JP2011082295A - 太陽電池 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】裏面電極を、熱膨張係数の異なる材料からなる層を積層した多層構造とし、裏面電極と光電変換層との熱膨張係数を略一致させることにより、前記目的を達成する。
【選択図】図2
Description
しかしながら、ガラス基板は割れ易く、取り扱いに十分な注意が必要であると共に、フレキシブル性に欠けることから、適用範囲が限定されている。
しかしながら、軽量化を目的として、ガラス基板を薄くすると、一層、割れ易くなってしまうことから、割れ難くフレキシブルであり、しかも、ガラス基板よりも軽量化を図ることのできる基板材料の開発が要望されている。
また、ガラス基板の価格は、太陽電池の光電変換層(光吸収層)に比べると、比較的、高価であり、太陽電池の普及を促すために安価な基板材料が望まれている。
また、温度変化に起因する光電変換層の剥離や割れを抑制するために、光電変換層と熱膨張係数の差が小さい金属が用いられている。例えば、銅−インジウム−ガリウム−セレン系(CIGS系)の化合物半導体を光電変換層として用いる太陽電池であれば、フレキシブルな基板の材料として、この化合物半導体と熱膨張係数が近似するチタンやSUS430等が用いられている。
そのため、フレキシブルな金属基板を用いて太陽電池を作製した場合に、裏面電極と、基板および光電変換層との熱膨張係数の差によって、反りが生じてしまい、この反りによって、光電変換層に微小な剥がれやクラックが生じてしまい、歩留りが悪化するという問題が有る。
この太陽電池においては、基板にMo−Niの合金を用いることにより、基板と光電変換層との熱膨張係数を、略同一とし、かつ、基板上部のMo濃度を高くすることにより、基板を裏面電極としても作用させて、裏面電極と光電変換層との熱膨張係数の差に起因する、光電変換層の剥がれやクラックを抑制している。
特許文献1に記載される太陽電池では、基板からのNaの拡散が無いので、光電変換層の成膜中に、光電変換層に、Naを直接入れるようにしている。しかしながら、この方法では、局所的にNaを含有させることが難しいので、Na添加の精密制御を行なうことが困難である。
また、前記裏面電極が、1層以上のMo層と、1層以上のMoよりも熱膨張係数が大きい材料からなる層とを積層してなるものであり、かつ、最上層がMo層であるのが好ましく、この際において、前記最上層のMo層の厚さが20〜200nmであるのが好ましく、また、前記Moよりも熱膨張係数が大きい材料からなる層が、Niからなる層、Coからなる層、および、MoとMoよりも熱膨張係数が大きい金属材料との合金からなる層の1以上であるのが好ましく、また、前記Moとの合金を形成する金属材料が、NiおよびCoの1以上であるのが好ましい。
また、前記フレキシブル基板が導電性を有し、かつ、前記フレキシブル基板と裏面電極との間に、熱膨張係数が前記光電変換層と略同一の絶縁層を有するのが好ましく、この際において、前記フレキシブル基板が導電性の金属基板であり、前記絶縁層が前記金属基板の陽極酸化によって形成されたものであるのが好ましい。
また、前記フレキシブル基板と光電変換層との間に、1層以上のアルカリ金属供給層を有するのが好ましく、この際において、前記アルカリ金属供給層が、アルカリ金属およびアルカリ土類金属から選択された1種以上の物質をドープされた、前記裏面電極を形成する層の1層以上であるのが好ましく、もしくは、前記アルカリ金属供給層が、前記フレキシブル基板と裏面電極の最上層との間に形成される、アルカリ金属およびアルカリ土類金属から選択された1種以上の物質を含む化合物からなる層であるのが好ましい。
さらに、前記裏面電極の最上層が、主成分と不可避的不純物とからなる層であるのが好ましい。
また、好ましい太陽として、基板と光電変換層との間にアルカリ金属供給層を設けることにより、局所的にNa等のアルカリ(土類)金属を局所的にNaを含有させることができ、SUS430やチタン等からなるフレキシブルな金属基板を用いた場合でも、光電変換層へのNa添加の精密制御を行なうことができる。
本発明の太陽電池は、フレキシブル(可撓性を有する)な基板を用いる、フレキシブル太陽電池である。図示例の太陽電池10は、一例として、基板12と、絶縁層14と、裏面電極14と、光電変換層18と、バッファ層20と、透明電極24と、Alグリッド電極26とを有して構成される。
しかしながら、後述するようなI−III−VI族化合物半導体(カルコパイライト構造の化合物半導体)を用いる場合には、変換効率の点で、図示例のようなサブストレート型の太陽電池が好適である。
なお、本発明において、光電変換層18と熱膨張係数が略同一とは、光電変換層18の熱膨張係数の「±2.5×10-6/℃」の範囲を言う。すなわち、例えば、光電変換層18の熱膨張係数が9.5×10-6/℃である場合には、7×10-6/℃〜12×10-6/℃であれば、光電変換層18と熱膨張係数が略同一と言うことができる。
例えば、光電変換層18が、CIGS([Cu(In,Ga)Se2] 熱膨張係数9×10-6/℃〜10×10-6/℃)からなる層である場合には、基板12として、厚さが20〜100μm程度の鉄(熱膨張係数11.8×10-6/℃)やSUS430(熱膨張係数10.4×10-6/℃)からなる基板本体の表面に、鉄(Fe)の拡散を防止するCrからなる層を形成した基板を用いることができる。
この基板は、金属製であるが、金属酸化膜を有することにより、高い絶縁性が確保されている。
また、この製造工程において、必須の工程以外の各種の工程が含まれていてもよい。
例えば、付着している圧延油を除く脱脂工程、アルミニウム板の表面のスマットを溶解するデスマット処理工程、アルミニウム板の表面を粗面化する粗面化処理工程、アルミニウム板の表面に陽極酸化皮膜を形成させる陽極酸化処理工程、および、陽極酸化皮膜のマイクロポアを封孔する封孔処理を経て太陽電池用基板とするのが好ましい。
裏面電極14は、本発明の特徴的な部位であって、熱膨張係数の異なる材料からなる層を、2層以上、積層してなる多層構造を有し、かつ、後述する光電変換層18と略同一の熱膨張係数を有する。
本発明は、このような構成を有することにより、フレキシブルな基板12を用いるフレキシブル太陽電池において、光電変換層18および基板12と、裏面電極14との熱膨張係数の差による反り、および、この反りに起因する光電変換層18の剥がれやクラックの発生を、大幅に抑制したものである。
ところが、Moは熱膨張係数が5.2×10-6/℃と、基板および光電変換層よりも低い。そのため、フレキシブルな基板を用いると、反りを生じてしまい、この反りによって、光電変換層に剥がれやクラックが生じてしまう。
例えば、Moと、Moよりも熱膨張係数が大きいニッケル(Ni 熱膨張係数13×10-6/℃)とを用い、図2(a)に概念的に示すように、Ni層14NとMo層14Mとを、交互に、3層(14Na〜14Ncおよび14Ma〜14Mc)のずつ、積層してなる、合計6層からなる層で、多層構造の裏面電極14を構成する。
従って、本発明によれば、安価で、かつ、歩留りの高い太陽電池を実現できる。
ここで、本発明においては、CIGS等のカルコパイライト型の化合物半導体からなる光電変換層18を利用する場合には、裏面電極14は、Mo層と、Moよりも熱膨張係数が大きい材料からなる層とを有する多層構造であるのが好ましい。
このような構成を有することにより、裏面電極14と光電変換層18との間で、確実にオーミックコンタクト層を形成できる等の点で、好ましい結果を得ることができる。
また、Moよりも熱膨張係数が大きい材料としては、Moと、Moよりも熱膨張係数が大きい金属材料との合金も、好適に例示される。Moとの合金となる金属材料としては、NiやCo等、前記金属材料が好適に例示される。例えば、図2(b)に概念的に示すように、Mo−Ni合金層30と、Mo層32とからなる裏面電極34も利用可能である。
中でも、Ni、Co、および、Moと、Moよりも熱膨張係数が大きい金属材料との合金の1以上は、好適に利用される。
なお、裏面電極14を構成する層の材料は、2種以上であればよく、例えば、図2に示す例において、Mo層14MとNi層14Nとに加えて、Co層を有してもよい。ただし、3種類以上の層を有する場合には、積層順にも、特に限定は無いが、最上層はMo層とするのが好ましいのは、前述のおとりである。
(CMo×dMo+CY×dY)/(dMo+dY)=7×10-6〜12×10-6/℃
これにより、裏面電極14と光電変換層18との熱膨張係数を、好適に略一致させることが可能となる。
また、裏面電極14の全体の厚さにも、特に限定はなく、使用する材料の導電性や、光電変換層18の種類等に応じて、十分な導電性を確保できる厚さを、適宜、設定すればよい。
なお、アルカリ金属およびアルカリ土類金属としては、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、およびセシウム(Cs)から選ばれた少なくとも1種のアルカリ金属が好ましく、NaおよびKの1種以上がより好ましく、Naが特に好ましい。
一例として、図2(a)に示される裏面電極14において、Ni層14Nbに、ナトリウム(Na)をドープして、アルカリ金属供給層とする。あるいは、1層全部ではなく、図2(b)に示すように、Mo−Ni合金層30の途中に、点線で示すように、アルカリ金属ドープ領域30dを設けても良い。
なお、アルカリ金属のドープ量には、特に限定はなく、光電変換層18に、十分なアルカリ金属を供給できる量を、適宜、設定すればよい。
このような構成とすることにより、高い変換効率が得られる等、特性の良好な太陽電池を得ることができる。
アルカリ金属化合物としては、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、硫化ナトリウム、硫化カリウム、セレン化ナトリウム、セレン化カリウム、塩化ナトリウム、及び塩化カリウム等の無機塩; ポリ酸等の有機酸のナトリウムまたはカリウム塩等の有機塩が挙げられる。
アルカリ土類金属化合物としては、フッ化カルシウム、フッ化マグネシウム、硫化カルシウム、硫化マグネシウム、および、セレン化カルシウムの無機塩; ポリ酸等の有機酸のマグネシウムまたはカルシウム塩等の有機塩が挙げられる。
特に、ポリ酸のアルカリ(土類)金属塩が好ましい。なお、ここで言うポリ酸には、ヘテロポリ酸を含む。
あるいは、これらの化合物をターゲットや蒸着源とするスパッタリングや蒸着法などのPVD法(物理気相成長)や、CVD法(化学気相成長)等の気相成長により、アルカリ金属供給層を形成してもよい。
なお、このような化合物からなるアルカリ金属供給層において、アルカリ金属の濃度は特に制限されず、光電変換層18に充分な量のアルカリ金属を供給できる量を、適宜、設定すればよい。また、厚さにも、特に限定はなく、形成位置等に応じて、適宜、設定すればよいが、100〜200nmが好ましい。
光吸収層18は、光を吸収することにより電流を発生する光電変換層である。本発明において、光吸収層18は、Ib族元素、IIIb族元素、および、VIb族元素からなる、カルコパイライト構造を有する少なくとも1種の化合物半導体を主成分とする層であるのが好ましい。
なお、上記の化合物において、上の記載において、(In,Ga)、(S,Se)は、それぞれ、(In1-xGax)、(S1-ySey)を示す(ただし、x=0〜1、y=0〜1)。
特に、光吸収層18が、CIGSのようにGaを含む化合物である場合には、光吸収層18中のGa濃度が層の厚さ方向に勾配を持って分布することによる、グレーテッドバンドギャップ構造であるのが好ましい。これにより、量に厚み方向の分布を持たせると、バンドギャップの幅/キャリアの移動度等を制御でき、光電変換効率を高く設計することができる。
さらに、光吸収層18は、単層膜であるのに限定はされず、異なるカルコパイライト化合物半導体からなる層を積層してなる、複数層(同じ化合物が複数有っても可)から構成される積層構造であってもよい。
一例として、1)多源(多元)同時蒸着法、2)セレン化法、3)スパッタ法、4)ハイブリッドスパッタ法、および、5)メカノケミカルプロセス法等が例示される。
以下、主に、光吸収層18としてCIGS層を成膜する場合を例に、説明する。
多源同時蒸着法の代表的な方法としては、米国のNREL(National Renewable Energy Laboratory)が開発した3段階法と、ECグループの同時蒸着法がある。
ECグループの方法は、蒸着初期にCu過剰CIGS、後半でIn過剰CIGSを蒸着するBoeing社の開発したバイレーヤー法をインラインプロセスに適用できるように改良したものである。バイレーヤー法は、W.E.Devaney,W.S.Chen,J.M.Stewart,and R.A.Mickelsen:IEEE Trans.Electron.Devices 37(1990)428.に記載されている。
さらに、近年CIGS膜の結晶性を向上させるため、この方法に加えた種々の方法に関する検討が行われており、これらを用いても良い。
セレン化法は2段階法とも呼ばれ、最初にCu層/In層や(Cu−Ga)層/In層等の積層膜の金属プレカーサをスパッタ法、蒸着法、電着法などで製膜し、これをセレン蒸気またはセレン化水素中で450〜550℃程度に加熱することにより、熱拡散反応によってCu(In1-xGax)Se2等のセレン化合物を作製する方法である。
この方法を気相セレン化法と呼ぶが、このほか、金属プリカーサ膜の上に固相セレンを堆積し、この固相セレンをセレン源とした固相拡散反応によりセレン化させる固相セレン化法がある。
しかしながら、この方法ではセレン化の際に膜が約2倍に体積膨張するため、内部歪みが生じ、また、生成膜内に数μm程度のボイドが発生し、これらが膜の基板に対する密着性や太陽電池特性に悪影響を及ぼし、光電変換効率の制限要因になっているという問題がある(B.M.Basol,V.K.Kapur,C.R.Leidholm,R.Roe,A.Halani,and G.Norsworthy:NREL/SNL Photovoltaics Prog.Rev.Proc.14th Conf.-A Joint Meeting(1996)AIP Con f.Proc.394.)。
しかしながら、このような手法を含めて、すべてのセレン化法に当てはまる問題点がある。それは、最初にある決まった組成の金属積層膜を用い、これをセレン化するため、膜組成制御の自由度が極めて低いという点である。たとえば現在、高効率CIGS系太陽電池では、Ga濃度が膜厚方向で傾斜したグレーデッドバンドギャップCIGS薄膜を使用するが、このような薄膜をセレン化法で作製するには、最初にCu−Ga合金膜を堆積し、その上にIn膜を堆積し、これをセレン化する際に、自然熱拡散を利用してGa濃度を膜厚方向で傾斜させる方法がある(K.Kushiya,I.Sugiyama,M.Tachiyuki,T.Kase,Y.Nagoya,O.Okumura,M.Sato,O.Yamase and H.Takeshita:Tech.Digest 9th Photovoltaic Science and Engineering Conf.Miyazaki,1996(Intn.PVSEC-9,Tokyo,1996)p.149.)。
スパッタ法は大面積化に適するため、これまでCuInSe2 薄膜形成法として多くの手法が試みられてきた。
例えば、たとえば、CuInSe2 多結晶をターゲットとした方法や、Cu2SeとIn2Se3をターゲットとし、スパッタガスにH2SeとAr混合ガスを用いる2源スパッタ法(J.H.Ermer,R.B.Love,A.K.Khanna,S.C.Lewis and F.Cohen:"CdS/CuInSe2 Junctions Fabricated by DC Magnetron Sputtering of Cu2Se and In2Se3" Proc.18th IEEE Photovoltaic Specialists Conf (1985)1655-1658.)が開示されている。
また、Cuターゲット,Inターゲット,SeまたはCuSeターゲットをArガス中でスパッタする3源スパッタ法などが報告されている(T.Nakada,K.Migita,A.Kunioka:"Polycrystalline CuInSe2 Thin Films for Solar Cells by Three-Source Magnetron Sputtering" Jpn.J.Appl.Phys.32(1993)L1169-L1172.ならびに、T.Nakada,M.Nishioka,and A.Kunioka:"CuInSe2 Films for Solar Cells by Multi-Source Sputtering of Cu,In,and Se-Cu Binary Alloy" Proc.4th Photovoltaic Science and Engineering Conf.(1989)371-375.)。
前述したスパッタ法の問題点が、Se負イオンまたは高エネルギーSe粒子による膜表面損傷であるとするなら、Seのみを熱蒸発に変えることで、これを回避できるはずである。中田らは、CuとIn金属は直流スパッタで、Seのみは蒸着とするハイブリッドスパッタ法で、欠陥の少ないCIS薄膜を形成し、変換効率10%を超すCIS太陽電池を作製した(T.Nakada,K.Migita,S.Niki,and A.Kunioka:"Microstructural Characterization for Sputter-Deposited CuInSe2 Films and Photovoltaic Devices" Jpn.Appl.Phys.34(1995)4715-4721.)。
また、Rockettらは、これに先立ち、有毒のH2Seガスの代わりにSe蒸気を用いることを目的としたハイブリッドスパッタ法を報告している(A.Rockett,T.C.Lommasson,L.C.Yang,H.Talieh P.Campos and J.A.Thornton:Proc.20th IEEE Photovoltaic Specialists Conf.(1988)1505.)。さらに古くは膜中のSe不足を補うためSe蒸気中でスパッタする方法も報告されている(S.Isomura,H.Kaneko,S.Tomioka,I.Nakatani,and K.Masumoto:Jpn.J.Appl.Phys 19(Suppl.19-3)(1980)23.)。
CIGSの各組成の原料を遊星ボールミルの容器に入れ、機械的なエネルギーによって原料を混合してCIGS粉末を得る。その後、スクリーン印刷によって基板上に塗布し、アニールを施しCIGSの膜を得る方法である(T.Wada,Y.Matsuo,S.Nomura,Y.Nakamura,A.Miyamura,Y.Chia,A.Yamada,M.Konagai,Phys.stat.sol.(a),Vol.203(2006)p2593)。
例えば、スクリーン印刷法あるいはスプレー法等で、Ib族元素、IIIb族元素、およびVIb族元素を含む微粒子膜を基板上に形成し、熱分解処理(この際、VIb族元素雰囲気での熱分解処理でもよい)を実施するなどにより、所望の組成の結晶を得ることができる(特開平9−74065号、同9−74213号の各公報等)。
このようなバッファ層20の形成材料としては、例えば、CdSやZnO、ZnS、Zn(O,S,OH)などのII−VI族の化合物やIn2S3などのIII族カルコゲン化合物を用いることができる。これらの化合物は、光電変換層とキャリアの再結合のない接合界面を形成することができ、好ましい。これらに関しては、特開2002−343987号公報等に詳述される。
透明電極24にはITO(酸化インジウム錫)、ZnO:Ga、ZnO:Al、ZnO:B、SnO2などの公知の材料を用いることができる。これらの材料は、光透過性が高く、低抵抗であり、キャリアの移動度が高いため、電極材料として好ましい。このような透明電極24は、特開平11−284211号公報等に詳述される。
また、透明電極24の形成方法にも、特に限定はなく、形成材料に応じて、スパッタリングや蒸着法等の公知の方法で形成すればよい。
Al電極26は、光電変換層18が生成した電気を、透明電極24から取り出すためのグリッド電極で、例えば、蒸着法によって形成される。
通常、光電変換層18はp層、バッファ層20はn層(n−CdS等)、透明電極24はn層(n−ZnO層等)あるいはi層とn層との積層構造(i−ZnO層とn−ZnO層との積層等)とされる。この導電型では、光電変換層18と透明電極24との間に、pn接合、あるいはpin接合が形成されると考えられる。
また、光電変換層18の上にCdSからなるバッファ層20を設けると、Cdが拡散して、光電変換層18の表層にn層が形成され、光電変換層18内にpn接合が形成されると考えられる。また、光電変換層18内のn層の下層にi層を設けて、光電変換層18内にpin接合を形成してもよい。
SUS430等の基板本体12aの表面に、スパッタリングや蒸着によって、Cr層を形成し、基板12とする。
あるいは、基板本体12aの表面に、アルミニウム層等を形成して、シュウ酸溶液等を用いて陽極酸化を行なって、基板本体/アルミニウム層/陽極酸化層からなる基板12であってもよい。
また、裏面電極14の何れかの層に、Na等のアルカリ金属をドープして、アルカリ金属供給層としてもよく、あるいは、裏面電極14の最上層と基板12との間に、アルカリ金属を含有する化合物からなる層を形成して、アルカリ金属供給層としてもよいのは、前述のとおりである。
次に、図3(c)に示すように、光電変換層18の上に、スパッタリング、蒸着法、溶液成長法等によって、CdSなどのバッファ層20を形成し、そのバッファ層20の上に、スパッタリングや蒸着法等によって、不純物がドーピングされてn+型を示す、マイナス側の上部電極となるZnO(酸化亜鉛)等からなる透明電極24を形成する。
さらに、図3(d)に示すように、メカニカルスクライブ装置によって、透明電極24から裏面電極14までを、一括してスクライブ加工する。これによって、薄膜太陽電池の各セルが電気的に分離(すなわち、各セルが個別化)される。
例えば、裏面電極14と光電変換層18との間に両者の密着性を向上するための密着層を有する構成のように、各層の間に必要に応じて何らかの機能を発現する層を設けた構成等であってもよい。
厚さ100μmのSUS430の表面に、スパッタリングによってCr層12bを形成して、基板12とした。
この基板12の表面に、Ni層とMo層とを、交互に、5層ずつ積層して、10層構成の裏面電極14を形成した(図2参照)。最上層はMo層とし、また、各Ni層およびMo層は、共に、厚さは100nmとした。従って、この裏面電極14の厚さは、1μmである。
また、裏面電極14の熱膨張係数は、9.2×10-6/℃であった。
また、3層目および4層目のNi層は、Naを添加したターゲットを用いて、アルカリ金属供給層とした。
Mo層の形成も、スパッタリングによって行なった。成膜条件は、アルゴン圧力0.7MPa、放電電力250Wとした。
成膜は、各蒸発源からの蒸着レートを制御して、3段階法により1段階目を400℃とし、最高基板温度550℃で行った。光電変換層18の膜厚は、約2μmとした。
最上層のMo層以外の層に変えて、厚さ900nmのMo−Ni合金層を用いて裏面電極14を形成した以外は、実施例1と全く同様にして、図1に示すような太陽電池10を作製した。
Mo−Ni合金層の形成は、スパッタリングによって行なった。成膜条件は、アルゴン圧力0.7MPa、放電電力250Wとした。
なお、この裏面電極14も、Mo−Ni合金層の途中500〜700nmの領域は、Naを添加したターゲットを用いて、アルカリ金属供給層とした。
また、得られた裏面電極14の熱膨張係数は、9.5×10-6/℃であった。
裏面電極14を、厚さ1μmのMo層とした以外は、実施例1と同様にして、図1に示すような太陽電池を作製した。この裏面電極14の熱膨張係数は、5.2×10-6/℃であった。
裏面電極14となるMo層の成膜は、スパッタリングによって行なった。また、途中の500〜700nmの領域は、Naを添加したターゲットを用いて成膜を行い、この領域をアルカリ金属供給層とした。
その結果、裏面電極14がMoのみの比較例1の太陽電池では、変換効率が11%(平均値)であったのに対して、Mo/Ni多層電極構造の裏面電極14を有する実施例1の太陽電池では、13%(同前)の変換効率が、Mo/Mo−Ni合金の多層電極構造の裏面電極14を有する実施例2の太陽電池では、12%(同前)の変換効率が、それぞれ、得られた。
これらの結果から、Mo/Ni(Mo−Ni合金)の多層の裏面電極を有する本発明のフレキシブルな太陽電池では、光電変換層の微小クラックや剥離などが低減し、高い変換効率を有することがわかった。
SUS430の表面を、両面共、Alで被覆し、16℃の0.5Mシュウ酸水溶液中で、直流電源を用いて、電圧40Vの陽極酸化条件において、陽極酸化皮膜をAlの表面に形成した。さらに、水洗、乾燥を行い、SUS430/Al/陽極酸化層を有する基板12とした。
この裏面電極14の熱膨張係数は、9.2×10-6/℃であった。
Mo層の形成も、スパッタリングによって行なった。成膜条件は、アルゴン圧力0.7MPa、放電電力250Wとした。
なお、下部の4層(400nm)は、Naを添加したターゲットを用いて、アルカリ金属供給層とした。
次にバッファ層20として、CdS薄膜を90nm程度溶液成長法で堆積し、その上に、透明電極24として、ZnO:Al膜をRFスパッタ法で厚さ0.6μmで形成した。最後に上部電極として、Al電極26を蒸着法で作製し、図1に示すような太陽電池10を作製した。
裏面電極14の下方400nmを、Mo−Ni合金層とした以外(図2(b)参照)は、実施例3と全く同様にして、図1に示すような太陽電池10を作製した。すなわち、この太陽電池の裏面電極は、400nmのMo−Ni合金層と、その上の200nmのMo層とを有する2層構成である。
この裏面電極14の熱膨張係数は、9.5×10-6/℃であった。
Mo−Ni合金層の形成は、スパッタリングによって行なった。成膜条件は、アルゴン圧力0.7MPa、放電電力250Wとした。
また、下方400nmのNi−Mo合金層は、Naを添加したターゲットを用いて、アルカリ金属供給層とした。
裏面電極14を、厚さ600nmのMo層とした以外は、実施例3と同様にして、図1に示すような太陽電池を作製した。この裏面電極14の熱膨張係数は、5.2×10-6/℃であった。
裏面電極14となるMo層の成膜は、スパッタリングによって行なった。また、下方400nmの領域は、Naを添加したターゲットを用いて成膜を行い、この領域をアルカリ金属供給層とした。
その結果、裏面電極14がMoのみの比較例2の太陽電池では、変換効率が13%(平均値)であったのに対して、Mo/Ni多層電極構造の裏面電極14を有する実施例3の太陽電池では、15%(同前)変換効率が、Mo/Mo−Ni合金の2層電極構造の裏面電極14を有する実施例4の太陽電池では、14%(同前)変換効率が、それぞれ、得られた。
これらの結果から、Mo/Ni(Mo−Ni合金)の多層の裏面電極を有する本発明の太陽電池では、光電変換層の微小クラックや剥離などが低減し、本発明のフレキシブルな太陽電池は高い変換効率を有することがわかった。
以上の結果より、本発明の効果は明らかである。
12 基板
14,34 裏面電極
14M,32 Mo層
14N Ni層
18 光電変換層
20 バッファ層
24 透明電極
28 Al電極
30 Mo−Ni合金層
Claims (12)
- フレキシブル基板と、
前記フレキシブル基板の上に形成された裏面電極と、
前記裏面電極の上に形成された、前記フレキシブル基板と略同一の熱膨張係数を有する光電変換層とを有し、
前記裏面電極が、熱膨張係数が異なる材料からなる層を2層以上積層した多層構造を有し、かつ、熱膨張係数が前記光電変換層と略同一であることを特徴とする太陽電池。 - 前記光電変換層が、Ib族元素、IIIb族元素、および、VIb族元素からなる化合物半導体層である請求項1に記載の太陽電池。
- 前記裏面電極が、1層以上のMo層と、1層以上のMoよりも熱膨張係数が大きい材料からなる層とを積層してなるものであり、かつ、最上層がMo層である請求項1または2に記載の太陽電池。
- 前記最上層のMo層の厚さが20〜200nmである請求項3に記載の太陽電池。
- 前記Moよりも熱膨張係数が大きい材料からなる層が、Niからなる層、Coからなる層、および、MoとMoよりも熱膨張係数が大きい金属材料との合金からなる層の1以上である請求項3または4に記載の太陽電池。
- 前記Moとの合金を形成する金属材料が、NiおよびCoの1以上である請求項5に記載の太陽電池。
- 前記フレキシブル基板が導電性を有し、かつ、前記フレキシブル基板と裏面電極との間に、熱膨張係数が前記光電変換層と略同一の絶縁層を有する請求項1〜6のいずれかに記載の太陽電池。
- 前記フレキシブル基板が導電性の金属基板であり、前記絶縁層が前記金属基板の陽極酸化によって形成されたものである請求項7に記載の太陽電池。
- 前記フレキシブル基板と光電変換層との間に、1層以上のアルカリ金属供給層を有する請求項1〜8のいずれかに記載の太陽電池。
- 前記アルカリ金属供給層が、アルカリ金属およびアルカリ土類金属から選択された1種以上の物質をドープされた、前記裏面電極を形成する層の1層以上である請求項9に記載の太陽電池。
- 前記アルカリ金属供給層が、前記フレキシブル基板と裏面電極の最上層との間に形成される、アルカリ金属およびアルカリ土類金属から選択された1種以上の物質を含む化合物からなる層である請求項9に記載の太陽電池。
- 前記裏面電極の最上層が、主成分と不可避的不純物とからなる層である請求項1〜11のいずれかに記載の太陽電池。
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