JP2011078166A - 鉄心の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】複数の薄板21が積層されて構成され、内部が磁気回路となる鉄心(ステータ本体10)の製造方法であって、複数の薄板21を仮積層し、積層体51を構成する第1工程と、厚さ方向において隣り合う薄板21間に、磁気焼鈍する温度において化学的に安定なアルミナ粉末71を入り込ませると共に、積層体51をアルミナ粉末71中に埋設し、積層体51を厚さ方向において拘束する第2工程と、拘束された状態で積層体51を磁気焼鈍する第3工程と、磁気焼鈍後、複数の薄板21からアルミナ粉末71を取り除く第4工程と、複数の薄板21を積層し、鉄心を構成する第5工程と、を含む。
【選択図】図14
Description
そこで、各薄板を厚さ方向で拘束し、拘束した状態で磁気焼鈍する方法が考えられるが、うず電流損を低減させるべく各薄板は非常に薄く形成され(例えば350μm以下)、その結果、薄板が多数枚となるので、磁気焼鈍に膨大な手間・時間を要することになる。
一方、複数枚の薄板を単に積層した状態で磁気焼鈍すると、厚さ方向において隣り合う薄板同士が接合し、一体化してしまい、もはや分離できず、前記した絶縁層を形成できない。
このような鉄心の製造方法によれば、薄板が積層されてなる積層体を、厚さ方向において拘束した状態で磁気焼鈍するので、磁気焼鈍中に各薄板が厚さ方向において変形することはない。
また、厚さ方向において隣り合う薄板間に、磁気焼鈍する温度において化学的に安定なセラミック粉末を入り込ませるので、磁気焼鈍中に、厚さ方向において隣り合う薄板が接合、一体化することはなく、磁気焼鈍後、セラミック粉末を容易に取り除き、複数の薄板を別々にできる。
すなわち、複数の薄板を厚さ方向に変形させず、複数の薄板を同時に、効率的に磁気焼鈍し、磁気焼鈍後の薄板を別々にできる。
また、酸化皮膜は薄板の表面全体に形成されているので、鉄心の厚さ方向において隣り合う薄板を好適に絶縁できる。
なお、分かりやすくするため、図1〜図16において、ステータ本体10(鉄心)を形成するリング状の薄板21、絶縁層22、ロータ本体31を形成する円盤の薄板33は、厚めに記載している。また、モータ100(ステータ1、ロータ30)の厚さ、薄板21及び薄板33の厚さ・積層枚数、絶縁層22の厚さ、周方向におけるティース12、コイル15及び永久磁石32の数は、後記する形態に限定されず、適宜変更自由である。
図1、図2に示すように、本実施形態に係るモータ100は、ステータ1と、ロータ30(回転子)とを備えており、ステータ1の内側に配置されたロータ30が回転するインナーロータ型のモータである。
なお、モータ100は、図示しないハウジング(モータケース)に収容されている。また、このようなモータ100は、例えば、ハイブリッド車、燃料電池車の駆動用モータや、電動パワーステアリング装置のアシスト用モータとして使用される。
ステータ1は、図2、図3に示すように、ステータ本体10と、後記する各ティース12に装着された12個のコイル15と、を備えている。
ステータ本体10は、円筒状のヨーク11と、ヨーク11の内周面から径方向内向きに突出すると共に、周方向において等間隔で配置された12本のティース12と、を備えている。ステータ本体10は、複数枚(例えば100〜3000枚)の薄板21と、絶縁層22とが、交互に積層されることで構成されている(図5参照)。
薄板21は、図4に示すように、ステータ本体10の形状に対応したリング状であり、積層されるとヨーク11となるリング状のヨーク部21aと、ヨーク部21aの内周面から径方向内向きに突出すると共に、周方向において等間隔で配置され、積層されるとティース12となるティース部21bと、を備えている。
なお、コイル15に、U相、V相、W相の交流が通流すると、各薄板21内が磁気回路となり、各薄板21内に磁束が生起する。
絶縁層22は、ステータ本体10におけるうず電流損を低減させるべく、厚さ方向において隣り合う薄板21、21を電気的に絶縁する層である(図5参照)。
絶縁層22の厚さΔT2は、本実施形態では薄板21の厚さΔT1が50〜100μmであることに対応して、5μm以下に設定されている。これにより、ステータ本体10の厚さ方向における薄板21の占有率、及び、磁気特性(理論飽和磁化)を大きく低下させずに(図7参照)、うず電流損が低減されている。
12個のコイル15は、表面が絶縁材料で被覆された金属線(例えば銅線)が12本のティース12にそれぞれ巻回されることで構成されている。
そして、12個のコイル15は、U相の交流が通流する4個のU相用コイルと、V相の交流が通流する4個のV相用コイルと、W相の交流が通流する4個のW相用コイルと、とに割り振られ、周方向において、U相用コイル、V相用コイル、W相用コイル、U相用コイル、…、の順で配列している。
ロータ30は、円柱状を呈しており、円柱状のロータ本体31(鉄心)と、8個の永久磁石32と、を備えている。
ただし、ロータ本体31の形状は円柱状に限定されず、その他に例えば、円柱状の中心部と、この中心部に径方向外向きに設けられた複数本のスポークとを備えるスポーク型のロータ本体でもよい。
そして、コイル15に、U相、V相、W相の交流が通流し、磁束が生起すると、この磁束の一部が、ロータ本体31を構成する各薄板33内を通流する。すなわち、各薄板33内は磁気回路となる。
このようなモータ100によれば、次の作用効果を得る。
ステータ本体10を構成する各薄板21の厚さΔT1が50〜100μmであり、絶縁層22の厚さΔT2が5μm以下であるので、鉄損、ヒステリシス損、うず電流損が低減されると共に、磁気特性は高くなり、その結果、モータ100の出力は高められている。
次に、ステータ本体10(鉄心)の製造方法について、図8〜図16を参照して説明する。
図8に示すように、ステータ本体10の製造方法は、圧延工程(S100)と、打ち抜き工程(S200)と、磁気焼鈍工程(S300)と、接着工程(S400)と、研磨工程(S500)と、を含んでいる。
圧延工程は、成分調整され、真空雰囲気で溶解されてなるFe−Co系合金等の溶湯を冷間圧延し、得るべき薄板21の厚さΔT1(50〜100μm)に対応したFe−Co系合金等の電磁鋼板を得る工程である。
なお、このように圧延するので、得られた電磁鋼板の内部には歪みが残留する。
打ち抜き工程は、プレス加工機を使用し、厚さΔT1に圧延された電磁鋼板を、ステータ1の平面形状に対応して打ち抜き、複数枚の薄板21を得る工程である。
なお、このように打ち抜くので、得られた薄板21の内部には歪みが残留する。
磁気焼鈍工程は、焼鈍(熱処理)によって薄板21内に残留する歪みを取り除きつつ、磁気特性の高い相(結晶、組織)を形成すると共に、薄板21の全表面(上面、下面、外周面、内周面)に絶縁性の酸化皮膜22Aを形成する工程である。
具体的には、図9に示すように、第1端板41に立設した3本のガイド棒44、44、44に、リング状を呈する薄板21の中空部を挿通しながら、複数枚の薄板21を仮積層し、積層体51を構成する(第1工程)。
なお、ねじ棒43における第1ナット45の前記所定位置は、薄板21の枚数と、後記するアルミナ粉末71が圧縮されてなるアルミナ層72が通気性を有し、かつ、薄板21に損傷を与えない程度に設定される。
なお、アルミナ層72は、外部と連続する連続空隙を有し、磁気焼鈍中、高温のガスがアルミナ層72内を通流可能となっている。
また、アルミナ粉末71は、磁気焼鈍する温度において化学的に安定であるので、アルミナ粉末71が凝集することもなく、また、アルミナ粉末71が薄板21の表面に溶着することもない。
さらにまた、高温のガス(酸素含有ガス)が、アルミナ層72内を通流し、薄板21の全表面(上面、下面、外周面、内周面)と良好に接触するので、薄板21の全表面に絶縁性を有する酸化皮膜22Aが、同時に形成される。
よって、前記した炉内には、アルミナ層72、堆積したアルミナ粉末71内をガスが好適に通流するようにガス流れを発生させるべく、ファン等が設けられることが好ましい。
そして、エアガン(図示しない)から噴射されるエアで、薄板21、21間のアルミナ粉末71を吹き飛ばし、除去する(第4工程)。この場合において、アルミナ粉末71は、凝集せず、また、薄板21の表面に溶着していないので、速やかに除去される(図16参照)。
なお、得られた複数枚の薄板21は、磁気焼鈍中において厚さ方向において拘束されているので、厚さ方向において歪んでいない。また、磁気焼鈍中において、薄板21、21間に、化学的に安定なアルミナ層72が介在しているので、磁気焼鈍後において、厚さ方向に隣り合う薄板21、21は溶着、接合等していない。
接着工程は、製造するステータ本体10の厚さに対応して、複数枚の薄板21を積層し(第5工程)、接着する工程である。
具体的には、磁気焼鈍された複数枚の薄板21を積層した後、適宜な治具で保持する。そして、積層されたものの外周面から、毛細管現象を利用して接着剤(例えば、エステル系接着剤)を注入する。この場合において、接着剤が径方向内側部分に浸透・注入されるように、接着剤の粘度は低粘度(2000mPa・s以下、好適には50mPa・s以下)であることが好ましい。
この他、接着剤が溶解した接着剤溶液に、薄板21が積層されたものを含浸し、薄板21間に接着剤を浸透させる方法でもよい。
研磨工程は、前記した接着工程によって薄板21、21が接着した略円柱状の積層体の外周面、内周面を、研磨装置で研磨する工程である。このように研磨した後、図1に示すステータ本体10を得る。
このようなステータ1の製造方法によれば次の効果を得る。
厚さ方向おいて隣り合う薄板21、21間に、アルミナ粉末71を入り込ませ、アルミナ層72を介在させた状態で磁気焼鈍するので、複数枚の薄板21を並行して同時に磁気焼鈍し、磁気焼鈍後に、複数枚の薄板21を別々に分離できる。
さらに、アルミナ層72は通気性を有するので、磁気焼鈍中に、各薄板21の表面に、同時に、絶縁性を有する酸化皮膜22Aを形成できる。
次に、このようにして得られたステータ本体10の各ティース12に、コイル15を径方向外向きに押し込み、装着させることにより、図2に示すステータ1を得る。
なお、コイル15は、図示しないボビンに銅線を所定に巻回することによって別途用意される。
例えば、図17に示すように、周方向に隣り合うガイド棒44、44間に、平断面視で円弧状を呈する樹脂製のガイド片47をそれぞれ設けてもよい。このようにガイド片47を設ければ、薄板21を厚さ方向において、さらに整えて積層しつつ、積層体51に振り掛けるアルミナ粉末71の量を少なくできる。この場合、アルミナ粉末71が全体に入り込むように、例えば、積層体51を周方向に回転させながら、アルミナ粉末71を振り掛けるとよい。
前記した実施形態では、モータ100がインナーロータ型である場合を例示したが、アウターロータ型のモータのステータ本体、ロータ本体を製造する場合に、本発明を適用してもよい。
10 ステータ本体(鉄心)
11 ヨーク
12 ティース
21 薄板
22 絶縁層
22A 酸化皮膜
22B 接着層
30 ロータ
31 ロータ本体(鉄心)
33 薄板
51 積層体
71 アルミナ粉末(セラミック粉末)
72 アルミナ層(セラミック層)
100 モータ
Claims (2)
- 複数の薄板が積層されて構成され、内部が磁気回路となる鉄心の製造方法であって、
複数の薄板を仮積層し、積層体を構成する第1工程と、
厚さ方向において隣り合う前記薄板間に、磁気焼鈍する温度において化学的に安定なセラミック粉末を入り込ませると共に、前記積層体をセラミック粉末中に埋設し、前記積層体を厚さ方向において拘束する第2工程と、
拘束された状態で前記積層体を磁気焼鈍する第3工程と、
磁気焼鈍後、複数の薄板からセラミック粉末を取り除く第4工程と、
複数の薄板を積層し、鉄心を構成する第5工程と、
を含む
ことを特徴とする鉄心の製造方法。 - 厚さ方向において隣り合う前記薄板間に入り込んだセラミック粉末からなるセラミック層は通気性を有し、前記第3工程において、前記各薄板の表面に電気的に絶縁性を有する酸化皮膜を形成する
ことを特徴とする請求項1に記載の鉄心の製造方法。
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