JP2011063889A - クロススプレー電界紡糸 - Google Patents
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Abstract
【課題】ナノファイバー繊維全長に渡って均一な修飾を可能とし、溶質および溶媒の選択自由度を下げることなく、界面活性剤を使用することなく一律的な操作によって簡便に所望の芯鞘構造のナノファイバーを製造することが可能なナノファイバーの製造方法を提供すること。
【解決手段】電界紡糸により形成される芯物質としてのナノファイバーに対して、被覆材料をスプレーエアロゾル粒子として接触させる工程を含む、被覆材料で被覆されて芯鞘構造を有するナノファイバーの製造方法。
【選択図】なし
【解決手段】電界紡糸により形成される芯物質としてのナノファイバーに対して、被覆材料をスプレーエアロゾル粒子として接触させる工程を含む、被覆材料で被覆されて芯鞘構造を有するナノファイバーの製造方法。
【選択図】なし
Description
本発明は、繊維表面および繊維三次元構造を制御したナノファイバー及びその製造方法に関する。
芯鞘二重構造や表面に特定の物質が偏在するナノファイバー繊維の作製方法として、二筒式ノズルを利用した同軸繊維電界紡糸法(例えば、非特許文献1)や、電界紡糸溶液にブロックポリマー・エマルジョン・相分離溶媒などの相分離系を導入する方法(例えば、非特許文献2)が知られている。
非特許文献1においては、異なるシリンジ中に充填した二種の高分子溶液を、それぞれ外筒と内筒を同軸にて配置した一つの押出口へ導くことにより、それらの溶液の外層と内層を形成させつつ電界紡糸ジェットを発生させる方式を採用している。この手法では二種の高分子溶液がジェットの飛行中に互いに混合すると、結果として外層・内層の区別はなくなり、芯鞘構造ファイバーは得られなくなる。このため二種の溶液の溶媒を非相溶の組み合わせにするか、あるいは高分子濃度の差を設けることにより飛行流体中でのレイノルズ数の差を発生させて非相溶性を設定するなどの特別な条件設定が必要となる。ノズルから吐出された直後は、所望の芯鞘構造を維持できているが、静電紡糸のブレークポイント以降では、破断された構造となり目的とする構造が維持できない。また、非相溶の溶媒セットを選択した場合でも、長距離のジェットの飛行中に芯鞘状に相分離するよりもむしろ半割状に分離する可能性も高く、ナノファイバー繊維全長に渡って均一な構造を付与できないという問題がある。
非特許文献2では、長距離にわたって均一な芯鞘構造ファイバーを形成する手法として、ポリエチレングリコールの水溶液を、ポリエチレングリコールーポリ乳酸ブロック共重合体のクロロホルム溶液中に乳化させたW/Oエマルジョンを電界紡糸している。この方法ではナノファイバーの芯部にポリエチレングリコール層、鞘部にはポリエチレングリコール部を芯部にグラフトしたポリ乳酸層を、長距離にわたって形成することに成功しているが、このような理想的な芯鞘構造ファイバーを得るために、鞘層に特殊な両媒性ブロック共重合体を用いており、様々な材質のナノファイバーに自在に鞘構造を形成させ得る一般的手法とはなっていない。エマルジョン電界紡糸は、上記非特許文献1のような半ば強制的に溶液を分離しつつ噴射することで芯鞘化するのではなく、溶液における相分離を適切に制御して一液で電界紡糸するため、より長距離にわたる芯鞘化が期待できる一方で、異なる高分子を含む系で安定なエマルジョンを形成させる特殊な条件を設定する必要があり汎用性に欠けている。非特許文献2に記載の方法は、非相溶な溶媒の組み合わせを用いるため、溶質の選択自由度が制限されることや、界面活性剤が必要であり溶質に制約が加わり、また界面活性剤の存在自体が禁忌的な場合がある等の問題があるため、産業的に利用し得る一般的手法とはなり得ない。
上記の通り、同軸繊維電界紡糸法や電界紡糸溶液にブロックポリマー・エマルジョン・相分離溶媒などの相分離系を導入する方法では、形成し得る芯鞘構造の設計自由度は限られていた。
S. N.Reznik et al., Phys. Fluids 18, 3406(2006)
X. jing et al., Macromol. Rapid Commun. 27, 1637(2006)
本発明は、上記した従来技術の問題点を解消することを解決すべき課題とした。即ち、本発明は、ナノファーバー繊維全長に渡って均一な修飾を可能とし、溶質および溶媒の選択自由度を下げることなく、界面活性剤を使用することなく一律的な操作によって簡便に所望の芯鞘構造のナノファイバーを製造することが可能なナノファイバーの製造方法、及び上記方法により製造されたナノファイバーを提供することを解決すべき課題とした。
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、電界紡糸により形成される芯物質としてのナノファイバーに対して、被覆材料をスプレーエアロゾル粒子として接触させることによって、被覆材料で被覆されて芯鞘構造を有するナノファイバーを簡便に製造できること見出した。本発明はこれらの知見に基づいて完成したものである。
即ち、本発明によれば、電界紡糸により形成される芯物質としてのナノファイバーに対して、被覆材料をスプレーエアロゾル粒子として接触させる工程を含む、被覆材料で被覆されて芯鞘構造を有するナノファイバーの製造方法が提供される。
好ましくは、芯物質としてのナノファイバーの電位とは異なる電位を有する被覆材料をスプレーエアロゾル粒子として接触させる。
好ましくは、電界紡糸により形成される芯物質としてのナノファイバーと、被覆材料のスプレーエアロゾル粒子とを異なる電圧により帯電させる。
好ましくは、電界紡糸により形成される芯物質としてのナノファイバーと、被覆材料のスプレーエアロゾル粒子とを異なる電圧により帯電させる。
好ましくは、ナノファイバーとスプレーエアロゾルに印加する電圧の正負が同符号で、ナノファイバーに印加する電圧の絶対値が、スプレーエアロゾル粒子に印加する電圧の絶対値よりも高い。
好ましくは、ナノファイバーとスプレーエアロゾルに印加する電圧の正負が同符号で、ナノファイバーに印加する電圧の絶対値が、スプレーエアロゾル粒子に印加する電圧の絶対値よりも5kV以上高い。
好ましくは、ナノファイバーに印加する電圧が+6kV〜+25kVであり、スプレーエアロゾル粒子に印加する電圧が+1kV〜+20kVであるか、あるいは、ナノファイバーに印加する電圧が−6kV〜−25kVであり、スプレーエアロゾル粒子に印加する電圧が−1kV〜−20kVである。
好ましくは、ナノファイバーとスプレーエアロゾルに印加する電圧の正負が同符号で、ナノファイバーに印加する電圧の絶対値が、スプレーエアロゾル粒子に印加する電圧の絶対値よりも5kV以上高い。
好ましくは、ナノファイバーに印加する電圧が+6kV〜+25kVであり、スプレーエアロゾル粒子に印加する電圧が+1kV〜+20kVであるか、あるいは、ナノファイバーに印加する電圧が−6kV〜−25kVであり、スプレーエアロゾル粒子に印加する電圧が−1kV〜−20kVである。
好ましくは、スプレーエアロゾル粒子への帯電方法が、環状電極又は環状網目電極による誘導帯電である。
好ましくは、電極の直径が5mm〜33mmである。
好ましくは、電極とスプレーノズルとの距離が4mm〜15mmである。
好ましくは、ナノファイバーとスプレーノズルとの距離が100cm〜300cmである。
好ましくは、ナノファイバー繊維とスプレーノズルから噴霧した粒子が、完全に乾燥する前に接触するようにする。
好ましくは、電極の直径が5mm〜33mmである。
好ましくは、電極とスプレーノズルとの距離が4mm〜15mmである。
好ましくは、ナノファイバーとスプレーノズルとの距離が100cm〜300cmである。
好ましくは、ナノファイバー繊維とスプレーノズルから噴霧した粒子が、完全に乾燥する前に接触するようにする。
好ましくは、被覆材料をスプレーエアロゾル粒子として噴霧するスプレー時間が連続的又は断続的である。
好ましくは、被覆材料をスプレーエアロゾル粒子として噴霧するスプレー圧力が、0.1MPaから0.5MPaである。
好ましくは、被覆材料が蛋白質である。
好ましくは、蛋白質がゼラチンである。
好ましくは、被覆材料をスプレーエアロゾル粒子として噴霧するスプレー圧力が、0.1MPaから0.5MPaである。
好ましくは、被覆材料が蛋白質である。
好ましくは、蛋白質がゼラチンである。
好ましくは、スプレーノズル後方から電界紡糸部に向かって送風する。
好ましくは、スプレーノズルから電界紡糸部に至る流路をスプレーノズルと同電荷に帯電させた板によって遮蔽する。
好ましくは、スプレーノズルから電界紡糸部に至る流路をスプレーノズルと同電荷に帯電させた板によって遮蔽する。
本発明によればさらに、上記した本発明の方法により製造される、被覆材料で被覆されて芯鞘構造を有するナノファイバーが提供される。
本発明によればさらに、上記した本発明による被覆材料で被覆されて芯鞘構造を有するナノファイバーを含む有害物質除去材が提供される。
本発明によればさらに、上記した本発明による被覆材料で被覆されて芯鞘構造を有するナノファイバーを含む有害物質除去材が提供される。
本発明によれば、界面活性剤を使用することなく一律的な操作によって、所望の被覆材料で被覆されて芯鞘構造を有するナノファイバーを簡便に製造することができる。
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
本発明においては、電界紡糸により形成される芯物質としてのナノファイバーに対して、被覆材料をスプレーエアロゾル粒子として接触させることによって、被覆材料で被覆されて芯鞘構造を有するナノファイバーを製造する。本発明の実施方法の概要を図1に示す。本発明では、繊維主構造を形成するための静電紡糸ノズルに電圧VHを印加し、設置したターゲットに向かって静電紡糸を行う。また、表面修飾用の被覆材料を溶解した液をスプレーノズルから噴霧し、環状電極を経由してVHより低い電圧VLを印加する(図1)。これにより、帯電したナノファイバー繊維表面と電位差のあるエアロゾルが吸引し合い静電紡糸表面にエアロゾル物質がコーティングし所望の芯鞘構造を形成できる(図2)。
本発明においては、電界紡糸により形成される芯物質としてのナノファイバーに対して、被覆材料をスプレーエアロゾル粒子として接触させることによって、被覆材料で被覆されて芯鞘構造を有するナノファイバーを製造する。本発明の実施方法の概要を図1に示す。本発明では、繊維主構造を形成するための静電紡糸ノズルに電圧VHを印加し、設置したターゲットに向かって静電紡糸を行う。また、表面修飾用の被覆材料を溶解した液をスプレーノズルから噴霧し、環状電極を経由してVHより低い電圧VLを印加する(図1)。これにより、帯電したナノファイバー繊維表面と電位差のあるエアロゾルが吸引し合い静電紡糸表面にエアロゾル物質がコーティングし所望の芯鞘構造を形成できる(図2)。
エアロゾルの局所補足・集中噴射装置を用いることにより、さらに効率的なクロススプレーによるナノファイバーの修飾が可能になる。具体的には、発生した帯電エアロゾルの噴流経路全体に、エアロゾルの電荷とは同符号帯電させたホーン状の壁を配備し、電界紡糸ジェットへ局所的に噴射できるように噴流を導くことができる。特にエアロゾル中に希少試料を含ませる場合には、電界紡糸ジェットと相互作用せずに飛散して失われる試料を大幅に減じることとなり、コスト面で大きな効果が得られる。また、スプレー後方から静電紡糸ジェット部に向かう風の流れを作ることでエアロゾルを効率良くナノファイバーに収着させることも可能である。
さらに本発明では、水面コレクタへのクロススプレー電界紡糸を行うことができる。クロススプレー電界紡糸の実際の材料設計への応用として、サイトカイン固定の緩衝層となるハイドロゲルコーティングナノファイバーの生成と、かつ生成・回収と同時にサイトカイン固定を連続的に行える迅速機能化法が提案される。具体的には、光架橋性ゼラチンをクロスプレーしてポリ乳酸ナノファイバーに十分量被覆させ、この過程で光照射を行ってゲル化させつつ、水浴コレクタにて回収する。この際、コレクタ中にサイトカインと、ゼラチンへの結合反応分子を加えておき、ゲルファイバーが着水しつつ順次サイカインと反応し固定化される系を構築する。この方法では、ナノファイバーが水浴コレクタ中で三次元な運動自由度を保持しつつ回収されるため、通常の電界紡糸で平板コレクタにメッシュ上に回収される場合に比べて、はるかに反応溶液と相互作用しやすいという利点があり、かつゲルで被覆されているため疎水性のファイバーでも水面に浮かんでしまわずにコレクタに沈降して三次元的なマトリックスを形成できる。サイトカインで機能化された細胞足場材料を迅速に形成させる新技術を確立できる。
本発明ではナノファイバーの表面修飾法としての利用を提案しているが、一方、電界紡糸過程の飛行流体へエアロゾル中からの溶質を収着させるという現象は、新しい化学反応場としての可能性を含む。すなわち、電界紡糸時の飛行流体中で高分子溶液は高度に濃縮されつつ、かつよく引き延ばされ配向が比較的高まった状態にある高分子に対して、これと反応性の高い溶質をその場で供給することにより、バルク反応では乱雑にしか起こらなかった化学反応をよく制御して進行させるといった反応場となる可能性が考えられる。
また、被覆材料のスプレー噴霧を適宜ON/OFFする、あるいはスプレー装置を複数台設けて被覆材の種類を変更することにより、ナノファイバー積層体の層構造を任意に調節できる。本発明の方法は、細胞培養基質や気相センサーなどへの応用も考えられる。
本発明において電界紡糸により形成される芯物質としてのナノファイバーを構成する繊維の種類は、ナノファイバーを形成できるものではあれば特に限定されない。線維の具体例としては、以下の実施例で用いたポリ乳酸−カプロラクトン共重合体は好ましい一例であるが、そのほかにも、例えば、セルロースエステル、ビニロン、アクリル系、ポリウレタンのうち少なくとも1種類を主成分とする繊維を使用することもできる。
セルロースエステルとは、セルロースの水酸基を有機酸でエステル化されているセルロース誘導体を指す。エステル化に用いる有機酸は、例えば酢酸・プロピオン酸・酪酸などの脂肪カルボン酸、安息香酸・サリチル酸などの芳香族カルボン酸などがある。単独もしくは併用したものであってもよい。セルロースの水酸基のエステル基置換率について特に制限はないが、60%以上であることが好ましい。
ポリアミドとは、化学構造単位にアミド結合を有する線状高分子からなる繊維を指す。ポリアミドの中でも、エチレンジアミン、1−メチルエチレンジアミン、1,3−プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどの脂肪族ジアミンと、マロン酸、コハク酸、アジピン酸などの脂肪族ジカルボン酸との結合体である直鎖型脂肪族ポリアミドが好ましい。特に、ナイロン66が好ましい。前記のジアミンおよびジカルボン酸以外にも、ε−カプロラクタムやラウロラクタム等のラクタム類、アミノカプロン酸、アミノウンデカン酸等のアミノカルボン酸類、パラ−アミノメチル安息香酸等を単独または共重合成分として用いた脂肪族ポリアミドを用いることもできる。特に、ε−カプロラクタムの単独使用で製造されるナイロン6が好ましい。
ビニロンとは、ビニルアルコール単位を65質量%以上含む線状高分子からなり、温度20℃湿度65%の環境に1週間以上放置した後の水分率が7%未満である繊維を指す。ビニルアルコールの水酸基をホルマール化したものであってもよいが、水酸基をホウ酸架橋したポリマーや、公知のアルカリ紡糸法や冷却ゲル紡糸法などの方法により耐水化処理が施された非ホルマール化繊維であってもよい。ビニルアルコール単位以外の成分としてはエチレン鎖、酢酸ビニル鎖などが含まれていてもよいが、ビニルアルコール単体から形成される繊維であることが好ましい。
アクリル系とは、アクリロニトリル基の繰返し単位が質量比で40%以上含む繊維を指し、例えば、アクリロニトリルのホモポリマーや、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、酢酸ビニルなどの非イオン性モノマーとアクリルニトリルのコポリマー、ビニルベンゼンスルホン酸、アリルスルホン酸などのアニオン性モノマーとアクリロニトリルのコポリマー、あるいは、ビニルピリジン、メチルビニルピリジンなどのカチオン性モノマーとアクリロニトリルのコポリマーなどの例がある。アクリロニトリルとミルクカゼインから形成されるいわゆるプロミックス繊維も本カテゴリーに包含される。
ポリウレタンは、単量体相互の結合部分または基本となる基材重合体相互の結合部分が主としてウレタン結合による線状合成高分子からなる繊維を指す。ポリウレタンセグメントを質量比で85%以上含むことが望ましい。低融点で柔らかい分子量数千までのソフトセグメントと、剛直性で凝集力の高い高融点のハードセグメントからなるセグメント化ポリウレタンのブロック共重合であることが望ましい。ソフトセグメントとしては、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポリエーテル、ハードセグメントとしては、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、m-キシレンジイソシアネートなどで形成されるウレタン基を用いることができる。
電界紡糸は、加工技術、2005年、40巻、No.2、101頁、および167頁;Polymer International誌、1995年、36巻、195〜201頁;Polymer Preprints誌、2000年、41(2)号、1193頁;Journal of Macromolecular Science : Physics誌、1997年、B36、169頁などに開示されている方法に準じて行うことができる。
紡糸に用いる溶媒としては、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタンなどの塩素系溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド系溶媒、アセトン、エチルメチルケトン、メチルイソプロピルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒、THF、ジエチルエーテルなどのエーテル系溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール系溶媒など、合成樹脂繊維に用いられる樹脂を溶解するものであれば何でも用いることができる。これらの溶媒は単独で用いてもよいし、複数種混合して用いてもよい。
電界紡糸法を採用する場合には樹脂溶液に、さらに塩化リチウム、臭化リチウム、塩化カリウム、塩化ナトリウムなどの塩を添加してもよい。
本発明で用いる被覆材料の種類は、ナノファイバーの表面に被覆する材料として適切なものであれば特に限定されない。被覆材料としては、例えば、蛋白質、又は合成ポリマーなどを挙げることができるが、好ましくは蛋白質である。蛋白質の具体例としては、コラーゲン、ゼラチン、アルブミン、ラミニン、カゼイン、フィブロイン、フィブリン、フィブロネクチン、ビトロネクチン、ウロキナーゼ、トロンボモジュリン、及びアンチトロンビンIIIなどを挙げることができ、特に好ましくはゼラチンである。
本発明においては、電界紡糸により形成されるナノファイバーに対して、被覆材料をスプレーエアロゾル粒子として接触させるが、このような技術を確立するに際し、電界紡糸過程で飛行する高分子流体が正に帯電していることに着目し、電界紡糸高分子と電位差を持たせた電圧を印加することで、電界紡糸高分子と相対的に電位差がある状態に帯電させたエアロゾル中に溶質を閉じ込めてその流体へ噴射し、静電引力的に被覆することができる。このような手法をクロススプレー電界紡糸とも称する。本発明によるクロススプレー電界紡糸は、以下に記載するパラメータを適宜設定して行うことができる。各パラメータについて、一般的に使用される範囲と好ましい範囲を以下に記載する。
(1)エアロゾル生成用スプレーガンへの印加圧力: 0.1MPaから0.5MPa、特に好ましくは0.2MPa
(2)環状電極の直径(図1におけるR):5mmから33mm、好ましくは、8mmから33mm、更に好ましくは12mmから25mm、最も好ましくは17mm
(3)環状電極とスプレー噴射口間の距離(図1におけるd):4mmから15mm、最も好ましくは8mm
(4)スプレー噴霧角(図1におけるθの2倍):45〜90度、最も好ましくは60度
(5)環状電極への印加電圧:+1kV〜+20kV、さらに好ましくは+5kV〜+15kV、最も好ましくは+10kV、あるいは−1kV〜−20kV、さらに好ましくは−5kV〜−15kV、最も好ましくは−10kV
(6)スプレー口と電界紡糸ジェットとの相対的配置(水平距離):100〜300cm、最も好ましくは200cm
(7)スプレー口と電界紡糸ジェットとの相対的配置(垂直距離):0〜−10cm、最も好ましくは−5cm
(8)周囲湿度:37から60%RH(相対湿度)、最も好ましくは40%RH(相対湿度)
(9)ナノファイバーに印加する電圧:+6kV〜+25kV、さらに好ましくは+10kV〜+20kV、最も好ましくは+15kV、あるいは、環状電極に印可する電圧が負の場合は、−6kV〜−25kV、さらに好ましくは−10kV〜−20kV、最も好ましくは−15kV
(2)環状電極の直径(図1におけるR):5mmから33mm、好ましくは、8mmから33mm、更に好ましくは12mmから25mm、最も好ましくは17mm
(3)環状電極とスプレー噴射口間の距離(図1におけるd):4mmから15mm、最も好ましくは8mm
(4)スプレー噴霧角(図1におけるθの2倍):45〜90度、最も好ましくは60度
(5)環状電極への印加電圧:+1kV〜+20kV、さらに好ましくは+5kV〜+15kV、最も好ましくは+10kV、あるいは−1kV〜−20kV、さらに好ましくは−5kV〜−15kV、最も好ましくは−10kV
(6)スプレー口と電界紡糸ジェットとの相対的配置(水平距離):100〜300cm、最も好ましくは200cm
(7)スプレー口と電界紡糸ジェットとの相対的配置(垂直距離):0〜−10cm、最も好ましくは−5cm
(8)周囲湿度:37から60%RH(相対湿度)、最も好ましくは40%RH(相対湿度)
(9)ナノファイバーに印加する電圧:+6kV〜+25kV、さらに好ましくは+10kV〜+20kV、最も好ましくは+15kV、あるいは、環状電極に印可する電圧が負の場合は、−6kV〜−25kV、さらに好ましくは−10kV〜−20kV、最も好ましくは−15kV
本発明の方法で製造される被覆材料で被覆されて芯鞘構造を有するナノファイバーの用途は特に限定されないが、例えば、有害物質除去材として使用することができる。本発明のナノファイバーを有害物質除去材として使用する場合、本発明のナノファイバーをそのまま用いてもよいし、あるいは、必要に応じて、各種の有害物質除去要素を担体に担持させてもよい。有害物質除去要素の具体例としては、酵素、抗体、抗菌剤、防カビ剤、触媒、又は強誘電材料などを挙げることができる。酵素としては、リパーゼなどの加水分解酵素、又はプロテアーゼなどの蛋白質分解酵素などを使用することができるが、これらに限定されるものではない。抗体の種類は、捕捉しうる有害物質の種類に対応する。抗体により捕捉される有害物質としては、例えば、ウイルス、及びアレルゲンを挙げることができる。具体的には、インフルエンザウイルス、コロナウイスル(SARSウイルス)、アデノウイルス、ライノウイルスなどを挙げることができる。アレルゲンとしては、スギ花粉のcry-j1、cry-j2などを挙げることができる。抗菌剤及び防カビ剤としては、有機シリコン第4級アンモニウム塩系、有機第4級アンモニウム塩系、ビグアナイド系、ポリフェノール系、キトサン、銀担持コロイダルシリカ、ゼオライト担持銀系などが挙げられる。触媒としては、例えば、酸化チタンなどの光触媒などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。強誘電材料としては、フッ化ビニリデン系、又はポリアミド系高分子などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
本発明の有害物質除去材は、空気清浄機用フィルター、マスク、拭き取りシート、布きん、壁紙、シーツ、カーテンなどに適用することができる。
空気清浄機用フィルターとして使用する際には、粗塵を除くためのプレフィルター、除塵フィルター、消臭効果を示す光触媒フィルター、他の有害物質を除去する抗菌フィルター、VOC吸着フィルターなど任意の公知のフィルターと組み合わせて使用してもよい。
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
ファイバーと異なる電位を有するエアロゾルが電界紡糸ジェットに相互作用し、その中に含んだ溶質をファイバーへと収着させ得ることができるかを調べるため、エアロゾルとして蛍光色素標識したゼラチン水溶液を用い、ポリ乳酸-カプロラクトン共重合体(PLCLと略記)に対するクロススプレー電界紡糸を行った。PLCLの電界紡糸の条件は以下の通りである。
ポリマー:poly(L-lactide-co-caprolactone); PLCL(分子量: 310000, LA/CA=75:25)
紡糸溶液:8%PLCL hexafluoro isopropanol溶液
電界紡糸印加電圧:15kV
流速:1ml/hr
AG:30cm
紡糸溶液:8%PLCL hexafluoro isopropanol溶液
電界紡糸印加電圧:15kV
流速:1ml/hr
AG:30cm
クロススプレー電界紡糸法において、以下のパラメータを下記の通り設定し、表1に記載の組み合わせで実験を行った。なお、環状電極の設定を図1に示す。
(1)エアロゾル生成用スプレーガンへの印加圧力:0.2MPa
(2)環状電極の直径(図1におけるR):5mm、8mm 、又は17mm
(3)環状電極とスプレー噴射口間の距離(図1におけるd):4mm、8mm 、又は15mm
(4)スプレー噴霧角(図1におけるθの2倍):60度
(5)環状電極への印加電圧:5kV又は10kV
(6)スプレー口と電界紡糸ジェットとの相対的配置(水平距離):200cm
(7)スプレー口と電界紡糸ジェットとの相対的配置(垂直距離):−5cm
(8)スプレー液:100μM ローズベンガル水溶液又は30μM FITC-ゼラチン水溶液
(9)周囲湿度:40%RH(相対湿度)
(1)エアロゾル生成用スプレーガンへの印加圧力:0.2MPa
(2)環状電極の直径(図1におけるR):5mm、8mm 、又は17mm
(3)環状電極とスプレー噴射口間の距離(図1におけるd):4mm、8mm 、又は15mm
(4)スプレー噴霧角(図1におけるθの2倍):60度
(5)環状電極への印加電圧:5kV又は10kV
(6)スプレー口と電界紡糸ジェットとの相対的配置(水平距離):200cm
(7)スプレー口と電界紡糸ジェットとの相対的配置(垂直距離):−5cm
(8)スプレー液:100μM ローズベンガル水溶液又は30μM FITC-ゼラチン水溶液
(9)周囲湿度:40%RH(相対湿度)
上記で製造された被覆材料で被覆されたナノファイバーの写真を図4から図9に示す。表1の試料番号1から6の結果を図4に示し、試料番号7及び8の結果を図5に示し、試料番号9及び10の結果を図6に示し、試料番号11の結果を図7に示し、試料番号12及び13の結果を図8に示し、試料番号14から17の結果を図9に示す。
図4に示す通り、環状電極の直径(図1におけるR)は5mm、8mm又は17mmの何れでも実用上十分な結果が得られ、また環状電極とスプレー噴射口間の距離(図1におけるd)は4mm、8mm 、又は15mmの何れでも良好な結果が得られた。
図5に示す通り、環状かつ網目状の電極を用いた場合は、被覆材料のナノファイバーへの収着量を増大できることが分かった。
図6に示す通り、環状電極への印加電圧は5kV又は10kVの何れでも、ファイバー1本1本がくっきりと発光することが分かる。
図7に示す通り、本発明の方法によれば、ほとんどのファイバーについて全長にわたる
被覆材料の収着が見られた。これは従来技術を大幅に改善するものである。
被覆材料の収着が見られた。これは従来技術を大幅に改善するものである。
図8に示す通り、スプレーガン後方から送風し、紡糸ジェットへのスプレーの送達を補助することにより、被覆材料の吸着について顕著な効率向上が見られた。
図9に示す通り、pH3〜10のFITCゼラチン水溶液を噴霧した場合、何れの場合もFITCゼラチンで被覆されてナノファイバーを製造することができた。また、FITCゼラチン水溶液のpHが7以上の場合には、粒状の発光の他に線状に連続的に発光するファイバーが多数観察された。
Claims (19)
- 電界紡糸により形成される芯物質としてのナノファイバーに対して、被覆材料をスプレーエアロゾル粒子として接触させる工程を含む、被覆材料で被覆されて芯鞘構造を有するナノファイバーの製造方法。
- 芯物質としてのナノファイバーの電位とは異なる電位を有する被覆材料をスプレーエアロゾル粒子として接触させる、請求項1に記載の方法。
- 電界紡糸により形成される芯物質としてのナノファイバーと、被覆材料のスプレーエアロゾル粒子とを異なる電圧により帯電させる、請求項1又は2に記載の方法。
- ナノファイバーとスプレーエアロゾルに印加する電圧の正負が同符号で、ナノファイバーに印加する電圧の絶対値が、スプレーエアロゾル粒子に印加する電圧の絶対値よりも高い、請求項1から3の何れかに記載の方法。
- ナノファイバーとスプレーエアロゾルに印加する電圧の正負が同符号で、ナノファイバーに印加する電圧の絶対値が、スプレーエアロゾル粒子に印加する電圧の絶対値よりも5kV以上高い、請求項4に記載の方法。
- ナノファイバーに印加する電圧が+6kV〜+25kVであり、スプレーエアロゾル粒子に印加する電圧が+1kV〜+20kVである、請求項3又は4に記載の方法。
- ナノファイバーに印加する電圧が−6kV〜−25kVであり、スプレーエアロゾル粒子に印加する電圧が−1kV〜−20kVである、請求項3又は4に記載の方法。
- スプレーエアロゾル粒子への帯電方法が、環状電極又は環状網目電極による誘導帯電である、請求項3から7の何れかに記載の方法。
- 電極の直径が5mm〜33mmである、請求項8に記載の方法。
- 電極とスプレーノズルとの距離が4mm〜15mmである、請求項8又は9に記載の方法。
- ナノファイバーとスプレーノズルとの距離が100cm〜300cmである、請求項1から10の何れかに記載の方法。
- 被覆材料をスプレーエアロゾル粒子として噴霧するスプレー時間が連続的又は断続的である、請求項1から11の何れかに記載の方法。
- 被覆材料をスプレーエアロゾル粒子として噴霧するスプレー圧力が、0.1MPaから0.5MPaである、請求項1から12の何れかに記載の方法。
- 被覆材料が蛋白質である、請求項1から13の何れかに記載の方法。
- 蛋白質がゼラチンである、請求項14に記載の方法。
- スプレーノズル後方から電界紡糸部に向かって送風することを含む、請求項1から15の何れかに記載の方法。
- スプレーノズルから電界紡糸部に至る流路をスプレーノズルと同電荷に帯電させた板によって遮蔽する、請求項1から16の何れかに記載の方法。
- 請求項1から17の何れかに記載の方法により製造される、被覆材料で被覆されて芯鞘構造を有するナノファイバー。
- 請求項18に記載の被覆材料で被覆されて芯鞘構造を有するナノファイバーを含む有害物質除去材。
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