JP2011088358A - ポリカーボネート樹脂積層体 - Google Patents

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Abstract

【課題】延伸、折り曲げ、衝撃を受けた時およびまたは長時間湿熱条件下に置かれた時に白化しない、ポリカーボネート樹脂層とアクリル系樹脂組成物からなる層とを有するポリカーボネート樹脂積層体を提供する。
【解決手段】アクリル系樹脂組成物は、メタクリル系樹脂(A)と、ポリビニルアルコール樹脂をアルデヒドでアセタール化してなるポリビニルアセタール樹脂(B)とを、99/1〜51/49の質量比(A)/(B)で、せん断速度100sec-1以上の条件で溶融混練してメタクリル系樹脂(A)が連続相を形成して成るものであり、且つ前記ポリビニルアセタール樹脂(B)は、アルデヒドでアセタール化された繰返し単位が全繰返し単位に対して65〜85モル%含まれ且つ炭素数4以上のアルデヒドでアセタール化された繰返し単位/炭素数3以下のアルデヒドでアセタール化された繰返し単位のモル比が90/10〜0/100のものである。
【選択図】なし

Description

本発明は、ポリカーボネート樹脂積層体に関する。より詳細に、本発明は、ポリカーボネート樹脂層とアクリル系樹脂組成物の層とを有する積層体であり、高い透明性を有し、表面平滑性に優れ、表面硬度と靭性若しくは耐衝撃性とのバランスに優れ、しかも延伸した時、折り曲げた時、衝撃を受けた時および/または長時間湿熱条件下に置かれた時にアクリル系樹脂組成物層が白化しないポリカーボネート樹脂積層体に関する。
また、本発明は、ポリカーボネート樹脂層と紫外線吸収剤を含有したアクリル系樹脂組成物の層とを有する積層体であり、上記特長に加えて、優れた耐候性を有するポリカーボネート樹脂積層体に関する。
ポリカーボネート樹脂は、優れた透明性および耐衝撃性を有し、熱変形温度が高く、寸法安定性、加工性及び自己消火性に優れていることから、窓ガラス材料や光学材料として多くの分野で使用されている。しかしながら、ポリカーボネート樹脂は、表面硬度が劣るため傷つきやすく、また耐候性に劣るため直射日光などに曝される屋外で使用すると衝撃強度が低下したり、変色したりすることがあった。
これらの点の改善を試みた積層体として、例えば、特許文献1には、ポリカーボネート樹脂層を(メタ)アクリレートの重合体からなる層で被覆してなる積層体が開示されている。また特許文献2には、ポリカーボネート樹脂シートの片面または両面に、ガラス転移温度が40〜90℃で分子量400以上の紫外線吸収剤を0.5〜5.0g/m2で含有するアクリル樹脂層を設けた積層体が開示されている。
しかしながら、前記特許文献に記載されている積層体は、延伸時、折り曲げ時および/または衝撃を受けた時に、(メタ)アクリル系樹脂層が割れやすく、例えば、携帯電話の前面板等の薄板用途において求められている、衝撃強度、曲げ強度または表面硬度を、十分に満足させるものでなかった。
特許文献3には、芳香族ポリカーボネート層の上に、ガラス転移温度が10℃以下のポリマー(I)とガラス転移温度が30℃以上のメチルメタクリレート共重合体(II)とからなる二相混合ポリマーの層を被覆させてなる積層体が記載されている。該ポリマー(I)として、エチレン−プロピレン−ジエンからなるターポリマーや、ブチルアクリレートを基礎とするアクリレート弾性ゴムが開示されている。また、二相混合ポリマーとして、コアが共重合体(II)からなり、シェルがポリマー(I)からなるコア−シェル型粒子構造のものが開示されている。特許文献3の手法によって得られた積層体は、延伸時、折り曲げ時および/または衝撃を受けた時でも二相混合ポリマーの層に割れが生じ難くなっているが、白化しやすく、透明性が低下することがあった。また、該積層体においてコア−シェル型粒子を用いると、該粒子に起因して、表面平滑性が低下したり、ヘイズが高くなることがあった。
特開昭55−59929号公報 特開平4−270652号公報 特開平2−175245号公報
本発明の目的は、高い透明性を有し、表面平滑性に優れ、表面硬度と靭性若しくは耐衝撃性とのバランスに優れ、しかも延伸した時、折り曲げた時、衝撃を受けた時および/または長時間湿熱条件下に置かれた時にアクリル系樹脂組成物層が白化しないポリカーボネート樹脂積層体を提供することにある。
本発明者は、上記目的を達成するために、鋭意検討した結果、ポリカーボネート樹脂層の少なくとも一方の面に、特定のメタクリル系樹脂(A)と特定のポリビニルアセタール樹脂(B)とを強いせん断を掛けて溶融混練して得られるアクリル系樹脂組成物からなる厚さ5〜200μmの層を積層させることによって、高い透明性を有し、表面平滑性に優れ、表面硬度と靭性若しくは耐衝撃性とのバランスに優れ、しかも延伸した時、折り曲げた時、衝撃を受けた時および/または長時間湿熱条件下に置かれた時にアクリル系樹脂組成物層が白化しないポリカーボネート樹脂積層体が得られることを見出した。本発明は、この知見に基づきさらに検討し、完成するに至ったものである。
すなわち、本発明は、 ポリカーボネート樹脂層とアクリル系樹脂組成物からなる厚さ5〜200μmの層とを有するポリカーボネート樹脂積層体であって、
前記アクリル系樹脂組成物は、重量平均分子量40000以上のメタクリル系樹脂(A)と、粘度平均重合度200〜4000のポリビニルアルコール樹脂をアルデヒドでアセタール化してなるポリビニルアセタール樹脂(B)とを、99/1〜51/49の質量比(A)/(B)で、せん断速度100sec-1以上の条件で溶融混練してメタクリル系樹脂(A)が連続相を形成して成るものであり、且つ
前記ポリビニルアセタール樹脂(B)は、アルデヒドでアセタール化された繰返し単位が、全繰返し単位に対して65〜85モル%含まれ且つ炭素数4以上のアルデヒドでアセタール化された繰返し単位/炭素数3以下のアルデヒドでアセタール化された繰返し単位のモル比が90/10〜0/100のものである、ポリカーボネート樹脂積層体 である。
本発明に係るポリカーボネート樹脂積層体は、高い透明性を有し、表面平滑性に優れ、表面硬度と靭性(低速引張靭性)若しくは耐衝撃性とのバランスに優れ、しかも延伸した時、折り曲げた時、衝撃を受けた時および/または長時間湿熱条件下に置かれた時にアクリル系樹脂組成物層が白化しない。また、ポリカーボネート樹脂に積層させるアクリル系樹脂組成物の層に紫外線吸収剤を含有させることによって、上記の特長に加え、優れた耐候性を有する積層体が得られる。
本発明に係るポリカーボネート樹脂積層体は、各種グレージング材、光学部材、LCDやEL表示用保護シート、看板、自動車の窓材、防音壁、自動販売機の前面板、カーポート等の分野において好適に使用できる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の積層体は、ポリカーボネート樹脂からなる層とアクリル系樹脂組成物からなる層とを備えてなるものである。
本発明に用いられるポリカーボネート樹脂は、特に制限されない。ポリカーボネート樹脂は、多官能ヒドロキシ化合物と炭酸エステル形成性化合物との反応によって得られる重合体である。
多官能ヒドロキシ化合物としては、置換基を有していてもよい4,4'−ジヒドロキシビフェニル類;置換基を有していてもよいビス(ヒドロキシフェニル)アルカン類;置換基を有していてもよいビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル類;置換基を有していてもよいビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド類;置換基を有していてもよいビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド類;置換基を有していてもよいビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン類;置換基を有していてもよいビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン類;置換基を有していてもよいビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン類;置換基を有していてもよいジヒドロキシ−p−ターフェニル類;置換基を有していてもよいジヒドロキシ−p−クォーターフェニル類;置換基を有していてもよいビス(ヒドロキシフェニル)ピラジン類;置換基を有していてもよいビス(ヒドロキシフェニル)メンタン類;置換基を有していてもよいビス〔2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル〕ベンゼン類;置換基を有していてもよいジヒドロキシナフタレン類;置換基を有していてもよいジヒドロキシベンゼン類;置換基を有していてもよいポリシロキサン類;置換基を有していてもよいジヒドロパーフルオロアルカン類などが挙げられる。
これらの多官能ヒドロキシ化合物の中でも、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−フェニルフェニル)プロパン、4,4'−ジヒドロキシビフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、4,4'−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、α,ω−ビス〔3−(2−ヒドロキシフェニル)プロピル〕ポリジメチルシロキサン、レゾルシン、2,7−ジヒドロキシナフタレンが好ましく、特に2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンが好ましい。
炭酸エステル形成性化合物としては、ホスゲンなどの各種ジハロゲン化カルボニルや、クロロホーメートなどのハロホーメート、ビスアリールカーボネートなどの炭酸エステル化合物が挙げられる。この炭酸エステル形成性化合物の量は、反応の化学量論比(当量)を考慮して適宜調整すればよい。
多官能ヒドロキシ化合物と炭酸エステル形成性化合物との反応は、通常、酸結合剤の存在下に溶媒中で行われる。酸結合剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化セシウムなどのアルカリ金属水酸化物や、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属炭酸塩や、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、ピリジン、ジメチルアニリンなどの三級アミン、トリメチルベンジルアンモニウムクロライド、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド、トリブチルベンジルアンモニウムクロライド、トリオクチルメチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムブロマイドなどの四級アンモニウム塩、テトラブチルホスホニウムクロライド、テトラブチルホスホニウムブロマイドなどの四級ホスホニウム塩などが挙げられる。さらに、所望により、この反応系に亜硫酸ナトリウムやハイドロサルファイドなどの酸化防止剤を少量添加してもよい。酸結合剤の量は、反応の化学量論比(当量)を考慮して適宜調整すればよい。具体的には、原料の多官能ヒドロキシ化合物の水酸基1モル当たり、1当量もしくはそれより過剰な量、好ましくは1〜5当量の酸結合剤を使用すればよい。
また、反応には、公知の末端停止剤や分岐剤を用いることができる。末端停止剤としては、p−tert−ブチル−フェノール、p−フェニルフェノール、p−クミルフェノール、p−パーフルオロノニルフェノール、p−(パーフルオロノニルフェニル)フェノール、p−(パーフルオロキシルフェニル)フェノール、p−tert−パーフルオロブチルフェノール、1−(p−ヒドロキシベンジル)パーフルオロデカン、p−〔2−(1H,1H−パーフルオロトリドデシルオキシ)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロピル〕フェノール、3,5−ビス(パーフルオロヘキシルオキシカルボニル)フェノール、p−ヒドロキシ安息香酸パーフルオロドデシル、p−(1H,1H−パーフルオロオクチルオキシ)フェノール、2H,2H,9H−パーフルオロノナン酸、1,1,1,3,3,3−テトラフロロ−2−プロパノールなどが挙げられる。
分岐剤としては、フロログリシン、ピロガロール、4,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−2−ヘプテン、2,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−3−ヘプテン、2,4−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,3,5−トリス(2−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,3,5−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、トリス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2−ビス〔4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル〕プロパン、2,4−ビス〔2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル〕フェノール、2,6−ビス(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェノール、2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)プロパン、テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、テトラキス〔4−(4−ヒドロキシフェニルイソプロピル)フェノキシ〕メタン、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、トリメシン酸、シアヌル酸、3,3−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−オキソ−2,3−ジヒドロインドール、3,3−ビス(4−ヒドロキシアリール)オキシインドール、5−クロロイサチン、5,7−ジクロロイサチン、5−ブロモイサチンなどが挙げられる。
ポリカーボネート樹脂は、ポリカーボネート単位以外に、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエーテルもしくはポリシロキサン構造を有する単位を含有しているものであってもよい。
本発明に好適に用いられるポリカーボネート樹脂は、その分子量によって特に制限されないが、押し出し成形による製造の容易さの観点から、粘度平均分子量が13000〜30000程度のもの、あるいは250℃、100sec-1における溶融粘度が13000〜60000ポイズ程度のものが好ましい。分子量の調節は末端停止剤や分岐剤の量を調整することによって行うことができる。
本発明で用いられるポリカーボネート樹脂には、必要に応じて各種の添加剤、例えば、酸化防止剤、安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、加工助剤、帯電防止剤、着色剤、耐衝撃助剤、発泡剤、充填剤、艶消し剤などが配合されていてもよい。
なお、本発明のポリカーボネート樹脂積層体の力学物性および表面硬度の観点から、ポリカーボネート樹脂は軟化剤や可塑剤を多量に含まないことが好ましい。
ポリカーボネート樹脂層の形状は、特に制限されないが、フィルム、シートまたは板などの薄く広い面積を有するものが好ましい。
ポリカーボネート樹脂層の厚さは、特に制限はないが、通常、0.05〜20mm、好ましくは0.1〜10mmであり、さらに好ましくは、0.2〜10mmである。
ポリカーボネート樹脂層のアクリル系樹脂組成物からなる層と接する側の面は、密着性を高めるために表面処理が為されていてもよい。表面処理としては、コロナ放電処理、プラズマ処理などが挙げられる。
本発明に用いられるアクリル系樹脂組成物は、メタクリル系樹脂(A)とポリビニルアセタール樹脂(B)とを溶融混練してなるものである。
本発明に用いられるメタクリル系樹脂(A)は、メタクリル酸エステルを含有する単量体混合物を重合することによって得られる。
メタクリル酸エステルとしては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、sec−ブチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、ペンチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、ミリスチルメタクリレート、パルミチルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、ベヘニルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、フェニルメタクリレートなどが挙げられる。これらのメタクリル酸エステルは単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。これらのうち、アルキル基の炭素数が1〜4であるアルキルメタクリレートが好ましく、メチルメタクリレートが特に好ましい。
メタクリル酸エステル以外の単量体としては、アクリル酸エステルが挙げられる。
アクリル酸エステルとしては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、sec−ブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、ペンチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ドデシルアクリレート、ミリスチルアクリレート、パルミチルアクリレート、ステアリルアクリレート、ベヘニルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、フェニルアクリレートなどが挙げられる。これらのうち、アルキル基の炭素数が1〜8であるアルキルアクリレートが好ましい。これらのアクリル酸エステルは単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
またメタクリル系樹脂(A)は、メタクリル酸エステル及びアクリル酸エステルと共重合可能な他のエチレン性不飽和単量体を共重合させたものであってもよい。メタクリル酸エステル及びアクリル酸エステルと共重合可能なエチレン性不飽和単量体としては、1,3−ブタジエン、イソプレンなどのジエン系化合物;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、2,4−ジメチルスチレン、ハロゲンで核置換されたスチレン、1−ビニルナフタレン、4−メチルスチレン、4−プロピルスチレン、4−シクロヘキシルスチレン、4−ドデシルスチレン、2−エチル−4−ベンジルスチレン、4−(フェニルブチル)スチレンなどのビニル芳香族化合物;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのエチレン性不飽和ニトリル類;アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、メタクリルアミド、無水マレイン酸、マレイン酸イミド、モノメチルマレエート、ジメチルマレエートなどを挙げることができる。
これらのエチレン性不飽和単量体は単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
本発明に用いられるメタクリル系樹脂(A)は、メタクリル酸エステル単位の割合が、耐候性の観点から、50〜100質量%であることが好ましく、80〜99.9質量%であることがより好ましい。
また、メタクリル系樹脂(A)は、耐熱性の観点から0.1〜20質量%の範囲でアクリル酸エステル単位を含有することが好ましい。
本発明に用いられるメタクリル系樹脂(A)は、強度特性および溶融性の点から、重量平均分子量が、40,000以上、好ましくは40,000〜1,000,000であり、より好ましくは80,000〜500,000である。本発明に用いられるメタクリル系樹脂(A)は、分子鎖が線状のものであっても良いし、分子鎖に分岐を有するものであっても良いし、分子鎖に環状構造を有するものであっても良い。
本発明に用いられるメタクリル系樹脂(A)は、α,β−不飽和化合物を重合させることができる方法であれば特にその製法によって制限されないが、ラジカル重合によって製造されたものが好ましい。重合法としては、塊状重合、懸濁重合、溶液重合、乳化重合などが挙げられる。
重合時に用いられるラジカル重合開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスγ−ジメチルバレロニトリルなどのアゾ化合物;ベンゾイルパーオキサイド、クミルパーオキサイド、オキシネオデカノエート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、t−ブチルクミルパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイドなどの過酸化物が挙げられる。重合開始剤は、全単量体100質量部に対して、通常0.05〜0.5質量部用いられる。重合は、通常50〜140℃の温度で、通常2〜20時間行われる。
メタクリル系樹脂(A)の分子量を制御するために、連鎖移動剤を使用することができる。連鎖移動剤としては、メチルメルカプタン、エチルメルカプタン、イソプロピルメルカプタン、n−ブチルメルカプタン、t−ブチルメルカプタン、n−ヘキシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、エチルチオグリコエート、メルカプトエタノール、チオ−β−ナフトール、チオフェノール等が挙げられる。連鎖移動剤は、全単量体に対して、通常0.005〜0.5質量%の範囲で使用される。
ポリビニルアセタール樹脂(B)は、通常、化1に表される繰り返し単位を有する樹脂である。
Figure 2011088358
化1中、R3はアセタール化反応に用いた炭素数3以下のアルデヒド由来のアルキル残基または水素原子、R4はアセタール化反応に用いた炭素数4以上のアルデヒド由来のアルキル残基(なお、アルキル残基R3およびR4の炭素数は、アセタール化反応に用いたアルデヒドの炭素数から1を引いた整数iとなる。iがゼロのときはR3は水素原子である。)、k3は炭素数3以下のアルデヒドでアセタール化されたビニルアルコール単位のモル割合、k4は炭素数4以上のアルデヒドでアセタール化されたビニルアルコール単位のモル割合、lはビニルアルコール単位のモル割合、mは酢酸ビニル単位のモル割合である。ただし、lおよび/またはmはゼロであってもよい。
各繰返し単位は、化1に示す配列順序によって特に制限されず、ランダムに配列されていてもよいし、ブロック状に配列されていてもよいし、テーパー状に配列されていてもよい。
なお、繰返し単位のモル%は、ポリビニルアセタール樹脂の製造原料であるポリビニルアルコール樹脂中の主鎖の炭素2個からなる単位(例えば、ポリビニルアルコール単位、酢酸ビニル単位、エチレン単位など)を一繰返しとして計算されたものである。例えば、化1に示すポリビニルアセタール樹脂では、全繰返し単位(=k3+k4+l+m)に対する、炭素数3以下のアルデヒドでアセタール化された繰返し単位のモル%(k(AA))が、式:(k3/(k3+k4+l+m))×100 によって求められ、炭素数4以上のアルデヒドでアセタール化された繰返し単位のモル%(k(BA))が、式:(k4/(k3+k4+l+m))×100 によって求められ、ビニルアルコールの繰返し単位のモル%(k(VA))が、式:(l/(k3+k4+l+m))×100 によって求められ、酢酸ビニルの繰返し単位のモル%(k(AV))が、式:(m/(k3+k4+l+m))×100 によって求められる。
本発明に用いられるポリビニルアセタール樹脂(B)は、ポリビニルアルコール樹脂をアルデヒドでアセタール化することによって得ることができる。
ポリビニルアセタール樹脂(B)の製造に用いられるポリビニルアルコール樹脂は、粘度平均重合度が、200〜4,000、好ましくは300〜3,000、より好ましくは500〜2,000である。ポリビニルアルコール樹脂の粘度平均重合度が200未満であると、得られるポリビニルアセタール樹脂の力学物性が不足し、本発明のポリカーボネート樹脂積層体の力学物性、特に靭性が不足する傾向がある。一方、ポリビニルアルコール樹脂の粘度平均重合度が4,000を超えるとアクリル系樹脂組成物を溶融混練する際の溶融粘度が高くなり、製造が困難になる傾向がある。
ポリビニルアルコール樹脂は、その製法によって特に限定されず、例えば、ポリ酢酸ビニル等をアルカリ、酸、アンモニア水等を用いてけん化することによって製造されたものを用いることができる。
ポリビニルアルコール樹脂は、完全けん化されたものであってもよいが、部分的にけん化されたもの、すなわち部分けん化ポリビニルアルコール樹脂であってもよい。けん化度は80mol%以上であることが好ましく、97モル%以上であることがさらに好ましく、99.5モル%以上であることが特に好ましい。
また、上記ポリビニルアルコール樹脂として、エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂、部分けん化エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂等の、ビニルアルコール単位とこれに共重合可能なモノマー単位とからなる共重合体を用いることができる。さらに、一部にカルボン酸等が導入された変性ポリビニルアルコール樹脂を用いることができる。
これらポリビニルアルコール樹脂は、一種単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
ポリビニルアセタール樹脂(B)の製造に用いられる炭素数3以下のアルデヒドとしては、例えばホルムアルデヒド(パラホルムアルデヒドを含む)、アセトアルデヒド(パラアセトアルデヒドを含む)、プロピオンアルデヒドなどが挙げられる。これら炭素数3以下のアルデヒドは1種単独で若しくは2種以上を組み合わせて用いることができる。これら炭素数3以下のアルデヒドのうち、製造の容易さの観点から、アセトアルデヒド(パラアセトアルデヒドを含む)およびホルムアルデヒド(パラホルムアルデヒドを含む)を主体とするものが好ましく、アセトアルデヒドが特に好ましい。
ポリビニルアセタール樹脂(B)の製造に用いられる炭素数4以上のアルデヒドとしては、ブチルアルデヒド、n−オクチルアルデヒド、アミルアルデヒド、ヘキシルアルデヒド、ヘプチルアルデヒド、2−エチルヘキシルアルデヒド、シクロヘキシルアルデヒド、フルフラール、グリオキザール、グルタルアルデヒド、ベンズアルデヒド、2−メチルベンズアルデヒド、3−メチルベンズアルデヒド、4−メチルベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、m−ヒドロキシベンズアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、β−フェニルプロピオンアルデヒド等が挙げられる。これら炭素数4以上のアルデヒドは1種単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。これらアルデヒドのうち、製造の容易度の観点から、ブチルアルデヒドを主体とするものが好ましく、ブチルアルデヒドが特に好ましい。
ポリビニルアルコール樹脂のアセタール化を、ブチルアルデヒドで行った場合、アセタール化されたビニルアルコールの繰返し単位のモル割合はブチラール化度と呼ばれる。また、アセトアルデヒドでアセタール化されたビニルアルコールの繰返し単位のモル割合はアセトアセタール化度、ホルムアルデヒドでアセタール化されたビニルアルコールの繰返し単位のモル割合はホルマール化度と呼ばれる。
例えば、ブチルアルデヒド、アセトアルデヒドおよびホルムアルデヒドでアセタール化して得られたポリビニルアセタール樹脂において、ブチルアルデヒドでアセタール化して得られたビニルアセタール単位のモル割合をk(BA)、アセトアルデヒドでアセタール化して得られたビニルアセタール単位のモル割合をk(AA)、ホルムアルデヒドでアセタール化して得られたビニルアセタール単位のモル割合をk(FA)、ビニルアルコール単位のモル割合をl、および酢酸ビニル単位のモル割合をmであるとしたとき、ブチラール化度は、 式:(k(BA)/{k(BA)+k(AA)+k(FA)+l+m})×100で求められる。アセトアセタール化度は、式:(k(AA)/{k(BA)+k(AA)+k(FA)+l+m})×100で求められる。ホルマール化度は、式:(k(FA)/{k(BA)+k(AA)+k(FA)+l+m})×100で求められる。
ポリビニルアルコール樹脂のアセタール化反応は、公知の方法で行うことができる。例えば、ポリビニルアルコール樹脂の水溶液とアルデヒドとを酸触媒の存在下、アセタール化反応させて樹脂粒子を析出させる水媒法;ポリビニルアルコール樹脂を有機溶媒中に分散させ、酸触媒の存在下、アルデヒドでアセタール化反応させ、この反応液をポリビニルアセタール樹脂に対して貧溶媒である水等により析出させる溶媒法などが挙げられる。これらの方法のうちで水媒法が好ましい。
アセタール化に用いられるアルデヒドは、すべてを同時に仕込んでも良いし、1種類づつを別々に仕込んでも良い。また、酸触媒の添加も、全てを同時に仕込んでも良いし、1種類づつを別々に仕込んでも良い。さらに、アルデヒドと酸触媒の添加順序も特に制限されない。
アセタール化反応に用いる酸触媒は特に限定されず、例えば、酢酸、p−トルエンスルホン酸等の有機酸類;硝酸、硫酸、塩酸等の無機酸類;炭酸ガス等の水溶液にした際に酸性を示す気体;陽イオン交換体や金属酸化物等の固体酸触媒などが挙げられる。
ポリビニルアセタール樹脂(B)の炭素数4以上のアルデヒドおよび炭素数3以下のアルデヒドでアセタール化された繰返し単位の合計(総アセタール化度)は、JIS K6728(1977年)に記載の方法に則って、ビニルアルコール単位の質量割合(l0)および酢酸ビニル単位の割合(m0)を滴定によって求め、アセタール化されたビニルアルコール単位の質量割合(k0)をk0=1−l0−m0によって求め、これからビニルアルコール単位のモル割合(l)および酢酸ビニル単位のモル割合(m)を計算し、k=1−l−mの計算式によりアセタール化されたビニルアルコール単位のモル割合(k)を計算し、総アセタール化度(mol%)=k/(k+l+m)×100によって求めても良いし、ポリビニルアセタール樹脂を重水素化ジメチルスルフォキサイドに溶解し、1H−NMR、13C−NMRを測定して算出しても良い。
本発明に用いられるポリビニルアセタール樹脂(B)は、炭素数4以上のアルデヒドおよび炭素数3以下のアルデヒドでアセタール化された繰返し単位の合計(総アセタール化度)が、全繰返し単位に対して65〜85モル%、好ましくは70〜85モル%、より好ましくは80〜85モル%である。アセタール化された繰返し単位の合計が全繰返し単位に対して65モル%を下回ると、本発明に係るアクリル系樹脂成形体の力学物性、特に靭性と耐衝撃性が不足する。一方、85モル%を超えるポリビニルアセタール樹脂を製造する場合には非常に長い時間を要するため、経済的に不利である。
総アセタール化度が上記範囲にあるポリビニルアセタール樹脂を用いると、力学特性、特に靭性に優れたポリカーボネート樹脂積層体を容易に且つ安価に得ることができる。また、総アセタール化度が上記範囲にあるポリビニルアセタール樹脂を用いると、メタクリル系樹脂(A)の屈折率とポリビニルブチラールの屈折率との差が小さくなり、メタクリル系樹脂(A)の特長である透明性(高可視光線透過率・低ヘイズ)が保持されやすい。さらに、延伸した際、折り曲げた際、衝撃を受けた際および/または長時間湿熱条件下に置かれた際にほとんど白化しないという特長があらわれやすい。
また、好適なポリビニルアセタール樹脂(B)は、ビニルアルコール単位を通常17〜45モル%含み、ビニルアセテート単位を通常0〜5モル%、好ましくは0〜3モル%含む。
水媒法及び溶媒法等において生成したポリビニルアセタール樹脂(B)のスラリーは、通常、酸触媒によって酸性を呈している。酸触媒を除去する方法として、該スラリーの水洗を繰り返し、pHを通常5〜9、好ましくは6〜9、さらに好ましくは6〜8に調整する方法;該スラリーに中和剤を添加して、pHを通常5〜9、好ましくは6〜9、さらに好ましくは6〜8に調整する方法;アルキレンオキサイド類等を添加する方法などが挙げられる。
上記酸触媒除去のために用いる化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属化合物やアンモニア、アンモニア水溶液が挙げられる。また、アルキレンオキサイド類としては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド;エチレングリコールジグリシジルエーテル等のグリシジルエーテル類が挙げられる。
次に中和により生成した塩、アルデヒドの反応残渣などを除去する。除去方法は特に制限されず、脱水と水洗を繰り返すなどの方法が通常用いられる。
残渣等が除去された含水状態のポリビニルアセタール樹脂は、必要に応じて乾燥され、さらに、必要に応じてパウダー状、顆粒状あるいはペレット状に加工され、成形に供される。パウダー状、顆粒状あるいはペレット状に加工される際に、減圧状態で脱気することによりアルデヒドの反応残渣や水分などを低減しておくことが好ましい。
本発明に用いられるアクリル系樹脂組成物は、メタクリル系樹脂(A)によって連続相が形成されているものである。メタクリル系樹脂(A)が連続相を形成することによって積層体の耐熱性、表面硬度及び剛性が良好となる。
本発明に用いられるメタクリル系樹脂(A)およびポリビニルアセタール樹脂(B)は、メタクリル系樹脂(A)の主分散ピーク温度(TαA)とポリビニルアセタール樹脂(B)の主分散ピーク温度(TαB)との間に、90℃≦TαB≦TαAまたは90℃≦TαA≦TαBの関係を持つものが好ましく、95℃≦TαB≦TαAまたは95℃≦TαA≦TαB
関係を持つことがさらに好ましく、110℃≦TαB≦TαAまたは110℃≦TαA≦TαBの関係を持つことがさらに好ましい。TαAまたはTαBが90℃を下回ると、本発明に用いられるアクリル系樹脂組成物の耐熱性が低下する傾向となる。
アクリル系樹脂組成物の主分散ピーク温度には、メタクリル系樹脂(A)に起因する主分散ピーク温度(TαAP)と、ポリビニルアセタール樹脂(B)に起因する主分散ピーク温度(TαBP)とがある。
本発明に好ましい態様のアクリル系樹脂組成物は、アクリル系樹脂組成物中のメタクリル系樹脂(A)に起因する主分散ピーク温度TαAPが、メタクリル系樹脂(A)単独での主分散ピーク温度(TαA)とポリビニルアセタール樹脂(B)単独での主分散ピーク温度(TαB)との間の値となるものである。すなわち、TαB<TαAP<TαA、又はTαA<TαAP<TαBの関係を満たしている。このような関係を満たすTαAPを持つアクリル系樹脂組成物は、メタクリル系樹脂(A)とポリビニルアセタール樹脂(B)とが部分的に相溶した状態になっていると考えられる。
なお、本発明において、メタクリル系樹脂(A)が二つ以上のメタクリル系樹脂の組み合わせである場合、その組み合わせたもののうちのいずれか一つの主分散ピーク温度をTαAとし、ポリビニルアセタール樹脂(B)が二つ以上のポリビニルアセタール樹脂の組み合わせである場合は、その組み合わせたもののうちのいずれか一つの主分散ピーク温度をTαBとし、上記関係、すなわちTαB<TαAP<TαA、又はTαA<TαAP<TαBの関係を満たしていることが好ましい。
また、アクリル系樹脂組成物は、TαAP=TαBPであることが好ましい。さらに、TαB<TαAP=TαBP<TαA、又はTαA<TαAP=TαBP<TαBの関係を満たすことが好ましい。
TαAP=TαA、TαBP=TαBとなる場合は、アクリル系樹脂組成物中のメタクリル系樹脂(A)とポリビニルアセタール樹脂(B)とが完全な相溶状態になっていることを示している。
詳細な理由は明らかではないが、メタクリル系樹脂(A)とポリビニルアセタール樹脂(B)とが部分相溶である場合、アクリル系樹脂組成物は、耐熱性、表面硬度及び剛性がメタクリル系樹脂とほぼ同等であり、且つ延伸した時、折り曲げた時、衝撃を受けた時および/または長時間湿熱条件下に置かれた時に白化し難くなっている。また、靭性、取扱い性なども優れている。
一方、メタクリル系樹脂(A)とポリビニルアセタール樹脂(B)とが完全相溶でTαB<TαAである場合には耐熱性が低下傾向になる。メタクリル系樹脂(A)とポリビニルアセタール樹脂(B)とが完全非相溶である場合は、強度が低下したり、白化したりするようになる。
本発明に用いられるアクリル系樹脂組成物は、メタクリル系樹脂(A)が連続相を形成している。メタクリル系樹脂(A)が連続相を形成することにより、メタクリル系樹脂(A)に由来する良好な耐熱性および高い表面硬度を持ったポリカーボネート樹脂積層体が得られる。
アクリル系樹脂組成物は、四酸化ルテニウムで電子染色したときに透過型電子顕微鏡にて観察される、染色された分散相が存在することが好ましい。該分散相は小さい方が好ましく、平均径は通常200nm以下、好ましくは100nm以下、特に好ましくは50nm以下である。なお、50nm以下という場合には、二つの成分が互いに完全相溶して、分散粒子が観察されない場合をも含む。
染色された分散相には、ポリビニルアセタール樹脂(B)が含まれていると考えられる。一方、染色されていない連続相はメタクリル系樹脂(A)によって形成されていると考えられる。
なお、アクリル系樹脂組成物の相構造の観察は、まずミクロトームを用いて超薄切片を作製し、次いで四酸化ルテニウムで電子染色し、透過型電子顕微鏡を用いて行う。
アクリル系樹脂組成物において、メタクリル系樹脂(A)とポリビニルアセタール樹脂(B)との質量比(A)/(B)は、99/1〜51/49であり、好ましくは95/5〜60/40であり、より好ましくは90/10〜60/40である。このような質量比にするとアクリル系樹脂組成物の靭性、耐衝撃性、表面硬度および剛性が良好となる。
ポリビニルアセタール樹脂(B)の割合が1質量%を下回ると、本発明の積層体の靭性や耐衝撃性などの力学物性の改善効果が低下傾向になる。一方、ポリビニルアセタール樹脂(B)の割合が49質量%を上回ると、本発明の積層体の表面硬度および剛性が不足する傾向になる。
本発明に好ましく用いられるアクリル系樹脂組成物は、JIS K7171にしたがって、長さ80mm×幅10mm×厚さ4mmの試験片を用いて歪み速度1mm/min.で試験した際の曲げ弾性率、および、JIS K7162にしたがって、1A形ダンベル状試験片を用いて歪み速度1mm/min.で試験した際の引張り弾性率、の少なくとも一方が2GPa以上であり、好ましくは2.5GPa以上であり、さらに好ましくは2.7GPa以上である。
また、本発明に好ましく用いられるアクリル系樹脂組成物は、JIS K7171にしたがって、長さ80mm×幅10mm×厚さ4mmの試験片を用いて歪み速度1mm/min.で曲げ試験した際において、応力の降伏点を有している。なお、応力の降伏点は、固体において塑性変形がはじまる応力限界のことである。
本発明に用いられるアクリル系樹脂組成物は、メタクリル系樹脂(A)とポリビニルアセタール樹脂(B)とを、せん断速度100sec-1以上、好ましくは200sec-1以上のせん断をかけて溶融混練して得られたものである。このような高いせん断を掛けて溶融混練することによって、アクリル系樹脂組成物からなる層が、耐熱性、表面硬度及び剛性がメタクリル系樹脂とほぼ同等のままで、延伸した時、折り曲げた時、衝撃を受けた時および/または長時間湿熱条件下に置かれた時に白化し難くなる。
アクリル系樹脂組成物の好適な調製方法は、メタクリル系樹脂(A)とポリビニルアセタール樹脂(B)とを、溶融混練する際に、せん断速度100sec-1以上のせん断を印加する段階と、該せん断をせん断速度50sec-1以下にする段階とをそれぞれ少なくとも2回経る方法である。せん断速度を上記のように変化させて溶融混練すると、アクリル系樹脂組成物からなる層が、延伸した時、折り曲げた時、衝撃を受けた時および/または長時間湿熱条件下に置かれた時に白化し難くなる。
アクリル系樹脂組成物の調製では、メタクリル系樹脂(A)とポリビニルアセタール樹脂(B)とを、一軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ブラベンダー、オープンロール、ニーダーなどの公知の混練機を用いて、各構成成分を溶融状態で混練することが重要である。これら混練機のうち、大きなせん断力が得られ、メタクリル系樹脂(A)が連続相を形成しやすく、生産性に優れ、せん断速度100sec-1以上のせん断を印加する段階と、該せん断をせん断速度50sec-1以下にする段階とをそれぞれ少なくとも2回含む工程を容易に作り出せることから、二軸押出機が好ましい。
溶融混練する際の樹脂温度は、140℃以上が好ましく、140〜270℃がより好ましく、160〜250℃が特に好ましい。
溶融混練した後、120℃以下の温度に冷却する。冷却は溶融状態のストランドを冷水を溜めた槽に浸すなどの方法で自然放冷に比べて急速に行うことが好ましい。急速冷却することによって、メタクリル系樹脂(A)が連続相を形成し、且つメタクリル系樹脂(A)とポリビニルアセタール樹脂(B)とが部分相溶した状態で固定しやすくなり、さらに、分散相の大きさが非常に小さくなる。分散相の大きさは、通常200nm以下、好ましくは100nm以下、特に好ましくは50nm以下である。なお、50nm以下という場合には、二つの成分が互いに完全相溶して、分散粒子が観察されない場合をも含む。
アクリル系樹脂組成物には、必要に応じて各種の添加剤、例えば、酸化防止剤、安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、加工助剤、帯電防止剤、着色剤、耐衝撃助剤、発泡剤、充填剤、艶消し剤などが添加されていてもよい。なお、樹脂組成物の力学物性および表面硬度の観点から軟化剤や可塑剤は多量に添加されていないことが好ましい。これらの添加剤は、a)メタクリル系樹脂(A)を重合反応で得る段階、例えばメタクリル酸メチルを主成分とする単量体またはその部分重合物の段階で配合してもよいし、b)ポリビニルアルコール樹脂をアセタール化しポリビニルアセタール樹脂(B)を合成する段階で配合してもよいし、c)メタクリル系樹脂(A)とポリビニルアセタール樹脂(B)とを一軸混練機、二軸混練機などの混練機により溶融混練する段階で配合してもよいし、d)メタクリル系樹脂(A)とポリビニルアセタール樹脂(B)とからなるアクリル系樹脂組成物を製造した後に配合してもよい。
これら添加剤のうち、紫外線吸収剤は、耐候性を向上させる目的で好ましく添加することができる。紫外線吸収剤の種類は特に限定されないが、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、またはトリアジン系のものが好ましい。紫外線吸収剤の含有量は、アクリル系樹脂組成物に対して、通常0.01〜2質量%、好ましくは0.1〜2質量%である。
本発明の積層体は、アクリル系樹脂組成物からなる層(薄膜)と、ポリカーボネート樹脂の層とを別々に用意しておき、加熱ロール間で連続的にラミネートする方法、プレスで熱圧着する方法、圧空又は真空成形すると同時に積層する方法、接着層を介在させてラミネートする方法(ウェットラミネーション);アクリル系樹脂組成物からなる薄膜を基材にして、溶融されたポリカーボネート樹脂を流延する方法;ポリカーボネート樹脂とアクリル系樹脂組成物とを共押出成形する方法;などで得ることができる。
アクリル系樹脂組成物からなる薄膜は、公知の製膜法によって得ることができる。例えば、Tダイ法、カレンダー法、インフレーション法、溶融流延法、等の高いせん断力の掛かる溶融押出成形法が挙げられる。高いせん断力の掛かる溶融押出成形法によれば、透明性に優れ、改善された靭性を持ち、取扱い性に優れ、靭性と表面硬度および剛性とのバランスに優れ、延伸した時、折り曲げた時、衝撃を受けた時および/または長時間湿熱条件下に置かれた時に白化しにくい積層体を得ることができる。アクリル系樹脂組成物からなる薄膜を得るための方法のうち、良好な表面平滑性、良好な鏡面光沢および低ヘイズの薄膜が得られるという観点から、上記溶融混練物をTダイから溶融状態で押し出し、その両面を鏡面ロール表面または鏡面ベルト表面に接触させて成形する工程を含む方法が好ましい。この際に用いるロールまたはベルトは、いずれも金属製であることが好ましい。このように押し出された溶融混練物の両面を鏡面に接触させて成形する場合には、成形体両面を鏡面ロールあるいは鏡面ベルトで加圧し挟むことが好ましい。鏡面ロールあるいは鏡面ベルトによる挟み込み圧力は、高い方が好ましく、線圧として10N/mm以上であることが好ましく、30N/mm以上であることがさらに好ましい。
また、良好な表面平滑性、良好な鏡面光沢および低ヘイズのアクリル系樹脂組成物からなる薄膜が得られるという観点から、アクリル系樹脂組成物を挟み込む鏡面ロールあるいは鏡面ベルトの少なくとも一方の表面温度を60℃以上で且つ成形体を挟み込む鏡面ロールあるいは鏡面ベルトの両方の表面温度を130℃以下とすることが好ましい。鏡面ロールあるいは鏡面ベルトの両方の表面温度が60℃未満であると得られるアクリル系樹脂組成物からなる薄膜の表面平滑性が不足しヘイズが高めになる傾向にあり、少なくとも一方の表面温度が130℃を超えると該薄膜と鏡面ロールあるいは鏡面ベルトが密着しすぎるため、鏡面ロールあるいは鏡面ベルトからアクリル系樹脂組成物からなる薄膜を引き剥がす際に表面が荒れやすくなり、得られるアクリル系樹脂組成物からなる薄膜の表面平滑性が低くなるか、またはヘイズが高くなる傾向になる。
溶融押出成形法における樹脂温度は、好ましくは140〜270℃、より好ましくは160〜250℃である。溶融成形後は、薄膜を自然放冷に比べて急速に冷却することが好ましい。例えば、成形された直後の薄膜を冷却ロールに接触させて急速冷却することが好ましい。このような急速な冷却を行うことによって、メタクリル系樹脂(A)が連続相を形成し、且つメタクリル系樹脂(A)とポリビニルアセタール樹脂(B)とが部分相溶または完全相溶した薄膜を得ることができる。
本発明に用いるアクリル系樹脂組成物からなる薄膜の少なくとも一方の面の粗度、好ましくはポリカーボネート樹脂層と接する面の反対側の面の粗度は、好ましくは1.5nm以下、より好ましくは0.1〜1.0nmである。これにより、切断時や打抜時等での取扱い性に優れるとともに、表面光沢や透明性に優れる。また、光学用途においては、光線透過率等の光学特性や表面賦形を行う際の賦形精度に優れる。なお、フィルムの粗度は、実施例に記載の方法で求めた値である。
アクリル系樹脂組成物からなる薄膜のヘイズは、厚さ100μmにおいて、好ましくは0.3%以下、より好ましくは0.2%以下である。これにより、切断時や打抜時等での取扱い性に優れるとともに、表面光沢や透明性に優れる。また、液晶保護フィルムや導光フィルムなどの光学用途においては、光源の利用効率が高まり好ましい。さらに、表面賦形を行う際の賦形精度に優れるため好ましい。
アクリル系樹脂組成物からなる薄膜の厚さは、5〜200μmであり、好ましくは50〜200μmであり、より好ましくは50〜125μmである。200μmより厚くなると、ラミネート性、ハンドリング性、切断性などが低下し、フィルムとしての使用が困難になるとともに、単位面積あたりの単価も増大し、経済的に不利であるため好ましくない。
アクリル系樹脂組成物からなる薄膜は、少なくとも一方の面に、印刷が施されていてもよい。印刷によって絵柄、文字、図形などの模様、色彩等が付与される。模様は有彩色のものであっても、無彩色のものであってもよい。印刷は、印刷層の退色を防ぐために、ポリカーボネート樹脂層と接する側に施すのが好ましい。
アクリル系樹脂組成物からなる薄膜は、その表面がJIS鉛筆硬度(厚さ100μm)で好ましくはHBまたはそれよりも硬く、より好ましくはFまたはそれよりも硬く、さらに好ましくはHまたはそれよりも硬い。表面が硬いアクリル系樹脂組成物からなる薄膜を用いることにより、本発明の積層体の表面硬度も高まるため好ましい。
アクリル系樹脂組成物からなる薄膜は、アクリル系樹脂組成物からなる単層フィルムであっても良いし、アクリル系樹脂組成物と他の樹脂などとからなる積層フィルムであってもよい。
アクリル系樹脂組成物からなる薄膜は着色されていてもよい。着色法としては、メタクリル系樹脂(A)とポリビニルアセタール樹脂(B)とのアクリル系樹脂組成物に、顔料又は染料を含有させ、成形前の樹脂組成物自体を着色する方法;アクリル系樹脂組成物からなる薄膜を、染料が分散した液中に浸漬して着色させる方法(染色法)などが挙げられるが、特に限定されるものではない。
ポリカーボネート樹脂層は、押出成形法、射出成形法などの公知の成形法によって得ることができる。
上記のようにして得られたアクリル系樹脂組成物からなる薄膜と、ポリカーボネート樹脂層との熱圧着は、熱プレス機、熱ロール機などの公知の手段を用いて行うことができる。熱圧着時の温度は通常50〜250℃である。
また、アクリル系樹脂組成物からなる薄膜を金型内等に設置し、溶融されたポリカーボネート樹脂を前記薄膜上に流し込んで、ポリカーボネート樹脂層の成形と同時にアクリル系樹脂組成物からなる薄膜を積層させることもできる。
共押出法による製造では、溶融されたポリカーボネート樹脂と、溶融されたアクリル系樹脂組成物とを、フィードブロック方式やマルチマニホールド方式などの共押出用のダイに流し入れ、それぞれを、同時に押出す。溶融されたポリカーボネート樹脂および溶融されたアクリル系樹脂組成物のそれぞれの温度は、ポリカーボネート樹脂層とアクリル系樹脂組成物層との界面の乱れが少なくなるように適宜調整される。共押出された溶融樹脂は、アクリル系樹脂組成物からなる薄膜の調製に関する説明において述べたのと同様に、その両面を鏡面ロール表面または鏡面ベルト表面に接触させて成形する工程を含む方法が好ましい。鏡面ロール表面または鏡面ベルト表面の温度や線圧などは、適宜選択できるが、アクリル系樹脂組成物からなる薄膜の調製に関する説明において述べた条件範囲にすることが、良好な表面平滑性、良好な鏡面光沢および低ヘイズの積層体を得られると言う点で好ましい。
本発明の積層体は、アクリル系樹脂組成物からなる層およびポリカーボネート樹脂層の数は特に制限されないが、該積層体の表面硬度、耐候性、ハードコート処理を行う際の密着性、耐衝撃性、表面平滑性、および透明性(ヘイズ)に優れ、並びにアクリル系樹脂組成物からなる層が該積層体を延伸した時、折り曲げた時および/または衝撃を受けた際に白化しにくいという特長を保持するという観点から、アクリル系樹脂組成物からなる層が最外層になるものが好ましい。
本発明の積層体は、アクリル系樹脂組成物からなる層と、ポリカーボネート樹脂層との間に他の層が介在していてもよいし、アクリル系樹脂組成物からなる層の外側に、すなわち、ポリカーボネート樹脂層と接する面の反対側に、他の層が積層されていてもよい。
アクリル系樹脂組成物からなる層と、ポリカーボネート樹脂層との間に介在させる他の層として、例えば、着色されていても良い透明性に優れる熱可塑性樹脂からなる層が挙げられる。
また、アクリル系樹脂組成物からなる層の外側に設ける他の層としては、積層体の意匠性を高める観点から、透明な樹脂からなる層が好ましい。積層体の表面に傷がつきにくく、意匠性が長く持続するという観点から、最外層に用いる樹脂材料は、表面硬度および耐候性が高いものが好ましく、例えば、紫外線吸収剤を含有していてもよいメタクリル系樹脂が好ましいものとして挙げられる。
また、アクリル系樹脂組成物からなる層の外側に設ける他の層として、紫外線硬化膜などのハードコート層を設けてもよい。
なお、他の層との密着性等を高めるために、アクリル系樹脂組成物からなる層の表面にプラズマ処理、電子線処理、コロナ放電処理等の表面処理を行っても良い。
本発明の積層体におけるアクリル系樹脂組成物からなる層の厚さは、5〜200μmであり、好ましくは50〜200μmであり、さらに好ましくは50〜125μmである。
本発明の積層体におけるアクリル系樹脂組成物からなる層の厚さが5μm未満であると、積層体の表面硬度が不足する。また、耐候性が必要な用途においては、アクリル系樹脂組成物に十分な量の紫外線吸収剤を保持させることができず、積層体の力学物性が経年劣化する。また、本発明の積層体におけるアクリル系樹脂組成物からなる層の厚さが200μmを超えると、延伸した際、折り曲げた際および/または衝撃を受けた際などにアクリル系樹脂組成物からなる層が破断しやすくなる。また、経済性においても不利となりやすい。
本発明の積層体は、JIS K7136に準じて測定したヘイズが、好ましくは0.3%以下、より好ましくは0.2%以下である。
本発明の積層体は、表面硬度・耐候性・耐衝撃性・表面平滑性・透明性(ヘイズ)に優れ、且つアクリル系樹脂組成物からなる層が延伸した時、折り曲げた時、衝撃を受けた時および/または長時間湿熱条件下に置かれた時に白化しにくいという特長を活かして、波板、カーポート、アーケード、バルコニーなどの屋根材、壁材、高速道路のフェンス等の建材・住宅設備用途、遮音壁、銘板、液晶表示カバー、タッチパネル、表示用ダミー缶、車両窓、パチンコ台、携帯電話全面板、絶縁体等の工業・産業用途、液晶テレビ拡散板、PTV等のフレネルレンズ、レンチキュラーレンズ、LCD、PTV、プロジェクションテレビ用前面板、レンズシートなどの光学用途に広範囲に使用することができる。
以下に、実施例を示して、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によりなんら限定されるものではない。なお、実施例中の「部」は、特にことわりのない限り「質量部」を表し、「%」は、特にことわりのない限り「質量%」を表す。
本発明の積層体およびその原料の物性評価を以下の方法に従って行った。
(1)重量平均分子量
テトラヒドロフランを溶媒に用い、昭和電工株式会社製Shodex(商標)GPC SYSTEM11に、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー用カラムとしてShodex(商標)KF−806Lを繋ぎ、検出器としてShodex(商標)示差屈折率検出器RI−101を用いて測定した。試料溶液は、重合体を3mg精秤し、これを3mlのテトラヒドロフランに溶解し、目開き0.45μmのメンブランフィルターでろ過することにより調製した。測定の際の温度は40℃、流量は1.0ml/min.とし、ポリマーラボラトリーズ社製標準ポリメタクリル酸メチルで作成した検量線に基づいて、ポリメタクリル酸メチル換算分子量として重量平均分子量を算出した。
(2)曲げ試験における弾性率、降伏点伸度、破断伸度、靭性および白化状態の観察
曲げ試験における弾性率、降伏点伸度および破断伸度は、JIS K7171に従い、株式会社島津製作所製オートグラフAG−5000Bを用いて、射出成形法で得られた長さ80mm×幅10mm×厚さ4mmの試験片を用いて歪み速度1mm/min.で測定した。
靭性は、試験片が破断するまでに要するエネルギーで評価した。
白化状態は、曲げ歪み20%における試験片の白化状態を目視で観察することにより行い、試験片の長さ方向の白化している部分の長さが2mm以上であるものを×、0.3mm以上かつ2mm未満であるものを△、0.3mm未満であるものを○、その中で全く白化が見られないものを◎として評価した。
(3)引張り試験における弾性率、破断伸度、靭性および白化状態の観察
引張り試験における弾性率は、JIS K7162に従い、株式会社島津製作所製オートグラフAG−5000Bを用いて、射出成形法で得られた1A形ダンベル状試験片を用いて歪み速度1mm/min.で測定した。破断伸度、靭性および白化状態の観察は、JIS K7162に従い、株式会社島津製作所製オートグラフAG−5000Bを用いて、射出成形法で得られた1A形ダンベル状試験片を用いて歪み速度5mm/min.で測定することにより評価した。靭性は、試験片が破断するまでに要するエネルギーで評価した。
白化状態は、引張り歪み10%における試験片の白化状態を目視で観察することにより行い、試験片の長さ方向の白化している部分の長さが10mm以上であるものを×、1mm以上かつ10mm未満であるものを△、1mm未満であるものを○、全く白化が見られないものを◎として評価した。
(4)主分散ピーク温度(Tα)
損失正接(tanδ)の主分散のピーク温度(Tα)は、エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製EXSTAR6000 DMSを用いて、射出成形で得られた試験片を切断することによって得た長さ60mm×幅10mm×厚さ4mmの直方体試験片を曲げモード(両持ち梁測定)において、正弦波振動10Hz、昇温速度3℃/min.により測定した。
(5)透過電子顕微鏡によるモルフォロジー観察
射出成形で得られた試験片からウルトラミクロトーム(RICA社製ReichertULTRACUT−S)を用いて超薄切片を作製した。該切片を四酸化ルテニウムの蒸気に曝してポリビニルアセタール樹脂(B)部分を電子染色した。こうして作成した試料のモルフォロジーを株式会社日立製作所製透過電子顕微鏡H−800NAを用いて観察した。
観察されたモルフォロジーにおいて非染色部が連続相を形成していたものを○、非染色部が不連続であったものを×として評価した。なお、非染色部は主にメタクリル系樹脂(A)からなる部分である。
また、染色された分散相の平均粒子径を計測した。染色部は、ポリビニルアセタール樹脂(B)からなる部分である。
(6)フィルムの可視光線透過率
株式会社日立ハイテクノロジーズ社製の分光光度計U−4100を用いて厚さ100μmのフィルムの波長380nmから780nmにおける透過率を測定し、JIS R3106に従って算出した可視光線透過率を測定した。
(7)フィルムのヘイズ
JIS K7136に従い、厚さ100μmのフィルムで測定した。
(8)フィルムの表面硬度
JIS K5400にしたがって、厚さ100μmのフィルムの鉛筆硬度を測定した。(9)フィルムの引張り試験における弾性率、破断伸度、靭性
厚さ100μmのフィルムから引張試験時にMD方向に延伸されるようにプラスチックJIS1A型ダンベル形状試験フィルムを打抜き、株式会社島津製作所製オートグラフAG−5000Bを用いて、歪み速度5mm/min.で試験を行い、試験フィルムの弾性率、破断伸度、靭性を測定した。靭性は、試験フィルムが破断するまでに要するエネルギーで評価した。
(10)フィルムの引裂き強度
株式会社島津製作所製オートグラフAG−5000Bを用いて、JIS K6252規格に準拠した切込みなしアングル型試験フィルムを打抜き、引張り速度5mm/min.で切込みありアングル型試験フィルムを引裂いた際の、厚さ換算した最大引裂き強さ(単位:N/mm)で評価した。測定は厚さ100μmのフィルムで行った。
(11)フィルムの白化状態の観察
厚さ100μmのフィルムをTD方向に折り目がつくように180°折り曲げた際に、目視評価により、折り曲げた部分が全く白化しないものを○、折り曲げた部分の一部が白化したものを△、折り曲げた部分全体が白化したものを×として評価した。
(12)デュポン式落球衝撃試験
長さ25mm×幅25mm×厚さ100μmのフィルムを、0.3〜1.0kgの錘を用いて落球衝撃試験を行い、落球によってフィルムが破砕しない最大衝撃(単位:J)を求めた。なお、試験に用いる錘の重さ(単位:kg)と落下する距離(単位:m)から、フィルムに与える衝撃(単位:J)を下記の計算式よって算出することが出来る。
フィルムに与える衝撃[J]=
錘の重さ[kg]×重力加速度[m/s2]×錘が落下する距離[m]
(13)フィルムあるいは積層体におけるアクリル系樹脂組成物層の透過電子顕微鏡によるモルフォロジー観察
フィルムあるいは積層体からウルトラミクロトーム(RICA社製ReichertU
LTRACUT−S)を用いて超薄切片を作製した後、アクリル系樹脂組成物層のポリビニルアセタール樹脂部分を四酸化ルテニウムの蒸気で電子染色し、試料を作製した。こうして作成した試料のモルフォロジーを株式会社日立製作所製透過電子顕微鏡H−800NAを用いて観察した。
観察されたモルフォロジーにおいてアクリル系樹脂組成物層の非染色部が連続相を形成していたものを○、非染色部が不連続であったものを×として評価した。なお、非染色部は主にメタクリル系樹脂(A)からなる部分である。
また、染色された分散相の平均粒子径を計測した。染色部は、ポリビニルアセタール樹脂(B)からなる部分である。
(14)フィルムおよび積層体表面の粗度の測定
原子間力顕微鏡(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製SPI4000プローブステーションE−sweep環境制御ユニット)を用いて、表面の形状をDFMモードによって測定した。プローブはエスアイアイ・ナノテクノロジー社製SI−DF20(背面Al)を用いた。なお、試料の測定に先立ち、ピッチ10μm、段差100nmの参照試料を測定し、装置のX軸、Y軸の測定誤差が10μmに対して5%以下、Z軸の誤差が100nmに対して5%以下であることを確認した。
試料の観察領域は2μm×2μmとし、測定周波数を1.0Hzとした。スキャンライン数はX軸を512、Y軸を512とした。測定は25℃±2℃、湿度30±5%の大気環境で行った。得られた測定データを、装置に付属のデータ処理ソフトウェアにより解析し、平均面粗さRaを求めた。すなわち、装置の測定ソフトウェアの[ツール]メニューの[3次傾き補正]コマンドを選択し、フィルムの傾きや大きなうねりの全面傾きを補正した後、[解析]メニューの[表面粗さ解析]コマンドを選択し、平均面粗さRaを得た。平均面粗さRaは、以下のように定義される。
※平均面粗さRa:基準面から指定面までの偏差の絶対値を平均した値。
Figure 2011088358
ここでF(X,Y)は(X,Y)座標での高さの値を表す。Z0は以下で定義されるZ
データの平均値を表す。
Figure 2011088358
また、S0は、測定領域の面積を表す。
この平均面粗さRaをフィルムの両面(便宜上、A面およびB面とする)において異なる10箇所の領域でそれぞれ測定し、10箇所の平均面粗さRaの平均値を成形体表面の粗度とした。また、積層体のアクリル系樹脂層において異なる10箇所の領域で測定し、10箇所の平均面粗さRaの平均値を積層体表面の粗度とした。
3次傾き補正は、測定した試料表面を3次の曲面で最小2乗近似によってフィッティングすることによって行い、試料の傾きおよびうねりの影響を排除するために行った。
(15)積層体のヘイズ
JIS K7136に従って積層体のヘイズを測定した。
(16)積層体の引張り試験における弾性率、破断伸度、靭性
積層体から引張試験時にMD方向に延伸されるようにプラスチックJIS1A型ダンベル形状試験フィルムを打抜き、株式会社島津製作所製オートグラフAG−5000Bを用いて、歪み速度5mm/min.で試験を行い、試験フィルムの弾性率、破断伸度、靭性を測定した。靭性は、試験フィルムが破断するまでに要するエネルギーで評価した。
(17)積層体のデュポン式落球衝撃試験
積層体(長さ25mm×幅25mm)を、0.3〜1.0kgの錘を用いて落球衝撃試験を行い、落球によってフィルムが破砕しない最大衝撃(単位:J)を求めた。なお、試験に用いる錘の重さ(単位:kg)と落下する距離(単位:m)から、フィルムに与える衝撃(単位:J)を下記の計算式よって算出することが出来る。
フィルムに与える衝撃[J]=
錘の重さ[kg]×重力加速度[m/s2]×錘が落下する距離[m]
(18)積層体の表面硬度
JIS K5400にしたがって、鉛筆硬度を測定した。
(19)積層体の白化状態の観察
積層体からMD方向に6cm、TD方向に1cmの短冊を切り出し、TD方向に折り目がつくように90°折り曲げた際に、目視評価により、折り曲げた部分が全く白化しないものを○、折り曲げた部分が一部でも白化したものを△、折り曲げた際に破断したものを×として評価した。その際、積層体のアクリル系樹脂組成物からなる層が片面にのみ積層されている場合には、積層体のアクリル系樹脂組成物からなる層が積層されている面に対して山折りに折り曲げて評価した。
(20)積層体の耐候性
JIS B7754に準拠(ブラックパネル温度63℃、湿度50%、120分サイクル18分間噴霧)してアトラス社製キセノンウェザオメータ−(Ci4000)を用いて促進暴露試験を行い、2000時間暴露後の試験片を目視観察して、耐候性を評価した。なお、促進暴露試験は、積層体のアクリル系樹脂組成物層側のみが紫外線照射を受けるように行った。目視評価により、試験後の積層体にクラックが入っていないものを○、クラックが入っているものを×として評価した。
〔メタクリル系樹脂(A)〕
表1に示す比率のメタクリル酸メチル単位およびアクリル酸メチル単位からなるメタクリル系樹脂をバルク重合法により作製した。作製したメタクリル系樹脂の重量平均分子量および主分散ピーク温度(TαA)を表1に示した。
Figure 2011088358
〔ポリビニルアセタール樹脂(B)〕
ポリビニルアルコール樹脂を溶解した水溶液に、アルデヒド化合物ならびに酸触媒(塩酸)を添加し、攪拌してアセタール化し、樹脂を析出させた。公知の方法に従ってpH=6になるまで洗浄し、次いでアルカリ性にした水性媒体中に懸濁させて攪拌し、再びpH=7になるまで洗浄し、揮発分が1.0%以下になるまで乾燥することにより、表2に示す特性を有するポリビニルアセタール樹脂をそれぞれ得た。
Figure 2011088358
実施例1
メタクリル系樹脂(A−1)75部、およびポリビニルアセタール樹脂(B−2)25部を、日本製鋼所製二軸混練押出機TEX−44α(L/D=40)を用いてシリンダー温度220℃、スクリュー回転数200rpmで混練し、アクリル系樹脂組成物のペレットを得た。その際の押出機のダイ直前で測定した樹脂温度は230℃であった。押出機内の最大剪断速度は、300sec-1であり、バレルとスクリューエレメントとのクリアランスが大きい部分でのせん断速度は45sec-1であった。スクリューは、上記の回転数において、300sec-1のせん断と45sec-1のせん断とが交互に2回ずつ掛かる構成のものを用いた。
得られたアクリル系樹脂組成物のペレットを、日本製鋼所製J50E2を用いて、シリンダー温度240℃で射出成形し、プラスチックJIS 1A型ダンベル状試験片、長さ80mm×幅10mm×厚さ4mmの直方体試験片を得た。さらに、長さ80mm×幅10mm×厚さ4mmの直方体試験片を切断することにより、長さ60mm×幅10mm×厚さ4mmの直方体試験片を得た。
これらの試験片を用い、曲げ試験における弾性率、降伏点伸度、破断伸度、靭性および白化状態;引張り試験における弾性率、破断伸度、靭性および白化状態;アクリル系樹脂組成物のメタクリル系樹脂(A)に起因する主分散ピーク温度(TαAP)およびポリビニルアセタール樹脂(B)に起因する主分散ピーク温度(TαBP)を測定した。また、モルフォロジーを観察した。表3にその結果を示した。
また、得られたアクリル系樹脂組成物のペレットをプラスチック工学研究所製GT−40を用いて幅500mmのTダイよりシリンダー温度およびTダイ温度が220℃の条件で押出成形し、Tダイ直下において90℃に温度調節した2本の金属製鏡面ロールで、押付け圧力50N/mmで挟み込むことにより、厚さ100μmのフィルムを得た。このフィルムの可視光線透過率、ヘイズ、表面硬度、引張り試験における弾性率、破断伸度、靭性および白化状態、デュポン式落球衝撃試験、表面の粗度(便宜上、A面およびB面と記載した。以下、同様。)等を評価した結果を表4に示した。
この厚さ100μmのアクリル系樹脂組成物からなるフィルムと厚さ500μmのポリカーボネートフィルム(ユーピロンフィルムFE−2000、三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製)とを一枚ずつ重ね合わせ、二本の表面温度170℃の金属製鏡面ロールの間を通すことによってフィルム両側から熱圧着してポリカーボネートフィルムの片面にアクリル系樹脂組成物からなるフィルムが積層された積層体を得た。
得られた積層体のヘイズ、モルフォロジー、引張り試験における弾性率、破断伸度および靭性;デュポン式落球衝撃試験、表面硬度、白化状態、表面粗度、ならびに耐候性を評価した結果を表5に示した。
Figure 2011088358
Figure 2011088358
Figure 2011088358
実施例2〜7
メタクリル系樹脂(A)およびポリビニルアセタール樹脂(B)の種類および/または配合量を表3に示す処方に変えた以外は実施例1と同様にして、積層体を製造した。それらの特性を表3〜表5に示した。
実施例8
実施例1で得られたアクリル系樹脂組成物のペレットをプラスチック工学研究所製GT−40を用いて幅500mmのTダイよりシリンダー温度およびTダイ温度が220℃の条件で押出成形し、Tダイ直下において90℃に温度調節した2本の金属製鏡面ロールで、押付け圧力50N/mmで挟み込むことにより、厚さ50μmのアクリル系樹脂組成物からなるフィルムを得た。
この厚さ50μmのアクリル系樹脂組成物からなるフィルムと厚さ500μmのポリカーボネートフィルム(ユーピロンフィルムFE−2000、三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製)とを、ポリカーボネートフィルムがアクリル系樹脂組成物からなるフィルムに両側から挟まれるように重ね合わせ、二本の表面温度170℃の金属製鏡面ロールの間を通すことによってフィルム両側から熱圧着してポリカーボネートフィルムの両面にアクリル系樹脂組成物からなるフィルムが積層された積層体を得た。力学物性などの特性を表3〜表5に示した。
実施例9
実施例1で得られたアクリル系樹脂組成物のペレットをプラスチック工学研究所製GT−40を用いて幅500mmのTダイよりシリンダー温度およびTダイ温度が220℃の条件で押出成形し、Tダイ直下において90℃に温度調節した2本の金属製鏡面ロールで、押付け圧力50N/mmで挟み込むことにより、厚さ50μmのアクリル系樹脂組成物からなるフィルムを得た。このフィルムを用いたこと以外は実施例1と同様にして積層体を得た。力学物性などを表3〜表5に示した。
実施例10
実施例1で得られたアクリル系樹脂組成物のペレットをプラスチック工学研究所製GT−40を用いて幅500mmのTダイよりシリンダー温度およびTダイ温度が220℃の条件で押出成形し、Tダイ直下において90℃に温度調節した2本の金属製鏡面ロールで、押付け圧力50N/mmで挟み込むことにより、厚さ20μmのアクリル系樹脂組成物からなるフィルムを得た。このフィルムを用いたこと以外は実施例1と同様にして積層体を得た。力学物性などを測定した結果を表3〜表5に示した。
実施例11
メタクリル系樹脂(A−2)75部、ポリビニルアセタール樹脂(B−2)25部およびメタクリル系樹脂(A−2)とポリビニルアセタール樹脂(B−2)の合計に対し、紫外線吸収剤として0.8質量%のアデカスタブLA−31をさらに添加したこと以外は実施例1と同様にして積層体を製造した。それらの結果を表3〜表5に示した。また、積層体の耐候性を評価したところ、積層体にクラックが入らず、○と評価された。
実施例12
実施例1で得られた厚さ100μmのアクリル系樹脂組成物からなるフィルムと厚さ2mmのポリカーボネートシート(ユーピロンシートNF−2000;三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製)とを一枚ずつ重ね合わせ、二本の表面温度170℃の金属製鏡面ロールの間を通すことによってフィルム両側から熱圧着してポリカーボネートフィルムの片面にアクリル系樹脂組成物からなるフィルムが積層された積層体を得た。評価結果を表3〜表5に示した。
Figure 2011088358
比較例1
厚さ500μmのポリカーボネート単層フィルム(ユーピロンフィルムFE−2000;三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製)の力学物性などを測定した結果を表6に示した。また、この単層フィルムの耐候性を評価したところ、フィルムにクラックが入り、×と評価された。
比較例2〜3
実施例1で用いたアクリル系樹脂組成物のペレットに代えて、メタクリル系樹脂(A−1)または(A−2)のみからなるペレットを用いた以外は実施例1と同様にして積層体を製造した。その結果を表6に示した。
比較例4〜7
実施例1で用いたアクリル系樹脂組成物のペレットに代えて、メタクリル系樹脂(A)およびポリビニルアセタール樹脂(B)の種類および/または配合量を表6に示す処方に変えた以外は実施例1と同様にして積層体を製造した。その結果を表6に示した。
比較例8
実施例1で得られたアクリル系樹脂組成物のペレットをプラスチック工学研究所製GT−40を用いて幅500mmのTダイよりシリンダー温度およびTダイ温度が220℃の条件で押出成形し、Tダイ直下において90℃に温度調節した2本の金属製鏡面ロールで、押付け圧力50N/mmで挟み込むことにより、厚さ300μmのアクリル系樹脂組成物からなるフィルムを得た。このフィルムを用いたこと以外は実施例1と同様にして積層体を得た。得られた積層体の力学物性などを測定した結果を表6に示した。
表5および表6から明らかなように、本発明の積層体は、高い透明性を有し、表面平滑性に優れ、表面硬度、耐衝撃性、弾性率、靭性とのバランスに優れ、しかも延伸した時、折り曲げた時、衝撃を受けた時および/または長時間湿熱条件下に置かれた時にアクリル系樹脂組成物層が白化しない。
また、メタクリル系樹脂のみからなる層を備えている比較例2および比較例3の積層体と比較して、本発明の積層体は透明性、表面平滑性、表面硬度が同等で、靭性および耐衝撃性が優れており、しかも延伸した時、折り曲げた時、衝撃を受けた時および/または長時間湿熱条件下に置かれた時にアクリル系樹脂組成物層が白化しないという特長も併せ持っている。
さらに、ポリビニルアセタール樹脂(B)の、炭素数4以上のアルデヒドと炭素数3以下のアルデヒドを用いてアセタール化された繰返し単位が、全繰返し単位に対して65〜85モル%の範囲から外れた材料、炭素数4以上のアルデヒドでアセタール化された繰返し単位/炭素数3以下のアルデヒドでアセタール化された繰返し単位のモル比が90/10〜0/100から外れた材料、またはメタクリル系樹脂(A)およびポリビニルアセタール樹脂(B)の質量比が、99/1〜51/49の範囲から外れた材料を用いて得られたポリカーボネート樹脂積層体は、耐熱性、靭性、耐衝撃性、または表面硬度のいずれかが劣る。これに対して本発明に従って製造された積層体は、優れた耐熱性を有し、靭性、耐衝撃性、及び表面硬度が高くなっている。

Claims (9)

  1. ポリカーボネート樹脂層とアクリル系樹脂組成物からなる厚さ5〜200μmの層とを有するポリカーボネート樹脂積層体であって、
    前記アクリル系樹脂組成物は、重量平均分子量40000以上のメタクリル系樹脂(A)と、粘度平均重合度200〜4000のポリビニルアルコール樹脂をアルデヒドでアセタール化してなるポリビニルアセタール樹脂(B)とを、99/1〜51/49の質量比(A)/(B)で、せん断速度100sec-1以上の条件で溶融混練してメタクリル系樹脂(A)が連続相を形成して成るものであり、且つ
    前記ポリビニルアセタール樹脂(B)は、アルデヒドでアセタール化された繰返し単位が全繰返し単位に対して65〜85モル%含まれ且つ炭素数4以上のアルデヒドでアセタール化された繰返し単位/炭素数3以下のアルデヒドでアセタール化された繰返し単位のモル比が90/10〜0/100のものである、ポリカーボネート樹脂積層体。
  2. 前記アクリル系樹脂組成物は、四酸化ルテニウムで電子染色したときに透過型電子顕微鏡にて観察される、染色された分散相の平均径が50nm以下である、請求項1に記載のポリカーボネート樹脂積層体。
  3. 前記アクリル系樹脂組成物は、紫外線吸収剤を0.1〜2質量%含有する請求項1または2に記載のポリカーボネート樹脂積層体。
  4. 前記アクリル系樹脂組成物からなる層の、ポリカーボネート樹脂層と接している面の反対側の面の粗度が1.5nm以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂積層体。
  5. JIS K7136に準じて測定したヘイズが0.3%以下である請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂積層体。
  6. 前記メタクリル系樹脂(A)および前記ポリビニルアセタール樹脂(B)は、動的粘弾性測定において観測される、前記メタクリル系樹脂(A)単独での主分散ピーク温度(TαA)と前記ポリビニルアセタール樹脂(B)単独での主分散ピーク温度(TαB)とが、90℃≦TαB≦TαAまたは90℃≦TαA≦TαBの関係を持つ請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂積層体。
  7. 前記アクリル系樹脂組成物は、動的粘弾性測定において観測される、メタクリル系樹脂(A)に起因する主分散ピーク温度TαAPが、メタクリル系樹脂(A)単独での主分散ピーク温度(TαA)およびポリビニルアセタール樹脂(B)単独での主分散ピーク温度(TαB)に対して、TαAP<TαAまたはTαAP<TαBの関係を持つ請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂積層体。
  8. 前記アクリル系樹脂組成物は、動的粘弾性測定において観測される、メタクリル系樹脂(A)に起因する主分散ピーク温度TαAPおよびポリビニルアセタール樹脂(B)に起因する主分散ピーク温度TαBPが、TαAP=TαBPの関係を持つ請求項1〜7のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂積層体。
  9. 前記アクリル系樹脂組成物は、動的粘弾性測定において観測される、メタクリル系樹脂(A)に起因する主分散ピーク温度TαAPおよびポリビニルアセタール樹脂(B)に起因する主分散ピーク温度TαBPが、メタクリル系樹脂(A)単独での主分散ピーク温度(TαA)およびポリビニルアセタール樹脂(B)単独での主分散ピーク温度(TαB)に対して、TαB<TαAP=TαBP<TαAまたはTαA<TαAP=TαBP<TαBの関係を持つ請求項1〜8のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂積層体。
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