JP2011078166A - 鉄心の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】ステータ本体、ロータ本体等となる鉄心を、効率的に製造する鉄心の製造方法を提供する。
【解決手段】複数の薄板21が積層されて構成され、内部が磁気回路となる鉄心(ステータ本体10)の製造方法であって、複数の薄板21を仮積層し、積層体51を構成する第1工程と、厚さ方向において隣り合う薄板21間に、磁気焼鈍する温度において化学的に安定なアルミナ粉末71を入り込ませると共に、積層体51をアルミナ粉末71中に埋設し、積層体51を厚さ方向において拘束する第2工程と、拘束された状態で積層体51を磁気焼鈍する第3工程と、磁気焼鈍後、複数の薄板21からアルミナ粉末71を取り除く第4工程と、複数の薄板21を積層し、鉄心を構成する第5工程と、を含む。
【選択図】図14

Description

本発明は、モータのステータ本体、ロータ本体等となる鉄心の製造方法に関する。
例えば、ハイブリッド車の駆動用のモータは、その内側が回転するインナーロータ型で構成され、外側のステータ(固定子)と、内側のロータ(回転子)とを備える。そして、このようなモータの駆動に伴って発生する、鉄損、ヒステリシス損(ヒス損)、うず電流損を低減させるため、例えば、コイルが巻回・装着される複数本のティースを有するステータ本体は、リング状の薄板を複数枚にて積層することで構成される(特許文献1参照)。なお、鉄損は、ヒステリシス損とうず電流損との和で与えられる。
ここで、リング状の薄板は、通常、所定厚さに圧延された電磁鋼板を、プレス加工機で打ち抜くことで得る。そして、この薄板を磁気焼鈍し、磁気特性が高められた薄板を積層し、ステータ本体を得る。この場合において、薄板間には、うず電流損を低減させるために、薄板同士を電気的に絶縁する絶縁層が介在される。
特開2005−287134号公報
しかしながら、圧延、打ち抜きによって得られたリング状の薄板の内部には、歪み(成形歪み)が残留しているため、薄板を単に磁気焼鈍すると、薄板が厚さ方向に変形し、積層不能となる。特に、薄板の厚さが薄くなるほど、薄板が顕著に変形しやすくなり、さらに、積層する薄板の枚数が多くなるほど、顕著に積層しにくくなる。
そこで、各薄板を厚さ方向で拘束し、拘束した状態で磁気焼鈍する方法が考えられるが、うず電流損を低減させるべく各薄板は非常に薄く形成され(例えば350μm以下)、その結果、薄板が多数枚となるので、磁気焼鈍に膨大な手間・時間を要することになる。
一方、複数枚の薄板を単に積層した状態で磁気焼鈍すると、厚さ方向において隣り合う薄板同士が接合し、一体化してしまい、もはや分離できず、前記した絶縁層を形成できない。
そこで、本発明は、ステータ本体、ロータ本体等となる鉄心を、効率的に製造する鉄心の製造方法を提供することを課題とする。
前記課題を解決するための手段として、本発明は、複数の薄板が積層されて構成され、内部が磁気回路となる鉄心の製造方法であって、複数の薄板を仮積層し、積層体を構成する第1工程と、厚さ方向において隣り合う前記薄板間に、磁気焼鈍する温度において化学的に安定なセラミック粉末を入り込ませると共に、前記積層体をセラミック粉末中に埋設し、前記積層体を厚さ方向において拘束する第2工程と、拘束された状態で前記積層体を磁気焼鈍する第3工程と、磁気焼鈍後、複数の薄板からセラミック粉末を取り除く第4工程と、複数の薄板を積層し、鉄心を構成する第5工程と、を含むことを特徴とする鉄心の製造方法である。
ここで、磁気焼鈍とは、加熱することで、残留する歪みを除去しつつ、磁気特性の高い組織(結晶)・相を形成する熱処理である。
このような鉄心の製造方法によれば、薄板が積層されてなる積層体を、厚さ方向において拘束した状態で磁気焼鈍するので、磁気焼鈍中に各薄板が厚さ方向において変形することはない。
また、厚さ方向において隣り合う薄板間に、磁気焼鈍する温度において化学的に安定なセラミック粉末を入り込ませるので、磁気焼鈍中に、厚さ方向において隣り合う薄板が接合、一体化することはなく、磁気焼鈍後、セラミック粉末を容易に取り除き、複数の薄板を別々にできる。
すなわち、複数の薄板を厚さ方向に変形させず、複数の薄板を同時に、効率的に磁気焼鈍し、磁気焼鈍後の薄板を別々にできる。
そして、磁気焼鈍後、厚さ方向に変形していない複数の薄板を、電気的に絶縁させる絶縁層を介在させつつ積層することで、鉄損、ヒステリシス損、うず電流損が小さく、磁気特性の高い鉄心を得ることができる。このようにして得られた鉄心は、例えば、ステータ本体、ロータ本体、トランスのコア、リアクトルのコアとして良好に使用可能である。
また、前記した鉄心の製造方法において、厚さ方向において隣り合う前記薄板間に入り込んだセラミック粉末からなるセラミック層は通気性を有し、前記第3工程において、前記各薄板の表面に電気的に絶縁性を有する酸化皮膜を形成することを特徴とする。
このような鉄心の製造方法によれば、薄板間に入り込んだセラミック粉末からなるセラミック層が通気性を有するので、第3工程において、各薄板の表面に電気的に絶縁性を有する酸化皮膜を同時に形成できる。すなわち、磁気焼鈍後の各薄板の表面全体には絶縁性を有する酸化皮膜が既に形成されているので、複数の薄板を積層する際に、薄板間に介在させる絶縁層を薄く、又は省略できる。
また、酸化皮膜は薄板の表面全体に形成されているので、鉄心の厚さ方向において隣り合う薄板を好適に絶縁できる。
本発明によれば、ステータ本体、ロータ本体等となる鉄心を、効率的に製造する鉄心の製造方法を提供することができる。
本実施形態に係るモータの斜視図である。 本実施形態に係るモータの分解斜視図である。 本実施形態に係るモータの平面図である。 本実施形態に係るステータ用の薄板の斜視図である。 本実施形態に係るモータの縦断面図である。 薄板の厚さΔT1と、鉄損、ヒステリシス損、うず電流損との関係を示すグラフである。 絶縁層の厚さΔT2と、理論飽和磁化(磁気特性)との関係を示すグラフである。 本実施形態に係るステータ本体の製造方法を示すフローチャートである。 複数の薄板を挟持する治具の斜視図である。 治具で複数の薄板を挟持した状態を示す斜視図である。 図10のX1−X1線断面図である。 積層体にアルミナ粉末を振り散らしている状況を示す側断面図である。 アルミナ粉末に埋設された積層体を示す側断面図である。 アルミナ粉末に埋設された積層体の側断面図を拡大した図である。 Fe−Co−V合金の状態図である。 磁気焼鈍後、アルミナ粉末を取り除いた状態における積層体の側断面図を拡大した図である。 変形例に係る積層体の平断面図であり、図10のX1−X1線断面に対応する図である。
以下、本発明の一実施形態について、図1〜図16を参照して説明する。
なお、分かりやすくするため、図1〜図16において、ステータ本体10(鉄心)を形成するリング状の薄板21、絶縁層22、ロータ本体31を形成する円盤の薄板33は、厚めに記載している。また、モータ100(ステータ1、ロータ30)の厚さ、薄板21及び薄板33の厚さ・積層枚数、絶縁層22の厚さ、周方向におけるティース12、コイル15及び永久磁石32の数は、後記する形態に限定されず、適宜変更自由である。
≪モータの構成≫
図1、図2に示すように、本実施形態に係るモータ100は、ステータ1と、ロータ30(回転子)とを備えており、ステータ1の内側に配置されたロータ30が回転するインナーロータ型のモータである。
なお、モータ100は、図示しないハウジング(モータケース)に収容されている。また、このようなモータ100は、例えば、ハイブリッド車、燃料電池車の駆動用モータや、電動パワーステアリング装置のアシスト用モータとして使用される。
<ステータ>
ステータ1は、図2、図3に示すように、ステータ本体10と、後記する各ティース12に装着された12個のコイル15と、を備えている。
[ステータ本体]
ステータ本体10は、円筒状のヨーク11と、ヨーク11の内周面から径方向内向きに突出すると共に、周方向において等間隔で配置された12本のティース12と、を備えている。ステータ本体10は、複数枚(例えば100〜3000枚)の薄板21と、絶縁層22とが、交互に積層されることで構成されている(図5参照)。
[ステータ本体−薄板]
薄板21は、図4に示すように、ステータ本体10の形状に対応したリング状であり、積層されるとヨーク11となるリング状のヨーク部21aと、ヨーク部21aの内周面から径方向内向きに突出すると共に、周方向において等間隔で配置され、積層されるとティース12となるティース部21bと、を備えている。
このような薄板21は、Fe−Co系合金、Fe−Si系合金等からなる電磁鋼板を、ステータ1の形状で打ち抜くことにより形成される。Fe−Co系合金は、高飽和磁束密度材料であり、Fe(鉄)を母体として10質量%以上のCo(コバルト)を含むものが好ましく、例えば、パーメンジュール(Co:49質量%、V:2質量%、Fe:残部)が使用される。Fe−Si系合金は、Fe(鉄)を母体として3質量%以上のSi(珪素)を含むものが好ましい。
薄板21の厚さΔT1は、50〜100μmに設定されている。これにより、図6に示すように、鉄損、ヒステリシス損、うず電流損が低減され、各薄板21の磁気特性が高められている。
なお、コイル15に、U相、V相、W相の交流が通流すると、各薄板21内が磁気回路となり、各薄板21内に磁束が生起する。
[ステータ本体−絶縁層]
絶縁層22は、ステータ本体10におけるうず電流損を低減させるべく、厚さ方向において隣り合う薄板21、21を電気的に絶縁する層である(図5参照)。
絶縁層22の厚さΔT2は、本実施形態では薄板21の厚さΔT1が50〜100μmであることに対応して、5μm以下に設定されている。これにより、ステータ本体10の厚さ方向における薄板21の占有率、及び、磁気特性(理論飽和磁化)を大きく低下させずに(図7参照)、うず電流損が低減されている。
なお、絶縁層22は、後記するステータ本体10の製造方法で説明するように、磁気焼鈍工程において、薄板21の表面(上面、下面)に形成された絶縁性を有する酸化皮膜22A、22Aと、接着工程において薄板21、21を接着するために形成され、酸化皮膜22A、22Aの間に挟まれた接着層22Bと、から構成されている。
[コイル]
12個のコイル15は、表面が絶縁材料で被覆された金属線(例えば銅線)が12本のティース12にそれぞれ巻回されることで構成されている。
そして、12個のコイル15は、U相の交流が通流する4個のU相用コイルと、V相の交流が通流する4個のV相用コイルと、W相の交流が通流する4個のW相用コイルと、とに割り振られ、周方向において、U相用コイル、V相用コイル、W相用コイル、U相用コイル、…、の順で配列している。
<ロータ>
ロータ30は、円柱状を呈しており、円柱状のロータ本体31(鉄心)と、8個の永久磁石32と、を備えている。
ロータ本体31は、円柱状を呈しており、ステータ本体10と同様に(図5参照)、平面視においてロータ本体31の形状に対応する複数枚(例えば100〜3000枚)の薄板33と、絶縁層(図示しない)とが、交互に積層されることで構成されている(図2参照)。そして、ロータ本体31の中心軸線上には、シャフト(図示しない)が挿通・固定されるシャフト孔31aが形成されている。
ただし、ロータ本体31の形状は円柱状に限定されず、その他に例えば、円柱状の中心部と、この中心部に径方向外向きに設けられた複数本のスポークとを備えるスポーク型のロータ本体でもよい。
なお、薄板33及び絶縁層の材質、厚さは、ステータ本体10を構成する薄板21、絶縁層22と同様であるので、ここでの説明は省略する。
そして、コイル15に、U相、V相、W相の交流が通流し、磁束が生起すると、この磁束の一部が、ロータ本体31を構成する各薄板33内を通流する。すなわち、各薄板33内は磁気回路となる。
8個の永久磁石32は、ロータ本体31の外周縁部に、周方向に沿って埋設されている。この他に例えば、永久磁石32がロータ本体31の外周面に固定され、永久磁石32が外部に露出した構成でもよい。
≪モータの作用効果≫
このようなモータ100によれば、次の作用効果を得る。
ステータ本体10を構成する各薄板21の厚さΔT1が50〜100μmであり、絶縁層22の厚さΔT2が5μm以下であるので、鉄損、ヒステリシス損、うず電流損が低減されると共に、磁気特性は高くなり、その結果、モータ100の出力は高められている。
≪ステータ本体の製造方法≫
次に、ステータ本体10(鉄心)の製造方法について、図8〜図16を参照して説明する。
図8に示すように、ステータ本体10の製造方法は、圧延工程(S100)と、打ち抜き工程(S200)と、磁気焼鈍工程(S300)と、接着工程(S400)と、研磨工程(S500)と、を含んでいる。
<圧延工程>
圧延工程は、成分調整され、真空雰囲気で溶解されてなるFe−Co系合金等の溶湯を冷間圧延し、得るべき薄板21の厚さΔT1(50〜100μm)に対応したFe−Co系合金等の電磁鋼板を得る工程である。
なお、このように圧延するので、得られた電磁鋼板の内部には歪みが残留する。
<打ち抜き工程>
打ち抜き工程は、プレス加工機を使用し、厚さΔT1に圧延された電磁鋼板を、ステータ1の平面形状に対応して打ち抜き、複数枚の薄板21を得る工程である。
なお、このように打ち抜くので、得られた薄板21の内部には歪みが残留する。
<磁気焼鈍工程>
磁気焼鈍工程は、焼鈍(熱処理)によって薄板21内に残留する歪みを取り除きつつ、磁気特性の高い相(結晶、組織)を形成すると共に、薄板21の全表面(上面、下面、外周面、内周面)に絶縁性の酸化皮膜22Aを形成する工程である。
具体的には、図9に示すように、第1端板41に立設した3本のガイド棒44、44、44に、リング状を呈する薄板21の中空部を挿通しながら、複数枚の薄板21を仮積層し、積層体51を構成する(第1工程)。
ここで、磁気焼鈍工程において使用する治具40は、平面視で四角形を呈する第1端板41及び第2端板42と、第1端板41の各隅に立設した4本のねじ棒43と、第1端板41の中央部に立設し、薄板21のティース部21bの内周面に当接しつつ(図11参照)、複数枚の薄板21が整って積層するようにガイドする3本のガイド棒44と、各ねじ棒43に所定位置で螺合した第1ナット45と、各ねじ棒43に螺合することで第1端板41と第2端板42とを所定間隔で保持し、積層体51を厚さ方向で拘束するための第2ナット46と、を備えている。
なお、ねじ棒43における第1ナット45の前記所定位置は、薄板21の枚数と、後記するアルミナ粉末71が圧縮されてなるアルミナ層72が通気性を有し、かつ、薄板21に損傷を与えない程度に設定される。
複数枚の薄板21を積層し、積層体51を構成した後、図10に示すように、第2端板42に、4本のねじ棒43及び3本のガイド棒44を挿通し、各ねじ棒43に第2ナット46を仮螺合する。すなわち、薄板21が厚さ方向においてフリーな状態となるように、第2ナット46をねじ棒43に螺合する。
そして、図12に示すように、積層体51を横向きにし、薄板21の面方向が鉛直方向となるようにして、積層体51を容器61内に配置する。
次いで、振動発生装置(図示しない)によって、容器61及び複数枚の薄板21を、主に厚さ方向(図12の左右方向)で振動させながら、アルミナ粉末71(セラミック粉末)を積層体51の上から振り散らし、厚さ方向において隣り合う薄板21間に、アルミナ粉末71を入り込ませる。
この場合において、アルミナ粉末71の粒径は、アルミナ粉末71が薄板21間に速やかに入り込むように、また、薄板21の表面にアルミナ粉末71の形状が転写しないように、1〜10μmであることが好ましい。また、アルミナ粉末71を振り散らす際には、図12に示すように、ふるい62を使用することが好ましい。
ここで、アルミナ粉末71は、磁気焼鈍するため昇温させる温度においても、燃焼、分解、焼結等せず、化学的に安定であるので、磁気焼鈍後に、アルミナ粉末71は容易に除去可能である。すなわち、薄板21間に介在させるセラミックス粉末は、磁気焼鈍させる温度において化学的に安定、つまり、耐熱性を有すればよく、アルミナ粉末71の他に、例えば、ジルコニア、窒化ケイ素、炭化ケイ素等の粉末も使用可能である。
アルミナ粉末71の振り散らし続けると、図13に示すように、積層体51は、容器61に堆積したアルミナ粉末71中に埋設された状態となる(第2工程)。
このように積層体51が埋設した状態で、各第2ナット46をさらにねじ込み、第1端板41と第2端板42とで、積層体51を厚さ方向において挟持し、積層体51を厚さ方向において拘束する(第2工程)。
このようにして厚さ方向に拘束された積層体51において、厚さ方向において隣り合う薄板21、21間には、図14に示すように、アルミナ粉末71が充填され、このアルミナ粉末71からなるアルミナ層72が介在することになる。
なお、アルミナ層72は、外部と連続する連続空隙を有し、磁気焼鈍中、高温のガスがアルミナ層72内を通流可能となっている。
そして、このように薄板21とアルミナ層72とが交互に積層し、アルミナ粉末71に埋設した積層体51を、適宜な炉に入れ、酸素含有ガス雰囲気(例えば空気)下で磁気焼鈍する。
ここで、磁気焼鈍する温度は、例えば、薄板21の組成比と、事前試験や刊行物(金属便覧等)により得られる状態図(図15参照)と、生成させるべき磁気特性の高い相(結晶、組織)とに基づいて決定される。また、磁気焼鈍する時間は、例えば、内部に残留する歪みの量や、薄板21の表面に形成する酸化皮膜22Aの厚さと、に基づいて決定される。
磁気焼鈍中、各薄板21は、内部に残留する歪により、その厚さ方向に変形しようとするが、各薄板21(積層体51)は厚さ方向において拘束されているので、各薄板21は厚さ方向で変形せず、歪むこともない。
また、アルミナ粉末71は、磁気焼鈍する温度において化学的に安定であるので、アルミナ粉末71が凝集することもなく、また、アルミナ粉末71が薄板21の表面に溶着することもない。
さらに、アルミナ層72は通気性を有するので、前記した炉内の高温のガスが、アルミナ層72内を通流し、各薄板21はその表面(端面)側からも加熱されるので、速やかに磁気焼鈍される。
さらにまた、高温のガス(酸素含有ガス)が、アルミナ層72内を通流し、薄板21の全表面(上面、下面、外周面、内周面)と良好に接触するので、薄板21の全表面に絶縁性を有する酸化皮膜22Aが、同時に形成される。
よって、前記した炉内には、アルミナ層72、堆積したアルミナ粉末71内をガスが好適に通流するようにガス流れを発生させるべく、ファン等が設けられることが好ましい。
磁気焼鈍後、積層体51を取り出し、4個の第2ナット46を緩め、積層体51厚さ方向において開放する。
そして、エアガン(図示しない)から噴射されるエアで、薄板21、21間のアルミナ粉末71を吹き飛ばし、除去する(第4工程)。この場合において、アルミナ粉末71は、凝集せず、また、薄板21の表面に溶着していないので、速やかに除去される(図16参照)。
そうすると、磁気焼鈍されると共に、その全表面に絶縁性を有する酸化皮膜22Aが形成された複数枚の薄板21を得る。
なお、得られた複数枚の薄板21は、磁気焼鈍中において厚さ方向において拘束されているので、厚さ方向において歪んでいない。また、磁気焼鈍中において、薄板21、21間に、化学的に安定なアルミナ層72が介在しているので、磁気焼鈍後において、厚さ方向に隣り合う薄板21、21は溶着、接合等していない。
<接着工程>
接着工程は、製造するステータ本体10の厚さに対応して、複数枚の薄板21を積層し(第5工程)、接着する工程である。
具体的には、磁気焼鈍された複数枚の薄板21を積層した後、適宜な治具で保持する。そして、積層されたものの外周面から、毛細管現象を利用して接着剤(例えば、エステル系接着剤)を注入する。この場合において、接着剤が径方向内側部分に浸透・注入されるように、接着剤の粘度は低粘度(2000mPa・s以下、好適には50mPa・s以下)であることが好ましい。
この他、接着剤が溶解した接着剤溶液に、薄板21が積層されたものを含浸し、薄板21間に接着剤を浸透させる方法でもよい。
このように接着剤を注入した後、真空ポンプにより接着剤に混入する気泡を取り除く、つまり、真空脱泡する。次いで、余剰の接着剤をエアブローによって除去した後、薄板21と接着剤とが交互に積層してなる積層体を、厚さ方向において所定に締め付ける。そして、締め付けられた状態の積層体を、適宜な炉で加熱することで、接着剤を硬化させ接着層22Bを形成し、厚さ方向において隣り合う薄板21、21を接着させる。なお、このように形成される接着層22Bは電気的に絶縁性を有する。
<研磨工程>
研磨工程は、前記した接着工程によって薄板21、21が接着した略円柱状の積層体の外周面、内周面を、研磨装置で研磨する工程である。このように研磨した後、図1に示すステータ本体10を得る。
≪ステータ本体の製造方法の効果≫
このようなステータ1の製造方法によれば次の効果を得る。
厚さ方向おいて隣り合う薄板21、21間に、アルミナ粉末71を入り込ませ、アルミナ層72を介在させた状態で磁気焼鈍するので、複数枚の薄板21を並行して同時に磁気焼鈍し、磁気焼鈍後に、複数枚の薄板21を別々に分離できる。
また、積層体51を厚さ方向において拘束した状態で磁気焼鈍するので、磁気焼鈍により各薄板21が厚さ方向において変形することもない。よって、磁気焼鈍された薄板21を整えて積層できる。
さらに、アルミナ層72は通気性を有するので、磁気焼鈍中に、各薄板21の表面に、同時に、絶縁性を有する酸化皮膜22Aを形成できる。
≪ステータの製造方法≫
次に、このようにして得られたステータ本体10の各ティース12に、コイル15を径方向外向きに押し込み、装着させることにより、図2に示すステータ1を得る。
なお、コイル15は、図示しないボビンに銅線を所定に巻回することによって別途用意される。
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、例えば次のように変更できる。
例えば、図17に示すように、周方向に隣り合うガイド棒44、44間に、平断面視で円弧状を呈する樹脂製のガイド片47をそれぞれ設けてもよい。このようにガイド片47を設ければ、薄板21を厚さ方向において、さらに整えて積層しつつ、積層体51に振り掛けるアルミナ粉末71の量を少なくできる。この場合、アルミナ粉末71が全体に入り込むように、例えば、積層体51を周方向に回転させながら、アルミナ粉末71を振り掛けるとよい。
前記した実施形態では、ステータ本体10の製造方法に、本発明を適用した場合を例示したが、ロータ本体31の製造方法に適用してもよい。
前記した実施形態では、モータ100がインナーロータ型である場合を例示したが、アウターロータ型のモータのステータ本体、ロータ本体を製造する場合に、本発明を適用してもよい。
前記した実施形態では、薄板21がリング状である場合を例示したが、薄板の形状はこれに限定されない。例えば、前記した特許文献1に記載されるように、周方向において分割され、平面視で略T字形を呈する薄板でもよいし、さらに、径方向において分割、つまり、ヨーク部21aとティース部21b(図4参照)とが分離したものでもよい。
前記した実施形態では、鉄心であるステータ本体10の製造方法に本発明を適用した場合を例示したが、この他に例えば、トランス(変圧器)のコア(鉄心)や、リアクトルのコア(鉄心)を製造する際に、本発明を適用してもよい。
1 ステータ
10 ステータ本体(鉄心)
11 ヨーク
12 ティース
21 薄板
22 絶縁層
22A 酸化皮膜
22B 接着層
30 ロータ
31 ロータ本体(鉄心)
33 薄板
51 積層体
71 アルミナ粉末(セラミック粉末)
72 アルミナ層(セラミック層)
100 モータ

Claims (2)

  1. 複数の薄板が積層されて構成され、内部が磁気回路となる鉄心の製造方法であって、
    複数の薄板を仮積層し、積層体を構成する第1工程と、
    厚さ方向において隣り合う前記薄板間に、磁気焼鈍する温度において化学的に安定なセラミック粉末を入り込ませると共に、前記積層体をセラミック粉末中に埋設し、前記積層体を厚さ方向において拘束する第2工程と、
    拘束された状態で前記積層体を磁気焼鈍する第3工程と、
    磁気焼鈍後、複数の薄板からセラミック粉末を取り除く第4工程と、
    複数の薄板を積層し、鉄心を構成する第5工程と、
    を含む
    ことを特徴とする鉄心の製造方法。
  2. 厚さ方向において隣り合う前記薄板間に入り込んだセラミック粉末からなるセラミック層は通気性を有し、前記第3工程において、前記各薄板の表面に電気的に絶縁性を有する酸化皮膜を形成する
    ことを特徴とする請求項1に記載の鉄心の製造方法。
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