JP2011064960A - トナー画像定着方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 電子写真画像形成装置の定着工程における消費エネルギーを低減する。
【解決手段】 記録媒体上に形成された未定着トナー画像に光重合組成物を塗布し、その後、遠赤外領域に発光波長帯を持たず且つ極大発光波長が360nm以上420nm以下の領域にある光をLEDを用いて照射し、光重合組成物を硬化させて未定着トナー画像を記録媒体に定着する。
【選択図】 図3

Description

本発明は、記録媒体上に形成された未定着トナー画像を記録媒体に定着するトナー画像定着方法に関する。
近年、電子写真製品の省エネの尺度として国際エネルギースタープログラムのTEC(Typical Electricity Consumption)が定められ、世界的な広がりを見せている。公称速度に応じて規定の印刷枚数を持つジョブが15分間隔で複数回規定され、5日間の労働日と2日間の休暇を合計した1週間(168時間)で消費する消費電力量(kWh/Week)をもって、その製品のTEC値とするものである。TECが適用開始された2007年以前には、約30秒/ジョブとされる印刷時間の累計エネルギーよりも、それ以外の待機時間(レディーモード)又、夜間や休日(スリープモード)に消費されるエネルギーの方がTEC値の大方を占める製品が殆どであった。
こうした状況は、2009年に至って、様変わりした。今や、印刷が終了すると1分程度でスリープモードに入る製品が多数となり、所謂トップランナー製品のスリープ電力は、限界と言っても良い1Wにまで縮減された。TEC以前のエネルギースタープログラム(モノクロ複写機・複合機のみが対象)で規定されていたスリープモードからのリカバリー時間(30秒以下)規定は、ネットワーク接続されるプリンター等に適用対象が拡大されるに及んで、廃止された。その結果、レディーモードの時間を極限まで短縮し、スリープモードから印刷することが一般化した。この間、TEC値は大幅に改善したが、ジョブ毎のリカバリー時間が20〜30秒を要する製品が多く、ユーザビリティーは犠牲になった面がある。
この2年間でTEC値が激減したことは、ハイエンド機において2007年時点ではカラー35枚複合機のトップランナーTEC値は2.5kWh/weekであったものが、2009年にはトップランナーTEC値が1.7kWh/weekにまで下がった事実から明らかである。ローエンド機においても、モノクロ20枚プリンターでは、2007年のトップランナーTEC値が1.0kWh/weekであったものが、2009年のトップランナーTEC値は0.6kWh/weekを達成している。上記2009年のトップランナーのスリープ電力はカラー複合機・モノクロプリンターともに1Wであり、いずれにおいてもTEC値中のスリープエネルギーは高々0.2kWh/weekに過ぎない。TEC値を更に下げようとすると、今やTEC値の過半を占める印刷時の消費電力を下げる以外の手はない。これは、TEC値中の印刷エネルギーの占める割合が多いハイエンド機においてより切実な問題である。加熱定着方式では、トナーの定着温度を更に下げることが残された唯一の省エネルギー対策の手段と考えられるが、更なる低温化は輸送時・使用時のトナー固着の弊害もあり、難易度が高い。仮に低温化したとしてもその省エネルギーに対する寄与度は10%程度に留まると予想される。そこで、熱を使わずに定着する方式による、抜本的な省エネが求められる。その候補として光定着方式が注目される。以下に、従来の主な光定着技術について述べる。
特許文献1には、耐擦過性・耐磨耗性・耐候性に優れ、高い光沢を有するオフセット様のトナー画像を得るため、既に溶融されたトナー画像上に被覆組成物を塗工し、その後、透明フィルムを介し紫外線を照射し被覆物を硬化させるデジタル印刷用のユニットが開示されている。必要に応じ更にフィルムを剥す工程も含まれる。いずれにしても特許文献1のものは、溶融済みのトナー画像に保護膜を形成するものであり、トナーを定着した後の後加工装置(フィニッシャー)として電子写真画像の価値を高めるために用いるとされている。また、特許文献1のものは、予め多量の熱エネルギーを用いトナーを被定着物に定着された画像に対し、更に紫外線を照射し光硬化するために概ね定着工程を二度施すことになり、甚だ省エネルギーの観点からは課題が残る方法である。
特許文献2は、電子写真法で形成されたトナー画像に三次元架橋構造を有するポリマー被覆を施す事で耐磨耗性やスクラッチ性を向上させる画像形成方法に関するものである。具体的なポリマー被覆組成物は、(1)と(2)の化合物を必須構成成分として含む。(1)は、シロキシ変性ポリカルビノールとアクリルウレタンの組み合わせか/又はシロキシ変性アクリルウレタンのどちらかから成り、(2)は、多官能アクリル酸化合物を示す。更に被覆組成物はトナーを画像支持体に硬化し、結合させると記載されている。特許文献2の「硬化」とは、特許明細書中には、熱のみで重合するか場合により光を照射する事を併用しても可能と述べられている。特許文献2は、シリコン系化合物という物質を用いることが発明の本質であるが、この物質を含む硬化組成物は、重合開始剤にベンゾフェノン系化合物を用いている。実施例に記載の光重合開始剤は、遠赤外線領域にも発光波長帯がある高圧水銀灯を用いた光硬化では有効であっても、遠赤外線領域には発光波長帯がないLED−UV光では、発光スペクトル領域に強い吸収スペクトルが存在せずに、非常に感度が低く、結果的に重合速度が極めて遅い。更に特許文献2の実施例1に記載された高圧水銀灯の消費電力は、118W/cmと非常に高く、この事からも特許文献1と同様に定着工程での省エネルギー化には甚だ不適当である。
特許文献3は、画像の保存性向上のため、一旦電子写真法により形成されたトナー画像上に光で透明な重合膜の被覆を行ない耐摺擦性と非タック性を向上させるためのコーティング組成物に関するものである。「電子写真法により形成された」とは、現像、転写、更に定着工程を経たトナー印字物と定義され、定着工程としては、例えばフラッシュ定着、加熱定着、加圧定着、蒸気定着などが利用されると記載されている。定着されたトナー画像を被覆する方法は、既に写真印画紙をオーバーコートする方法を始め、多数の特許が報告されており公知である。又それに適用される材料の特許も多数公開されている。これら一連の特許群は、何れも一旦、定着された画像に再度光重合組成物でコーティングを施すため、定着工程の省エネルギー対策には、適切ではない。
特許文献4には、光重合組成物として不飽和ポリエステル樹脂をビニルモノマーに溶解させた液状組成物を複数のノズル等を用い、未定着トナー画像を載せた記録媒体に塗布し、紫外線を照射し固化することでトナー同士及びトナーと記録媒体とを固定する定着方法が温風等による定着方法と並べて開示されている。液状組成物を用いる定着の効果として省エネが謳われているものの、温風による乾燥で「少ない定着エネルギーで定着できた」とされるのと同様の表現で、「紫外線ランプで紫外線を照射したところ、少ない定着エネルギーで定着できた」とのみ記載されている。紫外線光源の具体的特徴や具体的消費電力値を挙げて論証されておらず、紫外線を用いる定着というだけで、熱を利用するヒーターを用いるのと同列の省エネ度では、現在求められている水準を満たすものとは考えられない。又、紫外線ランプの立ち上げ時間等、待ち時間に関しては、併記されている他の定着方法においても何ら触れられておらず、ヒーターを用いる場合等には相応の待ち時間が発生することは容易に推定され、紫外線ランプについても同様である。
また、特許文献4の光重合組成物は、供給ロールで記録媒体の非画像部つまり裏面から供給され、記録媒体の表面に形成されているトナー画像の所まで、光重合組成物を強く浸透させて供給する必要がある。このために光重合組成物の成分として浸透促進剤としての界面活性剤が用いられている。しかしながら界面活性剤の添加は、光重合組成物を記録媒体の深部へ強く浸透させてしまう事や記録媒体(例えば普通紙)へ大量に光重合組成物を塗布する必要があり、記録媒体の繊維の中に光重合組成物が浸透しまうため通常の紫外線の照射では、光が十分に記録媒体の繊維の中迄到達し得ない。結果的に光重合反応が不十分となり未反応モノマーや蒸気圧の低いオリゴマーが発生し、揮発性有機化合物(VOC)の増大をもたらす。更に繊維の内部で重合した固化物は、記録媒体を透明化し画像の価値を著しく損なう。更に記録媒体の剛性が増し、本来の電子写真用普通紙とは風合いの異なるもので好ましくない。該発明の記録媒体にコート紙を用いる場合は、コート層で浸透が阻止されるため完全な重合反応が期待できずトナー画像の被覆は困難になると思われる。
特開2004−34688号公報 USP4477548号公報 特開2009−096990号公報 特登録4014773号公報
本発明が解決しようとする課題は、トナーを記録媒体に定着させるために要するエネルギーを従来の加熱定着方法と比較し圧倒的に少なくできるトナー画像定着方法を提供する事である。
上述の課題を解決するための本発明のトナー画像定着方法は、記録媒体上に形成された未定着トナー画像に光重合組成物を塗布し、その後、遠赤外領域に発光波長帯を持たず且つ極大発光波長が360nm以上420nm以下の領域にある光を発光ダイオード又は有機EL素子を用いて前記光重合組成物に照射し、光重合反応を利用して前記光重合組成物を硬化させて前記未定着トナー画像を前記記録媒体に定着することを特徴とする。
また、本発明のトナー画像定着方法は、画像表面に光重合性組成物が付与されている未定着トナー画像を有する記録媒体を用意し、該記録媒体に、遠赤外領域に発光域を実質的に有さず、且つ極大発光波長が360nm以上420nm以下の領域にある光を照射して前記光重合性組成物に光重合反応を起こさせることで前記未定着トナー画像を前記記録媒体に定着することを特徴とする。
熱を利用せずに光重合反応で定着工程が行なわれるので、大幅な省エネを達成することが出来る。
実施例1と比較例1のギャマットを比較した図 実施例1と比較例12おける画像濃度と75度光沢度との関係を示した図 ロールコーターによる塗工方法を示した図
本発明のトナー画像定着方法は、記録媒体上に形成された未定着トナー画像に光重合組成物を塗布し、その後、遠赤外領域に発光波長帯を持たず且つ極大発光波長が360nm以上420nm以下の領域にある光を発光ダイオード又は有機EL素子を用いて光重合組成物に照射し、光重合反応を利用して光重合組成物を硬化させて未定着トナー画像を記録媒体に定着するものである。未定着トナー画像を定着させるのに必要な電力を抑えるには、光重合組成物に光を照射する光源自体の発熱効率が高いこと、光源の発光波長帯が狭いこと、及び光源の発光波長帯における重合反応が促進しやすい光重合組成物を用いることが重要である。光重合組成物に光を照射する光源として発光効率が低すぎるものは、未定着トナー画像を定着させるのに必要な電力が増加するので、極大発光波長が360nm以上のLEDまたは有機ELが好ましい。また、発光波長が長くなると光重合組成物に与えるエネルギーが小さくなるため、極大発光波長が420nm以下のLEDまたは有機ELが好ましい。したがって、未定着トナー画像に塗布した光重合組成物に光を照射する光源として、遠赤外領域に発光波長帯を持たず且つ極大発光波長が360nm以上420nm以下の領域にある発光ダイオード又は有機EL素子が好ましい。特に紫外光を発光する発光ダイオード又は有機EL素子が好ましい。
発光ダイオード(LED)としては、発光効率の高いチップ構成が好ましい。InGaNを発光層として利用する場合には、In組成を変化させる事でその発光波長は赤外から紫外領域まで変化させる事ができる。420nm以下の発光波長を有するLEDを作製するためには、In組成比を下げる必要があり、同時に発光効率の低下が発生する。LEDの発光効率は、発光波長が長波長になる程発光効率が高くなり、逆に発光波長が短波長になる程低下する。したがって、極大発光波長が360nm以上のLEDが好ましい。400nm近辺に発光波長を有するものの中には、In組成の不均一化を工夫する事で、20mA投入時に出力が33mWを示し、且つ外部量子効率が50%を越えるLEDデバイスも開発されている。LEDは、各種メタルハライド光や中・高圧水銀灯と比べ装置の小型化が可能であり、オン−オフの動作で瞬時に輝度が立ち上がる事や水銀を使用していない事、更には、発光波長分布が狭くオゾンの発生や可視領域や赤外領域に発光スぺクトルを有しない。そのため発熱量が少なく、省電力と言う点において環境に優しい特徴を有している。また、発光効率が高いと、発光素子を副走査方向に複数列から1列に構成でき、更に主走査方向にアレー状に配列することで放熱用に簡易なフィンを設けた発光ユニットを利用する事が可能となる。LEDの好ましい発光強度は、光重合組成物の感度や電子写真画像形成装置本体のプロセススピードにより左右される。更に発光素子の出射面と照射面までの距離(ワークディスタンス)、ライトガイドの種類、集光レンズの種類、拡散板の利用の有無等によっても大きく左右される。通常は、主走査方向の照射強度が400mW/cm以上2000mW/cm以下の照射強度を持つ発光素子が主に利用される。この際、発光素子の発光量は、各々一つ一つの発光素子を独立して電流値を厳密に制御する必要はなく、全体を一括して電流値制御する事で装置の簡略化と低コスト化を図っても良い。
LED発光素子の製造方法は、有機金属気相成長(MOCVD)法を用い、高真空下でサファイア基板上にLED構造のエピタキシャル層を成長させて製造する。一方、大気下においてグラビア印刷やインクジェット塗布法を用い製造される可能性の高い有機EL(OLED)発光素子は、発光素子としてLEDと比較して大幅なコストダウンが期待できる。しかしながら現状のOLEDは、高真空下でガラス基板上にITO等の透明陽極と陰極間にホール注入層、ホール輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層等からなる多層の積層構造を必要としている。溶剤に可溶性の高分子型の発光物質が利用できれば、電極間の層構成を簡略化でき好ましい。また燐光材料の採用でも層構成を簡略化する事が可能となりコストダウンの面では有利となる。
また、有機EL(OLED)発光素子は、LEDと比較して面発光のため点発光のLEDと比較し発光素子ユニットへの加工や実装に関しては、極めて容易となる。具体的には信学技報,vol107,no522,p5−8(2008)に記載の水野ら(金沢工大)により提案されたトリアゾール系誘導体を発光材料に用いCBP,BCP,B−phenなどのワイドギャップ材料と組み合わせる事で発光半値巾が42nmで、ピーク波長が380nmを有する近紫外光を発光するOLED光を利用する事ができる。
光重合組成物は、3つの光重合反応を利用し重合反応を行なう事ができる。一つは光重合開始剤に光を照射する事でラジカル活性種を形成し、この活性ラジカル種が順次モノマーと重合する事で成長反応を行なうラジカル光重合反応が利用できる。二つ目は光でスルフォニウム塩、ヨードニウム塩等の光重合開始剤を励起する際に活性カチオン種を形成し、エポキシ化合物やオキセタン化合物やビニルエーテル化合物のようなモノマーと逐次重合するカチオン光重合反応を利用する事ができる。更に三つ目は、光による励起で発生した活性アニオン種が重合反応に関与するアニオン光重合反応が存在し、何れの反応も用いる事ができる。ラジカル光重合反応には、ノリッシュ(Norrish)I型とノリッシュ(Norrish)II型の反応が存在する。ノリッシュI型反応は、α−ヒドロキシケトン類、α−アミノケトン類、BDK,MAPO類、BAPO 類を励起三重項状態に励起し、α位置でホモリテックに分解し、活性ラジカル種を発生させるものである。ノリッシュII型反応は、ベンゾフェノン類が光励起で励起三重項状態に励起し、この状態で三級アミンから水素引き抜き反応を起こし、発生した活性ラジカル種がモノマーと重合反応を起こすものである。ラジカル光重合反応は、酸素による反応を阻害し易いが、豊富なモノマー種が存在するため主体的に用いられる。LED光による重合反応を効果的に行なうためには、その発光スペクトルと良くマッティングしている吸収スペクトルを有する光重合開始剤を含む光重合組成物を利用する事が必要である。特にLED光は、メタルハライド灯や中・高圧水銀灯と比べ発光スペクトル帯が狭く、より光重合開始剤の選択が重要となる。具体的な光ラジカル重合開始剤としては、360nm以上420nm以下領域に吸収波長を有する代表的開始剤として、フォスフィン系化合物、イミダゾール系化合物、ケタール系化合物やチオキサントン系化合物が用いられる。
光重合組成物は、できるだけ記録媒体中に浸透せずに記録媒体の表面で重合させ硬化する設計が必要である。光重合組成物を記録媒体表面で光重合させるためには、幾つかの方法がある。例えば光重合組成物の光に対する感度の高いモノマー類や多官能モノマー類を配合したりする事で達成される。
好ましいモノマー類としては、単官能アクリル系モノマー類や、トリシクロデカンジメチロールジアクリレート、ビスフェノールF(EO変性)ジアクリレート、ビスフェノールA(EO変性)ジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレートに代表させるニ官能アクリル系モノマー類や、トリメチロールプロパン(PO変性)トリアクリレート、トリメチロールプロパン(EO変性)トリアクリレート、イソシアヌル酸(EO変性)トリアクリレート、ε−カプロラクトン変性トリス(アクロキシエチル)イソシアヌレートに代表される三官能アクリル系モノマー類、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレートに代表させる四官能アクリル系モノマー類、五官能や六官能モノマーの代表としては、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートやジペンタエリスリトールヘキサアクリレートが多官能アクリル系モノマー類として用いられ、ポリエステルアクリレートやウレタンアクリレートやエポキシアクリレートから構成されるアクリル系オリゴマー化合物類、更にエポキシ樹脂やオキセタン樹脂やビニルエーテルから構成されるカチオン重合性モノマーやアニオン重合性モノマー類が挙げられる中で、アクリル系モノマーとして多官能モノマーの選択が特に重要となる。多官能モノマー特に四官能以上のモノマーは、B−ステージからC―ステージへの迅速な架橋反応を起こす点で定着スピードの向上に貢献でき重要な構成要素である。更に迅速な架橋反応の利点を有し、引火性液体の取り扱いから逃れられる事も大きな特徴である。添加剤としては、光重合開始剤やモノマーやオリゴマー以外に増感剤・粘度調節剤・流動性調整剤のような透明な添加物を配合する事も可能である。光重合し得られた硬化物が、無色透明性を示す事は、色純度を向上させる上で重要であり、具体的な添加フィラーとしては、ナノオーダーの粒子径を有する無機化合物又は有機化合物から選択される。
光重合組成物の最適添加量は、記録媒体表面の粗さや密度、又光重合組成物の塗工と光照射迄のタイミングにより左右される。1μm以上20μm以下の厚みの塗工量で塗工するのが好ましく、記録媒体がシリカや酸化アルミニウム等のフィラーや樹脂でコーティングされた記録媒体を用いる場合には、光重合組成物の塗工量を少なくして且つ硬化収縮の低い光カチオン重合系を採用する事が好ましい。但し光カチオン重合系組成物は、放置安定性に乏しく、光ラジカル重合系組成物から選択するのが好ましい。光重合組成物は、塗工量を20μmより多く塗工すると記録媒体がカールを発生したり、記録媒体が透明化するため好ましくない。塗工量が1μmより少なすぎるとトナーと記録媒体との層間強度が低下し、定着性が不十分となり摺擦や折り曲げ等でトナーが欠落し好ましくない。
光重合組成物の塗工方法は、中・低粘度物を薄層に塗工する既知の方法の中から選択される。例えばロッドコーター、グラビアコーター、リバースグラビア、メイヤーバーコーター、ダイコーター、キスロールコーター、フルコーンノズルやフラットスプレーノズルやナイフジェットノズルを有す一流体ノズル、二流体ノズル、ロールコーター、電界霧化法、インクジェット法等が用いられる。光重合組成物は、通常記録媒体全体に塗工し用いられるが、像域分離された画像部分にインクジェットヘッドをキャリッジで同期させ、トナーの部分にのみ光重合組成物を吐出する事も可能である。
光重合組成物の最適な粘度は塗工方法によって左右される。ノズル法やインクジェット法は、微小な吐出量を制御するためには、極めて良好な方法であるが、ピエゾ素子の駆動力が低いため比較的低い粘度の組成物しか利用することができない。具体的には25℃の環境下で10mPa・s以上30mPa・s以下程度の低粘度を示す組成物しか利用する事ができない。一方グラビアコーターやロールコーターや加熱IJ(インクジェット)法は、比較的広範囲の粘度を有す組成物を塗工することが可能で有る。具体的には、30mPa・s以上400mPa・s以下程度の粘度を示す比較的中粘度の組成物に適する方法である。未定着トナー画像に塗工した光重合組成物は記録媒体の表面で光重合する事が好ましく、低粘度の浸透タイプより中粘度領域の粘度を持つ光重合組成物が特に好ましい。
光重合組成物がトナー表面や記録媒体表面に供給された後、X−Y方向の拡散とは別にZ方向への浸透する挙動は、Lucas−Washburnの式で良く理解されている。例えば電子写真学会誌37,149(1998) に示されたように
Lucas−Washburn式: I=(d・t・y・cosθ/4η)1/2
I:浸透距離 d:毛管直径 y:表面張力 θ:接触角 η:粘度 t:時間
を利用しd,y,θ,η,tの変数を調節する事でZ方向への浸透距離を良好に制御する事ができる。浸透距離Iを小さくするには、分子項を小さく、つまり光重合組成物の表面張力を小さくする、塗工と光照射迄の時間を短縮する事等で工夫でき、分母項を大きくするためにはつまり光重合組成物の粘度を大きくする必要がある。画像形成に用いられるトナーは、記録媒体の地の色を隠蔽し、できるだけトナー中の色剤の濃度を際立たせるためには、記録媒体の白地の空間が存在せずに最密充填される事が好ましい。且つ、熱定着工程を一切利用しないので、従来はトナーの必須構成成分であった離型剤を配合しないトナーも大いに利用する事が可能となる。なぜなら記録媒体上に多層に形成されたトナー画像に光重合組成物を塗工した場合、トナー同士の空間を液状組成物で満たす事でトナー間に強い凝集力を発生させつつ、キャピラリー効果でトナー層間を深く浸透して行き記録媒体迄到達する。この効果を最大限に発揮させるためには、トナーは、粒径が揃い且つ球形形状のトナーが最も最密充填効果を強く発揮しやすく好ましい。更に場合によっては、固体のトナー表面と液体の光重合組成物で発生する電気二重層に電圧を印加する事で電気浸透流を発生させ、浸透性を制御する事も可能である。従来熱ロール定着器や圧力定着器を用いた場合には、加熱ローラーへのトナーのオフセット防止効果を発揮させるため、トナー中には、ポリエチレン、ポリプロピレンからなる合成ワックスや、石炭、植物、蜜から改質したり又は精製されたポリアルキレンワックスやエステルワックスやポリアミドワックスやモンタン酸ワックス等の離型剤を必ず配合していた。しかしながらこの離型剤が、時に現像ローラーのスリーブ表面や感光ドラムの表面をしばしば汚染する。更には、トナーに用いられる樹脂と離型剤との相溶性が悪く、耐久使用によって現像器中への離型剤の蓄積や、顔料の均一な分散性を阻害し、結果的にトナーの帯電分布を広くし、安定した画像を得るための阻害要因となっていた。その対策のために、従来から幾多の工夫がなされてきた。しかしながら本発明は、定着工程に熱源を持たないため、従来からトナー中に配合されてきた離型剤を完全に削除する事も可能となり、加えて定着器周りの耐熱部材を通常の汎用プラスチィク材料に変更する事が可能となり、初めて耐久に於けるトナーの帯電性の安定化と定着器のコストダウンの両立が可能となった。
粒径が揃い、球形形状をしたトナーの製造法は、従来から良く知られた重合法が利用できる。粒径が揃い球形形状のトナーを製造するには、大気中で膨大な破砕エネルギーを必要とする粉砕法トナーの製造方法より、液中で界面張力を利用する方法が製造エネルギーや収率の点で好ましい。省エネルギーな生産性のためモノマーからトナーを直接製造するin−situ 重合法が特に好ましく利用する事ができる。例えば特登録03066943号に記載されている公知の製造法が利用できる。しかしながら、この製造法のトナーは、トナー中に必須構成成分として離型剤を用いており、離型剤の弊害を極力少なくするためコア−シェル構造を用い離型剤を樹脂中に内包せしめている。このような対策を講ずることなく、本発明では、離型剤を一切含まないトナーを用いる事も可能になったため混練工程が極めて容易になり、場合によっては削減する事も可能で、製造時間や製造に要するエネルギーの削減に大いに貢献できる。トナーの製造方法としては、製造収率や製造エネルギーや球形形状を容易に形成できる点でin−situ重合法が最も好ましいが、重合法トナーにのみ限定するものではない。粉砕法により製造したトナーを熱球形化処理した粉砕法トナーも好ましく利用する事ができる。
トナーの円形度は、シスメックス社製FPIA−3000を用い測定する事ができる。円形度は、下式を用いて求める事が可能である。
円形度=(粒子面積と等しい円の周囲長)/(粒子周囲長)
測定方法は、ノニオン型界面活性剤約0.1mgが添加された水10mlにトナーを5mgを加え超音波分散器を用い5分間分散後、トナーの円形度を測定した。円形度は、完全な真球の場合には1.00を示し形状が複雑になる程、円形度の値は小さくなる。円形度が0.95以上1.00以下を示すトナーが特に好ましく用いられる。
本発明で得られる定着後のトナー画像は、加熱定着法で得られるトナー画像と比べ低濃度画像域から高濃度画像域迄ほぼ等しい光沢度を持ち、且つCIEL空間に於いて広いガマット(gamut)を有する。また、摺擦性及び折り曲げ性に代表される定着性は、加熱定着法により得られる画像と比較し何ら遜色の無い定着性能を示した。この理由は、光重合組成物が、トナー表面とトナー粒子間の粒界の隙間に進入した後、着実に記録媒体まで到達し、光により重合する事でトナー表面の平滑化と粒界の界面での光散乱を防止する事ができる為であり、広いガマットを持つと共に十分な定着性能が発現出来たと考えられる。従来は、加圧状態で加熱定着を施していたため画像濃度の高い所、つまりトナー濃度の高い所は、高い光沢性を示し、一方画像濃度の低い所は、低い光沢性を示す事が一般的で有り、画像全面に於いて比較的均一で適切な光沢性を得る事は、難しかった。本発明に於いては、光定着を行なうため定着後の画像の表面性は、何処をとっても均一な平滑性となりやすい。均一な光沢性は、画像の品位を向上させる。特に写真調の印刷物やプリント・オンデマンド(POD)を始めとする商業印刷物には、この均一光沢性は、非常に好ましい。
次に、本発明を以下に示す実施例で具体的に説明する。
本実施例に用いるシアントナーは、次の如くして調製した。高速撹拌装置TK−ホモミキサーを備えた2リットル用四つ口フラスコ中に、イオン交換水710重量部と0.1モル/リットル−NaPO水溶液450重量部を添加し、65℃に加熱後に攪拌装置の回転数を12000rpmに調整した。ここに1.0モル/リットル−CaCl 水溶液68重量部を徐々に添加する事で難水溶性分散安定剤Ca (POを調製した。一方、分散質系は、
スチレン単量体 165質量部
n−ブチルアクリレート単量体 35質量部
シアン着色剤(C.I.ピグメントブルー15:3) 14質量部
極性樹脂〔(テレフタール酸−プロピレンオキサイド変性ビスフェノールA)ポリエステル樹脂、酸価15、ピーク分子量6000〕〕 10質量部
負荷電性制御剤(ジアルキルサリチル酸金属化合物) 2質量部
である。上記混合物は、アトライターを用い10分間分散させた。離型剤を含んだ系と比較し1/6の分散時間で分散工程を完了させる事ができた。その後、重合開始剤である2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)10重量部を加え重合性組成物を調整した。攪拌器の回転数を12000rpmに維持した水系分散媒体中に該重合性組成物を漸次投入し、15分間高速攪拌を行なった。その後高速撹拌器からプロペラ撹拌羽根に撹拌器を変え、内温を65℃から80℃に昇温させ回転数を50rpmに減じ10時間重合反応を継続させた。重合終了後、希塩酸を添加し分散安定剤を除去し更に水洗浄した後に乾燥を行った。シアントナーの重量平均径は、5.6μmで、個数分布における変動係数は23%であった。得られたシアントナーの円形度は0.98である。得られたシアントナー100重量部に対し、疎水性酸化チタン微粒子を2重量部添加し、流動性に優れたシアントナーを得た。さらに、着色剤をC.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントレッド202、及びグラフトカーボンブラックに変え同様の方法で電気絶縁性イエロートナー、マゼンタトナー及びブラックトナーを得た。得られたイエロートナー、マゼンタトナー及びブラックトナーは、シアントナーと同様に疎水性酸化チタン微粒子を2重量%とをそれぞれ混合し、現像剤を調製した。
画像形成装置は、タンデム式カラープリンタであるLBP5050(キヤノン株式会社製)の加熱定着器を取り外した改造機を用意し、調製した各色の一成分系現像剤を、それぞれ現像器に入れ、記録媒体上に未定着のトナー画像を形成した。記録媒体は、Xx社製レターサイズ坪量75g/m普通紙を用いた。
光重合組成物は、ジプロピレングリコールジアクリレート(ニ官能モノマー)80質量部、トリメチロールプロパンエトキシトリアクリレート(三官能モノマー)10質量部、ペンタエリスリトールエトキシテトラアクリレート(サートマー社製:四官能モノマー)5質量部、フェニルビス−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−ホスフィンオキシド(光重合開始剤)5質量部を混合し、27mPa・sの粘度を示す調合液を得た。この調合液をミマキエンジニアリング社製大判IJ機であるUJF−605cIIに搭載し、上述した改造機で予め作製しておいた未定着のトナー画像に光重合組成物を塗工量5μmの厚さで塗工した。塗工量の測定は対照としてPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムを用い、光重合組成物を塗工後、光硬化させ塗膜の膜厚を測定した。
記録媒体上に形成した未定着トナー画像に光を照射する光照射装置は、発光ピーク波長(極大発光波長)が385nm±5nmで、遠赤外領域には発光波長帯がないLED−UV(紫外光発光ダイオード)である。シリンドリカルレンズを利用する事で照射範囲の方向性を長楕円形状にできLED数の低減を行なった。
本実施例のLEDのUV照射強度は、500mW/cmであり、この強度が長軸方向で12mm巾、短軸方向で5mm巾を保持できる。このLEDを、主走査方向に長軸を合わせ、20個のLEDをアレー状に並べ、照射エリアがレターサイズ巾(215.9mm)をカバーするようにした。副走査方向には一列だけ整列させた。フル点灯時の消費電力は、LED一個当り4Wであるため合計80Wである。ヒートシンク対策は、特別な事は行なわず、簡易なフィンを設けた設計を行なった。
この光照射装置は、ベルトコンベア−上に設置され、速度が可変でき光重合速度の検討に利用した。ベルトコンベアーの速度を変化させ光の暴露で硬化物表面の粘着性が消える速度を予め検討しその速度で定着を行なった。光の照射時間は、0.1秒の暴露時間で光重合反応が急速に進み、定着性に問題は起きなかった。例えばトレーに多数枚積載された記録媒体の定着済みトナー画像が裏写りする事も又摺擦に対しても問題が発生しなかった。
画像の評価は、以下に記載の方法で行なった。Lの測定は、GretagMacbeth社製Spectrolinoを用いた。
測定は、観測光源:D50、観測視野:2度、濃度ANSI A,白色基準:Abs,フィルター:Noに示す条件で行なった。得られた結果を表1と図1に示す。表1には、L*,a*,b*,C,hの実測値を載せた。それ以外に比較例1との相対的な彩度比(C実施例/C比較例1)を測定し、ブラックを除いた彩度比の平均値を持って、実施例1を含む後述の各実施例で形成された画像サンプルのダイナミックレンジの広さを表す実力とした。図1は実施例1と比較例1との色空間(ギャマット)を比較して示す。●が実施例1、□が比較例1である。75度光沢度の測定は、日本電色工業製VG2000を用い測定した。得られた結果を表2と図2に示す。
実施例1の画像評価は、加熱定着器を搭載するLBP5050で加熱定着処理して出力したトナー画像(比較例1)と比較する事で行なった。表2は、濃度を3段階(濃、中、淡)に変えたグレーチャートを用い画像濃度と光沢度の関係を測定したものである。実施例1の画像は、濃度の変化に対しほぼ光沢度が10程度のほぼ一定な光沢度を持つ事がわかる。一次色のみならずニ次色もまたほぼ一定の画像均一性を有している。一方比較例1の画像は、画像濃度に大きく依存し、75度光沢度が、急激に変化(上昇)する。これは、実施例1と比較し比較例1は、画像の面内一様性に乏しい事を示している。しかしながら本実施例1の画像は、比較的低い光沢度ではあるが、表1に示すように比較例1と比較し彩度の比率は96%を示した。Y,M,C,B,G,R,Bk各色の色相角も実施例1と比較例1の画像ではほぼ一致した数値を示した。
Figure 2011064960
Figure 2011064960
以上に示したとおり、比較例1(後述のとおり、プリント時の加熱定着器の最大消費電力は約300W)に比べて、本実施例のLED全点灯時消費電力80Wは約70%減の大幅な省エネを達成しており、画像性能上も遜色ない定着方法が実現できた。
本実施例に用いるシアントナーは、次の如く調製した。
スチレンn−ブチルアクリレート共重合体 200質量部
シアン着色剤(C.I.ピグメントブルー15:3) 14質量部
極性樹脂〔(テレフタール酸−プロピレンオキサイド変性ビスフェノールA)ポリエステル、酸価15、ピーク分子量60000〕〕 10質量部
負荷電性制御剤(ジアルキルサリチル酸金属化合物) 2質量部
上記組成物は、エクストルーダーを用い十分に溶融混練した後、機械的に粗粉砕し、粗粉砕物ジェット流を用いて衝突板に衝突させて微粉砕し、更にコアンダー効果を用いた気流分級機で微粉砕物を分級することで、重量平均径が8.5μmであり、個数変動係数が29%の不定形シアントナーを得た。この不定形シアントナーと市販のリン酸カルシウム微粉体とをヘンシェルミキサーで混合後、得られた混合粉体を水が入っている容器へ投入し、更にホモミキサーを用い水中に分散させ、水温を徐々に昇温させ、温度80℃で3時間加熱処理せしめた。その後希塩酸を容器に添加し、シアントナー粒子表面のリン酸カルシウムを十分溶解した。シアントナーを濾別後に洗浄、乾燥せしめ、次いで400メッシュの篩いを通して凝集物を除いてシアントナーを得た。得られたシアントナーは、電子顕微鏡観察でほぼ球形形状を示し、且つ円形度が0.95であった。得られたシアントナーの重量平均径は、7.7μmで個数変動係数は28%であった。同様の方法で円形度が、0.95以上0.96以下の範囲でイエロートナー、マゼンタトナー、ブラックトナーが得られた。得られた各色トナーを実施例1に記載の改造機で画出しを行い、記録媒体上に未定着トナー画像を得た。
光重合組成物は、ジプロピレングリコールジアクリレート(ニ官能モノマー)40質量部、トリメチロールプロパントリアクリレート(三官能モノマー)40質量部、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(四官能モノマー)10質量部、フェニルビス−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−ホスフィンオキシド(光重合開始剤)5質量部を混合し、200mPa・sの粘度を示す調合液を得た。この調合液を特開2005−254803号公報に記載の簡易なロールコーターを用い、予め作製しておいた未定着のトナー画像に塗工量4μmの厚さで塗工した。
図3に示すようにロールコーター10は、塗布ローラ11と、塗布ローラ11の上部に配置された空間形成基材13と、リング形状の弾性シール部材15と、付勢手段14を有する。付勢手段14により空間形成基材13を付勢すると、空間形成基材13と塗布ローラ11と弾性シール部材15とで囲まれる空間Aが形成される。この空間Aに空間形成基材13に設けた供給孔(不図示)から前述した調合液12を供給し保持させる。空間Aへの調合液12の供給はポンプで行われ、塗布ローラ11の回転、停止に応じて空間Aに対する調合液の供給/回収が調整される。塗布ローラ11が停止した状態では、塗布ローラ11と弾性シール部材15は密着しており、両者の間に微小な隙間はあっても調合液12の表面張力の作用で空間Aから液が漏れることは無い。塗布ローラ11が回転すると、調合液12が一定の量で塗布ローラ11の表面に供給される。未定着トナー画像を載せた記録媒体Pが塗布ローラ11とバックアップローラ16の間を搬送されると同時に調合液12である光重合組成物がトナー画像に塗布される。ロールコーター10の下流には、光照射装置20が配置されており、実施例1と同様に光照射が行われることにより光重合反応が急速に進み定着が完了する。
画像の評価方法は、実施例1を踏襲した。比較例1と比較した省エネ度合いは実施例1と同じである。光照射時間は、0.1秒の暴露時間で光重合反応が急速に進み、画像の定着性には、問題が生じなかった。例えばトレーに多数枚積載された定着済み記録媒体の画像が裏写りする事も又摺擦に対しても画像に関する問題は、発生しなかった。得られた画像の評価結果は、表1と表2に示す。表1に示すように比較例1の画像サンプルと比較し彩度の比率は、91%を示した。更に、本実施例のトナーには離型剤が含まれないので、一例として、耐久1万枚時(32℃、80%RH)の濃度低下量が従来例(1.4→1.0)に比べて、1.4→1.2と少ないメリットがある。
本実施例は、光照射装置と光重合組成物以外は、実施例1と同様のトナー、画像形成装置、画像評価方法を用いた。光重合組成物は、トリプロピレングリコールジアクリレート(ニ官能モノマー)80質量部、トリメチロールプロパントリアクリレート(三官能モノマー)10質量部、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(サートマー社製:四官能モノマー)1質量部、フェニルビス−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−ホスフィンオキシド(チバ・ガイギー社製:光重合開始剤)5質量部を混合し40mPa・sの粘度を示す調合液を得た。この調合液をミマキエンジニアリング社製大判IJ機であるUJF−605cIIに搭載し、調合液を加熱せしめた状態で予め作製しておいた未定着のトナー画像に塗工量6μmの厚さで塗工した。本実施例の光照射装置は、信学技報,vol107,no522,p5−8(2008)で提案されたトリアゾール系誘導体を発光材料に用いCBPと組み合わせ、発光半値巾が42nmで、ピーク波長が380nmを有するOLED−UV光を利用した。UV照射強度は、650mW/cmの強度がレターサイズ巾(215.9mm)の照射エリアをカバーするようにした。副走査方向は、6mm巾の面発光素子を切り出し樹脂封止を行ない、直方体の発光素子ユニットとした。フル点灯時の消費電力は135Wであり、比較例1の加熱定着器の最大消費電力(約300W)に比べて、約55%減の大幅な省エネを実現するものである。得られた画像の評価結果は、表1と表2に示す。表1に示すように比較例1と比較し彩度の比率は、92%を示した。
本実施例では、実施例1に用いた画像形成装置を用い、以下に示すトナーを用い記録媒体上に未定着のトナー画像を形成した。
スチレン−nブチルアクリレート共重合体(Mw7万、Mn2万) 200質量部
シアン着色剤(C.I.ピグメントブルー15:3) 14質量部
エチレンープロピレン共重合体ワックス 3質量部
極性樹脂〔(テレフタル酸−プロピレンオキサイド変性ビスフェノールA)ポリエステル、酸価15、ピーク分子量60000〕〕 10質量部
負荷電性制御剤(ジアルキルサリチル酸金属化合物) 2質量部
上記組成物は、エクストルーダーを用い十分に溶融し混練した後、機械的に粗粉砕し、粗粉砕物をジェット流を用いて衝突板に衝突させて微粉砕し、更にコアンダー効果を用いた気流分級機微粉砕物を分級し、重量平均が8.5μmであり、個数変動係数が37%であり、円形度が0.88の不定形シアントナーを得た。同様に、着色剤としてC.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントレッド202またはグラフトカーボンブラックを用い、イエロートナー、マゼンタトナー、ブラックトナーを得た。画像形成装置は、実施例1を踏襲しLBP5050の定着器を取り外した改造機を用意し、調製した各色の一成分系現像剤を、それぞれ現像器に入れ記録媒体上に未定着のトナー画像を得た。光重合組成物、光照射装置や画像の評価方法も、実施例1を踏襲した。
光照射時間は、0.15秒間暴露した。光重合反応の進行は、実施例1と比べ1.5倍の時間を必要とした。つまり、これを実施例1と同じ時間0.1秒で定着完了するには、LEDの最大消費電力を1.5倍(120W)にする必要があるけれども、それでも比較例1の加熱定着器の最大消費電力約300Wに比べると約60%減の省エネを実現できる。定着した画像の定着性には、問題が生じなかった。例えばトレーに多数枚積載された記録媒体の定着済み画像が裏写りする事も又摺擦に対しても画像に関する問題は、発生しなかった。
光重合組成物と光照射条件を変更させた以外は実施例1を踏襲した。光重合組成物は、ジプロピレングリコールジアクリレート(ニ官能モノマー)85質量部、トリメチロールプロパンエトキシトリアクリレート(三官能モノマー)10質量部、フェニルビス−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−ホスフィンオキシド(光重合開始剤)5質量部を混合し17mPa・sの粘度を示す調合液を用いた。光照射時間は、0.2秒間暴露した。光重合反応の進行は、実施例1と比べ2倍の時間を必要とした。つまり、これを実施例1と同じ時間0.1秒で定着完了するには、LEDの最大消費電力を2倍(160W)にする必要があるけれども、それでも比較例1の加熱定着器の最大消費電力約300Wに比べると約45%減の省エネが実現できる。定着した画像の定着性には、問題が生じなかった。例えばトレーに多数枚積載された記録媒体の定着済み画像が裏写りする事も又摺擦に対しても画像に関する問題は、発生しなかった。
(比較例1)
正規の加熱定着器を搭載するLBP5050を用い、画像サンプルを出力した。LBP5050に塔載されているトナーは、離型剤を含んでいる。また、LBP5050のプリント動作時(未定着トナー像の加熱定着時)に消費される加熱定着器の最大消費電力は約300Wである。加熱定着後に得られた画像の評価結果は、表1、表2、図1、及び図2に示す。

Claims (5)

  1. 記録媒体上に形成された未定着トナー画像に光重合組成物を塗布し、その後、遠赤外領域に発光波長帯を持たず且つ極大発光波長が360nm以上420nm以下の領域にある光を発光ダイオード又は有機EL素子を用いて前記光重合組成物に照射し、光重合反応を利用して前記光重合組成物を硬化させて前記未定着トナー画像を前記記録媒体に定着することを特徴とするトナー画像定着方法。
  2. 前記光重合組成物が4官能以上の多官能アクリルモノマーを含有することを特徴とする請求項1に記載のトナー画像定着方法。
  3. 前記トナーの円形度が0.95以上1.00以下であることを特徴とする請求項1に記載のトナー画像定着方法。
  4. 前記トナーは離型剤を含有しないことを特徴とする請求項1に記載のトナー画像定着方法。
  5. 画像表面に光重合性組成物が付与されている未定着トナー画像を有する記録媒体を用意し、該記録媒体に、遠赤外領域に発光域を実質的に有さず、且つ極大発光波長が360nm以上420nm以下の領域にある光を照射して前記光重合性組成物に光重合反応を起こさせることで前記未定着トナー画像を前記記録媒体に定着することを特徴とするトナー画像定着方法。
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