に位置ずれさせた位置関係を保持可能に形成されているので、槽外側に位置する摺動部(レール90,キャリア93等々)から発生する微細粒子が、処理槽10Nに混入する虞がない。したがって、カバー設置と相俟って飛躍的な品質向上を期待できる。
さて、この実施の形態では、一番目の処理槽(10A…図示省略)から最終番目の処理槽(10X…図示省略)までの多数の処理槽10を図2の搬送(X)方向の前方側から後方側に一直線上に列配設した構造であるが、説明便宜と図示簡略の観点から、図2および図7ではN番目の処理槽(化成処理槽)10NおよびO(=N+1)番目の処理槽(水洗処理槽)10Oに関する部分を表示し、他の処理槽に関する部分ついては図示省略した。また、図1ではN番目の処理槽(化成処理槽)10Nに関する部分のみ表示した。
なお、図3は、図1において前置干満槽10NF内の右側(後方側)から左側(前方側)を見た状態を図示してある。また、図3の前置干満槽10NFに付記された符号(11NF,12NF,20NF,31NF,41NF等)を後置干満槽10NBに対応する符号(11NB,12NB,20NB,31NB,41NB等・・・図3中にカッコ書きした。)に読み替えてみれば、前置干満槽10NFと同一構造である後置干満槽10NBを理解することができる。
また、図3に示す前置側液排出手段41NFおよび排出口14NFHを除けば、処理槽10Nが前置干満槽10NFの場合と同様な構造であることがわかる。但し、図2に示すようにX方向の槽長は相異する。したがって、後置干満槽10NBおよび処理槽10Nに関する構造部分については、図3に対応する詳細図は記載省略する。
そこで、はじめに、前置干満槽10NFおよびこれに関する各手段(11NF,12NF,20NF,31NF,41NF等)について説明する。
図3において、前置干満槽10NFは、有底かつ上部開放の角筒型タンク構造でかつ耐薬品性材料から形成され、全体的には架台構造1に支持されている。この前置干満槽10NFと処理槽10Nと後置干満槽10NBとは、図2に示すように一体的に形成されている。つまり、体積が非常に小さいワーク200の特殊性に着目し、これを収容するための干満槽10NF,10NBの容積を非常に小さきくすることで、処理液の供給による満液状態と排出による干液状態への切換えという新規技術の導入を可能としたわけである。
なお、図2に示した後方側の前置干満槽10OF,処理槽10Oおよび後置干満槽10OBの場合も、同様に一体的に形成されている。
前置干満槽10NFの両側には、オーバーフロー槽15NFが形成されている。このオーバーフロー槽15NFは、処理液を供給して前置干満槽10NFの処理液面Lhを一定(処理槽の処理液面と同じ。)に保った満液状態を確立する際に、槽璧上部から溢出する余剰処理液Qoを回収する役目を持つ。オーバーフロー槽15NFとこれと同様に支持された下方の液貯槽17NFとは、貫通口15NFHを介して連通されている。貫通口15NFHを通して液貯槽17NFに戻る液量をQdで表わす。
なお、処理層10Nおよび後置干満槽10NBの両側にも同様なオーバーフロー槽15N,15NBが設けられ、これら(前置側15NFおよび後置側15NB)は図2,図3に示すようにオーバーフロー槽15Nと一体的に形成されている。同様に、液貯槽(前置側17NFおよび後置側17NB)も液貯槽17Nと一体的に形成されている。したがって、構造が簡素化されるので、装置コストを低減できるとともに、処理液の組成管理が容易で、取扱いも簡単である。
前置干満槽10NFの前方側壁面10NFFには、図3に点線で示すスリット形状の前置側導入通路部11NFが設けられ、この前置側導入通路部11NFは槽内側に装着された図1の導入側ゲート12NFによって開閉することができる。したがって、前置側導入通路部11NFの幅(寸法)を、通過するワーク200と接触しない程度でかつ適宜で比較的に大きな値に選択することができる。
少なくとも、従来連続処理方式の装置(図11)の場合(隙間S1,S2)に比較して遥かに大きくすることができる。この意味で、処理槽10Nへの搬入時における構造物(10NFF等)との衝突を回避することができるので、ワーク200に傷を付ける心配がなくなる。こらは、処理品質の向上に直結する。
導入側ゲート12NFは、図1に示すように、前置干満槽10NFの内側に設けられかつ図3の槽内壁面10NFFに沿ってスライド(往復摺動)可能に形成されている。導入側ゲート12NFと導入通路部11NFとの間に、例えば高性能で高級のシール構造を付設する等の手立てを講ずれば、閉鎖状態において導入側ゲート12NFと導入通路部11NFとの隙間から槽外に漏れだす液量Qrを極少または絶無化すことも可能である。しかし、大掛りなシール構造の採用(付設)は、槽内の構造簡素化およびメンテナンスフリー化に逆行しかねずかつ大幅な装置コスト高を招くので、現実的でない。但し、この発明を実施するに際して、これを否定するものではない。
この実施の形態では、満液状態における液差圧(ゲート内外の液圧と大気圧との圧力差)の有効利用を期するために、上記のように導入側ゲート12NFを槽(10NF)内に設けているわけである。すなわち、導入側ゲート12NFを槽内壁面10NFFに液差圧で押付けることにより、シール性を高める構造としている。構造簡単で、低コストで具現化できる。しかし、完全シール構造でないから、槽壁面10NFFと導入側ゲート12NFとの隙間から少量の処理液Qrが外部に漏れ出す。そこで、漏れ出した処理液Qrは、図1に示す漏れ回収部16NFに回収しかつ連通口16NFHを通して液貯槽17NF(17N)に戻し、再循環利用するものとされている。
この導入側ゲート12NFを開閉するための導入側ゲート開閉手段20NFは、図3に示すように、シリンダ装置25と,支点21を中心に揺動(回動)可能な傾斜リンクバー22と,この傾斜リンクバー22の先端側に回転可能に連結されかつその長手方向に複数の係合ピン24が固着された上下リンクバー23とから形成されている。
図3、図4において、各係合ピン24は、導入側ゲート12NFに設けられた各傾斜長穴12Sに嵌挿(係合)され、傾斜長穴12S内を摺動できる。この係合ピン24と傾斜長穴12Sとの相対移動により、導入側ゲート12NFの横移動力(上下方向力も生じる。)を発生させることができる。
シリンダ装置25の停止時(ピストン没入時)は、傾斜リンクバー22が図3に2点鎖線で示す如く上下リンクバー23を上方へ引上げた状態であるから、導入側ゲート12NFを図4に2点鎖線で示す如く右方向に移動させた状態つまり導入通路部11NFを開放させた状態に保持できる。
ここで、シリンダ装置25を作動させると、ピストンが突出し傾斜リンクバー22を図3に実線で示す左下り状態に傾斜させ、上下リンクバー23を下方に押し下げる(押し下げ寸法は、図4に示す“H”である。)。すると、係合ピン24が図4の傾斜長穴12S内を左上端から右下端に相対移動する。したがって、導入側ゲート12NFを図4に実線で示す如く左方向に移動(移動量はWである。)させた状態つまり導入通路部11NFを閉鎖させることができる。設定角度θ(傾斜長穴の傾斜)を選択設定することにより、W=2Hにして2倍増幅機能を持たせてある。
すなわち、導入側ゲート開閉手段20NFは、前置干満槽10NFの外側から付与される上下方向力を利用して導入側ゲート12NFを横方向(図3で左右方向)にスライドさせて導入通路部11NFを開閉可能に形成されている。かかる構造とすれば、構造簡単かつ安価で具現化が容易であるばかりか、前置干満槽10NF内に占める占有エリアを小さくでき、結果として前置干満槽10NFの小型化に有効でかつ寄与するところ大であり、また小ストローク(H)作動により導入側ゲート12NFによる導入通路部11NFの急速開閉ができる。
ここに、図3に示す導入側ゲート開閉手段20NF(および導出側ゲート開閉手段20NB)は、当該干満槽10NF(10NB)が干液状態(図6のST18)に保持されている場合に開閉(ST20、ST22)される。つまり、ゲート12NF(12NB)の内外面に液差圧が加わらない状態で開閉することになるので、導入側ゲート開閉手段20NF(および導出側ゲート開閉手段20NB)の能力を小さくすることができる。シリンダ装置25は小容量のものでよく、構成要素(22等)の剛性も小さくできるので、有利である。手動調整の場合も軽力ですむ。
因みに、処理槽10N内に設けるゲート12NI,12NOは、干満槽10NF,10NBが満液状態(図6のST14)に保持されている場合に開閉(ST15、ST17)することになる。この場合も、ゲート12NI,2NOに液差圧が加わらない状態で開閉することになるので、搬入・搬出側ゲート開閉手段20NI,20NBの能力(容量)も、導入側ゲート開閉手段20NF,20NBの場合と同様に小さくてもよいわけである。
次に、図1,図3に示す前置側液干満切換手段30NFは、図3の前置干満槽10NFを処理液で満たした満液状態(最高液レベルLh)と空である干液状態(最低液レベルLl)とに選択的に切換えるための手段であり、この実施の形態では、図3に示すように前置側液供給手段31NFと前置側液排出手段41NFとから形成されている。槽の名が干満槽と呼称される所以である。
前置側液供給手段31NFは、図1に示す吸込管32,供給ポンプ33および供給管35を含み、供給ポンプ33により液貯槽17NF(17N)内の処理液を強制的に加圧して図3の左側から前置干満槽10NFに供給する強制加圧供給構造とされている。
前置干満槽10NFの底部側には、図3に示す如く、整流板13NFが設けられている。この整流板13NFには、左右に対向振り分けされた整流孔群13NFHが設けられている。各整流孔群13NFHは、多数の整流孔からなり、導入されたワーク200の各面側に上昇液流Fpを生成可能である。この上昇液流Fpは、層状(平行)流であり、縦吊状態のワーク200に大きな湾曲や変形はもとより、無用な揺れや振動も与えない。傷を付ける虞も全くない。
すなわち、バッチ処理方式の従来装置(図10)の場合には、下端部を自由端とみなすことができる縦吊状態のワーク200を、その上端部を固定端とする状態で処理槽10N内に下降させつつ、自由端の方から処理液中に搬入(下降・投入・浸漬)せざるを得なかった。この際の処理液は、ワーク200に対する抵抗体乃至外力付与手段として働く。かくして、ワーク200に湾曲や変形を生じさせないためには、大掛かりな縦吊姿態維持手段等を設ける必要があったわけである。
しかし、この実施の形態の場合には、前置干満槽10NFに導入されかつ静止状態に保持された縦吊状態のワーク200に対して、その下方側から処理液を供給しつつ、液面Lを最低レベルLlから最高レベルLhまで徐々に上げて行く。はじめに、ワーク200の下端部(自由端)が、供給された処理液により固定化されたことになる。また、その後の上昇液流Fpが平行流であるから、ワーク200の各面に直交する方向の外力が生じることがない。機械的な接触もない。
かくして、縦吊状態のワーク200に湾曲や変形が生じることがなく、揺れや振動も軽微に抑制することができるから、ワーク200を処理液中に投入する際の従来問題点(表面処理面に傷が付く、破損する。)を一掃することができる。すなわち、厚みがより薄く、一段と可撓性に富みあるいは寸法がより大きいワーク(プリント回路基板等)200でも確実かつ安定して処理液中に浸漬することができる。つまり、ワーク200の形態や性質(性状)等に対する適応性が極めて広い。
供給ポンプ33の加圧により図3に示す前置干満槽10NF内の液面は、最低限Llから徐々に上昇し、壁面上部からオーバーフロー槽15NF(15N)に溢出する。したがって、液面は最高限Lhに一定に維持される。この液面(Lh)は処理槽10N内の処理液面と同一である。したがって、満液状態で連通された前置干満槽10NFから処理槽10Nへのワーク搬入をスムースに行える。
つまり、図11に示すように、ワークを開口部11PNから上流側(前方側)に向けて勢い良く溢出される処理液Qrに向かってその反対方向(搬送方向)から、しかも大気中から突入させざるを得なかった連続処理方式の従来装置の場合に比較すれば、ワーク搬入の容易性および安定性は明白である。ワークの自由端を大気中の上方から下方の静止液中に直接投入するバッチ処理方式の従来装置(図10)の場合に比較しても同様である。
次に、前置側液排出手段41NFは、図3に示す排出用ゲート43と排出用ゲート開閉手段45とを含み、前置干満槽10NFの下方側で右側の壁面に設けた排出口14NFHを強制開放して処理液を液貯槽17NFに急速流出させる強制開放自然排出構造とされている。
排出用ゲート開閉手段45は、図3の右上側に示すシリンダ装置25と同様なシリンダ装置49,支点21と同様な支点46を中心に揺動(回動)可能な傾斜リンクバー22と同様な傾斜リンクバー(47…図示省略)と,この傾斜リンクバー(47)の先端側に回転可能に連結された上下リンクバー48とから形成されている。この上下リンクバー48の先端(下端)に排出用ゲート43が取り付けられている。排出用ゲート43は、前置干満槽10NFの排出口14NFHを設けた内壁面に上下動可能に案内されている。
この排出口14NFHは、前置干満槽10NF内の処理液を液貯槽17NF(17N)に急速流出させるために必要十分な開口面積を有する。例えば1秒以内で満液状態から干液状態に切換えることができる大きさに選択される。したがって、排出口14NFHの取付け位置は、前置干満槽10NFの長手方向(図1で左右方向)に延びる側壁内面でかつ槽底部とすべきである。もっとも、ワーク200の形態上、槽幅方向(図3で左右方向)は絶対長が短く、さらに導入側ゲート12NFおよび導入通路部11NFとの干渉を回避しなければならないので、十分な開口面積を確保することができない場合が多いであろう。
なお、前置干満槽10NFへの導入時間や導出時間として許される余裕時間を長くする観点からも、速やかな液供給と比較的に急速な液排出とを期することが重要である。しかし、大きな装置的犠牲を強いるような過度な高速化を求めるものではない。つまり、任意処理槽における最短の表面処理時間に基づくサイクルタイムが30秒であると仮定すれば、例えば前置干満槽10NFの場合、先の搬入後から次の導入前までの時間(30秒)内に液排出および液供給を終了しておけばよいからである。
ここに、後置干満槽10NBに関しては、以上の前置干満槽10NFに関する場合と同様である。すなわち、後置干満槽自体の構造並びに後置干満槽10NBに関する後置側導出通路部11NB,導出側ゲート開閉手段20NBおよび後置側液干満切換手段30NB(後置側液供給手段31NBおよび後置側液排出手段41NB)等は、前置干満槽自体の構造並びに前置干満槽10NFに関する前置側導出通路部11NF,導入出側ゲート開閉手段20NFおよび前置側液干満切換手段30NF(前置側液供給手段31NFおよび前置側液排出手段41NF)等と同じである。これらの後置側各手段の符号は、図3中にカッコ書きした。
同様に、処理槽10Nに関して言えば、処理槽自体の構造並びに処理槽10Nに関する搬入側ゲート開閉手段20NI,搬出側ゲート開閉手段20NO等は、前置干満槽自体の構造並びに前置干満槽10NFに関する導入側ゲート開閉手段20NF等と同じである。ただし、後置側各手段の符号(20NI,20NO)は、図3では図示していないが、図2中にカッコ書きしてある。
なお、処理槽10Nに関しては、従来例の場合と同様な図1に示す液循環手段31Nが設けられているが、前置干満槽10NFで必要な前置側液干満切換手段30NF(前置側液供給手段31NFおよび前置側液排出手段41NF)に対応する手段を設ける必要はない。
この液循環手段31Nは、図1に示す吸込管32,循環供給ポンプ33R,フィルタ(図示省略)および供給管35を含み、循環供給ポンプ33により液貯槽17N内の処理液を強制加圧して処理槽10Nに供給して循環使用する。また、処理層10N内に装着された整流孔13NH,オーバーフロー槽15N等は、前置干満槽10NFに関する整流孔13NFH,オーバーフロー槽15NF等と同じで、これらの符号(13NH,15N)は、カッコ書きしてある。
次に、ワーク搬送手段70は、前方側(第1番目処理槽)から後方側(最終番目処理槽)までワーク200を水平搬送する手段である。処理槽10Nに関するワーク搬送手段は、第1工程から第6工程を実施するために必要な3系統である。
3系統(但し、後記する兼用構造とすることで、最終的かつ具体的には2系統とした。)とする根拠は、搬送要件1(処理槽10Nにおける処理時間および処理槽長さ寸法の関係から、処理槽10N内でのピッチ送りが必要である。)および搬送要件2(各干満槽内でのピッチ送りは必要ないが、生産性の向上を期した全体的な搬送円滑化のために導入用と導出用とは同期運転をさせたい。)を満足させるためである。
すなわち、処理槽10Nに関するワーク搬送手段は、図7(A)〜(E)に示す如く、処理槽10Nでワーク200を1ピッチ間歇送りさせるための搬入用と搬出用とを兼ねる同図(B)に示すプッシャ70Nと、前方側(先の処理槽10M)から来たワーク200を前置干満槽10NFに導入するための導入用プッシャ70NFと、後置干満槽10NBからワークを導出させるための導出用プッシャ70NBとから形成されている。プッシャ70N(、70NFおよび70NB)は、図7(B)に示す往復移動部材71に複数のアンチバックトグ72を装着させた構造で、各アンチバックトグ72を同時に1ピッチ分だけ搬送(送り…FR,戻し…BK)することができる。
なお、他の各処理槽に関する各ワーク搬送手段も、処理槽10Nに関するワーク搬送手段(プッシャ70N,プッシャ70NF,プッシャ70NB)の場合と同様な構造(但し、槽内ピッチ送りを必要としない処理槽では、70N相当がない。)とされる。
すなわち、ワーク搬送手段70(70N,70NF,70NB)は、前方側から前置干満槽10NFへの導入用プッシャ70NFと,前置干満槽から処理槽10Nへの搬入用および処理槽から後置干満槽10NBへの搬出用を兼用するプッシャ70Nと,後置干満槽から後方側への導出用プッシャ70NBとを含み、導入用プッシャ70NFと導出用プッシャ70NBとが同期運転可能に形成されている。
つまり、導入用プッシャ70NFと導出用プッシャ70NBとの同期運転をさせることによりサイクルタイムの短縮化ができかつ導入・導出用(70NF,70NB)と搬入・搬出用(70N)との時間差の設定変更等によって搬送運転と生産サイクルとの調整を容易に行え、ワーク搬送手段(プッシャ全体)の構造簡素化・一体化およびコスト低減化ができる。駆動制御も簡素化できる。
すなわち、搬送の高速化、生産能率の向上、低コスト化、駆動制御の容易化、装置小型化等を踏まえた具体的で実用的な設備構築上の観点から、この実施の形態では、機能目的が同一乃至同種のプッシャ(70NF,70NB)を一体的に構成しかつ同期運転(同一タイミング)で送り動作可能に構築してある。
これと関連しかつ図7(B)において、先の処理槽(10N)に関する導出用プッシャ(70NB)と次の処理槽(10O)に関する導入用プッシャ(70OF)とは、同一のプッシャ(70NB=70OF)として兼用構築することができる。また、この実施の形態では、全ての処理槽を対象として、先の処理槽(例えば、10M、10N)に関する導出用プッシャ(70MB、70NB)と次の処理槽(10N、10O)に関する導入用プッシャ(70NF、70OF)とについても、兼用可能に構築しかつ同期運転可能に形成してある。
さらに、各処理槽(例えば、10M、10N、10O、10P)の当該各プッシャ(70M、70N、70O、70P)を同期運転可能な一体的構造としてある。かくして、最終的には、導入用と導出用とを兼ねるプッシャと、搬入用と搬出用とを兼用するプッシャ70Nとの2系統とされている。なお、図7(B)では、左側の処理槽10Mと右側の処理槽10Pとは図示を省略している。
なお、ワーク搬送手段は、プッシャ構造に限定されるものではない。適宜の搬送方式や構造を選択することができる。この実施の形態における処理槽(めっき処理槽)[図示省略]に関しては、図3に示すベルトコンベア75とされ、ワーク200を定速(例えば、1m/minに設定)かつ連続で槽内を搬送可能に形成してある。このように、槽長が複数(例えば、4以上)ピッチ分である処理槽に関しては、連続搬送方式の手段(ベルトコンベア等)を採用するのが好ましい。
ここに、いずれの構造(プッシャやベルトコンベア)のワーク搬送手段を採用しても、ワーク200は搬送構造体を介して行われる。図3に示す搬送構造体は、紙面に垂直方向(図2のX方向)に延設されたレール90と,このレール90に沿って摺動(あるいは転動)可能に装着されたキャリア93と,このキャリア93の一部を構成する横腕木部材93Hの先端に取り付けられた保持部材95と,この保持部材95に着脱可能な冶具98とから形成されている。
この実施の形態では、搬送構造体(90,93)並びにワーク搬送手段(70NF等,75)を処理槽の外側(図3で右側)に位置をずらせて配置してある。これら構造・手段の相対摺動部で発生する微細な塵埃が処理槽(10N等)内に落下することを防止するためである。一段の高品質処理を第1義とする本表面処理装置の構成については、隅々まで配慮されているものと理解される。
因みに、一般的な従来装置では、レール90を処理槽の中心線に合わせているので、上記相対摺動部で発生する微細な塵埃の品質に及ぼす影響については、認識が無いものと思われる。もつとも、一段の高品質処理を求められない場合には、必要ないであろう。
図3において、冶具(挟持具)98は、保持部材95にねじ止め固定される本体ベース98Bと,支点を中心に回動可能なクランプ98Cと,クランプ98Cの一端(先端)を本体ベース98Bに常時押圧かつ常時挟持するための付勢力を付与するスプリング98Sとから形成され、クランプ98Cの先端と本体ベース98Bとの間でワーク200の上端部を挟持する。
なお、図示しないめっき槽(処理槽)の場合には、元電源に接続されたレール90から横腕木部材93Hを含むキャリア93→保持部材95→冶具98の電路を通してワーク200に給電(負極接続)される。めっき槽内には、ワーク200に対向可能な位置に電極(陽極接続)が設けられている。レール90は、ワーク200へ給電するための給電手段の一部を構成するので、銅系金属から形成されている。
次に、駆動制御手段(100)は、ワーク搬送手段[70,70F(70B),75]、各処理槽(10)および当該各前・後置干満槽(10F,10B)に関する各手段すなわち導入側ゲート開閉手段20NF、前置側液供給手段31NF、前置側液排出手段41NF、搬入側ゲート開閉手段20NI、搬出側ゲート開閉手段20NO、後置側液供給手段31NB、後置側液排出手段41NBおよび導出側ゲート開閉手段20NBを所定の手順に従って駆動制御可能で、この実施の形態では、図5に示すコンピュータから形成されている。なお、ロジック回路等から構成してもよい。
図5において、コンピュータ100は、CPU(時計機能を含む)101,ROM102,RAM103,メモリ(強誘電体メモリ)104,ハードディスク(HDD)105,操作部(PNL)106,表示部(IND)107および複数のインターフェイス(I/F)108NF等を含み、設定・選択・指令・駆動制御等の機能を有し表面処理装置全体を運転駆動制御する運転駆動制御装置を形成する。
この図5では、インターフェイス108NFに前置処理槽10NFに関する導入側ゲート開閉手段等20NFおよび前置側液干満切換手段30NF(前置側液供給手段31NFと前置側液排出手段41NF)が接続され、インターフェイス108Nに処理槽10Nに関する搬入側ゲート開閉手段等20NI,液循環手段31Nおよび搬出側ゲート開閉手段20NOが接続され、かつインターフェイス108NBに後置処理槽10NBに関する導出側ゲート開閉手段等20NBおよび後置側液干満切換手段30NB(後置側液供給手段31NBと後置側液排出手段41NB)が接続されている。
なお、他の各処理槽と当該各前置干満槽および当該各後置干満槽とに関する各手段については、インターフェイス108OTHに接続されているものとして、詳細は図示省略す
る。
各処理槽に共通として構築したワーク搬送手段70(70A〜70X)および当該各前置干満槽[これと兼用可能な各後置干満槽]に共通として構築したワーク搬送手段70F(70AF〜70XF)[70B(70AB〜70XB)]と、めっき処理槽に専用のベルトコンベア(連続搬送手段)75とは、インターフェイス109に接続されている。なお、各インターフェイスには、当該各手段との関係で必要な各種センサーが接続されているが、図示省略した。また、従来例の場合と同様な装置(例えば、電源装置)等についても図5では図示省略した。
ここに、駆動制御手段(100)は、主に、駆動制御プログラムを格納させたROM102およびHDD105と、駆動制御プログラムを読み出して実行するCPU101とから形成されている。駆動制御プログラムに必要な固定情報等はROM102側に格納されている。また、実行に際して設定入力あるいは設定変更される情報はメモリ104に記憶保持されている。いずれも読み出されかつRAM103に展開されて利用される。
駆動制御プログラムは、各平板形状物(ワーク200)を前方側から後方側までの全処理槽をそれぞれに搬送等できるもの(少なくても上記した第1工程から第6工程までを実施可能なプログラムを含む。)であれば、その形式等は限定されずに、自由に作成することができる。
しかし、運用の実際では、生産性の一段の向上を目指して、複数の平板形状物(ワーク200)を順番にかつ連続的に搬送等しつつ表面処理を実施すべきである。そこで、この実施の形態では、各処理槽に関するゲート開閉動作,干満切換動作,搬送動作等の動作タイミングを可能な限り同期させるように工夫してプログラムを作成してある。
すなわち、駆動制御プログラムは、図6のST(ステップ)10〜ST25として現せる。以下に、図7(A)〜(E)を参照しつつプログラムを説明する。なお、図6では、第1工程〜第6工程内の幾つかの2工程が経時的に前後しているように見える場合もあるが、1枚の平板形状物(ワーク20)に着目すれば、第1工程〜第6工程はこの順序で実施(実行)されていることが明白に理解される。
駆動制御指令によりプログラムが起動する。最初に、初期状態が確立(OK)しているか否かが判別される(図6のST10)。不確立(NO)であると判別(ST10でNO)されると、次の2種類の動作が自動で行われる。
まず、全ての開閉ゲートを閉鎖する(ST11)。処理槽10Nに関して言えば、ゲート開閉手段(20NF,20NI,20NO,20NB)を駆動制御して当該各ゲート(12NF,12NI,12NO,12NB)を同期駆動して閉鎖する。シリンダ装置25用のソレノイドのON(OFF)制御による。
そして、閉鎖状態(図7のゲート近辺に“×”印を付した。)になったことは、各センサーで検出され、表示部107で目視確認できる。処理槽10Oに関しても同様に開閉ゲートは閉鎖状態とする。図7(A)に初期状態が確立された場合を示す。
なお、図7(A)等には、以下の説明便宜のために複数(例えば、8つ)の平板形状物(プリント回路基板)つまりワーク200(右から左に“A”,“B”,“C”,“D”,“E”,“F”,“G”,“H”)が、既に図示の通りの位置に所在するものとする。
引き続き、全ての前後干満槽(10NF,10NB等)を干液状態に切換える(ST12)。各液排出手段(41NF,41NB等)を駆動制御して行われる。図3のシリンダ装置49用のソレノイドのON(OFF)制御による。干液状態[図7(A)]は、液面(レベル)Lが最低限Llになった状態である。これも各センサーで検出され、表示部107に表示出力されるので目視確認することができる。
同時的に、前後干満槽10NFに関する各プッシャを初期状態(位置)に戻す(ST13)。すなわち、処理槽10Nに関しては、前置側のプッシャ70NF(処理槽10Mの後置側のプッシャ70MBとしても兼用)と後置側のプッシャ70NB(処理槽10Oの前置側のプッシャ70OFとしても兼用)とを元に戻す。つまり、図7(E)に示す状態からプッシャ70NFおよびプッシャ70NBを左方向に1ピッチ分だけ戻して、図7(A)に示す状態に移行させるわけである。なお、図7中の矢印(→)に記した符号“FD”は前進(移行)を意味し、符号“BK”は後退(戻り)を意味するものとする。
この場合、処理槽10Nに関するプッシャ70Nは既に初期状態[図7(E),(A)を参照]であるから、元に戻す必要がない。但し、直前にメンテナンスや調整等をした結果として、図7(B)に示す状態にある場合には、図7(C)に示すように左方向の初期状態(位置)に戻される。
なお、メンテナンスや調整を行うためにあるいは予め指定状態を確立しておくための便宜上、自動モードから手動モードに切換えれば、表示部107に表示出力されるガイダンスを参照しながらかつ操作部106のキーを用いた手動操作によって、図6の各ステップ(ST)に相当する動作を個別的に行えるように形成してある。
この初期状態が確立したことがセンサーの検出により確認できた場合には、その後に各前後干満槽(10NF等)を満液状態に切換える。処理槽10Nの前置干満槽10NFおよび後置干満槽10NBに関していえば、前置側液供給手段31NFおよび後置側液供給手段31NBを駆動制御(供給ポンプ33用モータの回転制御)しつつ処理液を供給して満液状態に切換える(ST14)。図7(A)に示す干液状態(レベルLl)から図7(B)に示す満液状態(レベルLh)に切換えられる。この状態において、開閉ゲート12NFから前方(10M)側に漏れる少量の処理液Qrは漏れ回収部16NFに回収される。
次に、処理槽10Nに関する搬入側ゲート開閉手段20NIおよび搬出側ゲート開閉手段20NOを駆動制御して、搬入側ゲート12NIおよび搬出側ゲート12NOを開放状態に切換える(ST15)。図7(A)に示す閉鎖状態(“×”)から図7(B)に示す開放状態(“○”)とする。したがって、前置干満槽10NFと処理槽10Nと後置干満槽10NBとの液面(レベル)が全て同じ(Lh)となる。つまり、連通状態になるので、搬送上は、実質的に1つの処理槽として取り扱える。つまり、ワーク200の液中水平搬送が可能となる。
かくして、駆動制御手段(100)は、処理槽10Nに関するプッシャ70Nを図7(A)に示す初期位置から図7(B)に示す如く右方向に1ピッチ(P)分だけ移動させる。つまり、ワーク“F”,“E”,“D”を同時に1ピッチ分だけ搬送する(ST16)。処理槽10Oに関しては、ワーク“C”,“B”を同時に1ピッチ分だけ搬送する。
すなわち、前置干満槽10NFから処理槽10Nへのワーク(“F”)の搬入と、処理槽10N内でのワーク(“E”)の1ピッチ分搬送と、処理槽10Nから後置干満槽10NBへのワーク(“D”)の搬出とを同一タイミング(同期運転)で行う。
ここに、処理槽10Nへのワーク(“F”)の搬入および処理槽10Nからのワーク(“D”)の搬出も、処理槽10N内でのワーク(“E”)の搬送の場合と同様に処理液中で行うことができるから、従来バッチ処理方式や連続処理方法の場合の問題点(大気中から処理液中に直接投入することによる変形等の発生。)を一掃することができるわけである。この点からも、一段と処理の高品質化を促進できる。
その後に、搬入側ゲート開閉手段20NIおよび搬出側ゲート開閉手段20NOを駆動制御することにより、搬入側ゲート12NIおよび搬出側ゲート12NOを同期駆動して閉鎖状態[図7(B)に示すカッコ書きした“×”]に切換える(ST17)。この状態において、開閉ゲート12NBから後方(10O)側に漏れる少量の処理液Qrは、漏れ回収部16NBに回収される。
前後干満槽10NF,10NBと処理槽10Nとを隔離状態とした後に、処理槽10Nに関すれば、前置側液排出手段41NFおよび後置側液排出手段41NB等を駆動制御して、前・後置干満槽10NF,10NBの処理液を液貯槽17N(17NF,17NB)に排出する。これにより、図7(B)に示す満液状態から図7(C)に示す干液状態に切換える(ST18)。
同時的に、処理槽10N(10O)に関するプッシャ70N(70O)を図7(B)に示す前進位置から図7(C)に示す後退位置(初期位置)に戻す(ST19)。この段階[図7(C)]で、全てのプッシャは図7(A)の場合と同様に初期位置に所在する。
引き続き、前・後置処理槽10NF,10NBに関する導入側ゲート開閉手段20NFおよび導出側ゲート開閉手段20NBを駆動制御して、導入側ゲート12NFおよび導出側ゲート12NBを開放状態に切換える(ST20)。つまり、図7(C)に示す閉鎖状態(“×”)から図7(D)に示す開放状態(“○”)とする。すなわち、処理槽10Nからの表面処理済みワーク200の搬出と次の新規処理対象ワーク200の搬入の準備を整える。
また、駆動制御手段は、処理槽10Nに関する前置側プッシャ70NFを図7(C)[(A)]に示す初期位置から図7(D)に示すように右方向に1ピッチ分だけ移行(FD)させて、ワーク“G”,“H”を同時に1ピッチ分だけ導入搬送するとともに、後置側プッシャ70NBを図7(C)[(A)]に示す初期位置から図7(D)に示すように右方向に1ピッチ分だけ移行(FD)させて、ワーク“D”を1ピッチ分だけ導出搬送する(ST21)。処理槽10Oに関しては、ワーク“A”,“B”を同時に1ピッチ分だけ搬送する。なお、図7(D)に示すように、ワーク“H”の次のワーク“I”が前置された処理槽(10M)から搬出されて来る。
ワーク200の搬送後に、処理槽10Nに関する導入側ゲート開閉手段20NFおよび導出側ゲート開閉手段20NBを駆動制御して、導入側ゲート12NFおよび導出側ゲート12NBを閉鎖状態に切換える(ST22)。つまり、図7(D)に示す開放状態(“○”)から図7(E)に示す閉鎖状態(“×”)とする。すなわち、全てのゲートが初期状態に戻されたことになる。
同時的に、処理槽10N(10O)の前・後置干満槽10NF,10NB(10OF,10OB)に関するプッシャ70NF,70NB(70OF,70OB)を図7(D)に示す前進位置から図7(E)に示す後退位置(初期位置)に戻す(BK)ように制御する(ST23)。この段階[図7(E)]で、全てのプッシャは初期位置に戻されたことになる。
次のサイクルに進む際には、初期状態が確立されていると判別(ST10でYES)されるので、初期状態への切換動作(ST11,ST12,ST13)は必要が無く、ST14から開始される。なお、運転停止指令が発生された場合(ST24でYES)には、停止処理(ST25)して駆動制御プログラムの実行を終了する。
かかる構成の表面処理装置の場合には、本表面処理方法は以下のように実施される。今、前方側(処理槽10M側)から処理槽10Nに最初の平板形状物(ワーク“F”)が給搬送されて来た場合を考えると、当該ワーク“F”を干液状態(レベルLl)の前置干満槽10NFに導入した後に、処理液を供給して前置干満槽10NFを満液状態(レベルLh)に切換える第1工程は、図7の(A)→(B)として実施される。
なお、ワーク“F”を干液状態(レベルLl)の前置干満槽10NFに導入する部分工程は、ワーク“G”をワーク“F”に読み替えれば、図7の(C)→(D)として実施されるものと理解される。その後に、プッシャ70NF(70MBを兼用)は図7の(E)のように元に戻される。
また、満液状態の前置干満槽10NFと処理槽10Nとの間を連通状態(ゲート12NIが開放)に切換えかつ切換え後に平板形状物(ワーク“F”)を前置干満槽10NFから処理槽10Nに搬入させる第2工程は、図7の(B)で実施される。引き続く第3工程、つまり先の平板形状物(ワーク“F”)の処理槽10Nへの搬入後に、前置干満槽10NFと処理槽10Nとの間を隔離状態(ゲート12NIが閉鎖)に切換えかつ切換え後で次の平板形状物(ワーク“G”)の導入前に前置干満槽10NFの処理液を外部(液貯槽17N)に排出させて前置干満槽10NFを干液状態(レベルLl)に切換える工程は、図7の(B)で実施される。
その後に、ワーク“F”が先に搬入されたワーク“E”とともに表面処理(化成処理)される。この表面処理の終了後に処理槽10Nと満液状態(レベルLh)の後置干満槽10NBとの間を連通状態(ゲート12NOを開放)に切換えかつ切換え後にワーク“F”を処理槽10Nから後置干満槽10NBに搬出させる第4工程は、図7の(A)→(B)で実施される。この段階では、図7(B)および(C)に示す後置干満槽10NB内のワーク“D”をワーク“F”に読み替えればよい。すなわち、図7に示すワーク順序の場合は、このワーク“F”の搬出以前にワーク“D”およびワーク“E”の同時搬出が行われる。つまり、2搬送サイクル後にワーク“F”の搬出が行われる。
そして、搬出後に処理槽10Nと後置干満槽10NBとの間を隔離状態(ゲート12NOが閉鎖)に切換えかつ切換え後に後置干満槽10NBの処理液を外部(液貯槽17N)に排出させて後置干満槽10NBを干液状態(レベルLl)に切換える第5工程は、図7の(B)→(C)で行われる。なお、この場合も図7(B)および(C)に示す後置干満槽10NB内のワーク“D”をワーク“F”に読み替える。
最後に、先のワーク“F”の導出かつ排搬送後で、次のワーク“G”の搬出前に後置干満槽10NBに処理液を供給して後置干満槽10NBを満液状態(レベルLH)に切換える第6工程は、図7の(C)→(D)[(E),(A)]→(B)で実施される。
しかして、この第1の実施の形態による本表面処理方法(装置)によれば、処理液中を水平搬送(横移行)させることでワーク200を処理槽(10N)に搬入することができるので、大気中から処理液中にワークを直接投入する従来バッチ処理方式の場合の問題点(ワークに振れや振動が発生する。ワークが変形したりや曲ってしまう。)を一掃でき、薄くあるいは可撓性に富んだ平板形状物(200)の場合でも高品質処理を確実に行える。ワークの無駄消費も避けられる。しかも、表面処理装置の小型化および低コスト化を図りつつ、電子部品や電子機器等の一層の高品質化を通じた国際競争力の強化に大きく貢献することができる。
また、比較的に幅広な搬入通路部11NIを通してワーク200を処理槽10N内に搬入することができるので、1対の導入ガイドローラ81PL,81PR等を幅狭に配設した導入ガイドを通してワークを処理槽10に搬入する従来連続処理方式の問題点(衝突によるワークの傷つき、破損)を一掃することができる。この点からも、一段と高品質の処理を行えるとともに生産歩留まりを向上できる。また、厚さがより一段と薄くかつ一層の可撓性に富んだ平板形状物(ワーク200)に対する適応性が高い。
また、処理槽10Nへの搬入に備えてワーク200を干液状態の前置干満槽10NF内に一時的に保留する以外は全て処理液中に浸漬された状態で導入および搬入することができるから、処理槽10Nより高い位置でかつ大気中での搬送(V1,H1,V2)が長くなる従来バッチ処理方式の場合の問題点(残存液による過剰反応、酸化の進行、塵埃の付着)を一掃することができる。この点からも、大幅な高品質化を促進できる。
また、縦吊状態のワークを前・後置干満槽(10NF,10NB)内および処理槽(10N)内で液中水平搬送させるように形成されているので、ワーク昇降を必須とする従来バッチ処理方式の場合に比較して装置高さを低くすることができる。つまり、設備経済が有利でかつ危険な高所作業も一掃化でき、周囲も汚さない。しかも、各槽の上部開放部にカバー85を設けることができるので、搬送中のワーク200への品質に悪影響を及ぼすような塵埃の付着を絶無化(乃至飛躍的な激減化)することも可能で、飛躍的な高品質処理を期待できる。
また、従来バッチ処理方式のように複数の処理槽(10N−1,…,10N4)に分割する必要がないので、液組成管理が容易でかつバラツキがない表面処理を行える。
また、ワーク200を連続的に搬送しかつ連続的に表面処理することができから、生産性が高い。液組成も一定化する。この点からも、一段と高品質処理を行える。
また、開口部11PNから大量の処理液Qrが漏れる従来連続処理方式の場合に比較して、導入通路部11NF,搬入通路部11NI等から漏れる処理液量が大幅に少ないから、供給ポンプ33,循環供給ポンプ33R等の小型化を図れ、設備経済上も有利である。
装置全体の小型化にも有効である。
また、ワーク200の自由状態の下端部を処理液中に直接下降・搬入する従来バッチ処理方式において採用する構造複雑で高価な縦吊姿態維持手段等を付設する必要がないので、コスト低減ができかつ処理槽10Nおよび装置全体の小型化を促進できるとともに、メンテナンスの負担を軽減できる。
また、ワーク搬送手段が2系統のプッシャ(70NF,70NB)、(70N)およびめっき処理槽内専用のベルトコンベア75から形成されている。この点からも、装置小型化を図れ、取扱い容易で、円滑で迅速なワーク搬送を確約できる。
また、処理槽10Nの前後に干満槽10NF,10NBを設ければよいので、具現化が容易であるとともに、構造簡単でかつ取扱いが容易である。
さらに、ゲート開閉手段(20NF等)が当該槽(10NF等)外から付与される上下方向力を利用して各ゲート(11NF等)が当該槽内壁面に沿って横方向にスライドさせることで当該通路部(12NF等)を開閉可能に形成されているので、構造簡単で安価で具現化容易であり、また安定運転ができる。また、槽内での占有スペースも小さいので、当該槽の小型化を阻害しない。
さらに、各液供給手段(31NF等)が強制加圧供給構造とされ、各液排出手段(41NF等)が当該干満槽(10NF等)の下方側排出口(14NFH等)を強制開放させる強制開放自然排出構造とされているので、構造が一段と簡単で、安定した供給および急速な排出ができる。槽内の平板形状物(200)に悪影響(揺れ、振動)を生じさせることもない。
さらに、各ゲート(12NF等)の開閉動作を槽内外の液差圧の掛からない状態で行えるように形成されているので、構造簡素化を一段と促進できるとともに、小さな動力で円滑に開閉できる。
さらに、ワーク搬送手段が、前置処理槽側の導入用と後置処理槽側の導入用とを兼用するプッシャと,処理槽への搬入用および処理槽からの搬出用を兼ねるプッシャ70Nとから形成されているので、導入動作と導出動作とを確実に同期運転させられるので、搬送運転と生産サイクルとの調整が容易となり、ワーク搬送手段の構造簡素化およびコスト低減化ができる。
駆動制御手段(100)によって、各手段を全自動で駆動制御する構成であるから、取
扱いが極めて容易で、ランニングコストを大幅に低減できる。
(第2の実施の形態)
この第2の実施の形態は、図8および図9に示される如く、処理槽10M,10N(10N,10O)間に液切り槽10MN(10NO)を設け、前方側処理槽10M(10N)から搬送されてきたワーク200に付着する処理液が後方側処理槽10N(10O)に混入することを防止可能に形成されている。
そして、第1の実施の形態の場合と同様に、前置干満槽10NFの直前に漏れ回収部16NFを設けかつ後置干満槽10NBの直後に漏れ回収部16NBを設けてある。したがって、漏れ回収部16NF,16NBで回収された処理液をそれぞれに処理槽10N内の処理液として再利用可能である。
ここに、漏れ回収部16NF(16NB)のX方向の寸法(長さ)は前置干満槽10NF(10NB)の長さの1/4以下である。それ以上に大きくする必要もない。そこで、この実施の形態では、漏れ回収部16NF(16NB)を液切り槽10MN(10NO)内に一体的(図9に示すX方向において前後位置で隣接する。)に組み込んだ構造としてある。つまり、液切り槽10MN(10NO)は、実質的には、回収槽16MB(16OF)から形成されているが、ワーク200から液切り(自然落下)した液を回収できればよいので、形態(平面的な回収面積)的に問題はない。
つまり、漏れ回収部16NFと漏れ回収部16Bとを設けることを前提とすれば、前置干満槽10NFの前方と後置干満槽10NBの後方に比較的に小さな寸法(X方向長さ)を設けるだけで、搬送中のワーク200を縦吊状態で一時保留可能な空き槽(すなわち、液切り槽10MN,10NO)を確保でき、これら液切り槽10MN,10NOを利用すれば生産サイクルに影響を及ぼすことなく液切り工程を実施することができるわけである。
しかして、この第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態の場合と同様な作用効果を奏することができる他、さらに処理槽10M,10N(10N,10O)間の空きスペースを有効利用した液切り槽10MN(10NO)が形成されているので、前方側処理槽10M(10N)から持ち出されかつ後方側処理槽10N(10O)内に持ち込まれる処理液の量を極めて少量に抑えることができる。したがって、後方側処理槽10N(10O)における表面処理を一段と高品質で行える。また、全体的な生産サイクルを担保しながら、生産サイクルと搬送タイミングとの調整範囲の自由度を拡大できる。
各処理槽10M,10N,10O等での各処理液の組成管理が容易になる。各処理液の早期劣悪化を防止しつつ液切り槽で回収された処理液を再利用できるから、ランニングコストを低減することができる。特に、高価なめっき処理液の有効利用は、影響が大きく、処理コスト(生産コスト)を大幅に引き下げられる。