JP2011084562A - 熱塩基発生剤、高分子前駆体組成物、当該組成物を用いた物品 - Google Patents
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Abstract
Description
例えば、高分子材料であるポリイミドは、耐熱性、寸法安定性、絶縁特性といった性能が有機物の中でもトップクラスの性能を示すため、電子部品の絶縁材料等へ広く適用され、半導体素子の中のチップコーティング膜や、フレキシブルプリント配線板の基材などとして盛んに利用されてきている。
また、近年、ポリイミドの有する課題を解決する為に、ポリイミドと類似の加工工程が適用される低吸水性で低誘電率を示すポリベンゾオキサゾールや、基板との密着性に優れるポリベンゾイミダゾール等も精力的に研究されている。
本発明の高分子前駆体組成物は、前記本発明の熱塩基発生剤を用いることにより、保存安定性が良好でありながら、より低温で高分子前駆体から高分子に変換でき、且つ、アウトガスを発生し難いという効果を奏する。
さらに本発明の高分子前駆体組成物においては、酸と異なり塩基が金属の腐食を起こさないため、より信頼性の高い硬化膜を得ることが出来る。
なお、本発明において(メタ)アクリロイルとは、アクリロイル及び/又はメタクリロイルを意味し、(メタ)アクリルとは、アクリル及び/又はメタクリルを意味し、(メタ)アクリレートとは、アクリレート及び/又はメタクリレートを意味する。
<熱塩基発生剤>
本発明に係る熱塩基発生剤は、下記化学式(1)で表わされ、且つ加熱により塩基を発生することを特徴とする。
有機基としては、飽和又は不飽和アルキル基、飽和又は不飽和シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、及び飽和又は不飽和ハロゲン化アルキル基等が挙げられる。これらの有機基は、当該有機基中にヘテロ原子等の炭化水素基以外の結合や置換基を含んでよく、これらは、直鎖状でも分岐状でも良い。
R1及びR2における有機基は、通常、1価の有機基であるが、後述する環状構造を形成する場合や、生成するNHR1R2がジアミン等のアミド結合を形成可能なNH基を2つ以上有する塩基性物質の場合等には、2価以上の有機基となり得る。
環状構造は、飽和又は不飽和の脂環式炭化水素、複素環、及び縮合環、並びに当該脂環式炭化水素、複素環、及び縮合環よりなる群から選ばれる2種以上が組み合されてなる構造であっても良い。
前記R1及びR2の有機基中の炭化水素基以外の置換基としては、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シアノ基、イソシアノ基、シアナト基、イソシアナト基、チオシアナト基、イソチオシアナト基、シリル基、シラノール基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、チオカルバモイル基、ニトロ基、ニトロソ基、カルボキシル基、カルボキシラート基、アシル基、アシルオキシ基、スルフィノ基、スルホ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホノ基、ホスホナト基、ヒドロキシイミノ基、飽和又は不飽和アルキルエーテル基、飽和又は不飽和アルキルチオエーテル基、アリールエーテル基、及びアリールチオエーテル基が好ましい。
高分子前駆体から最終生成物への反応に対する反応開始温度を低下させる等の触媒作用は、塩基性の大きい塩基性物質の方が触媒としての効果が大きく、より少量の添加で、より低い温度での最終生成物への反応が可能となる。一般に1級アミンよりは2級アミンの方が塩基性は高く、その触媒効果が大きい。
また、芳香族アミンよりも脂肪族アミンの方が塩基性が強いため好ましい。
本発明においては特に、式(1)中のR3が、水素ではなく、上記特定の官能基である場合には、R4〜R7の全てが水素であっても、加熱のみによって塩基を発生する。これは、式(1)中のR3が、水素ではなく、上記特定の官能基である場合には、R3の立体障害による効果によって、式(1)中の(−CR3=CH−C(=O)−)部分がシス体へと異性化しやすくなり、加熱のみによって塩基を発生するのではないかと推定される。式(1)中のR3が、水素ではなく、上記特定の官能基である場合には、R3が水素の場合と比べて、有機溶剤に対する溶解性が向上したり、高分子前駆体との親和性が向上するといった効果も期待できる。例えば、R3が、アルキル基やアリール基等の有機基である場合、有機溶剤に対する溶解性が向上する。また、例えばR3がフッ素等のハロゲンである場合、フッ素等のハロゲンを含有する高分子前駆体との親和性が向上する。また、例えばR3がシリル基やシラノール基を有する場合、ポリシロキサン前駆体との親和性が向上する。
有機基としては、本発明の効果が損なわれない限り、特に制限がなく、飽和又は不飽和アルキル基、飽和又は不飽和シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、及び飽和又は不飽和ハロゲン化アルキル基、シアノ基、イソシアノ基、シアナト基、イソシアナト基、チオシアナト基、イソチオシアナト基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、チオカルバモイル基、カルボキシル基、カルボキシラート基、アシル基、アシルオキシ基、ヒドロキシイミノ基等が挙げられる。これらの有機基は、当該有機基中にヘテロ原子等の炭化水素基以外の結合や置換基を含んでよく、これらは、直鎖状でも分岐状でも良い。R3における有機基は、通常、1価の有機基である。
前記R3の有機基中の炭化水素基以外の結合としては、特に限定されず、本発明の効果が損なわれない限り、特に限定されず、エーテル結合、チオエーテル結合、カルボニル結合、チオカルボニル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合、イミノ結合(−N=C(−R)−、−C(=NR)−、ここでRは水素原子又は有機基)、カーボネート結合、スルホニル結合、スルフィニル結合、アゾ結合等が挙げられる。耐熱性の点から、有機基中の炭化水素基以外の結合としては、エーテル結合、チオエーテル結合、カルボニル結合、チオカルボニル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合、イミノ結合(−N=C(−R)−、−C(=NR)−:ここでRは水素原子又は有機基)、カーボネート結合、スルホニル結合、スルフィニル結合が好ましい。
中でも、R3の有機基中の炭化水素基以外の置換基としては、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シアノ基、イソシアノ基、シアナト基、イソシアナト基、チオシアナト基、イソチオシアナト基、シリル基、シラノール基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、チオカルバモイル基、ニトロ基、ニトロソ基、カルボキシル基、カルボキシラート基、アシル基、アシルオキシ基、スルフィノ基、スルホ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホノ基、ホスホナト基、ヒドロキシイミノ基、飽和又は不飽和アルキルエーテル基、飽和又は不飽和アルキルチオエーテル基、アリールエーテル基、及びアリールチオエーテル基が好ましい。
但し、上記R3が水素である場合には、R4、R5、R6及びR7は、それらの2つ以上が結合して環状構造を形成しており、当該環状構造はヘテロ原子の結合を含んでいても良いものである。
また、上記R3が水素である場合には、R4〜R7は、酸素や硫黄等のヘテロ原子を含む、複素環式化合物を形成していることが、電子状態の変化が大きくなり塩基発生温度が下がる点から、好ましい。
固体状態としては、化学式(1)で表される熱塩基発生剤の5%重量減少温度を指標とする。ここで5%重量減少温度とは、熱重量分析装置を用いて重量減少を測定した時に、サンプルの重量が初期重量から5%減少した時点(すなわち、サンプル重量が初期の95%となった時点)の温度である。
また、溶液中としては、化学式(1)で表される熱塩基発生剤の2mg/mL溶液のNMR測定において、塩基を10モル%発生する温度を指標とする。塩基を10モル%発生する温度は、例えば、熱塩基発生剤を、重DMSO等の重水素化溶媒に2mg/mL溶かしてNMR測定用溶液を調製して、順次加熱した試料を作製する。当該順次加熱した試料を、NMR装置(例えば、400MHzのNMR装置、具体例:日本電子(株)製、JEOL JNM−LA400WB)を用いて、1H−NMR測定を行い、熱塩基発生剤から発生した塩基量(モル%)を測定することによって得られる。
例えば、高分子前駆体として、ポリイミド前駆体やポリベンゾオキサゾール前駆体と組み合わせて用いる場合には、上記化学式(1)で表される熱塩基発生剤において、熱分解開始温度が100℃以上350℃以下であることが好ましく、更に150℃以上250℃以下であることが好ましい。ポリイミド前駆体やポリベンゾオキサゾール前駆体の場合、塗膜を形成する際にN−メチル−2−ピロリドンなどの高沸点溶媒を用いる必要があるが、このように5%重量減少温度が高い場合には残留溶媒の影響が少なくなるような乾燥条件で塗膜を形成することができる。
一方、高分子前駆体として、エポキシ基、イソシアネート基、オキセタン基、又はチイラン基を有する化合物及び高分子、ポリシロキサン前駆体と組み合わせて用いる場合には、上記化学式(1)で表される熱塩基発生剤において、熱分解開始温度が40℃以上200℃以下であることが好ましく、更に50℃以上150℃以下であることが好ましい。エポキシ基、イソシアネート基、オキセタン基、又はチイラン基を有する化合物及び高分子、ポリシロキサン前駆体の場合、上記のポリイミド前駆体等と比べて硬化に必要な温度が低いため、塩基が発生する温度は比較的低温であることが好ましいからである。
また、前記式(1)で表される熱塩基発生剤の塩基発生以外の分解を防ぐために、300℃以下で加熱することが好ましい。
前記式(1)のR3に置換基を導入する場合、まず、各置換基を導入したヒドロキシフェニル−(C=O)−R3(例えば、R3がメチル基の場合は、各置換基を導入した2’−ヒドロキシフェニルメチルケトン)の合成を行う。たとえば、対応する置換基を有するフェノールに、Friedel-Craftsアシル化反応を行うことで、各置換基を導入したヒドロキシフェニル−(C=O)−R3の合成できる。次に、各置換基を導入したヒドロキシフェニル−(C=O)−R3に、wittig反応、Knoevenagel反応、又はPerkin反応を行うことで、各置換基を導入した桂皮酸誘導体の合成を行う。そして、上記各置換基を導入した桂皮酸誘導体に、適宜選択されたアミンや塩基性物質を縮合し、目的物を得ることができる。
本発明の熱塩基発生剤の合成方法はこれに限定されるものではない。本発明の熱塩基発生剤は、複数の従来公知の合成ルートを組み合わせて合成することができる。
本発明に係る高分子前駆体組成物は、塩基性物質によって又は塩基性物質の存在下での加熱によって最終生成物への反応が促進される高分子前駆体、及び、前記本発明に係る下記化学式(1)で表わされ且つ加熱により塩基を発生する熱塩基発生剤を含有することを特徴とする。
熱塩基発生剤及び高分子前駆体としては、1種単独で用いても良いし、2種以上混合して用いても良い。
本発明の高分子前駆体組成物に用いる高分子前駆体とは、反応により最終的に目的の物性を示す高分子となる物質を意味し、当該反応には分子間反応及び分子内反応がある。高分子前駆体自体は、比較的低分子の化合物であっても高分子化合物であってもよい。
また、本発明の高分子前駆体は、塩基性物質によって又は塩基性物質の存在下での加熱によって最終生成物への反応が促進される化合物である。ここで、高分子前駆体が、塩基性物質によって又は塩基性物質の存在下での加熱によって最終生成物への反応が促進される態様には、高分子前駆体が塩基性物質の作用のみによって最終生成物に変化する態様のみならず、塩基性物質の作用によって高分子前駆体の最終生成物への反応温度が、塩基性物質の作用がない場合に比べて低下するような態様が含まれる。
分子間反応により目的の高分子となる高分子前駆体としては、反応性置換基を有し重合反応をする化合物及び高分子、又は、分子間に結合を形成する反応(架橋反応)をする化合物及び高分子がある。当該反応性置換基としては、エポキシ基、オキセタン基、チイラン基、イソシアネート基、ヒドロキシル基、シラノール基等が挙げられる。また、高分子前駆体には、分子間で加水分解・重縮合する化合物も含まれ、反応性置換基には、ポリシロキサン前駆体の−SiX(ここで、Xはアルコキシ基、アセトキシ基、オキシム基、エノキシ基、アミノ基、アミノキシ基、アミド基、及びハロゲンよりなる群から選択される加水分解性基)も挙げられる。
反応性置換基を有し重合反応をする高分子としては、例えば、2個以上のエポキシ基を有する高分子(エポキシ樹脂)、2個以上のオキセタン基を有する高分子、及び2個以上のチイラン基を有する高分子が挙げられる。下記に特にエポキシ基を有する化合物及び高分子について具体的に説明するが、オキセタン基、チイラン基を有する化合物及び高分子についても同様に用いることが可能である。
上記1個以上のエポキシ基を有する化合物及び高分子としては、分子内に1個以上のエポキシ基を有するものであれば特に制限なく、従来公知のものを使用できる。
前記熱塩基発生剤は、一般的には分子内に1個以上のエポキシ基を有する化合物の硬化触媒としての機能も有する。
また、重量平均分子量3,000〜100,000のポリマー側鎖に上記官能基を導入したものを用いることが好ましい。3,000未満では膜強度の低下及び硬化膜表面にタック性が生じ、不純物等が付着しやすくなる恐れがある。また、100,000より大きいと粘度が増大する恐れがあり好ましくない。
分子間で架橋反応をする高分子としては、例えば、分子内に2個以上のイソシアネート基を有する高分子(イソシアネート樹脂)と分子内に2個以上のヒドロキシル基を有する高分子(ポリオール)の組み合わせが挙げられる。
また、分子間で架橋反応をする化合物と高分子の組み合わせを用いても良い。例えば、分子内に2個以上のイソシアネート基を有する高分子(イソシアネート樹脂)と分子内に2個以上のヒドロキシル基を有する化合物の組み合わせ、及び、分子内に2個以上のイソシアネート基を有する化合物と分子内に2個以上のヒドロキシル基を有する高分子(ポリオール)の組み合わせ等が挙げられる。
イソシアネート基をもつ化合物及び高分子としては、分子内に2個以上のイソシアネート基を有するものであれば特に制限なく、公知のものを使用できる。このような化合物としては、p−フェニレンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等に代表される低分子化合物の他に、オリゴマー、重量平均分子量3,000以上のポリマーの側鎖又は末端にイソシアネート基が存在する高分子を用いてもよい。
前記イソシアネート基を持つ化合物及び高分子は、通常、分子内にヒドロキシル基を持つ化合物と組み合わせて用いられる。このようなヒドロキシル基を有する化合物としては、分子内に2個以上のヒドロキシル基を有するものであれば特に制限なく、公知のものを使用できる。このような化合物としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、ペンタエリスリトール等の低分子化合物の他に、重量平均分子量3,000以上のポリマーの側鎖又は末端にヒドロキシル基が存在する高分子を用いてもよい。
分子間で加水分解・重縮合する化合物としては、たとえばポリシロキサン前駆体が挙げられる。
ポリシロキサン前駆体としては、YnSiX(4−n)(ここで、Yは置換基を有していても良いアルキル基、フルオロアルキル基、ビニル基、フェニル基、または水素を示し、Xはアルコキシ基、アセトキシ基、オキシム基、エノキシ基、アミノ基、アミノキシ基、アミド基、及びハロゲンよりなる群から選択される加水分解性基を示す。nは0〜3までの整数である。) で示される有機ケイ素化合物及び当該有機ケイ素化合物の加水分解重縮合物が挙げられる。中でも、上記式においてnが0〜2であるものが好ましい。また、シリカ分散オリゴマー溶液の調製がし易く入手も容易な点から、上記加水分解性基としては、アルコキシ基であるものが好ましい。
上記有機ケイ素化合物としては、特に制限なく、公知のものを使用できる。例えば、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、メチルトリクロルシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、メチルトリt−ブトキシシラン、エチルトリブロムシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン、ジメチルジクロルシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、フッ素系シランカップリング剤として知られたフルオロアルキルシラン、および、それらの加水分解縮合物もしくは共加水分解縮合物;並びに、それらの混合物を挙げることができる。
分子内閉環反応によって最終的に目的の物性を示す高分子となる高分子前駆体としてはポリイミド前駆体、ポリベンゾオキサゾール前駆体等がある。これらの前駆体は2種類以上の別々に合成した高分子前駆体の混合物でもよい。
以下、本発明の好ましい高分子前駆体であるポリイミド前駆体とポリベンゾオキサゾール前駆体について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
ポリイミド前駆体としては、下記化学式(3)で表される繰り返し単位を有するポリアミック酸が好適に用いられる。
ポリイミド前駆体としては、R11及びR12が水素原子であるようなポリアミック酸が、アルカリ現像性の点から好適に用いられる。
また、用いる高分子前駆体がポリアミック酸である場合、塩基性物質の触媒効果によりイミド化に要する温度が低くても十分な為、最終キュア温度を300℃未満、更に好ましくは250℃以下まで下げることが可能である。従来のポリアミック酸はイミド化するために最終キュア温度を300℃以上とする必要があった為、用途が制限されていたが、最終キュア温度を下げることが可能になったことによって、より広範囲の用途に適用が可能である。
m−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2−ジ(3−アミノフェニル)プロパン、2,2−ジ(4−アミノフェニル)プロパン、2−(3−アミノフェニル)−2−(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ジ(3−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ジ(4−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2−(3−アミノフェニル)−2−(4−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,1−ジ(3−アミノフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ジ(4−アミノフェニル)−1−フェニルエタン、1−(3−アミノフェニル)−1−(4−アミノフェニル)−1−フェニルエタン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、2,6−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゾニトリル、2,6−ビス(3−アミノフェノキシ)ピリジン、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、
具体例としては、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジトリフルオロメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル等が挙げられる。
ここで、選択されるジアミンは耐熱性の観点より芳香族ジアミンが好ましいが、目的の物性に応じてジアミンの全体の60モル%、好ましくは40モル%を超えない範囲で、脂肪族ジアミンやシロキサン系ジアミン等の芳香族以外のジアミンを用いても良い。
このようにして合成されるポリイミド前駆体は、最終的に得られるポリイミドに耐熱性及び寸法安定性を求める場合には、芳香族酸成分及び/又は芳香族アミン成分の共重合割合ができるだけ大きいことが好ましい。具体的には、イミド構造の繰り返し単位を構成する酸成分に占める芳香族酸成分の割合が50モル%以上、特に70モル%以上であることが好ましく、イミド構造の繰り返し単位を構成するアミン成分に占める芳香族アミン成分の割合が40モル%以上、特に60モル%以上であることが好ましく、全芳香族ポリイミドであることが特に好ましい。
本発明に用いられるポリベンゾオキサゾール前駆体としては、下記化学式(5)で表される繰り返し単位を有するポリアミドアルコールが好適に用いられる。
ここで用いている分子量とは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の値のことをいい、ポリイミド前駆体などの高分子前駆体そのものの分子量でも良いし、無水酢酸等で化学的イミド化処理を行った後のものでも良い。
本発明に係る高分子前駆体組成物は、前記化学式(1)で表される熱塩基発生剤と、1種類以上の高分子前駆体と、溶媒の単純な混合物であってもよいが、さらに、光又は熱硬化性成分、高分子前駆体以外の非重合性バインダー樹脂、その他の成分を配合して、高分子前駆体組成物を調製してもよい。
前記化学式(1)で表される熱塩基発生剤は、高分子前駆体組成物に含まれる高分子前駆体の固形分に対し、通常、0.1〜95重量%、好ましくは0.5〜60重量%の範囲内で含有させる。0.1重量%未満であると硬化が十分でない恐れがあり、95重量%を超えると最終的に得られる樹脂硬化物の特性が最終生成物に反映されにくい。
エポキシ系化合物と組み合わせる場合など、硬化剤として用いられる場合には、硬化の程度にもよるが通常、0.1〜95重量%、好ましくは0.5〜60重量%の範囲内で含有させる。
一方、硬化促進剤として用いられる場合には、少量の添加で硬化が可能となり、前記化学式(1)で表される熱塩基発生剤は、高分子前駆体組成物に含まれる高分子前駆体の固形分に対し、通常、0.1〜30重量%、好ましくは0.5〜20重量%の範囲内で含有させることが好ましい。
なお、高分子前駆体組成物の固形分とは、溶剤以外の全成分であり、液状のモノマー成分も固形分に含まれる。
ここで本発明におけるガラス転移温度は、高分子前駆体組成物から得られるポリイミド及びポリベンゾオキサゾールをフィルム形状にすることが出来る場合には、動的粘弾性測定によって、tanδ(tanδ=損失弾性率(E”)/貯蔵弾性率(E’))のピーク温度から求められる。動的粘弾性測定としては、例えば、粘弾性測定装置Solid Analyzer RSA II(Rheometric Scientific社製)によって、周波数3Hz、昇温速度5℃/minにより行うことができる。高分子前駆体組成物から得られるポリイミド及びポリベンゾオキサゾールをフィルム形状にできない場合には、示差熱分析(DTA)のベースラインの変曲点の温度で判断する。
本発明における線熱膨張係数とは、本発明で得られる高分子前駆体組成物から得られるポリイミド及びポリベンゾオキサゾールのフィルムの熱機械分析装置(TMA)によって求めることができる。熱機械分析装置(例えば、Thermo Plus TMA8310((株)リガク製)によって、昇温速度を10℃/min、評価サンプルの断面積当たりの加重が同じになるように引張り加重を1g/25,000μm2として得られる。
化学式(1)で表される熱塩基発生剤を構成する芳香族成分含有カルボン酸、並びに、塩基性物質は比較的安価に入手することが可能なので、高分子前駆体組成物としての価格も抑えられる。
本発明に係る高分子前駆体組成物は、上記化学式(1)で表される熱塩基発生剤により、多種多様な高分子前駆体の最終生成物への反応促進に適用することができ、最終的に得られる高分子の構造を広範囲から選択することができる。
また、電磁波の照射により発生したアミンなどの塩基性物質の触媒効果により、例えばポリイミド前駆体やポリベンゾオキサゾール前駆体から最終生成物へのイミド化などの環化等の反応に要する処理温度を低減できる為、プロセスへの負荷や製品への熱によるダメージを低減することが可能である。
更に、アウトガスを発生し難いことから、アウトガス発生に伴う問題を解決し、硬化膜の強度や外観が良好になる。
また、以下に示す装置を用いて各測定、実験を行った。
5%重量減少温度測定:(株)島津製作所製、示差熱・熱重量同時測定装置DTG−60
赤外線吸収スペクトル測定:バリアン・テクノロジーズ・ジャパン・リミテッド社製、FTS 7000
塗膜の加熱:アズワン(株)製、HOT PLATE EC−1200(本実施例中、ホットプレートと記載することがある)
ジ(4−アミノフェニル)エーテル10.0g(50mmol)を300mLの3つ口フラスコに投入し、105.4mLの脱水されたN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)に溶解させ窒素気流下、氷浴で冷却しながら撹拌した。そこへ、少しずつ3,3’,4,4’ −ビフェニルテトラカルボン酸二無水物14.7g(50mmol)を添加し、添加終了後、氷浴中で5時間撹拌し、その溶液を、脱水されたジエチルエーテルによって再沈殿し、その沈殿物を室温で減圧下、17時間乾燥し、重量平均分子量10,000のポリアミド酸(ポリイミド前駆体(1))を白色固体として定量的に得た。
100mLフラスコ中、炭酸カリウム2.00gをメタノール15mLに加えた。50mLフラスコ中、エトキシカルボニルメチル(トリフェニル)ホスホニウム ブロミド(東京化成工業(株)製)2.67g(6.2mmol)、2−ヒドロキシ−1−ナフトアルデヒド1.07g(6.2 mmol)(東京化成工業(株)製)をメタノール10mLに溶解し、よく撹拌した炭酸カリウム溶液にゆっくり滴下した。3時間撹拌した後、TLCにより反応の終了を確認したうえでろ過を行い炭酸カリウムを除き、減圧濃縮した。濃縮後、1Nの水酸化ナトリウム水溶液を50mL加え1時間撹拌した。反応終了後、ろ過によりトリフェニルホスフィンオキシドを除いた後、濃塩酸を滴下し反応液を酸性にした。沈殿物をろ過により集め、少量のクロロホルムにより洗浄することで3−(2−ヒドロキシ−1−ナフタレニル)−アクリル酸を1.20g得た。続いて、100 mL三口フラスコ中、3−(2−ヒドロキシ−1−ナフタレニル)−アクリル酸1.00g(4.67mmol)を脱水テトラヒドロキシフラン20mLに溶解し、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(東京化成工業(株)製) 1.07g(5.60mmol)を加えた。30分後、ピペリジン0.65ml(5.60mmol)(東京化成工業(株)製)を加え室温で一晩攪拌した。反応液を濃縮し、クロロホルムで抽出、希塩酸、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、食塩水で洗浄し、ろ過することにより、下記化学式(6)で表される熱塩基発生剤(1)を480mg得た。
500mLナスフラスコ中、セサモール(東京化成工業(株)製)10.0g(72.4mmol)、ヘキサメチレンテトラミン(東京化成工業(株)製)15.2g(109mmol、1.5eq)をトリフルオロ酢酸(関東化学(株)製)100mlに溶解し、95℃で10時間反応を行った。反応終了後、氷浴下で1規定塩酸200mlを添加し15分間撹拌した。撹拌終了後、クロロホルムで抽出し、塩酸・飽和食塩水で洗浄を行うことにより6−ヒドロキシ−3,4−メチレンジオキシベンズアルデヒドを2.38g(14.3mmol)得た。
続いて、200mLフラスコ中、炭酸カリウム2.00gをメタノール20mLに加えた。100mLフラスコ中、エトキシカルボニルメチル(トリフェニル)ホスホニウムブロミド(東京化成工業(株)製)6.15g(14.3mmol)、6−ヒドロキシ−3,4−メチレンジオキシベンズアルデヒドを2.38g(14.3mmol)をメタノール25mLに溶解し、よく撹拌した炭酸カリウム溶液にゆっくり滴下した。3時間撹拌した後、薄層クロマトグラフィーにより反応の終了を確認したうえで、ろ過を行い炭酸カリウムを除き、減圧濃縮した。濃縮後、1Nの水酸化ナトリウム水溶液を30mL加え終夜で撹拌した。反応終了後、沈殿物をろ過により除き、濃塩酸を滴下し反応液を酸性にした。沈殿物をろ過により集め、少量のクロロホルムにより洗浄することで2−ヒドロキシ−4,5−メチレンジオキシケイ皮酸を2.90g(13.9mmol)得た。
続いて、窒素雰囲気下、100mL三口フラスコ中、2−ヒドロキシ−4,5−メチレンジオキシケイ皮酸2.90g(13.9mmol)を脱水テトラヒドロキシフラン40mLに溶解し、氷浴下で1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(東京化成工業(株)製)3.20g(16.7mmol、1.2eq)を加えた。30分後、ピペリジン(東京化成工業(株)製)1.65ml(16.7mmol、1.2eq)を加えたのち終夜で攪拌した。反応終了後、反応溶液を濃縮し、水に溶解した。クロロホルムで抽出した後、炭酸水素水溶液、1N塩酸、飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムにて乾燥を行った。シリカゲルカラムクマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム/メタノール100/1〜50/1)により精製することにより下記化学式(7)で表される熱塩基発生剤(2)を485mg(1.76mmol)得た。
100mLフラスコ中、炭酸カリウム2.00gをメタノール15mLに加えた。50mLフラスコ中、エトキシカルボニルメチル(トリフェニル)ホスホニウム ブロミド(東京化成工業(株)製)2.67g(6.2mmol)、1−ヒドロキシ−2−ナフトアルデヒド1.07g(6.2 mmol)(東京化成工業(株)製)をメタノール10mLに溶解し、よく撹拌した炭酸カリウム溶液にゆっくり滴下した。3時間撹拌した後、TLCにより反応の終了を確認したうえでろ過を行い炭酸カリウムを除き、減圧濃縮した。濃縮後、1Nの水酸化ナトリウム水溶液を50mL加え1時間撹拌した。反応終了後、ろ過によりトリフェニルホスフィンオキシドを除いた後、濃塩酸を滴下し反応液を酸性にした。沈殿物をろ過により集め、少量のクロロホルムにより洗浄することで3−(1−ヒドロキシ−2−ナフタレニル)−アクリル酸を1.31g得た。続いて、100 mL三口フラスコ中、3−(1−ヒドロキシ−2−ナフタレニル)−アクリル酸1.00g(4.67mmol)を脱水テトラヒドロキシフラン20mLに溶解し、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(東京化成工業(株)製) 1.07g(5.60mmol)を加えた。30分後、ピペリジン0.65ml(5.60mmol)(東京化成工業(株)製)を加え室温で一晩攪拌した。反応液を濃縮し、クロロホルムで抽出、希塩酸、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、食塩水で洗浄し、ろ過することにより、下記化学式(8)で表される熱塩基発生剤(3)を520mg得た。
Journal of Heterocyclic Chemistry (1987), 24(3), 565-9.に記載の方法に従って、2-ヒドロキシ-1-アントラセンカルボキシアルデヒド(2-hydroxy-1-Anthracenecarboxaldehyde)を合成した。
100mLフラスコ中、炭酸カリウム2.00gをメタノール15mLに加えた。50mLフラスコ中、エトキシカルボニルメチル(トリフェニル)ホスホニウム ブロミド(東京化成工業(株)製)2.67g(6.2mmol)、2-ヒドロキシ-1-アントラセンカルボキシアルデヒド1.38g(6.2 mmol)をメタノール10mLに溶解し、よく撹拌した炭酸カリウム溶液にゆっくり滴下した。3時間撹拌した後、TLCにより反応の終了を確認したうえでろ過を行い炭酸カリウムを除き、減圧濃縮した。濃縮後、1Nの水酸化ナトリウム水溶液を50mL加え1時間撹拌した。反応終了後、ろ過によりトリフェニルホスフィンオキシドを除いた後、濃塩酸を滴下し反応液を酸性にした。沈殿物をろ過により集め、少量のクロロホルムにより洗浄することで3−(2−ヒドロキシ−1−アントラセニル)−アクリル酸を1.19g得た。続いて、100 mL三口フラスコ中、3−(2−ヒドロキシ−1−アントラセニル)−アクリル酸1.00g(3.78mmol)を脱水テトラヒドロキシフラン20mLに溶解し、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(東京化成工業(株)製) 0.87g(4.54mmol)を加えた。30分後、ピペリジン0.53ml(4.54mmol)(東京化成工業(株)製)を加え室温で一晩攪拌した。反応液を濃縮し、クロロホルムで抽出、希塩酸、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、食塩水で洗浄し、ろ過することにより、下記化学式(9)で表される熱塩基発生剤(4)を380mg得た。
Catalysis Communications (2008), 9(5), 645-649を参考にして、2-ヘキシル-1,3-ベンゾジオキソールを合成した。
アルゴン気流下、200 ml四つ口フラスコに2-ヘキシル-1,3-ベンゾジオキソール (10.31 g, 50 mmol)、四酢酸鉛(東京化成工業(株)) (30.5 g, 55.0 mmol、1.1eq)、DMF(100 ml)を入れて撹拌し、80℃で5時間反応させた。反応終了後、放冷し、酢酸エチル、水を加えて抽出した。得られた有機相を全て併せ、水、飽和食塩水で洗浄後、硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥剤を濾別後、濃縮した。続いて、1N水酸化ナトリウム水溶液を50 ml加え終夜で撹拌した。反応終了後、酢酸エチル、抽出した。得られた有機相を全て併せ、水、飽和食塩水で洗浄後、硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥剤を濾別後、濃縮し、得られた粗体をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製することで2−ヘキシルベンゾ[d][1,3]ジオキソール−5−オール(2-hexylbenzo[d][1,3]dioxol-5-ol)を1.3g得た。
100mLナスフラスコ中、2−ヘキシルベンゾ[d][1,3]ジオキソール−5−オール1.0g(4.50mmol)、ヘキサメチレンテトラミン(東京化成工業(株)製)0.94g(6.75mmol、1.5eq)をトリフルオロ酢酸(関東化学(株)製)10mlに溶解し、95℃で10時間反応を行った。反応終了後、氷浴下で1規定塩酸20mlを添加し15分間撹拌した。撹拌終了後、クロロホルムで抽出し、塩酸・飽和食塩水で洗浄を行うことにより2−ヘキシル−6−ヒドロキシベンゾ[d][1,3]ジオキソール−5−カルボアルデヒド(2-hexyl-6-hydroxybenzo[d][1,3]dioxole-5-carbaldehyde)を0.52g得た。
続いて、窒素雰囲気下、100mL三口フラスコ中、桂皮酸誘導体A0.40g(1.37mmol)を脱水テトラヒドロキシフラン10mLに溶解し、氷浴下で1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(東京化成工業(株)製)0.30g(1.64mmol、1.2eq)を加えた。30分後、ピペリジン(東京化成(株)製)0.16ml(1.64mmol、1.2eq)を加えたのち終夜で攪拌した。反応終了後、反応溶液を濃縮し、水に溶解した。クロロホルムで抽出した後、炭酸水素水溶液、1N塩酸、飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムにて乾燥を行った。シリカゲルカラムクマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム/メタノール100/1〜50/1)により精製することにより下記化学式(10)で表される熱塩基発生剤(5)を32mg得た。
100mLフラスコ中、(トリフェニルホスホラニリデン)酢酸エチル(東京化成工業(株)製)2.56(7.34mmol)、2’−ヒドロキシアセトフェノン(東京化成工業(株)製)2.56g(7.34mmol、1.0eq)をトルエン20mLに溶解し、80℃で3時間撹拌した。薄層クロマトグラフィーにより反応の終了を確認したうえで、飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、クロロホルムで抽出した後、水、飽和塩化アンモニウム水溶液にて洗浄した後、無水硫酸マグネシウムを用い乾燥した。濃縮後、シリカゲルカラムクロムトグラフィー(展開溶媒 ヘキサン/酢酸エチル 2/1(体積比))により精製した。
続いて、1Nの水酸化ナトリウム水溶液を15mL加え終夜で撹拌した。反応終了後、沈殿物をろ過により除き、濃塩酸を滴下し反応液を酸性にしたのち、クロロホルムで抽出し濃縮し、桂皮酸誘導体Bを580mg(3.25mmol)得た。
続いて、窒素雰囲気下、100mL三口フラスコ中、桂皮酸誘導体B0.50g(2.80mmol)を脱水テトラヒドロキシフラン10mLに溶解し、氷浴下で1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(東京化成工業(株)製)0.64g(3.4mmol、1.2eq)を加えた。30分後、ピペリジン(東京化成(株)製)0.33ml(3.4mmol、1.2eq)を加えたのち終夜で攪拌した。反応終了後、反応溶液を濃縮し、水に溶解した。クロロホルムで抽出した後、炭酸水素水溶液、1N塩酸、飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムにて乾燥を行ったのち、濃縮することで下記化学式(11)で表される熱塩基発生剤(6)を272mg(1.04mmol)得た。
100mLフラスコ中、(トリフェニルホスホラニリデン)酢酸エチル(東京化成工業(株)製)2.56(7.34mmol)、2’−ヒドロキシ−4’−メトキシアセトフェノン(東京化成工業(株)製)1.22g(7.34mmol、1.0eq)をトルエン20mLに溶解し、80℃で3時間撹拌した。薄層クロマトグラフィーにより反応の終了を確認したうえで、飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、クロロホルムで抽出した後、水、飽和塩化アンモニウム水溶液にて洗浄した後、無水硫酸マグネシウムを用い乾燥した。濃縮後、シリカゲルカラムクロムトグラフィー(展開溶媒 ヘキサン/酢酸エチル 2/1(体積比))により精製した。
続いて、1Nの水酸化ナトリウム水溶液を15mL加え終夜で撹拌した。反応終了後、沈殿物をろ過により除き、濃塩酸を滴下し反応液を酸性にしたのち、クロロホルムで抽出し濃縮し、桂皮酸誘導体Cを520mg得た。
続いて、窒素雰囲気下、100mL三口フラスコ中、桂皮酸誘導体C0.49g(2.80mmol)を脱水テトラヒドロキシフラン10mLに溶解し、氷浴下で1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(東京化成工業(株)製)0.64g(3.4mmol、1.2eq)を加えた。30分後、ピペリジン(東京化成(株)製)0.33ml(3.4mmol、1.2eq)を加えたのち終夜で攪拌した。反応終了後、反応溶液を濃縮し、水に溶解した。クロロホルムで抽出した後、炭酸水素水溶液、1N塩酸、飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムにて乾燥を行ったのち、濃縮することで下記化学式(12)で表される熱塩基発生剤(7)を152mg得た。
製造例7において、2’−ヒドロキシ−4’−メトキシアセトフェノンを用いる代わりに、1’−ヒドロキシ−2’−アセトナフトン(東京化成工業(株)製)を用いて、製造例7と同様にして、ケイ皮酸の合成を行うことで桂皮酸誘導体Dを得た。続いて、製造例7において、桂皮酸誘導体Cの代わりに桂皮酸誘導体Dを用いることでアミド化反応を行い、シリカゲルカラムクマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム/メタノール100/1〜50/1)により精製することにより下記化学式(13)で表される塩基発生剤(8)を得た。
合成した熱塩基発生剤(1)〜(8)について、熱分解開始温度について以下の測定を行い評価した。
(1)固体状態の5%重量減少温度
熱塩基発生剤(1)〜(8)について(株)島津製作所製、示差熱・熱重量同時測定装置DTG−60を用いて、昇温速度10℃/minの条件で5%重量減少温度を測定した。各熱塩基発生剤の5%重量減少温度の結果を表1に示す。
(2)溶液中の10モル%塩基発生温度
熱塩基発生剤(1)〜(8)についてそれぞれ1mgを、NMR管中で重ジメチルスルホキシド0.5μLに溶解させ、2mg/mLのNMR測定用溶液をそれぞれ調製した。調製した試料をそれぞれ、温めたオイルバスを用いて10分間加熱したのち、NMR測定を行った。オイルバスは10℃毎に上昇させ、10℃毎にNMR測定を行った。
各熱塩基発生剤の10モル%塩基発生温度を、各熱塩基発生剤の熱分解開始温度と決定した。
下記に示す組成の高分子前駆体組成物(1)を調製した。
・ポリイミド前駆体(1):100重量部
・熱塩基発生剤(1):15重量部
・溶剤(NMP(N−メチルピロリドン)):843重量部
実施例1において、熱塩基発生剤(1)の代わりに、熱塩基発生剤(2)〜(8)を用いて、高分子前駆体組成物(2)〜(8)を調製した。
実施例1において熱塩基発生剤(1)を加えなかった以外は、実施例1と同様にして、比較高分子前駆体組成物(1)を調製した。
高分子前駆体組成物(1)〜(8)及び比較高分子前駆体組成物(1)を、それぞれ、クロムめっきされたガラス上に最終膜厚4μmになるようにスピンコートし、80℃のホットプレート上で10分間乾燥させて、高分子前駆体組成物(1)〜(8)及び比較高分子前駆体組成物(1)の塗膜を1枚ずつ得た。その後、それぞれの塗膜について、160℃で10分間加熱した。
加熱後のサンプルのサンプルに対し赤外線吸収スペクトル測定を行い、イミド化率を求めた。熱塩基発生剤を添加した高分子前駆体組成物(1)〜(8)の塗膜ではイミド化率が下記表2で表されるように高かったのに対し、熱塩基発生剤を添加しなかった比較高分子前駆体組成物(1)の塗膜ではイミド化率が0.40であり、熱塩基発生剤の添加により高分子前駆体から高分子への変換が促進されていることが明らかとなった。
なおイミド化率は、脱水環化によりポリイミド前駆体からポリイミドへ変換された場合に出現する、C=O伸縮運動に由来する1774cm−1の吸収強度と、イミド化後も変化しないベンゼン環のC−C伸縮運動に由来する1500cm−1の吸収強度を用いて、1774cm−1と1500cm−1の吸収強度比から算出される。
本発明に係る熱塩基発生剤(7)を用いて、下記に示す組成の高分子前駆体組成物(9)を調製した。
・エポキシ樹脂(YP50EK35(フェノキシ樹脂)、35重量%メチルエチルケトン溶液 新日鐵化学社製):100重量部
・熱塩基発生剤(7):35重量部
実施例9において熱塩基発生剤(7)を加えなかった以外は、実施例9と同様にして、比較高分子前駆体組成物(2)を調製した。
イソシアナート樹脂としてヘキサメチレンジイソシアナート(関東化学製)100重量部、水酸基を持つ樹脂としてポリテトラヒドロフラン(アルドリッチ製)150重量部、塩基発生剤(7)10重量部、テトラヒドロフラン500重量部からなる高分子前駆体組成物(10)を調製した。
冷却管をつけた100mlのフラスコにフェニルトリエトキシシラン5g、トリエトキシシラン10g、アンモニア水0.05g、水5ml及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート50mlを加えた。半円形型のメカニカルスターラーを用いて溶液を撹拌し、マントルヒーターを用いて70℃で6時間反応させた。次いでエバポレーターを用いて水との縮合反応で生成したエタノールと残留水とを除去した。反応終了後、フラスコを室温になるまで放置し、アルコキシシランの縮合物(アルコキシシラン縮合物(1))を調製した。
上記合成例2で得られたアルコキシシラン縮合物(1) 100重量部と、塩基発生剤(7) 10重量部とを混合した後、溶剤であるテトラヒドロフラン500重量部に溶解させ、高分子前駆体組成物(11)を調製した。
実施例11において熱塩基発生剤(7)を加えなかった以外は、実施例11と同様にして、比較高分子前駆体組成物(3)を調製した。
Claims (8)
- 下記化学式(1)で表わされ、且つ加熱により塩基を発生することを特徴とする、熱塩基発生剤。
- 熱分解開始温度が40℃以上350℃以下であることを特徴とする、請求項1に記載の熱塩基発生剤。
- 塩基性物質によって又は塩基性物質の存在下での加熱によって最終生成物への反応が促進される高分子前駆体、及び、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の熱塩基発生剤を含有することを特徴とする、高分子前駆体組成物。
- 前記高分子前駆体が、エポキシ基、イソシアネート基、オキセタン基、又はチイラン基を有する化合物及び高分子、ポリシロキサン前駆体、ポリイミド前駆体、並びにポリベンゾオキサゾール前駆体よりなる群から選択される1種以上を含むことを特徴とする、請求項4に記載の高分子前駆体組成物。
- 前記高分子前駆体が、ポリイミド前駆体又はポリベンゾオキサゾール前駆体であることを特徴とする、請求項4又は5に記載の高分子前駆体組成物。
- 塗料、印刷インキ、シール剤、又は接着剤、或いは、表示装置、半導体装置、電子部品、微小電気機械システム、光学部材又は建築材料の形成材料として用いられる、請求項4乃至6のいずれか一項に記載の高分子前駆体組成物。
- 請求項4乃至7のいずれか一項に記載の高分子前駆体組成物又はその硬化物により少なくとも一部分が形成されている、印刷物、塗料、シール剤、接着剤、表示装置、半導体装置、電子部品、微小電気機械システム、光学部材又は建築材料のいずれかの物品。
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