JP2011077197A - 液体噴射ヘッド、アクチュエーター装置及び液体噴射装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】結晶成長時の揺らぎが小さく、変位特性のよい液体噴射ヘッド、これを用いた噴射特性のよい液体噴射装置、並びに変位特性のよいアクチュエーター装置を提供する。
【解決手段】液体を噴射するノズル開口に連通する液体流路が設けられた流路形成基板上に第一電極60と、圧電体層70と、第二電極80とからなる圧電素子300を備え、圧電体層70は、鉛(Pb)、チタン(Ti)及びジルコニウム(Zr)からなる圧電体膜71と、圧電体膜71間に設けられたニオブ(Nb)、鉛(Pb)、チタン(Ti)及びジルコニウム(Zr)を含有するニオブ含有膜72とからなる。
【選択図】図3
【解決手段】液体を噴射するノズル開口に連通する液体流路が設けられた流路形成基板上に第一電極60と、圧電体層70と、第二電極80とからなる圧電素子300を備え、圧電体層70は、鉛(Pb)、チタン(Ti)及びジルコニウム(Zr)からなる圧電体膜71と、圧電体膜71間に設けられたニオブ(Nb)、鉛(Pb)、チタン(Ti)及びジルコニウム(Zr)を含有するニオブ含有膜72とからなる。
【選択図】図3
Description
本発明は、液体噴射ヘッド、アクチュエーター装置及び液体噴射装置に関する。
液体噴射ヘッド等に用いられるアクチュエーター装置は、電気機械変換機能を呈する圧電材料からなる圧電体層を2つの電極で挟んだ圧電素子であり、圧電体層は、例えば、結晶化した圧電性セラミックスにより構成されている。
圧電材料としては、チタン酸ジルコン酸鉛(以下、「PZT」という)を主成分とする二成分系、または、この二成分系のPZTに第三成分を加えた三成分系とがある。第三成分としては、例えば、ニオブや錫などを添加したものが知られており(特許文献1参照)、これらの組成の圧電体薄膜は、例えば、スパッタ法、ゾル−ゲル法、MODプロセス(Metal organic decomposition process)等により形成することができる。
一般的に二成分系のPZTを用いた圧電体層は三成分系のPZTを用いた圧電体層よりも変位特性が高く、特に抗電界を超えた電圧を印加して駆動する場合にはこの傾向が顕著になる。
しかしながら、上記のような二成分系の圧電材料を用いた圧電体層は、結晶成長時の揺らぎが大きいという問題がある。即ち、二成分系の圧電材料からなる圧電体膜を複数回の塗布と焼成とでエピタキシャル成長により形成する場合に、その結晶成長起点において結晶成長方向が揺らぎやすく、例えば(100)面に配向させようとしても、基板法線方向から傾いて成長してしまうことがあり、その結果、圧電歪みが小さくなるので所望の変位特性を得ることができないという問題がある。ここでエピタキシャル成長とは、結晶が成長する際に、下地の結晶面と同一の結晶面を保ちつつ成長することを指すのが一般である。またエピタキシャル成長した結果、形成された膜が単結晶であるものをエピタキシャル膜と一般的には呼ぶが、下地が単結晶でない場合(結晶成長方向に配向するが、結晶成長方向と垂直な方向には無配向である多結晶の場合)は、エピタキシャル成長した結果、結晶成長方向に結晶面が揃った所謂配向膜となる。本件では、下地が単結晶であるか多結晶であるかに係わらず、下地の結晶面に倣って成長することをエピタキシャル成長と呼ぶことにする。
本発明はこのような事情に鑑み、結晶成長時の揺らぎが小さく、変位特性のよい液体噴射ヘッド、これを用いた噴射特性のよい液体噴射装置、並びに変位特性のよいアクチュエーター装置を提供することを目的とする。
本発明の液体噴射ヘッドは、液体を噴射するノズル開口に連通する液体流路が設けられた流路形成基板と、該流路形成基板上方に設けられた第一電極と、圧電体層と、該圧電体層の前記第一電極とは反対側に形成された第二電極とを有する圧電素子を備え、前記圧電体層は、鉛(Pb)、チタン(Ti)及びジルコニウム(Zr)からなる圧電体膜を複数含み、前記各圧電体膜間には、ニオブ(Nb)、鉛、チタン及びジルコニウムを含有するニオブ含有膜が形成されていることを特徴とする。ニオブ含有膜が形成されていることで、圧電体膜の結晶成長時の揺らぎが小さく、圧電体層の変位特性が向上する。
前記ニオブ含有膜が前記第一電極上に形成されていることが好ましい。ニオブ含有膜が第一電極上に形成され、この上に圧電体層が形成されるので、ニオブ含有膜上の圧電体膜の結晶成長時の揺らぎが小さく、圧電体層の変位特性が向上する。
本発明のアクチュエーター装置は、第一電極と、該第一電極上に形成された圧電体層と、該圧電体層の前記第一電極とは反対側に形成された第二電極とを具備し、前記圧電体層は、鉛、チタン及びジルコニウムからなる圧電体膜を複数含み、前記各圧電体膜間には、ニオブ、鉛、チタン及びジルコニウムを含有するニオブ含有膜が形成されていることを特徴とする。ニオブ含有膜が形成されていることで、圧電体膜の結晶成長時の揺らぎが小さく、圧電体層の変位特性が向上する。
本発明の液体噴射装置は、前記いずれかに記載の液体噴射ヘッドを備えたことを特徴とする。前記した変位特性に優れた液体噴射ヘッドを備えたことで、液体噴射特性に優れたものとなる。
(インクジェット式記録ヘッド)
まず、本発明の液体噴射ヘッドの製造方法により製造される液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッドについて説明する。
まず、本発明の液体噴射ヘッドの製造方法により製造される液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッドについて説明する。
図1は、本発明の実施形態1に係るインクジェット式記録ヘッドの概略構成を示す分解斜視図であり、図2は、(a)図1の平面図及び(b)そのA−A′断面図であり、図3は図2(b)の一部拡大断面図である。
図示するように、流路形成基板10は、シリコン単結晶基板からなり、その一方の面には二酸化シリコンからなる弾性膜50が形成されている。
流路形成基板10には、複数の圧力発生室12がその幅方向に並設されている。また、流路形成基板10の圧力発生室12の長手方向外側の領域には連通部13が形成され、連通部13と各圧力発生室12とが、各圧力発生室12毎に設けられたインク供給路14及び連通路15を介して連通されている。連通部13は、後述する保護基板のリザーバー部31と連通して各圧力発生室12の共通のインク室となるリザーバー100の一部を構成する。インク供給路14は、圧力発生室12よりも狭い幅で形成されており、連通部13から圧力発生室12に流入するインクの流路抵抗を一定に保持している。
また、流路形成基板10の開口面側には、各圧力発生室12のインク供給路14とは反対側の端部近傍に連通するノズル開口21が穿設されたノズルプレート20が、接着剤や熱溶着フィルム等によって固着されている。なお、ノズルプレート20は、例えばガラスセラミックス、シリコン単結晶基板又はステンレス鋼などからなる。
一方、このような流路形成基板10の開口面とは反対側には、上述したように、弾性膜50が形成され、この弾性膜50上には、絶縁体膜55が形成されている。さらに、この絶縁体膜55上には、第一電極60と圧電体層70と第二電極80とが、後述するプロセスで積層形成されて、圧電素子300を構成している。ここで、圧電素子300は、第一電極60、圧電体層70及び第二電極80を含む部分をいう。一般的には、圧電素子300の何れか一方の電極を共通電極とし、他方の電極及び圧電体層70を各圧力発生室12毎にパターニングして構成する。本実施形態では、第一電極60を圧電素子300の共通電極とし、第二電極80を圧電素子300の個別電極としているが、駆動回路や配線の都合でこれを逆にしても支障はない。また、ここでは、駆動により変位が生じる圧電素子300をアクチュエーター装置と称する。なお、上述した例では、弾性膜50、絶縁体膜55及び第一電極60が振動板として作用するが、勿論これに限定されるものではなく、例えば、弾性膜50及び絶縁体膜55を設けずに、第一電極60のみが振動板として作用するようにしてもよい。また、圧電素子300自体が実質的に振動板を兼ねるようにしてもよい。
圧電体層70は、第一電極60上に形成される電気機械変換作用を示す圧電材料からなり、その厚さは0.5〜5μmである。圧電体層70は、圧電体膜71と、圧電体膜71間に設けられたニオブ含有膜72とからなる。
圧電体膜71は、ペロブスカイト構造の結晶膜であり、Pb、Ti及びZrを含むものである。本実施形態では、二成分系のチタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O3、PZT)を用いている。二成分系のチタン酸ジルコン酸鉛を用いていることで、本実施形態の圧電体膜71は、圧電歪みが大きく、圧電体層70の変位特性を向上させることができる。
ところで、この圧電体膜71は、エピタキシャル成長によって形成され、(100)面に優先配向している。優先配向とは結晶の配向方向が無秩序ではなく、特定の結晶面がほぼ一定の方向に向いている状態をいう。この場合に、二成分系の圧電体膜71はエピタキシャル成長時における結晶揺らぎが大きいため所望の歪み特性を得ることができないことがあるので、これを防止する必要がある。
そこで、本実施形態では、下地層としてニオブを含有する三成分系のチタン酸ジルコン酸鉛からなるニオブ含有膜72を設けている。ニオブ含有膜72は、少なくともNb、Pb、Ti及びZrを含むものであり、これらを含有していれば更に別の成分を含有していてもよい。本実施形態では、ニオブ添加チタン酸ジルコン酸鉛(PNZT)を用いている。ニオブ含有膜72は、ニオブを含有していることで、結晶配向性が高い。従って、この膜を圧電体膜71の下地層として設けると、ニオブ含有膜72上の圧電体膜71の結晶配向性を高く保持することができる。即ち、エピタキシャル成長時においては、膜は下地層の影響を強く受けることから、圧電体膜71をエピタキシャル成長により形成する時には、圧電体膜71は、下地層である結晶配向性のよいニオブ含有膜72の影響を強く受けて結晶配向性が向上する。これにより、結晶揺らぎが抑制され、圧電体膜71は所望の歪み特性を得ることができる。従って、本実施形態においては、圧電体層70は、第一電極60上に、ニオブ含有膜72、圧電体膜71の順で複数積層されてなるものであり、各ニオブ含有膜72は、ニオブ含有膜72上に形成された各圧電体膜71の結晶揺らぎを抑制し、結晶配向を制御している。即ち、本実施形態の圧電体層70は、圧電体膜71の結晶揺らぎが抑制され、変位特性がよい。このようなニオブ含有膜72の膜厚は、例えば10〜20nmである。この範囲であれば二成分系の圧電材料からなる圧電体膜71のみから圧電体層70を形成するよりも変位特性を向上させることができる。
また、圧電素子300の個別電極である各第二電極80には、インク供給路14側の端部近傍から引き出され、絶縁体膜55上にまで延設される、例えば、金(Au)等からなるリード電極90が接続されている。
このような圧電素子300が形成された流路形成基板10上、すなわち、第一電極60、絶縁体膜55及びリード電極90上には、リザーバー100の少なくとも一部を構成するリザーバー部31を有する保護基板30が接着剤35を介して接合されている。このリザーバー部31は、本実施形態では、保護基板30を厚さ方向に貫通して圧力発生室12の幅方向に亘って形成されており、上述のように流路形成基板10の連通部13と連通されて各圧力発生室12の共通のインク室となるリザーバー100を構成している。
また、保護基板30の圧電素子300に対向する領域には、圧電素子300の運動を阻害しない程度の空間を有する圧電素子保持部32が設けられている。圧電素子保持部32は、圧電素子300の運動を阻害しない程度の空間を有していればよく、当該空間は密封されていても、密封されていなくてもよい。
このような保護基板30としては、流路形成基板10の熱膨張率と略同一の材料、例えば、ガラス、セラミック材料等を用いることが好ましく、本実施形態では、流路形成基板10と同一材料のシリコン単結晶基板を用いて形成した。
また、保護基板30には、保護基板30を厚さ方向に貫通する貫通孔33が設けられている。そして、各圧電素子300から引き出されたリード電極90の端部近傍は、貫通孔33内に露出するように設けられている。
また、保護基板30上には、並設された圧電素子300を駆動するための駆動回路120が固定されている。この駆動回路120としては、例えば、回路基板や半導体集積回路(IC)等を用いることができる。そして、駆動回路120とリード電極90とは、ボンディングワイヤー等の導電性ワイヤーからなる接続配線121を介して電気的に接続されている。
また、このような保護基板30上には、封止膜41及び固定板42とからなるコンプライアンス基板40が接合されている。ここで、封止膜41は、剛性が低く可撓性を有する材料からなり、この封止膜41によってリザーバー部31の一方面が封止されている。また、固定板42は、比較的硬質の材料で形成されている。この固定板42のリザーバー100に対向する領域は、厚さ方向に完全に除去された開口部43となっているため、リザーバー100の一方面は可撓性を有する封止膜41のみで封止されている。
このような本実施形態のインクジェット式記録ヘッドでは、図示しない外部インク供給手段と接続したインク導入口からインクを取り込み、リザーバー100からノズル開口21に至るまで内部をインクで満たした後、駆動回路120からの記録信号に従い、圧力発生室12に対応するそれぞれの第一電極60と第二電極80との間に電圧を印加し、弾性膜50、絶縁体膜55、第一電極60及び圧電体層70をたわみ変形させることにより、各圧力発生室12内の圧力が高まりノズル開口21からインク滴が吐出される。
(インクジェット式記録ヘッドの製造方法)
以下、上述したインクジェット式記録ヘッドの製造方法について、図4〜図8を参照して説明する。図4〜図8は、インクジェット式記録ヘッドの製造方法を示す断面図である。
以下、上述したインクジェット式記録ヘッドの製造方法について、図4〜図8を参照して説明する。図4〜図8は、インクジェット式記録ヘッドの製造方法を示す断面図である。
まず、図4(a)に示すように、流路形成基板10が複数一体的に形成されるシリコンウエハーである流路形成基板用ウエハー110の表面に弾性膜50を構成する二酸化シリコン(SiO2)からなる二酸化シリコン膜51を形成する。次いで、図4(b)に示すように、弾性膜50(二酸化シリコン膜51)上に、酸化ジルコニウムからなる絶縁体膜55を形成する。
次いで、図4(c)に示すように、絶縁体膜55上の全面に第一電極60を形成し、所定形状にパターニングする。この第一電極60の材料は、圧電体層70がチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)であることに鑑みれば、酸化鉛の拡散による導電性の変化が少ない材料であることが望ましい。このため、第一電極60の材料としては白金、イリジウム等が好適に用いられる。また、第一電極60は、例えば、スパッタリング法等のPVD法(物理蒸着法)などにより形成することができる。
この第一電極60上には、圧電体層70が形成される。本実施形態では、この圧電体層70を構成する圧電体膜71としては、二成分系のチタン酸ジルコン酸鉛を用いて変位特性のよい圧電素子を形成する。以下、本実施形態における圧電体層70の作製手順を詳細に説明する。
第一電極60上に直接二成分系のチタン酸ジルコン酸鉛のみからなる圧電体層70を形成すると結晶成長時における揺らぎが大きくなってしまうので、これを抑制し所望の圧電歪み特性を得ることで、圧電体層70が所望の変位特性を得ることができるようにする必要がある。そこで、本実施形態においては、結晶成長時における揺らぎを抑制しつつ、かつ、変位特性を向上させることができるように、結晶成長時に揺らぎが少ないニオブを含有した三成分系のチタン酸ジルコン酸鉛からなるニオブ含有膜72を形成し、このニオブ含有膜72上に二成分系のチタン酸ジルコン酸鉛からなる圧電体膜71を形成する。以下、詳細に説明する。
まず、図5(a)に示すように、流路形成基板用ウエハー110の第一電極60が形成された面にニオブ含有膜72を形成するためのニオブ含有前駆体膜73を形成する。本実施形態では、有機金属化合物を溶媒に溶解・分散したいわゆるゾル(塗布溶液)を塗布乾燥してゲル化し、さらに高温で焼成することで金属酸化物からなるニオブ含有膜72を得る、いわゆるゾル−ゲル法を用いてニオブ含有膜72を形成している。なお、ニオブ含有膜72の製造方法は、ゾル−ゲル法に限定されず、例えば、MOD(Metal-Organic Decomposition)法等を用いてもよい。
具体的には、第一電極60が形成された流路形成基板10上にPb、Zr、Ti及びNbのそれぞれの有機化合物を含むゾル(塗布溶液)を塗布し、ニオブ含有前駆体膜73とする(ニオブ含有前駆体塗布工程)。このニオブ含有前駆体膜73を所定温度に加熱して一定時間乾燥させる(乾燥工程)。次に、乾燥したニオブ含有前駆体膜73を所定温度に加熱して一定時間保持することによって脱脂する(脱脂工程)。なお、以下、これらのニオブ含有前駆体塗布工程、乾燥工程及び脱脂工程をまとめてニオブ含有前駆体膜成膜工程とする。
次いで、このニオブ含有前駆体膜73上に、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)からなる圧電体膜71を形成するための圧電体前駆体膜74を形成する。ここで、本実施形態では、有機金属化合物を溶媒に溶解・分散したいわゆるゾル(塗布溶液)を塗布乾燥してゲル化し、さらに高温で焼成することで金属酸化物からなる圧電体前駆体膜74を得る、いわゆるゾル−ゲル法を用いて圧電体前駆体膜74を形成している。なお、圧電体前駆体膜74の製造方法は、ゾル−ゲル法に限定されず、例えば、MOD(Metal-Organic Decomposition)法等を用いてもよい。
まず、図5(b)に示すように、ニオブ含有前駆体膜73上にPZT前駆体膜である圧電体前駆体膜74を成膜する。すなわち、ニオブ含有前駆体膜73が形成された流路形成基板10上にPb、Zr及びTiそれぞれの有機化合物を含むゾル(塗布溶液)を塗布する(前駆体塗布工程)。この圧電体前駆体膜74を所定温度に加熱して一定時間乾燥させる(乾燥工程)。次に、乾燥した圧電体前駆体膜74を所定温度に加熱して一定時間保持することによって脱脂する(脱脂工程)。なお、以下、これらの前駆体塗布工程、乾燥工程及び脱脂工程をまとめて前駆体膜成膜工程とする。
そして、再度ニオブ含有前駆体膜成膜工程及び前駆体膜成膜工程を繰り返し、二層目のニオブ含有前駆体膜73上に二層目の圧電体前駆体膜74を形成する。
このようにニオブ含有前駆体膜成膜工程及び前駆体膜成膜工程を所定回数(例えば3回)繰り返した後に図5(b)に示すように、ニオブ含有前駆体膜73及び圧電体前駆体膜74を所定温度に加熱して一定時間保持することによって結晶化させ、積層されたニオブ含有膜72及び圧電体膜71を形成する(焼成工程)。なお、以下これらの複数のニオブ含有前駆体膜成膜工程及び前駆体膜成膜工程並びに焼成工程をまとめて圧電体膜形成工程とする。得られた圧電体膜71は、それぞれニオブ含有膜72を形成したことにより、結晶配向性がよく揺らぎが少なく、圧電歪みが大きい。
そして、圧電体膜形成工程を複数回繰り返すことにより、図5(c)に示すように複数層のニオブ含有膜72及び圧電体膜71が積層された圧電体層70を形成する。なお、この圧電体層70の厚さについては、製造工程でクラックが発生しない程度に厚さを抑え、且つ十分な変位特性を呈する程度に厚く形成する。本実施形態では、圧電体膜71を形成する度にニオブ含有膜72を形成することで、圧電体膜71の成長時における揺らぎが抑制され、所望の圧電特性の圧電素子300を形成することができる。
その後、図6(a)に示すように、圧電体層70上に亘って、例えば、イリジウム(Ir)からなる第二電極80を形成する。そして、図6(b)に示すように、圧電体層70及び第二電極80を、各圧力発生室12に対向する領域にパターニングして圧電素子300を形成する。圧電体層70及び第二電極80のパターニングとしては、例えば、反応性イオンエッチングやイオンミリング等のドライエッチングが挙げられる。
次に、リード電極90を形成する。具体的には、図6(c)に示すように、流路形成基板用ウエハー110の全面に亘ってリード電極90を形成後、例えば、レジスト等からなるマスクパターン(図示なし)を介して各圧電素子300毎にパターニングすることで形成される。
次に、図7(a)に示すように、流路形成基板用ウエハー110の圧電素子300側に、シリコンウエハーであり複数の保護基板30となる保護基板用ウエハー130を接着剤35を介して接合する。
次に、図7(b)に示すように、流路形成基板用ウエハー110を所定の厚みに薄くする。次いで、図7(c)に示すように、流路形成基板用ウエハー110にマスク膜52を新たに形成し、所定形状にパターニングする。そして、図8に示すように、流路形成基板用ウエハー110をマスク膜52を介してKOH等のアルカリ溶液を用いた異方性エッチング(ウェットエッチング)することにより、圧電素子300に対応する圧力発生室12、連通部13、インク供給路14及び連通路15等を形成する。
その後は、流路形成基板用ウエハー110及び保護基板用ウエハー130の外周縁部の不要部分を、例えば、ダイシング等により切断することによって除去する。そして、流路形成基板用ウエハー110の保護基板用ウエハー130とは反対側の面にノズル開口21が穿設されたノズルプレート20を接合すると共に、保護基板用ウエハー130にコンプライアンス基板40を接合し、流路形成基板用ウエハー110等を図1に示すような一つのチップサイズの流路形成基板10等に分割することによって、インクジェット式記録ヘッドIとする。
このように、本実施形態においてはニオブ含有膜72を形成することで、ニオブ含有膜72上にエピタキシャル成長により形成された圧電体膜71の結晶配向性を向上させ、圧電体層が所望の変位特性を得ることができるように構成している。
(液体噴射装置)
図9に示すインクジェット式記録装置IIにおいて、上述した変位特性に優れたインクジェット式記録ヘッドを有する記録ヘッドユニット1A及び1Bは、インク供給手段を構成するカートリッジ2A及び2Bが着脱可能に設けられ、この記録ヘッドユニット1A及び1Bを搭載したキャリッジ3は、装置本体4に取り付けられたキャリッジ軸5に軸方向移動自在に設けられている。この記録ヘッドユニット1A及び1Bは、例えば、それぞれブラックインク組成物及びカラーインク組成物を吐出するものとしている。
図9に示すインクジェット式記録装置IIにおいて、上述した変位特性に優れたインクジェット式記録ヘッドを有する記録ヘッドユニット1A及び1Bは、インク供給手段を構成するカートリッジ2A及び2Bが着脱可能に設けられ、この記録ヘッドユニット1A及び1Bを搭載したキャリッジ3は、装置本体4に取り付けられたキャリッジ軸5に軸方向移動自在に設けられている。この記録ヘッドユニット1A及び1Bは、例えば、それぞれブラックインク組成物及びカラーインク組成物を吐出するものとしている。
そして、駆動モーター6の駆動力が図示しない複数の歯車およびタイミングベルト7を介してキャリッジ3に伝達されることで、記録ヘッドユニット1A及び1Bを搭載したキャリッジ3はキャリッジ軸5に沿って移動される。一方、装置本体4にはキャリッジ軸5に沿ってプラテン8が設けられており、図示しない給紙ローラーなどにより給紙された紙等の記録媒体である記録シートSがプラテン8に巻き掛けられて搬送されるようになっている。
(他の実施形態)
また、上述した実施形態においては、ニオブ含有前駆体膜成膜工程及び前駆体膜成膜工程をこの順で所定回数繰り返したが、ニオブ前駆体塗布工程、乾燥工程及び脱脂工程を行った後に、前駆体塗布工程、乾燥工程及び脱脂工程を所定回数繰り返し、その後焼成工程を行っても良い。即ち、上述した実施形態では圧電体前駆体膜74を形成する度にニオブ含有膜72を形成したが、ニオブ含有前駆体膜73を形成した後に複数層の圧電体前駆体膜74を形成し、その後焼成して圧電体膜71を形成してもよい。
また、上述した実施形態においては、ニオブ含有前駆体膜成膜工程及び前駆体膜成膜工程をこの順で所定回数繰り返したが、ニオブ前駆体塗布工程、乾燥工程及び脱脂工程を行った後に、前駆体塗布工程、乾燥工程及び脱脂工程を所定回数繰り返し、その後焼成工程を行っても良い。即ち、上述した実施形態では圧電体前駆体膜74を形成する度にニオブ含有膜72を形成したが、ニオブ含有前駆体膜73を形成した後に複数層の圧電体前駆体膜74を形成し、その後焼成して圧電体膜71を形成してもよい。
また、上述したインクジェット式記録ヘッドの製造方法では、第一電極60をパターニングすることにより形成した後に圧電体層70を形成するようにしたが、デバイスの関係上、第一電極60上に1層目の圧電体膜71を形成し、その後、第一電極60を圧電体膜71と共にパターニングするようにしてもよい。
また、上述した実施形態では、流路形成基板10として、シリコン単結晶基板を例示したが、特にこれに限定されず、例えば、SOI基板、ガラス等の材料を用いるようにしてもよい。
また、本発明は、インクジェット式記録ヘッドに代表される液体噴射ヘッドに搭載されるアクチュエーター装置に限られず、他の装置に搭載されるアクチュエーター装置にも適用することができる。
また、上述したインクジェット式記録装置IIでは、インクジェット式記録ヘッド(ヘッドユニット1A、1B)がキャリッジ3に搭載されて主走査方向に移動するものを例示したが、特にこれに限定されず、例えば、インクジェット式記録ヘッドが固定されて、紙等の記録シートSを副走査方向に移動させるだけで印刷を行う、所謂ライン式記録装置にも本発明を適用することができる。
I インクジェット式記録ヘッド(液体噴射ヘッド)、 10 流路形成基板、 12 圧力発生室、 13 連通部、 14 インク供給路、 20 ノズルプレート、 21 ノズル開口、 30 保護基板、 31 リザーバー部、 32 圧電素子保持部、 40 コンプライアンス基板、 50 弾性膜、 55 絶縁体膜、 60 第一電極、 70 圧電体層、 72 ニオブ含有膜、 80 第二電極、 90 リード電極、 100 リザーバー、 110 流路形成基板用ウエハー、 120 駆動回路、 121 接続配線、 300 圧電素子
Claims (4)
- 液体を噴射するノズル開口に連通する液体流路が設けられた流路形成基板と、該流路形成基板上方に設けられた第一電極と、圧電体層と、該圧電体層の前記第一電極とは反対側に形成された第二電極とを有する圧電素子を備え、
前記圧電体層は、鉛(Pb)、チタン(Ti)及びジルコニウム(Zr)からなる圧電体膜を複数含み、前記各圧電体膜間には、ニオブ(Nb)、鉛、チタン及びジルコニウムを含有するニオブ含有膜が形成されていることを特徴とする液体噴射ヘッド。 - 前記ニオブ含有膜が前記第一電極上に形成されていることを特徴とする請求項1記載の液体噴射ヘッド。
- 第一電極と、該第一電極上に形成された圧電体層と、該圧電体層の前記第一電極とは反対側に形成された第二電極とを具備し、
前記圧電体層は、鉛、チタン及びジルコニウムからなる圧電体膜を複数含み、前記各圧電体膜間には、ニオブ、鉛、チタン及びジルコニウムを含有するニオブ含有膜が形成されていることを特徴とするアクチュエーター装置。 - 請求項1又は2に記載の液体噴射ヘッドを備えたことを特徴とする液体噴射装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2009225449A JP2011077197A (ja) | 2009-09-29 | 2009-09-29 | 液体噴射ヘッド、アクチュエーター装置及び液体噴射装置 |
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2009225449A JP2011077197A (ja) | 2009-09-29 | 2009-09-29 | 液体噴射ヘッド、アクチュエーター装置及び液体噴射装置 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
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JP2011077197A true JP2011077197A (ja) | 2011-04-14 |
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ID=44020896
Family Applications (1)
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JP2009225449A Pending JP2011077197A (ja) | 2009-09-29 | 2009-09-29 | 液体噴射ヘッド、アクチュエーター装置及び液体噴射装置 |
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JP (1) | JP2011077197A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP6417549B1 (ja) * | 2016-12-12 | 2018-11-07 | パナソニックIpマネジメント株式会社 | 圧電機能膜、アクチュエータおよびインクジェットヘッド |
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2009
- 2009-09-29 JP JP2009225449A patent/JP2011077197A/ja active Pending
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