JP2011072174A - アクチュエータ - Google Patents

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    • F16K31/02Actuating devices; Operating means; Releasing devices electric; magnetic

Abstract

【課題】水の流入等を抑制し、繰り返し駆動しても亀裂や剥離が生じにくいアクチュエータを提供する。
【解決手段】導電層とイオン伝導層を有するアクチュエータにおいて、前記アクチュエータに接して設けられた水の透過を抑制する高分子からなる第1の層と、前記第1の層に接して設けられた、前記第1の層より引張弾性率が小さい、前記第1の層を保護する高分子からなる第2の層を有するアクチュエータ。前記第1の層と前記第2の層が前記アクチュエータ全体を被覆していることが好ましい。
【選択図】図1

Description

本発明は、アクチュエータに関する。
高分子アクチュエータは、従来の無機材料からなるアクチュエータよりも柔軟であり、低電力で動作する特徴をもつことから注目されている。高分子アクチュエータの中で、イオン交換樹脂を2つの電極で挟んだ構造のものが代表的である。この高分子アクチュエータは電極間に電圧を印加してイオン交換膜中のイオンを移動させることで、アクチュエータを湾曲、変形させる。ここで、イオン交換膜中のイオンを安定的に保持するために、通常、アクチュエータを水の透過を抑制する材料の層(以下、水不透過性層と略すことがある)で被覆している。
例えば、特許文献1では、電極とイオン導電性高分子層(陽イオン交換樹脂層)とからなる構造体の表面を高分子からなる水不透過性層で覆うことで、イオン導電性高分子層からのイオンの流出、及び水の流入を抑制したアクチュエータが開示されている。さらに特許文献1では、その水不透過性層の表面に金属層を形成することで、水の流入等を抑制する性能を高めるだけでなく、水不透過性層を保護する機能も有したアクチュエータが開示されている。
特開2008−035682号公報
しかし、特許文献1に開示されているアクチュエータを繰り返し駆動すると、水不透過性層としての高分子層と金属層との間で亀裂や剥離が生じるという課題がある。また、高分子層の表面に、高分子層に比べて一般的に引張弾性率の高い金属層を形成した場合、アクチュエータの動きが妨げられるという課題がある。
本発明は、この様な背景技術に鑑みてなされたものであり、水の流入等を抑制し、繰り返し駆動しても亀裂や剥離が生じにくく、動きが妨げられにくいアクチュエータを提供することを目的とする。
本発明は、導電層とイオン伝導層を有するアクチュエータにおいて、前記アクチュエータに接して設けられた水の透過を抑制する高分子からなる第1の層と、前記第1の層に接して設けられた、前記第1の層より引張弾性率が小さい、前記第1の層を保護する高分子からなる第2の層を有することを特徴とする。
本発明によれば、水の流入等を抑制し、繰り返し駆動しても亀裂や剥離が生じにくく、動きが妨げられにくいアクチュエータを提供することができる。
本発明の実施形態に係るアクチュエータの構成の概略を示す断面図である。 運動するアクチュエータの運動方向を、表面に投影した方向を示す図である。 2つの導電層でイオン伝導層を挟持したアクチュエータの駆動原理を示す図である。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本実施形態に係るアクチュエータは導電層とイオン伝導層を有する。そして、前記アクチュエータに接して設けられた水の透過を抑制する高分子からなる第1の層と、前記第1の層に接して設けられた前記第1の層より引張弾性率が小さい前記第1の層を保護する高分子からなる第2の層を有する。
本実施形態に係るアクチュエータは、水の透過を抑制する高分子の第1の層を設けることにより、水の流入等を抑制する。また、前記第1の層に高分子の第2の層を接して設けることで、水の透過を抑制する第1の層を保護すると共に、繰り返し駆動しても亀裂や剥離が生じにくい。さらに、第1の層に比べて第2の層の引張弾性率が小さいので、アクチュエータの動きが妨げられにくくなる。ここで、水の透過を抑制する高分子からなる第1の層とは、水分遮断層である、高分子からなる第1の層である。
本実施形態において、前記アクチュエータが平板状である場合、前記第2の層は、前記アクチュエータの両主面を覆うように設けられていることが好ましく、後述する図1のように、第2の層が主面と側面とを覆うように設けられていることがさらに好ましい。そして、前記第1の層と前記第2の層が前記アクチュエータ全体を被覆していることが好ましい。
図1は、本実施形態に係るアクチュエータの概略を示す断面図である。図1において、導電層1および導電層2がイオン伝導層3を挟持しており、導電層1および導電層2にリード線6が接続されている。さらに、アクチュエータの全体は、アクチュエータに接して設けられた水の透過を抑制する高分子からなる第1の層4で被覆されており、さらに前記第1の層4の上に設けられた前記第1の層より引張弾性率が小さい第2の層5で被覆されている。図2には、第2の層5が表面全体を被覆しているアクチュエータが示されている。
本実施形態に係るアクチュエータは、水の透過を抑制する高分子からなる第1の層を有する。
一般に導電層あるいはイオン伝導層が表面にある構成からなる高分子アクチュエータを水中や空気中で用いると、周りに存在する水分子は高分子アクチュエータ表面に吸着し、溶解、内部へ浸透する。イオン導電性高分子アクチュエータが内部に電解質水溶液を有する場合、水分量が変化するとアクチュエータの駆動時にイオンの移動に伴って移動する水の量も影響を受け、その結果、安定した駆動が得られない。なお、イオン導電性高分子アクチュエータとは、導電層とイオン伝導層からなる構成からなるアクチュエータである。
本実施形態に係るアクチュエータは、水の透過を抑制する高分子を第1の層として用いるので、含水状態で駆動するイオン導電性アクチュエータにおいて、水は第1の層を浸透することができず、アクチュエータの外部から内部への水の透過が抑制される。さらに、アクチュエータの内部から外部への水の蒸発や透過を抑制することができる。含水状態で駆動するイオン導電性アクチュエータにおいては、内部のイオンの移動に伴い水が移動し、その体積が膨張することによって駆動する。よって内部の水の蒸発や外部への透過を抑制することによって、含水量を一定に保つことができ、長期間、安定して駆動可能となり、耐久性の向上したアクチュエータを得ることができる。
また、本実施形態において、アクチュエータはイオン液体を含有していることが好ましい。イオン液体は、水存在下で長時間使用すると分解・劣化したり、あるいはアニオンとしてBF やPF 等を用いた場合、加水分解平衡反応が生じHが発生し、アクチュエータ自体を劣化させることがある。そのために、外部の水がアクチュエータ内に透過し、アクチュエータが水を含んだ状態で長時間使用すると安定した駆動が得られない場合がある。本実施形態においては、水の透過を抑制する高分子の膜を第1の層として用いるために、水は第1の層を浸透することができず、アクチュエータの外部から内部への水の透過が抑制される。その結果、イオン液体の分解・劣化や加水分解平衡反応によるHの発生が抑制され、水中や空気中において長期間、安定した駆動が可能となり、耐久性の向上したアクチュエータを得ることができる。
また、本実施形態に係るアクチュエータは、内部に存在するイオン液体の外部への透過を抑制し、一定量に維持することができる。イオン液体を用いるアクチュエータの駆動原理は、電極間への電荷印加に伴いイオン液体のカチオン・アニオンがそれぞれ電極に移動することによる。そのために、イオン液体の量が変化すると安定した駆動がえられなくなる場合がある。本実施形態における水の透過を抑制する高分子の第1の層は、イオン液体の透過も抑制することから、含有するイオン液体の量を一定に保つことができ、長期間、安定して駆動可能となり、耐久性の向上したアクチュエータを得ることができる。
また、一般に、高分子の膜に対して、水分子は高分子鎖が配向・結晶化した部位を透過することが困難であることから、配向・結晶化の割合が大きい程高分子の膜に対する水の透過性は抑制される。延伸した高分子膜や高分子鎖の配向・結晶化処理した高分子膜は、無処理のものに比べ、より水の透過性は抑制され、その結果、耐久性の向上したアクチュエータが得られる。
水の透過を抑制する第1の層は、屈曲・伸縮性のある高分子からなる。アルミ等の金属層も水の透過を抑制することは可能であるが、屈曲・伸縮等の運動により、剥離しやすい。第1の層に柔軟な高分子を用いることにより、アクチュエータが屈曲・伸縮等の運動を繰り返しても、第1の層が剥離するのを抑制することができる。
本実施形態に係るアクチュエータに用いられる高分子からなる水の透過を抑制する第1の層は、水やイオン液体などの液体の透過を抑制するものであればよく、特に限定されない。例えば低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン等のポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン−ポリプロピレン共重合体等これらを含むポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニリデンとポリ塩化ビニルあるいはメタクリル酸等との共重合体、ポリアクリロニトリル、フッ素樹脂等が挙げられ、またそれぞれの共重合体あるいは、各高分子をアロイ、ブレンドしたもの等が挙げられる。更に、水の透過をより抑制するために、各高分子鎖を延伸、配向、結晶化したものも用いることができる。例えば、延伸ポリエチレン、延伸ポリプロピレン、延伸ナイロン(延伸ポリアミド)、延伸ポリエステル等が挙げられるがこれらに限定されない。延伸は例えば一軸延伸でもよいし、二軸延伸でもよい。
高分子鎖を延伸、配向、結晶化する方法は、高分子鎖が延伸、配向、結晶化されていれば特に限定されない。例えば、高分子を融点以下、一般にはガラス転移以上の温度で延伸機等によって一軸あるいは二軸に引き延ばす方法や、テンター法、ロール法やチューブラー同時二軸延伸法やそれらを組み合わせた方法が挙げられる。二軸の場合は、同時に2方向に配向させてもよいし、逐次に配向させてもよい。また、2段以上の多段で延伸し配向させてもよい。
高分子からなる第1の層の引張弾性率は、0.01GPa以上10GPa以下、好まし
くは0.05GPa以上8GPa以下が望ましい。
本実施形態に係るアクチュエータにおける第1の層の厚さは、特に限定されないが、0.001μm以上500μm以下、好ましくは0.1μm以上200μm以下が望ましい。0.1μm未満では水の透過を十分に抑制できない場合があり、500μmより厚いとアクチュエータの駆動時に、その運動を妨げる場合がある。
本実施形態に係るアクチュエータに用いられる第2の層は、前記第1の層の高分子より引張弾性率が小さい高分子からなることが好ましい。第2の層は、前記第1の層の上に積層されている。
本実施形態に係るアクチュエータに用いられる高分子の第1の層は、上述したように、水に対して不透過性を有している。一般に水は、高分子鎖の配向・結晶部位を透過することは困難であり、高分子の水不透過材料においても配向・結晶部位を有することによって、水の透過性を抑制することができる。しかし、高分子の配向・結晶部位は、アクチュエータの駆動による伸縮、屈曲等の力が負荷すると、配向方向に対して垂直方向に対して裂け易く、ピンホール等の劣化も生じやすい。さらに配向・結晶部位は固いため、高分子膜が変形する際、より力が局在的に負荷され、その結果、裂け易く、ピンホール等の劣化も生じやすい。
本実施形態においては、第1の層より引張弾性率が小さい第2の層が第1の層の上に積層されているため、アクチュエータの屈曲・伸縮等の運動により生じる第1の層への力が分散され、局所的に負荷されにくくなる。そのために、高分子の配向・結晶部位における高分子鎖間の亀裂・ピンホールを抑制できる。
さらに、本実施形態に係るアクチュエータは、駆動系デバイスに用いるため、デバイスの他部位と接触することが多い。例えば、高分子の第1の層が、アクチュエータの最表面に存在する場合には、上述したように摩擦等により高分子鎖間に亀裂・ピンホールが発生しやすい。本実施形態においては、第1の層より引張弾性率が小さい第2の層が表面にあることにより、第1の層に直接、外部から摩擦が生じることがない。
本実施形態に係るアクチュエータにおける第2の層は、第1の層の高分子より引張弾性率が小さい高分子からなることが好ましい。第2の層の引張弾性率は、特に限定されないが、好ましくは5GPa以下、さらに好ましくは0.01GPa以上3GPa以下である。第2の層の引張弾性率が5GPaより大きい場合、アクチュエータの運動を抑制し、十分な変形や力を得ることができない。
引張弾性率は、例えば、引張試験機などを用いて測定した場合の応力(δ)−ひずみ(ε)曲線から、傾きδ/εの値(ヤング率)をもって算出される。
また、上記第2の層は、高分子の第1の層に対して接着性があることが好ましい。本実施形態において、第2の層は、高分子の第1の層に対して接着性があることによって、長期間の駆動に対しても、剥離することなく、第1の層を保護し、水の透過を抑制することができる。接着性とは、第1の層と第2の層を積層した後、屈曲・伸縮等の運動を繰り返し行った際、層間で剥離が生じないことである。
上記第2の層は、前記第1の層より引張弾性率が小さく、好ましくは第1の層に対して接着性を有すればよく、特に限定されない。例えば、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、共重合ナイロン等のポリアミド、ポリウレタン、ポリビニルアルコールやその共重合体、シリコンゴム、天然ゴム、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリブタジエン等のエラストマー等の高分子、あるいは、それぞれの共重合体、各高分子をアロイ、ブレンドしたもの等が挙げられる。
上記第2の層の厚さは、特に限定されないが、0.001μm以上500μm以下、好ましくは0.01μm以上200μm以下が望ましい。0.001μm未満では、アクチュエータの運動に対し亀裂等が生じて第1の層を十分に保護できない場合があり、500μmより厚いとアクチュエータの運動を妨げる場合がある。
本実施形態において前記第1の層と前記第2の層が前記アクチュエータ全体を被覆していることが好ましい。ここでアクチュエータ全体を被覆するとは、導電層やイオン伝導層からなる積層体のすべての面を前記第1の層と前記第2の層で被覆することである。図1に示すような、アクチュエータの場合、導電層やイオン伝導層の各層が積層して形成されている積層面の上下では、イオン伝導層が表層側にでているため、より水が透過しやすい。第1の層と第2の層で積層面を含め全体を被覆することで、アクチュエータへの水の出入り可能な部位を遮断することができ、安定した駆動が可能で、耐久性の向上したアクチュエータを得ることができる。
また、前記第1の層の高分子が配向しており、前記高分子の配向方向がアクチュエータの運動方向を第1の層の表面に投影した方向と同じであることが好ましい。図2(a)は、屈曲運動するアクチュエータにおいて、運動方向を表面に投影した方向を示す図である。図2(b)は、伸縮運動するアクチュエータにおいて、運動方向を表面に投影した方向を示す図である。
ここで、前記アクチュエータの運動方向を第1の層の表面に投影した方向とは、例えば、図2(a)に示すように、方向203である。図2(a)のアクチュエータ201は、図1で示すように2つの導電層によってイオン伝導層を挟持している。2つの導電層間に電圧を印加すると以下で述べるように破線202のように屈曲運動をする。よってアクチュエータの運動方向204を第1層に投影した方向とは、方向203であり、第1の層の高分子も方向203に配向している。また、第1の層の高分子の配向方向の少なくとも一方向がアクチュエータの運動方向を第1の層の表面に投影した方向と同じであればよく、例えば二軸配向している場合、どちらか一方向がアクチュエータの運動方向を第1の層の表面に投影した方向と同じである。
前記第1の層の高分子の配向方向が、前記アクチュエータの運動方向を第1の層の表面に投影した方向と同じであることによって、高分子の配向方向と垂直方向で膜が裂けることを抑制することができる。例えば図2(a)において、アクチュエータが方向204に屈曲運動する際、第1の層は運動方向を第1の層の表面に投影した方向203に伸長される。高分子の配向方向は破壊強度が他方向より高いことから、方向203と同じにすることによって、配向している高分子鎖間に亀裂が生じにくくなる。
図2(a)では屈曲運動に対して示したが、運動方向は特に限定されるものではなく、例えば図2(b)に示すように伸縮運動するアクチュエータ210においても同様である。すなわち、アクチュエータが方向211に伸長運動する際、第1の層は運動方向213を第1の層の表面に投影した方向212に伸縮される。高分子の配向方向は破壊強度が他方向より高いことから、方向212と同じにすることによって、配向している高分子鎖間に亀裂が生じにくくなる。
また、本実施形態においては、前記第1の層が少なくとも2層以上からなり、前記2層以上の第1の層の高分子のそれぞれの配向方向が異なるように積層されていることが好ましい。先に述べた通り、一般に、高分子鎖が配向・結晶化している領域を水は透過することは困難である。一方、機械的強度は配向方向に強いが、配向方向に垂直な方向には裂けやすいため、亀裂・ピンホールが生じ易い。本実施系形態において、前記2層以上の第1
の層の高分子の配向方向がそれぞれ異なるように積層されていることにより、機械的強度が強い方向がそれぞれ一定方向ではなく複数方向になる。そのため、運動によってかかる様々な方向の力に対して耐久性が向上するアクチュエータを提供することができる。また、少なくとも2層以上の高分子の配向方向がなす角度が大きいほど運動によってかかる様々な方向の力に対して耐久性が向上する。
少なくとも2層の第1の層の高分子の配向方向はそれぞれ異なるように積層されていれば特に限定されないが、少なくとも2層の各々の高分子の配向方向がなす角度が、1度以上、更には5度以上が好ましい。1度未満だと運動によってかかる様々な方向の力に対して耐久性が十分に向上しない場合がある。
本実施系形態において、導電層とイオン伝導層を有するアクチュエータの駆動原理は明確にはなっていないが、現在推測されている原理について、本実施形態において好ましく用いられる2つの導電層でイオン伝導層を挟持している例を図3を用いて説明する。図3(a)のように、2つの導電層301、302はイオン伝導層303の表面に相互に絶縁状態で形成されている。この導電層301,302間に電位差がかかると、図3(b)に示すように、イオン性物質306のカチオン304とアニオン305は、カソードの導電層307にカチオン304が移動・浸透し、アノードの導電層308にはアニオン305が移動、浸透する。そして導電層307、308内の導電材層とイオン性物質相の界面に電気二重層が形成される。好ましく用いられるイオン液体は、カチオン304のイオン半径がアニオン305より大きい。その結果、導電層内に存在するイオンの立体効果が、電気二重層に伴う静電反発などと共同的に働きにより、導電層307が導電層308に比べ、より膨張し、カソードがアノードに比べより伸びる方向へアクチュエータが屈曲すると考えられる。屈曲変形の方向、変位量、変位速度等は、導電層・イオン伝導層の種類、電極の組成・構成、移動するイオン種等により変動する。また、通常、電位の極性を反転させると膜は反対方向に屈曲変形する。
本実施形態に係るアクチュエータは、図1で示す通り、水の透過を抑制する高分子の第1の層と、前記第1の層より引張弾性率が小さい第2の層を有しているが、駆動原理は上述の例と同じである。第1の層および第2の層で駆動運動を妨げることはなく、十分な変位や力を得ることができる。
本実施形態において、前記アクチュエータがイオン性物質を有することが好ましい。用いられるイオン性物質としは、例えば、フッ化リチウム、臭化リチウム、臭化ナトリウム、塩化マグネシウム、硫酸銅、酢酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム等を挙げることができるが、更に好ましくはイオン液体である。
本実施系形態に係るアクチュエータに用いられるイオン液体(ionic liquid)とは、常温溶融塩または単に溶融塩などとも称されるものであり、常温(室温)を含む幅広い温度域で溶融状態を呈する塩である。イオン液体は常温で不揮発性を示すことから、本発明のイオン伝導物質としてイオン液体を用いた場合、湿度が高くない空気中および真空中での駆動が可能となる。
本実施形態においては、従来より知られた各種のイオン液体を使用することができるが、常温(室温)または可及的に常温に近い温度において液体状態を呈し安定なものが好ましい。本発明においては、常温溶融塩であって、導電率が0.1Sm−1以上のものが好ましい。
本実施形態において用いられる好適なイオン液体としては、下記の一般式(1)から(4)で表わされるカチオン(好ましくは、イミダゾリウムイオン)と、アニオン(X
より成るものを例示することができる。
Figure 2011072174
上記の式(1)から(4)において、Rは炭素数1から12のアルキル基またはエーテル結合を含み炭素と酸素の合計数が3から12のアルキル基を示し、式(1)においてR1は炭素数1から4のアルキル基または水素原子を示す。式(1)において、RとR1は同一ではないことが好ましい。式(3)および(4)において、xはそれぞれ1から4の整数である。
アニオン(X)としては、テトラフルオロホウ酸アニオン、ヘキサフルオロリン酸アニオン、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸アニオン、過塩素酸アニオン、トリス(トリフルオロメタンスルホニル)炭素酸アニオン、トリフルオロメタンスルホン酸アニオン、ジシアンアミドアニオン、トリフルオロ酢酸アニオン、有機カルボン酸アニオンおよびハロゲンイオンより選ばれる少なくとも1種が好ましい。
本実施系形態に係るアクチュエータに用いられる導電層において、2つの導電層間に電圧を印加した際イオンが導電層内に浸透・移動するように、導電材は導電性を示すものであればよく、炭素材料、導電性高分子、金属、金属化合物があげられる。またこれらの導電材を1種類のみ用いてもよいし、2種類上組み合わせて用いてもよい。
特に、イオン性物質との相互作用の点から、前記導電材が炭素材料あるいは導電性高分子であることが好ましい。相互作用が高いと導電材が導電層に良好に均一分散することができ、また得られる導電層の機械的強度も増加する。
上記導電層は炭素材料を含有することが好ましく、炭素材料としては、カーボンナノチューブ、カーボンブラック、フラーレン、黒鉛、炭素繊維などがあげられるが、これらに限定されるものではなく、これらのうち1種または2種以上を用いてもよい。なお、以下ではカーボンナノチューブ(Carbon nanotube)をCNTと略すことがある。
また本実施系形態に係るアクチュエータの導電材としては、導電性と伸縮性を有する層が得られるという点から、CNTが好ましい。CNTはイオン液体とともにせん断をかけ分散させることにより、伸縮性のある導電性ゲルが得られる。CNTは、グラフェンシートが筒形に巻いた形状から成る炭素系材料であり、その周壁の構成数から単層ナノチューブ(SWNT)と多層ナノチューブ(MWNT)とに大別される。また、CNTとしては、グラフェンシートの構造の違いからカイラル(らせん)型、ジグザグ型、およびアームチェア型に分けられるなど、各種のものが知られている。本実施形態には、このような所謂CNTと称されるものであれば、いずれのタイプのCNTも用いることができる。一般的には、アスペクト比が大きい、すなわち、細くて長い単層ナノチューブがゲルを形成し易い。従って、本実施形態においては、SWNTからゲル状組成物を得るのが好ましい。実用に供されるCNTの好適な例として、一酸化炭素を原料として比較的量産が可能なHiPco(カーボン・ナノテクノロジー・インコーポレーテッド社製)が挙げられるが、勿論、これに限定されるものではない。
また上記導電材として、導電性を有する導電性高分子を用いることができ、導電性高分子は特に限定されない。例えばポリアセチレン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリパラフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリアズレン等のπ共役系導電性高分子、及びこれらのπ共役系導電性高分子の誘導体などが挙げられる。またこれらのうち1種または2種以上を用いてもよい。
上記導電層は、導電材とイオン液体を含むものが好ましい。また導電層の機械的強度を保つためにCNTとイオン液体に加え高分子を含有してもよい。
上記導電層における前記導電材の導電層に対する重量割合が1重量%以上が好ましい。含有量が1重量%未満だと、導電層の導電性が十分に得られない場合がある。
上記導電層における導電性高分子の含有量は99重量%以下であるのが好ましい。含有量が99重量%より大きいと、導電層の導電性が十分に得られない場合がある。
上記導電層におけるイオン液体の含有量は80重量%以下であるのが好ましい。含有量が80重量%より大きいと、導電層として機械的強度が弱くなる場合がある。
本実施形態に係るアクチュエータにおいて、導電層を得るために用いることのできる高分子バインダとしては、前記アクチュエータの屈曲変形に伴って変形可能な柔軟性を有する高分子バインダであれば特に限定されるものではない。本実施形態に係る高分子バインダとしては、加水分解性が少なく、大気中で安定であることが好ましい。かかる高分子バインダとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系ポリマー;ポリスチレン;ポリイミド;ポリパラフェニレンオキサイド、ポリ(2,6−ジメチルフェニレンオキサイド)、ポリパラフェニレンスルフィド等のポリアリーレン類(芳香族系ポリマー);ポリオレフィン系ポリマー、ポリスチレン、ポリイミド、ポリアリーレン類(芳香族系ポリマー)等に、スルホン酸基(−SOH)、カルボキシル基(−COOH)、リン酸基、スルホニウム基、アンモニウム基、ピリジニウム基等を導入したもの;ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン等の含フッ素系のポリマー;含フッ素系のポリマーの骨格にスルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基、スルホニウム基、アンモニウム基、ピリジニウム基等を導入したパーフルオロスルホン酸ポリマー、パーフルオロカル
ボン酸ポリマー、パーフルオロリン酸ポリマー等;ポリブダジエン系化合物;エラストマーやゲルなどのポリウレタン系化合物;シリコーン系化合物;ポリ塩化ビニル;ポリエチレンテレフタレート;ナイロン;ポリアリレート等を挙げることができる。また、導電性を有する高分子バインダを用いることもでき、かかる高分子バインダとしては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリフェニレン等を挙げることができる。なおこれらは単独あるいは複数を組み合わせて用いてもよく、また官能基化してもよいし、他の高分子との共重合体としてもよい。
これらの高分子バインダの中でも、特に好ましい高分子バインダとしては、ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体[PVDF(HFP)]、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、パーフルオロスルホン酸(Nafion,ナフィオン)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリアクリロニトリル(PAN)などが挙げられる。また、上記高分子バインダは、イオン伝導層と相溶性の高い高分子であることが好ましい。これにより、イオン伝導層との、相溶性および接合性がより高いため、より強固な電極を構成することが可能となる。このためには、上記高分子バインダは、上記イオン伝導層を構成する高分子化合物と、同種、類似または同一の高分子構造を有する高分子、または、同種、類似または同一の官能基を有する高分子バインダであることが好ましい。
さらに、上記高分子バインダとしては、ゾル・ゲル法などで得られる高分子構造をもつ金属酸化物も用いることができる。かかる金属酸化物としては、特に限定されるものではないが、例えば、マンガン、ニッケル、コバルト、五酸化バナジウム系の金属酸化物を用いることができる。
本実施系形態に係るアクチュエータの前記導電層の電気抵抗値は、1000Ω・cm以下であることが好ましく、100Ω・cm以下であることがより好ましい。上記電極の電気抵抗値が1000Ω・cm以下であることにより、電極に低い電圧を印加したときに、本発明のアクチュエータを屈曲させることができる。また、上記電極は、ソフトアクチュエータの機能に好ましくない影響を与えるものでない限り、高分子バインダおよび上記導電材料の他の成分を含有していてもよい。
本実施形態に係るアクチュエータにおける導電層はポリマー繊維と多孔質部材の少なくとも一方を有することが好ましい。
本実施形態の導電層が有するポリマー繊維および多孔質部材は、前記高分子バインダを有する。
導電層がポリマー繊維を有する場合、導電層には空隙が多く、その結果イオン液体は容易に導電層へ入り込むことができるし、あるいは容易に出て行くことができる。そのため、導電層間に電圧を印加した際、イオン液体を導電層の奥まであるいは大量に含むことが可能であり、より大きな変位量で変形する。更には、電極層の導電性を高めることから導電材を有することが好ましい。本実施形態のアクチュエータは、前記第1の層がアクチュエータに接して設けられていることから、透過が容易である導電層からイオン液体が外部へ出て行くことを抑制することができる。また、外部から導電層へと水などが入ることを抑制できる。更に前記第2の層が前記第1の層の上に設けられていることから繰り返し駆動しても亀裂や剥離が生じにくい。よって、アクチュエータ内部のイオン液体の量を一定に保つことでき、長時間、安定して駆動可能なアクチュエータを得ることができる。
前記ポリマー繊維は繊維径に対して長さが十分長いものである。ここで繊維径は0.05μm以上50μm以下であり、長さは繊維径の10倍以上である。
本実施形態に係るポリマー繊維は導電層内においてランダム状態であっても良いし、一定方向に揃って配置されていても良い。例えばアクチュエータの形状が長尺状であり且つリード線がその長手方向端部に設けられている場合、ポリマー繊維は長手方向に沿って設けられていることが好ましい。これは、リード線と接する部分の電圧とリード線が設けられていない他方の長手方向端部との電位の差が小さくなるからである。
あるいはポリマー繊維は長手方向とは交差する方向に揃って配置されていても良い。その場合アクチュエータは変形しやすい。
本実施形態に係る多孔質部材の孔とは、孔が独立して存在している独泡のものと、孔が連なっている連通孔のものの何れも含まれる。カチオンやアニオンの移動・拡散のし易さの点から、連通孔がより好ましい。また、連通孔と独泡が共存していてもよい。
多孔質部材の空隙率は5体積%以上90体積%以下であることが好ましい。空隙率が5体積%未満だと、イオン液体の移動が抑制される場合があり、90体積%より大きいと導電層の機械的強度が十分でなく、変形時に亀裂等が生じてしまうことがある。ここで空隙率は、水銀圧入法、ガス吸着法、アルキメデス法などで測定することができる。
孔の大きさは、0.005μm以上3mm以下であるのが好ましい。孔の大きさが0.005μm未満だとイオン液体の移動が抑制される場合があり、3mmより大きいとアクチュエータが屈曲時に大きい孔に内部応力がよりかかり、亀裂等が生じてしまうことがある。また、孔の大きさは、水銀圧入法、ガス吸着法、走査型電子顕微鏡による直接観察等によって測定することができる。
また、前記導電層はポリマー繊維および、多孔質部材のいずれか一方を有していても良いし、両方を有していても良い。
本実施系形態に係るアクチュエータのイオン伝導層はイオン液体を含有しており、イオン液体の保持および機械的強度、柔軟性の確保の点で高分子を含有するものが好ましい。
イオン液体の含有量がイオン伝導層に対して30重量%以上80重量%以下であるのが好ましい。イオン液体/イオン性物質の含有量が30重量%未満だと、電圧印加した際、導電層に十分イオン性物質を供給できないおそれがある。また、イオン液体/イオン性物質の含有量が80重量%より大きいと、イオン伝導層としての機械的強度が弱くなり、アクチュエータとして屈曲・変形した際、作用力が十分に得られないおそれがある。
本実施形態において、イオン伝導層を得るのに用いることのできる高分子としては、例えば、テトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンなどの含フッ素系高分子;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系ポリマー;ポリブダジエン系化合物;エラストマーやゲルなどのポリウレタン系化合物;シリコーン系化合物;熱可塑性のポリスチレン;ポリ塩化ビニル;ポリエチレンテレフタレート等を挙げることができる。なおこれらは単独あるいは複数を組み合わせて用いてもよく、また官能基化してもよいし、他の高分子との共重合体としてもよい。上記高分子は、イオン性物質を含んでいる必要がある。これにより、電圧を印加により、上記非イオン性高分子化合物からなるアクチュエータの屈曲変形が可能となる。
本実施形態において、イオン性物質がイオン液体の場合、高分子として、ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体[PVDF(HFP)]、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、パーフルオロスルホン酸(Nafion,ナフィオン)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリアクリロニトリル(PAN)などが挙げられるが、特に限定されない。これらの高分子のうち1つを用いてもよいし、2つ以上組み合わせ用
いてもよい。また、導電層に用いる高分子とイオン伝導層に用いる高分子が同じでもよいし、異なっていてもよい。
本実施系形態に係るアクチュエータの前記イオン伝導層はポリマー繊維と多孔質部材の少なくとも一方を有することが好ましい。
本実施形態のイオン伝導層を構成するポリマー繊維は、前記高分子バインダを有する。イオン伝導層はポリマー繊維が集合した構成であるため空隙が多く、その結果イオン液体は容易にイオン伝導層内を移動できる。そのため、導電層間に電圧を印加した際、イオン液体は容易にイオン伝導層を通過し導電層へ移動し、浸透することが可能であり、素早く駆動することができる。本実施形態のアクチュエータは、前記第1の層がアクチュエータ全体を被覆していることから、電極層あるいは透過が容易であるイオン伝導層からイオン液体が外部へ出て行くことを抑制することができる。更に前記第2の層が前記第1の層の上全体を被覆していることから繰り返し駆動しても亀裂や剥離が生じにくい。よって、アクチュエータ内部のイオン液体の量を一定に保つことでき、長時間、安定して駆動可能なアクチュエータを得ることができる。前記ポリマー繊維は繊維径に対して長さが十分長いものである。ここで繊維径は0.05μm以上50μm以下であり、長さは繊維径の10倍以上ある。
本実施形態に係るポリマー繊維はイオン伝導層内においてランダム状態であっても良いし、一定方向に揃って配置されていても良い。例えばアクチュエータの面形状が長方形であり且つリード線が長手方向端部に設けられている場合、例えばアクチュエータの図2(a)に示すようなポリマーの変形に対して耐久性が良いという意味で好ましい。
あるいはポリマー繊維が長手方向とは交差する方向に揃って配置されていても良い。その場合アクチュエータは変形しやすい。
また、本実施形態のイオン伝導層が有する多孔質部材は、前記高分子バインダを有する。イオン伝導層は多孔質部材であることから空隙が多く、その結果イオン液体は容易にイオン伝導層内を移動できる。そのため、導電層間に電圧を印加した際、イオン液体は容易にイオン伝導層を通過し導電層へ移動し、浸透することが可能であり、素早く駆動することができる。本実施形態のアクチュエータは、本実施形態のアクチュエータは、前記第1の層がアクチュエータ全体を被覆していることから、電極層あるいは透過が容易であるイオン伝導層からイオン液体が外部へ出て行くことを抑制することができる。更に前記第2の層が前記第1の層の上全体を被覆していることから繰り返し駆動しても亀裂や剥離が生じにくい。よって、アクチュエータ内部のイオン液体の量を一定に保つことでき、長時間、安定して駆動可能なアクチュエータを得ることができる。
また、多孔質部材の孔とは孔が独立して存在している独泡のものと、孔が連なっている連通孔のものの何れも含まれる。カチオンやアニオンの移動・拡散のし易さの点から、連通孔がより好ましい。また、連通孔と独泡が共存していてもよい。
多孔質部材の空隙率は5体積%以上90体積%以下であることが好ましい。空隙率が5体積%未満だと、イオン液体の移動が抑制される場合があり、90体積%より大きいとイオン伝導層の機械的強度が十分でなく、変形時に亀裂等が生じてしまうことがある。ここで空隙率は、水銀圧入法、ガス吸着法、アルキメデス法などで測定することができる。
孔の大きさは、0.005mμ以上3mm以下であるのが好ましい。孔の大きさが0.005μm未満だとイオン液体の移動が抑制される場合があり、3mmより大きいとアクチュエータが屈曲時に大きい孔に内部応力がよりかかり、亀裂等が生じてしまうことがある。また、孔の大きさは、水銀圧入法、ガス吸着法、走査型電子顕微鏡による直接観察等によって測定することができる。
また、本実施系形態に係るアクチュエータの前記イオン伝導層はポリマー繊維および、多孔質部材のいずれか一方を有していても良いし、同時に有していても良い。
上記導電層は、イオン液体と導電材を含むものが好ましい。また導電層の機械的強度を保つために炭素材料とイオン液体に加え高分子を含有してもよい。
上記導電層の製造方法は、導電材が導電層に分散・保持されていればよく特に限定されないが、イオン液体あるいは必要に応じて高分子の存在下で、せん断を加えながら導電材を細分化し、導電材分散体を得て、それを膜化・積層化する方法が挙げられる。
この細分化工程において、せん断力を付与する手段は特に限定されるものではなく、例えば、実験室におけるような小規模の製造の場合は手動または自動の乳鉢ですり潰すことによってもよい。また、多量の製造を目的とする場合には、ボールミル、ローラーミル、振動ミルなどの高せん断力を付与することができる湿式粉砕装置を使用することができる。さらに、ニーダータイプの混練機も使用可能である。また分散体の粘度を考慮し溶媒を加え粘度を適度に調整してせん断を与えることも可能である。細分化に要する時間も特に限定されるものではなく、用途に応じて必要な細分化に応じて適宜変更できるが、一般的には5分間から1時間程度である。以上のような工程により、導電材分散体が得られる。
導電材分散体を用いて膜化し導電層を得る方法としては特に限定されないが、キャスト法、スピンコート法、印刷法、スプレー法等によって製膜し、溶媒を蒸発、乾燥させればよい。また押出し法、射出法等も用いることができる。
本実施形態で好ましく用いられるCNTとイオン液体とから成るゲル状組成物の生成メカニズムや構造については未だ不明の点もあるが、各種の分析結果から大略が次のように理解される。
(1)せん断力下における細分化処理は、CNTの化学的変性を引き起こすことはなく、CNTの相互のからみ合いを減少させて、その束を細くする物理的形状変化をもたらす。(2)ゲルの形成は、CNTのからみ合いに因るものではないと考えられる。ゲルの形成は、からみ合いの減少したCNTの表面に「カチオン−π」相互作用により結合したイオン液体の分子がイオン結合を介してCNTの束どうしを結びつけることにより、形成される架橋構造に起因するものと推測される。ここで、架橋構造とは3次元の網目構造のことである。
上記導電層の厚さは、1μm以上5mm以下、好ましくは5μm以上2mm以下、さらに好ましくは10μm以上500μm以下である。膜厚が5mmより大きいと膜の弾性率が大きくなりアクチュエータの屈曲運動を抑制する場合がある。また1μm未満だと導電層へ移動・浸透するイオン液体の量が少なく、屈曲運動が十分に得られない場合がある。
上記イオン伝導層は、好ましくはイオン液体を有しており、イオン液体の保持および導電層の機械的強度を保つために高分子を含有することが好ましい。
上記イオン伝導層の製造方法としては、イオン液体がイオン伝導層内に保持されていればよく特に限定されない。例えばイオン液体および高分子を溶媒に溶解・分散させイオン性組成物を得た後、得られた組成物をキャスト法、スピンコート法、印刷法、スプレー法等によって製膜し、溶媒を蒸発、乾燥する方法を用いることができる。あるいは、高分子を加熱溶融しイオン性物質と混練した後製膜する方法や、押出し法、射出法等も用いることができる。
上記イオン伝導層の厚さは、10μm以上500μm以下であることが好ましく、更には10μm以上400μm以下であることが好ましい。膜厚が500μm以上だと膜の弾性率が大きくなりアクチュエータの屈曲運動を抑制する場合がある。また10μm未満だ
と保持できるイオン液体の質量が少なく導電層への供給量が少なくなってしまうため、駆動運動が十分に得られない場合がある。
本実施形態において、第1の層と第2の層を有し、かつ前記第2の層を前記第1の層の上に積層する方法としては、特に限定されない。例えば、導電層とイオン伝導層からなり電圧を印加すると駆動する積層体をまず作製し、ついで第1の層および第2の層を順次積層してもよい。または、導電層、イオン伝導層、第1の層および第2の層を別に作製した後、積層したい順に重ね、ホットプレス等により加圧加熱融着し積層する方法が挙げられる。あるいは、積層したい順番に、前記方法によって得られた導電材分散体およびイオン性組成物を順次、塗布・製膜・乾燥し繰り返す方法が挙げられる。
更に本実施形態において、前記第1の層と前記第2の層が前記アクチュエータ全体を被覆していることが好ましく、その作製方法としては、前記第1の層と前記第2の層が前記アクチュエータ全体を被覆していれば特に限定されない。例えば、導電層とイオン伝導層からなり電圧を印加すると駆動する積層体をまず作製し、次いで第1の層に用いられる高分子の溶液にディッピングし乾燥させ、次いで第2の層に用いられる高分子の溶液にディッピングし乾燥させる方法が挙げられる。ここで高分子の溶液は高分子を水や溶媒に溶解あるいは分散したものでもよいし、熱により溶融したものでもよい。熱で溶融したものの場合はディッピングの後に室温に戻すことによって第1あるいは第2の層が得られる。また、ディッピングの替わりに第1あるいは第2の層で積層体をはさみ、加圧加熱し溶融させることによって融着することによっても作製することができる。
また、本実施形態において前記第1の層の高分子の配向が、前記アクチュエータの運動方向を第1の層の表面に投影した方向と同じであるアクチュエータの作製方法としては、特に限定されない。例えば、導電層とイオン伝導層からなり電圧を印加すると駆動する積層体をまず作製する。次いで別途作製した第1の層の延伸フィルムの延伸・配向方向をアクチュエータの運動方向を表面に投影した方向と同じになるように、前記積層体を挟むように重ねる。更に、第2の層ではさんだ後、加圧加熱することにより積層させる方法が挙げられる。また、第2の層で挟む替わりに、延伸フィルムで挟み積層させた後、第2の層に用いられる高分子の溶液にディッピングし乾燥させる方法が挙げられる。
また、本実施形態において、少なくとも2層以上の前記第1の層の高分子の配向方向がそれぞれ異なるように積層されているアクチュエータの作製方法としては、特に限定されない。例えば、導電層とイオン伝導層からなり電圧を印加すると駆動する積層体をまず作製する。次いで別途作製した第1の層の延伸フィルムを少なくとも2層以上、延伸・配向方向が異なるように前記積層体を挟むように重ね、更に第2の層で挟んだ後、加圧加熱することにより積層させる方法が挙げられる。また、第2の層で挟む替わりに、延伸フィルムで挟み積層させた後、第2の層に用いられる高分子の溶液にディッピングし乾燥させる方法が挙げられる。
導電層やイオン伝導層および、それらを積層したアクチュエータの作製時に用いられる溶媒としては、導電材やイオン性物質を良好に分散できればよく、特に限定されない。例えば、4−メチル−2−ペンタノン、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルフォルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン等が挙げられる。また、高分子の第1の層、第2の層および、それらを積層したアクチュエータの作製時に用いられる溶媒としては、高分子を良好に分散できればよい。例えば、上述の溶媒や、水、アルコール、トルエン、キシレン等も用いることもできるが、特に限定されない。また、これらの溶媒のうち1つを用いてもよいし、2つ以上組み合わせ用いてもよい。
本実施形態において、両導電層間にかける電圧は、10V以下が好ましく、電圧印加時
にイオン液体が分解しない範囲(電位窓)で用いることが好ましく、さらには4V以下が好ましい。
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
第1の層が高密度ポリエチレン(HDPE)、第2の層がポリアミド(PA)であり、第2の層が表面側に存在し、第1の層と第2の層で全体を被覆しているアクチュエータ1を以下の通りに作製する。
まず、2つの導電層がイオン伝導層を挟持している積層体1を以下のとおり作製する。
イオン伝導層を作製するために、イオン液体と高分子を含むイオン性組成物を次のように作製する。以下の化学式で表される100mgのポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(PVdF(HFP))と、100mgの1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム テトラフルオロボレート(BMIBF4、関東化学株式会社製)および1mLのN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc、キシダ化学株式会社製)を80℃にて加熱混合することによって、無色透明なイオン液体と高分子を含むイオン性組成物1を得る。
Figure 2011072174
また、導電層を作製するために、導電材が均一に分散している導電材分散体を次のように作製する。導電材として10mgの単層カーボンナノチューブ(SWNT、カーボン・ナノテクノロジー・インコーポレッド社製「HiPco」)およびイオン液体として100mgのBMIBF4に、有機溶剤のDMAcを1mL加える。そして、ジルコニアボール(粒径2mm)を用いて200rpmで30分間、ボールミル(フリッチェ社製遊星型微粒粉砕機)により分散を行う。次いで80mgのPVdF(HFP)を2mLのDMAcに溶かした溶液を、ボールミルによって得られた組成物に加え、更に500rpmで30分間、ボールミルにて分散する。その結果、高粘度であり、導電材が均一に分散している導電材分散体1が得られる。
次に、2つの導電層がイオン伝導層を挟持している積層体を以下の通りに作製する。まず上記の導電材分散体1を厚さ80μmのスペーサーを有する基板に流し込み、スペーサーをガイドとして平坦にならし、室温にて乾燥することによって第1の導電層を得る。次に得られた導電層にもう一枚厚さ60ミクロンのスペーサーを重ね、上記で得られたPVdF(HFP)/BMIBF4/DMAcからなるイオン性組成物1を流し込み、スペーサーをガイドに平坦にならした後、室温にて乾燥することによってイオン伝導層得る。さらにもう一枚厚さ80ミクロンのスペーサーを重ね、上記で作製した導電材分散体1を流し込み、スペーサーをガイドとして平坦にならし、室温にて乾燥下の後、一晩真空乾燥し、積層体1が得られる。
また、高密度ポリエチレン(HDPE、東京ポリエチレン社製HF313)を押出機に供給し、溶融し、フィルムダイを通して押し出し、成形機で冷却することにより厚み20μmのHDPEフィルムを得る。得られた厚み20μmのHDPEフィルムを、幅4mm(W)×長さ20mm(L)に切り取る。上記の積層体1を幅1mm(W)×長さ12mm(L)の大きさで切り取り、その両面をHDPEフィルムで挟み、ホットプレス(テスター産業社製)を用いて130℃、0.5kNで加圧加熱融着する。その後、積層体1よりはみ出したHDPEフィルムを1mmの幅で切り取り、積層体1の積層面4面を140℃に過熱したホットプレートに押し当てることによって、厚み方向のHDPEフィルムの融着を促成させる。次に、端2mmの部分の表面から、リード線が通る穴を導電層表面まであけ、リード線を導電性接着材によって導電層に接着する。その後、リード線の周りを140℃で加熱しHDPEの一部を溶融させHDPEの穴を塞ぐことで第1の層をコートする。次に、ポリアミド(PA、富士化成工業株式会社製PA−201)を10重量%含有するトルエン(キシダ化学株式会社製)の溶液にディッピングし、乾燥させ第2の層をコートする。以上の作製法によって、高分子の第1の層がHDPE、第2の層がPAであり、第2の層が表面側に存在して全体を被覆しているアクチュエータ1を作製する。
得られるアクチュエータ1の断面を走査型電子顕微鏡(SEM、日立ハイテク社製、S−4800)にて観察することによって、2つの導電層がイオン伝導層を挟持していることが確認することができる。さらに、その表面側全体がHDPEでコートされ、さらにその表面側全体がPAでコートされていることが確認することができる。
第1の層が無延伸ポリプロピレン(CPP1)、第2の層がポリアミド(PA)であり、第2の層が表面側に存在して全体を被覆しているアクチュエータ2を以下の通りに作製する。
実施例1における第1の層をHDPEの替わりに無延伸ポリプロピレン(CPP1)を用いて、他は同じ条件で実施例1と同様に作製することにより、アクチュエータ2を得る。
得られるアクチュエータ2の断面を走査型電子顕微鏡(SEM、日立ハイテク社製S−4800)にて観察することによって、2つの導電層がイオン伝導層を挟持していることが確認することができる。さらに、その表面側全体がCPP1でコートされ、さらにその表面側全体がPAでコートされていることが確認される。
第1の層が一軸延伸ポリエチレン(OPE)、表面側に存在する第2の層がポリアミド(PA)であり、第1の層OPEの高分子の配向が、アクチュエータの運動方向を第1の層の表面に投影した方向と同じであるアクチュエータ3を以下の通りに作製する。
第1の層となる一軸延伸ポリエチレン(OPE)を以下のように得る。HDPEを押出機に供給し、溶融し、フィルムダイを通して押し出し、成形機で冷却することにより、厚み200μmのHDPEフィルム得る。次いで、厚み200μmのHDPEフィルムを120℃の雰囲気下、一軸延伸機(井元製作所製)で10倍に延伸し、20μmの一軸延伸フィルムOPEを得る。
次に、実施例1で得られる積層体1を幅1mm(W)×長さ12mm(L)の大きさに切り取り、その両面をOPEの延伸方向が長手方向になるようにOPEフィルムで挟む。そして、ホットプレス(テスター産業社製)を用いて130℃、0.5kNで加圧加熱融着する。その他の条件は実施例1と同様に行い、アクチュエータ3を得る。
得られるアクチュエータ3の断面を走査型電子顕微鏡(SEM、日立ハイテク社製S−4800)にて観察することによって、2つの導電層がイオン伝導層を挟持されていることを確認することができる。さらに、その表面側全体がOPEでコートされ、さらにその表面側全体がPAでコートされていることを確認することができる。
第1の層が一軸延伸ポリエチレン(OPE)で2層有し、高分子の配向が異なるように積層されており、かつ、第2の層がポリアミド(PA)であり、第2の層が表面側に存在しているアクチュエータ4を以下の通りに作製する。
まず実施例2と同様に作製されるOPEを得る。次に、実施例1で得られる積層体1を幅1mm(W)×長さ12mm(L)の大きさに切り取り、その両面にOPEの延伸方向が長手方向に対して45度になるようにOPEフィルムで挟む。更にその両表面にOPEの延伸方向が内側のOPEの延伸方向に対して90度になるように更にもう一層のOPEフィルムで挟み、ホットプレス(テスター産業社製)を用いて130℃、0.5kNで加圧加熱融着する。他の条件は実施例1と同様に行い、アクチュエータ4を得る。
得られるアクチュエータ4の断面を走査型電子顕微鏡(SEM、日立ハイテク社製、S−4800)にて観察することによって、2つの導電層がイオン伝導層を挟持されていることを確認することができる。さらに、その表面側全体が2層のOPEでコートされ、さらにその表面側全体がPAでコートされていることを確認することができる。
(比較例1)
<水の透過を抑制する高分子の第1の層で表面に積層されているアクチュエータ5の作製法>
高分子の第1の層が高密度ポリエチレンHDPEで、表面をコートしているアクチュエータ5を以下の通りに作製する。すなわち、内側の層として高密度ポリエチレンHDPEが設けられ、外側の層は設けられていない構成のアクチュエータを作製する。
すなわち、実施例1における第2の層PAでコートする工程の前までで得られる積層体をアクチュエータ5とする。
得られるアクチュエータ5の断面を走査型電子顕微鏡(SEM、日立ハイテク社製S−4800)にて観察することによって、2つの導電層がイオン伝導層を挟持しており、その表面側全体がHDPEでコートされていることが確認される。
(比較例2)
<水の透過を抑制する高分子の第1の層と、第1の層より引張弾性率が小さい高分子の第2の層を有し、かつ、前記第1の層が第2の層より表面側に積層されているアクチュエータ6の作製法>
高分子の第1の層が高密度ポリエチレンHDPE、高分子の第2の層がポリアミドPAであり、第1の層が表面側に存在して全体をコートしているアクチュエータ6を以下の通りに作製する。すなわち、内側の層としてポリアミドPAが設けられ、外側の層として高密度ポリエチレンHDPEが設けられている構成のアクチュエータを作製する。
まず、上で得られる積層体1を幅1mm(W)×長さ12mm(L)の大きさで切り取り、PAの10重量%トルエン溶液にディッピングし、乾燥させることによって第2の層でコートする。次にその両面を実施例1と同様に得られるHDPEフィルムで挟み、ホットプレス(テスター産業社製)を用いて130℃、0.5kNで加圧加熱融着後、積層体よりはみ出したHDPEフィルムを1mmの幅で切り取り、積層体の積層面4面を140
℃に過熱したホットプレートに押し当てることによって、厚み方向のHDPEフィルムの融着を促成させる。次に、端2mmの部分の表面から、リード線が通る穴を導電層表面まであけ、リード線を導電性接着材によって導電層に接着する。その後、リード線の周りを140℃で加熱しHDPEの一部を溶融させることでHDPEの穴を塞ぐことでアクチュエータ6を作製する。
得られるアクチュエータ6の断面を走査型電子顕微鏡(SEM、日立ハイテク社製S−4800)にて観察することによって、2つの導電層がイオン伝導層を挟持しており、その表面側全体がPAでコートされ、さらにその表面側全体がHDPEでコートされていることが確認される。
(比較例3)
<水の透過を抑制する高分子の第1の層と、第1の層より引張弾性率が大きい高分子の第2の層を有し、かつ、前記第2の層が第1の層より表面側に積層されているアクチュエータ7の作製法>
高分子の第1の層が高密度ポリエチレンHDPE、高分子の第2の層が無延伸ポリプロピレンCPP2であり、第2の層が表面側に存在して全体をコートしているアクチュエータ7を以下の通りに作製する。すなわち、内側の層として高密度ポリエチレンHDPEが設けられ、外側の層として無延伸ポリプロピレンCPP2が設けられている構成のアクチュエータを作製する。
すなわち、実施例1において第1の層のHDPEを積層した後、厚さ25μmの無延伸ポリプロピレン(CPP2、株式会社プライムポリマー社製F−300SP)フィルムをHDPEと同様に積層する。ただしホットプレスおよびホットプレートの温度は160℃とする。次に、端2mmの部分の表面から、リード線が通る穴を導電層表面まであけ、リード線を導電性接着材によって導電層に接着する。その後、リード線の周りを160℃で加熱しCPP2の一部を溶融させCPP2の穴を塞ぐことでアクチュエータ7を作製する。
(比較例4)
<水の透過を抑制する金属の第1の層を有し、かつ、第1の層より表面側に高分子の第2の層が積層されているアクチュエータ8の作製法>
金属の第1の層がアルミニウム、高分子の第2の層がポリアミドPAであり、第1の層より表面側に第2の層が存在して全体をコートしているアクチュエータ8を以下の通りに作製する。すなわち、内側の層としてアルミニウム(表2の中ではアルミと記載している)が設けられ、外側の層としてポリアミドPAが設けられている構成のアクチュエータを作製する。
まず、上で得られる積層体1を幅1mm(W)×長さ12mm(L)の大きさで切り取り、その両表面をアルミニウム蒸着する。次に、端2mmの部分の表面にリード線を導電性接着材によって導電層に接着する。そして、PAの10重量%トルエン溶液にディッピングし、乾燥させることによって第2の層でコートし、アクチュエータ8を得る。得られるアクチュエータ8の断面を走査型電子顕微鏡(SEM、日立ハイテク社製S−4800)にて観察することによって、2つの導電層がイオン伝導層を挟持しており、その両表面がアルミニウムでコートされ、さらにその表面側全体がHDPEでコートされていることが確認される。
<引張弾性率の評価>
高分子アクチュエータに用いられる第1の層および第2の層の各々のフィルムに対して、引張試験機(島津製作所社製、MST−1)を使用し、応力(δ)−ひずみ(ε)曲線
を得て、傾きδ/εの値(ヤング率)をもって引張弾性率を算出する。
高分子の第1の層に用いられるHDPE、CPP1、OPE、第2の層に用いられるPAの単独なフィルムに対して、上述の方法で引張弾性率を算出する。その結果を表1に示す。ここで、OPEの引張方向は延伸方向で測定する。
Figure 2011072174
引張弾性率は、実施例1、2、3、4、比較例2において、第1の層よりも第2の層の引張弾性率が小さい。比較例2の第2の層のHDPEの引張弾性率は、第1の層のPAの引張弾性率より大きい。
また、比較例3の第2の層として用いられるCPP2の引張弾性率は2200MPaであり、第1の層よりも第2の層の引張弾性率が大きい。
<耐久性の評価>
長時間の駆動に対するアクチュエータの耐久性は、変位量の変動により評価する。すなわち、湿度90%RH.雰囲気下で、一端を固定し2.5Vの電圧を印加し屈曲させる。固定端から8mmの位置における、所定の屈曲回数時の変位量を、レーザー変位計(キーエンス社製LK−G80)を用いて測定し、耐久性の評価を行う。
実施例1から4と比較例1から4のアクチュエータ1から8について、湿度90%RH.雰囲気下で連続して駆動する際の3000回、6000回、10000回時における固定端から8mmの変位量をレーザー変位計にて測定することで耐久性を評価する。その結果を表2に示す。
Figure 2011072174
実施例1から4のアクチュエータは、駆動回数3000、6000回においても変位量が変わらず、実施例1、2、3、4の順に2.2、2.3、2.1、2.0(mm)である。
比較例1から4のアクチュエータは、いずれも駆動回数が3000、6000回と増すと変位量は減少する。駆動回数3000回のときは比較例1、2、3、4の順に、2.2、2.2、1.8、2.0(mm)であるのに対し、駆動回数6000回のときは比較例1、2、3の順に、1.6、1.7、1.2、1.4(mm)となる。
更に駆動回数10000回の場合、実施例3、4で得られるアクチュエータの変位量は順に2.1、2.0(mm)と変化せず、実施例1、2で得られるアクチュエータの変位量も順に2.0、2.1(mm)とほとんど変化しない。一方、比較例1、2、3、で得られるアクチュエータは、更に変位量は減少し、0.8、0.9、0.5、0.3となる。
また、10000回駆動後のアクチュエータについてそれぞれ、目視により観察する。その結果、実施例1、2、3、4で得られるアクチュエータにおいては、駆動前と変化は無く、亀裂や劣化が見られない。一方、比較例1、2、3で得られるアクチュエータにおいては、導電層とイオン伝導層を被覆している層に一部、亀裂や劣化が見られ、また被覆している層の剥離が見られる。また比較例4で得られるアクチュエータにおいては、一部被覆している層の剥離が見られる。
また、10000回駆動後において比較例1、2、3、4で得られるアクチュエータは、一部イオン液体の染み出しが見られるが、実施例1、2、3、4で得られるアクチュエータにおいては、見られない。
本発明のアクチュエータは、水の流入等を抑制し、繰り返し駆動しても亀裂や剥離が生じにくく、動きが妨げられにくいので、様々な環境下で長時間利用可能なロボットやマイクロマシン等のデバイスに利用することができる。
1 導電層
2 導電層
3 イオン伝導層
4 第1の層
5 第2の層
6 リード線

Claims (8)

  1. 導電層とイオン伝導層を有するアクチュエータにおいて、前記アクチュエータに接して設けられた水の透過を抑制する高分子からなる第1の層と、前記第1の層に接して設けられた、前記第1の層より引張弾性率が小さい、前記第1の層を保護する高分子からなる第2の層を有することを特徴とするアクチュエータ。
  2. 前記第1の層と前記第2の層が前記アクチュエータ全体を被覆していることを特徴とする請求項1に記載のアクチュエータ。
  3. 前記第1の層の高分子が配向しており、前記高分子の配向方向がアクチュエータの運動方向を第1の層の表面に投影した方向と同じであることを特徴とする請求項1または2に記載のアクチュエータ。
  4. 前記第1の層が少なくとも2層以上からなり、前記2層以上の第1の層の高分子のそれぞれの配向方向が異なることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかの項に記載のアクチュエータ。
  5. 前記アクチュエータがイオン液体を含有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかの項に記載のアクチュエータ。
  6. 前記導電層が炭素材料を含有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかの項に記載のアクチュエータ。
  7. 前記導電層がポリマー繊維と多孔質部材の少なくとも一方を有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかの項に記載のアクチュエータ。
  8. 前記イオン伝導層がポリマー繊維と多孔質部材の少なくとも一方を有することを特徴とする請求項1乃至7のいずれかの項に記載のアクチュエータ。
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