JP2011063491A - 合成石英ガラス母材の製造方法及び合成石英ガラス母材 - Google Patents

合成石英ガラス母材の製造方法及び合成石英ガラス母材 Download PDF

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Abstract

【課題】VAD法やOVD法による大型の光学硝材用の合成石英の製造方法であって、効率よく、かつ確実に成長軸方向の非屈折率や複屈折の変動が小さい方法を提供する。
【解決手段】スス付け中の成長軸方向での成長速度変動が±5%以内になるように、水素ガス流量、排気圧、及び、堆積面温度の少なくとも1つを制御して石英ガラス微粒子堆積体を製造し、この微粒子堆積体を焼結炉Bに挿入、焼結して合成石英ガラス母材4を製造する。
【選択図】図1

Description

本発明は、光学硝材用の合成石英ガラス母材の製造方法及び光学硝材用の合成石英ガラス母材に関する。
例えば、集積回路等のパターンを露光・転写するのに用いられるステッパと呼ばれる露光装置には、照明系、投影系に多量の光学系部材が使用されている。また、前記パターンの微細化に伴い、ステッパの光源の、i線(365nm)からKrF(248nm)エキシマレーザやArF(193nm)エキシマレーザ等への短波長化が進められている。そのため、この光学系部材には、微細パターンを正確に露光・転写するために、比屈折率差(以下「Δn」という)の均質性が要求される。
Δnの均質性が高い光学系部材の材料として、光の透過性に優れる合成石英ガラスが用いられている。特に、VAD(気相軸付け)法を用いて製造された合成石英ガラス母材から成形された合成石英ガラスにあっては、高純度であり、大口径の光学系部材においても高い均質性を備えるため、前記短波長を用いたステッパ等の光学系部材の材料として多く用いられている。
VAD法では、基本的に、SiCl4(四塩化ケイ素)を火炎中で加水分解してガラス微粒子堆積体を製造する。そして、ガラス微粒子堆積体を焼結炉中で加熱しながら焼結することによって透明な円柱状の合成石英ガラス母材が製造される。このように製造された合成石英ガラス母材を、所定厚及び所定径に研削することにより、特性が均質な円板状の合成石英ガラスを複数製造することができる。
ところで、特性が均質な円板状の合成石英ガラスを複数製造するには、合成石英ガラス母材の軸方向(以下「成長軸方向」という)でのΔnの均質性が必要となる。すなわち、合成石英ガラス母材の径方向のΔnの均質性が良好であっても、成長軸方向でΔnが変動していると、同一特性とする複数の円板状の合成石英ガラスの製造歩留まりの低下につながる。
合成石英ガラス母材の成長軸方向のΔnの均質性は、合成石英ガラス母材の成長軸方向のかさ密度(g/cm3)が関係しており、このかさ密度が成長軸方向にわたって一定であれば、成長軸方向のΔnの均質性を保持できる。
合成石英ガラス母材の成長軸方向のΔnの均質性を保持する製造方法として、例えば、下記の特許文献1がある。
特開昭60−16826号公報
特許文献1には、スス外径を測定しながらスス付けし、測定されたスス外径に応じてスス量を制御することにより、特性を均一にすることが開示されている。
しかしながら、特許文献1の方法では、光ファイバ母材が対象(一般的に小型)であり、これを均一にすることが記載されているが、大型の硝材用ガラス母材を成長軸方向に均一にする方法についての記載はなく、硝材用ガラス母材の成長軸方向の均一性がどの程度必要かも不明である。
本発明は、このような問題を解決することを課題とするものである。すなわち、効率よく、かつ確実に成長軸方向の特性が均質な合成石英ガラス母材を製造できる製造方法を提供することが本発明の目的である。さらに、均一特性とする複数の円板状の合成石英ガラスを歩留まりよく製造できる合成石英ガラス母材の提供が本発明の目的である。
前記目的を達成するため、本発明にかかる合成石英ガラス母材の製造方法は、次の工程を少なくとも具備する。
スス付け法を用いた光学硝材用の合成石英ガラス母材の製造方法であって、スス付け中の成長軸方向での成長速度変動が±5%以内になるように、水素ガス流量、排気圧、及び、堆積面温度の少なくとも1つを制御することを特徴とする方法である。
前記堆積面温度が±15℃以内になるように前記水素ガス流量及び/又は排気圧を制御することを特徴とする方法である。
また、本発明にかかる合成石英ガラス母材は、次の構成を少なくとも具備する。
前述の製造方法で製造された光学硝材用の合成石英ガラス母材であって、比屈折率差の成長軸方向での変動が1.5ppm以下であることを特徴とする。
また、前述の製造方法で製造された光学硝材用の合成石英ガラス母材であって、複屈折の成長軸方向での変動が8nm/cm以下であることを特徴とする。
また、前述の製造方法で製造された光学硝材用の合成石英ガラス母材であって、OH濃度の成長軸方向での変動が3ppm以下であることを特徴とする。
本発明にかかる合成石英ガラス母材の製造方法を示す工程図。
合成石英ガラス母材は、特に短波長を用いたステッパ等の露光機に好適であり、YAGレーザ等、固体レーザを用いた加工機、あるいはドライ洗浄等に用いられる紫外線エキシマランプ等にも適用される、光学系部材の材料となる透過特性に優れた高純度の合成石英ガラスの母材である。この光学系部材は、KrFエキシマレーザ(248nm)、ArFエキシマレーザ(193nm)、F2エキシマレーザ(157nm)、YAG−FHGレーザ(266nm)、Xe2エキシマランプ(172nm)、ArFエキシマランプ(193nm)等を主とする、波長300nm以下の短波長の光を透過する特性を有するものである。
前述の合成石英ガラス母材は、図1(a)〜(c)に示す次の各工程により製造される。
第1工程:ガラス微粒子堆積工程(図1(a))
この第1工程では、ガラス微粒子堆積体をスス付け法により製造する。すなわち、排気装置1Aを有する反応容器A内において、少なくとも、ガラス微粒子(ガラス原料)と水素ガスと酸素ガスとをバーナ1に供給し、バーナ1が噴出する酸水素火炎中でガラス微粒子を生成させ、生成したガラス微粒子(以下「スス」という)を、鉛直方向に引き上げながら軸方向を中心として回転する出発棒2に対して堆積(以下「スス付け」という)させて、ガラス微粒子堆積体3を製造する。具体的なスス付け法としては、VAD(気相軸付け)、OVD法などが用いられる。
ガラス微粒子堆積体3の製造過程では、スス付け中の成長軸方向でのススの成長速度変動の要因として、バーナ1に供給する水素ガスの流量、余剰ススの排気圧、成長軸方向のスス堆積面温度等が関与している。
すなわち、ススの成長速度変動を一定にする1つの制御として、水素ガスの流量、余剰ススの排気圧、成長軸方向のスス堆積面温度を制御する手段によって達成できる。例えば、あらかじめ、成長軸方向のΔnの変動が目的の値となるススの成長速度を規定しておき、この成長速度をスス付け開始から終了まで検出する。検出結果が規定されたススの成長速度の範囲から外れないように、水素ガスの流量、余剰ススの排気圧、成長軸方向のスス堆積面温度を調節して、ススの成長速度を成長軸方向のΔnの変動が目的の値となる範囲に復帰させるものである。
ところで、ススの成長速度が変動してしまう要因の1つである成長軸方向のスス堆積面温度が高いと、ススの成長軸方向の成長速度は遅くなるとともに、かさ密度が高くなり、スス堆積面温度が低いと、ススの成長軸方向の成長速度は遅くなるとともに、かさ密度が低くなることがわかっている。
すなわち、スス堆積面温度が一定となるように制御することにより、ススの成長速度変動を一定にすることができる。具体的には、スス堆積面温度が一定となるようにバーナ1に供給する水素ガスの流量及び/又は余剰ススの排気圧を制御することにより達成できる。
具体的には、スス付け中にスス堆積面温度を検出し、検出された温度変動に応じて水素ガス流量を調節することにより、ススの成長速度変動を一定にすることができる。また、スス付け中にスス堆積面温度を検出し、検出された温度変動に応じて排気量を増減し、反応容器A内の温度を上下させることでスス堆積面温度を一定にすることができる。
前述の水素ガスの流量制御には、例えば、水素ガスと酸素ガス流量との流量比をパラメータとして調節する制御が挙げられる。この制御の場合、例えば、水素ガス流量と酸素ガス流量との流量比を、化学量論比の2.0を基準値として行い、この基準値を変動させることにより達成できる。
なお、スス堆積面温度を一定にする制御は、前述の水素ガス流量又は排気圧の制御により行うものに限らない。例えば、反応容器内に送り込む空気流の風速などを制御することでも可能である。
ここでいう「成長速度変動が一定」とは、成長速度変動が全くない一定及び略一定(例えば、±5%以内が好ましい。)を含む。また、「堆積面温度が一定になるように」とは、堆積面温度変動が全くない一定及び略一定(例えば、成長軸方向での最高温度の変動が±15℃以内が好ましい。)を含む。
第2工程:ガラス微粒子堆積体焼結工程(図1(b))
第1工程で製造されたガラス微粒子堆積体3を、焼結炉Bに挿入して焼結することにより、透明な円柱状の合成石英ガラス母材4となる(図1(c))。
前述の合成石英ガラス母材4の製造方法によると、スス付け中のススの成長速度変動を一定にすることにより、堆積するススのかさ密度を成長軸方向に一定にすることができる。したがって、成長軸方向の特性が均質な合成石英ガラス母材4を製造できる。
前述の短波長を用いたステッパ等の光学系部材の材料として好適な合成石英ガラスを複数得るのに好ましい合成石英ガラス母材4の成長軸方向での均質性は、例えば、Δnの成長軸方向での変動が1.5ppm以下であることが好ましい。これは、例えば、ステッパ用途材料は、面内のΔn分布を2ppm内で作成する必要があり、これを歩留まり良く素材として提供するには、成長軸方向のΔnを1.5ppm以内に抑える必要があるためである。また、この場合、複屈折の成長軸方向での変動が8nm/cm以下であることが好ましく、さらに、OH濃度の成長軸方向での変動が3ppm以下であることが好ましい。
OH濃度は、Δnの成長軸方向での変動に影響を与える。例えば、OH濃度3ppmは、Δnに換算すると0.3ppmに相当する。このOH濃度3ppmは、Δnの成長軸方向での変動が上限である1.5ppmである場合、その影響割合として20%程度に相当することになる。Δnは、複屈折や仮想温度にも影響され、どれがどれだけ寄与するか分からないが、OH濃度の寄与分は20%位に抑えるのが妥当である。すなわち、Δnの成長軸方向での変動は、OH濃度の成長軸方向での変動値に比例するものであり、このOH濃度の成長軸方向での変動が3ppmを超えた場合、Δnの成長軸方向での変動を1.5ppm以下にすることが困難となるため、OH濃度の成長軸方向での変動の上限を3ppmとすることが好ましい。
ここでいう合成石英ガラス母材4の成長軸方向での均質性は、少なくとも、合成石英ガラス母材4の有効部(図示せず)内で良好であればよい。ここでいう有効部とは、合成石英ガラス母材4において前述の合成石英ガラスを得るのに必要な部位である。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。本実施例では、本発明の製造方法を用いて製造した合成石英ガラス母材4を実施例1及び実施例2とし、本発明の製造方法を用いずに製造した合成石英ガラス母材を比較例とした。なお、本実施例は本発明の範囲を限定するものではない。
<比較方法>
前述の第1工程〜第3工程により、成長軸方向の長さが800mmとなるように製造した合成石英ガラス母材4を用いた。この合成石英ガラス母材4の両端部及び中心部の3点でΔn及び複屈折並びにOH濃度を測定し、測定された最高値と最小値の差を、Δn及び複屈折並びにOH濃度の成長軸方向の変動値として算出し、算出した変動値を比較する。
<実施例1>
実施例1の合成石英ガラス母材4は、前述の第1工程において、ススの成長速度が一定になるように、水素ガス流量を制御する方法を用いて製造した合成石英ガラス母材4である。この実施例1では、合成石英ガラス母材4の有効部に対応する部位のススの成長速度が成長軸方向で±5%以内になるように、成長速度をモニターし、水素ガス流量又は排気圧を制御した。水素ガス流量、排気圧は、各々2%〜3%の範囲で制御した。この水素ガス流量制御、排気圧制御には、PID制御を用い、あらかじめ、PIDパラメータを最適化した。その結果、表1に示すΔn及び複屈折並びにOH濃度の変動値が算出された。
<実施例2>
実施例2の合成石英ガラス母材4は、前述の第1工程において、ススの成長速度が一定になるようにスス堆積面温度を制御する方法を用いて製造した合成石英ガラス母材4である。この実施例2では、合成石英ガラス母材4の有効部に対応する部位のススの成長速度が成長軸方向で±5%以内、かつスス堆積面温度の最高温度の変動を成長軸方向で±15℃以内になるように、水素ガス流量又は排気圧を制御した。水素ガス流量、排気圧は、各々2%〜3%の範囲で制御した。この水素ガス流量、排気圧制御には、PID制御を用い、あらかじめ、PIDパラメータを最適化した。その結果、表1に示すΔn及び複屈折並びにOH濃度の変動値が算出された。
<比較例>
比較例の合成石英ガラス母材は、前述の第1工程において、本発明のような前述した各制御を行わず、流量が指示値になるように制御し(MFCが持つばらつきの範囲内で変動)、外径制御は行わずに製造した合成石英ガラス母材である。その結果、表1に示すΔn及び複屈折並びにOH濃度の変動値が算出された。
Figure 2011063491
<実施例1と比較例との対比>
表1に示すように、比較例のΔn及び複屈折並びにOH濃度の変動値は、表1に示すように、いずれも、前述した短波長を用いたステッパ等の光学系部材の材料として好適な合成石英ガラスを複数得るのに好ましい変動値を超えていることが確認された。
比較例に対して、実施例1のΔn及び複屈折並びにOH濃度の変動値は、表1に示すように、いずれも、前述した短波長を用いたステッパ等の光学系部材の材料として好適な合成石英ガラスを複数得るのに好ましい変動値以下であることが確認された。すなわち、実施例1は、比較例に比べて成長軸方向の特性が均質であることが示された。
したがって、本発明の製造方法を実施した前述の第1工程によれば、成長軸方向の特性が均質な合成石英ガラス母材4を製造できる。このように、成長軸方向に特性を均一に製造できるので、合成石英ガラス母材4を成長軸方向に複数切り出すことにより、同等な特性を持つ複数の円板状の合成石英ガラスを歩留まりよく製造できる。
<実施例2と比較例との対比>
比較例に対して,実施例2のΔn及び複屈折並びにOH濃度の変動値は、表1に示すように、いずれも、前述した短波長を用いたステッパ等の光学系部材の材料として好適な合成石英ガラスを複数得るのに好ましい変動値以下であることが確認された。すなわち、実施例2は、比較例に比べて成長軸方向の特性が均質であることが示された。さらに、実施例2の変動値は、実施例1の変動値と比べても、およそ半分以下の値であることが確認された。すなわち、実施例2は、実施例1と比べても成長軸方向の特性がより均質であることが示された。
したがって、本発明の製造方法を実施した前述の第1工程によれば、成長軸方向の特性がより均質な合成石英ガラス母材4を製造できる。このように、成長軸方向に特性を均一に製造できるので、合成石英ガラス母材4を成長軸方向に複数切り出すことにより、同等な特性を持つ複数の円板状の合成石英ガラスを歩留まりよく製造できる。
4:合成石英ガラス母材

Claims (5)

  1. スス付け法を用いた光学硝材用の合成石英ガラス母材の製造方法であって、スス付け中の成長軸方向での成長速度変動が±5%以内になるように、水素ガス流量、排気圧、及び、堆積面温度の少なくとも1つを制御することを特徴とする光学硝材用の合成石英ガラス母材の製造方法。
  2. 前記堆積面温度が±15℃以内になるように前記水素ガス流量及び/又は排気圧を制御することを特徴とする請求項1記載の光学硝材用の合成石英ガラス母材の製造方法。
  3. 請求項1又は2記載の製造方法で製造された光学硝材用の合成石英ガラス母材であって、比屈折率差の成長軸方向での変動が1.5ppm以下であることを特徴とする光学硝材用の合成石英ガラス母材。
  4. 請求項1又は2記載の製造方法で製造された光学硝材用の合成石英ガラス母材であって、複屈折の成長軸方向での変動が8nm/cm以下であることを特徴とする光学硝材用の合成石英ガラス母材。
  5. 請求項1又は2記載の製造方法で製造された光学硝材用の合成石英ガラス母材であって、OH濃度の成長軸方向での変動が3ppm以下であることを特徴とする光学硝材用の合成石英ガラス母材。
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