以下に、本発明の実施形態に係る熱アシスト磁気ヘッド及びそれを備える情報記録装置の構成例を、図面を参照しながら以下の順で説明する。なお、本発明は、以下の例に限定されるものではない。
1.第1の実施形態:熱アシスト磁気ヘッドの基本構成例
2.熱アシスト磁気ヘッドの種々の変形例
3.第2の実施形態:記録再生装置の構成例
<1.第1の実施形態>
[熱アシスト磁気ヘッドの構成]
図1に、本発明の第1の実施形態に係る熱アシスト磁気ヘッドの概略構成断面図を示す。なお、図1は、情報記録媒体の移動方向に沿う方向の断面図である。また、本実施形態では、熱アシスト磁気ヘッドを浮上スライダに搭載する例を説明する。
本実施形態では、熱アシスト磁気ヘッド100は、スライダ本体306の情報記録媒体200と対向する面S1と直交する空気流出側の面S2(以下、トレーリング面S2という)上に形成される。なお、情報記録媒体200は、垂直磁気記録方式または面内磁気記録方式で情報記録可能な記録媒体であり、基板201と、基板201上に形成された磁気記録層202とを備える。
熱アシスト磁気ヘッド100は、磁気再生素子10と、磁気シールド20と、記録磁界生成部30と、記録光生成部40とを備える。なお、各部は、光透過性を有する絶縁材料からなる絶縁部50を介してスライダ本体306のトレーリング面S2上に積層して形成される。各部の形成方法としては、例えば半導体素子の製造プロセス等で用いられるフォトリソグラフィ技術を用いることができる。
ただし、絶縁部50は、例えばアルミナ(屈折率:1.65)、石英(屈折率:1.45)、タンタルオキサイド(屈折率:2.15)等の絶縁材料で形成することができる。また、スライダ本体306は、例えばアルティック(Al2O3−TiC)等のセラミック材料で形成される。
磁気再生素子10は、磁気記録層202の記録磁区から漏洩する磁界を検出する。なお、磁気再生素子10は、磁気シールド20と記録磁界生成部30の後述するリターンヨーク32との間に配置され、その検出面が情報記録媒体200と対向するように配置される。磁気再生素子10としては、例えば、GMR(Giant Magneto Resistance)素子、TMR(Tunnel Magneto Resistance)素子等の磁気抵抗効果素子を用いることができる。なお、本実施形態の熱アシスト磁気ヘッド100を備える記録再生装置(不図示)では、磁気再生素子10で検出した信号に基づいて、情報再生が行われる。
磁気シールド20は、絶縁部50を介して、スライダ本体306のトレーリング面S2上に形成される。磁気シールド20は、従来の熱アシスト磁気ヘッドのそれと同様の材料で形成することができ、例えば、FeNi系合金、CoFe系合金等で形成することができる。
また、図1には示していないが、記録光生成部40に入射される光150の光源は、例えば例えばLD(laser diode)等で構成され、熱アシスト磁気ヘッド100の端面に取り付けられる。この際、入射光150が後述する集光部41の凹凸面に対して斜め入射される位置に光源を配置することが好ましい。なお、本実施形態では、入射光150が一つである例を示す。また、熱アシスト磁気ヘッド100は、光源を備える構成としてもよい。
記録磁界生成部30は、記録磁極部31と、リターンヨーク32と、接続磁極部33と、接続磁極部33に巻かれた励磁コイル34とで構成される。なお、本実施形態では、励磁コイル34に電流を流すことにより、記録磁極部31の先端から記録磁界を発生し、その記録磁界を情報記録媒体200の所定領域に印加する。
記録磁極部31は、先端から記録磁界を発生させる磁極であり、スライダ本体306のトレーリング面S2と平行に延在した棒状の磁性体で構成される。なお、本実施形態では、記録磁極部31の延在方向に直交する断面の形状は正方形とする。また、記録磁極部31は、その延在途中でトレーリング面S2に向かって折れ曲がっており、延在方向に沿う方向の断面形状は略S字状となる。
なお、記録磁極部31の接続磁極部33に接続されている領域の磁極部(折れ曲がる前の磁極部)の厚さ(トレーリング面S2に直交する方向の磁極厚さ)は、折れ曲がった後の領域の磁極部の厚さより厚くする。ただし、記録磁極部31の接続磁極部33に接続されている領域の磁極部の径(厚さ又は幅)は、例えば約10μm程度とすることができる。
さらに、記録磁極部31の折れ曲がった後の領域の磁極部の幅は、その先端に向かうほど狭くなる(後述の図2参照)。なお、記録磁極部31の構成(例えば形状及び寸法等)は、図1に示す例に限定されず、例えば必要とする磁界強度、用途等に応じて適宜変更することができる。
なお、情報記録媒体200に対して熱アシスト磁気記録方式により高密度記録を実現するためには、磁気記録層202の所定領域に光を照射して加熱した直後(または同時に)記録磁界を印加する必要がある。それゆえ、記録磁極部31の先端部(接続磁極部側とは反対側の端部)は、記録光生成部40の後述する光射出部43の近傍に配置する。
リターンヨーク32は、記録磁極部31の先端で発生した記録磁界の磁気力線(磁束)をスライダ本体306のトレーリング面S2側に戻すための磁極である。励磁コイル34に電流が流されている間、磁気力線は、接続磁極部33を介してリターンヨーク32及び記録磁極部31間でループして閉じた状態となり、リターンヨーク32と記録磁極部31とは磁気的(物理的)に接続された状態となる。これにより、記録磁極部31の先端における記録磁界の強度をより強くすることができる。また、さらに強い記録磁界を発生させるためには、記録磁極部31の先端をリターンヨーク32により近づけることが好ましい。これらのことから、記録光生成部40の後述する光射出部43は、本実施形態(図1)のように、記録磁極部31とリターンヨーク32との間に配置することが好ましい。
なお、本実施形態では、上述のように、リターンヨーク32と磁気シールド20との間に磁気再生素子10を配置するので、リターンヨーク32は、磁気シールドとしても用いる。それゆえ、本実施形態では、リターンヨーク32の構成(形状及び寸法)を磁気シールド20のそれと同様とする。ただし、リターンヨーク32の構成は、図1に示す例に限定されず、例えば磁気再生素子10の配置位置等に応じて適宜変更することができる。
接続磁極部33は、記録磁極部31とリターンヨーク32とを接続する棒状の磁極である。なお、本実施形態では、接続磁極部33の延在方向に直交する断面の形状は正方形とし(後述の図2参照)、その幅(又は厚さ)は、例えば約10μm程度とすることができる。ただし、本発明はこれに限定されず、接続磁極部33の構成(例えば形状及び寸法等)は、例えば必要とする磁界強度、用途等に応じて適宜変更することができる。なお、励磁コイル34に電流が流されている間、接続磁極部33内には、記録磁極部31からリターンヨーク32に向かう方向、または、その逆方向に向かって磁路が生成される。
なお、記録磁極部31、リターンヨーク32及び接続磁極部33の形成材料には、従来の熱アシスト磁気ヘッドまたは磁気ヘッド等で用いられる磁極と同様の磁性材料を用いることができる。例えば、記録磁極部31、リターンヨーク32及び接続磁極部33は、NiFe、CoFeNi等の磁性材料で形成することができる。
次に、記録光生成部40の構成を、図2を参照しながら説明する。なお、図2は、入射光150(光源)側から見た記録光生成部40の概略正面図である。記録光生成部40は、主に、集光部41と、シングルモード導波路42(光導波路)と、光射出部43とで構成される。
集光部41は、光源からの入射光150を受光して、その受光した光をシングルモード導波路42に導く。この際、本実施形態では、集光部41において受光した光を集光して、その集光した光をシングルモード導波路42に導く。すなわち、本実施形態では、集光部41において、入射光150の光路変換動作と集光動作とを同時に行う。
本実施形態では、入射光150の光路変換動作を行うため、集光部41として、入射光150側の表面に所定周期の凹凸パターン(周期構造)が形成されたグレーティングカプラを用いる。そして、集光部41の一方の端部をシングルモード導波路42に接続する。
本実施形態では、集光部41での高効率の光結合を実現するために、入射光150の波面に対して凹凸パターンの周期が適宜設定される。また、本実施形態では、凹凸パターンで受光した光を効率よく集光するために、凹凸パターンをシングルモード導波路42側の接続部に対して同心円状とし、集光部41の受光面の幅をシングルモード導波路42側の接続部に向かって直線的に狭くする。すなわち、本実施形態では、集光部41の受光面の形状を、図2に示すように、集光部41とシングルモード導波路42との接続部に対して扇状にし、その表面には円弧状の凹凸パターンを形成する。なお、集光部41は、その周囲に形成される絶縁部50より屈折率の高い光透過性材料で形成する。
ただし、集光部41の凹凸パターンの構成(例えば周期、凸部の高さ等)は、例えば、伝播光(入射光)の波長、伝播光の集光部41への入射角、集光部41の形成材料、及び集光部41の周囲の絶縁部50の形成材料を考慮して適宜設定される。集光部41の形成材料としては、例えばタンタルオキサイド(屈折率:2.15)、シリコンナイトライド(屈折率:2.1)等を用いることができる。
シングルモード導波路42は、集光部41から導かれた光を光射出部43に伝播する。なお、シングルモード導波路42内を伝播する光(図2中の破線矢印)の伝播モードは一つ(シングルモード)であり、シングルモード導波路42の形状及び寸法は、伝播光がシングルモードになるように設定される。このように、光導波路内の伝播光をシングルモードにすることにより、伝播光の波面が伝播距離に依存せず安定し、安定した強度特性を有する光を光射出部43に導入することができる。この結果、光射出部43を安定して駆動することができ、情報記録媒体200に強度変動の少ない光を安定して照射することができる。なお、シングルモード導波路42の形成材料としては、例えばタンタルオキサイド(屈折率:2.15)、シリコンナイトライド(屈折率:2.1)等を用いることができる。
シングルモード導波路42は、集光部41の先端から情報記録媒体200に向かう方向に直線状に延在して形成された第1導波路部42aと、第1導波路部42aの先端から2つに分岐して形成された第2導波路部42b及び第3導波路部42cとで構成される。
第2導波路部42b及び第3導波路部42cは、最初、分岐点から互いに離れる方向に延在して形成され、その後、接続磁極部33と接触しないように、接続磁極部33を迂回するように延在して形成される。そして、最終的には、光射出部43付近において再度が第2導波路部42b及び第3導波路部42cが接続される。すなわち、第2導波路部42b及び第3導波路部42cは、ともに、接続磁極部33と迂回するように略C字状の形状を有する。また、本実施形態では、第2導波路部42b及び第3導波路部42cの形状及び延在長さは同じとし、第1導波路部42aの延在方向に対して互いに対称となるように第2導波路部42b及び第3導波路部42cを構成する。
シングルモード導波路42を上述のような構成にすることにより、集光部41から導入された光は、第1導波路部42aと第2導波路部42b及び第3導波路部42cとの接続部で一旦2つに分岐される。そして、分岐された2つの伝播光は接続磁極部33を迂回して伝播し、光射出部43付近で合波される。すなわち、本実施形態の熱アシスト磁気ヘッド100では、伝播光が接続磁極部33に照射されないので、接続磁極部33が加熱されない。それゆえ、本実施形態では、磁極全体の磁気特性の劣化を抑制することができる。
なお、シングルモード導波路42では、所定の曲率の範囲であれば光路を曲げても、無損失または低損失で光を伝播させることができる。それゆえ、本実施形態のように、シングルモード導波路42の延在途中で光導波路をY字状に分岐したり、接続磁極部33と迂回するように光導波路を曲げたりしても、その曲率が所定の範囲内であれば無損失または低損失で光を伝播させることができる。なお、この曲率の範囲は、光導波路とその周囲の材料(絶縁部50)との屈折率差により決定される。
また、本実施形態では、第1導波路部42a〜第3導波路部42cの延在方向(光の伝播方向)に直交する断面の形状は正方形とする。そして、本実施形態では、導波路内の伝播モードをシングルモードにするので、第1導波路部42a〜第3導波路部42cの延在方向に直交する断面の形状及び寸法は、光導波路の延在方向に沿って一定とする。
なお、シングルモード導波路42の延在方向に直交する断面の形状は、シングルモードで光が伝播可能な形状であれば、任意の形状にすることができる。第1導波路部42a〜第3導波路部42cの延在方向に直交する断面の形状を、例えば円形、台形等にしてもよい。また、シングルモード導波路42の断面の寸法は、例えば光導波路の形成材料、光導波路の周囲部材(クラッド材)の形成材料、伝播させる光の波長等に応じて適宜設定される。
また、本実施形態では、第2導波路部42b及び第3導波路部42cの延在長さ(光路長)は同じであるので、第2導波路部42bからの伝播光と第3導波路部42cからの伝播光とが光射出部43付近で合波される際、両伝播光は同位相で合波される。その結果、本実施形態の熱アシスト磁気ヘッド100では、光射出面S3と平行な偏光方向を有する光が光射出部43に導入される。
この動作を、図2を用いてより具体的に説明する。なお、図2中の矢印A1は、ある時刻における、光射出部43付近での第2導波路部42bの伝播光の偏光方向であり、矢印A2は、第3導波路部42cの伝播光の偏光方向である。
いま、ある時刻において、第2導波路部42bから光射出部43に導入される伝播光の偏光方向A1が図2面上で左上側から右下側に向かう方向である場合を考える。この場合、第2導波路部42b及び第3導波路部42cの延在長さ(光路長)は同じであるので、同時刻において、第3導波路部42cから光射出部43に入射される伝播光の偏光方向A2は図2面上で左下側から右上側に向かう方向となる。それゆえ、本実施形態において、光射出部43付近で両伝播光が合波されると、第2導波路部42bからの伝播光の光射出面S3に対して直交する方向の偏光成分と、第3導波路部42cからの伝播光のそれとは互いに打ち消しあう。その結果、図2中の太矢印A3に示すように、光射出面S3と平行な偏光方向を有する伝播光が光射出部43に導入される。
次に、光射出部43の構成を、図3を参照しながら説明する。なお、図3は、光射出面S3側から見た光射出部43近傍の概略斜視図である。本実施形態では、情報記録媒体200に情報記録を行う際、例えば近接場光等の微小光を用いて熱アシスト記録を行う。それゆえ、本実施形態では、光射出部43として、そのような微小光を射出可能な表面プラズモン発生素子を用いる。
光射出部43は、シングルモード導波路42を介して導入される伝播光160の偏光方向A3に沿う方向に、互いに所定間隔離れて配置された一対の金属膜43a及び43bで構成される。このように構成の表面プラズモン発生素子に、一対の金属膜43a及び43b間の対向方向と同じ方向の偏光方向A3を有する伝播光160が照射されると、一対の金属膜43a及び43bの対向面に表面プラズモンが発生する。その結果、一対の金属膜43a及び43b間から、両者の間隔程度の径を有する微小光170が出射され、その微小光170が情報記録媒体200の所定領域に照射される。
なお、金属膜43a及び43bの各厚さ及び両者の間隔は、必要とする最小記録マークのサイズ程度に設定される。また、金属膜43a及び43bの形成材料としては、導電性の良好な材料であれば任意の材料を適用することができる。例えば、金属(例えばAu、Ag、Pt、Cu、Al、Ti、W、Ir、Pd、Mg、Cr等)、半導体(例えばSi、GaAs等)、カーボンナノチューブなどを用いることができる。
また、本実施形態では、各金属膜の光入射側の端面で表面プラズモン共鳴現象を発生させるために、該端面に、伝播光160の偏光方向A3に沿って所定周期で凸部と凹部とを交互に配置した凹凸パターンを形成する。このような構成にすることにより、一対の金属膜43a及び43b間の対向面だけでなく凹部及び凸部間の側面においても表面プラズモンが発生し、それらの表面プラズモンが凹凸パターンの周期方向(偏光方向A3)に伝播して互いに同位相で重なる。この結果、一対の金属膜43a及び43b間の対向面で発生する表面プラズモンの強度が増大し、一対の金属膜43a及び43b間からより高強度の微小光170を出射させることができる。
なお、光射出部43(表面プラズモン発生素子)の構成は、図3に示す構成に限定されず、偏光方向A3を有する伝播光160が照射された際に、金属膜の端面に表面プラズモンが発生する構成であれば、任意の構成にすることができる。例えば、一対の金属膜43a及び43bの一方の金属膜のみで光射出部43を構成してもよい。また、本実施形態では、光射出部43としては、例えば近接場光等の微小光を生成することが可能な光射出部であれば、任意の構成の光射出部を用いることができる。
また、光射出部43として、本実施形態のように表面プラズモン発生素子を用いた場合、光射出部43の効率を向上させるために、例えば、シングルモード導波路42の伝播光の射出口近傍をテイパー状に加工してもよいし、レンズ状の構造体を設けてもよい。
[シングルモード導波路への光の導入効率]
上述のように、本実施形態の熱アシスト磁気ヘッド100では、集光部41で集光した光をシングルモード導波路42に導入する。それゆえ、本実施形態では、集光部41からシングルモード導波路42への光の導入効率がより高くなるように、集光部41及びシングルモード導波路42の構成を設定する必要がある。
集光部41からシングルモード導波路42に高効率で光を導入するためには、次の条件を考慮して、集光部41及びシングルモード導波路42の構成を設定する。
(1)シングルモード導波路42の延在方向に直交する断面のサイズを、シングルモード伝播条件を満たす範囲内で最大にする。
(2)集光スポットサイズが適切な値となるよう集光部41の集光特性(集光部41の構成)を調整する。
以下では、上記条件(2)に関して、より詳細に説明する。シングルモード導波路42に導入する光のスポットサイズが大きすぎると、シングルモード導波路42からはみ出る光が発生し、導入効率が低下する。逆に、シングルモード導波路42に導入する光のスポットサイズが小さすぎると、導入部での導入光の発散角が大きくなり、光導波路から漏れる光が増大する。それゆえ、集光部41からシングルモード導波路42に高効率で光を導入するためには、シングルモード導波路42に導入する光のスポットサイズを、シングルモード導波路42のサイズに応じて最適な値に調整することが望ましい。
本実施形態では、シミュレーション解析により、シングルモード導波路42に導入する光のスポットサイズと導入効率との関係を算出した。図4に、そのシミュレーション解析で用いた簡易的なシングルモード導波路のモデルを示す。このシミュレーション解析では、シングルモード導波路60を一方向に直線状に延在した棒状部材とし、その延在方向の断面は正方形とする。なお、シングルモード導波路60の断面は延在方向に沿って一定とする。また、このシミュレーション解析では、シングルモード導波路60の周囲にはクラッド材が設けられているものとする。
また、シミュレーション解析では、シングルモード導波路60の形成材料の屈折率は2.15(タンタルオキサイド)とし、クラッド材61の屈折率は1.65(アルミナ)とする。さらに、シングルモード導波路60の幅及び厚さは、ともに300nmとし、シングルモード導波路60に入射(導入)する光の波長は850nmとする。
上述のような条件において、シングルモード導波路60に導入する光の光スポット62のサイズを変化させ、各光スポット62のサイズにおけるシングルモード導波路60への光の導入効率を算出した。その算出結果を図5に示す。
図5の横軸には、シングルモード導波路60に導入する光のシングルモード導波路60の導入端部での光スポット62の半径Weを示す。ただし、図5中の半径Weは、導入する光の強度が中心強度の1/e2になる半径である。また、図5の縦軸は、シングルモード導波路60に導入される光の効率であり、具体的には、シングルモード導波路60の端部に入射される光の光量に対するシングルモード導波路60内を伝播する光の光量の比率である。
図5の結果から明らかなように、波長850nmの光を幅及び厚さがともに300nmであり且つ屈折率2.15のシングルモード導波路60に導入する際、その導入光のスポットサイズを約400nm程度とすることで、最大効率が得られることが分かる。
以上説明したように、本実施形態の熱アシスト磁気ヘッド100では、集光部41で予め集光された光をシングルモード導波路42に沿って伝播させて、光射出部43に導入する。すなわち、本実施形態では、上述した従来技術のように、導波路端部での伝播光の反射を考慮する必要がないので、光導波路の構成をより簡易にすることができる。
また、本実施形態の熱アシスト磁気ヘッド100は、集光部41において、入射光150の光強度の最も強い部分である光スポット中央付近の光成分も集光することができるので、光の利用効率を増大させることができる。
さらに、本実施形態の熱アシスト磁気ヘッド100では、光導波路を、接続磁極部33(記録磁界生成部30の磁極)を迂回するように延在して形成する。それゆえ、本実施形態では、記録磁界の磁路となる磁極が伝播光により加熱されず、磁極の磁気特性の劣化を抑制することができる。
すなわち、本実施形態の熱アシスト磁気ヘッドによれば、磁極の磁気特性の劣化を抑制することができ、光の利用効率を向上させることができ、且つ、構成をより簡易にすることができる。さらに、本実施形態のように、光導波路をシングルモード導波路で構成する場合には、安定した光強度の微小光を射出することができる。
また、本実施形態のように、光導波路としてシングルモード導波路を用いた場合、所定の曲率範囲内で光路を曲げても、無損失または低損失で光を伝播させることができる。それゆえ、例えば光導波路の構成、集光部及び光源の配置位置等の自由度を大きくすることができる。
なお、上記第1の実施形態では、光導波路をシングルモード導波路で構成する例を説明したが、本発明はこれに限定されない。十分に安定した強度を有する光を光射出部に導入することが可能な構成であれば、例えば光導波路としてマルチモード導波路を用いてもよい。例えば、光導波路を比較的短くすることができる場合には、安定した強度を有する光を光射出部に導入することが可能なマルチモード導波路の設計が比較的容易である。それゆえ、このような場合には、光導波路としてマルチモード導波路を用いても上記第1の実施形態と同様の効果が得られる。
<2.種々の変形例>
次に、上記第1の実施形態で説明した熱アシスト磁気ヘッド100の種々の変形例を、図面を参照しながら説明する。
[変形例1]
上記第1の実施形態のシングルモード導波路42では、2つの分岐導波路(第2導波路部42b及び第3導波路部42c)の延在長さを同じとし、光射出部43付近で合波される各分岐導波路からの伝播光の位相が互いに同相となる例を説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されない。
上記第1の実施形態のようにシングルモード導波路を途中で2つに分岐する構成では、2つの分岐導波路の延在長さ(伝播光の光路長)に差を設けることにより、合波された光の偏光面を制御することができる。変形例1では、2つに分岐された光導波路の各延在長さ(光路長)に差を設けた構成例について説明する。
図6に、変形例1の熱アシスト磁気ヘッドにおけるシングルモード導波路の概略構成を示す。なお、図6において、上記第1の実施形態(図2)と同様の構成には、同じ符号を付して示す。
変形例1のシングルモード導波路70は、集光部から情報記録媒体に向かう方向(図6上では上下方向)に直線状に延在して形成された第1導波路部42aと、第1導波路部42aの先端から分岐した2つの第2導波路部71及び第3導波路部42cとで構成される。この例では、第1の実施形態のシングルモード導波路42において、第2導波路部71の構成のみを変えた。それ以外の構成は、第1の実施形態のシングルモード導波路42と同様である。
第2導波路部71及び第3導波路部42cは、最初、分岐点から互いに離れる方向に延在して形成され、その後、接続磁極部(図6では不図示)と接触しないように、接続磁極部を迂回するように延在して形成される。そして、最終的には、光射出部72付近において再度が第2導波路部71及び第3導波路部42cが接続される。すなわち、この例においても、第2導波路部71及び第3導波路部42cは、ともに略C字状の形状を有する。ただし、この例では、第2導波路部71の伝播光と第3導波路部42cの伝播光とが光射出部72の近傍で合波される際、各伝播光の位相が互いに逆相(180度の位相差)となるように、第2導波路部71の延在長さを第3導波路部42cのそれより長くする。すなわち、この例では、第2導波路部71及び第3導波路部42cの形状は、第1導波路部42aの延在方向に対して互いに非対称となる。
なお、この例においても、第2導波路部71を略C字状に曲げて形成するが、その曲部の曲率は、伝播光を無損失または低損失で伝播させるような曲率に設定する。また、この例では各導波路部の延在方向に直交する断面の形状は全て正方形とし、その断面の形状及び寸法は、光導波路の延在方向に沿って一定とする。なお、各導波路部の延在方向に直交する断面の形状は、シングルモードで光が伝播可能な形状であれば、任意の形状にすることができる。
変形例1では、上述のように、第2導波路部71からの伝播光と、第3導波路部42cからの伝播光とが光射出部72の近傍で合波される際、各伝播光が互いに逆位相となるように構成する。その結果、この例の熱アシスト磁気ヘッドでは、光射出面S3と直交する方向に偏光した光を光射出部72に導入することができ、光射出面S3と直交する方向に偏光した光で駆動可能な表面プラズモン素子を光射出部72に適用することができる。
この動作を、図6を用いてより具体的に説明する。なお、図6中の矢印A2は、ある時刻における、光射出部72付近での第3導波路部42cからの伝播光の偏光方向であり、矢印A4は、第2導波路部71からの伝播光の偏光方向である。
ここで、ある時刻において、第3導波路部42cから光射出部72に導入される伝播光の偏光方向A2が図6面上で左下側から右上側に向かう方向である場合を考える。この場合、同時刻において、第2導波路部71から光射出部72に入射される伝播光の偏光方向A4は図6面上で右下側から左上側に向かう方向となる。それゆえ、この例において、光射出部43付近で両伝播光が合波されると、第2導波路部71の伝播光の光射出面S3に平行な方向の偏光成分と、第3導波路部42cの伝播光のそれとは互いに打ち消しあう。その結果、図6中の太矢印A5に示すように、光射出面S3と直交する方向に偏光した伝播光が光射出部72に導入される。
この例のように、光射出面S3に対して直交する方向に偏光した光が光射出部72に導入される場合、光射出部72もまた、そのような偏光方向の光に対して例えば近接場光等の微小光を射出できるような構成の表面プラズモン発生素子を用いる必要がある。その一構成例を、図7に示す。
図7は、変形例1の熱アシスト磁気ヘッドにおける光射出部72の概略構成を示す。なお、図7は、光射出面S3側から見た光射出部72近傍の概略斜視図である。光射出部72は、表面72aが三角形状の金属膜で形成される。そして、その金属膜の表面72aの面内方向が伝播光175の偏光方向A5と平行となるように配置する。また、この例では、三角形状の金属膜の一つの側面72bが伝播光175の偏光方向A5と直交するように配置し、且つ、その側面72bに対向する頂角部72cが光射出面S3に露出するように配置する。
上述のように配置された三角形状の金属膜に偏光方向A5の伝播光175が入射されると、金属膜において、偏光方向A5に表面プラズモン共鳴現象が発生し、光射出面S3に露出した頂角部72cから、例えば近接場光等の微小光170が出射される。
なお、変形例1における光射出部72を構成する金属膜の表面形状は、三角形に限定されず、微小光170を光射出面S3から出射できるような表面形状であれば任意の形状にすることができる。表面形状が例えば矩形や楕円等の金属膜を用い、その長手方向と伝播光175の偏光方向A5とが一致するように金属膜を配置してもよい。また、表面形状が例えば円形等の金属膜を用いてもよい。
上述のように、変形例1の熱アシスト磁気ヘッドでは、シングルモード導波路70内の2つの分岐した導波路部間に伝播光の光路長差を設け、光射出部72に導入する光の偏光方向を制御する。また、変形例1では、光射出部72を、それに導入される光の偏光方向に応じて微小光を出射可能な表面プラズモン発生素子で構成にする。これらのこと以外は、第1の実施形態の熱アシスト磁気ヘッドと同様である。それゆえ、この例においても、第1の実施形態と同様の効果が得られる。
[変形例2]
上記第1の実施形態及び変形例1では、シングルモード導波路の延在途中で、光導波路を2つに分岐する構成例を説明したが、本発明はこれに限定されず、シングルモード導波路を途中で分岐しない構成にしてもよい。変形例2では、その一構成例を説明する。
図8に、変形例2の熱アシスト磁気ヘッドにおける記録光生成部の概略構成を示す。なお、図8において、上記第1の実施形態(図2)と同様の構成には、同じ符号を付して示す。この例の記録光生成部75では、集光部41のシングルモード導波路76側の端部が、光射出面S3に直交する方向において光射出部43と重ならないような位置に、集光部41を配置する。
また、シングルモード導波路76は、集光部41の先端から光射出面S3に向かって接続磁極部33付近まで直線的に延在した第1導波路部76aと、第1導波路部76aの先端から略S字状に曲がって形成された第2導波路部76bとで構成される。なお、第2導波路部76bは、接続磁極部33を迂回するように形成される。また、この例では、第2導波路部76bの曲部の曲率は、伝播光を無損失または低損失で伝播できるような曲率に設定される。
上述のように、変形例2では、光射出面S3に直交する方向において、集光部41の先端部と光射出部43とが重ならないような位置に集光部41を配置する。これにより、シングルモード導波路76を分岐せずに、接続磁極部33を迂回させて光射出部43に接続することができる。
それゆえ、変形例2の熱アシスト磁気ヘッドにおいても、第1の実施形態と同様に、記録磁界の磁路を加熱することなく、集光部41で集光した光を光射出部43に伝播させることができる。したがって、この例においても、第1の実施形態と同様の効果が得られる。なお、この例では、シングルモード導波路を途中で分岐する必要がないので、光導波路の構成がより簡易になる。
[変形例3]
変形例3では、シングルモード導波路をその延在途中で分岐しない別の構成例を説明する。図9に、変形例3の熱アシスト磁気ヘッドにおける記録光生成部の概略構成を示す。なお、図9において、上記第1の実施形態(図2)と同様の構成には、同じ符号を付して示す。
この例の記録光生成部77では、集光部41と光射出部43とを、直線状に延在したシングルモード導波路78で接続する。そして、この例では、接続磁極部79のシングルモード導波路78が通過する領域に貫通穴79aを形成し、記録磁界の磁路が伝播光により加熱されないような構成にする。ただし、貫通穴79aの径は、シングルモード導波路78の径(幅または厚さ)より大きくし、シングルモード導波路78と接続磁極部79とが接触しないように構成する。
光導波路を構成する材料の屈折率によっては、シングルモード導波路78は、例えば数百nm程度の非常に細い径で形成することができる。それゆえ、接続磁極部79のサイズをシングルモード導波路78の径に対して十分大きくできる場合には、接続磁極部79にシングルモード導波路78を通すための最小限の径を有する貫通穴79aを設けても、磁極の磁気特性の劣化を最小限に抑えることができる。
変形例3の熱アシスト磁気ヘッドにおいても、第1の実施形態と同様に、記録磁界の磁路を加熱することなく、集光部41で集光した光を光射出部43に伝播させることができる。それゆえ、この例においても、第1の実施形態と同様の効果が得られる。なお、この例では、シングルモード導波路を途中で分岐する必要もなく、また、光導波路を曲げる必要もないので、光導波路の構成がより一層簡易になる。
なお、上述した変形例2及び3において、光射出部43(表面プラズモン発生素子)の構成は、上記第1の実施形態及び変形例1で説明したように、光射出部43に導光される光の偏光方向に応じて適宜設計される。
[変形例4]
上記第1の実施形態及び変形例1〜3では、集光部をグレーティングカプラで構成する例を説明したが、本発明はこれに限定されない。光源からの入射光の光路変換及び集光の両動作を行うことができる構成であれば、任意の構成の集光部を用いることができる。変形例4では、その一構成例を示す。
図10に、変形例4の熱アシスト磁気ヘッドの概略断面図を示す。なお、図10において、上記第1の実施形態の熱アシスト磁気ヘッド100(図1)と同様の構成には、同じ符号を付して示す。
変形例4では、熱アシスト磁気ヘッド180内の集光部81の構成を、第1の実施形態のそれとは変えた。それ以外の構成は、第1の実施形態の熱アシスト磁気ヘッド100と同様である。それゆえ、ここでは、集光部81の構成のみを説明し、その他の構成の説明は省略する。
集光部81は、熱アシスト磁気ヘッド180の光射出面S3と直交する先端面S4に設けられた集光レンズ82(集光構造体)と、シングルモード導波路42の光射出部43側とは反対側の端部に接続された金属膜83(金属部材)とで構成される。なお、集光レンズ82は、熱アシスト磁気ヘッド180の先端面S4に直交する方向において、金属膜83及びシングルモード導波路42間の接続部と対向する位置に配置される。
集光レンズ82は、熱アシスト磁気ヘッド180の先端面S4に設置された光源86の発光面86aと対向する位置に配置される。そして、集光レンズ82は、発光面86aから出射された入射光を集光し、その集光した光を後述する金属膜83とシングルモード導波路42との境界に形成されたミラー部84に導入する。
また、集光レンズ82の例えば曲率等の構成は、上記図5で説明したシングルモード導波路42への光の導入効率を考慮して適宜設定される。具体的には、光源86からの入射光が、シングルモード導波路42のサイズに適した集光スポットサイズに絞り込まれるように、集光レンズ82の構成を適宜設定する。
なお、この例では、光源86として、VCSEL(Vertical Cavity Surface Emitting LASER)を用いた例を示す。そして、光源86は、熱アシスト磁気ヘッド180の先端面S4に設けられた電極87を介して実装される。なお、スライダ本体306のトレーリング面S2には、通常、磁気デバイス用の電極パッドが設けられており、それに合わせて、熱アシスト磁気ヘッド180の先端面S4にも光源86等を実装するための電極87が設けられる。
また、図11に、金属膜83とシングルモード導波路42との境界付近の概略構成を示す。この例では、金属膜83は、表面が矩形状の金属膜であり、その幅は、シングルモード導波路42の幅より広く、厚さは、シングルモード導波路42の厚さと同じである。そして、金属膜83の入射光側の表面のサイズを入射光側とは反対側の表面のサイズより小さくし、且つ、金属膜83のシングルモード導波路42側の端面をテイパー状にする。なお、シングルモード導波路42への光の導光効率の低下を抑制するため、金属膜83の厚さ及び幅は、ともに、シングルモード導波路42のそれらの値以上とすることが好ましい。また、金属膜83の形成材料としては、反射効率の高い金属材料で形成することが好ましく、例えばアルミニウム、銀、金等で形成することができる。
このような構成の金属膜83を用いることにより、金属膜83とシングルモード導波路42との界面には、ミラー部84(反射ミラー)が画成される。そして、このミラー部84に、集光レンズ82で集光された光が導入されると、その光は、ミラー部84で反射され、シングルモード導波路42に導光される。この際、上述のように、ミラー部84に導入される光は、シングルモード導波路42のサイズに適した集光スポットサイズに絞り込まれているので、ミラー部84で反射された光は効率よくシングルモード導波路42に導入される。なお、ミラー部84のシングルモード導波路42の延在方向に対する傾斜角は、例えばミラー部84に導入される光の入射角、シングルモード導波路42の延在方向、並びに、光源及びシングルモード導波路42間の配置関係等に基づいて適宜設定される。
なお、図10に示す例では、熱アシスト磁気ヘッド180の先端面S4に設けられた集光レンズ82のみで、光源86からの入射光を集光する例を説明したが、本発明はこれに限定されない。集光レンズ82のみで、十分に入射光を絞り込めない場合には、集光レンズ82の光源86側に、別途、集光機能を有する光学系を設けてもよい。このように、複数の光学系を用いて、所望の集光機能(特性)を実現する場合には、一つの光学系で実現する場合に比べて、設計及び製造がより容易になる。
上述のように、この例の集光部81においても、第1の実施形態と同様に、光源86からの入射光に対して光路変換及び集光の両動作を行うことができる。それゆえ、この例においても、第1の実施形態と同様の効果が得られる。
また、この例では、図10に示す変形例4の熱アシスト磁気ヘッドにおけるシングルモード導波路42への導光効率をFDTD法による光学シミュレーション解析で調べた。このシミュレーション解析では、シングルモード導波路42の周囲にはクラッド材が設けられているものとする。
シミュレーション解析では、シングルモード導波路42を屈折率2.15の棒状部材(コア材)で構成し、クラッド材を屈折率1.65の材料で形成する。シングルモード導波路42の延在方向に直交する断面は正方形とし、その幅及び厚さは、ともに300nmとする。また、シングルモード導波路60に入射(導入)する光の波長は850nmとする。
さらに、ミラー部84に入射される光のスポットサイズは、クラッド材内で255nmとする。なお、このスポットサイズを有する光は、開口数NA=0.83のレンズで絞り込まれた光に相当する。
上述のような条件で図10に示す変形例4の熱アシスト磁気ヘッドにおけるシングルモード導波路42への導光効率を算出した結果、ミラー部84に入射される伝播光のシングルモード導波路42内への導光効率は約49%であった。この導光効率は、上記非特許文献1で示されている効率(約50%)と同等である。このシミュレーション解析の結果から、この例の構成においても、伝播光をシングルモード導波路42内へ効率よく導光できることが確認できた。
なお、図10に示す例では、集光レンズ82を、熱アシスト磁気ヘッド180の先端面S4に設ける例を説明したが本発明はこれに限定されない。光源86からの入射光を集光する構造体(光学素子)を熱アシスト磁気ヘッド内に埋め込んでもよい。図12及び図13に、その集光部の構成例を示す。なお、図12及び図13において、上記変形例4の集光部81(図10)と同様の構成には、同じ符号を付して示す。
図12に示す集光部90の例では、集光レンズ91(集光構造体)を熱アシスト磁気ヘッドの絶縁部50内に埋め込み、熱アシスト磁気ヘッドの先端面S4に直交する方向において、ミラー部84と対向する位置に配置する。この集光レンズ91では、入射光側の凸面で入射光を屈折させて、入射光を絞り込む。
また、図13に示す集光部95の例では、フレネルレンズ96(集光構造体)を熱アシスト磁気ヘッドの絶縁部50の先端面近傍に埋め込む。フレネルレンズ96は、互いに径の異なるリング状屈折部材96a〜96cを同心円状に配置して構成される。そして、フレネルレンズ96の中心が、熱アシスト磁気ヘッドの先端面S4に直交する方向において、ミラー部84と対向する位置に配置されるように、フレネルレンズ96を形成する。このフレネルレンズ96では、光源からの入射光がフレネルレンズ96を通過する際の回折を利用して、入射光を絞り込む。
図12及び図13に示す集光部においても、図10に示す集光部81と同様に、光源からの入射光を集光してミラー部84に入射させることができる。なお、図12及び図13に示す集光レンズ91及びフレネルレンズ96は、例えば、タンタルオキサイド(屈折率:2.15)、シリコンナイトライド(屈折率:2.1)等で形成することができる。
なお、図10〜13に示す例では、光源86が熱アシスト磁気ヘッドの先端面S4に設けられる例を説明したが、本発明はこれに限定されず、例えば、光源86を光射出面S3の対向面に配置し且つ光射出部43の直上に配置してもよい。この場合には、ミラー部84を設けず、光源86からの入射光を集光する光学系をシングルモード導波路42と光源86との間に設ければよい。このような集光部では、光学系で集光された光が直接、シングルモード導波路42に導入される構成となるので、光路変換機能は有さない。
また、変形例4のように、光導波路としてシングルモード導波路を用いた場合、上記第1の実施形態と同様に、光導波路を所定の曲率範囲内で曲げても、無損失または低損失で光を伝播させることができる。それゆえ、この例においても、例えば、光導波路の構成、集光部及び光源の配置位置等の自由度を大きくすることができる。
例えば、光源として例えばLD等を熱アシスト磁気ヘッドに直接取り付ける場合、その電極パッドと磁気デバイス用電極パッドとの兼ね合い、LDの放熱設計、LDチップの空気流への影響等を様々な要素を考慮して、光源の配置が決定される。それゆえ、変形例4では、上述した光源の設置場所の自由度の増大は、実装の容易性の観点で優位になる。
[変形例5]
上記第1の実施形態では、記録光生成部の集光部に入射する入射光が一つである例を説明したが、本発明はこれに限定されず、複数の入射光を用いてもよい。なお、複数の入射光の生成源としては、複数の光源を用いてもよいし、一つの光源で複数の光を射出可能な光源を用いてもよい。後者の例としては、例えば上記変形例4で光源として用いたVCSEL(垂直共振器面発光レーザ)が挙げられる。
VCSELは、レーザ光の発光層をアレイ化することが容易である。それゆえ、アレイ化された複数の発光層を有するVCSELを複数の入射光の光源として用いることができる。変形例5では、そのような複数の入射光を射出可能なVCSELを光源として用いた例を説明する。
図14に、第1の実施形態の熱アシスト磁気ヘッド100の記録光生成部40の集光部41(グレーティングカプラ)に、VCSELから複数の光が入射された際の様子を示す。なお、図14中に点線で示す丸印111〜114は、入射光の光スポットを示している。
この例では、VCSELから4つの光111〜114(Ch.1〜4の入射光111〜114)が入射される例を説明する。また、この例では、4つの入射光111〜114の照射形態は2×2配列とし、各入射光が互いに重ならないように照射する。なお、入射光の数、複数の入射光の照射形態は、この例に限定されず、例えば集光部41の構成、必要とする記録光強度等を考慮して適宜設定される。
この例のように、光の入射面が扇状の集光部41に4つの入射光111〜114が照射されると、4つの入射光111〜114がシングルモード導波路42の光導入口付近で集光される。これにより、より大きなパワーの光をシングルモード導波路42に効率よく導入することができる。
なお、図14の例において、微小光を出射する光射出部(図14では不図示)を、例えば図3に示すような表面プラズモン発生素子で構成する場合には、4つの入射光111〜114の偏向方向を、その表面プラズモン発生素子の構成に応じて適宜調整する。具体的には、微小で高強度の光を光射出部から出射するために、一対の金属膜の対向方向と、一対の金属膜に導入する伝播光の偏光方向とが一致するように、4つの入射光111〜114の偏向方向を調整する。
例えば、一対の金属膜の対向方向が図14中のシングルモード導波路42の幅方向(図14面上では左右方向)である場合、4つの入射光111〜114の偏向方向を、集光部41面内において、集光部41の凹凸パターンの周期方向と直交する方向に合わせる。また、例えば、一対の金属膜の対向方向が図14中のシングルモード導波路42の厚さ方向(図14面上では紙面に直交する方向)である場合には、4つの入射光111〜114の偏向方向を、集光部41の凹凸パターンの周期方向(光の伝播方向)に合わせる。
[変形例6]
上記第1の実施形態及び種々の変形例では、光導波路が1本である例を説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば上記変形例5で説明したように、複数の入射光を用いる場合には、入射光毎に、集光部及び光導波路を設けてもよい。その一例(変形例6)を、図15に示す。
図15は、変形例6の熱アシスト磁気ヘッドにおける記録光生成部120の概略構成図である。なお、図15において、上記第1の実施形態(図2)と同様の構成には、同じ符号を付して示す。また、この例では、入射光の数を4つとする。
この例の記録光生成部120は、4つの集光部121a〜121dと、それらにそれぞれ接続された4つのシングルモード導波路122a〜122dと、光射出部43とを備える。
4つの集光部121a〜121dのそれぞれは、上記第1の実施形態の集光部41(図2)と同様の構成であり、入射面が扇状のグレーティングカプラで構成される。
また、4つのシングルモード導波路122a〜122dはそれぞれ、内部を伝播する光がシングルモードとなるように構成される。ただし、各シングルモード導波路は、記録磁界生成部の接続磁極部を迂回するように、略L字状に曲げられて形成される。そして、4つのシングルモード導波路122a〜122dの光射出面S3側の端部は、光射出部43付近で接続される。
なお、各シングルモード導波路の曲部の曲率は、伝播光を無損失または低損失で伝播させるような曲率に設定される。さらに、各シングルモード導波路の延在長さは、光射出部43に導入する光の偏光方向が所望の方向となるように適宜設定される。
また、この例では、4つの集光部121a〜121dに4つの入射光191〜194がそれぞれ入射されるように、VCSEL190が、4つの集光部121a〜121dの入射面に対向して配置される。なお、4つの入射光191〜194の波長は同じでもよいし、異なっていてもよい。
上述のような構成にすることにより、より大きなパワーの伝搬光を光射出部43に導入することができる。
なお、図15の例において、微小光を出射する光射出部43を、例えば図3に示すような表面プラズモン発生素子で構成する場合には、4つの入射光191〜194の偏向方向を、その表面プラズモン発生素子の構成に応じて適宜調整する。具体的には、微小で高強度の光を光射出部43から出射するために、一対の金属膜の対向方向と、一対の金属膜に導入する伝播光の偏光方向とが一致するように、4つの入射光191〜194の偏向方向を調整する。
例えば、一対の金属膜の対向方向が図15面上で左右方向である場合には、4つの入射光191〜194の偏向方向を、それぞれ対応する集光部121a〜121d面内において、各集光部の凹凸パターンの周期方向と直交する方向に合わせる。また、例えば、一対の金属膜の対向方向が図15面上で紙面に直交する方向である場合には、4つの入射光191〜194の偏向方向のそれぞれを、対応する各集光部121a〜121dの凹凸パターンの周期方向(光の伝播方向)に合わせる。
なお、上記第1の実施形態及び種々の変形例では、シングルモード導波路の主な延在方向を光射出面S3に直交する方向(情報記録媒体に向かう方向)とする例を説明したが、本発明はこれに限定されない。上述したように、シングルモード導波路は所定の曲率範囲内では、自由にその延在方向を曲げることができる。それゆえ、光源からの入射光を最終的に光射出部へ導光することができる範囲であれば、例えば、集光部及び光源の配置位置、シングルモード導波路の延在方向(形状)等を任意に設定することができる。
また、上記第1の実施形態及び種々の変形例では、熱アシスト磁気ヘッドが、磁気再生素子を含む例を説明したが、本発明はこれに限定されない。熱アシスト磁気ヘッドを情報記録専用に用いる場合には、磁気再生素子を含まない構成にしてもよい。
<3.第2の実施形態>
図16に、本発明の第2の実施形態に係る記録再生装置の概略構成例を示す。なお、本実施形態では、熱アシスト磁気ヘッドから例えば近接場光等の微小光を情報記録媒体に照射して情報の記録及び/または再生を行う記録再生装置について説明する。
記録再生装置300(情報記録装置)は、主に、浮上スライダ301と、浮上スライダ301を支持するサスペンション302と、浮上スライダ301を駆動するヘッドアクチュエータ303(駆動部)と、スピンドル304とを備える。なお、情報記録媒体200は、スピンドル304の回転軸305に固定され、回転駆動される。
情報記録媒体200は、ディスク状の媒体であり、上記第1の実施形態で説明した情報記録媒体と同様の構成である。すなわち、情報記録媒体200は、基板201と、その基板201上に形成された磁気記録層202とを備える(後述の図1参照)。そして、磁気記録層202が浮上スライダ301の下面と対向するように、情報記録媒体200がスピンドル304に装着される。また、情報記録媒体200の表面には、記録再生装置300の動作時における浮上スライダ301と情報記録媒体200との接触による損傷を防ぐために、適宜潤滑剤及び保護膜が薄厚で形成される。
図17に、本実施形態の記録再生装置300の浮上スライダ301付近の拡大側面図を示す。浮上スライダ301は、スライダ本体306と、スライダ本体306の先端部に搭載された熱アシスト磁気ヘッド100とを備える。
スライダ本体306は、記録再生装置300の動作時には、情報記録媒体200と対向して近接して配置される。この際、熱アシスト磁気ヘッド100もまた、情報記録媒体200と対向するように配置される。
熱アシスト磁気ヘッド100は、上記第1の実施形態で説明した熱アシスト磁気ヘッドである。それゆえ、本実施形態によれば、より安定した光強度の微小光を用いて熱アシスト記録が可能になり、高密度記録を安定して行うことができる。なお、本実施形態の記録再生装置300の熱アシスト磁気ヘッドとして、上述した種々の変形例の熱アシスト磁気ヘッドを用いてもよい。
また、上記第2の実施形態では、本発明の熱アシスト磁気ヘッドを備える情報記録装置として、情報の記録及び/または再生可能な記録再生装置を例に挙げ説明したが、本発明はこれに限定されない。記録専用の記録装置に対しても、本発明の熱アシスト磁気ヘッドは同様に適用可能であり、同様の効果が得られる。
上記第1及び第2の実施形態では、スライダタイプの記録再生装置に本発明の熱アシスト磁気ヘッドを適用する例を説明したが、本発明はこれに限定されない。熱アシスト磁気ヘッドと情報記録媒体との距離をアクチュエータで制御するタイプの記録再生装置にも同様に適用可能であり、同様の効果が得られる。