JP2011083323A - ミシン - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ミシンモータ1により糸切断を行う糸切り装置30と、糸切り装置とミシンモータを制御する制御手段100と、主軸角度を検出する位置検出器14,15とを備え、糸切り装置は、糸切りカム51と、糸切りカムのカム溝51aに係合するカム従節体52と、カム従節体に連動する動メス31と、カム従節体を係合状態に切り替える糸切りソレノイド56と、釜押さえ13とを備え、制御手段が、速度設定手段で定められた回転速度に応じて、糸切りソレノイドによるカム従節体の連結状態への切り替え動作が一定の主軸角度Aで完了するように駆動開始タイミングを制御する。
【選択図】図12
Description
そして、従来のミシンでは、縫製の最終針でミシンモータを所定速度に維持しつつ、糸切りソレノイドによりコロを糸切りカムに係合させ、ミシンモータの最終針の1回転を利用して糸切りカムから動メスに切断動作を付与して糸切りを行っている(例えば、特許文献1参照)。
これに対して、糸切りソレノイドは、負荷等の外的要因により駆動指令を受けてから実際に動作を開始するまでにタイムラグがあり、また、コロがカム溝内でダンピングする場合があり、これが静まるまではコロがカム溝に適切に係合した状態とならない。このため、コロの係合動作の開始からの完了までには、上記タイムラグやダンピングの制動時間の合計分の所要時間を必要としていた。
そして、上記縫い糸の切断中のミシンモータの回転速度は、切断動作の安定性のために低速に設定されたり、作業の迅速化のために高速に設定されたり、必要に応じて調整が行われている。
即ち、ミシンモータの縫い糸切断時の回転速度が高速に設定されると、糸切りカムも連動して高速で回転するので、コロの係合動作が完了するまでにカム溝の係合区間から動作区間に移行してしまい、コロの係合不良を生じて切断が行えない場合があった。
また、縫い糸の切断時には、釜の外側から釜内のボビンに突き当ててボビンの空回りを抑止すると共に糸の残り長さを確保する「ピッカー」と呼ばれる釜押さえを糸切りソレノイドによりコロと連動させることがある。その場合、ミシンモータの縫い糸切断時の回転速度が低速に設定されると、縫い針が釜に対して十分に上方に待避する前に釜押さえがボビンに向かって突き当てられ、当該釜押さえと縫い針とが干渉(接触)を生じる場合があった。その結果、釜押さえが機能しなかったり、釜押さえ又は縫い針が破壊される場合があった。
本発明の実施形態たるミシン10について図面を参照して説明する。図1はミシン10の全体構成を示すブロック図、図2は底板を外した状態でミシン10を下方から見た斜視図である。
ミシン10は、縫い針の上下動を行う針上下動機構(図示略)と、縫い針に通された上糸を捕捉して下糸を絡めて縫い目を形成する釜機構(図示略)と、針板に形成された開口部から出没して所定の布送り方向に被縫製物を送る布送り機構20と、上糸及び下糸の切断を行う糸切り装置30と、糸切り装置30の動メス31に切断動作を付与する糸切り駆動機構50と、上記各構成の動作制御を行う制御手段としての制御装置100と、上記各構成を支持又は格納するミシンフレーム(ミシンベッド部2のみ図示)とを備えている。
なお、以下の説明では、ミシン10を水平面に設置した状態において、水平であって布送り方向に一致する方向をX軸方向、水平であってX軸方向に直交する方向をY軸方向、鉛直上下方向をZ軸方向というものとする。また、Z軸方向における一方の方向で上側を「上」、下側を「下」、X軸方向における一方の方向でミシンに対してオペレータが位置する方向を「後」、その逆側を「前」、Y軸方向における一方の方向でオペレータ側から見て左側を「左」、右側を「右」というものとする。
また、この実施形態では、上記ミシン10の糸切り装置30と糸切り駆動機構50とにより本願請求項に記載の発明における「糸切り装置」を構成している。
針上下動機構は、ミシンフレームにおけるミシンアーム部(図示略)の面部側の内部で上下動可能に支持されると共に縫い針を下端部で保持する針棒と、針棒の上下動の駆動源となるミシンモータ1と、ミシンモータ1により回転駆動を行う主軸と、主軸の回転駆動を上下動に変換して針棒に伝えるクランク機構とから構成されており、周知のものと同様である。
釜機構は、いわゆる全回転釜を用いた釜機構であり、ミシンベッド部2内部であって針板の下側に配置された図示しない全回転釜と、全回転側の外釜に回転動作を付与する釜軸11とを備え、周知のものと同様である。上記釜軸11は、ミシンベッド部2の内部においてY軸方向に沿って回転可能に支持されている。かかる釜軸11は、前述した主軸(上軸とも称する。)の二倍速で回転を行うようにミシンモータ1から回転力が付与されている。
釜軸11は、上軸に連動して回転し、縫い針と協働して縫目を形成する。また、釜軸11は、Y軸方向(上下送り軸方向とも称する。)に沿って配置されている。
布送り機構20は、針板の開口部から出没する鋸歯状の送り歯(図示略)をその上面に備えた送り台21と、ミシンモータ1により回転駆動される上下送り軸22と、ミシンモータ1により往復回動を行う水平送り軸23と、上下送り軸22に固定装備された偏心カム24と、一端部が偏心カム24の偏心軸に連結され、他端部が送り台21の後端部に連結される上下送りロッド25と、水平送り軸23に固定支持されて送り台21に連結される揺動端部を前後方向に揺動させる水平送り腕26とを備えている。なお、上下送り軸22は、主軸(上軸とも称する。)と同じ周期で、主軸が1回転すると上下送り軸22も1回転するように、図示しないベルトを介して連結されている。
そして、上下送り軸22が全回転を行うことにより、偏心カム24の偏心軸が行う周回運動の上下動成分のみを上下送りロッド25が送り台21に伝達し、送り台21は縫い針の上下動と同じ周期で上下動を行うこととなる。
ちなみに、前述した釜軸11は、上下送り軸22から増速歯車列を介して回転動作が付与される構成となっており、上下送り軸22の二倍速で回転動作が付与されるようになっている。
これにより、送り台21には、同じ周期で往復上下動と往復前後動とが付与され、これらの位相を適宜調節することで、送り台21は、布送り方向に沿った長円運動を行うようになっている。そして、送り台21の送り歯は、長円運動の上部の区間で針板の開口部から上方に突出し、その際の移動方向が布送り方向に一致するように送り台21の長円回転方向が調整されており、針板状の被縫製物を所定の送り方向に送りことを可能としている。
図3は糸切り装置30を下方から見た底面図である。
図示のように、糸切り装置30は、本体フレーム32と、本体フレーム32に固定支持された固定メス33と、本体フレーム32に回動支持された動メス31と、動メス31を回動させる作動アーム34とを備えている。
動メス31は、段ネジ35によって本体フレーム32に対して回動可能に軸支されており、二点鎖線の図示はその待機位置を示し、実線は往復回動における最後退位置を示している。縫製中には、動メス31は二点鎖線の位置にあり、図示の針落ち位置Sに対して離間している。そして、切断時には、実線位置まで後退することで切断する糸の振り分けを行い、再び二点鎖線の位置まで前進して固定メス33との協働により縫い糸の切断を実行する。
固定メス33は、刃部33aを備えており、後退後の動メス31が前進する際に動メス31の刃部31aと固定メス33の刃部33aとに挟まれた糸が切断されるようになっている。
かかる構造により、糸切り装置30では、糸切り駆動機構50の第二のリンク体61が右方向と左方向の進退移動を行うことにより、作動アーム34の切り欠き34a側の端部が左方に回動した後に右方に回動を行い、動メス31を同方向に回動させることにより糸切断動作を行うことが可能となっている。
図4は図2におけるV−V線に沿った断面図である。
図2及び図4に示すように、糸切り駆動機構50は、上下送り軸22に固定装備された糸切りカム51と、糸切りカム51のカム溝51aに係合可能なカム従節体としてのコロ52と、コロ52を入力部53aで保持すると共に往復回動を行って動メス31に切断動作を伝えるメス駆動腕53と、メス駆動腕53を支持する支軸54と、メス駆動腕53を通じてコロ52がカム溝51aに嵌合しない退避位置から嵌合する嵌合位置への切り換え動作を付与するクラッチ部材55と、クラッチ部材55の切り換え動作の駆動源となるアクチュエータとしての糸切りソレノイド56と、コロ52が退避位置にある時にメス駆動腕53と係合して動メス31の往動の回動を禁止する第一のストッパ57と、メス駆動腕53の出力部53bに一端部が連結された第一のリンク体58(リンク体とも称する。)と、第一のリンク体58の他端部に連結されたメス位置調節手段としてのメス位置調節体59と、メス位置調節体59に当接して、メス駆動腕53を回動範囲における動メス31の動作開始側の一端側で制止させる位置調節可能な第二のストッパ60(ストッパとも称する。)と、メス位置調節体59と糸切り装置30の作動アーム34とを連結する第二のリンク体61(動メス駆動リンクとも称する。)とを備えている。
カム溝51aは、回転中心となる上下送り軸22から一定の距離となる無変位区間と回転中心となる上下送り軸22に徐々に近接してから無変位区間と同じ距離まで戻る変位区間(無変位区間のみ図4に図示)とが無端環状に連なっている。そして、上下送り軸22が、無変位区間にコロ52が対向する軸角度の時にコロ53がカム溝51aに対して進入又は退出を行う。また、カム溝51aに進入したコロ52は、変位区間に存在する際にカム溝51aから略Z軸方向への変位が入力され、当該変位をメス駆動腕53に伝えるようになっている。なお、変位区間は、後述する主軸角で285°〜45°の範囲で形成されており、45°〜285°の区間は無変位区間となっている。
図2,3,4に示すように、メス駆動腕53は、支軸54に固定される円筒状の基部53cと、基部53cから回動半径方向外側に向かって延出された入力部53aと、基部53cから回動半径方向外側であって入力部53aとが異なる方向に向かって延出された出力部53bと、基部53cから回動半径方向外側であって入力部53a及び出力部53bのいずれとも異なる方向に向かって延出された位置規制用突起53dとを備えている。即ち、メス駆動腕53が支軸54に支持された状態において、位置規制用突起53dはおおむね下方に向かって延出され、入力部53aはおおむねX軸方向前方に向かって延出され、出力部53bはおおむね上方に向かって延出されている。
さらに、メス駆動腕53の入力部53a、基部53c及び位置規制用突起53dは、上下送り軸22,水平送り軸23及び釜軸11のいずれもよりも下方に位置し、出力部53bは上下送り軸22,水平送り軸23及び釜軸11のいずれもよりも上方に位置している。
ミシンベッド部2の内部は、上下送り軸22,水平送り軸23及び釜軸11が三本平行に配設されているために、これらの軸22,23,11を境界として下側のエリアと上側のエリアとに分断されているが、メス駆動腕53が上述のように、これらの軸22,23,11の下側から上側に渡っているので、メス駆動腕53に対してコロ52と糸切りカム51との係合状態又はその解除に用いられる構成(クラッチ部材55、糸切りソレノイド56、第一のストッパ57等)を下側のエリアに配置し、メス駆動腕53から動メス31までの間で動作伝達を行う構成(第一のリンク体58、メス位置調節体59、第二のリンク体61等)を全て上側のエリアに配置することが可能となる。
また、メス駆動腕53は、Y軸方向(上下送り軸方向とも称する。)沿って、突起部53eが形成されている。突起部53eには貫通穴が設けられ、この貫通穴に後述する支軸54が挿通される。そして、ネジ70によりメス駆動腕53は支軸54に固定される。
なお、これに代えて、支軸54に2個のEリング又は2個のスラストカラーを設けて、メス駆動腕53のY軸方向の両端を支持するようにすることも容易に考えられる。また、支軸54の一端側に段差部を設けて、メス駆動腕53を装着させたの後、他端側をEリング等で係止することも容易に考えられる。このように、メス駆動腕53を回転可能に支持すると共に、支軸54のY軸方向の移動に伴い、メス駆動腕53がY軸方向に一緒に移動する構成であればよい。
従って、メス駆動腕53は、支軸54と同様の進退動作と回動動作とが可能となっている。また、支軸54にはフランジ部54aが設けられ、当該フランジ部54aを介して支軸54及びメス駆動腕53は押圧バネ62により常時右方に押圧されている。
一方、第一のストッパ57は、位置規制用突起53dの右方に凹部57aが形成されており、当該凹部57aの前側に隣接して、コロ52がカム溝51aに係合した状態を維持するための左方に凸となる係合維持突起57bが形成されている。
前述したように、メス駆動腕53は、押圧バネ62により常に右方に押圧されているので、右方に凹となる凹部57a内に位置規制用突起53dが嵌合した状態が維持されるようになっている。そして、糸切りソレノイド56及びクラッチ部材55により、位置規制用突起53dは押圧バネ62に抗して左方に押圧されると、凹部57aから脱することができ、さらに、メス駆動腕53の入力腕53aに保持されたコロ52がカム溝51aに嵌合して、カム溝51aの変位区間により、位置規制用突起53dが前側に移動するようにメス駆動腕53に回動動作が付与されると、位置規制用突起53dのすぐ右隣で係合維持突起57bが当接した状態(図5の二点鎖線の状態)となり、押圧バネ62の押圧力を受けても、メス駆動腕53は右方に移動せず、コロ52もカム溝51aから脱することがないように維持される。
さらに、クラッチ部材55の他方の回動端部は、釜機構の内釜の内部に収容されるボビンの回転を阻止する釜糸押さえ13を回転阻止状態に引き寄せるための連結リンク部材63が連結されている。これにより、糸切りソレノイド56がクラッチ部材55を底面視反時計方向に回動させる場合に、同時に、釜糸押さえ13を回動させてボビンの回転を阻止状態とし、糸切りの際に下糸がボビンから繰り出されて切断不良となることを回避することが可能となっている。
上記のように、本実施形態では、第一の回動片64、第二の回動片65を用いた。これに代えて、1個の回動片を用いて、一端側にリンク体58を、他端側に後述する動メス駆動リンク61を連結させて、同様の機能を持たせることも容易に考えられる。
また、スットパ60は第一の回動片64に当接するように構成したが、後述するリンク体58に当接するように構成することも容易に考えられる。
また、リンク体58は、釜軸11と略直交するとともに、釜軸11とミシンベッド上面2aとの間に配置される。
次に、ミシン10の制御手段としての制御装置100及びこれに関連するミシン10の制御系について図1に基づいて説明する。
制御装置100は、後述するミシン10の各種制御を実行するためのプログラム及び各種の設定データが格納されたROM102と、ROM102内の各種プログラムを実行するCPU101と、CPU101の各プログラムの実行の際にデータの一時記憶領を行い作業領域となるRAM103と、設定変更し得る各種のデータや所定のプログラムが記憶されるEEPROM104と、前述したミシンモータ1の駆動回路105と、ミシンに対する各種の指令や設定の入力を行うための操作パネル109と、そのインターフェイス回路106と、先述した糸切りソレノイド56の糸切り駆動回路107と、縫製の開始、中断、糸切りなどの実行を入力するための図示しない速度変更用ペダル(以下、単にペダルという)に設けられた速度変更用ペダルセンサ108とを備えている。
また、ミシンモータ1の出力軸には微小角度単位でパルス出力を行うエンコーダ14が設けられ、ミシンモータ1により回転駆動が行われる主軸には所定角度で信号出力を行う針位置検出器15が設けられている。これらは、いずれもCPU101に接続されており、これらの出力からCPU101は、常に主軸の軸角度を検出することを可能としている。つまり、これらは「位置検出器」として機能する。
次に、ROM102内に格納されている縫製制御プログラムにより、CPU101が実行する縫製制御について説明する。図7は縫製制御のフローチャートである。
ここで、前述したペダルは、踏み込み操作における中立位置が設定されており、当該中立位置を基準に前側への踏み込みと、後側への踏み込みを行うことが可能となっている。そして、制御装置100は、かかるペダルに対する入力操作を速度変更用ペダル用センサ108から検出し、これに応じた縫製制御を実行する。即ち、ペダルの前踏み操作が行われると、ミシンモータ1の回転駆動による縫製動作が行われ、縫製動作状態からペダルが中立位置に戻されると、下停止位置(針棒下死点を過ぎて釜の剣先が縫い針の縫い糸を捕捉し始める主軸角度)でのミシンモータ1の停止が行われる。また、中立位置に戻されてからさらにペダルの後踏みが行われると第一の糸切り制御が行われ、前踏み状態から中立位置での停止を行うことなく直接後踏みが行われると、第二の糸切り制御が行われる。第一と第二の糸切り制御についてはそれぞれ後述することとする。
縫製中は、ペダルの中立位置の検知を行い(ステップS13)、中立位置の操作を検知すると、CPU101は、ミシンモータ1の駆動を下停止位置で停止させる(ステップS14)。即ち、中立位置の操作を検知すると、CPU101は、ミシンモータ1を減速し、針位置検出器15及びエンコーダ14(針位置検出器15等とする)の出力から下停止位置を示す主軸角度の検出を待ってからミシンモータ1の停止を行う。
また、前踏みが検知されない場合には、後踏みの検知を行い(ステップS16)、検知されない場合には、ステップS15に処理を戻して前踏みの検知状態となる。一方、後踏みが検知されると、CPU101は、第一の糸切り制御を実行し(ステップS17)、その後、縫製を終了させる。
後踏みが行われていなければステップS13に戻って再び中立位置の検知を行い、後踏みが行われた場合には、CPU101は、第二の糸切り制御を実行し(ステップS19)、その後、縫製を終了させる。
次に、ROM102内に格納されている第一の切断制御プログラムにより、CPU101が実行する第一の切断制御について説明する。図8は主軸角度(横軸)に対する針棒の高さ(縦軸)の変化を表した線図である。
図示のように針棒の上死点が主軸角度0°、下死点が180°であることを前提として第一の切断制御を説明する。
第一の切断制御は、下停止位置を目標停止位置としてミシンモータ1を停止させた状態で糸切りソレノイド56の作動を開始させてコロ52を糸切りカム51のカム溝51aに向かって進入させて係合させると共に、糸切りソレノイド56の駆動開始から所定のディレイ時間(待ち時間)の経過を待ってからミシンモータ1を再開駆動させて糸切りを行う制御である。
さらに、ミシンモータ1を下停止位置で停止させる場合には、実際の停止位置は諸条件によって変動し、その前後215°〜250°の範囲(下停止区間)でばらつくこととなる。
従って、ミシンモータ1を下停止位置で停止させる場合に実際の停止位置が変位区間側にずれた場合(例えば250°で停止した場合)、コロ52の係合動作の完了が間に合わなくなる恐れがある。
そして、この再開駆動速度が高速(例えば680[rpm])に設定されているような場合にも、コロ52の係合動作の完了が間に合わなくなる恐れがある。
即ち、第一の切断制御では、CPU101は、ミシンモータ1の下停止区間における実際の停止位置である下停止角度θ1をエンコーダ14及び位置検出器15の出力から検出すると共に、糸切り設定回転数v1の値の読み出しを行い、これら二つをパラメータとする図9に示すようなテーブルから適切なディレイ時間を特定する。そして、このディレイ時間の差を設けて糸切りソレノイド52とミシンモータ1の駆動を行い、過不足なくコロ52の係合動作を実行し、糸切りを行っている。
なお、上述のテーブルは、実測試験を繰り返し、二つのパラメータに対する適切なディレイ時間を取得して作成しても良いし、各糸切り設定回転数でミシンモータ1を駆動する場合の下停止区間内の各主軸角度からカム動作区間に到達するまでの時間を計算で求め、適切なディレイ時間を算出により取得しても良い。
また、このようにテーブルを参照してディレイ時間を特定する場合に限らず、毎回の第一の切断制御の実行時に上記計算により算出しても良い。
まず、既にミシンモータ1が下停止区間で停止した状態において、CPU101は、実際の下停止角度θ1をエンコーダ14及び針位置検出器15の出力から検出する(ステップS31)。さらに、EEPROM104内に記憶された糸切り設定回転数v1の設定値の読み込みを行う(ステップS32)。
さらに、テーブルを参照して、下停止角度θ1及び糸切り設定回転数v1からディレイ時間Tを決定する(ステップS33)。
さらに、クラッチ部材55の糸張力解除部55bは、解除ワイヤ12を引き寄せて上糸の糸調子装置を解放する。
また、クラッチ部材55の当接部55aは、メス駆動腕53の位置規制用突起53dを左方に押圧し、凹部57aの外側まで移動させると共に、コロ52を糸切りカム51のカム溝51a内に進入させる。このとき、カム溝51aは無変位区間がコロ52の進入位置に来ており、コロ52は円滑にカム溝51a内に進入し、係合動作が行われる。また、第二のストッパ60は予め調整が行われている。
そして、ミシンモータ1の再開駆動により、糸切りカム51は上下送り軸22の回転に伴って回転し、コロ52がカム動作区間にさしかかると、メス駆動腕53を右側面視で反時計方向に回動させ、第一のリンク体58を介して、メス位置調節体59を底面視で時計方向に回転させる。その結果、第二のリンク体61を介して糸切り装置30の作動アーム34の連結端部が右方に回動して動メス31を待機位置から後退するように回動させる(図3の二点鎖線の動メス位置から実線の位置に移動させる)。これにより、動メス31は針落ち位置を通過して、切断すべき糸を選別する。
さらに、糸切りカム51が回転すると、コロは変位区間の後半、つまり、無変位区間に戻るように移動を行い、その結果、メス駆動腕53は右側面視で時計方向に回動し、第一のリンク体58を介して、メス位置調節体59が底面視で反時計方向に回転を行う。その結果、第二のリンク体61を介して糸切り装置30の作動アーム34の連結端部が左方に回動して動メス31を後退位置から待機位置に向かって前進するように回動を行う(図3の実線の動メス位置から二点鎖線の位置に移動させる)。これにより、動メス31は再び針落ち位置を通過し、さらに、切断すべき糸を固定メス33の刃部33aまで運んで、切断を実行する。
次に、ROM102内に格納されている第二の切断制御プログラムにより、CPU101が実行する第二の切断制御について図8,図11,図12に基づいて説明する。
第二の切断制御は、縫製動作中からミシンモータ1の一時的な停止を行うことなく糸切りを実行する制御であって、予め設定されたミシンモータ1の糸切り実行時の回転速度である糸切り設定回転数v2に応じて、糸切りソレノイド56の駆動を開始する主軸角度であるソレノイド動作角度θ3を決定し、当該ソレノイド動作角度θ3で糸切りソレノイド56の駆動を開始することにより、糸切り設定回転数v2がいずれの値に設定されている場合であってもコロ52のカム溝51aへの係合動作の完了する主軸角度が一定の目標位置A(図8参照、例えば230°)となるようにしている。
また、第二の切断制御におけるミシンモータ1の回転速度(糸切り設定回転数v2)は、180〜500[rpm]の範囲で操作パネル109から任意に設定することが可能であり、その設定値はEEPROM104に記憶され、第二の切断制御の実行時に読み出されるようになっている。
上記糸切りソレノイド56の動作完了までに要する時間は一定だが、ミシンモータ1の回転速度(糸切り設定回転数v2)は任意の値に設定することが可能であるため、仮に、糸切りソレノイド56の駆動を開始するタイミング(主軸角度)を一定にした場合には、ミシンモータ1の糸切り設定回転数v2に応じて、糸切りソレノイド56によるコロ52の係合動作が完了するタイミングがばらつくこととなる。この場合、ミシンモータ1の糸切り設定回転数v2が高速の場合には、糸切りソレノイド56によるコロ52の係合動作が完了するタイミングは遅れを生じて前述したカム動作区間の開始まで完了できない可能性を生じる。また、ミシンモータ1の糸切り設定回転数v2が低速の場合には、糸切りソレノイド56によるコロ52の係合動作が完了するタイミングが速くなり過ぎて、コロ52と連動する釜糸押さえ13による釜押さえ動作も早く実行されることとなり、十分に上昇していない縫い針に釜糸押さえ13が干渉(接触)してしまう恐れがある。この縫い針に釜糸押さえ13が干渉(接触)する可能性がある主軸角度は、155°〜205°の範囲である。
なお、目標位置Aは、釜糸押さえ13が縫い針に接触しない主軸角度(非接触区間205°)からカム動作区間の開始となる主軸角度(285°)までの、中間の区間である第1所定区間(220°〜260°)に設定されると好ましい。
また、釜糸押さえ13は不図示のバネで付勢されているため、釜糸押さえ13でボビンを押える際にダンピング(振動)が発生する。このダンピングにより、釜糸押さえ13とボビンとの間に隙間が発生し、糸が引上げられる際、糸が釜糸押さえ13に係止されず、針側の糸残り長さが短くなってしまう不具合が発生する可能性がある。
これを防止するため、目標位置Aは、ダンピングが収まる時間を考慮して、コロの係合動作が完了する目標位置を早めに設定した、第2所定区間(220°〜240°)に設定するとより好ましい。
さらに、その中間となる所定主軸角度(例えば230°)で糸切りソレノイド56によるコロ52の係合動作を完了させるとより好ましい。
上記テーブルでは、糸切り設定回転数v2が低くなるにつれて糸切りソレノイド56の駆動を開始するタイミングが遅くなるように定められている。
なお、上述のテーブルは、実測試験を繰り返し、糸切り設定回転数v2に対する適切な糸切りソレノイド56の駆動開始タイミングを取得して作成しても良いし、各糸切り設定回転数v2でミシンモータ1を駆動する場合の目標位置Aに到達するまでの時間を計算で求め、適切な糸切りソレノイド56の駆動開始タイミングを算出により取得しても良い。
また、このようにテーブルを参照してディレイ時間を特定する場合に限らず、毎回の第二の切断制御の実行時に上記計算により算出しても良い。
まず、CPU101は、EEPROM104内に記憶された糸切り設定回転数v2の設定値の読み込みを行い(ステップS61)、ミシンモータ1を読み出された糸切り設定回転数v2に減速する制御を行う(ステップS62)。
さらに、テーブルを参照して、糸切り設定回転数v2からソレノイド動作角度θ3を決定する(ステップS63)。
上記糸切りソレノイド56の駆動により、糸切り装置30及び糸切り駆動機構50は、第一の切断制御の場合と同様に動作し、縫い糸の切断を実行する。
上記ミシン10では、第一の切断制御において、下停止角度θ1と糸切り設定回転数v1とにより定まるディレイ時間Tに従って、糸切りソレノイド56の駆動開始からミシンモータ1の駆動開始を遅らせる制御を行っているので、コロ52のカム溝51aへの係合が完了するまでに糸切りカム51のカム動作区間(変位区間)に到達してしまうことをより回避低減することができ、なおかつ、状況に応じてミシンモータ1の再開開始タイミングは調整されるので必要以上の遅れも回避することができ、カム従節体の連結動作の適正化を図ることが可能となる。
上記ミシン10では、糸切りカム51の回転軸の方向に沿ってコロ52が移動してカム溝51aに係合する構造のカム機構を採用しているが、例えばカム溝の一部の区間が回転半径方向外側に向かって開口し、当該開口部から回転半径方向内側に向かってコロが移動して係合を行う構造のカム機構を採用して良い。その場合、前述したカム機構のようにカム溝が無変位区間にある場合にのみコロ52が係合可能な構造ではないが、開口部の開口している区間でのみコロが係合可能であることから、糸切りソレノイド56の駆動開始に対するミシンモータ1の回転駆動の開始タイミングがやはり重要なポイントとなり、上記の例のように、ミシンモータ1の下停止位置での停止時の検出主軸角度とミシンモータ1の再開駆動速度とに基づいて待ち時間を適宜調整することで糸切りカムに対するコロの連結動作の適正化を図ることが可能である。
その場合、制御装置100のEEPROM104には、予め検出される下停止角度θ1の個々の値に対して適切な糸切り設定回転数V1〜V12を定めたテーブルを用意し(図13参照)、これを参照して糸切り設定回転数v1の決定を行うことが望ましい。また、テーブルの使用に限らず、糸切りソレノイド56の駆動開始からコロ52の係合完了までの所要時間と検出される下停止角度θ1とから、当該下停止角度θ1からカム動作区間に到達するまでの回転角度に応じてコロ52の係合完了の遅れを生じさせない糸切り設定回転数v1を計算により算出しても良い。
上記第一の切断制御の他の例について、図14に示すフローチャートに基づいてその制御内容を説明する。
そして、前述したようなディレイ時間Tを設けることなく、ミシンモータ1を糸切り設定回転数v3で駆動する(ステップS83)。
これにより、縫い糸の切断が実行される。
その後、CPU101は、上停止角度θ2をエンコーダ14及び針位置検出器15の出力から検出し(ステップS84)、現在の角度が上停止位置θ2の設定主軸角度(例えば53°とする)に到達したか判定する(ステップS85)。到達していなければ、ステップS84に戻ってエンコーダ14及び針位置検出器15の出力検出を繰り返し、到達した場合には、ミシンモータ1を停止させると共に(ステップS86)、糸切りソレノイド56の駆動を停止させる(ステップS87)。これにより第一の切断制御が終了する。
以上のように、かかる第一の切断制御を行う場合にも、前述したディレイ時間を定める第一の切断制御の場合と同様の効果を得ることが可能である。
10 ミシン
11 釜軸
14 エンコーダ(位置検出器)
15 針位置検出器(位置検出器)
20 布送り装置
30 糸切り装置
31 動メス
50 糸切り駆動機構
51 糸切りカム
51a カム溝
52 コロ(カム従節体)
56 糸切りソレノイド
100 制御装置(制御手段)
101 CPU
Claims (2)
- 縫い針を保持する針棒の上下動の駆動源となるミシンモータと、
前記ミシンモータの動力を利用して糸切断を行う糸切り装置と、
前記糸切り装置とミシンモータを制御する制御手段と、
前記ミシンモータにより回転駆動を行う主軸の角度を検出する位置検出器と、
前記糸切断時のミシンモータの回転速度を設定する速度設定手段とを備え、
前記糸切り装置は、前記ミシンモータにより回転動作を行う糸切りカムと、前記糸切りカムのカム溝に従って従動動作を行うカム従節体と、前記カム従節体に連動して糸切断動作を行う動メスと、前記糸切りカムに対して前記カム従節体を非連結状態から連結状態に切り替える糸切りソレノイドと、前記糸切りソレノイドにより前記カム従節体と連動して釜の内側のボビンに突き当てられてその回転を制止させる釜押さえとを備え、
前記制御手段が、前記速度設定手段で定められた回転速度で前記ミシンモータを駆動しつつ、前記糸切りソレノイドにより連結状態への切り替えを行う糸切り制御を行うミシンにおいて、
前記制御手段は、前記糸切りソレノイドによる前記カム従節体の連結状態への切り替え動作が一定の主軸角度で完了するように、前記速度設定手段で定められた回転速度に応じて適正な前記糸切りソレノイドの動作開始タイミングとなる主軸角度を決定し、当該主軸角度で前記糸切りソレノイドの動作開始制御を行うことを特徴とするミシン。 - 前記制御手段が前記糸切りソレノイドによる前記カム従節体の連結状態への切り替え動作を完了させる一定の主軸角度は、前記釜押さえが前記縫い針の干渉を生じなくなる主軸角度から、前記糸切りカムに対して前記カム従節体を連結状態に切り替えることができなくなる主軸角度に至るまでの間の所定区間に設定されていることを特徴とする請求項1記載のミシン。
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