JP2011070621A - 凶器類判別装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】刃物類等の凶器類等を隠し持った人が接近したことを察知することができる凶器類判別装置を提供する。
【解決手段】判別装置KSは、鉄類からなる金属類が凶器類に該当するか否かを判別することができる。判別装置KSは、金属類が形成する残留磁化をピコテスラオーダーの検出分解能で検出できるMIセンサSSを備えている。判別装置KSの制御装置CPは、MIセンサSSが検出した残留磁化による磁場分布を判別することで、凶器類になりえるか否かを推定することができる。制御装置CPはこの推定結果を報知することができる。
【選択図】図1

Description

本発明は、例えば鉄類からなる工具、刃物、銃器等が凶器になるか否かを判別できる凶器類判別装置に関するものである。
刃物類等の凶器を持った犯罪者から予期せぬ攻撃を受け、犯罪被害者になることは誰しも避けたい。しかし、そのような予期せぬ犯罪被害が不幸にも発生することは、厳然たる事実である。
従って、凶器類等を隠し持った者から、身体を守るための技術開発は社会的に要請され、特に、警備関係の現場担当者から強い要請がある。平成20年度犯罪白書によれば、犯罪被害者4万弱のうち、死亡者が千数百人であり、重傷者が3千人弱であるが、犯罪事件の発生件数を減らし、死亡者数及び重傷者数等を減らせることができれば、社会的に大きな効果がある。
従来、刃物、銃器等の凶器類等の検出は、ハイジャック防止のため空港などで行われており、空港には例えば磁気センサを用いた金属探知機が設置されている。その金属探知機は、被検査者がゲート型検出部を通り抜ける際に検出するものであり、カバン等に隠し持つ凶器などの金属を発見できる(特許文献1参照)。しかし、空港の金属探知機の場合、硬貨、コイン、鍵、ズボンのベルト等の凶器以外の金属まで探知するため、被検査者はベルト等をわざわざ外してゲート型検出部を通り抜ける必要がある。このような金属探知は、被検査者に大きな負担を与えるとともに、被検査者を管理する警備関係者の負担も大きい。また、携帯型金属探知機の場合、関係者がハンドルを持ってカバン、ポケット等に探知部を近づけて金属探知を行うが、探知作業に協力を要請するものであり、被検査者に不快感を与える虞がある。
特開2004−117227号公報
空港等に設置される金属探知器は、凶器類等を含めた金属を検出することが可能であるが、その金属探知器は大型かつ設置式であり、また、コイン等の凶器以外にも反応するので、凶器判別装置としては不適切である。また、携帯型金属探知機は、外観から容易に識別でき、刃物類等の凶器を隠し持った犯罪者は、金属探知機より探知されないように工夫するため、凶器判別装置としては機能しにくい。また、刃物、銃器等は使用目的が正しければ犯罪の道具にならないが、不法な加害行為を行う意思を持って使用する場合に凶器になる。従って、一般の金属探知器は、刃物類等の金属を検出しても、凶器を隠し持って犯罪行為を行う意図まで判別できないため、犯罪防止の観点から更なる工夫が必要である。
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、刃物類等の凶器を隠し持った人が接近するのを、犯罪防止の観点から察知することを可能とする凶器類判別装置(以下単に、判別装置という)を提供することを目的とする。
かかる目的を達成するため、本発明によれば、鉄類からなる金属類が凶器類に該当するか否かを判別する判別装置であって、前記金属類によって形成される残留磁化をピコテスラオーダーの検出分解能で検出できる磁気検出部と、前記金属類から前記磁気検出部がある距離だけ離れた検出位置において、前記磁気検出部が検出した残留磁化による磁場分布を判別することで、前記凶器類になりえるか否かを推定する凶器類推定手段(以下単に、推定手段という)と、この推定手段の推定結果を報知する報知手段とを設けたことを特徴とする。
この判別装置の場合、推定手段はピコテスラオーダーの検出分解能の磁気検出部が検出した残留磁化による磁場分布を判別することで、金属類が凶器類になりえるか否かを推定する。金属類を隠し持った人が接近した場合、金属類が凶器類になりえるか否かを推定し、凶器類になりえると推定した場合、報知手段はその旨を報知する。一方、金属類であっても凶器類になりえないと推定した場合はその旨を報知する。報知を受けた者は凶器を隠し持った人が接近するのを、事前に察知することができるので、その者からの攻撃に対し防御することが可能になる。
ここで、鉄類は、磁化される金属(強磁性体)を示唆し、強磁性体には、Fe、Ni、Co等の金属が含まれる。判別装置は、金属類が凶器類に該当するか否かを判別するものであるが、推定手段は、例えば金属類の形状(鋭さ)または大きさに起因する残留磁化による磁場分布に基づき、凶器類になりえるか否かの推定を行う。特に、金属類の残留磁化による磁場分布を測定し、磁場分布の計測結果から、磁性体に生ずる磁極の分布を求める手法により、金属類の長さや形状(鋭さ)を推定し、凶器類になるか否かの判別を行うのがよい。大型の工具等が凶器類と推定され、更に中型ペンチ、小型はさみ等が凶器類と推定されることがある。一方、小型スパナが凶器類と推定されないことがある。一般に非磁性や弱磁性の金属類は凶器類と推定されない可能性が高い。刃物類等の凶器を持っているか否かの判断の信頼性を高めるため、磁気検出部からの検出信号を、時間間隔を開けて複数回確認して、凶器類になりえるか否かを推定するのが望ましい。また、磁気検出部がポール・支柱等の立設物(望ましくは立設物の内側または裏側)に装着されている場合、凶器を隠し持った人に察知されずに、立設物の磁気検出部を使用して容易に凶器類を検出することができる。また、凶器類推定手段は、例えばジュラルミンケース等の収納物内に収納した金属類が、凶器類になりえるか否かを収納物外から推定できるように構成できる場合、収納物内の金属類が凶器類か否か容易に判別することができる。
本発明によれば、凶器類を持っている者か否かを容易に判別でき、凶器類に持っている者と判別された場合、その旨が報知されるので、犯罪防止の観点から、その者が接近することが容易に察知することができる。その結果、凶器類を持った者からの攻撃に対し防御することが可能になって、犯罪の発生を防止したり、犯罪被害の程度を軽減できる。本発明により、犯罪事件の発生件数を減らし、死亡者数及び傷害者を減らせることができれば、社会的にも大きな効果があり、大きな社会貢献となる。
本発明に係る判別装置の実施例を示す図である。 判別装置が備える磁気検出部の回路図である。 磁気検出部により検出された結果を示す図である。 磁気検出部の検出結果を説明するための図である。 図3と同様に実験結果を示す図である。 図3と同様に実験結果を示す図である。 図3と同様に実験結果を示す図である。 判別装置の他の実施例を示す図である。
以下、本発明を具体化した最良の形態について詳細に説明する。鉄類からなる金属類が凶器類に該当するか否かを判別する判別装置は、金属類によって形成される残留磁化をピコテスラオーダーの検出分解能で検出できるMIセンサと、金属類から前記MIセンサがある距離だけ離れた検出位置において、MIセンサが検出した残留磁化による磁場分布を判別することで、凶器類になりえるか否かを推定する凶器類推定手段と、この凶器類推定手段の推定結果を報知する報知手段を有する。本発明は、アモルファスワイヤを備える高感度のマイクロ磁気センサ(以下単にMIセンサという)を制御するセンサ回路の改良により、低周波数領域(1〜20Hz)における、検出分解能がピコテスラオーダーの磁気センサの開発に成功したことに起因する。この感度は、現在の最高感度であると言われるSQUID型磁気センサに匹敵するものである。SQUID型磁気センサは、液体窒素を収納する設備等が必要なため、小型化が困難であった。それに対し、MIセンサの場合は、液体窒素を収納する設備等が不要なため、判別装置を小型化できる。
検出分解能がピコテスラオーダーのMIセンサを用いて、刃物や工具類の金属類を検出したところ、以下に記述する予想を上回る実験結果が得られた。一般の刃物や工具類は、炭素鋼またはマルテンサイト系ステンレスを焼き入れしたものを使用する。焼き入れ鋼は磁性(残留磁化)を有するので、MIセンサはこれらの工具等を検出できると予想して実験した。その結果、例えば30cm長の工具について、工具から1mの検出距離だけ離れたところで検出できることが分かった。この結果、通常の金属探知機の検出距離20cmに比べ5倍も長い検出距離となった。従って、検出距離が20cmの金属探知であれば、凶器類判別装置に向かない状況でも、本発明に係るMIセンサは、凶器類判別技術に利用できる特長(特長1)を有することが分かった。また、通常の金属探知機は、金属に流して電流を検出するタイプであり、交流の磁気を加えたときに金属以外では電流が流れない。そのため、通常の金属探知機は金属と非金属を容易に区別できる特性を有するが、対象物に交流磁場を与える設備が必要である。それに対し、このMIセンサの場合、対象物に交流磁場を与える設備が不要なため、判別装置を小型に構成することができる(特長2)。更に他の特長として、このMIセンサの場合、鍵や小銭など、凶器にならない非磁性や弱磁性の金属に対し反応しない特性を有する(特長3)が、この特性も凶器類判別技術としては相応しい特性である。また、検査対象の磁性体の端部に生ずる磁極は形状異方性によりその分布が異なり、磁場分布の計測から検査対象の形状の情報が得られる可能性がある(特長4)。また、上記特長1、2を利用した凶器等判別装置の最大の利点として、判別装置を小型化できるので、外部の者から容易に隠蔽できるという長所がある。そのため判別装置は、凶器類を隠し持った人が接近するのを事前に察知することが可能となる。例えばドアの外側にポールを立て、ポールの裏面また内側にMIセンサを装着した場合、判別装置は入口を接近した人が凶器を隠し持っているか否かを容易に判別することができる。
なお、刃物または工具類は、炭素鋼またはマルテンサイトステンレスを焼き入れして形成した場合磁性を有するので、MIセンサでもって検出できる。マルテンサイト系ステンレスは、一般の鋼と同様の熱処理(焼入れ・焼戻し)により高強度、高硬度などの優れた機械的特性を有し、常温でも磁性を有している。また、炭素鋼は焼き入れすると磁石になることが分かっており、鋼の硬さと磁石の強さ(保磁力)は、カーボン含有量が多いほど大きくなるという性質をもつ。鉄製の金属のうち凶器類に該当するものとして、硬度が高くサイズの大きい工具がある。
鉄製の工具、刃物、銃器等が凶器類になるか否かを判別する判別装置は、鉄製の凶器類の残留磁化による磁場分布を測定している。この磁場分布を測定は、MIセンサの計測結果から、磁性体に生ずる磁極の分布範囲を求める手法であり、凶器類の大きさから推定し、凶器類になりえるか否かを判別できる。
なお、残留磁化を検出して磁極の分布範囲を求める場合、例えば、凶器類により形成される磁場と、携帯電話内などに含まれる強い磁石により形成される磁場との判別が困難であると予想していた。しかし、携帯電話内の磁石の大きさは、凶器類等に比べて著しく小さく、小さな磁石から離れた位置の磁場を計測する場合、磁石に生ずる正と負の磁極の影響を相殺して、計測地点での磁場は非常に小さくなった。実測結果によると、検出距離が50cmの場合、20cm長の工具(炭素鋼)により形成される磁場の方が、携帯電話内の磁石が形成する磁場の4倍程度の強度があることが確認できた。そして、携帯電話内の磁石からの磁場の強度が、凶器類からの磁場の強度に比べて小さくなる検出距離の条件を設定して、鉄製の凶器類からの磁場分布を優先的に計測できる場合、凶器類の大きさや形状を高精度に推定できると考える。このような形状推定による凶器等の判定技術が確立すれば、凶器になりにくい鉄製の部品や器具を凶器として誤判定する確率は低下する。
以下本発明に係る判別装置の実施例を、図1を参照して説明する。図1において、判別装置KSは、自動開閉ドア(以下単にドアという)ATの入口側に設置している。ドアATの上方側には、人物検出用の赤外線センサASが設置されている。ドアATの斜め上方には、状況監視用の防犯カメラKAが設置されている。ドアATの外側左右には、左右のポールPAが設置され、左右のポールPAには、高感度の磁気検出部としてのMIセンサSSが其々装着されている。この場合、MIセンサSSは、ドアATに向かって外より近づく者から見えにくい、隠れた位置に配置されているので、入口の外側から察知されにくいという長所がある。
各MIセンサSSは、メモリ、CPU等を内蔵した判別装置KSの制御装置CPに接続されている。判別装置KSの制御装置CPは、MIセンサSSが検出した残留磁化の磁場分布を判別することで、金属類が凶器類になりえるか否かを推定するので、凶器類推定手段として機能する。さらに制御装置CPは、その推定結果をドアATの制御装置(図示せず)に報知するので、不審者情報を報知する報知手段として機能する。
このような構成の場合、ドアATが閉まった状況下で、ドアATに人が近づき赤外線センサASが検出した段階で、判別装置KSは、MIセンサSSの検出結果に基づき、その人が刃物類等の凶器類を持っているか否かを判別できる。そして、制御装置CPはその人物が凶器類を持っていないと判別した場合、ドアATの制御装置(図示しない)にその旨を報知するので、ドアATの制御装置はドアATを開放する(閉じた状態を維持しない)。一方、制御装置CPは、凶器類を持っていると判別した場合は、ドアATの制御装置にその旨を報知するので、ドアATの制御装置は、ドアATを閉じた状態を維持する。その後、ドアATの監視員は、防犯カメラKAで確認してドアATを開放するか否かを判断する。監視員がドアATを開放しても良いと判断した場合、監視員の指令で、ドアATを開放する。なお、監視員が、その人物の危険度が高いと判断した場合、ドアATを閉じた状態に維持できる。その結果、その人物がドアATを通って店内に入るのを防止できるので、店内で犯罪が発生するのを未然に防止できる。
なお、MIセンサSSはその検出距離が長いので、1対のポールPAを立てる場合、1対のポールPAの間隔を広くとれる。すなわち、このMIセンサSSは広い範囲を検出できるので、設置するポールPAの設置本数は少なくてすみ、経済的な効率は高いといえる。このようなポールPAは必ずしも据え置き設置型である必要はなく、例えばイベント会場等に来場する要人等の警護のため、一時的なスタンディングポールとして設置してもよい。また、小学校等の学校の玄関や、商店の入口等に、MIセンサSSを装着したポールPAを設置し、凶器を持った人物の侵入の有無を確認して、安全管理を行うようにしても良い。この判別装置KSは、凶器を持った者が侵入するのを防止でき、例えば深夜営業を行う商店の安全管理に有効である。
なお、凶器を持っているか否かの判断の信頼性を高めるため、制御装置CPは、メモリ及びタイマー等を装備し、MIセンサSSからの検出信号(検出信号が凶器類である旨を示す信号)を時間間隔あけて複数回(例えば2、3回)確認した場合、制御装置CPがドアATの制御装置にその旨を報知してもよい。更に、その判断の信頼性を高めるため、制御装置CPは左右のポールPAのMIセンサSSの双方の検出信号(例えば双方の検出信号が凶器類である旨を示す信号)を確認した場合、制御装置CPはドアATの制御装置にその旨を報知してもよい。
このような自動ドアATのポールPA内にMIセンサSSを設置する判別装置KSによれば、犯罪者が侵入するのを阻止できる一方で、一般の利用者の利便性が保たれる。また、防犯カメラKAは、事件等があった場合に警察等の捜査に役立たせるための、また犯人特定手段の一つであるが、監視員が四六時中カメラを通して監視しているわけではないので、監視漏れをなくすには、長時間通して録画することが必要である。しかし、防犯カメラKAが長時間録画を行うには、ある程度、画質を落とす必要がある。そこで、MIセンサSSでもって、不審者の凶器の所持を判別できれば、防犯カメラKAの制御装置はその人物についての映像のみ高画質で録画することも可能となる。この判別装置KSは、犯罪を抑止し社会の安全を確保するといった大きな社会貢献を果たすものと考える。
図2はMIセンサSSに内部に設けられた磁気ヘッドHDおよびセンサ回路S1の構成を示す。磁気ヘッドHDはアモルファス磁性金属線JK(以下単に金属線JKという)と、その金属線JKにパルス電流を通電し、高周波磁界を印加する高周波磁界の印加部分と、金属線JKにパルス電流を通電したときその金属線JKのインピーダンスを検出するためその金属線JKに巻回されたピックアップコイルJLを備える磁気検出部分とからなる。また、センサ回路S1は、発信器B1から出力されるクロック信号に基づいて金属線JKにパルス電流を付与するアンプA1と、金属線JKに巻回されているピックアップコイルJLに誘導される電圧信号を発振回路に同期して保持するサンプルホールド回路SHと、サンプルホールド回路SHから出力される電圧信号と基準電圧を比較し出力する差動増幅器A2を備えている。以上、磁気ヘッドHD及びセンサ回路S1は、前記磁気検出部分の磁界によるインピーダンスの変化を直流電圧に変換して出力することが可能となるので、高感度MIセンサとして構成される。上記金属線JKはたとえば520℃で2秒アニールを施した1cm長のアモルファスワイヤであり、ピックアップコイルJLはたとえば巻き数が600ターンのソレノイドである。なお、磁気ヘッドHDおよびセンサ回路S1を一対備えた場合、環境磁場を相殺するように構成するのが良い。
次に、MIセンサSSの検出結果の波形について図3を参照して説明する。図3はMIセンサSSの検出結果の波形例(2本の波形線)を示す(検出距離は1mであり、1m離れた位置で検出する)。1本の波形線では金属類を持たない人がMIセンサSSにより検出された際には、検出結果の波形例において磁場は大きく変動しない。それに対し、別の波形線では、30cm長の大型のスパナをもった人が、MIセンサSSにより検出された際に、検出結果の波形例において磁場が大きく変動した箇所が一部にあった。それにより、MIセンサSSの検出結果の波形線に、磁場が大きく変動した箇所があるときは、制御装置CPはその人物が凶器類となりえる金属類(30cm長のスパナ)を持っていると判別した。この場合、制御装置CPが、MIセンサSSが検出した残留磁化による磁場分布を判別することで、金属類が凶器類になりえるか否かを推定する。そして、大型のスパナが凶器類になりえると推定している。なお、MIセンサSSと金属類との間の距離が同じである場合、MIセンサSSの検出結果の波形線が分かれば、金属類の大きさが大体分かることになる。即ち波形におけるPEAK−PEAKの距離が長くなることに比例して、検出される金属類の長さも長くなる。金属類の長さが長い場合は、金属類のサイズが大きくなって危険度が高いので、凶器類と判別される。
次に、磁場の強さが、MIセンサSSと測定対象物との間の検出距離との関係で、磁場がどのように変化するかについて、ダイポールモデルとモノポールモデルを用いて、図4を参照して説明する。図4は、ダイポールモデルの減衰の波形例と、モノポールモデルの減衰の波形例を示す。図4によれば、ダイポールモデルの場合は、MIセンサSSと測定対象物との間の検出距離が短い場合、磁場の強さはモノポールモデルに比べて大きいが、磁場の強さは検出距離の3乗に減衰する。一方、モノポールモデルの場合、MIセンサSSと測定対象物との間の検出距離が短い場合、磁場の強さはダイポールモデルの場合に比べて小さいが、磁場の強さは検出距離の2乗に減衰している。小さい磁石の場合、ダイポールモデルになって、検出距離が離れた際に3乗に減衰して離れたところでは磁場は小さくなる。それに対し、尖った刃物等の場合はその部分の残留磁化が影響し、モノポールモデルになって、磁場の強さと検出距離の関係が2乗に減衰する。そして、モノポールモデルは検出距離の離れたところではダイポールモデルに比較して磁場は大きくなる。従って、検出対象物がダイポールモデルかモノポールモデルかのいずれかによって磁場の減衰程度が異なり、離れたところで磁場の減衰値が異なってくることが分かる。なお、磁性体は理論的にはかならず同じ量の正負の磁極を生じるため、正確にはモノポールにはならないが、端がとがっている部分に特に強い磁極が生ずるので、見掛け上はモノポールにみえ、モノポールモデルが適用される。
次に、MIセンサSSの検出結果の波形につき図5を参照して説明する。この場合、MIセンサSSが検出した残留磁化による磁場分布を制御装置CPが判別することで、制御装置CPは検出した金属類が凶器類になりえるか否かを推定する。図5はMIセンサSSの検出結果の波形例を示す(MIセンサSSと検査対象物との間の検出距離は50cmであり、50cm離れた位置において検出する)。図5(a)は、30cm長の大型のスパナを持った人が、MIセンサSSにより検出された例を示す。この場合、MIセンサSSの検出結果の波形線において、磁場が大きく変動した箇所があり、その人物は凶器類となりえる金属類(この場合30cm長のスパナ)を持っていると判別された。図5(b)は、10cm長の小型のはさみを持った人が、MIセンサSSにより検出された例を示す。この場合、MIセンサSSの検出結果の波形線において、磁場が中程度に変動した箇所があったので、凶器類となりえる金属類(10cm長の小型はさみ)を持っていると判別された。図5(c)は、20cm長の中型ドライバーを持った人が、MIセンサSSにより検出された例を示す。この場合、MIセンサSSの検出結果の波形線において、磁場が中程度に変動した箇所があったので、凶器類となりえる金属類(20cm長の中型ドライバー)を持っていると判別された。図5(d)は、中型のはさみをジュラルミンケース(即ち、アルミニウム合金性の収納物)に入れて持った人が、MIセンサSSにより検出された例を示す。この場合、MIセンサSSの検出結果の波形線において、磁場が大きく変動した箇所があったので、ジュラルミンケースの影響を受けずに、凶器類となりえる金属類(中型はさみ)を持っていると判別された。図5(e)は、ジュラルミンケース(即ち、アルミニウム合金性の収納物)に、金属類を入れないケースを持った人が、MIセンサSSにより検出された例を示す。この場合、ジュラルミンケースを持っていても磁場が大きく変動した箇所がないので、凶器類となりえる金属類を持っていないと判別された。ここで、図5(d)、図5(e)のMIセンサSSの検出結果の波形線の対比において、中型はさみをジュラルミンケースに入れた場合でも、磁場が大きく変動したことは特筆すべき事項である。これは超低周波の磁場は、ジュラルミンケース(アルミニウム合金の収納物)を通過するからである。ジュラルミンケースに鉄製の凶器を隠蔽しても、MIセンサSSが、鉄製の凶器からの信号を検出できることは、電波・光を使った技術との大きな相違を示すものといえる。この結果、ジュラルミンケース等の収納物内に収納された金属類が、凶器類になりえるか否かをジュラルミンケース外から判別できることが分かる。このような判別装置KSは、アルミ製ケース等に凶器類を隠し持つ者を検出する関係者にとって入手したいものとなる。
図6は、図5と同様な検出結果の波形例を示す(検出距離は50cmである)。この場合も、MIセンサSSが検出した残留磁化による磁場分布を制御装置CPが判別することで、制御装置CPは金属類が凶器類になりえるか否かを推定することができる。図6(a)は、金属類をなにも持たない人が、MIセンサSSにより検出された例を示す。この場合、磁場が変動した箇所がないので、その人物は凶器類となりえる金属類を持っていないと判別された。図6(b)は、10cm長の小型スパナを持った人が、MIセンサSSより検出された例を示す。この場合、磁場が変動した箇所がないので、その人物は凶器類となりえる金属類を持っていないと判別された。図6(c)は、20cm長の中型ペンチを持った人が、MIセンサSSより検出された例を示す。この場合、MIセンサSSの検出結果の波形線において、磁場が中程度に変動した箇所があったので、その人物は凶器類となりえる金属類(この場合20cm長の中型ペンチ)を持っていると判別された。図6(d)は、20cm長のカッタナイフを持った人が、MIセンサSSより検出された例を示す。この場合、MIセンサSSの検出結果の波形線において、磁場が中程度に変動した箇所があったので、その人物は凶器類となりえる金属類(この場合20cm長のカッタナイフ)を持っていると判別された。図7は図5と同様な検出結果の波形例を示す(検出距離は50cmである)。図7(a)は、10cm長の小型ニッパーを持った人が、MIセンサSSより検出された例を示す。この場合、MIセンサSSの検出結果の波形線において、磁場が中程度に変動した箇所があったので、その人物は凶器類となりえる金属類(10cm長の小型ニッパー)を持っていると判別された。図7(b)は、小銭入れの財布を持った人が、MIセンサSSより検出された例を示す。この場合磁場が変動した箇所がないので、その人物は凶器類となりえる金属類を持っていないと判別された。図7(c)は、鍵束を持った人が、MIセンサSSより検出された例を示す。この場合、磁場が変動した箇所がないので、その人物は凶器類となりえる金属類を持っていないと判別された。図7(d)は、ホチキスを持った人が、MIセンサSSより検出された例を示す。この場合磁場が変動した箇所がないので、その人は凶器類となりえる金属類を持っていないと判別された。
以上、図5乃至図7において、財布、鍵束、ホチキス、ジュラルミンケースを持った人がMIセンサSSにより検出された場合、その人は凶器類となりえる金属類を持っていないと判別された。従って、判別装置KSは、鍵や小銭など凶器にならない非磁性や弱磁性の金属には反応しなく、妥当な性能を有している。また、小型のスパナを持った人がMIセンサSSに近づいた場合、その人は凶器類となりえる金属類を持っていないと判別された。それに対し、大型スパナ、小型のはさみ、中型ドライバー、中型はさみ、小型ニッパー、中型ペンチ、カッタナイフを持った人がMIセンサSSに近づいた場合、その人は凶器類となりえる金属類を持っていると判別された。はさみは、尖った形状があり、小型・中型に関わらず凶器類になると判別されたと考える。また、ドライバーは、はさみ同様に尖った形状があり、中型であっても凶器類になると判別されたと考える。工具の場合、その大きさのみに限定されずに、形状を含めて凶器類になるか否か判断される。従って、金属類の形状または大きさに起因する残留磁化による磁場分布に基づき、金属類が凶器類になりえるか否か推定されることは大きな意義があると考える。
以上の実施例によれば、SQUID型磁気センサに匹敵する超高感度で小型のMIセンサSSを利用した鉄製の工具、刃物等の凶器類等の判別装置は、鉄製の工具、刃物等の凶器類等を隠し持った人の接近を察知することができる。この場合、鉄製の工具・刃物等から生ずる磁場分布の測定結果により、制御装置CPが鉄製の工具・刃物等の磁極分布に基づき、高精度に凶器類になりえるか否かを推定できる。鉄製の工具・刃物等に生じる磁極分布は、主にそのものの形状に依存している(形状異方性に依存している)と推察される。そして、鉄製の工具・刃物の材質が、鉄製の工具・刃物に生じる磁極分布に与える影響について把握することができると考える。それにより、鉄製の工具・刃物等に生じる磁極分布の推定結果から、刃物等の長さや形状、材質を判別することも可能となる。形状の推定による凶器等の判定ができれば、凶器になりにくい鉄製の部品や器具を凶器として誤判定することを回避できる。また、銃刀法では、業務その他正当な理由なく、刃体の長さが、6cmをこえる刃物の携帯は禁止されているため、刃体の長さや形状を判別することは、実用性のニーズがあると考えられる。
次に他の実施例について説明する。図8は他の実施例を示す概念図である。この実施例では、残留磁化をピコテスラオーダーの検出分解能で検出できるMIセンサを含んだ凶器類判別装置が携帯可能できるように構成されている。このような携帯可能な凶器類判別装置の所持する人物は、凶器類を隠し持った人物を接近したことを事前に察知することができるので、凶器類等を隠し持った者からの攻撃があった場合でも回避とか防御とかすることができる。
さらに、小型の凶器類判別装置に、更にメモリ及び送信機等を装備し、市街の多くの支柱に配備する場合、例えば凶器類を持った者の位置を検出して通信することができる。本発明は、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良等を加えた態様において実施され得るものであり、その実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、本発明の範囲内に含まれることは言うまでもない。
本発明によれば、例えば刃物類等の凶器類等を隠し持った人が接近したことを事前に察知することができ、その者から攻撃があった場合でも、それに対し防御することができる。その結果、犯罪の発生を防止したり、抑止することができるので、凶器類判別装置に対する社会的な需要の要請が高まると考える。それにより、凶器類判別装置の需要も増大し、産業の発展に寄与すると考える。
SS・・高感度マイクロ磁気センサ・MIセンサ(磁気検出部)、KS・・判別装置(凶器類判別装置)、CP・・制御装置(凶器類推定手段・報知手段)、AT・・自動開閉ドア、KA・・防犯カメラ、PA・・ポール(立設物)

Claims (6)

  1. 鉄類からなる金属類が凶器類に該当するか否かを判別する凶器類判別装置にあって、
    前記金属類によって形成される残留磁化を、ピコテスラオーダーの検出分解能で検出できる磁気検出部と、
    前記金属類から前記磁気検出部がある距離だけ離れた検出位置において、前記磁気検出部が検出した残留磁化による磁場分布を判別することで、前記凶器類になりえるか否かを推定する凶器類推定手段と、
    この凶器類推定手段の推定結果を報知する報知手段とを設けたことを特徴とする凶器類判別装置。
  2. 前記凶器類推定手段は、前記金属類の形状または大きさに起因する残留磁化による磁場分布に基づき、凶器類になりえるか否かを推定することを特徴とする請求項1記載の凶器類判別装置。
  3. 前記凶器類推定手段は、大型の工具等を凶器類と推定する一方、非磁性や弱磁性の金属類を凶器類と推定しないように構成されていることを特徴とする請求項1または2記載の凶器類判別装置。
  4. 前記凶器類推定手段は、前記磁気検出部からの検出結果を、時間間隔を開けて複数回検出して凶器類になりえるか否かの推定を行うように構成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一に記載の凶器類判別装置。
  5. 前記磁気検出部は、ポール・支柱等の立設物に装着されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一に記載の凶器類判別装置。
  6. 前記凶器類推定手段は、アルミニウム合金性の収納物内に入れられた鉄類からなる金属類が、凶器類になりえるか否かを収納物外から判別できるように構成されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一に記載の凶器類判別装置。
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