第1の発明は、圧電セラミック粉末と可撓性を有する有機高分子とを含む圧電組成物感圧体と、前記圧電組成物感圧体に接続された第1電極と、前記圧電組成物感圧体に接続され前記第1電極と絶縁された第2電極と、前記圧電セラミック粉末の外側に設けられ、圧電組成物感圧体および圧電セラミック粉末への水分の吸収を抑制する被覆層とを備えた構成とすることにより、圧電素子が高温高湿環境下で使用され、圧電素子を構成する圧電組成物感圧体で水蒸気が凝縮して水を生成しても、圧電組成物感圧体中の圧電セラミック粉末に水を弾く撥水処理を施しているため、圧電組成物感圧体および圧電セラミック粉末への水の吸収が抑制され、圧電素子の静電容量の増加、電気抵抗の減少を防止することができる。その結果、圧電素子の初期の電気的特性を維持して、時間経過による変化を防止することができ、優れた耐久性と信頼性を実現することができる。
また、圧電セラミック粉末および圧電組成物感圧体が水を吸収しないので圧電組成物感圧体の軟化が抑制され、軟化が原因で起こる圧電特性の大きな変化を防止することができ、常に初期の圧電特性を維持することができる。その結果、同じ印加圧力でも圧電特性の変化に応じた信号処理を必要としないので誤検知を防止できる信頼性の高い検知、制御回路を設計することができる。
第2の発明は、特に、第1の発明の被覆層を撥水材料で構成することにより、撥水作用を薄膜の被覆層とすることができ、圧電セラミック粉末および圧電組成物感圧体への浸透を防止することによる圧電特性の変化を防止することができるとともに、圧電性を発現するために行うポーリング処理において、印加電圧のロスを少なくすることができ、低い電圧でも優れた圧電特性を発現させることができる。
第3の発明は、特に、第1または第2の発明の被覆層を圧電セラミック粉末の表面に形成した構成とすることにより、撥水材料の被覆層が圧電セラミック粉末の粒子一つ一つに施されているので水との接触を極めて少なくし、水の吸収を抑制することができ、圧電セラミック粉末の成分が水に溶出することが原因で起こる電気抵抗の減少を防止する効果は大なるものである。
また、被覆層を形成した圧電セラミック粉末が圧電組成物感圧体の表面に多数存在することにより、圧電組成物感圧体の表面に優れた撥水性を発現させることができ、圧電組成物感圧体への水の浸透を抑制することができるので圧電組成物感圧体の軟化が抑制され、軟化が原因で起こる圧電特性の大きな変化を防止することができ、常に初期の圧電特性を維持することができる。その結果、同じ印加圧力でも圧電特性の変化に応じた信号処理を必要としないので誤検知を防止できる信頼性の高い検知、制御回路を設計することができる。
また、圧電セラミック粉末に撥水処理を施すことにより、圧電セラミック粉末表面が疎水性を示すので可撓性を有する有機高分子との馴染みが良好になり、両者の混練性が向上し、混練加工時間を短縮化することができ、生産性を向上させることができる。
また、予め圧電セラミック粉末に撥水処理を施すことにより、圧電素子の形状、大きさが変わってもそれに対応した撥水処理工程が必要なく、圧電素子の生産性を高くすることができるとともに、圧電素子の形状、大きさによらず、常に安定した撥水効果を実現することができる。
第4の発明は、特に、第1〜第3の発明の被覆層が圧電組成物感圧体の少なくとも表面の一部を覆った構成とすることにより、圧電組成物感圧体の内部への水の浸透を防止することができるので圧電素子の初期の電気的特性、圧電特性、機械的強度の変化を低減することができ、優れた耐久性と信頼性を実現することができる。
第5の発明は、特に、第1〜第4の発明の圧電素子が第1電極と第2電極とは圧電組成物感圧体を覆い、被覆層は少なくとも第1電極の表面と第2電極の表面とを覆い、少なくとも被覆層を覆う保護層をさらに備えた構成とすることにより、保護層は、圧電素子が高温高湿環境下で使用される場合、水蒸気が圧電組成物感圧体に拡散するのを防止することができるので、圧電素子の初期の圧電素子の電気的特性、圧電特性、機械的強度の変化を低減することができ、優れた耐久性と信頼性を実現することができる。
また、電極と圧電組成物感圧体の間に撥水処理を施して成した被覆層がないことにより、ポーリング処理の際に印加される直流高電圧の電圧降下によるロスをなくすることができるのでポーリング処理の効率を向上させることができ、高い圧電特性を得ることができる。
第6の発明は、特に、第1〜第5の発明の圧電素子が圧電組成物感圧体は第1電極を覆い、第2電極は圧電組成物感圧体を覆い、被覆層は少なくとも第2電極の一部を覆い、少なくとも被覆層を覆う保護層をさらに備えた構成とすることにより、第3の発明と同様の作用と効果に加え、第1電極、第2電極も水の浸透を抑制することができるので電極の電気抵抗の変化を防止することができ、常に安定した圧電組成物感圧体の圧電特性を検知回路に伝達することができる。
第7の発明は、特に、第1〜第6の発明の撥水処理を施して成した被覆層を蒸留水に対する接触角が125°以上180°未満の材料を用いることにより、特に優れた撥水性を実現することができるので初期の圧電素子の電気的特性、圧電特性、機械的強度の変化をさらに低減することができ、より優れた圧電素子の耐久性、信頼性を実現することができる。
第8の発明は、特に、第1〜第7の発明の撥水処理を施して成した被覆層を単分子層で構成することにより、被覆層の厚みを数nmレベルの単分子層にすると圧電特性を発現させるために高い直流電圧を印加するポーリング処理の際に単分子層で起こる電圧降下が低減され、ポーリングの効率を向上させることができる。また、ポーリング処理時間の短縮
化または優れた圧電特性を実現することができる。
また、被覆層を単分子層とすることで撥水材料の使用量を少なくすることができるので低コスト化が図れる。
第9の発明は、特に、第1〜第8の発明の撥水材料を被覆した圧電セラミック粉末を周期表第1族の元素、周期表第2A族の元素の少なくとも1種を含むペロブスカイト構造を有する化合物とすることにより、本来、周期表第1族の元素、周期表2A族の元素のアルカリ金属やアルカリ土類金属は水により溶出しやすいが、圧電セラミック粉末に含有されるこれらアルカリ成分の溶出を抑制することができるため、電気抵抗の大幅な低下を抑制することができる。特に、アルカリ成分を含む圧電素子は固有抵抗が低く、さらに電気抵抗値が低くなると圧電素子として使用できない場合もあり、アルカリ成分を含む圧電素子の電気抵抗の低下を防止することは高い実用性を有する。
第10の発明は、特に、第1〜第9の発明の圧電セラミック粉末の主成分がチタン酸ビスマス・ナトリウム、チタン酸バリウム、ニオブ酸ナトリウム、ニオブ酸カリウムの少なくとも1種を含むことにより、圧電素子が廃棄処理され酸性雨などの環境に曝されても鉛の溶出がなく、環境汚染の可能性がない。また、圧電セラミック粉末に撥水材料の被覆層を設け、圧電セラミック粉末成分の溶出を防止しているので鉛以外の金属の溶出も抑制され、安全性を一層向上させることができる。
第11の発明は、特に、第1〜第10の発明の第1電極と第2電極を熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、ゴムの少なくとも1種を含む弾性体と導電性粉末の導電層とすることにより、伸びのある可撓性に優れた外電極とすることができるので優れた耐屈曲性を実現することができる。
第12の発明は、特に、第1〜第10の発明の第1電極と第2電極を主成分が導電性粉末と有機高分子に混合物である導電塗料もしくは導電ペーストの塗布膜とすることにより、圧電組成物感圧体と第1電極、第2電極の密着性を高くすることができとともに、第1電極、第2電極と圧電組成物感圧体の間に空気層の介在を少なくすることができるのでポーリング処理の際の圧電組成物感圧体間の電圧降下を抑制することができ、ポーリング処理の実効電圧を高くすることができる。
第13の発明は、特に、第1〜第10の発明の第1電極と第2電極を導電性材料の蒸着膜とすることにより、第1電極、第2電極を薄膜で形成することができるので圧電組成物感圧体の優れた可撓性を維持することができ、圧電組成物感圧体の有する圧電特性の低下を防止することができる。
第14の発明は、特に、第11〜第13の発明の導電性材料または導電性粉末を、C、Pt、Au、Pd、Ag、Cu、Al、Niの少なくとも1種を含むものとすることにより、特に優れた導電性と耐食性を実現することができる。
第15の発明は、特に、第1〜第14の発明の可撓性を有する有機高分子を熱可塑性エラストマー、ゴムの少なくとも1種を含む材料とすることにより、圧電素子に優れた弾性と可撓性を付与することができるので圧電素子は印加された圧力に対して大きな反発力と変位量を得ることができ、圧電特性を向上させることができる。
第16の発明は、特に、第15の発明の熱可塑性エラストマーを塩素化ポリエチレン、クロルスルホン化ポリエチレンの少なくとも1種の材料とすることにより、圧電組成物感圧体中の圧電セラミック粉末の含有量を多くすることができるので圧電素子の圧電特性を
向上させることができる。
第17の発明は、特に、第1〜第16の発明の圧電組成物感圧体にチタンカップリング剤を含有させることにより、圧電セラミック粉末表面が疎水性を示すので可撓性を有する有機高分子との馴染みがさらに良好となり、両者の混練性が向上し、混練加工時間を短縮化することができ、生産性を向上させることができる。また、混練時間を従来と同じとした場合は、混練を向上させるために用いるチタンカップリング剤の量を減らすことができ、材料のコストを下げることができる。
第18の発明は、特に、第1〜第16の発明の圧電組成物感圧体にイソプロポキシトリイソステアロイルチタネート、イソプロポキシトリス(ジオクチルパイロフォスフェート)チタネートの少なくとも1種を含む材料とすることにより、圧電セラミック粉末と有機高分子との混練性(混合・分散)を向上させることができるので混練加工時間の短縮化、圧電特性の向上、圧電特性の安定化、可撓性の向上を実現することができるとともに、シート状、ケーブル状など任意の形状に容易に成型することができる。
第19の発明は、特に、第1〜第18の発明の保護層を電気絶縁性の熱可塑性エラストマー、ゴムの少なくとも1種を含む材料とすることにより、圧電組成物感圧体と外電極の密着性を向上させることができるのでセンサの感度を向上させることができるとともに、外部からの機械的な力による圧電素子の破損を防止することができる。
第20の発明は、特に、第1〜第19の発明の圧電セラミック粉末の比誘電率が0より大きく1000以下のものを用いることにより、圧電素子に圧電性を発現させるために直流高電圧を印加してポーリング処理した場合、圧電セラミック粉末に印加される電圧の割合を大きくすることができるので圧電素子の電圧出力定数を高くすることができ、圧電素子の感度を高くすることができる。
第21の発明は、(A)圧電セラミック粉末と可撓性を有する有機高分子とを混合して圧電組成物感圧体を形成するステップと、(B)圧電組成物感圧体に接続される第1電極を設けるステップと、
(C)圧電組成物感圧体に接続される第2電極を、第1電極と絶縁するように設けるステップと、(D)圧電セラミック粉末への水分の吸収を抑制する被覆層を、少なくとも圧電セラミック粉末の外側に設けるステップと、を備えた、圧電素子の製造方法に関するものである。
第22の発明は、第21発明のステップDにおいて、圧電セラミック粉末の表面に被覆層を設け、ステップDの後にステップAを行う、圧電素子の製造方法に関するものである。
第23の発明は、第21の発明において、ステップAの後、ステップDにおいて圧電組成物感圧体の少なくとも表面の一部に被覆層を設ける、圧電素子の製造方法に関するものである。
第24の発明は、第21の発明のステップB,Cにおいて第1電極と第2電極とは圧電組成物感圧体を覆うように設けられ、ステップB,Cの後、ステップDにて少なくとも第1電極の表面と、第2電極の表面とに被覆層を設け、少なくとも被覆層を覆う保護層を設けるステップをさらに備えた、圧電素子の製造方法に関するものである。
第25の発明は、第21の発明のステップBにおいて、第1電極は圧電組成物感圧体に覆われるように設けられ、ステップCにおいて、第2電極は圧電組成物感圧体を覆うよう
に設けられ、ステップDにおいて、少なくとも第2電極の表面の一部に被覆層を設け、少なくとも被覆層を覆う保護層を設けるステップをさらに備えた、圧電素子の製造方法に関するものである。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態におけるシート状の圧電素子の断面図である。図1において、シート状の圧電素子は、シート状の圧電組成物感圧体1の両面に第1電極である電極2Aと、第2電極である電極2Bを形成して構成されている。
図2は、圧電組成物感圧体1の一部断面を示す模式図である。図2において、シート状の圧電組成物感圧体1は撥水処理された圧電セラミック粉末3と可撓性を有する有機高分子4とから構成され、撥水処理された圧電セラミック粉末3が有機高分子4と均一に分散した状態にある。
図3は、撥水処理された圧電セラミック粉末3の1つの粒子の断面を示す模式図である。図3において、撥水処理された圧電セラミック粉末3は、圧電セラミック粉末5の表面に撥水処理を施して成した撥水材料の被覆層6が形成された構成となっている。
第1の実施の形態におけるシート状の圧電素子は以下のように作製される。この製造工程を図4に示す。先ず、圧電セラミック粉末5を適切な溶媒で希釈して所定の濃度に調整した撥水材料を含む溶液に浸漬して混合した後乾燥するか、または融解する温度に加熱された撥水材料の溶液に浸漬して混合した後冷却するか、または圧電セラミック粉末5を所定量の撥水材料の粉末と混合することのいずれかによって圧電セラミック粉末5に撥水処理を施して被覆層6を形成し(S1)、撥水処理された圧電セラミック粉末3を作製する。次に、撥水処理された圧電セラミック粉末3と可撓性を有する有機高分子4とをニーダーやロールなどの加工機を用い、撥水処理された圧電セラミック粉末3が可撓性を有する有機高分子4に均一に混合・分散された状態となるように混練する(S2)。このとき、混練を向上させるためにチタンカップリング剤を添加してもよい。混練を行なった後、ロールまたはホットプレスなどの加工機を用いて加工し、シート状の圧電組成物感圧体1を作製する(S3)。次に、シート状の圧電組成物感圧体1の両面に導電性粉末と有機高分子が混合された導電性ペーストまたは導電塗料を塗布、導電性粉末をゴムや熱可塑性エラストマーなどの可撓性を有する有機高分子に混合・分散させた導電シートを融着、導電性材料を蒸着のいずれかの材料および形成方法によって互いに絶縁された電極2A、電極2Bを形成する(S4)。その後、圧電性を発現させるために空気中またはシリコンオイル浴中で電極2A、電極2B間に直流高電圧を印加してポーリング処理を行い(S5)、シート状の圧電素子を作製する。なお、ポーリング処理(S5)は、電極2A、電極2Bを形成(S4)した後行っているが、シート状の圧電組成物感圧体1を作製(S3)した後、2つの擬似電極を用いて行ってもよい。
以上のように構成されたシート状の圧電素子について、以下その動作、作用を説明する。
シート状の圧電素子の圧電特性は、前述したように電極2A、電極2B間に高圧の直流電圧を印加し、圧電組成物感圧体1をポーリング処理することにより発現する。圧電特性を発現させたシート状の圧電素子の一部あるいは全面に時間的に変化する圧力が印加されたとき、第1電極2A、第2電極2B間にはその部分に生じる加速度に応じた振動電圧が誘起される。この誘起電圧を利用して圧力を検出することができる。自動車ドアに設置して挟み込みを防止するセンサ、ドアハンドルに設置して解錠を制御するタッチセンサ、介
護ベッドなどに設置して体動を検知するセンサ、ベランダの手すり等に配置して外部からの侵入を検知するセンサなど感圧センサとして利用することができる。
前述のような感圧センサは、屋外で使用される場合や自動車用に搭載される場合であれば梅雨時や夏場の雨天による高温水蒸気環境、介護ベッドに搭載される場合であれば失禁や汗による多湿環境、また寝具に搭載される場合であれば衛生保持するための洗濯、クリーニングなどによる高温高湿環境の下で使用される可能性が高い。
このような高温高湿環境下で感圧センサとして従来の圧電素子が使用されると、水蒸気が電極を通過し、シート状の圧電素子の内部に拡散する。圧電組成物感圧体の温度が外側よりも低い状態や圧電組成物感圧体の表面で水蒸気が過飽和状態になると、拡散した水蒸気が凝縮して水が生成し、この水が圧電組成物感圧体に浸透することにより圧電セラミック粉末の成分や不純物が溶出する現象が発生する。その結果、シート状の圧電素子の静電容量が増加するとともに、電気抵抗が減少するなどの電気的特性が変化するという問題が発生し、耐久性が劣るとともに、感圧センサとして用いる場合、検知や制御のための回路を初期の電気特性の変化に対応できるようにする必要があり、回路が複雑な構成となる。
本実施の形態のシート状の圧電素子が高温高湿環境下で使用される場合、水蒸気が電極2A、電極2Bを通過し、圧電組成物感圧体1表面で水蒸気が凝集して水が生成する。しかしながら、図3のように本実施の形態のシート状の圧電素子は圧電組成物感圧体1を構成する圧電セラミック粉末5に撥水処理を施して成した被覆層6を形成することにより、圧電組成物感圧体1で水蒸気が凝縮して水が生成しても、被覆層6の撥水作用により圧電組成物感圧体1には水が浸透しないので圧電セラミック粉末5の成分や不純物の溶出が抑制され、シート状の圧電素子としての静電容量の増加、電気抵抗の減少を防止することができる。その結果、シート状の圧電素子の初期の電気的特性を維持することができ、優れた耐久性と信頼性を実現することができる。また、初期の電気特性の変化を防止できることにより、電気特性の変化を補正する回路構成を必要とせず、信頼性の高い感圧センサを実現することができる。
特に、撥水処理を施して成した被覆層6は圧電セラミック粉末5の粒子一つ一つに形成されているので水との接触を極めて少なくすることができ、圧電セラミック粉末5の成分が水に溶出することで起こる電気抵抗の減少を防止する効果は大なるものである。
圧電組成物感圧体1は、圧電セラミック粉末3と有機高分子4とチタンカップリング剤とから構成され、優れた圧電特性を発現させるために、圧電セラミック粉末3の含有量を多くした組成としている。この構成により、圧電組成物感圧体1は撥水材料の被覆層6が形成された圧電セラミック粉末3が多数存在するので優れた撥水性を有する表面とすることができるので、圧電組成物感圧体1への凝縮した水の浸透を抑制し、圧電組成物感圧体1の軟化を防止することができる。圧電感圧組成物1が優れた撥水性を発現させるため、圧電セラミック粉末3の表面の被覆層8は撥水性に優れた材料が必要となる。
なお、特許文献2で開示されているように、鉛を含む圧電セラミック粉末に被覆層を形成し、これを有機高分子に分散混合させて造られた圧電組成物感圧体がある。この被覆層の材料は、無機系、有機系化合物による被膜、有機系の単分子膜から構成され、いずれの材料でも圧電セラミック粉末からの鉛の溶出防止の効果が得られるものであるが、圧電組成物感圧体自身は水の吸収は防止できるものではない。その理由は次のように考えられる。
特許文献2において、被覆層の材料は、アルミナ、シリカ、ジルコニア、リチウムシリケートの無機化合物を用いているが、これらは親水性を示すものであり、撥水性のもつ水
を弾く作用はなく、水と圧電セラミック粉末の接触を妨げるというバリア層としての作用である。これにより、鉛の溶出を抑制することができるが、被覆層が撥水性を有さないため、圧電組成物感圧体自身は水を吸収するものと考えられる。
また、被覆層の材料として、有機化合物や単分子膜を用いたものは親水性こそないが、鉛の溶出の抑制効果を無機化合物と比較すると、鉛の溶出量は同等かむしろ劣る結果を示していることから、無機化合物も有機化合物も単分子膜も前述のバリア層としての作用によって鉛の溶出を抑制していると考えられる。また、有機化合物としてアクリル樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂などの材料、単分子膜として有機珪素化合物、有機チタン化合物の記述があるが、特許文献2で用いている有機化合物、単分子膜は本願発明のように優れた撥水性を有するものではなく、異なる組成や分子構造を持つ化合物であるか、被覆層の性状が異なっていると推定される。
したがって、特許文献2の被覆層を設けた構成は被覆層の材料に関係なく、圧電組成物感圧体は同等の水を吸収し、軟化していると考えられ、さらに特許文献2には被覆層が撥水性を有するという記述もないことから、本発明のように撥水作用によって圧電セラミック粉末の成分の溶出を防止するものではない。また、特許文献2の被覆層は、圧電体組成物感圧体の軟化による圧電特性の変化、機械的引っ張り強度の低下、水の吸収によって起こる静電容量の変化は防止できず、本発明の課題は解決できるものではないと考えられる。
また、従来の圧電素子は水が浸透すると圧電組成物感圧体が軟化し、圧力と圧電素子の歪みの関係が変化するため、このままでは誤検知の可能性がある。誤検知を無くするためには圧電組成物感圧体1の柔らかさの変化に応じた信号処理が必要となるが、本実施の形態のシート状の圧電素子を感圧センサとして使用した場合は、圧電セラミック粉末5を被覆している撥水処理を施して成した被覆層6によって圧電組成物感圧体1への水の吸収を防止することができるので圧電組成物感圧体1の軟化が抑制され、常に初期の圧電特性を維持することができる。その結果、同じ印加圧力でも圧電特性の変化に応じた信号処理を必要としないので誤検知を防止できるなど信頼性の高い検知、制御回路を設計することができる。
また、被覆層6を撥水材料で構成することにより、薄膜とすることができるので圧電組成物感圧体1への浸透を防止することによる圧電特性の変化を防止することができるとともに、圧電特性を発現するために行うポーリング処理において、印加電圧のロスを少なくすることができ、低い電圧でも優れた圧電特性を発現させることができる。
また、シート状の圧電素子を構成する圧電組成物感圧体1の軟化を抑制することができるので圧電組成物感圧体1の引っ張り強度の低下が防止され、初期の強度を維持することができ、優れた耐久性を実現することができる。
また、圧電セラミック粉末5に撥水処理を施して成した被覆層6を形成することにより、圧電セラミック粉末5表面に疎水性を発現させることができるので疎水性を有する有機高分子4との馴染みが良好となり、両者の混練性が向上し、混練加工時間の短縮化など生産性を向上させることができる。また、混練時間を従来と同じとした場合は、混練を向上させるために用いるチタンカップリング剤の量を減らすことができ、材料のコストを下げることができる。
また、予め圧電セラミック粉末5に撥水処理を施すことにより、シート状の圧電素子の形状、大きさが変わってもそれに対応した撥水処理工程が必要なく、シート状の圧電素子の生産性を高くすることができるとともに、シート状の圧電素子の形状、大きさによらず
、常に安定した撥水効果をもたせることができる。
本実施の形態の被覆層6の撥水材料としては、主成分が有機脂肪酸塩、有機脂肪酸アミド、フッ素系樹脂、シリコン系樹脂、アクリル系樹脂、シラン化合物が挙げられる。
特に、有機脂肪酸塩としては、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデンカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、アクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、エライジン酸、セトレイン酸、エルカ酸、プラシジン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレイン酸の各脂肪酸とカルシウム、亜鉛、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、銅、鉛の各金属元素の化合物が挙げられ、これらの少なくとも1種の脂肪酸塩が挙げられる。
また、有機脂肪酸アミドとしては、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデンカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、アクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、エライジン酸、セトレイン酸、エルカ酸、プラシジン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレイン酸の各脂肪酸の水素基をアミノ基に置換したものが用いられる。
また、フッ素系樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルキルエチルアクリレート、シリコン系樹脂としては、ジメチルポリシロキサン、ジエチルポリシロキサン、シリコン−アクリルブロック共重合体、アクリル系樹脂としては、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステルの重合体が挙げられる。
また、シラン化合物としては、圧電セラミック粉末5の表面に少なくともシロキサン結合を有し、かつ少なくともアルキル基またはフルオロアルキル基を有するジアルキルシラン化合物、フルオロシラン化合物が挙げられる。
なお、シラン化合物としては、次のものが有効である。
(1)SiX4
(2)SiX3−O−SiX3
さらに具体的な化合物としては
(3)Si(OC2H5)4
(4)Si(OCH3)3−O−Si(OCH3)3
(5)Si(OC2H5)3−O−Si(OCH3)3
(6)Si(OC2H5)3−O−Si(OC2H5)3
(7)Si(NCO)4
(8)Si(NCO)3−O−Si(NCO)3
(9)SiCl4
(10)SiCl3−O−SiCl3
が挙げられる。
また、本実施の形態で用いることができるシラン化合物としては、下記のものを例示することができる。
(11)SiYpCl4−p
(12)CH3(CH2)sO(CH2)tSiYqCl3−q
(13)CH3(CH2)u−Si(CH3)2(CH2)v−SiYqCl3−q
(14)CF3COO(CH2)wSiYqCl3−q
但し、pは1〜3の整数、qは0〜2の整数、rは1〜25の整数、sは0〜12の整数、tは1〜20の整数、uは0〜12の整数、vは1〜20の整数、wは1〜25の整数を示す。また、Xは、ハロゲン、Yは、水素、アルキル基、アルコキシル基、フルオロアルキル基またはフルオロアルコキシ基である。
さらに、具体的なシラン系化合物として下記に示す(15)−(21)が挙げられる。
(15)CH3CH2O(CH2)15SiCl3
(16)CH3(CH2)2Si(CH3)2(CH2)15SiCl3
(17)CH3(CH2)6Si(CH3)2(CH2)9SiCl3
(18)CH3COO(CH2)15SiCl3
(19)CF3(CF2)7−(CH2)2−SiCl3
(20)CF3(CF2)5−(CH2)2−SiCl3
(21)CF3(CF2)7−C6H4−SiCl3
また、上記クロロシラン系化合物の代わりに、全てのクロロシリル基をイソシアネート基に置き扱えたイソシアネート系化合物、例えば下記に示す(22)−(26)を用いてもよい。
(22)SiYp(NCO)4−p
(23)CH3−(CH2)rSiYp(NCO)3−p
(24)CH3(CH2)sO(CH2)tSiYq(NCO)q−P
(25)CH3(CH2)u−Si(CH3)2(CH2)v−SiYq(NCO)3−q
(26)CF3COO(CH2)wSiYq(NCO)3−q
但し、p、q、r、s、t、u、v、およびYは前述と同様である。
前述のシラン系化合物に代わりに、下記(27)−(33)に具体的に例示するシラン系化合物を用いてもよい。
(27)CH3CH2O(CH2)15Si(NCO)3
(28)CH3(CH2)2Si(CH3)2(CH2)15Si(NCO)3
(29)CH3(CH2)6Si(CH3)2(CH2)9Si(NCO)3
(30)CH3COO(CH2)15Si(NCO)3
(31)CF3(CF2)7−(CH2)2−Si(NCO)3
(32)CF3(CF2)5−(CH2)2−Si(NCO)3
(33)CF3(CF2)7−C6H4−Si(NCO)3
また、シラン系化合物として、一般に、SiYk(OA)4−k(Yは、前記と同様、Aはアルキル基、kは0、1、2または3)で表される物質を用いることが可能である。中でも、CF3−(CF2)n−(R)l−SiYq(OA)3−q(nは1以上の整数、好ましくは1〜22の整数、Rはアルキル基、ビニル基、エチニル基、アリール基、シリコンもしくは酸素原子を含む置換基、lは0または1、Y、Aおよびqは前記と同様)で表される物質を用いると、よりすぐれた防汚性の被膜を形成できるが、これに限定されるものではなく、これ以外にも、CH3−(CH2)r−SiYq(OA)3−qおよびCH3−(CH2)s−0−(CH2)t−SiYq(OA)3−q、CH3−(CH2)u−Si(CH3)2−(CH2)v−SiYq(OA)3−q、CF3COO−(CH2)w−SiYq(OA)3−q
などが使用可能である。
但し、q、r、s、t、u、v、w、YおよびAは、前述と同様である。
さらに、より具体的なシラン系化合物としては、下記に示す(34)−(57)を挙げることができる。
(34)CH3CH2O(CH2)15Si(OCH3)3
(35)CF3CH2O(CH2)15Si(OCH3)3
(36)CH3(CH2)2Si(CH3)2(CH2)15Si(OCH3)3
(37)CH3(CH2)6Si(CH3)2(CH2)9Si(OCH3)3
(38)CH3COO(CH2)15Si(OCH3)3
(39)CF3(CF2)5(CH2)2Si(OCH3)3
(40)CF3(CF2)7−C6H4−Si(OCH3)3
(41)CH3CH2O(CH2)15Si(OC2H5)3
(42)CH3(CH2)2Si(CH3)2(CH2)15Si(OC2H5)3
(43)CH3(CH2)6Si(CH3)2(CH2)9Si(OC2H5)3
(44)CF3(CH2)6Si(CH3)2(CH2)9Si(OC2H5)3
(45)CH3COO(CH2)15Si(OC2H5)3
(46)CF3COO(CH2)15Si(OC2H5)3
(47)CF3COO(CH2)15Si(OCH3)3
(48)CF3(CF2)9(CH2)2Si(OC2H5)3
(49)CF3(CF2)7(CH2)2Si(OC2H5)3
(50)CF3(CF2)5(CH2)2Si(OC2H5)3
(5l)CF3(CF2)7C6H4Si(OC2H5)3
(52)CF3(CF2)9(CH2)2Si(OCH3)3
(53)CF3(CF2)5(CH2)2Si(OCH3)3
(54)CF3(CF2)7(CH2)2SiCH3(OC2H5)2
(55)CF3(CF2)7(CH2)2SiCH3(OCH3)2
(56)CF3(CF2)7(CH2)2Si(CH3)2OC2H5
(57)CF3(CF2)7(CH2)2Si(CH3)2OCH3
(22)−(57)の化合物を用いた場合には、塩酸が発生しないため、装置保全および作業上のメリットもある。
前述のシラン化合物は撥水材料を施して成した被覆層6を単分子の層で形成することができる。単分子の層はその厚みが数nmレベルの超薄膜であるので圧電組成物感圧体1を作製後、圧電特性を発現させるために行うポーリング処理において高圧の直流電圧印加した際、単分子層での電圧降下を少なくすることができるのでポーリングの効率を向上させることができ、処理時間の短縮化が可能であるとともに、優れた圧電特性を実現することができる。また、撥水処理を施して成した被覆層6を単分子の層とすることで撥水材料の使用量を著しく少なくすることができるのでシート状の圧電素子の低コスト化を図ることができる。
本実施の形態によれば、撥水材料の被覆層6は圧電セラミック粉末5の表面に形成している。圧電組成物感圧体1への水の浸透を抑制し、高温高湿環境下でのシート状の圧電素子の電気的特性、圧電特性、機械的強度の変化を著しく少なくするためには圧電組成物感圧体1の表面全体にも優れた撥水性を発現させる必要があり、そのためには被覆層6の撥水性を著しく高くする必要がある。そのために被覆層6は蒸留水に対する接触角が125°以上の撥水材料がよい。言い換えれば、被覆層8の蒸留水に対する接触角が125°以上であれば、圧電組成物感圧体1の表面が温度の高い環境下でも凝縮した水に対して高い撥水性を得ることができ、圧電組成物感圧体1への水の浸透を抑制する効果を高くするこ
とができる。なお、接触角はその定義上、180°未満であるので、蒸留水に対する接触角が125°以上180°未満の撥水材料が好ましい。望ましくは蒸留水に対する接触角が150°以上の超撥水材料がよい。
特に、撥水処理を施して成した被覆層6の蒸留水に対する接触角が150°以上の撥水材料としては、前述の脂肪酸塩、脂肪酸アミド、フッ素系樹脂、シリコン系樹脂、シラン化合物が挙げられる。
また、脂肪酸塩に関しては特に、カルシウムを含むものが撥水性に優れている。この理由は明確ではないが以下のように考察される。
脂肪酸カルシウムの撥水材料を用いて作製した圧電組成物感圧体1は、カルシウム以外の脂肪酸塩からなる撥水材料を用いたものよりも柔らかいことから、同じ混練条件でも混練性に優れているといえる。混練性に優れているということは、図2,3のように可撓性を有する有機高分子4中に圧電セラミック粉末3が均一に分散していることであり、このことがより優れた撥水性を実現していると考えられる。
なお、S1においては撥水処理を施して成した被覆層6は、撥水材料を加熱して溶融させた後、圧電セラミック粉末5を浸漬するか、撥水材料に適合した溶媒に撥水材料を入れ、適切な濃度に調整した溶液に圧電セラミック粉末5を浸漬し、その後乾燥処理を行うか、撥水材料が固体の場合には撥水材料の粉末と圧電セラミック粉末5を混合することのいずれかの方法で形成される。また、撥水材料は前述した1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
シラン化合物に適した溶媒としては、活性水素を含まない非水系溶媒を用いるのが好ましく、水を含まない炭化水素系溶媒、フッ化炭素系溶媒、シリコン系溶媒などが用いられる。なお、石油系の溶剤の他に具体的に使用可能なものは、石油ナフサ、ソルベントナフサ、石油エーテル、石油ベンジン、イソパラフィン、ノルマルパラフィン、デカリン、工業ガソリン、灯油、リグロイン、ジメチルシリコン、フェニルシリコン、アルキル変性シリコン、ポリエステルシリコンなどを挙げることができる。また、フッ化炭素系溶媒には、フロン系溶媒や、パーフロロオクタン、トリスパーフルオロn−ブチルアミン系溶媒などがある。なお、これらは1種単独で用いてもよいし、よく混合するものなら2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、圧電セラミック粉末5と可撓性を有する有機高分子4に撥水材料を添加してニーダーやロールなどの加工機を用いて混合・分散しても圧電セラミック粉末5の粒子一つ一つを完全に撥水材料で被覆することができないため、優れた撥水性を得ることができない。したがって、優れた撥水性を実現するためには圧電セラミック粉末5の粒子一つ一つの表面に撥水材料の被覆層6を設ける必要がある。
本実施の形態に用いられる圧電セラミック粉末5の化合物は、チタン酸鉛、ジルコン鉛、チタン酸ジルコン酸鉛、チタン酸ビスマス・ナトリウム、チタン酸バリウム、ニオブ酸アルカリなどのペロブスカイト構造を有する化合物、ビスマス層状構造を有する化合物、タングステンブロンズ構造を有する化合物などポーリング処理によって圧電性を発現するセラミック材料が挙げられる。
これら圧電セラミック粉末5は水などの電解質と接触すると、圧電セラミック粉末5の成分や圧電セラミック粉末5に含有する不純物が溶出する。特に、周期表第1族の元素、周期表第2A族の元素の少なくとも1種を含むペロブスカイト構造を有する化合物、中でもチタン酸ビスマス・ナトリウム、チタン酸バリウム、ニオブ酸ナトリウム、ニオブ酸カ
リウムの化合物は水に溶出し易いアルカリ成分を含むため、高温高湿下の環境ではアルカリ成分の溶出が大きく、電気的特性の変化が大きくなる。さらに、アルカリ成分を含む圧電セラミックは固有抵抗が例えばチタン酸ジルコン酸鉛に比べ、低い値を示すのでアルカリ成分が溶出すると電気抵抗の絶対値がさらに低くなり、シート状の圧電素子に常に一定電圧を印加して圧力を検知する回路構成では感圧センサとして使用することができなくなる可能性がある。
本実施の形態では、アルカリ成分を含む周期表第1族の元素、周期表第2A族の元素の少なくとも1種を含むペロブスカイト構造を有する化合物や主成分がチタン酸ビスマス・ナトリウム、チタン酸バリウム、ニオブ酸ナトリウム、ニオブ酸カリウムの少なくとも1種を含む化合物からなる圧電セラミック粉末5に撥水処理を施して成した被覆層6を形成しているのでアルカリ成分の溶出を抑制することができ、電気抵抗の大幅な低下を防止することができるとともに、シート状の圧電素子に常に一定電圧を印加して圧力を検知する回路構成でも感圧センサとして使用でき、高い実用性を有する。
また、圧電セラミック粉末5として周期表第1族の元素、周期表第2A族の元素の少なくとも1種を含むペロブスカイト構造を有する化合物や主成分がチタン酸ビスマス・ナトリウム、チタン酸バリウム、ニオブ酸ナトリウム、ニオブ酸カリウムの少なくとも1種を含む化合物を用いることにより、シート状の圧電素子が廃棄処理され、酸性雨などの環境に曝されても鉛の溶出がなく、環境汚染の可能性がない。また、圧電セラミック粉末5に撥水処理を施して成した被覆層6を設け、圧電セラミック粉末5の成分の溶出を防止しているので鉛以外の金属の溶出も抑制され、安全性を一層向上させることができる。
また、圧電特性は両電極間に高圧の直流電圧を印加し、ポーリング処理することで発現するが、本実施の形態のシート状の圧電素子を感圧センサとして用いる場合、重要となる圧電特性は発生電圧の指標となる電圧出力定数である。
本実施の形態のシート状の圧電素子を構成する圧電組成物感圧体1は、圧電セラミック粉末5と可撓性を有する有機高分子4の複合体からなり、圧電セラミック粉末5の比誘電率(材料の誘電率/真空の誘電率)が数百から数千であるのに対し、可撓性を有する有機高分子4の比誘電率は数十である。ポーリング処理の際に印加された直流電圧は、圧電セラミック粉末5と可撓性を有する有機高分子4の誘電率の比に反比例して分配されるので、直流電圧は誘電率の低い可撓性を有する有機高分子4に高い電圧が印加されることになる。換言すれば、可撓性を有する有機高分子4として同じものを用いた場合、圧電セラミック粉末5の誘電率が高いほど可撓性を有する有機高分子4に高い電圧が印加されることになる。
したがって、圧電組成物感圧体1の圧電セラミック粉末5として比誘電率が約2000のチタン酸ジルコン酸鉛と、比誘電率が約600のチタン酸ビスマス・ナトリウムを用いた場合、両者の圧電組成物感圧体1に一定の直流電圧を印加すると、比誘電率の低いチタン酸ビスマス・ナトリウムの方がチタン酸ジルコン酸鉛よりも高い電圧が印加され、ポーリングの効率を高くすることができるので電圧出力定数が大きくなる。その結果、シート状の圧電素子を感圧センサとして用いた場合には、印加される圧力に対するセンサの出力電圧を高くすることができるので感度を向上させることができるとともに、シート状の圧電素子の高感度化により検知回路の増幅率を低くすることができるので電気的ノイズに対し強い感圧センサを得ることができる。
圧電セラミック粉末5の比誘電率は低ければ低いほど良いが、1000以下であればチタン酸ジルコン酸鉛の圧電セラミック粉末5を用いる場合よりも3倍以上の優れた電圧出力定数が得られる。その点から、有用な圧電セラミック粉末5は、チタン酸ビスマス・ナ
トリウム、チタン酸バリウム、ニオブ酸ナトリウム、ニオブ酸カリウムを主成分とするものが挙げられる。
すなわち圧電セラミック粉末5の比誘電率は0より大きく1000以下であることが好ましい。ただ、実用的に最も比誘電率が低いのはニオブ酸ナトリウム(比誘電率が120)であるので、圧電セラミック粉末5の比誘電率は120以上1000以下であることが好ましい。このような比誘電率の好ましい範囲は、後述する他の実施の形態でも同様である。
また、チタン酸ビスマス・ナトリウムやチタン酸バリウムからなる圧電セラミック粉末5はニオブ酸ナトリウム、ニオブ酸カリウムからなる圧電セラミック粉末5よりも残留するフリーのアルカリ成分が少ないため、撥水材料の被覆層6を通して溶出するアルカリ成分の量をより少なくすることができ、電気的特性の変化をより少なくすることができる。
一方、ニオブ酸ナトリウム、ニオブ酸カリウムからなる圧電セラミック粉末5はチタン酸鉛、ジルコン鉛、チタン酸ジルコン酸鉛、チタン酸ビスマス・ナトリウム、チタン酸バリウムからなる圧電セラミック粉末5よりも比誘電率が低いため、可撓性を有する有機高分子4を含む圧電組成物感圧体1を作製し、圧電特性を発現させるために行うポーリング処理の際、圧電セラミック粉末5に印加される直流電圧を高くすることができ、電圧出力定数を高くすることができる。
したがって、圧電セラミック粉末5はシート状の圧電素子の使用される環境や、必要とする感度に応じて適宜選択されるものである。
本実施の形態のシート状の圧電素子の電極2A、電極2Bとして、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、ゴムの少なくとも1種を含む弾性体と導電性粉末の導電層で構成することができる。この構成では、電極2A、電極2Bを伸びのある可撓性に優れた電極とすることができるので高い耐屈曲性を有し、耐久性に優れたシート状の圧電素子を得ることができる。この導電層は熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、ゴムの少なくとも1種を含む弾性体と導電性粉末を混練したものを押出機などの加工機を用いて、押し出し成型することによって圧電組成物感圧体1に形成される。
また、電極2A、電極2Bとして、主成分が導電性粉末と有機高分子との混合物である導電塗料、もしくは導電ペーストの塗布膜で構成することもできる。この構成では、圧電組成物感圧体1と電極2A、電極2Bの密着性を高くすることができるとともに、電極2A、電極2Bと圧電組成物感圧体1の間に空気層の介在を少なくすることができるのでポーリング処理の際の電極2A、電極2Bと圧電組成物感圧体1との間の電圧降下を抑制することができ、ポーリング処理の実効電圧を高くすることができる。
また、電極2A、電極2Bとして、導電性材料の蒸着膜で構成することもできる。この構成では、電極2A、電極2Bを薄膜で形成することができるので圧電組成物感圧体1の優れた可撓性を維持することができ、圧電組成物感圧体1の有する圧電特性の低下を防止することができる。この薄膜は真空蒸着、スパッタリング、CVDなどの装置を用い、圧電組成物感圧体1に蒸着によって形成される。
なお、前述の導電性粉末、導電性材料は、C、Pt、Au、Pd、Ag、Cu、Al、Niの少なくとも1種を用いることにより、特に優れた導電性と耐食性を実現することができる。
ポリエチレンテレフタレートなどの高分子フィルムの両面にC、Pt、Au、Pd、Ag、Cu、Al、Niの少なくとも1種の箔を接着し、両面を導通させた導電性フィルムか
らなる導電層を用いてもよい。
本実施の形態に用いられる可撓性を有する有機高分子4としては、熱可塑性エラストマー、ゴムの少なくとも1種を含む材料が挙げられる。これらの可撓性を有する高分子4はシート状の圧電素子に優れた弾性と可撓性を付与することができるのでシート状の圧電素子は印加された圧力に対して大きな反発力と変位量を得ることができ、圧電特性を向上させることができる。
特に、前述の熱可塑性エラストマーとして、塩素化ポリエチレン、クロルスルホン化ポリエチレンは圧電組成物感圧体1の中の圧電セラミック粉末3の含有量を多くすることができるのでシート状の圧電素子の圧電特性を向上させることができる。
本実施の形態に用いられるチタンカップリング剤は、図2のように撥水処理された圧電セラミック粉末3を覆い、外側に疎水性の側鎖有機官能基をもたせることにより、可撓性を有する有機高分子4との馴染み(濡れ性)を改善し、全体の粘度を下げ、加工性、可撓性、さらに圧電セラミック粉末3の分散性を向上させることにより圧電特性の発現を顕著に改善することができる。
特に、チタンカップリング剤としてイソプロポキシトリイソステアロイルチタネート、イソプロポキシトリス(ジオクチルパイロフォスフェート)チタネート、可撓性を有する有機高分子として塩素化ポリエチレン、クロルスルホン化ポリエチレンを用いた場合は、圧電セラミック粉末3との馴染みが一層改善されるので混練加工時間の短縮化、圧電特性の向上、圧電特性の安定化、可撓性の向上を実現することができるとともに、シート状、ケーブル状など任意の形状に容易に成型することができる。
なお、上記の馴染みが良い理由は、イソプロポキシトリイソステアロイルチタネート、イソプロポキシトリス(ジオクチルパイロフォスフェート)チタネートのSP値(溶解性パラメーター)が8〜9の値を有し、一方塩素化ポリエチレン、クロルスルホン化ポリエチレンのSP値は9〜9.5の値であり、類似したSP値を有していることにあると考えられる。
(実施の形態2)
図5は、本発明の第2の実施の形態におけるシート状の圧電素子の断面図である。図5において第1の実施の形態と異なるところは、圧電組成物感圧体7の表面に撥水材料の被覆層8を設けた点である。なお、第1の実施の形態と同一部材は同じ符号を付けている。
図5に示すように、第1の実施の形態で述べた圧電セラミック粉末5と可撓性を有する有機高分子4とシート状の圧電組成物感圧体7に撥水処理を施して成した被覆層8が形成され、さらに撥水処理を施して成した被覆層8の表面に第1電極として電極2A、第2電極として電極2Bが形成された構成としている。
第2の実施の形態におけるシート状の圧電素子は以下のように作製される。図6でその製造工程を説明する。先ず、圧電セラミック粉末5と可撓性を有する有機高分子4をニーダーやロールなどの加工機を用い、圧電セラミック粉末5が可撓性を有する有機高分子4に均一に混合・分散された状態となるように混練をする(S6)。このとき、混練を向上させるためにチタンカップリング剤を添加してもよい。その後、ロールまたはホットプレスなどの加工機を用いて加工し、シート状の圧電組成物感圧体7を作製する(S7)。次に、シート状の圧電組成物感圧体7を適切な溶媒で希釈して所定の濃度に調整した撥水材料を含む溶液に浸漬して混合した後乾燥するか、または融解する温度に加熱された撥水材料の溶液に浸漬して混合した後冷却するか、または圧電セラミック粉末5を所定量の撥水
材料の粉末を付着させることのいずれかによって撥水処理を施して成した被覆層8が形成される(S8)。次に、撥水処理されたシート状の圧電組成物感圧体7の両面に導電性粉末と有機高分子が混合された導電性ペーストまたは導電塗料の塗布、導電性粉末をゴムや熱可塑性エラストマーなどの可撓性を有する有機高分子に混合・分散させた導電シートの融着、導電性材料の蒸着のいずれかの材料と形成方法によって電極2A、電極2Bを形成する(S9)。その後、圧電特性を発現させるために空気中またはシリコンオイル浴中で電極2間に直流高電圧を印加してポーリング処理を行い(S10)、シート状の圧電素子を作製する。なお、ポーリング処理(S10)は、電極2A、電極2Bを形成(S9)した後行っているが、シート状の感圧体7を作製(S7)した後、またはシート状感圧体7に撥水処理の被覆層8を形成(S8)した後、2つの擬似電極を用いて行ってもよい。
上記構成のシート状の圧電素子が第1の実施の形態と同様に高温高湿環境下で使用される場合、電極2A、電極2Bを通過した水蒸気は電極2A、電極2Bと圧電組成物感圧体7の間で凝縮して水となるが、圧電組成物感圧体7の表面には撥水処理を施して成した被覆層8を形成しているので圧電組成物感圧体7への水の浸透が防止され、初期のシート状の圧電素子の電気的特性、圧電特性、機械的強度の変化をより一層低減することができ、耐久性と信頼性に優れたシート状の圧電素子を実現することができる。
また、特に、水の圧電組成物感圧体7の内部への浸透を防止することにより、シート状の圧電素子との静電容量の変化、圧電組成物感圧体の軟化を防止する効果は大なるものである。
なお、圧電セラミック粉末5と可撓性を有する有機高分子4に撥水材料を添加してニーダーやロールなどの加工機を用いて混合・分散した場合、撥水処理材料は圧電組成物感圧体7の内部に分散した状態で存在するため、ロールまたはホットプレスなどの加工機を用いて加工しても撥水材料は圧電組成物感圧体7の表面を完全に被覆することができず、優れた撥水性を得ることができない。したがって、優れた撥水性を実現するためには圧電組成物感圧体7の表面に撥水材料の被覆層8を設ける必要がある。
被覆層8を構成する材料は実施の形態1の被覆層6と同様なので詳細な説明を省略する。
(実施の形態3)
図7は、本発明の第3の実施の形態におけるシート状の圧電素子の断面図である。図7において第1の実施の形態と異なるところは、圧電組成物感圧体7の表面の一部と第1電極である電極2A、第2電極である電極2Bの表面に撥水処理を施して成した被覆層9を設け、これらを保護する保護層10を設けた点である。なお、第1の実施の形態と同一部材は同じ符号を付けている。
図7に示すように、第1の実施の形態で述べた圧電セラミック粉末5と可撓性を有する有機高分子4とからなるシート状の圧電組成物感圧体7に電極2A、電極2Bが形成され、撥水材料で電極2A、電極2Bと圧電組成物感圧体7の表面の一部に撥水処理を施して成した被覆層9を形成し、さらに圧電組成物感圧体7、電極2A、電極2B、撥水処理を施して成した被覆層9を覆う保護層10を設けた構成としている。
本実施の形態におけるシート状の圧電素子は以下のように作製される。図8でその製造工程を説明する。先ず、圧電セラミック粉末5と可撓性を有する有機高分子4とをニーダーやロールなどの加工機を用い、圧電セラミック粉末5が可撓性を有する有機高分子4に均一に混合・分散された状態となるように混練を行ない(S11)、ロールまたはホットプレスなどの加工機を用いて加工し、シート状の圧電組成物感圧体7を作製する(S12
)。ステップS11、S12は実施の形態2におけるステップS6、S7とそれぞれ同様なので説明を省略する。次に、この圧電組成物感圧体7の両面に、導電性粉末と有機高分子が混合された導電性ペーストまたは導電塗料の塗布、導電性粉末をゴムや熱可塑性エラストマーなどの可撓性を有する有機高分子に混合・分散させた導電シートの融着、導電性材料の蒸着のいずれかの材料と形成方法によって電極2A、電極2Bを形成する(S13)。電極作製方法は実施の形態1のステップS4と同様である。次に、電極2A、電極2Bを形成したシート状の圧電組成物感圧体7を適切な溶媒で希釈して所定の濃度に調整した撥水材料を含む溶液に浸漬して混合した後乾燥するか、または融解する温度に加熱した撥水材料の溶液に浸漬して混合した後冷却するか、または電極2A、電極2Bとシート状の圧電組成物感圧体7の一部に所定量の撥水材料の粉末を付着させることのいずれかによって撥水処理を施し、電極2A、電極2Bと圧電組成物感圧体7の表面の一部に被覆層9を形成する(S14)。さらに、保護層10の材料をロールやホットプレスなどの加工機を用いてシート状に加工し、このシートを折りたたむか、挟むことによって撥水処理された圧電組成物感圧体7と電極2A、電極2Bを被覆する(S15)。その後、圧電特性を発現させるために空気中またはシリコンオイル浴中で電極2A、2B間に直流高電圧を印加してポーリング処理を行い(S16)、シート状の圧電素子を作製する。なお、保護層10はポーリング処理を行った後、設けてもよい。また、ポーリング処理(S16)は、保護層10を形成(S15)した後行っているが、シート状の感圧体7を作製(S12)した後、2つの擬似電極を用いて行ってもよいし、電極2A、電極2Bを形成(S13)した後、または撥水処理の被覆層9を形成(S14)した後、行ってもよい。
保護層10は圧電組成物感圧体7や電極2A、電極2Bのもつ可撓性を損なわないように弾性を有する有機高分子が用いられ、特に、熱可塑性エラストマー、ゴム材料が適している。保護層10の厚みは限定されるものではないが、圧電組成物感圧体7の圧電特性を損なわないためには、0.2〜2mmの厚みとすることが好ましい。
上記構成のシート状の圧電素子が第1の実施の形態と同様に高温高湿環境下で使用される場合、保護層10が存在するため、水蒸気の圧電組成物感圧体1への拡散量は低減されるが、保護層10の3次元網目分子構造の隙間は水蒸気1分子の大きさに比べて大きいため、保護層10の厚みが2mm以下レベルでは水蒸気の拡散を完全に防止することはできず、保護層10と電極2A、電極2Bの間、保護層10と圧電組成物感圧体7の間で水が生成する。しかしながら、保護層10と接している圧電組成物感圧体7と電極2A、電極2Bの表面には撥水処理を施して成した被覆層9を形成しているので圧電組成物感圧体7への水の浸透が抑制され、第1の実施の形態と同様に初期のシート状の圧電素子の電気的特性、圧電特性、機械的強度の変化を低減することができ、耐久性と信頼性に優れたシート状の圧電素子を実現することができる。
また、電極2A、電極2Bも水の浸透を抑制することができるので電極2A、電極2Bの電気抵抗の変化を防止することができ、常に安定した圧電組成物感圧体7の圧電特性を検知回路に伝達することができる。
また、電極2A、電極2Bと圧電組成物感圧体7との間に撥水処理を施して成した被覆層がないことにより、ポーリング処理の際に印加される直流高電圧の電圧降下によるロスをなくすることができるのでポーリング処理の効率を向上させることができ、高い圧電特性を得ることができる。
また、保護層10は外部からの機械的な力によるシート状の圧電素子の破損を防止することができる。
なお、本実施の形態で用いた保護層10は、第1の実施の形態、第2の実施の形態で述
べたシート状の圧電素子にも適用できるものであり、同様な効果を有する。
(実施の形態4)
図9は、本発明の第4の実施の形態におけるケーブル状の圧電素子の一部断面図である。図9に示すように、ケーブル状の圧電素子は、第1電極である芯電極11の外表面に可撓性の圧電組成物感圧体12を形成し、この圧電組成物感圧体12の外表面に第2電極である可撓性の外電極13を形成し、さらに電気絶縁性の弾性体からなる保護層14を形成して構成されている。芯電極11と外電極13とは感圧体12で絶縁されている。
芯電極11は、単数または複数の金属線、あるいは多数のポリエステル繊維の収束線に銅などの金属を巻回した構成のものが用いられ、圧電組成物感圧体12は、第1の実施の形態で述べた組成の材料が用いられる。
外電極13は、実施の形態1における電極2A、電極2Bと同様に、ポリエチレンテレフタレ−トなどの高分子フィルムの両面にC、Pt、Au、Pd、Ag、Cu、Al、Niの少なくとも1種の箔を接着した導電性フィルムをケーブル状の圧電組成物感圧体12に巻回して形成した導電層、C、Pt、Au、Pd、Ag、Cu、Al、Niの少なくとも1種の導電性粉末とゴムや熱可塑性エラストマーなどの可撓性を有する有機高分子とを混練して作製した可撓性導電組成物を押出成型により形成した導電層、前述の導電性粉末を有機高分子に分散させた導電性塗料(ペースト)を塗布した導電膜、C、Pt、Au、Pd、Ag、Cu、Al、Niの少なくとも1種の導電性材料を圧電組成物感圧体12に真空蒸着、スパッタリング、CVDなどの方法で形成した薄膜の蒸着膜などが用いられる。
保護層14は、第3の実施の形態で述べた保護層10の材料が用いられ、この材料の押出成型により形成される。
本実施の形態におけるケーブル状の圧電素子は以下のようにして作製される。図10でその製造工程を説明する。先ず、実施の形態1で説明した圧電セラミック粉末5の撥水処理は、圧電セラミック粉末5を適切な溶媒で希釈して所定の濃度に調整した撥水材料を含む溶液に浸漬して混合した後乾燥するか、融解する温度に加熱された撥水材料の溶液に浸漬して混合した後冷却するか、または圧電セラミック粉末5を所定量の撥水材料の粉末と混合することのいずれかによって被覆層6を形成し(S17)、撥水処理された圧電セラミック粉末3を作製する。次に、撥水処理された圧電セラミック粉末3と有機高分子4とをニーダーやロールなどの加工機を用い、撥水処理されたセラミック粉末5が有機高分子4に均一に混合・分散された状態となるように混練する(S18)。このとき、混練を向上させるためにチタンカップリング剤を添加してもよい。次にこの混練物をロールの加工機でシート状の圧電組成物感圧体を作製し(S19)、このシート状の圧電組成物感圧体をペレタイザーなどの加工機を用いてペレット状に加工する(S20)。次に、芯電極11を芯材とし、ペレット状の圧電組成物感圧体を押出成型の加工機を用いて押し出し、芯電極11の周囲に圧電組成物感圧体12の層を形成する。すなわち芯電極11に対し圧電組成物感圧体12の層を周設する(S21)。次に前述のいずれかの材料と加工手段を用いて外電極13を形成する(S22)。次に、弾性を有する熱可塑性エラストマーやゴムなどの有機高分子を用い、押出成型により保護層14を形成する(S23)。その後、圧電性を発現させるために空気中またはシリコンオイル浴中で芯電極11と外電極13との間に直流高電圧を印加してポーリング処理を行い(S24)、ケーブル状の圧電素子が作製される。なお、保護層14はポーリング処理を行った後、設けてもよい。またポーリング処理(S24)は、保護層14を形成(S23)した後行っているが、芯電極11の周囲に圧電組成物感圧体12の層を形成(S21)した後、芯電極と外側電極に該当する擬似電極を用いて行ってもよいし、外電極13を形成(S22)した後、行ってもよい。
このようにして作製されたケーブル状の圧電素子は、図11に示すようにその一端の保護層14と圧電組成物感圧体12を取り除き、芯電極11と外電極13とを露出させることにより制御回路に接続され、感圧センサとして使用される。
上のように構成されたケーブル状圧電素子について、以下その動作、作用を説明する。
ケ−ブル状の圧電素子の一部あるいは全面に時間的に変化する圧力が印加されたとき、芯電極11と外電極13との間には、その部分のケーブル状の圧電素子に生じる加速度に応じた振動電圧が誘起される。この誘起電圧を利用して圧力を検出することができる。
上記構成のケーブル状の圧電素子が第1の実施の形態と同様に感圧センサとして高温高湿環境下で使用される場合、保護層14が存在するため、水蒸気の圧電組成物感圧体12への拡散量は少なくなるが、保護層14の有機高分子の3次元網目分子構造の隙間は水蒸気1分子の大きさに比べて大きいため、保護層14で水蒸気の拡散を防止することはできず、第1の実施の形態と同様に外電極13を通過し、圧電組成物感圧体12の表面に水蒸気が凝縮して水が生成する。しかしながら、圧電組成物感圧体12を構成する圧電セラミック粉末5に撥水処理を施して成した被覆層6を形成しているので圧電組成物感圧体12への水の浸透が抑制され、圧電組成物感圧体12の軟化と圧電セラミック粉末5の成分の溶出を低減することができる。したがって、第1の実施の形態と同様に初期のケーブル状の圧電素子の電気的特性、圧電特性、機械的強度の変化を低減することができ、耐久性と信頼性に優れたケーブル状の圧電素子を実現することができる。
また、数km以上の長尺のケーブル状の圧電素子を加工する場合でも予め圧電セラミック粉末5に撥水処理を施すことによって、一つ一つの粒子に撥水作用を付与することができるのでケーブル状のどの部位も撥水作用を発揮させることができ、常に安定した撥水効果を実現することができる。
(実施の形態5)
図11は、本発明の実施の形態5におけるケーブル状の圧電素子の一部断面図である。図11において、実施の形態4と異なるところは、撥水材料からなる被覆層15を圧電組成物感圧体12の外表面に設けた点である。なお、実施の形態4と同一部材は同じ符号を付けている。
図11に示すように、実施の形態5におけるケーブル状の圧電素子は、芯電極11の外表面に可撓性の圧電組成物感圧体12を形成し、この圧電組成物感圧体12の外表面に撥水処理を施して成した被覆層15を形成し、この撥水処理を施して成した被覆層15の外表面に外電極13を形成し、さらに電気絶縁性の弾性体からなる保護層14を形成して構成されている。図11では、被覆層15は感圧体22の、外電極13が形成される面にのみ形成されている。すなわち、被覆層15は圧電組成物感圧体12の少なくとも表面の一部を覆っている。
実施の形態5におけるケーブル状の圧電素子は以下のようにして作製される。図12でその製造工程について説明する。先ず、圧電セラミック粉末5と有機高分子4とをニーダーやロールなどの加工機を用い、セラミック粉末5が有機高分子4に均一に混合・分散された状態となるように混練を行ない(S25)、ロールの加工機でシート状の圧電組成物感圧体を作製し(S26)、このシート状の圧電組成物感圧体をペレタイザーなどの加工機を用いてペレット状に加工する(S27)。次に、芯電極11を芯材とし、ペレット状の圧電組成物感圧体を押出成型の加工機を用いて押し出し、芯電極11の周囲に圧電組成物感圧体12の被覆層を形成する。すなわち芯電極11に対し圧電組成物感圧体12の層
を周設する(S28)。次に適切な溶媒で希釈して所定の濃度に調整した撥水材料を含む溶液に浸漬して混合した後乾燥するか、または融解する温度に加熱された撥水材料の溶液に浸漬して混合した後冷却するか、または所定量の撥水材料の粉末を付着させることのいずれかによって圧電組成物感圧体12の表面に撥水処理を施して成した被覆層15を形成する(S29)。ステップS29は実施の形態2におけるステップS8と類似している。次に、ケーブル状の圧電組成物感圧体12に、ポリエチレンテレフタレ−トなどの高分子フィルムの両面にC、Pt、Au、Pd、Ag、Cu、Al、Niの少なくとも1種の箔を接着した導電性フィルムを巻回するか、C、Pt、Au、Pd、Ag、Cu、Al、Niの少なくとも1種の導電性粉末と有機高分子とを混練して作製した可撓性導電組成物を押出成型により形成するか、前述の導電性粉末を有機高分子に分散させた導電性塗料(ペースト)を塗布するか、C、Pt、Au、Pd、Ag、Cu、Al、Niの少なくとも1種の導電性材料を真空蒸着、スパッタリング、CVDなどの方法で形成した薄膜を形成するかのいずれかによって外電極13を形成する(S30)。さらに、弾性を有する熱可塑性エラストマーやゴムなどの有機高分子を用い、押出成型により保護層14を形成する(S31)。その後、圧電性を発現させるために空気中またはシリコンオイル浴中で芯電極11と可撓性外電極13の間に直流高電圧を印加してポーリング処理を行い(S32)、ケーブル状の圧電素子が作製される。なお、保護層14はポーリング処理を行った後、設けてもよい。またポーリング処理(S32)は、保護層14を形成(S31)した後行っているが、芯電極11の周囲に圧電組成物感圧体12の層を形成(S28)した後、または撥水処理の被覆層15を形成(S29)した後、芯電極と外側電極に該当する擬似電極を用いて行ってもよいし、外電極13を形成(S30)した後、行ってもよい。
このようにして作製されたケーブル状の圧電素子は、その一端の保護層14と圧電組成物感圧体12を取り除き、芯電極11と外電極13とを露出させることにより制御回路に接続され、感圧センサとして使用される。
上記構成のケーブル状の圧電素子が実施の形態1と同様に高温高湿環境下で使用される場合、保護層14が存在するため、水蒸気の圧電組成物感圧体12へ拡散する量は低減されるが、保護層14の有機高分子の3次元網目分子構造の隙間は水蒸気1分子の大きさに比べて大きいため、保護層14の厚みが2mm以下レベルでは水蒸気の拡散を完全に防止することはできず、圧電組成物感圧体12と外電極13の間で水が生成する。しかしながら、圧電組成物感圧体12の表面には撥水処理を施して成した被覆層15を形成しているので圧電組成物感圧体12への水の浸透が抑制され、圧電組成物感圧体12の軟化と圧電組成物感圧体12に含まれる圧電セラミック粉末5の成分の溶出を低減することができる。したがって、実施の形態1と同様に初期のケーブル状の圧電素子の電気的特性、圧電特性、機械的強度の変化を低減することができ、耐久性と信頼性に優れたケーブル状の圧電素子を実現することができる。
また、ケーブル状の圧電素子の場合は、芯電極11に圧電組成物感圧体12を押し出し成型により被覆した後、ロールに巻き取る必要がある。これらは連続して行う作業であり、圧電組成物感圧体12の押し出しとロールの巻き取り作業の間に撥水処理工程を設け、撥水処理をしながらロールで巻き取り作業を実施することにより、現状の製造工程を大幅に変える必要がなく、圧電組成物感圧体12の表面に撥水処理を連続して行うことができ、生産性を損なうことがない。
また、押し出し成型は圧電組成物感圧体12を加熱して行うため、押し出し成型とロールでの巻き取りの間にケーブル状の圧電組成物感圧体12を冷却する必要があるが、撥水材料が液体で処理温度が低温である場合は、撥水処理工程が冷却工程を兼用することが可能であり、この製造方法は現状の製造方法と同等の生産性を確保することができる。
なお、圧電セラミック粉末5と可撓性を有する有機高分子4と撥水材料を添加してニーダーやロールなどの加工機を用いて混合・分散した場合、撥水処理材料は圧電組成物感圧体12の内部に分散した状態で存在するため、押出成型の加工機を用いて押し出し、芯電極11の周囲に圧電組成物感圧体12の被覆層を形成しても撥水材料は圧電組成物感圧体12の表面を完全に被覆することができず、優れた撥水性を得ることができない。したがって、優れた撥水性を実現するためには圧電組成物感圧体12に撥水材料の被覆層15を設ける必要がある。
(実施の形態6)
図13は、本発明の実施の形態6におけるケーブル状の圧電素子の一部断面図である。図13において実施の形態4と異なるところは、撥水材料からなる被覆層16を外電極13の表面に設けた点である。なお、実施の形態5と同一部材は同じ符号を付けている。その他の構成は実施の形態5同様である。
本実施の形態におけるケーブル状の圧電素子は以下のようにして作製される。図14でその製造工程を説明する。圧電セラミック粉末5と有機高分子4とをニーダーやロールなどの加工機を用い、撥水処理されたセラミック粉末5が有機高分子4に均一に混合・分散された状態となるように混練を行い(S33)、ロールの加工機でシート状の圧電組成物感圧体を作製し(S34)、このシート状の圧電組成物感圧体をペレタイザーなどの加工機を用いてペレット状に加工する(S35)。次に、芯電極11を芯材とし、ペレット状の圧電組成物感圧体を押出成型の加工機を用いて押し出し、芯電極11の周囲に圧電組成物感圧体12を形成する(S36)。次に、ケーブル状の圧電組成物感圧体12に、ポリエチレンテレフタレ−トなどの高分子フィルムの両面にC、Pt、Au、Pd、Ag、Cu、Al、Niの少なくとも1種の箔を接着した導電性フィルムを巻回するか、C、Pt、Au、Pd、Ag、Cu、Al、Niの少なくとも1種の導電性粉末と有機高分子とを混練して作製した可撓性導電組成物を押出成型により形成するか、前述の導電性粉末を有機高分子に分散させた導電性塗料(ペースト)を塗布するか、C、Pt、Au、Pd、Ag、Cu、Al、Niの少なくとも1種の導電性材料を真空蒸着、スパッタリング、CVDなどの方法で形成した薄膜を形成するかのいずれかによって外電極13を形成する(S37)。次に適切な溶媒で希釈して所定の濃度に調整した撥水材料を含む溶液に浸漬して混合した後乾燥するか、または融解する温度に加熱された撥水材料の溶液に浸漬して混合した後冷却するか、または所定量の撥水材料の粉末を付着させることのいずれかによって圧電組成物感圧体12の表面に撥水処理を施して成した被覆層16を形成する(S38)。さらに、弾性を有する熱可塑性エラストマーやゴムなどの有機高分子を用い、押出成型により保護層14を形成する(S39)。その後、圧電性を発現させるために空気中またはシリコンオイル浴中で芯電極11と可撓性外電極13の間に直流高電圧を印加してポーリング処理を行い(S40)、ケーブル状の圧電素子が作製される。なお、保護層14はポーリング処理を行った後に設けてもよい。またポーリング処理(S40)は、保護層14を形成(S39)した後行っているが、芯電極11の周囲に圧電組成物感圧体12の層を形成(S36)した後、芯電極11と、外側電極13に該当する擬似電極を用いて行ってもよいし、外電極13を形成(S37)した後、または撥水処理の被覆層16を形成(S38)した後、芯電極11と、外側電極13を用いて行ってもよい。
このようにして作製されたケーブル状の圧電素子は、その一端の保護層14と圧電組成物感圧体12を取り除き、芯電極11と可撓性外電極13を露出させることにより制御回路に接続され、感圧センサとして使用される。
上記構成のケーブル状の圧電素子が実施の形態4と同様に高温高湿環境下で使用される場合、保護層14が存在するため、水蒸気の圧電組成物感圧体12へ拡散する量は低減されるが、保護層14の有機高分子の3次元網目分子構造の隙間は水蒸気1分子の大きさに
比べて大きいため、保護層14の厚みが2mm以下レベルでは水蒸気の拡散を完全に防止することはできず、保護層14と可撓性外電極13の間で水が生成する。しかしながら、外電極13の表面には撥水処理を施して成した被覆層16を形成しているので圧電組成物感圧体12への水の浸透が抑制され、圧電組成物感圧体12の軟化と圧電組成物感圧体12に含まれる圧電セラミック粉末5の成分の溶出を低減することができる。したがって、実施の形態4と同様に初期のケーブル状圧電素子の電気的特性、圧電特性、機械的強度の変化を低減することができ、耐久性と信頼性に優れたケーブル状圧電素子を実現することができる。
また、外電極13への水の浸透も抑制することができるので外電極13の電気抵抗の変化を防止することができ、常に安定した圧電特性を検知回路に伝達することができる。
また、ケーブル状の圧電素子を製造する場合、圧電組成物感圧体12に外電極13を周設した後、ロールに巻き取る必要がある。これらは連続して行う作業であり、外電極13の周設とロールでの巻き取り作業の間に撥水処理工程を設け、撥水処理をしながらロールで巻き取り作業を実施することにより、現状の製造工程を大幅に変える必要がなく、圧電組成物感圧体の表面に撥水処理を連続して行うことができ、生産性を損なうことがない。
また、図13では、被覆層16は外電極13の表面全体に設けられているが、部分的に設け、被覆層16を設けない部分を水蒸気非透過性の膜で覆ってもよい。すなわち、被覆層16は少なくとも外電極の一部を覆っている構成としてもよい。
第4〜第6の実施の形態において、外電極13を、導電性粉末と有機高分子とを混練して作製した可撓性導電組成物を押出成型したもの、導電性粉末を有機高分子に分散させた導電性塗料(ペースト)の塗布、導電性材料を真空蒸着、スパッタリング、CVDなどの蒸着で形成した場合は、圧電組成物感圧体12との密着性に優れているのでケーブル状の圧電素子を別の部材で保護する手段がある場合は保護層14を形成しなくてもよい。
なお、本実施の形態では圧電セラミック粉末5に撥水処理を施さないで圧電体組成物感圧体を形成したもので説明したが、第4の実施の形態で説明したように、圧電セラミック粉末5に撥水処理を施したものを用いて圧電組成物感圧体を設けて本実施の形態のようなケーブル状圧電素子の構成とすると、ケーブル状の圧電素子としての撥水性能がより向上するので、これをセンサとして用いた場合、高温多湿環境においてもより安定した性能を得ることが可能である。また、第6の実施の形態の構成に加え、第5の実施の形態で説明したように圧電組成物感圧体12に被覆層15を形成しても撥水性能が一層向上し、効果を顕著にすることができる。
また、第1〜第6の実施の形態ではケーブル状圧電素子の少なくとも保護層4よりも内側に撥水処理による被覆層を設けることにより、圧電組成物感圧体の内部への水の浸透を抑制し、軟化を防止する効果や圧電セラミックス粉末や不純物の水による溶出を抑制するについて説明した。これらの構成の効果より、撥水材料の被覆層は保護層4よりも内側に設けることにより優れた撥水性能を実現することができるとともに、この被覆層は複数の箇所に形成することにより、より撥水性能を向上させることが可能であることを示している。
また、以上の実施の形態では、撥水材料の被覆層を設けることにより、圧電セラミックス粉末や不純物の水による溶出を抑制する効果や圧電組成物感圧体の内部への水の浸透を抑制し、軟化を防止する効果について説明した。これ以外に、それらの効果を他の構成でも実現することができる。
すなわち、撥水処理材料による被覆層以外に、保護層4を厚く形成して水蒸気の透過に対する抵抗を大きくすることでも圧電組成物感圧体への水の浸透が抑制され軟化を防止できるとともに、圧電セラミックス粉末や不純物の溶出を抑制することができる。あるいは、物理蒸着(スパッタリング、蒸着)や化学蒸着、化学合成処理により水蒸気の分子が通過し難い緻密な膜を被覆層として形成してもよい。物理蒸着や化学蒸着、化学合成処理による緻密な膜は、水蒸気そのものの侵入を抑制することができるので撥水材料の被覆層とは異なり、ケーブル状圧電素子の最外層にも設けても圧電組成物感圧体の軟化を防止できるとともに、圧電セラミックス粉末や不純物の溶出を防止する効果を実現することができる。
ただし、あまり保護層が厚いと、圧電素子の感度が低下するので厳密に設計する必要がある。また緻密な膜はピンホールがあると効果が損なわれるので高い精度で形成する必要がある。
また、第4〜第6の実施の形態のケーブル状圧電素子において、これらの圧電素子の断面が露出するような構成で使用される場合が想定される。その場合、断面に露出する芯電極11と圧電組成感圧体12との境界部から水蒸気が侵入し、芯電極11側に接する圧電組成感圧体12表面で水蒸気が凝縮することが考えられる。このような場合、図15の一部断面図に示すように芯電極11と圧電組成物感圧体12との間に撥水材料による第2の被覆層17を設けることにより、圧電組成物感圧体12への水の浸透を抑制することができるので、圧電組成物感圧体12の軟化や、圧電セラミック粉末5や不純物の水による溶出を防止することが可能である。また、圧電組成感圧体12の切断端面にも撥水材料による第3の被覆層18を形成することが効果的である。なお、図15では第5の実施の形態の構成をベースにしているが、第4、第6実施の形態の構成をベースにする場合も同様である。さらに第1、第2実施の形態のシート型圧電素子の場合でも圧電組成感圧体7の端面をも被覆層で覆うことがさらに好ましい。
なお、本発明の製造方法で作製されたケーブル状の圧電素子は、可撓性を有しかつ形状がケーブル状であるので屈曲した部位を含んだ配設や取り付け幅に制限を有する省スペースの配設に対応可能であり、かつ高温高湿環境下で使用されても初期の電気的特性、圧電特性、機械的強度を維持できるという優れた特性を有している。したがってこのような配設条件や特性が要求される屋外使用の圧力、振動検知用などのセンサとして最も適している。具体的には、特に車のスライドア、ハッチバックドア、トランク、パワーウィンドウなど開閉が伴う機器や部品に設置して挟み込みを検知するセンサや、車のドアハンドルに設置してドアの解錠を制御するタッチセンサが挙げられる。
また、介護用ベッドなどに使用される体動センサは大面積の検知を確保する必要があるが、本発明のケーブル状圧電素子は、ベッドの上に蛇行させて配設することにより大面積の検知を可能とすることができ、さらに、失禁や汗などの多湿環境や衛生保持のための洗濯などの使用状況も考慮すると介護ベッド用の体動センサとしても最適な構成である。
また、屋外でもマンションや戸建てにおけるベランダの手すりや玄関のドアに配置して外部からの侵入を検知するセンサなど感圧センサとして利用することができる。この場合も屋外であるのでケーブル状圧電素子が高温多湿環境に暴露されるが、このような環境下でも安定した圧電特性を維持することができるので誤動作が防止でき、防犯用センサとしても十分使用することができる。
また、本発明の製造方法で作製されたケーブル状の圧電素子は、ベッドの上に蛇行させて配設することにより大面積の検知が可能であり、介護用ベッドの体動センサとしても最適な構成である。
(実施例1)
圧電セラミック粉末として平均粒径が約1μmのチタン酸ビスマス・ナトリウムとチタン酸バリウムの固溶体である(Bi1/2Na1/2)0.85Ba0.15TiO3を用い、下記に述べる撥水材料を用い、圧電セラミック粉末の表面に以下の撥水材料の被覆層を形成し、撥水処理された圧電セラミック粉末を作製した。
撥水材料は、オレイン酸カルシウム(脂肪酸塩)、ポリテトラフルオロエチレン(フッ素系樹脂)、ヘプタデカフルオロデシルトリクロロシラン(シラン化合物)メタクリル酸エステル(アクリル系樹脂)の4種を用い、オレイン酸カルシウムは加熱溶解させた溶液、ポリテトラフルオロエチレンは溶剤メチルエチルケトンで希釈した溶液、ヘプタデカフルオロデシルトリクロロシランは溶媒ヘキサメチルジシロキサンを含む溶液、メタクリル酸エステルは溶剤キシレンで希釈した溶液に圧電セラミック粉末を浸漬処理し、その後乾燥することで撥水材料の被覆層を形成した。
次に、圧電セラミック粉末が約60体積%、塩素化ポリエチレンが約35体積%となるように、4種の撥水処理された圧電セラミック粉末と、可撓性を有する有機高分子として塩素化ポリエチレンと、チタンカップリング剤としてイソプロポキシトリイソステアロイルチタネートをロール機で混練し、圧電組成物感圧体を製造し、ホットプレス機を用いて厚み約0.5mmの圧電組成物感圧体のシートを製造した。
次に、塩素化ポリチレンにカーボンを充填し導電性を付与した厚み0.2mmの導電シートを圧電組成物感圧体のシートの両面に融着し、電極を形成し、圧電性を発現させるために100℃の空気中で電極間に5kV/mmの直流高電圧を印加してポーリング処理を行い、幅20mm、長さ120mmのシート状圧電素子を製造した。
以上のように4種の撥水材料を用いて製造したシート状の圧電素子について、高温高湿槽を用いて85℃、相対湿度85%の条件で高温高湿試験を実施した。また、比較のため、前述の圧電セラミック粉末に撥水材料の被覆層を形成していないシート状の圧電素子も製造し、同様に試験を実施した。
図16は、高温高湿試験を実施した各シート状の圧電素子の電気抵抗の経時変化を示したグラフ、図17は、高温高湿試験を実施した各シート状の圧電素子の静電容量の経時変化を示したグラフである。両図において、電気抵抗、静電容量の変化は初期の電気抵抗値、静電容量に対する変化率で示している。なお、各試験時間経過後の各シート状の圧電素子を取り出し、常温で電気抵抗、静電容量を測定した。また、測定器は日置電機社製LCRハイテスタ3522を用い、1kHzの周波数で測定した。
図16、図17で明らかなように、撥水処理されたシート状の圧電素子は撥水処理をしていないシート状の圧電素子に比べ、電気抵抗の変化、静電容量の変化が小さいことがわかる。また、200時間でも撥水効果を維持していることが確認され、試験時間に対しそれぞれの変化率が飽和傾向にあることから長時間、高温高湿環境下で用いられても撥水効果を維持することができる。これはシート状の圧電素子を構成している圧電組成物感圧体への水の浸透が抑制され、圧電セラミック粉末の成分の溶出が低減していることに起因していると考えられる。
以上のように、特性に差があるが圧電セラミック粉末に撥水材料の被覆層を形成することにより、圧電素子の電気的特性(電気抵抗、静電容量)の変化を抑制し、しかも長期に渡りその効果を持続することができるので電気的特性の安定化と耐久性に優れた圧電素子
を得ることができる。
(実施例2)
撥水材料を被覆した圧電セラミック粉末の撥水効果を調べるため、各種撥水材料の被覆層を実施例1で用いた圧電セラミック粉末に形成した。次に、ガラス板の上に撥水材料が被覆された圧電セラミック粉末の膜を形成し、この膜の上に蒸留水を滴下することによってできた水玉の接触角を測定した。接触角の測定は協和界面科学社製の接触角計CA−DT型を用いた。なお、比較のため、実施例1で用いたチタンカップリング剤で圧電セラミック粉末の表面を処理したものについても接触角を測定している。
測定に用いた撥水材料名と接触角の測定結果を(表1)に示す。
この結果より明らかなように、撥水材料で処理された圧電セラミック粉末は大きな接触角を示すことがわかり、この大きな接触角を有することが圧電素子を構成する圧電組成物感圧体への水の浸透を抑制する効果を発現させると考えられる。
実施例1の結果を参照すると圧電素子の電気的特性の変化を抑制する撥水材料は、特に蒸留水の接触角が125°以上のものが良好であり、さらには150°以上であることがより好ましい。
(実施例3)
実施例1で作製したシート状の圧電素子を実施例1と同条件の高温高湿試験を20時間実施した後、シート状の圧電素子の両端を挟み、引っ張り強度を測定した。引っ張り強度はシート状の圧電素子が2mm伸びる力の値とした。なお、測定器はイマダ社製のデジタルフォースゲージDPS−50を用いた。
その結果を(表2)に示す。
この結果より明らかなように、撥水処理されたシート状の圧電素子の引っ張り強度が高く、圧電組成物感圧体への水の浸透を防止することにより、初期の引っ張り強度の低下を防止することができ、機械的強度に優れた圧電素子を実現することができる。
(実施例4)
圧電セラミック粉末として平均粒径が約1μmのチタン酸ビスマス・ナトリウムとチタン酸バリウムの固溶体である(Bi1/2Na1/2)0.85Ba0.15TiO3と平均粒子系が約1μmのチタン酸鉛とジルコン酸鉛の固溶体であるPb(Zr・Ti)O3を用い、撥水材料としてオレイン酸カルシウム(脂肪酸塩)とヘプタデカフルオロデシルトリクロロシラン(シラン化合物)を用い、実施例1と同様の方法で各圧電セラミック粉末の表面に前述の撥水材料の被覆層を形成し、撥水処理された圧電セラミック粉末を製造した。
次に、撥水処理された圧電セラミック粉末が約60体積%、塩素化ポリエチレンが約35体積%となるように所定量の各撥水処理された圧電セラミック粉末と、可撓性を有する有機高分子として塩素化ポリエチレンと、チタンカップリング剤としてイソプロポキシトリイソステアロイルチタネートとをロール機で混練し、圧電組成物感圧体のシートを作製した後、ペレタイザーでペレットを製造した。
この圧電組成物感圧体のペレットを用い、直径0.45mmの多数のポリエステル繊維の収束線に銅箔を巻回したものを芯電極とし、押出成型機を用いて芯電極の周囲に圧電組
成物感圧体を厚さ約0.6mmとなるように被覆処理した。次に、幅3mm、厚さ12μmのポリエチレンテレフタレ−トの高分子フィルムの両面に幅3mm、厚さ10μmのアルミニウム箔を接着した導電性フィルムを芯電極に被覆した圧電組成物感圧体の表面に導電性フィルムの一部が重なるように巻回して外電極とした。さらに、外電極の周囲に押出成型機を用いてオレフィン系熱可塑性エラストマーを厚さ約0.5mmとなるように保護層を被覆処理し、ケーブル状圧電素子を製造し、圧電性を発現させるために100℃の空気中で芯電極と外電極に5kV/mmの直流電圧を印加してポーリング処理を行った。
以上のように作製した各種のケーブル状圧電素子を有効長さが150mmとなるように調整し、実施例1と同条件の高温高湿試験を20時間実施した。試験後、常温で電気抵抗、静電容量を測定した。測定器は日置電機社製LCRハイテスタ3522を用い、1kHzの周波数で測定した。なお、比較のため、圧電セラミック粉末に撥水材料の被覆層を形成していないケーブル状圧電素子も製造し、同様に試験を実施した。
(表3)に高温高湿試験20時間後の電気抵抗の変化率、表4に高温高湿試験20時間後の静電容量の変化率を示す。
この結果より明らかなように、撥水処理された圧電セラミック粉末を用いたケーブル状圧電素子は電気抵抗の変化、静電容量の変化が小さいことがわかり、形状が異なる圧電素子でもシート状の圧電素子と同様な効果を得ることができた。
ケーブル状圧電素子の電気抵抗は高温高湿環境下で減少する。これは、凝縮した水が圧電組成物感圧体に浸透し、圧電セラミック粉末の成分が浸透した水に溶解することが原因と考えられる。また、電気抵抗の変化は、(Bi1/2Na1/2)0.85Ba0.15TiO3の圧電セラミック粉末を用いたケーブル状圧電素子の方がPb(Zr・Ti)O3の圧電セラミック粉末を用いたケーブル状圧電素子よりも大きい結果と示しているが、これは圧電セラミック粉末に含有するアルカリ成分が水に溶解しやすいことを示している。
一方、初期の両者の固有抵抗は、Pb(Zr・Ti)O3の圧電セラミック粉末を用いたケーブル状圧電素子の方が(Bi1/2Na1/2)0.85Ba0.15TiO3の圧電セラミック粉末を用いたケーブル状圧電素子よりも約2倍高いことから、(Bi1/2Na1/2)0.85Ba0.15TiO3の圧電セラミック粉末を用いたケーブル状圧電素子は固有抵抗が低く、かつ高温高湿環境下でさらに低下することがわかる。ケーブル状圧電素子が長くなると電気抵抗がさらに低下することから、圧電素子に常に一定電圧を印加して圧力を検知する回路構成では感圧センサとして使用することができなくなる可能性があり、アルカリ成分を含む圧電セラミック粉末を用いた長尺のケーブル状圧電素子を高温高湿環境下で使用する場合は、アルカリ成分の溶出を防止するために撥水処理が不可欠といえる。
また、静電容量の変化も(Bi1/2Na1/2)0.85Ba0.15TiO3の圧電セラミック粉末の方がPb(Zr・Ti)O3の圧電セラミック粉末よりも大きい結果と示しているが、これは圧電セラミック粉末に含まれる成分の水に対する吸湿性に差があるものと考えられる。
なお、高温高湿試験を1000時間実施したが、20時間のレベルの電気抵抗、静電容量を維持しており、優れた撥水効果を有することを確認した。
このように、圧電セラミック粉末に撥水材料の被覆層を形成することにより、ケーブル状圧電素子の電気抵抗、静電容量ともに変化を少なくすることができるが、この現象は圧電組成物感圧体の硬さが変化していないことから、撥水材料で被覆した圧電セラミック粉末によって圧電組成物感圧体の撥水性が高くなり、凝縮した水を圧電組成物感圧体が吸収しないことに起因していると考えられる。また、実施例2で説明した撥水処理されたシート状の圧電素子の引っ張り強度が撥水処理していないシート状の圧電素子のそれよりも高くなっていることから、圧電セラミック粉末に撥水材料の被覆層を形成して造られた圧電組成物感圧体は凝縮した水の吸収が抑制されるので軟化が防止され、初期の硬さを維持していると判断することができ、上記考察が正しいことを示している。
(実施例5)
実施例4で試験したケーブル状圧電素子について、圧電特性を評価した。圧電特性はケーブル状圧電素子の中央部に一定の荷重を印加した状態で一定の周波数で荷重を変化させながら加振させ、そのときに発生する電圧と荷重の関係から算出した電荷発生量で評価した。
(表5)に高温高湿試験20時間後の電荷発生量の変化率を示す。
この結果より明らかなように、撥水処理されたケーブル状圧電素子の電荷発生量の変化が小さく、高温高湿環境下でも安定した圧電特性を得ることができた。圧電特性は圧電組成物感圧体の弾性率によって変化する。すなわち、圧電組成物感圧体が水を吸収して軟化すれば弾性率は低くなり、圧電特性は高くなる傾向となる。(表5)の撥水処理無しのケーブル状圧電素子において、電荷発生量の変化が高くなっている理由は、ケーブル状圧電素子を構成する圧電組成物感圧体が水を吸収し、軟化することによって弾性が低下し、その結果、電荷発生量が高くなったことにある。一方、撥水処理されたケーブル状圧電素子の電荷発生量は変化が少なく、圧電組成物感圧体に水が吸収されていないことを示している。
(実施例6)
ケーブル状圧電素子の各部位に撥水材料の被覆層を形成したときの撥水効果について評価した。
撥水材料としてオレイン酸カルシウム、圧電セラミック粉末として(Bi1/2Na1/2)0.85Ba0.15TiO3を用い、実施例4のケーブル状圧電素子の製法と同様に圧電素子を製造した。
撥水性の効果は、作製した圧電素子を実施例1と同条件で高温高湿試験を20時間実施し、そのときの電気抵抗の変化で評価した。また、比較のため、前述の圧電セラミック粉末に撥水材料の被覆層を形成していない圧電素子、外電極の周囲にオレフィン系熱可塑性エラストマーの保護層の表面に撥水材料の被覆層を形成した圧電素子についても、同様に評価した。測定器は日置電機社製LCRハイテスタ3522を用い、1kHzの周波数で測定した。
(表6)に高温高湿試験20時間後の電気抵抗の変化率を示す。
この結果より明らかなように、外電極の周囲にオレフィン系熱可塑性エラストマーの保護層の表面に撥水材料の被覆層を形成した圧電素子以外は撥水処理を施した圧電素子の電気抵抗の低下が抑制されており、良好な結果を得た。
外電極の周囲にオレフィン系熱可塑性エラストマーの保護層の表面に撥水材料の被覆層を形成した圧電素子は、撥水処理されていない圧電素子と同等の電気抵抗の変化率を示しており、撥水処理の効果がないことがわかる。
これは、水蒸気が撥水材料の被覆層、保護層を通過することを示しており、圧電素子の内部で拡散した水蒸気が温度勾配や過飽和状態で凝縮し水が生成しないと撥水材料による撥水効果は発揮できないと考えられる。したがって、撥水材料の被覆層は、圧電素子の内部に設ける必要がある。
なお、第2の実施の形態で説明したケーブル状圧電センサの構造において、保護層を設けない場合、高温高湿試験における結果は、上記の保護層の上に撥水材料の被覆層を設けた場合と大差がない。この場合も水蒸気は撥水材料の被覆層を通過し、圧電素子の内部に拡散し、水が生成することによって特性が低下する。したがって、外電極を覆うように撥水材料の被覆層を設ける場合、圧電素子内に浸入した水蒸気が凝縮する場としての保護層が必要であり、撥水材料の被覆層は圧電素子の最外層より内側に設ける必要がある。
(実施例7)
ケーブル状圧電素子において、比誘電率の異なる圧電セラミック粉末を用い、電圧出力定数を評価した。
比誘電率の異なる圧電セラミック粉末として、Pb(Zr・Ti)O3、(Bi1/2Na1/2)0.85Ba0.15TiO3、NaNbO3、を用い、圧電セラミック粉末が約60体積%、塩素化ポリエチレンが約35体積%となるように実施例4のケーブル状圧電素子の製造法と同様に圧電素子を製造した。次に、製造した圧電素子に圧電性を発現させるために100℃の空気中で芯電極と外電極に5kV/mmの直流電圧を印加し、ポーリング処理を行った。
以上にように製造したケーブル状圧電素子を有効長さが150mmとなるように調整し
、電圧出力定数を評価した。測定器はPiezotest社製のPiezometerを用いて測定した。
(表7)にPb(Zr・Ti)O3を用いたケーブル状圧電素子の電圧出力係数を基準とした時の他の圧電セラミック粉末を用いたケーブル状圧電素子の電圧出力定数の比率を示す。
この結果から明らかなように、圧電セラミック粉末の比誘電率が低いほど電圧出力定数が高くなっており、圧電セラミック粉末の比誘電率が小さいほど大きな電圧が印加され、ポーリングの効率が向上することがわかる。
したがって、比誘電率の低いセラミック粉末を用いることにより、圧電素子の電圧出力定数、すなわち感圧センサとしての感度を向上させることができる。