JP2011066211A - 物体吊下げ装置 - Google Patents

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【課題】除振対象である吊下げ対象物のアライメントが当初からずれても、そのずれを解消できる物体吊下げ装置を提供することを目的とする。
【解決手段】一端側が鏡筒フレーム31に繋がれ、他端側が連結位置で投影光学系鏡筒30に繋がれる3本のワイヤ32と、3本のワイヤ32の各々の連結位置を、投影光学系鏡筒30に対して、水平方向と鉛直方向に独立して変位させるアライメント調整機構33と、を備える。このアライメント調整機構33は、3本のワイヤ32の各々の連結位置を、投影光学系鏡筒30に対して、水平方向に変位させる水平方向調整部50と、鉛直方向に変位させる鉛直方向調整部60と、を備える。そして、水平方向調整部50が連結位置を水平方向に変位させるのに伴って鉛直方向調整部60が水平方向に変位し、鉛直方向調整部60が連結位置を鉛直方向に変位させるのに伴って水平方向調整部50が鉛直方向に変位する。
【選択図】図3

Description

本発明は、可撓性のある吊材で物体を吊り下げる装置に関する。
半導体素子、液晶表示素子等を製造する過程のリソグラフィ工程で用いられる露光装置は、マスクを支持するマスクステージと、マスク上に形成されたパターンを投影する投影光学系と、基板を支持する基板ステージとを主たる構成要素としている。
露光装置に設けられる投影光学系をフレーム部材に吊り下げることにより投影光学系の除振を図る吊下げ装置が知られている。投影光学系を吊り下げる吊材としてしは、可撓性のあるワイヤ(特許文献1)、チェーン、ロッドなどが採用されている。この吊下げ装置は、フレームが載る床面からの振動を露光装置に伝達しないための除振装置として機能する。
露光装置においては、電気信号を伝送する配線が投影光学系に接続されている。この場合、配線によって投影光学系には定常的に一定の力が加えられることになるため、この力を考慮したうえで投影光学系に吊材が繋がれる連結位置を調節する必要がある。
特開2004−311626号公報(図1)
投影光学系を吊り下げて露光装置の使用を開始した後に、投影光学系に配線、さらには補機が追加されることがある。そうすると、除振対象である投影光学系の質量バランスが変化するので、当初に設定された支持系に対してアライメントがずれてしまい、除振性能が低下する。
本発明は、このような技術的課題に基づいてなされたもので、補機、配線等の付加物が後に加わって除振対象である吊下げ対象物のアライメントが当初からずれても、そのずれを解消できる物体吊下げ装置を提供することを目的とする。
除振対象となる吊下げ対象物は、吊材に対して剛体とみなせる。したがって、吊下げ対象物は並進3自由度、回転3自由度の合計6自由度を備える。通常、除振を目的とする吊下げ装置は、3本の吊材の各々を吊下げ対象物の3箇所で連結、支持するので、1つの支持点当たりで鉛直方向、水平方向の2方向について支持点を変位できれば、吊下げ対象物全体として6自由度に対応できる。
このことに着目してなされた本発明の吊下げ装置は、一端側が支持フレームに繋がれ、他端側が連結位置で吊下げ対象物に繋がれる3本の吊材と、3本の吊材の各々の連結位置を、吊下げ対象物に対して、水平方向と鉛直方向に独立して変位させるアライメント調整機構と、を備えることを特徴とする。
本発明におけるアライメント調整機構としては、3本の吊材の各々の連結位置を、吊下げ対象物に対して、水平方向に変位させる第1調整部と、鉛直方向に変位させる第2調整部と、を備え、第1調整部が連結位置を水平方向に変位させるのに伴って第2調整部が水平方向に変位し、第2調整部が連結位置を鉛直方向に変位させるのに伴って第1調整部が鉛直方向に変位するものであることが好ましい。
本発明の吊下げ装置は、第1調整部を駆動させる第1アクチュエータ及び第2調整部を駆動させる第2アクチュエータと、吊下げ対象物の水平方向の位置を検出する第1センサ及び吊下げ対象物の鉛直方向の位置を検出する第2センサと、第1センサ及び第2センサの検出結果に基づいて、第1アクチュエータ及び第2アクチュエータを駆動させるコントローラと、を備えることで、吊下げ対象物のアライメントのずれを逐次修正できる。
本発明の吊下げ装置は、吊材として、素線を編んで形成されるワイヤを用いることが好ましい。素線同士の摩擦により、減衰能が期待できるからである。
本発明によれば、3本の吊材の各々の連結位置を、吊下げ対象物に対して、水平方向と鉛直方向に独立して変位させるアライメント調整機構を備えるので、補機、配線等の付加物が後に加わって除振対象である吊下げ対象物のアライメントが当初からずれても、そのずれを解消できる。
本実施の形態における露光装置を示す断面図である。 本実施の形態における露光装置の投影光学系鏡筒の周囲を示す斜視図である。 本実施の形態におけるアライメント調整機構を示す斜視図である。 本実施の形態におけるアライメント調整機構の水平方向調整部を示す断面図である。 本実施の形態におけるアライメント調整機構の鉛直方向調整部を示す断面図である。 本実施の形態におけるアライメント調整機構のシステム構成を示すブロック図である。 本実施の形態における投影光学系鏡筒の周囲をモデル化した図である。 本実施の形態における吊下げ装置のシミュレーション結果を示すグラフである。 本実施の形態における吊下げ装置に好適に用いられる吊材の形態を示す図である。 本実施の形態における吊下げ装置に用いる吊材の相違による応力と減衰定数の関係を示すグラフである。
以下、本発明の物体吊下げ装置を露光装置1に適用した実施形態に基づいて本発明を詳細に説明する。
露光装置1は、原版パターンが形成されたマスクMと、原版パターンが転写されるウェハWを同期走査しながら、原版パターンをウェハW上に投影転写する、いわゆるスキャン露光を行う装置であり、照明光学系鏡筒10と、マスクステージ装置20と、投影光学系鏡筒30と、ウェハステージ装置40とを主たる構成要素として備えている。露光装置1は、マスクMとウェハWとを、各々マスクステージ装置20とウェハステージ装置40で高速で移動させながら、転写すべき露光領域を投影光学系鏡筒30の光軸上に位置決めするステップ動作と、マスクステージ装置20とウェハステージ装置40を同期移動させながら走査露光するスキャン動作を繰り返す。
露光装置1は、マスクステージ装置20を支持するマスクステージフレーム21を備えている。マスクステージフレーム21は所定の間隔を空けて立設する一対のコラム211と、一対のコラム211の上端に架設されたビーム212となからなる門型の構造体である。マスクステージフレーム21は、例えば、空気ばねを要素とする除振装置2を介して、定盤3上に設置されている。
マスクステージフレーム21のビーム212には、マスクMを載せて移動・位置決めするマスクステージ装置20が取り付けられている。
マスクステージ装置20とマスクステージフレーム21のビーム212との間には、前述と同様の除振装置22が介在している。マスクステージ装置20には、マスクMを吸着保持するチャック(図示されず)等が設けられている。
マスクステージフレーム21のビーム212の上端には、照明光学系支持フレーム11が固定されている。この支持フレーム11であって、マスクステージ装置20の上方には、照明光学系鏡筒10が取り付けられている。この照明光学系鏡筒10内には、図示を省略する、例えばフライアイミラーを含む照明光学系、成形開口等が配置されている。
マスクステージフレーム21の内側において、定盤3上には鏡筒フレーム31が設置されている。この鏡筒フレーム31は、マスクステージフレーム21と同様の門型をしており、コラム311とビーム312とからなる。鏡筒フレーム31の内側には、投影光学系鏡筒30が配置されている。投影光学系鏡筒30は、鏡筒フレーム31のビーム312から3本(図1では2本のみを示す)のワイヤ(吊材)32で吊り下げられている。投影光学系鏡筒30内には、投影光学系を構成する複数の非球面ミラー等(いずれも図示されず)が配置されている。
投影光学系鏡筒30を吊り下げる3本のワイヤ32は、上端が鏡筒フレーム31のビーム312下面に繋がれており、下端が投影光学系鏡筒30の鉛直方向中央部に形成された取り付け板30aの周縁に取り付けられるアライメント調整機構33に繋がれている。各ワイヤ32とワイヤ32に対応する各アライメント調整機構33とは、取り付け板30aの周方向に等間隔(120°間隔))おき設けられている。各ワイヤ32は、可撓性を有する素材からなり、投影光学系鏡筒30を吊り下げるために必要な引張強度を有するが、それ以上の剛性は有しない。ワイヤ32の好ましい形態については後述する。
図3〜図5に示すように、アライメント調整機構33は、水平方向調整部(第1調整部)50と鉛直方向調整部(第2調整部)60とから構成される。水平方向調整部50及び鉛直方向調整部60は、投影光学系鏡筒30の取り付け板30aに固定されるベース51を介して取り付け板30aに取り付けられる。
ベース51は、取り付け板30aに鉛直方向に摺動可能に取り付けられている。そのために、ベース51には鉛直方向に延びる一対のガイドレール511が設けられ、取り付け部30aにはガイドレール511が挿入されるガイド溝301が設けられる。
鉛直方向調整部60の本体61は、ベース51に水平方向に摺動可能に取り付けられている。そのために、ベース51と取り付け板30aの関係と同様に、一方にガイドレールを、他方にガイド溝を設ければよい。
水平方向調整部50は、固定部材52と、上下可動部53と、水平可動部54とを備える。
固定部材52は、ベース51に固定される部材であって、L字を逆さまにした断面をなしている。固定部材52は、ベース51に固定され鉛直方向に延びる基部521と、基部521の上端から水平方向に延びる調整ネジ支持部522とからなる。基部521は、下端に向けて肉厚が厚くなるように、幅方向の一方の面が傾斜面523とされている。
上下可動部53は、円錐台状の本体531と、本体531の上部に固定される調整ネジ532とからなる。本体531と調整ネジ532は同軸上に配置される。
本体531は、傾斜面の一方が固定部材52の基部521の傾斜面523と摺接するように、調整ネジ支持部522の下方に配置される。本体531に固定される調整ネジ532は、調整ネジ支持部522に形成されたねじ孔524に噛み合っている。したがって、調整ネジ532を左右に回転させると、当該傾斜面が傾斜面523と摺動しながら、本体531は昇降運動する。
水平可動部54は、厚さ方向の一方の面側が上下可動部53の本体531の他方の傾斜面に摺接する傾斜面541をなし、厚さ方向の他方の面側が鉛直方向調整部60の本体61に固定される。水平可動部54はこのような構成をしているので、調整ネジ532を回転させて本体531を下降させると水平可動部54は左向きに動き、調整ネジ532を回転させて本体531を上昇させると水平可動部54は右向きに動く。このように、水平方向調整部50は、鉛直方向の往復(直線)運動を水平方向の往復(直線)運動に変換する機構である。
なお、鉛直方向調整部60の本体61が調整ねじ62を介してワイヤ32に吊下げられているために、本体61に固定されている水平可動部54は、上下可動部53の本体531を基部521に向けて押す。したがって、上下可動部53の本体531と水平可動部54を機械的に繋がなくても、上記運動の変換が行われる。
次に、鉛直方向調整部60は、ブロック状の本体61と、本体61鉛直方向に貫通するねじ孔611を貫通する調整ネジ62と、本体61の下側において調整ネジ62に噛み合う調整ナット63と、本体61の上側において調整ネジ62に噛み合う移動拘束ナット64とからなる。
ねじ孔611を介して調整ネジ62に遊嵌されている本体61は、調整ナット63の上に載せられている。したがって、鉛直方向調整部60は、調整ナット63を左右に回転させると、本体61を昇降運動させることができる。また、鉛直方向調整部60は、移動拘束ナット64を設けているので、必要以上に本体61が上昇されるのを阻止できる。
以上のアライメント調整機構33は、ベース51が投影光学系鏡筒30に対して鉛直方向に移動可能とされており、加えて、鉛直方向調整部60がベース51に対して水平方向に移動可能とされている。しかも、水平方向調整部50は固定部材52がベース51に固定されている。したがって、水平方向調整部50を動作させることにより、調整ねじ62、つまりワイヤ32の連結位置を水平方向に変位させるのに伴って鉛直方向調整部60が水平方向に変位する。また、鉛直方向調整部60を動作させることにより、ワイヤ32の連結位置を鉛直方向に変位させるのに伴って水平方向調整部50が水平方向に変位する。このように、アライメント調整機構33は、水平方向調整部50と鉛直方向調整部60とが一体的に変位されるので、一方(例えば、水平方向調整部50)を動作しさえすれば、他方(鉛直方向調整部60)の位置を変位させる操作をする必要がない。
投影光学系鏡筒30の下方には、図1に示すように、ウェハWを載せて移動・位置決めするウェハステージ装置40が設置されている。ウェハステージ装置40は、前述と同様の除振装置4及び支持フレーム5を介して、定盤3上に設置されている。ウェハステージ装置40には、図示を省略するウェハWを吸着保持するチャックが設けられている。
露光装置1は、マスクステージ装置20及びウェハステージ装置40の各ステージを光軸垂直方向(X方向及びY方向)に移動させて、マスクM及びウェハWを転写すべき露光領域に位置決めするステップ動作と、マスクステージ装置20とウェハステージ装置40の各ステージを等速で同期移動させながら走査露光するスキャン動作を繰り返す。ステップ動作中には露光は行われず、各ステージが加減速運転し、マスクM及びウェハWを次の露光領域まで移動させる。一方、スキャン動作時には、マスクステージ装置20とウェハステージ装置40の各ステージが、XY面内を反対方向に所定の速度比で等速同期移動する。この間は、マスクステージ装置20及びウェハステージ装置40の各ステージには加減速は加わらない。
<露光装置1の効果>
露光装置1では、投影光学系鏡筒30が可撓性のあるワイヤ(吊材)32で吊り下げられているので、ワイヤ32の支点が振動したとしても、投影光学系鏡筒30までは振動が伝わりにくい。投影光学系鏡筒30は、ワイヤ32の長さで決まる固有振動数ω=(g/L)1/2(gは重力加速度)に基づき若干揺れるが、振動周期Tは一定であり、その値は固有振動数ωに基づき予め算出することができる(T=2π/ω)。
また、露光装置1は、設置後に補機、配線が追加されることがあり、そうすると、除振対象である投影光学系鏡筒30の質量バランスが変化するので、当初に設定された支持系に対して投影光学系鏡筒30のアライメントがずれてしまい、除振性能が低下する。そうした場合に、水平方向調整部50及び鉛直方向調整部60の一方又は双方を調整することにより、アライメント調整機構33によるワイヤ32の支持点を水平方向及び鉛直方向の一方又は双方に動かしてアライメントを調整できるので、露光装置1は補機、配線が追加された後も、当初の除振性能を維持できる。露光装置1には3本のワイヤ32に対応して3つのアライメント調整機構33が設けられているので、1つ又は2つ以上のアライメント調整機構33を調整する。
以上では、アライメント調整機構33の構成、作用を説明したが、このアライメント調整機構33を動作させるシステムを図6に示している。
このシステムは、コントローラ70を備える。コントローラ70は、第1センサ71による検出結果、第2センサ72による検出結果に基づいて、水平方向調整部50の調整ネジ532を回転駆動させる第1アクチュエータ73、鉛直方向調整部60の調整ナット63を回転駆動させる第2アクチュエータ74の動作を制御する。
第1センサ71はアライメント調整機構33の水平方向の位置Hpnを検出し、第2センサ72はアライメント調整機構33の鉛直方向の位置Vpnを検出する。水平方向の位置Hpn、鉛直方向の位置Vpnは、アライメント調整機構33上の定点において検出される。
コントローラ70は、投影光学系鏡筒30が吊り下げられた当初の上記定点における水平方向の位置Hp1、鉛直方向の位置Vp1を保持している。また、コントローラ70は、第1センサ71で検出された水平方向の位置Hpn、及び第2センサ72で検出された鉛直方向の位置Vpnを受ける。そして、コントローラ70は、当初の水平方向の位置Hp1、鉛直方向の位置Vp1と、その後に検出される水平方向の位置Hpn、鉛直方向の位置Vpnとを比較して、上記定点の位置ずれを求める。
コントローラ70は、求められた位置ずれをなくすように第1アクチュエータ73及び第2アクチュエータ74の一方又は双方を動作させて、投影光学系鏡筒30のアライメントを当初に戻す。
なお、ここでは位置検出をアライメント調整機構33上の定点としたが、これに限らず、投影光学系鏡筒30上の定点、例えば重心を用いることができる。
図7は、露光装置1の投影光学系鏡筒30の周囲をモデル化した図である。図7において、重心371は投影光学系鏡筒30の重心を示し、吊り固定点311,331,351は、3本のワイヤ32が鏡筒フレーム31に繋がれている連結位置を示し、可動点321,341,361は、3本のワイヤ32がアライメント調整機構33に繋がれている連結位置を示している。
このモデルにおいて、重心371の位置の状態量を、変換マトリックスと入力量で表すと式(1)の通りである。したがって、変換マトリックスを求めれば、入力量である重心371の移動量を求めることができる。なお、式(1)の入力量は、可動点321,341,361毎の鉛直方向の入力量、水平方向の入力量であるから、式(2)に示すように、6つの成分を有する。
Figure 2011066211
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式(1)の入力に例えば単位量(=1)を与えると、式(3)となる。このとき、重心371の位置の状態量は、式(4)となる。これは同時に、式(5)のうちで、式(6)を表している。したがって、他の変数5つについてすべての計算を行うことにより、変換マトリックスを得ることができる。そして、得られた変換マトリックスの逆行列を求めれば、式(7)より入力量が得られる。
Figure 2011066211
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以上の手順に基づいて、シミュレーションを行った。なお、このシミュレーションは、ワイヤ32の伸びを無視する一方、ワイヤ32の大変形は考慮し、補機・配線追加の要素として付加マス2個を追加した後の重心371の位置ずれを修正する解析を行うものである。
表1,2に変換(感度)マトリクスの計算結果を示す。また、これら変換マトリクスを用いて行った解析の結果を図8に示す。図8に示すように、y方向、z方向については一回の解析により、また、y方向については二回の解析により、重心371の位置ずれを解消できる。なお、二回の解析を行う場合、一回目の解析の結果が反映された重心371の位置を基準として二回目の解析を行う。
Figure 2011066211
Figure 2011066211
次に、ワイヤ32の好ましい形態について説明する。
ワイヤ32としては、素線を撚って形成される一般的なワイヤロープよりも、素線を編んで形成されるワイヤロープを用いることが好ましい。素線を編んで形成されるワイヤロープとしては、図9(a)〜(c)に示すように種々の形態が存在するが、いずれのワイヤロープも素線同士が交差する。素線同士が交差するので、素線を編んで形成されるワイヤロープに張力が作用すると、素線表面で摩擦が生じることでワイヤ32に減衰能を与えることができる。したがって、素線を編んで形成されるワイヤロープをワイヤ32に用いれば、振動減衰効果が期待できる。
素線を編んで形成されるワイヤロープを用いて減衰定数を求めた。その結果を図10に示す。なお、図10において、「16/4」とは16束を編んだワイヤロープであり、1束が4本の素線を編んだものであることを示し、「16/2」とは16束を編んだワイヤロープであり、1束が2本の素線を編んだものであることを示し、「8/2」とは8束を編んだワイヤロープであり、1束が2本の素線を編んだものであることを示している。また、図10において、見かけ応力とは、付加加重をワイヤロープの外形から求められる断面積で除した応力をいう。
図10より、見かけ応力がおよそ20MPa以下の範囲では、ワイヤロープを構成する素線の総本数が多いほど減衰定数が大きくなることがわかる。したがって、ワイヤ32としては、素線を編んだワイヤロープを用いることがより望ましいことがわかる。ただし、応力が大きくなり素線が伸びきると素線同士に摩擦が生じないために減衰能が期待できなくなるので、このことを考慮して用いるワイヤロープの仕様を定める必要がある。
なお、上記実施の形態では、物体吊下げ装置を露光装置に応用した例を示したが、他の装置、機器について本発明の物体吊下げ装置を広く適用できる。
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更することが可能である。
1…露光装置
10…照明光学系鏡筒
20…マスクステージ装置
30…投影光学系鏡筒(吊下げ対象物)
31…鏡筒フレーム(支持フレーム)、32…ワイヤ(吊材)、33…アライメント調整機構、50…水平方向調整部(第1調整部)、60…鉛直方向調整部(第2調整部)
70…コントローラ、71…第1センサ、72…第2センサ、73…第1アクチュエータ、74…第2アクチュエータ

Claims (4)

  1. 一端側が支持フレームに繋がれ、他端側が連結位置で吊下げ対象物に繋がれる3本の吊材と、
    3本の前記吊材の各々の前記連結位置を、前記吊下げ対象物に対して、水平方向と鉛直方向に独立して変位させるアライメント調整機構と、
    を備えることを特徴とする物体吊下げ装置。
  2. 前記アライメント調整機構は、
    3本の前記吊材の各々の連結位置を、前記吊下げ対象物に対して、
    水平方向に変位させる第1調整部と、
    鉛直方向に変位させる第2調整部と、を備え、
    前記第1調整部が前記連結位置を水平方向に変位させるのに伴って前記第2調整部が水平方向に変位し、
    前記第2調整部が前記連結位置を鉛直方向に変位させるのに伴って前記第1調整部が鉛直方向に変位することを特徴とする請求項1に記載の物体吊下げ装置。
  3. 前記第1調整部を駆動させる第1アクチュエータ及び前記第2調整部を駆動させる第2アクチュエータと、
    前記吊下げ対象物の水平方向の位置を検出する第1センサ及び前記吊下げ対象物の鉛直方向の位置を検出する第2センサと、
    前記第1センサ及び第2センサの検出結果に基づいて、前記第1アクチュエータ及び第2アクチュエータを駆動させるコントローラと、
    を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の物体吊下げ装置。
  4. 前記吊材は、素線を編んで形成されるワイヤからなる請求項1〜3のいずれか1項に記載の物体吊下げ装置。
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