JP2011089163A - 気化器、気化方法及びcvd装置 - Google Patents

気化器、気化方法及びcvd装置 Download PDF

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Abstract

【課題】原料溶液を気化して反応室に供給する気化器において、原料溶液を気化させるときに固体原料が気化室内壁に付着するのを、極めて簡単なヒータ構造により防止する技術を提供する。
【解決手段】気化室11内に液体又は気体を導入する導入部12を、気化室の上壁11aに中心軸を一致させて設けられ、先端部から前記気化室内に向けて原料溶液を噴霧する第1導入管121と、この第1導入管の外側に同心状に設けられ、気化室内に向けて不活性ガスを導入する第2導入管122とを有する構成とする。また、気化室の外周に設けられた円筒型ヒータ13を、その上端13aが気化室の上壁よりも上方に延在するように設ける。
【選択図】図1

Description

本発明は、原料溶液を気化して反応室に供給する気化器、この気化器を用いた気化方法及び溶液気化型のCVD装置に関する。
従来、超電導線材の製造工程において、超電導層の成膜には化学気相成長法(CVD:Chemical Vapor Deposition)が利用されている。CVD法では原料ガスを基材表面に供給し化学反応させることにより成膜するが、超電導体の原料は蒸気圧が低く常温固体であるため、固体原料を溶解した溶液(原料溶液)を気化器において気化させ、この気化された原料ガスを反応室に供給する手法が採られている。原料溶液としては、例えばTHF(テトラヒドロフラン)の溶媒に、金属のβ−ジケトン錯体(例えばジピバロイルメタン(DPM:dipivaloylmethane)を溶解したものが用いられる。以下、金属MのDPM錯体をM(DPM)と表す。上述した手法に用いられる溶液気化型のCVD装置は、例えば特許文献1,2に開示されている。
図5は、本発明者等が従来使用していた溶液気化型CVD装置の気化器の構成を示す図である。図5に示すように、従来の気化器50は、上下両端を閉塞された中空円筒型状の気化室51、気化室51内に液体又は気体を導入する導入部52、気化室51を加熱するために気化室51の外周に設けられた円筒型ヒータ53、気化室51において気化された原料ガスを反応室に導出する導出部54を備えて構成されている。
導入部52は、第1導入管521と第2導入管522による二重構造となっている。第1導入管521は、気化室51の上壁51aに中心軸を一致させて設けられ、先端部の噴霧ノズルから気化室51内に向けて原料溶液を噴霧する。第2導入管522は、第1導入管521の外側に同心状に設けられ、気化室51内に向けて不活性ガス(例えばArガス)を導入する。
気化器50において、第1導入管521に原料溶液供給部(図示略)から供給された原料溶液とともに、この原料溶液を噴霧するための不活性ガス(例えばArガス)が導入されると(例えば1l/min)、第1導入管521の噴霧ノズルから原料溶液が高速で噴霧される。そして、噴霧された原料溶液は円筒型ヒータ53によって加熱された気化器50の内壁に衝突して瞬時に気化され、この気化されたガスが図示しないOガスとともに原料ガスとして反応室に供給される。反応室に導入された原料ガスが基材表面に供給され化学反応することで薄膜(例えばY系超電導層)が形成される。
ここで、第1導入管521の噴霧ノズル近傍が原料溶液の溶媒の沸点よりも高温になっていると、原料溶液が噴霧されて気化する前に溶媒が蒸発して固体原料が凝縮してしまい、噴霧ノズルが目詰まりする虞がある。そこで、第2導入管522から気化室51内に不活性ガス(例えばArガス)をシュラウドガスとして導入することにより、噴霧ノズル近傍の温度が溶媒の沸点よりも高温とならないようにしている。また、このシュラウドガスにより、気化した原料ガスが噴霧ノズルに接触して再固化するのを防止している。
特開2002−155365号公報 特許第4110576号公報
しかしながら、上述した気化器50により有機金属の原料溶液を気化させたところ、気化室51の上壁51aの内面に固体原料が付着した。そして、この付着物が増加すると原料ガスの組成が変動し、所望する超電導層が形成されなくなるという問題が生じた。これは、気化室51の側壁51bの温度Tが円筒型ヒータ53により十分に加熱され固体原料の昇華点よりも高温となっているのに対して、上壁51aの温度Tは固体原料の昇華点よりも低温となっていることが原因と考えられた。
気化室51における温度分布は、噴霧ノズル近傍では原料溶液が気化する前に溶媒が蒸発しないように溶媒の沸点よりも低温となり、気化室51の壁面では原料溶液を気化させるとともに気化した原料ガスが固化しないように固体原料の昇華点よりも高温となるのが望ましい。しかしながら、従来の気化器50では、円筒型ヒータ53の端部に位置する部分、すなわち気化室51の上壁51aの温度が低くなる傾向にあることも相俟って、そのような温度分布を実現するのが困難となっている。また、気化室51の内壁に生じた付着物を除去するためのメンテナンスが必要となるので、生産性が著しく低下する。
一方、特許文献1,2に記載の気化器においては、気化室の外壁にテープ状(又はひも状)のヒータを巻回することで、気化室の壁体温度を細かく制御する工夫がなされている。しかしながら、このようなテープ状ヒータは脱着が困難であるので、メンテナンスの作業性が低下する。また、ヒータと気化室の密着状態や巻回ピッチなどが異なると、脱着前後で温度分布が再現されないという問題がある。
本発明は、原料溶液を気化して反応室に供給する気化器、この気化器を用いた気化方法及び溶液気化型のCVD装置に有用な技術であって、気化器により原料溶液を気化させるときに固体原料が気化室内壁に付着するのを、極めて簡単なヒータ構造により防止する技術を提供することを目的とする。
請求項1に記載の発明は、上記目的を達成するためになされたもので、
両端を閉塞された中空円筒型状の気化室と、
前記気化室内に液体又は気体を導入する導入部と、
前記気化室において気化された原料ガスを外部に導出する導出部と、
前記気化室を加熱するために前記気化室の外周に設けられた円筒型ヒータと、を備えた気化器において、
前記導入部は、前記気化室の上壁に中心軸を一致させて設けられ、先端部から前記気化室内に向けて原料溶液を噴霧する第1導入管と、この第1導入管の外側に同心状に設けられ、前記気化室内に向けて不活性ガスを導入する第2導入管とを有して構成され、
前記円筒型ヒータは、その上端が前記気化室の上壁よりも上方に延在するように設けられていることを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の気化器において、前記第1導入管は、前記先端部が前記気化室の上壁より下方に突出して設けられていることを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の気化器において、前記導入部と前記円筒型ヒータによって形成される空間に、前記円筒型ヒータからの熱の流入を遮断する断熱手段が設けられていることを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の気化器において、前記断熱手段として断熱材を配設したことを特徴とする。
請求項5に記載の発明は、請求項3に記載の気化器において、前記断熱手段として冷媒を循環させる冷却ジャケットを配設したことを特徴とする。
請求項6に記載の発明は、請求項1から5のいずれか一項に記載の気化器において、前記第1導入管と前記第2導入管からなる二重構造の長さが25mm以上であり、
前記第1導入管の外径と前記第2導入管の内径の差が0.6〜2.0mmであることを特徴とする。
請求項7に記載の発明は、請求項1から6のいずれか一項に記載の気化器において、前記導入部は、前記第2導入管の外側に同心状に配設され、前記第2導入管より導入される不活性ガスと異なる不活性ガスを前記気化室内に向けて導入する第3導入管を有することを特徴とする。
請求項8に記載の発明は、請求項1から7のいずれか一項に記載の気化器を用い、前記第1導入管に溶媒に固体原料を溶解させた原料溶液を導入して前記反応室内に噴霧するとともに、前記第2導入管から前記反応室内に不活性ガスを導入し、前記噴霧された原料溶液を気化させる際、
前記気化室の壁体温度が前記固体原料の昇華点以上分解温度以下となるように、前記円筒型ヒータの出力を制御することを特徴とする。
請求項9に記載の発明は、請求項7に記載の気化器を用い、前記第1導入管に溶媒に固体原料を溶解させた原料溶液を導入して前記反応室内に噴霧するとともに、前記第2導入管から前記反応室内に不活性ガスを導入し、前記噴霧された原料溶液を気化させる際、
前記第2導入管から導入される不活性ガスよりも高温の不活性ガスを前記第3導入管から導入することを特徴とする。
請求項10に記載の発明は、請求項8又は9に記載の気化方法において、前記第2導入管又は前記第3導入管から導入される不活性ガスはArガスであることを特徴とする。
請求項11に記載の発明は、請求項8から10のいずれか一項に記載の気化方法において、前記溶媒はTHFであることを特徴とする。
請求項12に記載の発明は、請求項1から7に記載の気化器と、
前記気化器に原料溶液を供給する原料溶液供給部と、
前記気化器によって気化された原料ガスを基材表面に供給し化学反応させることにより薄膜を形成する反応室と、を備えることを特徴とするCVD装置である。
本発明によれば、極めて簡単なヒータ構造により気化室の壁体温度を均一に保持することができる。したがって、原料溶液を気化させるときに固体原料が気化室内壁に付着するのを防止できるので、原料ガスの組成が変動することなく、良質な薄膜を形成可能となる。また、気化室内壁の付着物を除去するためのメンテナンスを低減できるので、生産性が格段に向上される。
第1実施形態に係る気化器の概略構成を示す断面図である。 気化室の壁体温度を示す図である。 第1実施形態に係るCVD装置の構成を示す図である。 第2実施形態に係る気化器の概略構成を示す断面図である。 従来の溶液気化型CVD装置の気化器の構成を示す図である。 原料溶液流量と気化器上部温度に対するノズル詰まりの有無を示す図である。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係る気化器10の概略構成を示す断面図である。図1に示すように、気化器10は、気化室11、導入部12、円筒型ヒータ13、導出部14を備えて構成されている。
反応室11は、上下面を閉塞された中空円筒体であり、上壁11aに導入部12が設けられ、底壁11cに導出部14が設けられている。
導入部12は、第1導入管121と第2導入管122による二重構造となっており、気化室11内に液体又は気体を導入する。第1導入管121は、気化室11の上壁11aに中心軸を一致させて設けられ、先端部の噴霧ノズルから気化室11内に向けて原料溶液を噴霧する。第2導入管122は、第1導入管121の外側に同心状に設けられ、気化室11内に向けて不活性ガス(例えばArガス)を導入する。
円筒型ヒータ13は、気化室11の外周に配設されたジャケットタイプのマントルヒータであり、気化室11の壁体を所定の温度に加熱・保持する。図1では、円筒型ヒータ13が気化室11の底壁11cにまで延設され、気化室11の全体を加熱する構造となっているが、具体的には、気化室11の上部、中部、下部を別々に加熱する3段型のヒータで構成されている。なお、ヒータ構造はこれに限定されない。
導出部14は、気化室11の底壁11cの略中央に設けられた導出口であり、気化室11において気化された原料ガスを後述の反応室に導出する。導出部14の配置箇所は気化室11の底壁11cに限定されず、側壁11bに設けるようにしてもよい。
気化器10において、第1導入管121に後述の原料溶液供給部から供給された原料溶液とともに、この原料溶液を噴霧するための不活性ガス(例えばArガス)が導入されると(例えば1l/min)、第1導入管121の噴霧ノズルから原料溶液が高速で噴霧される。そして、噴霧された原料溶液は円筒型ヒータ13によって加熱された気化器10の内壁に衝突して瞬時に気化される。
このとき、第2導入管122から気化室11内に不活性ガス(例えばArガス)をシュラウドガスとして導入し、噴霧ノズル近傍の温度が溶媒の沸点よりも高温とならないようにしている。これにより、原料溶液が噴霧されて気化する前に溶媒が蒸発して固体原料が凝縮してしまい、噴霧ノズルが目詰まりするのを防止できる。また、このシュラウドガスにより、気化した原料ガスが噴霧ノズルに接触して再固化するのを防止できる。
ここで、第1導入管121の先端部の噴霧ノズルが気化室11の上壁11aより下方に突出していなければ、すなわち第2導入管122の開口より凹んでいれば、第2導入管122の内壁に原料ガスの付着がおこることがある。第2導入管122より導入された不活性ガス流量が少ない場合、第1導入管121の先端部と第2導入管122の間の空間において、第1導入管121より噴霧された原料ガスと第2導入管122より導入された不活性ガスが部分的に混合するためと考えられる。
そこで、本実施形態では、第1導入管121の先端部の噴霧ノズルが気化室11の上壁11aより下方に突出するように、第1導入管121が設けられている。また、第1導入管121の先端部の噴霧ノズルが気化室11の上壁11aより下方に突出して設けられている方が、流量条件が広く好ましい。
気化器10において、第2導入管122への不活性ガスの導入は、構造の簡便から1箇所でなされている。したがって、不活性ガスが導入された部分では管内で流量分布をもつ。第1導入管121と第2導入管122からなる二重構造の部分の流路抵抗が小さければ、先の管内の流量分布に近い状態で気化室11へ導入される。一方、二重構造の部分の流路抵抗が大きければ、不活性ガスの流れは二重構造の部分の流路で律速されるので、気化器での流量分布は均一になる方向に修正される。
流路抵抗を大きくする為には、第1導入管121と第2導入管122からなる二重構造の部分の長さL大きくし、第1導入管121の外径と第2導入管122の内径の差(すなわち、第2導入管122から導入される不活性ガスの流路)を小さくすればよい。ただし、第1導入管121と第2導入管122を接触させてはいけないので、気化器10の組み立て精度からの限界がある。
そこで、本実施形態では、第1導入管121と第2導入管122からなる二重構造の部分の長さLを25mm以上とし、第1導入管121の外径と第2導入管122の内径の差(すなわち、第2導入管122から導入される不活性ガスの流路)を0.6〜2.0mmとしている。これにより、第1導入管121と第2導入管122からなる二重構造の部分において、導入される不活性ガスの流量を周方向で均一とすることができる。
二重構造部分の長さLが25mm未満であると、流路抵抗が小さすぎて周方向での流量が均一になりにくいため、下限値を25mmとしている。また、第1導入管121の外径と第2導入管122の内径の差が0.6mmより小さいと、組み立て時の誤差によって、第1導入管121と第2導入管122が接触したり、第1導入管121と第2導入管の偏心の影響が大きくなったりして、周方向での流量が均一にならなくなるため、下限値を0.6mmとしている。また、第1導入管121の外径と第2導入管122の内径の差が2.0mmより大きいと、流路抵抗が小さすぎて周方向での流量が均一になりにくいため、上限値を2.0mmとしている。
気化器10において、円筒型ヒータ13は、その上端13aが気化室11の上壁11aよりも上方(例えば、30mm)に延在するように設けられている。つまり、気化室11の上壁11aが、円筒型ヒータ13の上端部ではなく、安定した加熱が望める中腹部に対応する位置となるようにしている。
これにより、図2に示すように、気化室11の上壁11aの温度(例えば図1のA点の温度)Tは、側壁11bの温度(例えば図1のB点の温度)Tと同等となる。すなわち、気化室11の上壁11aの温度T1を、固体原料の昇華点よりも高温に保持できるので、上壁11aに固体原料が再固化して付着するのを防止できる。一方で、気化室内壁からの熱は、第2導入管122から導入されたシュラウドガスにより遮断されるので、噴霧ノズル近傍の温度は溶媒の沸点よりも低温に保持される。
ここで、第1導入管121から導入される原料溶液の温度は溶媒の沸点(例えばTHFの沸点:60℃)よりも低温に制御される。また、第2導入管122から導入される不活性ガスの温度は同等又は若干高温(例えば45℃)に制御される。
一方、気化室11の壁体温度は固体原料の昇華点よりも高温で、分解温度よりも低温に制御される。複数の有機金属を含む原料溶液が導入される場合には、昇華点が最も高い有機金属の昇華点よりも高温で、分解温度が最も低い有機金属の分解温度よりも低温になるように制御する。
本実施形態のように多段型のヒータを採用する場合、各ヒータの温度を一律にする必要はない。例えば、上部、中部、下部と3分割のヒータ構成の場合、側壁11bの温度をT(上),T(中),T(下)として、下記の関係が満たされようにヒータ温度を設定すればよい。
固体原料の昇華点<T(上)≦T(中)<固体原料の分解温度
固体原料の昇華点<T(下)≦T(中)<固体原料の分解温度
すなわち、上部のヒータ温度は、第1導入管121が過度に加熱されないように、上壁11aで固体原料の再固化がおこらない程度に、固体原料の昇華点以上でできるだけ低く設定する。一方、中部及び下部のヒータ温度は、噴霧された原料ガスが側壁11b又は低壁11cに衝突して気化するので、固体原料の分解温度以下でできるだけ高く設定する。ただし、気化室10の下部では加熱された不活性ガスが通過し、過昇温になる危険があるので、下部のヒータ温度は中部のヒータ温度より下げた条件で運転するほうが安全である。
例えば、原料溶液にイットリウム(Y)、バリウム(Ba)、銅(Cu)のDPM錯体であるY(DPM),Ba(DPM),Cu(DPM)が含まれている場合、気化室11の壁体温度を210℃以上250℃以下に制御するのが望ましい。本実施形態のように多段型ヒータを用いる場合は、例えば、温度設定を上段:210〜220℃、中段:240℃、下段230℃とすればよい。
ここで、下限温度を210℃とするのは、原料のうち昇華点が最も高いBa(DPM)の昇華点が210℃であるからである。上限温度の250℃は、原料の分解温度を別途実験によって確認して決定した。すなわち、気化器10において、中段/下段の温度をいずれも230℃又は250℃として実際に気化させた場合には、実験後の気化器内壁は茶色くコーティングされた状態になった。これに対して、中段/下段の温度をいずれも270℃とした場合には、茶色くコーティングされたところにさらに白色の紛体が付着していた。これより、270℃以上では原料の分解反応が起こっていると判断し、上限温度を250℃とした。
気化器10においては、第1導入管121及び第2導入管122が円筒型ヒータ13の上部からの熱を受け得る構造となっているので、第1導入管121を流下する原料溶液が所望の温度より高温に加熱され、溶媒が蒸発して固体原料が析出する虞がある。
しかし、導入部12と円筒型ヒータ13(図1では第2導入管122の外壁と円筒型ヒータ13の内壁)によって形成される空間15が空気断熱層(断熱手段)として働き、円筒型ヒータ13からの放射熱は効果的に遮断されるので、上述した問題が生じることはない。
なお、導入部12と円筒型ヒータ13によって形成される空間15に、断熱手段として、断熱材を配設したり、冷媒を循環させる冷却装置(例えば冷却ジャケット)を配設したりすれば、円筒型ヒータ13からの熱をより効果的に遮断することができる。
また、第1導入管121におけるノズル詰まりは、導入する原料溶液の流量と気化器上部温度Tの関係によっても影響を受ける。図6のグラフにノズル詰まりの有無を示す。図6中、○印はノズル詰まりが発生しなかったことを示し、×印はノズル詰まりが発生したことを示す。
図6に示すように、気化器上部温度Tが220℃以上の場合は、原料溶液の流量が1.0g/min以上であればノズル詰まりは発生しないが、1.0g/min未満ではノズル詰まりが発生する。また、気化器上部温度Tが215℃以下の場合は、原料溶液の流量が0.8g/min以上であればノズル詰まりは発生しないが、0.8g/min未満ではノズル詰まりが発生する。
図3は、気化器10を備えたCVD装置の概略構成を示す図である。ここでは、Y系超電導層を成膜する場合に用いられるCVD装置の一例について示している。
図3に示すように、CVD装置1は、気化器10、反応室20、原料溶液供給部30を備えて構成されている。原料溶液供給部30は、原料溶液を貯留する原料容器31〜33と、溶媒を貯留する溶媒容器34とを備えている。原料容器31〜33には、それぞれ溶媒であるTHFにイットリウム(Y)、バリウム(Ba)、銅(Cu)のDPM錯体を溶解させたY(DPM)3/THF,Ba(DPM)2/THF,Cu(DPM)2/THFが貯留されている。また、溶媒容器34には、溶媒であるTHFが貯留されている。
CVD装置1において、原料容器31〜33に貯留されている原料溶液又は溶媒容器34に貯留されている溶媒THFは、Heなどの不活性ガスにより容器内の圧力を上昇させることで容器外へ圧送される。そして、原料溶液輸送管35において、原料溶液Y(DPM)3/THF,Ba(DPM)2/THF,Cu(DPM)2/THFが混合される。
混合された原料溶液は、Ar等の噴霧用ガスと合流して気化器10に導入され、噴霧ノズルから噴霧される。そして、気化器10の内壁に衝突して瞬時に気化され、この気化ガスが図示しないO2ガスとともに原料ガスとして反応室20に供給される。反応室20に導入された原料ガスが基材表面に供給され化学反応することでY系超電導層が形成される。
気化器10において原料ガスの組成が変動する虞は少ないので、所望のY系超電導層を形成することができる。
このように、第1実施形態に係る気化器10によれば、円筒型ヒータ13の上端13aを気化室11の上壁11aよりも上方に延在させるという極めて簡単なヒータ構造により、原料溶液を気化させるときに固体原料が気化室内壁(特に上壁11a)に付着するのを防止することができる。したがって、気化室内壁に固体原料の付着物が発生して原料ガスの組成が変動するのを防止できるので、反応室において良質な薄膜を形成可能となる。また、気化室内壁の付着物を除去するためのメンテナンスを低減できるので、生産性が格段に向上される。
なお、本発明者の実験によると、図5に示す従来の気化器50では250gの原料溶液Y(DPM)3/THF(0.05mol/L)を導入して気化させた時点で気化室51の上壁51aに大量の固体原料の付着物が発生してメンテナンスが必要となった。このとき、原料溶液Y(DPM)3/THF,Ba(DPM)2/THF,Cu(DPM)2/THFの導入モル比は1:2.6:2.4であった。これに対して、第1実施形態の気化器10では1000gの原料溶液を導入して気化させた時点においても、メンテナンスの必要はなく、反応室において良質な超電導層が形成されることが確認されている。
[第2実施形態]
図4は、第2実施形態に係る気化器40の概略構成を示す断面図である。気化器40の基本的な構成は第1実施形態と同様であるので、これらについては説明を省略する。
図4に示すように、第1実施形態の気化器10と比較すると、導入部12の構成が異なっている。すなわち、第2実施形態では、導入部42が、第2導入管422の外側に同心状に配設され、第2導入管422より導入される不活性ガスと異なる不活性ガスを気化室41に向けて導入する第3導入管423を有している。ここで、「異なる不活性ガス」とは、種類が異なる場合はもちろんのこと、種類が同じで温度が異なる場合も含まれる。
第2実施形態では、原料溶液を導入して気化させるときに、第2導入管422から導入されるArガスよりも高温のArガスを第3導入管423から導入する。このとき、第3導入管423から導入されるArガスの温度は、第2導入管422から導入されるArガスの温度よりも100℃高くなるように制御するのが望ましい。
これにより、従来第2導入管422から導入された不活性ガスで冷却されていた第2導入管422の気化器内の開口部が冷却されなくなる。また、第2導入管122から導入されるArガスによって気化室11の壁体が冷却され、昇華点より低温となるのを効果的に防止できる。また、第1実施形態と同様の効果が奏される。
以上、本発明者によってなされた発明を実施形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
上記実施形態では、圧送用ガスとしてHeを用いた例を示したが、ArやN等の不活性ガスを用いることができる。同様に、噴霧用ガスとしてArの代わりにHeやN等の不活性ガスを用いることができる。
また、溶媒としてTHFを用いた例を示したが、キシレン、アルコール類、エーテル類、ケトン類、アミン類等、沸点100℃以下、かつ炭化水素類の有機溶剤を用いることができる。具体的には、ジエチルエーテル、ジエチルケトン、エタノール、テトラグリム(テトラグライム)、2,5,8,11,14−ペンタオキサペンタデカン等を適用できる。
また、上記実施形態では、Y系超電導層の薄膜を形成する場合について説明したが、本発明は、蒸気圧が低く常温固体である原料を使用してMOCVD法により薄膜を形成する場合に共通して適用できる技術である。例えば、固体原料として、酸素原子を介して金属原子と有機基とが結合した有機金属原料を使用する場合に適用できる。ここで、有機基は、アセチルアセトネート、ジピバロイルメタネート、アルコキシド、ヘキサフルオロアセチルアセトネート、ペンタフルオロプロパノイルピバロイルメタネートのいずれかであればよい。
また、チタン酸バリウムやチタン酸ストロンチウムのような強誘電体の薄膜を形成する際の原料としては、バリウムジピバロイルメタネート「Ba(DPM)2」、ストロンチウムジピバロイルメタネート「Sr(DPM)2」、ビス(ジピバロイルメタネート)ジイソプロポキシチタニウム「Ti(iPrO)2(DPM)2」等が挙げられる。また、TTIP(Titanium Tetra Isopropoxide「Ti(OC374」)等をTHFに溶解させた原料でもよい。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1 CVD装置
10 気化器
11 気化室
12 導入部
13 ヒータ
14 導出部(導出管)
15 断熱手段
20 反応室
30 原料溶液供給部
121 第1導入管
122 第2導入管

Claims (12)

  1. 両端を閉塞された中空円筒型状の気化室と、
    前記気化室内に液体又は気体を導入する導入部と、
    前記気化室において気化された原料ガスを外部に導出する導出部と、
    前記気化室を加熱するために前記気化室の外周に設けられた円筒型ヒータと、を備えた気化器において、
    前記導入部は、前記気化室の上壁に中心軸を一致させて設けられ、先端部から前記気化室内に向けて原料溶液を噴霧する第1導入管と、この第1導入管の外側に同心状に設けられ、前記気化室内に向けて不活性ガスを導入する第2導入管とを有して構成され、
    前記円筒型ヒータは、その上端が前記気化室の上壁よりも上方に延在するように設けられていることを特徴とする気化器。
  2. 前記第1導入管は、前記先端部が前記気化室の上壁より下方に突出して設けられていることを特徴とする請求項1に記載の気化器。
  3. 前記導入部と前記円筒型ヒータによって形成される空間に、前記円筒型ヒータからの熱の流入を遮断する断熱手段が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の気化器。
  4. 前記断熱手段として断熱材を配設したことを特徴とする請求項3に記載の気化器。
  5. 前記断熱手段として冷媒を循環させる冷却ジャケットを配設したことを特徴とする請求項3に記載の気化器。
  6. 前記第1導入管と前記第2導入管からなる二重構造の長さが25mm以上であり、
    前記第1導入管の外径と前記第2導入管の内径の差が0.6〜2.0mmであることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の気化器。
  7. 前記導入部は、前記第2導入管の外側に同心状に配設され、前記第2導入管より導入される不活性ガスと異なる不活性ガスを前記気化室内に向けて導入する第3導入管を有することを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の気化器。
  8. 請求項1から7のいずれか一項に記載の気化器を用い、前記第1導入管に溶媒に固体原料を溶解させた原料溶液を導入して前記反応室内に噴霧するとともに、前記第2導入管から前記反応室内に不活性ガスを導入し、前記噴霧された原料溶液を気化させる際、
    前記気化室の壁体温度が前記固体原料の昇華点以上分解温度以下となるように、前記円筒型ヒータの出力を制御することを特徴とする気化方法。
  9. 請求項7に記載の気化器を用い、前記第1導入管に溶媒に固体原料を溶解させた原料溶液を導入して前記反応室内に噴霧するとともに、前記第2導入管から前記反応室内に不活性ガスを導入し、前記噴霧された原料溶液を気化させる際、
    前記第2導入管から導入される不活性ガスよりも高温の不活性ガスを前記第3導入管から導入することを特徴とする気化方法。
  10. 前記第2導入管又は前記第3導入管から導入される不活性ガスはArガスであることを特徴とする請求項8又は9に記載の気化方法。
  11. 前記溶媒はTFHであることを特徴とする請求項8から10のいずれか一項に記載の気化方法。
  12. 請求項1から7に記載の気化器と、
    前記気化器に原料溶液を供給する原料溶液供給部と、
    前記気化器によって気化された原料ガスを基材表面に供給し化学反応させることにより薄膜を形成する反応室と、を備えることを特徴とするCVD装置。
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