従来、この種のインバータ制御装置において、通電角を電気角120度以上に広げる広角制御を行うことにより、インバータの運転範囲を拡大し、インバータ制御装置の出力を増大するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
一般に、これまでのインバータの波形制御としては、制御の容易さの観点から120度通電波形が採用されてきた。したがって、ブラシレスDCモータを駆動するシステムにおいては、正負それぞれの電気角が180度あるにもかかわらず、電気角120度分だけしかインバータの各相スイッチを導通させておらず、残りの電気角60度の区間が無制御となっていた。
したがって、無制御期間においては、インバータによって所望の電圧を出力することができず、インバータの直流電圧利用率が低くなっており、さらに直流電圧利用率が低いことに起因してブラシレスDCモータの端子電圧が小さくなり、運転範囲が狭くなってしまう、すなわち設定可能な最高回転数が低い値にならざるを得なかった。
そこで、上記特許文献1では、電圧形インバータの通電幅を電気角で120度より大きく180度以下の所定の幅に設定し、無制御区間を電気角で60度未満にしている。その結果、モータ端子電圧を大きくし、運転範囲(回転数変更可能範囲)を広くしている。
また近年、モータの高効率化を図るためにロータ内部に永久磁石を埋め込み、磁石に起因するトルクのみならず、リラクタンスに起因するトルクを発生させることにより、モータ電流を増加させることなく、全体として発生トルクを大きくすることができる埋込磁石構造のブラシレスDCモータが用いられている。
このリタクタンストルクを有効に活用するために、モータ誘起電圧の位相に対してインバータの電圧位相を進める進角制御が行なわれている。さらに進角制御は、弱め磁束効果を有効に活用でき、出力トルクを増大できる。
また、電動圧縮機等では、使用環境、信頼性、メンテナンスの観点から、ホール素子等のセンサを用いずにステータ巻線に生じる誘起電圧を検出し、これによってロータ磁極位置を検知するセンサレス方式のインバータ制御装置が用いられている。
この場合、無制御期間中の電気角60度を用い、上下アームのスイッチのオフ期間中にモータ端子に現れる誘起電圧を観測することにより、ロータ磁極位置を得ているものが多い。
以下、図面を参照しながら上記従来のインバータ制御装置を説明する。
図9は、上記特許文献1に記載された従来のインバータ制御装置の回路構成を示す図である。図10は、従来のインバータ制御装置の負荷トルクと回転数特性を示す図であり、
広角制御を行ったときの特性を示している。また図11は、従来のインバータ制御装置の各部の信号波形および処理内容を示すタイムチャートであり、広角度150度時の特性を示している。
磁極位置検出回路010は、差動増幅器011と積分器012とゼロクロスコンパレータ013により構成されている。
Y(スター)接続されたステータ巻線003u、003v、003wの中性点003dの電圧は、抵抗011aを介して増幅器011bの反転入力端子に供給されている。
Y接続された抵抗004u、004v、004wの中性点004dの電圧は、そのまま増幅器011bの非反転入力端子に供給されている。
増幅器011bは、出力端子と反転入力端子との間に抵抗011bを接続することにより、差動増幅器011として動作させるようにしている。
また、差動増幅器011の出力端子から出力される出力信号は、抵抗012aとコンデンサ012bとを直列接続してなる積分器012に供給されている。
積分器012からの出力信号(抵抗012aとコンデンサ012bとの接続点電圧)は、ゼロクロスコンパレータ013の非反転入力端子に供給されており、ゼロクロスコンパレータ013の反転入力端子には、中性点003dの電圧が供給されており、ゼロクロスコンパレータ013の出力端子から磁極位置検出信号が出力される。
上記差動増幅器011、積分器012およびゼロクロスコンパレータ013で、ブラシレスDCモータ003のロータ003bの磁極位置を検出する磁極位置検出回路010が構成される。
磁極位置検出回路010から出力される磁極位置検出信号は、マイクロプロセッサ020に供給され、マイクロプロセッサ020に供給された磁極位置検出信号は、周期測定、進角や通電角の設定のための位相補正等を行い、電気角1周期当りのタイマ値を算出し、スイッチングトランジスタTru、Trx、Trv、Try、Trw、Trzの転流信号を決定する。
また、マイクロプロセッサ020は、回転速度指令に基づいて電圧指令を出力する。マイクロプロセッサ020は、電圧指令をPWM(パルス幅変調)変調すると共に、回転速度指令と実回転速度の偏差に基づきPWM変調信号のON/OFF比であるデューティ量を制御し、3相分のPWM変調信号を出力する。すなわち、回転速度指令に対して実回転速度が低いとデューティを大きくし、逆に実回転速度が高いとデューティを小さくする制御を行う。
このPWM変調信号は、ドライブ回路030に供給され、ドライブ回路030が、スイッチングトランジスタTru、Trx、Trv、Try、Trw、Trzのそれぞれのベース端子に供給すべきドライブ信号を出力する。
以上のインバータ制御装置について、通電の動作を説明する。
図11において、(A)、(B)、(C)は、ブラシレスDCモータ003のU相、V相、W相の誘起電圧Eu、Ev、Ewの波形であり、位相がそれぞれ120度ずつずれた状態で変化する。
(D)は差動増幅器011から出力される信号であり、(E)は積分器012による積分波形である。この積分波形がゼロクロスコンパレータ013に供給されることにより、積分波形のゼロクロス点において立ち上り、立ち下りの励磁切替え信号が磁極位置検出信号として(F)のように出力される。
この励磁信号の立ち上り、立ち下りによりスタートする位相補正タイマ(G1)と、この位相補正タイマによってスタートする第2の位相補正タイマ(G2)により、転流パターンであるインバータモード(N)を1ステップ進める。
ここで、W相の誘起電圧波形からU相の通電タイミングを算出しており、位相補正タイマ(G1)によりインバータの位相進み量を制御することができる。図11においては、通電角150度で進角60度の設定である。したがって、位相補正タイマ(G1)の値は45度相当、第2の位相補正タイマ(G2)の値は30度相当の値となっている。
その結果、各インバータモードに対応してスイッチングトランジスタTru、Trx、Trv、Try、Trw、TrzのON−OFF状態が、それぞれ(H)、(I)、(J)、(K)、(L)、(M)に示すように制御される。
以上のように、通電期間を120度から180度に設定した状態でのブラシレスDCモータ003の駆動を達成することができ、インバータ電圧の位相をモータ誘起電圧よりも進めた状態にすることができる。
しかしながら、上記従来の構成では、ロータ003bの回転に基づいてステータ巻線003u、003v、003wに生じる誘起電圧を検出し、この誘起電圧を90度の遅れを有する積分器012によって移相することにより、ロータ003bの磁極に対応する位置検出信号を得ており、この位置検出信号に基づいてステータ巻線003u、003v、003wへの通電タイミングを決定する構成となっている。
その結果、90度遅れ位相の積分器012を用いることに伴い、急激な加減速に対する応答性が悪いという不具合がある。
そこで、このような応答性を改善した位置検出回路が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
以下、図面を参照しながら、上記従来のインバータ制御装置について説明する。
図12は、上記特許文献2に記載された従来のインバータ制御装置の構成を示す図である。図13は、インバータ制御装置の各部の信号波形および処理内容を示すタイムチャートである。
図12において、直流電源001の端子間に3対のスイッチングトランジスタTru、Trx、Trv、Try、Trw、Trzをそれぞれ直列接続してインバータ回路部140を構成している。ブラシレスDCモータ105は、4極の分布巻き構造のステータ105bと、ロータ105aで構成されている。ロータ105aは、内部に永久磁石105α、105βを埋め込んだ磁石埋込型構造である。
各対のスイッチングトランジスタ同士の接続点は、ブラシレスDCモータ105のY接続された各相のステータ巻線105u、105v、105wの端子にそれぞれ接続されている。
尚、スイッチングトランジスタTru、Trx、Trv、Try、Trw、Trzのコレクタ−エミッタ端子間には、それぞれ保護用の還流ダイオードDu、Dx、Dv、Dy、Dw、Dzが接続されている。
抵抗101、102は、母線103、104間に直列に接続されており、その共通接続点である検出端子ONは、ブラシレスDCモータ105のステータ巻線105u、105v、105wの中性点の電圧に相当する直流電源001の電圧の1/2である仮想中性点の電圧VNを出力するようになっている。
コンパレータ106a、106b、106cは、これらの各非反転入力端子(+)が、抵抗107、108、109を介して出力端子OU、OV、OWにそれぞれ接続され、各反転入力端子(−)が、検出端子ONに接続されている。
そして、これらのコンパレータ106a、106b、106cの出力端子は、論理手段であるマイクロプロセッサ110の入力端子I1、I2、I3にそれぞれ接続されている。またその出力端子O1からO6は、ドライブ回路120を介してトランジスタTru、Trx、Trv、Try、Trw、Trzを駆動する。
ブラシレスDCモータ105は、4極分布巻き構造で、ロータ105aがロータ表面に永久磁石105α、105βを配置した表面磁石構造となっている。したがって、通電角120度、進角0度の設定となっている。
次に図13を用いて制御動作について説明する。
(A)、(B)、(C)は定常動作時におけるステータ巻線105u、105v、105wの端子電圧Vu、Vv、Vwを示すものである。
これらの端子電圧は、インバータ回路部140による供給電圧Vua、Vva、Vwaと、ステータ巻線105u、105v、105wに発生する誘起電圧Vub、Vvb、Vwbと、転流切り換え時にインバータ回路部140のダイオードDu、Dx、Dv、Dy、Dw、Dzの内のいずれかが導通することにより生じるパルス状のスパイク電圧Vuc、Vvc、Vwcとの合成波形となる。これらの端子電圧Vu、Vv、Vwと直流電源001の1/2の電圧である仮想中性点電圧VNとコンパレータ106a、106b、106cにより比較した出力信号PSu、PSv、PSwを(D)、(E)、(F)に示す。
この場合、コンパレータの出力信号PSu、PSv、PSwは、前述の誘起電圧Vub、Vvb、Vwbの正および負ならびに位相を表わす信号PSua、PSva、PSwaと、前述のパルス状電圧のVuc、Vvc、Vwcに対応する信号PSub、PSvb、PSwbとからなる。
また、パルス状電圧のVuc、Vvc、Vwcは、ウェイトタイマにより無視しているので、コンパレータの出力信号PSu、PSv、PSwは、結果として誘起電圧Vub、Vvb、Vwbの正および負ならびに位相を示すものとなる。
マイクロプロセッサ110は、各コンパレータの出力信号PSu、PSv、PSwの状態に基づいて(G)に示す6つのモードA〜Fを認識し、出力信号PSu、PSv、PSwのレベルが変化した時点から電気角で30度だけ遅らせて、ドライブ信号DSu(J)からDSz(O)を出力する。
モードA〜Fの各時間T(H)は、電気角60度を示すものであり、A〜Fの1/2の時間(I)すなわちT/2は、電気角で30度に相当する遅延時間を示すものである。
このように、ブラシレスDCモータ105のロータ105aの回転に応じて、ステータ巻線105u、105v、105wに生ずる誘起電圧からロータ105aの位置状態を検出するとともに、その誘起電圧の変化時間(T)を検出してステータ巻線105u、105v、105wへの通電モードおよびタイミングにより各相ステータ巻線105u、105v、105wの通電のための駆動信号を決定して実行させるようにしている。
請求項1に記載の発明は、ロータに永久磁石を設けたブラシレスDCモータを駆動するインバータ回路部と、前記ブラシレスDCモータの誘起電圧を検出する位置検出回路部と、前記位置検出回路部で検出した誘起電圧に基づき前記ロータの位置検出信号を出力する位置検出判定手段と、前記位置検出判定手段が誘起電圧の検出を開始するまでのウェイト時間を設定する位置検出待機手段と、モータ電流の通電角と誘起電圧に対するモータ電流の進角および回転数に基づき前記ロータの前記位置検出信号が出力されてから前記インバータ回路部が転流動作を行うまでの時間を設定する転流制御手段と、前記インバータ回路部における通電角を電気角で120度以上180度未満の範囲で変化させる通電角制御手段と、前記位置検出判定手段による位置検出間隔と前記位置検出待機手段によるウェイト時間との時間差が、あらかじめ設定した基準時間よりも短くなった広角縮小判定の回数をカウントする通電角縮小回数判定手段を備え、前記位置検出判定手段による位置検出信号の出力回数を設定し、その設定した出力回数の時間内において、前記通電角縮小回数判定手段による広角縮小判定の回数が、あらかじめ設定した回数以上であった場合に、前記インバータ回路部における通電角を電気角で120度以上の範囲で小さくするようにしたものである。
かかることにより、負荷トルクの変動が大きく、前記ロータの1回転中における位置検出間隔が変化する場合においても、負荷トルク変動等によりモータ電流が変化することによってスパイク電圧の継続時間の増加を判断することができる。その結果、スパイク電圧幅が拡大した場合においても、通電角を狭めることによってモータ電流を減少させ、位置検出区間を拡大するとともに、スパイク電圧幅を減少することができるため、負荷変動、電圧変動等の外的要因による位置検出の失敗、誤検知等に起因した脱調によるモータ停止を防止することができる。
請求項2に記載の発明は、ロータに永久磁石を設けたブラシレスDCモータを駆動するインバータ回路部と、前記ブラシレスDCモータの誘起電圧を検出する位置検出回路部と、前記位置検出回路部で検出した誘起電圧に基づき前記ロータの位置検出信号を出力する位置検出判定手段と、前記位置検出判定手段が誘起電圧の検出を開始するまでのウェイト時間を設定する位置検出待機手段と、モータ電流の通電角と誘起電圧に対するモータ電流
の進角および回転数に基づき前記ロータの前記位置検出信号が出力されてから前記インバータ回路部が転流動作を行うまでの時間を設定する転流制御手段と、前記インバータ回路部における通電角を電気角で120度以上180度未満の範囲で変化させる通電角制御手段と、前記位置検出判定手段による位置検出間隔と前記位置検出待機手段によるウェイト時間との時間差が、あらかじめ設定した基準時間よりも長くなった広角拡大判定の回数をカウントする通電角拡大回数判定手段を備え、前記位置検出判定手段による位置検出信号の出力回数を設定し、その設定した出力回数の時間内において、前記通電拡大回数判定手段による広角拡大判定の回数が、あらかじめ設定した回数以上であった場合に、前記インバータ回路部における通電角を電気角で180度未満の範囲で大きくするようにしたものである。
かかることにより、負荷トルクの変動が大きく、前記ロータの1回転中における位置検出間隔が変化する場合においても、スパイク電圧の継続時間の減少を判断し、スパイク電圧の継続時間が減少した場合に通電角を制御して前記ブラシレスDCモータを高回転、高トルクで運転することが可能となる。
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記位置検出判定手段による位置検出間隔と前記位置検出待機手段によるウェイト時間との時間差が、あらかじめ設定した基準時間よりも長くなった広角拡大判定の回数をカウントする通電角拡大回数判定手段を備え、前記位置検出判定手段による位置検出信号の出力回数の時間内において、広角拡大判定の回数があらかじめ設定した回数以上であった場合に、前記インバータ回路部における通電角を電気角で180度未満の範囲で大きくするようにしたものである。
かかることにより、負荷トルクの変動が大きく前記ロータの1回転中における位置検出間隔が変化する場合においても、スパイク電圧の継続時間の減少を判断することができるため、前記スパイク電圧の継続時間の増加によって通電角を小さくしたことに伴い、スパイク電圧の継続時間が減少した場合には通電角を復帰させることができ、前記ブラシレスDCモータを再び高回転、高トルクで運転することが可能となる。
請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれか一項に記載の発明において、前記通電角制御手段による通電角の変更を待機する通電角変更待機タイマを備え、通電角制御手段が通電角の縮小動作を行なった後に再び通電角の拡大動作を行うことを所定時間待機するようにしたものである。
かかることにより、通電角を変更することに起因した頻繁なモータ運転音の変動を抑制し、騒音の発生を抑制することができる。
請求項5に記載の発明は、請求項1から4のいずれか一項に記載の発明において、前記ブラシレスDCモータのロータを、内部に永久磁石が埋め込まれ突極性を有する構成としたものである。
かかることにより、リラクタンストルクを有効に活用するために位置検出区間が狭くなる進角制御を行う場合において、負荷変動、電圧変動等の外的要因による位置検出の失敗、誤検知等に起因した脱調によるモータの停止を防止し、制御の信頼性を高めることができる。
請求項6に記載の発明は、請求項1から5のいずれか一項に記載の発明において、前記ブラシレスDCモータのステータ巻線の巻数を、160ターン以上としたものである。
かかることにより、インダクタンスが大きく、スパイク電圧幅が増大して位置検出区間
を狭くするモータを使用する場合においても、負荷変動、電圧変動等の外的要因による位置検出の失敗、誤検知等に起因した脱調によるモータの停止を防止することができる。
請求項7に記載の発明は、請求項1から6のいずれか一項に記載の発明において、前記ブラシレスDCモータの極数を6極以上としたものである。
かかることにより、負荷変動、電圧変動等の外的要因による位置検出の失敗、誤検知等に起因した脱調によるモータの停止を防止することができる。
請求項8に記載の発明は、前記ブラシレスDCモータを具備し、請求項1から7のいずれか一項に記載のインバータ制御装置によって駆動される電動圧縮機である。
かかることにより、負荷変動や電圧変動に起因した脱調を抑制した駆動が可能となり、信頼性の高い電動圧縮機を提供することができる。
請求項9に記載の発明は、前記ブラシレスDCモータを具備し、請求項1から7のいずれか一項に記載のインバータ制御装置によって前記ブラシレスDCモータを駆動する電気機器である。
かかることにより、負荷変動や電圧変動に対する耐量を向上することができ、信頼性の高い駆動制御を行う家庭用冷蔵庫等の電気機器を提供することができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によってこの発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1におけるインバータ制御装置のブロック図である。図2は、同実施の形態1におけるインバータ制御装置の各部の信号波形と処理内容を示すタイムチャートである。図3は、同実施の形態1における制御動作を示すフローチャートである。
図1において、インバータ制御装置200は、商用交流電源201と、周知の構成からなる圧縮機構220aとブラシレスDCモータ203を具備した電動圧縮機220に接続されており、商用交流電源201を直流電源に変換する整流部202と、電動圧縮機220のブラシレスDCモータ203を駆動するインバータ回路部204を備えている。
さらにインバータ回路部204を駆動するドライブ回路205と、ブラシレスDCモータ203の端子電圧を検出する位置検出回路部206と、インバータ回路部204を制御するマイクロプロセッサ207を備えている。
マイクロプロセッサ207は、位置検出回路部206からの出力信号に対してブラシレスDCモータ203の磁極位置を検出する位置検出判定手段209と、磁極位置検出のサンプリング開始を決定する位置検出待機手段208と、通電角を決定する通電角制御手段210と、転流信号を生成する転流制御手段211を備えている。
さらに、位置検出判定手段209からの出力に基づいて回転速度を算出する回転速度検出手段212と、回転速度に応じて転流信号に基づいたPWM変調を行うためのデューティ設定手段213と、キャリア出力手段214と、PWM制御手段215と、転流制御手段211とPWM制御手段215の出力により、ドライブ回路205を駆動するためのドライブ制御手段216を備えている。
ブラシレスDCモータ203は、6極の突極集中巻モータであり、3相巻線のステータ203aとロータ203bとで構成されている。
ステータ203aは、6極9スロットの構造であり、各相のステータ巻線203u、203v、203wの巻数はそれぞれ189ターンである。ロータ203bは、内部に永久磁石203α、203β、203γ、203δ、203ε、203ζを配置し、リラクタンストルクを発生する磁石埋込型構造である。
インバータ回路部204は、6つの三相ブリッジ接続されたスイッチングトランジスタTru、Trx、Trv、Try、Trw、Trzと、それぞれに並列に接続された環流ダイオードDu、Dx、Dv、Dy、Dw、Dzより構成されている。
位置検出回路部206は、コンパレータ(図示せず)等から構成されており、ブラシレスDCモータ203の誘起電圧に基づく端子電圧信号と基準電圧とをコンパレータにより比較して位置検出信号を得ている。
位置検出待機手段208は、位置検出回路部206の出力信号からスパイク電圧信号を分離し、位置検出信号のみを抽出するためにスパイク電圧信号を無視するウェイト時間を設定する。
位置検出判定手段209は、位置検出回路部206の出力信号からロータ203bの位置信号を得て位置検出信号を生成する。
通電角縮小回数判定手段209aは、位置検出判定手段209による位置検出間隔と、位置検出待機手段208によるウェイト時間の時間差tが、あらかじめ定めた基準時間より短くなったか否かの判定を行う。
通電角制御手段210は、位置検出判定手段209で得た位置検出情報に基づいて、転流制御手段211における通電角を制御する。通電角更新タイマ210aは、通電角制御手段210による通電角の更新周期を設定する。
転流制御手段211は、位置検出判定手段209の位置信号と通電角制御手段210の通電角によって転流のタイミングを計算し、スイッチングトランジスタTru、Trx、Trv、Try、Trw、Trzの転流信号を生成する。
回転速度検出手段212は、位置検出判定手段209からの位置信号を一定期間カウントしたり、パルス間隔を測定したりすることによってブラシレスDCモータ203の回転速度を算出する。
デューティ設定手段213は、回転速度検出手段212から得られた回転速度と、指令回転速度との偏差からデューティの加減演算を行い、デューティ値をPWM制御手段215へ出力する。回転速度指令と比較して実回転速度が低いとデューティを大きくし、逆に実回転速度が高いとデューティを小さくする。
キャリア出力手段214では、スイッチングトランジスタTru、Trx、Trv、Try、Trw、Trzをスイッチングするキャリア周波数を設定する。この場合、キャリア周波数は3kHzから10kHzの間で設定している。
PWM制御手段215では、デューティ設定手段213で設定されたデューティ値と、
キャリア出力手段214で設定されたキャリア周波数から、PWM変調信号を出力する。
ドライブ制御手段216では、転流信号とPWM変調信号と通電角、および進角を合成し、スイッチングトランジスタTru、Trx、Trv、Try、Trw、TrzをON/OFFするドライブ信号を生成し、ドライブ回路205へ出力する。
ドライブ回路205では、ドライブ信号に基づき、スイッチングトランジスタTru、Trx、Trv、Try、Trw、TrzのON/OFFスイッチングを行い、ブラシレスDCモータ203を駆動する。
次に、図2に示すインバータ制御装置の各種波形について説明する。
ここで、インバータ制御装置200は、通電角を150度、進角15度でブラシレスDCモータ203を制御している状態を示している。
(A)、(B)、(C)は、ブラシレスDCモータ203のU相、V相、W相の端子電圧Vu、Vv、Vwであり、それぞれの位相が120度ずつずれた状態で変化する。
これらの端子電圧は、インバータ回路部204による供給電圧Vua、Vva、Vwaと、ステータ巻線203u、203v、203wに発生する誘起電圧Vub、Vvb、Vwbと、転流切り換え時にインバータ回路部204の還流ダイオードDu、Dx、Dv、Dy、Dw、Dzの内のいずれかが導通することにより生じるパルス状のスパイク電圧Vuc、Vvc、Vwcとの合成波形となる。
そして、これらの端子電圧(値)Vu、Vv、Vwと直流電源電圧1の1/2の電圧である仮想中性点電圧(値)VNとを比較し、各コンパレータ(図示せず)より出力する出力信号PSu、PSv、PSwを(D)、(E)、(F)に示している。
この出力信号は、供給電圧Vua、Vva、Vwaに対応する出力信号PSua、PSva、PSwaと、スパイク電圧Vuc、Vvc、Vwcに対応する出力信号PSuc、PSvc、PSwcと、誘起電圧Vub、Vvb、Vwbと仮想中性点電圧VNの比較中の期間に相当する出力信号PSub、PSvb、PSwbとの合成信号となる。
ここで、パルス状のスパイク電圧Vuc、Vvc、Vwcは、特許文献2におけるウェイトタイマと同様に、位置検出待機手段208により設定するウェイト時間(G)によって無視されるため、コンパレータの出力信号PSu、PSv、PSwは、結果として誘起電圧Vub、Vvb、Vwbの正および負ならびに位相を示すものとなる。
マイクロプロセッサ207は、各コンパレータの出力信号PSu、PSv、PSwの状態に基づいて(H)に示す如く6つのモードA〜Fを認識し、出力信号PSu、PSv、PSwの状態に応じて、ドライブ信号DSu(I)からDSz(N)を出力する。
つまり、(H)に示すA〜Fの各モードにおける経過時間は、マイクロプロセッサ207が認識する位置検出信号の状態変化の発生間隔、即ち位置検出間隔(O)を示している。
続いて、図3のフローチャートにより、インバータ制御装置200の詳細な動作について説明する。
図3において、位置検出待機手段208の動作は、ステップ103の後からステップ2
02までとなる。また、位置検出判定手段209の動作は、ステップ202からステップ306までとなり、通電角縮小回数判定手段209aの動作は、ステップ401からステップ408までとなる。さらに、通電角制御手段210の動作は、ステップ501からステップ504である。
まず、ステップ101でタイマのカウント動作を開始し、ステップ102で転流時間が経過するまで待機する。転流時間が経過した後は、ステップ103でドライブ回路205へのドライブ信号DSu、DSv、DSw、DSx、DSy、DSzを出力し、転流動作を行う。
ここで、位置検出待機手段208について説明する。
転流動作を行なった際、インバータ回路部204のスイッチングトランジスタTru、Trx、Trv、Try、Trw、Trzの内のいずれかの状態が、ONからOFFへ切り換わった直後に、還流ダイオードDu、Dx、Dv、Dy、Dw、Dzの内のいずれかが導通することに伴って、直前に導通していたステータ巻線203u、203v、203wに蓄えられたエネルギーが放出されるまでの期間、パルス状のスパイク電圧Vuc、Vvc、Vwcが発生する。
このスパイク電圧Vuc、Vvc、Vvwを無視した後、誘起電圧Vub、Vvb、Vwbが仮想中性点電圧VNを通過するクロスポイントにより位置検出を行う。すなわち、ステップ201でタイマがウェイト時間を経過するまで待機し、ウェイト時間が経過した後に、ステップ202で位置検出を開始する。
換言すると、位置検出待機手段208において、ウェイト時間が経過するまで位置検出の開始を待機させ、スパイク電圧Vuc、Vvc、Vvwを無視した後に位置検出を行うものである。
次に、位置検出判定手段209について説明する。
ステップ301において、位置検出回路部206からの出力信号PSu、PSv、PSwの状態の検出を行ない、続いてステップ302において、スイッチングトランジスタTru、Trx、Trv、Try、Trw、Trzの出力状態、すなわち図2における動作モードの状態に応じた出力信号PSu、PSv、PSwの状態によって位置検出判定を行う。
一例として、図2における動作モードがAの場合、PSuがHレベル、PSvがLレベル、PSwがHレベルを検出することによってU相端子電圧の立ち上がり検出となる。同様に、他の動作モード状態においても、PSu、PSv、PSwの状態を調べることにより、仮想中性点電圧(値)VNを基準にした各端子電圧の立ち上がり、または立ち下がりの検出を行う。
位置検出の判定が行なわれた場合はステップ303に移行する。
ステップ303は、タイマの読取りを行ない、前回の位置検出からの経過時間を測定する。ここで、各端子電圧の立ち上がり、または立ち下がり検出による位置検出は、端子電圧1周期中に6回発生するため、位置検出間隔を測定することにより、電気角で60度に相当する経過時間を得ることができる。
通常、スパイク電圧Vuc、Vvc、Vwcは、誘起電圧Vub、Vvb、Vwbが仮
想中性点電圧VNを通過するクロスポイントの手前で終了する。
ところが、このスパイク電圧Vuc、Vvc、Vwcは、ステータ巻線203u、203v、203wのインダクタンスと、OFFする直前に流れていた電流等によって発生時間が変化するため、スパイク電圧Vuc、Vvc、Vwcの継続時間が長くなった場合、誘起電圧Vub、Vvb、Vwbが隠されてしまい、継続時間がクロスポイントの発生タイミングを超えた場合は、正常な位置検出が不可能となってしまう。
そこで、本実施の形態1では、過去の位置検出間隔に応じて設定されたウェイト時間による位置検出開始のタイミングから、実際に位置検出信号が発生するまでの時間差を測定することにより、前述のクロスポイントの変動有無の判定を行う。
ステップ304は、ステップ303で得られた直前に行なわれた60度毎の位置検出間隔であるタイマ値(時間)と、ステップ201におけるウェイト時間との時間差tを判定時間として算出する。
すなわち、位置検出判定手段209は、位置検出判定手段209における位置検出間隔と、位置検出待機手段208におけるウェイト時間との時間差tを算出し、その時間差tが大きければ、スパイク電圧の終了タイミングから誘起電圧と仮想中性点電圧NVのクロスポイントの発生タイミングまで時間余裕が残されており、逆に時間差tが小さければ、スパイク電圧の終了タイミングから誘起電圧と仮想中性点電圧NVのクロスポイントの発生タイミングまでの時間余裕が不足していると判定するものである。
そして、さらに時間差tが小さいと判定した回数が多い場合に、次の通電角縮小回数判定手段209aにおいて、インバータ回路部204における通電角を小さくするものである。
次に、ステップ305において、得られた位置検出間隔に応じて次回の転流時間とウェイト時間を設定する。
一例として、図2においては通電角150度、進角15度の動作を図示しており、転流タイミングは、位置検出間隔で得た60度を基準とし、ドライブ信号DSu、DSv、DSw、DSx、DSy、DSzの各ONタイミングは、位置検出後0度、OFFタイミングは、位置検出後30度としている。また、次回の位置検出を開始するまでのウェイト時間は、位置検出後45度としている。
続いて、ステップ306で、位置検出判定の回数をカウントする。
次に、通電角縮小回数判定手段209aについて説明する。
通電角縮小回数判定手段209aは、ステップ304で得た判定時間に基づき、誘起電圧検出期間PSub、PSvb、PSwbに対するスパイク電圧検出期間PSuc、PSvc、PSwcの大小判定を行う。
ステップ401において、ステップ304で得られた判定時間が、あらかじめ設定した基準時間である縮小設定時間、例えば、電気角3.75度相当の時間以下となった場合、すなわち、誘起電圧検出期間PSub、PSvb、PSwbにおける仮想中性点電圧VNとのクロスポイントが、ウェイト時間経過による位置検出開始タイミングに接近した、すなわち、時間差tが短縮した場合、ステップ402に進む。
そして、ステップ402で通電角を縮小するための広角縮小判定の回数を+1カウントする。
一方、ステップ401において、判定時間が縮小設定時間より大きい場合は、ステップ403に進む。
次に、ステップ306でカウントした位置検出判定の回数が、あらかじめ設定した検出設定回数を超えた場合は、ステップ402で設定した広角縮小判定の回数と、あらかじめ設定した縮小設定回数とを比較し、通電角を小さくするか否かの判断を行う次ステップに進み、通電角を小さくする広角縮小要求を設定する。
ステップ403において、位置検出判定の回数があらかじめ設定した検出設定回数、例えば、電気角3回転に相当する18回(電気角3回転の時間)を超えた時、ステップ404で位置検出判定の回数をクリアした後、ステップ405に進む。また、位置検出判定の回数が検出設定回数未満の場合は、ステップ501に進む。
ステップ405では、広角縮小判定の回数が、あらかじめ設定した縮小設定回数、例えば、6回以上の場合、ステップ406で広角縮小要求をセットし、ステップ408に進む。前述の例の場合、位置検出回数を18回カウントした中で、広角縮小判定の回数を、例えば6回以上カウントした場合は、広角縮小要求となる。
一方、ステップ405で、広角縮小判定のカウント回数が縮小設定回数(6回)未満であれば、ステップ407で広角縮小要求をクリアし、ステップ408に進む。
ステップ408では、広角縮小判定の回数をクリアし、その後ステップ501に進む。
次に、通電角制御手段210について説明する。
ステップ501は、通電角の更新周期を判定するステップであり、通電角の更新周期を経過している場合は、ステップ502に進み、更新周期以内の場合は、ステップ101に戻り、以下同様の動作を繰り返す。
ステップ502において、広角縮小要求の状態である場合、ステップ503に進む。該当しない場合は、ステップ101に戻り、以下同様の動作を繰り返す。
ステップ503において、通電角が下限の120度よりも大きければ、ステップ504において、通電角をあらかじめ設定した変更角だけ小さくする様に変更する。一例として、通電角150度、通電角下限120度、変更角7.5度の場合、通電角を150度から142.5度に変更する。
通電角を小さく変更した後もさらに広角縮小要求が継続している場合は、同様に通電角更新周期の経過毎に通電角を142.5度から135度、127.5度、120度と狭めていく。
ステップ503において通電角が既に下限の120度に到達していた場合、あるいはステップ504において通電角の減少(縮小)を行なった場合、ステップ101に戻り、以下同様の動作を繰り返す。
また、ステップ502の判定条件を満足しない場合は、そのままステップ101に戻り、以下同様の動作を繰り返す。
すなわち、本制御は、通電角縮小回数判定手段209aにおいて、位置検出判定手段209における位置検出間隔と位置検出待機手段208におけるウェイト時間との時間差tが、あらかじめ設定した基準時間である縮小設定時間よりも短くなった広角縮小判定の回数をカウントし、あらかじめ設定した位置検出判定の回数(本実施の形態1では18回)中に広角縮小判定の回数があらかじめ設定した縮小設定回数(本実施の形態1では6回)以上となった場合に、スパイク電圧の終了タイミングから誘起電圧Vub、Vvb、Vwbと仮想中性点電圧NVのクロスポイントの発生タイミングまでの時間余裕が不足している回数が多いと判定し、インバータ回路部204における通電角を電気角で120度以上の範囲で小さくするものである。
換言すると、ブラシレスDCモータ203を駆動するインバータ回路部204は、通電角を電気角120度以上に広げる広角制御を行うものであり、インバータ回路部204における通電角を最小の電気角で120度以上の範囲で小さくするものである。
したがって、負荷トルク変動等によりモータ電流が変化することによってスパイク電圧Vuc、Vvc、Vwcの幅が拡大した場合においても、通電角を狭めることによりモータ電流を減少させることとなり、その結果、位置検出区間、すなわち誘起電圧検出期間PSub、PSvb、PSwbを増大することができるとともに、スパイク電圧幅、すなわちスパイク電圧検出期間PSuc、PSvc、PSwcを減少することができる。
よって、負荷トルク変動等によりモータ電流が変化することによってスパイク電圧Vuc、Vvc、Vwcの幅が拡大した場合においても、通電角を狭めることにより、モータ電流を減少させることとなり、その結果、位置検出区間を拡大することができるとともに、スパイク電圧Vuc、Vvc、Vwcの幅を減少することができるため、負荷変動、電圧変動等の外的要因による位置検出の失敗、誤検知等に起因した脱調によるモータ停止を防止することができる。
また、負荷トルクの変動が大きく、ロータ303bの1回転中における位置検出間隔が変化する場合においても、スパイク電圧Vuc、Vvc、Vwcの継続時間の増加を判断することができるため、負荷変動、電圧変動等の外的要因による位置検出の失敗、誤検知に起因した脱調によるモータ停止を防止することができる。
さらに、ロータ203bの内部に永久磁石203α、203β、203γ、203δ、203ε、203ζを配置した構成とすることで、リラクタンストルクを有効に活用することができ、位置検出区間が狭くなる進角制御を行う場合についても、負荷変動、電圧変動等の外的要因による位置検出の失敗、誤検知等に起因した脱調によるモータ停止を防止することができる。
また、ブラシレスDCモータ203のステータ巻線203u、203v、203wの巻数を多くする(160ターン以上)ことで、インダクタンスが大きくなり、スパイク電圧Vuc、Vvc、Vwcの幅が拡大し、位置検出区間を狭くするモータの場合であっても、負荷変動、電圧変動等の外的要因による位置検出の失敗、誤検知等に起因した脱調によるモータ停止を防止することができる。
さらに、ブラシレスDCモータ203の極数を6極以上(従来4極)とするように、極数増加に伴い、機械的角度で定義する位置検出区間が狭いモータの場合であっても、負荷変動、電圧変動等の外的要因による位置検出の失敗、誤検知等に起因した脱調によるモータ停止を防止することができる。
このように、ブラシレスDCモータ203の回転制御に信頼性が得られるため、ブラシレスDCモータ203を具備した電動圧縮機220に、本実施の形態1におけるインバータ制御装置200を用いても、良好な運転が可能となる。
また、電動圧縮機200、凝縮器、減圧装置、蒸発器を配管によって環状に連結した冷凍サイクル(いずれも図示せず)を具備した冷蔵庫等の物品貯蔵装置において、電動圧縮機220を、本実施の形態1のインバータ制御装置200を用いて駆動制御することにより、良好なシステム運転を得ることができ、物品貯蔵装置の物品保存温度を安定させ、物品貯蔵の信頼性を高めることができる。
なお、本実施の形態1において、通電角は150度から7.5度の変更角で120度へ遷移させたが、変更角をさらに小さくして、よりリニアに変化させることもでき、また、逆に変更角を大きくして制御することもできる。
また、本実施の形態1においては、検出設定回数を18回、縮小設定回数を6回とそれぞれ設定したが、これらの回数は、電源の条件、あるいは電動圧縮機220の用途等に応じて適宜設定すればよいものである。
さらに、本実施の形態1においては、位置検出判定手段209による位置検出間隔と位置検出待機手段208によるウェイト時間との時間差tが、あらかじめ設定した基準時間よりも短くなったことを検知し、その後、あらかじめ設定した位置検出判定のカウント回数(例えば、18回)中に広角縮小判定の回数があらかじめ設定した縮小設定回数(例えば、6回)以上となった場合に、インバータ回路部204における通電角を電気角で120度以上の範囲で小さくしているが、位置検出判定手段209による位置検出間隔と位置検出待機手段208によるウェイト時間との時間差tが、あらかじめ設定した基準時間よりも短くなったことを検知して、インバータ回路部204における通電角を電気角で120度以上の範囲で小さくする制御であれば、検知した後の制御ステップは、他の制御内容で同様に実施することができる。
また、本実施の形態1において、位置検出判定手段209による位置検出間隔と位置検出待機手段208によるウェイト時間との時間差tとを比較する基準時間(縮小設定時間)を電気角3.75度相当時間としているが、スパイク電圧Vuc、Vvc、Vwcの終了タイミングから誘起電圧Vub、Vvb、Vwbと仮想中性点電圧NVのクロスポイントの発生タイミングまでの時間余裕を的確に判定できるように、基準時間を適宜変更することもできる。
(実施の形態2)
図4は、本発明の実施の形態2におけるインバータ制御装置のブロック図である。図5は、同実施の形態2におけるインバータ制御装置の各部の信号波形と処理内容を示すタイムチャートである。図6は、同実施の形態2における制御動作を示すフローチャートである。なお、先の実施の形態1と同一の構成要件については、同一の符号を付し、ここでは、構成において先の実施の形態1と相違する内容を主体に説明する。
図4において、先の実施の形態1の通電角縮小回数判定手段209aは、位置検出判定手段209による位置検出間隔と、位置検出待機手段208によるウェイト時間の時間差tが、あらかじめ定めた基準時間より短くなったか否かの判定を行うものとしたが、本実施の形態2においては、通電角拡大回数判定手段209bを具備し、この通電角拡大回数判定手段209bによって、位置検出判定手段209による位置検出間隔と、位置検出待機手段208によるウェイト時間の時間差tが、あらかじめ定めた基準時間より長くなったか否かの判定を行うようにしている。他の回路構成は、図1と同じである。
次に、図5に示すインバータ制御装置の各種波形について説明する。
ここで、インバータ制御装置200は、通電角を150度、進角15度でブラシレスDCモータ203を制御している状態を示している。
(A)、(B)、(C)は、ブラシレスDCモータ203のU相、V相、W相の端子電圧Vu、Vv、Vwであり、それぞれの位相が120度ずつずれた状態で変化する。
これらの端子電圧は、インバータ回路部204による供給電圧Vua、Vva、Vwaと、ステータ巻線203u、203v、203wに発生する誘起電圧Vub、Vvb、Vwbと、転流切り換え時にインバータ回路部204の還流ダイオードDu、Dx、Dv、Dy、Dw、Dzの内のいずれかが導通することにより生じるパルス状のスパイク電圧Vuc、Vvc、Vwcとの合成波形となる。
そして、これらの端子電圧(値)Vu、Vv、Vwと直流電源電圧1の1/2の電圧である仮想中性点電圧(値)VNとを比較し、各コンパレータ(図示せず)より出力する出力信号PSu、PSv、PSwを(D)、(E)、(F)に示している。
この出力信号は、供給電圧Vua、Vva、Vwaに対応する出力信号PSua、PSva、PSwaと、スパイク電圧Vuc、Vvc、Vwcに対応する出力信号PSuc、PSvc、PSwcと、誘起電圧Vub、Vvb、Vwbと仮想中性点電圧VNの比較中の期間に相当する出力信号PSub、PSvb、PSwbとの合成信号となる。
ここで、パルス状のスパイク電圧Vuc、Vvc、Vwcは、特許文献2におけるウェイトタイマと同様に、位置検出待機手段208により設定するウェイト時間(G)によって無視するため、コンパレータの出力信号PSu、PSv、PSwは、結果として誘起電圧Vub、Vvb、Vwbの正および負ならびに位相を示すものとなる。
マイクロプロセッサ207は、各コンパレータの出力信号PSu、PSv、PSwの状態に基づいて(H)に示す如く6つのモードA〜Fを認識し、出力信号PSu、PSv、PSwの状態に応じて、ドライブ信号DSu(I)からDSz(N)を出力する。
つまり、(H)に示すA〜Fの各モードにおける経過時間は、マイクロプロセッサ207が認識する位置検出信号の状態変化の発生間隔、即ち位置検出間隔(O)を示している。
続いて、図6のフローチャートにより、インバータ制御装置200の詳細な動作を説明する。
図6において、位置検出待機手段208の動作は、ステップ103の後からステップ202までとなる。また、位置検出判定手段209の動作は、ステップ202からステップ306までとなり、通電角拡大回数判定手段209bの動作は、ステップ601からステップ608までとなる。さらに、通電角制御手段210の動作は、ステップ701からステップ704である。
まず、ステップ101でタイマのカウント動作を開始し、ステップ102で転流時間が経過するまで待機する。転流時間が経過した後は、ステップ103でドライブ回路205へのドライブ信号DSu、DSv、DSw、DSx、DSy、DSzを出力し、転流動作を行う。
ここで、位置検出待機手段208について説明する。
転流動作を行なった際、インバータ回路部204のスイッチングトランジスタTru、Trx、Trv、Try、Trw、Trzの内のいずれかの状態がONからOFFへの切り換わった直後に、直前に導通していたステータ巻線203u、203v、203wに蓄えられたエネルギーが還流ダイオードDu、Dx、Dv、Dy、Dw、Dzの内のいずれかが導通することに伴って、直前に導通していたステータ巻線203u、203v、203wに蓄えられたエネルギーが放出されるまでの期間、パルス状のスパイク電圧Vuc、Vvc、Vwcが発生する。
このスパイク電圧Vuc、Vvc、Vvwを無視した後、誘起電圧Vub、Vvb、Vwbが仮想中性点電圧VNを通過するクロスポイントにより位置検出を行う。すなわち、ステップ201でタイマがウェイト時間を経過するまで待機し、ウェイト時間が経過した後に、ステップ202で位置検出を開始する。
換言すると、位置検出待機手段208において、ウェイト時間が経過するまで位置検出の開始を待機させて、スパイク電圧Vuc、Vvc、Vvwを無視した後に位置検出を行うものである。
次に、位置検出判定手段209について説明する。
ステップ301において、位置検出回路部206からの出力信号PSu、PSv、PSwの状態の検出を行ない、続いてステップ302において、スイッチングトランジスタTru、Trx、Trv、Try、Trw、Trzの出力状態、すなわち図5における動作モードの状態に応じた出力信号PSu、PSv、PSwの状態によって位置検出判定を行う。
一例として、図5における動作モードがAの場合、PSuがHレベル、PSvがLレベル、PSwがHレベルを検出することによってU相端子電圧の立ち上がり検出となる。同様に、他の動作モード状態においても、PSu、PSv、PSwの状態を調べることにより、仮想中性点電圧(値)VNを基準にした各端子電圧の立ち上がり、または立ち下がりの検出を行う。
位置検出の判定が行なわれた場合は、ステップ303に移行する。
ステップ303は、タイマの読取りを行ない、前回の位置検出からの経過時間を測定する。ここで、各端子電圧の立ち上がり、または立ち下がり検出による位置検出は、端子電圧1周期中に6回発生するため、位置検出間隔を測定することにより、電気角で60度に相当する経過時間を得ることができる。
通常、スパイク電圧Vuc、Vvc、Vwcは、誘起電圧Vub、Vvb、Vwbが仮想中性点電圧VNを通過するクロスポイントの手前で終了する。
ところが、このスパイク電圧Vuc、Vvc、Vwcは、ステータ巻線203u、203v、203wのインダクタンスと、OFFする直前に流れていた電流等によって発生時間が変化するため、スパイク電圧Vuc、Vvc、Vwcの継続時間が長くなった場合、誘起電圧Vub、Vvb、Vwbが隠されてしまい、継続時間がクロスポイントの発生タイミングを超えた場合は、正常な位置検出が不可能となってしまう。
そこで、本実施の形態2では、過去の位置検出間隔に応じて設定されたウェイト時間による位置検出開始のタイミングから、実際に位置検出信号が発生するまでの時間差を測定することにより、前述のクロスポイントの変動有無の判定を行う。
ステップ304は、ステップ303で得られた直前に行なわれた60度毎の位置検出間隔であるタイマ値(時間)と、ステップ201におけるウェイト時間との時間差tを判定時間として算出する。
すなわち、位置検出判定手段209は、位置検出判定手段209における位置検出間隔と、位置検出待機手段208におけるウェイト時間との時間差tを算出し、その時間差tが大きければ、スパイク電圧の終了タイミングから誘起電圧と仮想中性点電圧NVのクロスポイントの発生タイミングまで時間余裕が残されており、逆に時間差tが小さければ、スパイク電圧の終了タイミングから誘起電圧と仮想中性点電圧NVのクロスポイントの発生タイミングまでの時間余裕が不足していると判定するものである。
そして、さらに時間差tが大きいと判定した回数が多い場合に、次の通電角拡大回数判定手段209bにおいて、インバータ回路部204における通電角を大きくするものである。
次に、ステップ305において、得られた位置検出間隔に応じて次回の転流時間とウェイト時間を設定する。
一例として、図5においては通電角150度、進角15度の動作を図示しており、転流タイミングは位置検出間隔で得た60度を基準として、ドライブ信号DSu、DSv、DSw、DSx、DSy、DSzの各ONタイミングは、位置検出後0度、OFFタイミングは、位置検出後30度としている。また、次回の位置検出を開始するまでのウェイト時間は、位置検出後45度としている。
続いて、ステップ306で、位置検出判定の回数をカウントする。
次に、通電角拡大回数判定手段209bについて説明する。
通電角拡大回数判定手段209bは、ステップ304で得た判定時間に基づき、誘起電圧検出期間PSub、PSvb、PSwbに対するスパイク電圧検出期間PSuc、PSvc、PSwcの大小判定を行う。
ステップ601において、ステップ304で得られた判定時間が、あらかじめ設定した基準時間である拡大設定時間、例えば、電気角7.5度相当の時間以上となった場合、すなわち、誘起電圧検出期間PSub、PSvb、PSwbにおける仮想中性点電圧VNとのクロスポイントが、ウェイト時間経過による位置検出開始タイミングから離れた、すなわち、時間差tが拡大した場合、ステップ602に進む。
そして、ステップ602で通電角を拡大するための広角拡大判定の回数を+1カウントする。
一方、ステップ601において、判定時間が拡大設定時間より小さい場合は、ステップ603に進む。
次に、ステップ306でカウントした位置検出判定の回数が、あらかじめ設定した検出設定回数を超えた場合は、ステップ602で設定した広角拡大判定の回数と、あらかじめ
設定した拡大設定回数とを比較し、通電角を大きくするか否かの判断を行う次ステップに進み、通電角を大きくする広角拡大要求を設定する。
ステップ603において、位置検出判定の回数があらかじめ設定した検出設定回数、例えば、電気角3回転に相当する18回(電気角3回転の時間)を超えた時、ステップ604で位置検出判定の回数をクリアした後、ステップ605に進む。また、位置検出判定の回数が検出設定回数未満の場合は、ステップ701に進む。
次に、通電角制御手段210について説明する。
ステップ605では、広角拡大判定の回数が、あらかじめ設定した拡大設定回数、例えば、18回以上の場合、ステップ606で広角拡大要求をセットし、ステップ608に進む。前述の例の場合、位置検出回数を18回カウントした中で、広角拡大判定の回数を、例えば18回(連続してのカウント)カウントした場合は、広角拡大要求となる。
一方、ステップ605で、広角拡大判定のカウント回数が拡大設定回数(18回)未満であれば、ステップ607で広角拡大要求をクリアし、ステップ608に進む。
ステップ608では、広角拡大判定の回数をクリアし、その後ステップ701に進む。
次に、通電角制御手段210について説明する。
ステップ701は、通電角の更新周期を判定するステップであり、通電角の更新周期を経過している場合は、ステップ702に進み、更新周期以内の場合は、ステップ101に戻り、以下同様の動作を繰り返す。
ステップ702において、広角拡大要求の状態である場合、ステップ703に進む。該当しない場合は、ステップ101に戻り、以下同様の動作を繰り返す。
ステップ703において、通電角が上限、例えば、150度よりも小さければ、ステップ704において、通電角をあらかじめ設定した変更角だけ大きくする様に変更する。一例として、通電角120度、通電角上限150度、変更角7.5度の場合、通電角を120度から127.5度に変更する。
通電角を大きく変更した後もさらに広角拡大要求が継続している場合は、同様に通電角更新周期の経過毎に通電角を127.5度から135度、142.5度、150度と拡大する。
ステップ703において通電角が既に上限の150度に到達していた場合、あるいはステップ704において通電角の拡大を行なった場合、ステップ101に戻り、以下同様の動作を繰り返す。
また、ステップ702の判定条件を満足しない場合は、そのままステップ101に戻り、以下同様の動作を繰り返す。
すなわち、本制御は、通電角拡大回数判定手段209bにおいて、位置検出判定手段209における位置検出間隔と位置検出待機手段208におけるウェイト時間との時間差tが、あらかじめ設定した基準時間である拡大設定時間よりも長くなった広角拡大判定の回数をカウントし、あらかじめ設定した位置検出判定の回数(本実施の形態2では18回)中に広角拡大判定の回数があらかじめ設定した拡大設定回数(本実施の形態2では18回
)以上となった場合に、スパイク電圧の終了タイミングから誘起電圧Vub、Vvb、Vwbと仮想中性点電圧NVのクロスポイントの発生タイミングまでの時間余裕が残されている回数が多いと判定し、インバータ回路部204における通電角を電気角で180度未満の範囲で大きくするものである。
換言すると、ブラシレスDCモータ203を駆動するインバータ回路部204は、通電角を電気角120度以上に広げる広角制御を行うものであり、インバータ回路部204における通電角を最大の電気角で180度未満の範囲で大きくするものである。
したがって、スパイク電圧Vuc、Vvc、Vwcの継続時間の増加に伴って通電角を小さくしたことにより、スパイク電圧の継続時間が減少した場合には、通電角を復帰させることができ、ブラシレスDCモータ203を再び高回転、高トルクで運転することが可能となる。
また、負荷トルクの変動が大きく、ロータ303bの1回転中における位置検出間隔が変化する場合においても、スパイク電圧Vuc、Vvc、Vwcの継続時間の減少を判断することができるため、スパイク電圧Vuc、Vvc、Vwcの継続時間が減少した場合に通電角を復帰させることができ、ブラシレスDCモータ203を再び高回転、高トルクで運転することが可能となる。
このように、ブラシレスDCモータ203の回転制御に信頼性が得られるため、ブラシレスDCモータ203を具備した電動圧縮機220に、本実施の形態2におけるインバータ制御装置200を用いても、良好な運転が可能となる。
また、電動圧縮機200、凝縮器、減圧装置、蒸発器を配管によって環状に連結した冷凍サイクル(いずれも図示せず)を具備した冷蔵庫等の物品貯蔵装置において、電動圧縮機220を、本実施の形態2のインバータ制御装置200を用いて駆動制御することにより、良好なシステム運転を得ることができ、物品貯蔵装置の物品保存温度を安定させ、物品貯蔵の信頼性を高めることができる。
なお、本実施の形態2において、通電角は120度から7.5度の変更角で150度へ遷移させたが、変更角をさらに小さくしてよりリニアに変化させることもでき、また、逆に変更角を大きくして制御することもできる。
また、本実施の形態2においては、検出設定回数と拡大設定回数を共に18回と設定したが、これらの回数は、電源の条件、あるいは電動圧縮機220の用途等に応じて適宜設定すればよいものである。
さらに、本実施の形態2においては、位置検出判定手段209による位置検出間隔と位置検出待機手段208によるウェイト時間との時間差tが、あらかじめ設定した基準時間よりも長くなったことを検知し、その後、あらかじめ設定した位置検出判定のカウント回数(例えば、18回)中に広角拡大判定の回数があらかじめ設定した拡大設定回数(例えば、18回)以上となった場合に、インバータ回路部204における通電角を電気角で150度以下の範囲で大きくしているが、位置検出判定手段209による位置検出間隔と位置検出待機手段208によるウェイト時間との時間差tが、あらかじめ設定した基準時間よりも長くなったことを検知して、インバータ回路部204における通電角を電気角で180度未満の範囲で大きくする制御であれば、検知した後の制御ステップは、他の制御内容で同様に実施することができる。
また、本実施の形態2において、位置検出判定手段209による位置検出間隔と位置検
出待機手段208によるウェイト時間との時間差tとを比較する基準時間(拡大設定時間)を電気角7.5度相当時間としているが、スパイク電圧Vuc、Vvc、Vwcの終了タイミングから誘起電圧Vub、Vvb、Vwbと仮想中性点電圧NVのクロスポイントの発生タイミングまでの時間余裕を的確に判定できるように、基準時間を適宜変更することもできる。
(実施の形態3)
図7は、本発明の実施の形態3におけるインバータ制御装置のブロック図である。図8は、同実施の形態3における制御動作を示すフローチャートである。なお、先の実施の形態1、2と同一の構成要件については、同一の符号を付し、ここでは、構成において先の実施の形態1、2と相違する内容を主体に説明する。また、インバータ制御装置200の各部の信号波形等については、実施の形態1、2の図3、図5を援用する。
本実施の形態3においては、図7に記載の如く、位置検出判定手段209による位置検出間隔と、位置検出待機手段208によるウェイト時間の時間差tが、あらかじめ定めた基準時間より短くなったか否かの判定を行う通電角縮小回数判定手段209aと、前記時間差tが、あらかじめ定めた基準時間よりも長くなったか否かの判定を行う通電角拡大回数判定手段209bを具備している。
さらに、本実施の形態3においては、通電角制御手段210に、特定の条件で通電角の変更を待機するための通電角変更待機タイマ210bを備えている。他の回路構成は、図1(図4)と同じである。
次に、図8のフローチャートにより、インバータ制御装置200の詳細な動作を説明する。
図8において、位置検出待機手段208の動作は、ステップ103の後からステップ202までとなる。また、位置検出判定手段209の動作は、ステップ202からステップ306までとなり、通電角縮小回数判定手段209aおよび通電角拡大回数判定手段209bの動作は、ステップ801からステップ812までとなる。さらに、通電角制御手段210の動作は、ステップ901から909である。
ここで、ステップ101からステップ306については、実施の形態1、2と同じであるため、説明を省略し、通電角制御手段210の動作を主体に説明する。
ステップ901は、通電角の更新周期を判定するステップであり、通電角の更新周期を経過している場合は、ステップ902に進み、更新周期以内の場合は、ステップ101に戻り、以下、実施の形態1、2で説明した動作を繰り返す。
ステップ902において、広角縮小要求の状態である場合、ステップ903に進む。該当しない場合は、ステップ906に進む。
ステップ903において、通電角が下限の120度よりも大きければ、ステップ904へ移行し、通電角をあらかじめ設定した変更角だけ小さくする様に変更する。一例として、通電角150度、通電角上限150度、変更角7.5度の場合、通電角を150度から142.5度に変更する。
そして、ステップ905において、通電角変更待機タイマ210bによって通電角の変更待機時間、例えば5分間のカウント動作を開始する。
通電角を小さく変更した後も、さらに広角縮小要求が継続している場合は同様に、通電角更新周期の経過毎に通電角を142.5度から135度、127.5度、120度と狭めていく。
ここで、ステップ903において、通電角が既に下限の120度に到達していた場合、あるいはステップ905において、通電角変更待機タイマ210bのカウント動作を行った後、ステップ101に戻り、以下、実施の形態1、2で説明した動作を繰り返す。
また、ステップ902の判定条件を満足しない場合は、ステップ906に進む。
ステップ906において、広角拡大要求の状態である場合、ステップ907に進む。
このステップ907において、通電角が上限、例えば、150度よりも小さければ、ステップ908に進む。該当しない場合は、ステップ101に戻り、以下、実施の形態1、2で説明した動作を繰り返す。
そして、ステップ908において、通電角変更待機タイマ210bがカウント動作を終了している場合は、ステップ909に進み、このステップ909において、通電角をあらかじめ設定した変更角だけ大きくする様に変更する。一例として、通電角120度、通電角上限150度、変更角7.5度の場合、通電角を120度から127.5度に変更する。
通電角を大きく変更した後も、さらに広角拡大要求が継続している場合は、同様に通電角更新周期の経過毎に通電角を127.5度から135度、142.5度、150度と拡大する。
また、ステップ907において、通電角が既に上限の150度に到達していた場合、あるいはステップ909において通電角の拡大を行なった場合、ステップ101に戻り、以下、実施の形態1、2で説明した動作を繰り返す。
ここで、ステップ906の判定条件を満足しない場合は、そのままステップ101に戻り、以下、実施の形態1、2で説明した動作を繰り返す。
上述の制御によれば、実施の形態1と実施の形態2の両方の効果を併せて得ることができる。
すなわち、実施の形態1の効果として、負荷トルク変動等に起因してモータ電流が変化することに伴い、スパイク電圧Vuc、Vvc、Vwcの幅が拡大した場合においても、通電角を狭めることにより、モータ電流を減少させることとなり、その結果、位置検出区間を拡大することができる。これに加えて、スパイク電圧Vuc、Vvc、Vwcの幅を減少することができるため、負荷変動、電圧変動等の外的要因による位置検出の失敗、誤検知等に起因した脱調によるモータ停止を防止することができる。
さらに、実施の形態2の効果として、スパイク電圧Vuc、Vvc、Vwcの継続時間の増加に伴って通電角を小さくしたことにより、スパイク電圧の継続時間が減少した場合には、通電角を復帰させることができ、ブラシレスDCモータ203を再び高回転、高トルクで運転することが可能となる。
また、負荷トルクの変動が大きく、ロータ303bの1回転中における位置検出間隔が変化する場合においても、スパイク電圧Vuc、Vvc、Vwcの継続時間の増加を判断
することができるため、負荷変動、電圧変動等の外的要因による位置検出の失敗、誤検知等に起因した脱調によるモータ停止を防止することができる。
さらに、通電角変更待機時間を設けて通電角制御手段210が通電角の縮小動作と通電角の拡大動作を頻繁に繰り返し行うことを抑制しているため、通電角を変更することによって発生するモータ運転音の変動、およびこの変動に起因した騒音の発生を抑制することができる。
また、ロータ203bの内部に永久磁石203α、203β、203γ、203δ、203ε、203ζを配置した構成とすることで、リラクタンストルクを有効に活用することができ、位置検出区間が狭くなる進角制御を行う場合においても、同様に負荷変動、電圧変動等の外的要因による位置検出の失敗、誤検知等に起因した脱調によるモータ停止を防止することができる。
また、ブラシレスDCモータ203のステータ巻線203u、203v、203wの巻数が多いもの(160ターン以上)とすることで、インダクタンスが大きく、スパイク電圧幅が増大し位置検出区間を狭くするモータについても、同様に負荷変動、電圧変動等の外的要因による位置検出の失敗、誤検知等に起因した脱調によるモータ停止を防止することができる。
また、極数が6極以上(従来4極)のブラシレスDCモータ203のように、極数を増加することに伴い、機械的角度で定義する位置検出区間が狭いモータについても、同様に負荷変動、電圧変動等の外的要因による位置検出の失敗、誤検知等に起因した脱調によるモータ停止を防止することができる。
さらに、スパイク電圧Vuc、Vvc、Vwcの継続時間の増加によって通電角を小さくしたことに伴い、スパイク電圧Vuc、Vvc、Vwcの継続時間が減少した場合には、通電角を復帰させることができ、再びブラシレスDCモータ203を高回転、高トルクで運転することが可能となる。
また、負荷トルクの変動が大きく、ロータ303bの1回転中における位置検出間隔が変化する場合においても、スパイク電圧Vuc、Vvc、Vwcの継続時間の減少を判断することができるため、スパイク電圧Vuc、Vvc、Vwcの継続時間が減少した場合に通電角を復帰させることができ、再び高回転、高トルクで運転することが可能となる。
このように、ブラシレスDCモータ203の回転制御に信頼性が得られるため、ブラシレスDCモータ203を具備した電動圧縮機220に、本実施の形態3におけるインバータ制御装置200を用いても、良好な運転が期待できる。
また、電動圧縮機200、凝縮器、減圧装置、蒸発器を配管によって環状に連結した冷凍サイクル(いずれも図示せず)を具備した冷蔵庫等の物品貯蔵装置において、電動圧縮機220を、本実施の形態2のインバータ制御装置200を用いて駆動制御することにより、良好なシステム運転を得ることができ、物品貯蔵装置の物品保存温度を安定させ、物品貯蔵の信頼性を高めることができる。